説明

樹脂封止に用いられる予備的融着樹脂

【課題】最小限の工程により粉粒体状樹脂を予め熱の伝わりやすい形態に成形することで、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置における樹脂封止作業の高速化を可能とする。
【解決手段】粉粒体状樹脂102から平板状に成形されて樹脂封止に用いられる予備的融着樹脂104であって、前記粉粒体状樹脂102の少なくとも一部が互いに融着されて、且つ、該融着された粉粒体状樹脂102間に空孔104Cを有する。又、自身の厚み方向で前記空孔104Cの分布が不均一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被成形品の樹脂封止に用いられる樹脂である予備的融着樹脂の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
被成形品である半導体チップ等を配置した基板を金型に配置して樹脂封止する樹脂封止装置において、粉粒体状樹脂を用いることが、従来行われている。粉粒体状樹脂を用いる場合には、金型のキャビティへの投入の際に粉粒体状樹脂のキャビティ外への飛散等が生じやすい。そこで、例えば、特許文献1に示す樹脂封止装置においては、粉粒体状樹脂(顆粒樹脂)を投入するための樹脂供給機構に設けたカーテンを用いて粉粒体状樹脂のキャビティ外への飛散等を防止しつつ、粉粒体状樹脂を金型のキャビティ内に均一に満遍なく供給することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−120880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、樹脂供給機構を金型に移動する際に粉粒体状樹脂が飛散するおそれが残る。又、特許文献1で用いられるような粉粒体状樹脂は、キャビティ内に投入後も粉粒体状樹脂の粒子の間に空気の層(以降、空気の層を孔形状を有さなくても空孔と称する)が多く存在するので温度上昇をすばやく行うことできず、樹脂封止作業の時間短縮が十分に図れないという問題点を有していた。これに対して、キャビティ自体の温度を高くするといったことが考えられるが、その場合には樹脂封止作業の全体の温度管理に影響を与えるため、温度管理が複雑になると共に、粉粒体状樹脂の溶融した部分だけが温度が上がりすぎる可能性もあり、結果的に結果樹脂封止の品質を落とし、歩留りの低下を招くおそれもある。
【0005】
本発明は、このような観点から、最小限の工程により粉粒体状樹脂を予め熱の伝わりやすい形態に成形することで、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置における樹脂封止作業の高速化が可能となる予備的融着樹脂を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粉粒体状樹脂から平板状に成形されて樹脂封止に用いられる予備的融着樹脂であって、前記粉粒体状樹脂の少なくとも一部が互いに融着されて、且つ、該融着された粉粒体状樹脂間に空孔を有することで、上記課題を解決するものである。
【0007】
本発明は、樹脂封止作業の高速化という目的のもと、「高速化」を妨げない最小限の工程を採用して、「高速化」に大きく寄与する熱の伝わりやすい形態に粉粒体状樹脂を成形することに注力したものである。即ち、粉粒体状樹脂の少なくとも一部を互いに融着状態とすることで、融着された粉粒体状樹脂間に空孔を残すものの、予備的融着樹脂における粉体状樹脂の粒子間の断熱層となる空孔が減り、熱伝導を向上させることができる。そして、このような「融着状態」にするためであれば、粉粒体状樹脂を圧縮する工程は必要ではなく、圧縮する工程のための時間の短縮と多数の機器の使用を省くことができる。
【0008】
又、予備的融着樹脂が、自身の厚み方向で前記空孔の分布、若しくは空孔の大きさが不均一であってもよいとした場合には、粉粒体状樹脂の融着させる程度を均一にするための加熱手段や加熱時間を取らずに済む。このため、予備的融着樹脂を一層簡略な構成で且つ短時間で成形することが可能で、樹脂封止作業の高速化を大きく促進することが可能である。
【0009】
又、予備的融着樹脂が、厚み方向で前記平板の一方の面に近いほど前記空孔が少なくなってもよい、若しくは空孔の大きさが小さくなってもよいとした場合には、加熱手段を予備的融着樹脂の一方の面側に局在させることができる。このため、予備的融着樹脂を一層簡略な構成で成形することができる。
【0010】
特に、予備的融着樹脂の厚み方向において下面側の密度が高い場合、即ち予備的融着樹脂の上面に近いほど空孔が多い、若しくは空孔の大きさが大きい場合には、樹脂封止作業の際の空気の逃げが容易であり、樹脂封止された成形品にボイドが残る可能性を更に低減することができる。
【0011】
又、前記平板の一方の面が前記粉粒体状樹脂の粒形に倣う凸凹形状に成形されている場合には、粉粒体状樹脂の粒形に倣う凸凹形状が残る程度で融着されているので、当該融着の時間は短くて済み、且つ予備的融着樹脂の熱伝導を粉粒体状樹脂に比べれば良くすることができるので、樹脂封止作業の高速化を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明を適用することにより、最小限の工程により粉粒体状樹脂を予め熱の伝わりやすい形態に成形することで、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置における樹脂封止作業の高速化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる樹脂封止装置の一例を示す模式図
【図2】同じく予備的融着樹脂の一例を示す模式図
【図3】同じく予備的融着樹脂の成形工程を示す模式図
【図4】同じく予備的融着樹脂の温度と時間との関係を表すグラフ
【図5】本発明の第2実施形態に係わる予備的融着樹脂の成形工程を示す模式図
【図6】本発明の第3実施形態に係わる予備的融着樹脂の成形工程を示す模式図
【図7】本発明の第4実施形態に係わる樹脂封止装置の一例を示す模式図
【図8】本発明の第5実施形態に係わる加振装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態に係わる樹脂封止装置の一例を示す模式図、図2は同じく予備的融着樹脂の一側を示す模式図、図3は同じく予備的融着樹脂の成形工程を示す模式図、図4は同じく予備的融着樹脂の温度と時間との関係を表すグラフ、である。
【0016】
最初に、本発明の実施形態に係わる樹脂封止装置の概略について図1を用いて以下に説明する。
【0017】
樹脂封止装置100は、原料となる粉粒体状樹脂102を平板形状の予備的融着樹脂104に成形する予備的融着部112と、予備的融着樹脂104を用いて金型で被成形品の樹脂封止をする圧縮成形部114と、を有する。予備的融着部112と圧縮成形部114とは、離型フィルム116を兼用している。
【0018】
離型フィルム116は、供給ロール118から供給され、複数のローラ122により、方向と高さの調整が行われて、それぞれ予備的融着部112と圧縮成形部114の所定の場所を通過し、回収ロール120で回収される。離型フィルム116は、耐熱性に優れ、熱伝導が良好で、伸縮性に富み、形状の復元が容易な材料で適切な厚みに成形されている。
【0019】
予備的融着部112は、原料供給機124と加熱手段であるホットプレート128とを備える。なお、加熱手段は、ホップレートに限られるものではなく、赤外線ヒータやマイクロ波、熱風等を用いてもよい。
【0020】
原料供給機124は、離型フィルム116の通過する予備的融着部112の所定の場所で、所定の面積に粉粒体状樹脂102を投下する。このため、原料供給機124は、図3に示す如く、原料供給機124の供給口124Aから投下される粉粒体状樹脂102を所定の面積に制限するための筒形状の枠124Bを備えている。なお、枠124Bの最下端には粉粒体状樹脂102を加熱した際に枠124Bに融着しないような幅と高さの凹部124BBが設けられている。
【0021】
ホットプレート128は、離型フィルム116上に供給された粉粒体状樹脂102を加熱するために、予備的融着部112の所定の場所に配置されている。ホットプレート128は、図示せぬ制御部により制御され、離型フィルム116上の粉粒体状樹脂102の粒子が軟化してその少なくとも一部が互いに融着する程度まで、所定の時間、加熱(約100度)を行う。このとき、ホットプレート128は、離型フィルム116の下から粉粒体状樹脂102を加熱することとなる。このため、図2に示す如く、予備的融着樹脂104は平板状に成形され、その離型フィルム側の面104B(平面の下面)は、粉粒体状樹脂102の粒界が一部で観測される状態ではあるものの、加熱軟化により粉粒体状樹脂102の粒子が離型フィルム116の面に倣い大きな凸凹のない平坦な面に形成される。同時に、粉粒体状樹脂102の粒子が互いに融着するので、離型フィルム側の面104B側に近いほど、あいだに存在する空孔104Cは少なくなり、且つ空孔104Cの大きさが小さくなる。一方、予備的融着樹脂104の反離型フィルム側の面104A(平板の上面)は、ホットプレート128の熱が十分に伝わらないこともあり、必ずしも全ての粉粒体状樹脂102が十分に軟化状態とならず、粉粒体状樹脂102の粒界がそのまま残る、或いは軟化しても、粉粒体状樹脂102の粒子の形状がなくなるほどにはならない。同時に、原料供給機124側から何らかの平面部材で圧縮することをしないので、予備的融着樹脂104の反離型フィルム側の面104Aは、粉粒体状樹脂102の粒形に倣う状態で凸凹が形成される。同時に、予備的融着樹脂104の反離型フィルム側の面104Aでは、粉粒体状樹脂102の粒界の融着が十分になされないので、空孔104Cは多く残り、空孔104Cの大きさが大きくなる。即ち、本実施形態では、予備的融着樹脂104の厚み方向において、離型フィルム側の面104Bには空孔104Cが少なく、且つ空孔104Cの大きさが小さいので密度が高くなり、反離型フィルム側の面104Aには空孔104Cが多く残り、且つ空孔104Cの大きさが大きいので密度が低くなる。つまり、予備的融着樹脂104の厚み方向で空孔104Cの分布は不均一で、空孔104Cの大きさも不均一であり、密度が異なる状態となる。
【0022】
なお、制御部、原料供給機124、離型フィルム116、ホットプレート128によって、予備的融着樹脂104を成形することから、それらが当該予備的融着樹脂104を成形する手段とも言うことができる。
【0023】
圧縮成形部114は、圧縮成形機130を有する。なお、圧縮成形機130は、図1では1つであるが、複数備えられてもよい。圧縮成形機130は、本体132と、本体132に立設される複数の支柱であるタイバー134に支えられる固定プラテン136とを有する。固定プラテン136の下面には上型138が取り付けられている。本体132は、固定プラテン136に対して、接近・離反できるように移動可能な可動プラテン140を備えている。可動プラテン140の上面には下型142が取り付けられている。下型142には、図示せぬ吸着機構が設けられており、離型フィルム116を吸着・固定することができる。下型142は、可動プラテン140の移動に伴い、固定プラテン136に取り付けられた上型138に対して接近・離反する。即ち、可動プラテン140の移動により、上型138と下型142との間で構成される金型の型締め・型開きを行うことができる。
【0024】
当該金型に形成されたキャビティは、離型フィルム116の通過する圧縮成形部114の所定の場所に設けられている。このため、予備的融着樹脂104を載せた離型フィルム116を下型142に吸着することで、予備的融着樹脂104の金型への投入が完了する。
【0025】
次に、樹脂封止装置の動作について図1、図3を用いて説明する。
【0026】
まず、原料供給機124を枠124Bと共に、ホットプレート128上の離型フィルム116に接近させる。そして、供給口124Aから粉粒体状樹脂102を投下させて、ホットプレート128上の離型フィルム116に載せる(図3(A))。このとき、枠124Bが離型フィルム116に接触して、あるいは極近傍に配置されるので、粉粒体状樹脂102の飛散を防止でき、離型フィルム116の所定の面積に粉粒体状樹脂102が投下される。このとき、粉粒体状樹脂102は、加熱の均一性、加熱時間の短縮、圧縮成形時の樹脂流動を最小とするように、厚みがなるべく均一となるように投下される。
【0027】
なお、ホットプレート128の温度を粉粒体状樹脂102が硬化しないで軟化する程度の温度(100度程度)に上昇させておき、離型フィルム116を介して粉粒体状樹脂102を加熱する。加熱時間は、粉粒体状樹脂102の少なくとも一部を互いに融着させ、且つ投下された粉粒体状樹脂102の表面(予備的融着樹脂104としては反離型フィルム側の面)を粉粒体状樹脂102の粒形に倣う凸凹形状とする程度に調整されて、予備的融着樹脂104が形成される(図3(B))。
【0028】
上記加熱時間が経過した時点で、冷却時間(工程)を設けずに、原料供給機124を枠124Bと共に、離型フィルム116から離反させる。このとき、予備的融着樹脂104は冷却されていないが、枠124Bには凹部124BBが設けられ、予備的融着樹脂104は粉粒体状樹脂102の粒界が観測できるほどにしか溶解されていない。このため凹部124BBまでに予備的融着樹脂104は拡がらず、かつ枠124B側面に融着した状態ともならないので、予備的融着樹脂104が半固体状であっても、容易に枠124Bを離反させることができる。
【0029】
次に、供給ロール118から離型フィルム116を供給することで、予備的融着樹脂104が離型フィルム116に貼り付いた状態のままで、予備的融着樹脂104を予備的融着部112の所定の場所から圧縮成形部114の所定の場所に移動させる(図3(C))。
【0030】
次に、下型142の吸着機構で、予備的融着樹脂104の貼り付いた離型フィルム116の部分を、そのままの状態で金型を構成する下型142に配置して、吸着固定する。そして、予備的融着樹脂104を樹脂封止に適した温度まで加熱する。
【0031】
そして、被成形品を取り付けた上型138に対して下型142を接近させる。又、キャビティ内の減圧動作も開始させる。そして、所定のタイミングで、型締めして、予備的融着樹脂104を用いて被成形品を圧縮成形して樹脂封止を行う。
【0032】
このように、樹脂封止の際に金型に投入される樹脂は予備的融着樹脂104なので、金型への樹脂の搬送時に樹脂が飛散することを防止することができる。
【0033】
又、予備的融着樹脂104の成形後に、冷却工程を必要としないので、予備的融着樹脂104が温まった状態で圧縮成形のために金型に投入できるので、粉粒体状樹脂をそのまま用いる場合に比べて、樹脂封止の際の予備的融着樹脂104の加熱時間を短くすることができる。図4を用いて説明すると、粉粒体状樹脂102をそのまま用いた場合には破線Cのグラフとなり、金型へ投入する際TM1は室温TP1であり、熱伝導が良くないために温度上昇が遅く、温度TP3に到達するには時間TM3まで必要とする。これに対して、本実施形態を示す実線Aのグラフは、金型へ予備的融着樹脂104を投入する際TM1にすでに、室温TP1以上の温度TP2であるので、時間TM3よりも短い時間の時間TM2で樹脂温度を圧縮成形に適した温度TP3とすることができる。
【0034】
なお、図4の一点鎖線Bのグラフは、圧縮工程を採用して成形した予備成形樹脂の場合である。この場合には、熱伝導が本実施形態の予備的融着樹脂104に比べてよくなるが、離型フィルムからの予備成形樹脂の剥離をする関係から、予備成形樹脂を室温TP1から加熱することとなる。このため、本実施形態の予備的融着樹脂104を用いた場合と加熱時間の差異はあまりないと考えられるが、本実施形態では冷却工程や剥離工程を有しないので、圧縮工程を有して成形される予備成形樹脂の場合に比べて、樹脂封止作業の高速化を促進することができる。
【0035】
又、粉粒体状樹脂102の粒形に倣う凸凹形状が残る程度に予備的融着樹脂104は融着されて成形されているので、予備的融着樹脂104の成形にかかる時間は短くて済み、かつ予備的融着樹脂104の熱伝導は粉粒体状樹脂102に比べて良く、圧縮成形部114において効率的に加熱されて、温度上昇が早く、樹脂封止作業の高速化を可能とすることができる。
【0036】
又、予備的融着樹脂104は厚み方向で空孔104Cの分布、及び空孔104Cの大きさが不均一なので、粉粒体状樹脂102の融着させる程度を均一にするための加熱手段や均一にするための加熱時間を取らずに済む。このため、予備的融着樹脂104を上記の如く、予備的融着樹脂104の離型フィルム側の面104Bを加熱するホットプレート128を用いた簡略な構成(予備的融着樹脂104の一方の面側に局在)で短時間で成形することが可能で、樹脂封止作業の高速化を大きく促進することが可能である。
【0037】
特に本実施形態では、ホットプレート128を離型フィルム側(予備的融着樹脂104の厚み方向において下面側)に局在させて加熱しているため、予備的融着樹脂104の下面(離型フィルム側の面104B)に近いほど空孔104Cが少なく、且つ空孔104Cの大きさが小さい。即ち、密度が高くなり、逆に予備的融着樹脂104の上面(反離型フィルム側の面104A)に近いほど空孔104Cが多く、且つ空孔104Cの大きさが大きく残っている。このため、樹脂封止作業の際には、金型のキャビティ空間に空気の逃げが容易であり、樹脂封止された成形品にボイドが残る可能性を更に低減することができる(歩止りと品質の向上)。
【0038】
又、樹脂封止装置100は、予備的融着樹脂104に成形する手段を備えて、離型フィルム116が予備的融着樹脂104の成形の際と樹脂封止の際に兼用で用いられるので、予備的融着樹脂104を離型フィルム116から冷却して剥がすなどの工数が不要で、樹脂封止作業の高速化を更に促進することができる。同時に、離型フィルム116の兼用と、予備的融着部112で加圧圧縮や冷却圧縮などに用いられる構成部材を必要としないので、樹脂封止装置100を簡略に構成することができる。又、予備的融着樹脂104を離型フィルム116より剥がす必要がないので、予備的融着樹脂104が薄くても割れ等の問題が発生しにくく、被成形品の封止厚みが薄くなるような場合であっても容易に対応することができる。
【0039】
又、予備的融着樹脂104を離型フィルム116より剥がす必要がなく、且つ離型フィルム116の兼用により、当該剥がすことによる樹脂の割れや欠けを防止でき、予備的融着部112と圧縮成形部114とで樹脂の計量誤差を最小限にすることが可能である。
【0040】
又、予備的融着樹脂104を成形するのに、圧縮工程を採用する場合に比べて、樹脂封止装置100を簡素化し、且つ低コスト化することが可能となる。
【0041】
即ち、本発明を適用することにより、最小限の工程により粉粒体状樹脂102を予め熱の伝わりやすい形態である予備的融着樹脂104に成形することで、樹脂封止品質を保ちつつ樹脂封止装置100における樹脂封止作業の高速化、言い換えれば樹脂封止された成形品の製造のスループットを改善・向上させることが可能となる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態について、図5を用いて説明する。
【0043】
本実施形態は、第1実施形態とは、予備的融着部に加熱手段を2つ併用したことで異なり、それ以外は同一であるので、符号下2桁を同一として、説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、予備的融着部にホットプレート228とは別に赤外線ヒータ228Aを備えている。図5(C)に示す如く、ホットプレート228で粉粒体状樹脂202の加熱を開始して、枠224Bを離型フィルム216近傍から離反させた後に、赤外線ヒータ228Aを、粉粒体状樹脂202の反離型フィルム側の面に対峙させて予備的融着樹脂204を加熱・成形する。
【0045】
このように、粉粒体状樹脂202を挟み込んで両面を加熱することで、予備的融着樹脂204の成形をより早く行うことできる。そして、予備的融着樹脂204の反離型フィルム側の面においても粉粒体状樹脂202を互いに軟化させるので、空孔204Cを少なくすることができる。このため、圧縮成形時に、予備的融着樹脂204の反離型フィルム側の面204Aの温度上昇が速くなる。即ち、これらにより樹脂封止作業の高速化をより促進することができる。なお、赤外線ヒータ228Aに加熱された予備的融着樹脂204の表面は、軟化する程度にしか加熱されず、自重による圧縮を受けるのみなので、やはり粉粒体状樹脂202の粒形に倣う凸凹形状に形成されている。
【0046】
なお、ここで用いられる加熱手段は、赤外線ヒータ228Aに限定されず、マイクロ波や熱風などを用いてもよい。又、赤外線ヒータ228Aによる加熱のタイミングは、上記に限られず、ホットプレート228の加熱タイミングと同期させてもよい。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態について、図6を用いて説明する。
【0048】
本実施形態は、第1実施形態とは、予備的融着部に減圧機構を設けたことで異なり、それ以外は同一であるので、符号下2桁を同一として、説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、予備的融着部に少なくとも原料供給機の投入口324Aと枠324Bと、粉粒体状樹脂302の投下される所定の面積の離型フィルム316とを減圧する減圧機構を備えている。減圧機構は、具体的には、有底筒をさかさまにした形状のベルジャ326と、ベルジャ326に連通する真空ポンプ325で構成されている。
【0050】
次に、予備的融着樹脂304の成形手順について説明する。
【0051】
まず、原料供給機324を枠324Bと共に、ホットプレート328上の離型フィルム316に接近させる。そして、ベルジャ326で蓋をするように離型フィルム316に載せて、ベルジャ326に連通した真空ポンプ325で減圧を行う(図6(A))。
【0052】
気流がなくなり、所定の減圧レベルに達した後に、供給口324Aから粉粒体状樹脂302を投下させて、ホットプレート328上の離型フィルム316に載せる(図6(B))。このとき、枠324Bが離型フィルム316に接触して、あるいは極近傍に配置されるので、粉粒体状樹脂302の飛散を防止でき、離型フィルム316の所定の面積に粉粒体状樹脂302が投下される。粉粒体状樹脂302の投下により、減圧レベルが変動するので、適宜減圧レベルの調整を真空ポンプ325の運転・停止や図示しない真空バルブの開閉により調節する。
【0053】
なお、ホットプレート328の温度は粉粒体状樹脂302が硬化しないで軟化する程度の温度(100度程度)に上昇させておくことで、離型フィルム316を介して粉粒体状樹脂302を加熱する。加熱時間は、粉粒体状樹脂302の少なくとも一部を互いに融着させ、且つ投下された粉粒体状樹脂302の表面(予備的融着樹脂304としては反離フィルム側の面304A)を粉粒体状樹脂302の粒形に倣う凸凹形状とする程度に調整されて、予備的融着樹脂304が形成される(図6(C))。
【0054】
上記加熱時間が経過した時点で、冷却時間(工程)を設けずに、ベルジャ326の真空を破り、原料供給機324を枠324B及びベルジャ326と共に、離型フィルム316から離反させる。このとき、予備的融着樹脂304は冷却されていないが、枠324Bには凹部324BBが設けられ、予備的融着樹脂304は粉粒体状樹脂302の粒界が観測できるほどにしか溶解されていないので、凹部324BBにまで予備的融着樹脂304は拡がらず、かつ枠324B側面に融着した状態ともならないので、予備的融着樹脂304が半固体状であっても、容易に枠324Bを離反させることができる。
【0055】
次に、供給ロール318から離型フィルム316を供給することで、予備的融着樹脂304が離型フィルム316に貼り付いた状態のままで、予備的融着樹脂304を予備的融着部の所定の場所から圧縮成形部の所定の場所に移動させる(図6(D))。
【0056】
ここで、ベルジャ326の真空が破られる前は、見かけ上、空孔304Cが予備的融着樹脂304に多く存在する可能性がある。しかし、粉粒体状樹脂302の互いの融着により閉じられた空孔304Cが構成された場合には、その部分には大気中に比べ空気があまり存在しないため、ベルジャ326の真空が破られた際に、それら閉じられた空孔304Cは大気圧によりつぶされて、予備的融着樹脂304の熱伝導が向上し、樹脂封止作業の高速化を促進することができる。なお、減圧タイミングは、上記の場合に限られず、粉粒体状樹脂302の加熱前だけとしてもよいし、加熱中に行ってもよい。
【0057】
次に、本発明の第4実施形態について、図7を用いて説明する。
【0058】
本実施形態は、第1〜3実施形態とは、個片の離型フィルムが使用されることで異なり、それ以外は同一であるので、符号下2桁を同一として、説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、予備的融着部412と圧縮成形部414とで離型フィルム416が個片とされて兼用で用いられている。このため、予備的融着部412と圧縮成形部414との配置により自由度があり、圧縮成形機430を増やすことも容易で、且つ離型フィルム416の移動制御も単純化することができ、樹脂封止装置400が大掛かりになることを防止することができる。
【0060】
次に、本発明の第5実施形態について、図8を用いて説明する。
【0061】
本実施形態は、第1〜4実施形態とは、加振装置を予備的融着部に設けたことで異なり、それ以外は同一であるので、符号下2桁を同一として、説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、加振装置529を加熱機構であるホットプレート528に取り付けたものである。これにより、粉粒体状樹脂502の加熱中に、脱泡を目的とした振動を与えることで、予備的融着樹脂504の成形時の空孔504Cを少なくすると共に、投下された粉粒体状樹脂502の均一化を行うことができる。即ち、樹脂封止作業の高速化を促進することができる。なお、図8の例では、水平方向の振動を示しているが、鉛直方向の振動でも構わない。
【0063】
本発明について上記実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。
【0064】
例えば、上記実施形態においてはそれぞれ、別個の発明として説明したが、本発明はこれに限定されずに第1〜5実施形態のどの構成要素も適宜組み合わせることができる。
【0065】
又、上記実施形態においては、粉粒体状樹脂として特に説明をしなかったが、当該樹脂は粉状や、粒状であってもよいし、小径のタブレットでもよい。若しくはそれらの混合物であってもよい。
【0066】
又、上記実施形態においては、離型フィルムの下から粉粒体状樹脂を加熱したが、本発明はこれに限定されず、離型フィルムの下から加熱をせずに、離型フィルム上の粉粒体状樹脂の上のみから加熱してもよい。この場合には、キャビティ内でも一番熱が伝わりにくい予備的融着樹脂の反離型フィルム側の表面で空孔を少なくできるため、圧縮成形部における予備的融着樹脂の加熱を迅速に行うことに適している。
【符号の説明】
【0067】
100…樹脂封止装置
102、202、302、402、502…粉粒体状樹脂
104、204、304、404、504…予備的融着樹脂
104A、204A、304A…反離型フィルム側の面(平板の上面)
104B…離型フィルム側の面(平板の下面)
104C、204C、304C、504C…空孔
112、412…予備的融着部
114、414…圧縮成形部
116、216、316、416、516…離型フィルム
118…供給ロール
120…回収ロール
122…ローラ
124、224、324、424…原料供給機
124A、224A、324A、424A…供給口
124B、224B、324B…枠
124BB、224BB、324BB、524BB…凹部
128、228、328、428、528…ホットプレート
130、430…圧縮成形機
132、432…本体
134、434…タイバー
136、436…固定プラテン
138、438…上型
140、440…可動プラテン
142、442…下型
228A…赤外線ヒータ
325…真空ポンプ
326…ベルジャ
529…加振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体状樹脂から平板状に成形されて樹脂封止に用いられる予備的融着樹脂であって、
前記粉粒体状樹脂の少なくとも一部が互いに融着されて、且つ、
該融着された粉粒体状樹脂間に空孔を有する
ことを特徴とする予備的融着樹脂。
【請求項2】
請求項1において、
自身の厚み方向で前記空孔の分布が不均一である
ことを特徴とする予備的融着樹脂。
【請求項3】
請求項2において、
前記厚み方向で前記平板の一方の面に近いほど前記空孔が少なくなる
ことを特徴とする予備的融着樹脂。
【請求項4】
請求項1において、
自身の厚み方向で前記空孔の大きさが不均一である
ことを特徴とする予備的融着樹脂。
【請求項5】
請求項4において、
前記厚み方向で前記平板の一方の面に近いほど前記空孔の大きさが小さくなる
ことを特徴とする予備的融着樹脂。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記平板の一方の面が前記粉粒体状樹脂の粒形に倣う凸凹形状に成形されている
ことを特徴とする予備的融着樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162750(P2010−162750A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6218(P2009−6218)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】