説明

樹脂成形品の成形方法及び成形装置

【課題】発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、発泡セルが肥大化することを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】第1の樹脂からなるパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に、第2の樹脂41に発泡剤を含有させた発泡性樹脂47を注入し発泡させるようにした樹脂成形品の成形において、型開きされた成形型10a、10b内に前記パリソンの内部が複数の空間部23、24に区画されてなる前記パリソンを垂下して型閉じし、前記複数の空間部にそれぞれ加圧気体を供給してブロー成形し、前記複数の空間部を有する中空成形体を成形した後に、前記複数の空間部のうち第1の空間部23に所定の内圧を付与した状態で、前記第1の空間部に隣接する第2の空間部24内に前記発泡性樹脂を注入し、前記第1の空間部に付与される前記内圧に抗して前記発泡性樹脂を発泡成形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品の成形方法として、開閉可能に設けられた一対の成形型間に溶融状態の樹脂からなるパリソンを垂下させた後に、パリソンを前記成形型で挟み込んで空気等の気体を吹き込み成形させるようにした中空成形(所謂ブロー成形)や、樹脂に発泡剤を含有させ、この発泡剤を含む樹脂を成形型内に注入し発泡成形させるようにした発泡成形が一般に良く知られている。
【0003】
また、近年では、ブロー成形と発泡成形とを組み合わせた樹脂成形品の成形方法が知られている。例えば特許文献1には、熱可塑性樹脂発泡層を有するパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して、該発泡体片を加熱して該発泡体片を相互に融着させた表皮付発泡成形体及びその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004ー284149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂からなる樹脂成形品の成形においては、発泡性樹脂を成形型内に注入すると、注入開始時に発泡セルが肥大化してしまい、注入開始時と注入終了時とで発泡性樹脂の発泡圧が異なり、発泡不良や外観不良等の問題を引き起こす場合がある。特に、樹脂成形品の容量が大きい場合には、このような問題がより顕著に現れることとなる。
【0005】
これに対し、発泡性樹脂を成形型内に注入する際に、成形型内に空気等の気体を供給して成形型内を所定の圧力に保持し、発泡性樹脂にカウンタープレッシャをかけて発泡性樹脂の発泡を抑制するようにした成形方法(所謂カウンタープレッシャ法)が知られているが、成形型内に供給される気体が漏れることなく、成形型内を所定の圧力に保持するように成形型をシールすることはなかなか困難なものとなり得る。
【0006】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、発泡性樹脂を発泡成形させる際に、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、発泡セルが肥大化することを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本願の請求項1に係る樹脂成形品の成形方法は、第1の樹脂からなるパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に、第2の樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を注入し発泡させるようにした樹脂成形品の成形方法であって、型開きされた成形型内に、前記パリソンの内部が複数の空間部に区画されてなる前記パリソンを垂下するステップと、前記成形型内に前記パリソンが垂下された後に、前記成形型を型閉じするステップと、前記成形型が型閉じされた後に、前記パリソンをブロー成形し、前記複数の空間部を有する中空成形体を成形するステップと、前記中空成形体の前記複数の空間部のうち第1の空間部に所定の内圧を付与した状態で、前記複数の空間部のうち前記第1の空間部に隣接する第2の空間部内に前記発泡性樹脂を注入するステップと、前記第1の空間部に付与される前記内圧に抗して、前記第2の空間部内に注入された前記発泡性樹脂を発泡成形させるステップと、を備えていることを特徴としたものである。
【0008】
また、本願の請求項2に係る発明方法は、請求項1に係る発明方法において、前記第1の空間部に付与される前記内圧の大きさは、前記第2の空間部内に注入される前記発泡性樹脂の注入タイミングに同期して、前記発泡性樹脂の注入開始時からの時間に応じて制御されることを特徴としたものである。
【0009】
更に、本願の請求項3に係る発明方法は、請求項1又は2に係る発明方法において、前記発泡性樹脂に、該発泡性樹脂を補強する補強繊維が含有されていることを特徴としたものである。
【0010】
また更に、本願の請求項4に係る発明方法は、請求項1〜3の何れか一に係る発明方法において、前記樹脂成形品の外面を形成する前記第1の樹脂が、ソリッド樹脂であることを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項5に係る発明方法は、請求項1〜4の何れか一に係る発明方法において、前記発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項6に係る発明方法は、請求項5に係る発明方法において、前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項7に係る樹脂成形品の成形装置は、第1の樹脂からなるパリソンをブロー成形して成形される中空成形体の内部に、第2の樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を注入して発泡成形させた樹脂成形品を成形する樹脂成形品の成形装置であって、開閉可能な成形型と、型開きされた前記成形型内に、前記パリソンの内部が複数の空間部に区画された前記パリソンを押し出す押出ヘッドと、前記成形型内に押し出された前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉じさせた後に、前記パリソンの前記複数の空間部にそれぞれ加圧流体を供給し、前記複数の空間部を有する中空成形体を成形する加圧流体供給手段と、前記中空成形体の前記複数の空間部のうち第1の空間部に所定の内圧を付与するように前記第1の空間部の圧力を制御する圧力制御手段と、前記中空成形体の前記複数の空間部のうち前記第1の空間部に隣接する第2の空間部内に、前記発泡性樹脂を注入する注入手段と、を備え、前記圧力制御手段は、前記注入手段によって前記第2の空間部内に注入された前記発泡性樹脂を、前記第1の空間部に付与される前記内圧に抗して発泡成形させるように前記第1の空間部の圧力を制御することを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、前記圧力制御手段は、前記第1の空間部に付与される前記内圧の大きさを、前記第2の空間部内に注入される前記発泡性樹脂の注入タイミングに同期して、前記発泡性樹脂の注入開始時からの時間に応じて制御することを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項9に係る発明は、請求項7又は8に係る発明において、前記注入手段は、前記第2の樹脂に物理発泡剤を含有させた前記発泡性樹脂を前記第2の空間部内に注入することを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明において、前記注入手段は、前記第2の樹脂に前記物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた前記発泡性樹脂を前記第2の空間部内に注入することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項1に係る樹脂成形品の成形方法によれば、発泡性樹脂が注入される第2の空間部及び該第2の空間部に隣接する第1の空間部が第1の樹脂によってシールされているので、発泡性樹脂を発泡成形させる際に、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、発泡性樹脂の発泡セルが肥大化することを抑制することができる。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明方法によれば、発泡性樹脂にかけるカウンタープレッシャを調節することができるので、発泡性樹脂の発泡を調節することができ、発泡性樹脂が過度に膨張する、あるいは収縮することを防止することができ、前記作用効果を確実に得ることができる。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明方法によれば、発泡性樹脂に補強繊維が含有され、繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡が促進される場合においても、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、前記作用効果を有効に奏することができる。補強繊維が含有された発泡性樹脂から成形される樹脂成形品において、樹脂成形品の表面に補強繊維が露出して表面外観を悪化させることがなく、前記作用効果をより有効に奏することができる。
【0020】
また更に、本願の請求項4に係る発明方法によれば、樹脂成形品の外面を形成する第1の樹脂が、ソリッド樹脂であることにより、樹脂成形品の表面に破泡等の外観不良を引き起こすことなく、表面外観の良好な樹脂成形品を得ることができる。
【0021】
また更に、本願の請求項5に係る発明方法によれば、発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品の強度等の物性を向上させ、樹脂成形品の軽量化及び薄肉化を図ることが可能である。
【0022】
また更に、本願の請求項6に係る発明方法によれば、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記作用効果をより有効に奏することができる。
【0023】
また更に、本願の請求項7に係る樹脂成形品の成形装置によれば、発泡性樹脂が注入される第2の空間部及び該第2の空間部に隣接する第1の空間部が第1の樹脂によってシールされているので、発泡性樹脂を発泡成形させる際に、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、発泡性樹脂の発泡セルが肥大化することを抑制することができる。
【0024】
また更に、本願の請求項8に係る発明によれば、発泡性樹脂にかけるカウンタープレッシャを調節することができるので、発泡性樹脂の発泡を調節することができ、発泡性樹脂が過度に膨張する、あるいは収縮することを防止することができ、前記作用効果を確実に得ることができる。
【0025】
また更に、本願の請求項9に係る発明によれば、注入手段は、第2の樹脂に物理発泡剤を含有させた発泡性樹脂を第2の空間部内に注入することにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品の強度等の物性を向上させ、樹脂成形品の軽量化及び薄肉化を図ることが可能である。
【0026】
また更に、本願の請求項10に係る発明によれば、注入手段は、第2の樹脂に物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂を第2の空間部内に注入することにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記作用効果をより有効に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の成形型及び押出ヘッドを示す断面説明図である。前記成形装置1は、図1に示すように、開閉可能に設けられる一対の成形型10a、10bと、第1の樹脂からなるパリソン20を押し出す押出ヘッド30とを備えている。また、前記成形装置1は、後述するように、成形型10a、10b内に加圧流体を供給する加圧流体供給手段としてのブロービン13a、13bと、成形型10a、10b内に、第2の樹脂41に発泡剤を含有させた発泡性樹脂47を注入する注入手段としての射出装置40とを備えている。
【0028】
ブローピン13a、13bは、加圧流体供給源(不図示)から供給される加圧流体を成形型10a、10b内に供給するものであり、後述する図4に示すように、圧力制御装置50によって該ブローピン13a、13bとそれぞれ連通される所定の空間部内の圧力を制御するように構成されている。また、成形型10a、10bにはそれぞれ、ブローピン13a、13bを挿通させるための挿通孔12a、12bが設けられ、ブローピン13a、13bはそれぞれ、該挿通孔12a、12b内を進退動可能に構成されている。
【0029】
射出装置40は、発泡剤として超臨界状態にある流体を含有させた発泡性樹脂47を成形型10a、10b内に注入するものであり、後述する図4に示すように、第2の樹脂41を混錬溶融させるシリンダ42を備えている。シリンダ42の内部にはスクリュー43が備えられ、スクリュー43の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
【0030】
射出装置40では、シリンダ42に投入される第2の樹脂41をスクリュー43によって混錬溶融させる。そして、混錬溶融された第2の樹脂41に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ44から超臨界流体発生装置45を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置46によって注入される。これにより、第2の樹脂41に発泡剤を含有させた発泡性樹脂47が形成される。
【0031】
発泡性樹脂47は、スクリュー43が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出され、成形型10a、10b内に注入される。成形型10bには、射出装置40のノズル48に連通され、発泡性樹脂47を成形型10a、10b内に注入するための注入経路14が設けられている。なお、射出装置40は、シリンダ42の周囲に加熱ヒータ(不図示)を備えており、シリンダ42内に投入される第2の樹脂41を順次加熱溶融するように構成されている。
【0032】
また、成形装置1は、該成形装置1を総合的に制御する制御ユニット(不図示)を備えており、該制御ユニットは、成形型10a、10bの開閉駆動、押出ヘッド30のパリソン押出機構、ブローピン13a、13bの作動機構、ブローピン13a、13bの射出機構等の制御を行う。なお、前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0033】
次に、以上のように構成された樹脂成形品の成形装置1を用いた樹脂成形品の成形について説明する。
先ず、成形型10a、10bが開かれた状態において、押出ヘッド30から成形型10a、10b内に、具体的には成形型10a及び10bにそれぞれ設けられるキャビティ面11a及び11bの間に加熱溶融された第1の樹脂からなるパリソン20が垂下される。なお、第1の樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂等の非発泡のソリッド樹脂を用いることができる。
【0034】
図2は、図1におけるY2−Y2線に沿った断面説明図であり、この図に示すように、パリソン20は、円筒状に設けられる周壁部21と、該周壁部21の内部に設けられる隔壁部22とを有し、周壁部21と隔壁部22とが一体的に押出成形されている。なお、パリソン20の内部は、押出ヘッド30から押し出される先端側が開口し、隔壁部22によって第1の空間部23と第2の空間部24に区画されている。
【0035】
次に、成形型10a、10bが型閉めされ、パリソン20の上端側及び下端側が成形型10a、10bによって挟み込まれる。これにより、パリソン20の内部の空間が閉じられ、パリソン20の内部に隔壁部22によって区画された中空状の2つの空間部、具体的には第1の空間部23及び第2の空間部24が形成される。そして、第1の空間部23及び第2の空間部24に加圧流体が供給される。なお、加圧流体としては、例えば圧縮空気等の加圧気体を用いることができる。
【0036】
図3は、前記成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す断面説明図である。ブローピン13a、13bがともに前進させられ、ブローピン13aによって第1の空間部23に加圧気体が供給され、ブローピン13bによって第2の空間部24に加圧気体が供給され、パリソン20がブロー成形される。これにより、パリソン20は、その内部の空間が膨張し、周壁部21が成形型10a、10bのキャビティ面11a、11bに押し付けられ、キャビティ面11a、11bに沿った形状の中空成形体が成形される。
【0037】
なお、パリソン20の内部の空間を区画する隔壁部22は、第1の空間部23の圧力と第2の空間部24の圧力とに応じて所定の位置に移動される。前記のように、圧力制御装置50は、隔壁部22を所定の位置に移動させて保持するように、第1の空間部23内の圧力及び第2の空間部24内の圧力をそれぞれ制御する。
【0038】
図4は、前記成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。成形型10a、10b内に位置するパリソン20がブロー成形されると、次に、第2の空間部24内に、射出装置40から第2の樹脂41に発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂47が注入される。なお、第2の樹脂として、例えば熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0039】
発泡性樹脂47が第2の空間部24内に注入される際には、発泡性樹脂47の注入に伴って、圧力制御装置50によって第2の空間部24内の圧力が制御され、第2の空間部24内の気体がブローピン13bを通じて排出される。一方、第1の空間部23は、ブローピン13aによって加圧気体が供給され、圧力制御装置50によって所定の圧力に保持されている。このようにして、第1の空間部23には、所定の内圧が付与されている。
【0040】
第1の空間部23に付与される内圧は、第2の空間部24内に注入される発泡性樹脂47の注入タイミングに同期して、発泡性樹脂47の注入開始時からの時間に応じて前記内圧の大きさが制御される。具体的には、発泡性樹脂47が第2の空間部24内に注入される際には、第1の空間部23と第2の空間部24とを区画する隔壁部22が移動しないように第2の空間部24内の圧力に対応して第1の空間部24内の圧力が制御され、発泡性樹脂47が第2の空間部24内に充填されると、第2の空間部24内に注入された発泡性樹脂の発泡圧を略一定とするように第1の空間部23の圧力が制御される。なお、発泡性樹脂47の発泡は、第1の空間部23の圧力を制御することで抑制したり促進させたりすることができる。
【0041】
図5は、前記成形型内に発泡性樹脂が注入された状態を示す断面説明図である。第1の空間部23に所定の内圧を付与した状態で、第2の空間部24内に発泡性樹脂47が充填されると、図5に示すように、ブローピン13bが後退させられる。そして、発泡性樹脂47の発泡圧を略一定とするように第1の空間部23の圧力を制御して、矢印X1に示すように隔壁部22を移動させ発泡性樹脂47を発泡膨張させる。なお、第1の空間部23内の気体は、ブローピン13aを通じて排出される。
【0042】
このように、成形装置1では、第2の空間部24に注入された発泡性樹脂47が、第1の空間部23に付与される内圧に抗して発泡成形され、この第1の空間部23に付与される内圧は、第2の空間部24内に注入される発泡性樹脂47の注入開始時からの時間に応じて該内圧の大きさが制御される。なお、第1の空間部23に付与される内圧の制御は、圧力制御装置50によって第1の空間部23の圧力を制御することにより行われる。
【0043】
図6は、前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す断面説明図である。この図に示すように、成形装置1では、隔壁部22の移動が所定の位置で停止させられる。圧力制御装置50は、隔壁部22の移動を停止させるように第2の空間部24の圧力、具体的には発泡性樹脂47の発泡圧に応じて第1の空間部23の圧力を制御する。
【0044】
そして、溶融状態にある発泡性樹脂47が次第に冷却されて固化し、パリソン20がブロー成形された第1の樹脂からなる中空成形体の内部に、発泡性樹脂47を注入し発泡させるようにした樹脂成形品25が成形される。この樹脂成形品25は、第1の空間部23と、発泡性樹脂47が発泡成形された第2の空間部24とを備えている。
【0045】
なお、本実施形態では、パリソン20をブロー成形してなる中空成形体の内部に、発泡性樹脂47を注入し発泡させるようにした樹脂成形品25において、隔壁部22を周壁部21まで移動することなく、すなわち第1の空間部23が存在するようにして発泡性樹脂47を発泡成形させているが、隔壁部22を周壁部21まで移動させるようにしてもよい。
【0046】
図7は、前記成形装置を用いて成形される樹脂成形品の変形例を示す断面説明図である。この図に示すように、隔壁部22の移動を所定の位置で停止させることなく、第1の空間部23の圧力を制御して周壁部22まで移動させると、隔壁部22と周壁部21とが溶着される。そして、溶融状態にある発泡性樹脂47が次第に冷却されて固化し、発泡性樹脂47の表面に隔壁部22及び周壁部21を備えた樹脂成形品26を得るようにしてもよい。なお、ブローピン13aは、第1の空間部23内の気体が排出されると後退させる。
【0047】
次に、射出装置40から第1の空間部24への発泡性樹脂47の注入機構について、図8〜図10を参照して説明する。
図8〜図10は、射出装置40から第1の空間部24へ発泡性樹脂47が注入される工程を順に表しており、図4のB部について示している。図8は、前記注入経路に設けられた第1の弁体及び第2の弁体が閉じた状態を示す説明図、図9は、前記注入経路に設けられた前記第1の弁体が開き前記第2の弁体が閉じた状態を示す説明図、図10は、前記注入経路に設けられた前記第1の弁体及び前記第2の弁体が開いた状態を示す説明図である。
【0048】
図8に示すように、注入経路14は、成形型10bのキャビティ面11bに形成される凹部15と連通され、該凹部15の底側に第1の弁体51が備えられている。第1の弁体51は、ロッド53を介して駆動シリンダ52に連結されており、駆動シリンダ52の作動によって上下方向に移動可能に構成され、第1の弁体51が上方へ移動することで注入経路14が閉じられる。また、注入経路14には、該注入経路14を開閉し、水平方向に移動可能に構成される第2の弁体54が備えられている。これにより、第1の弁体51及び第2の弁体54が開いた状態において、発泡性樹脂47が成形型10a、10b内に注入可能となる。
【0049】
図8に示すように、第1の弁体51及び第2の弁体54がそれぞれ注入経路14を閉じた状態で、パリソン20の第2の空間部24に加圧気体が供給されて周壁部21がキャビティ面11bに押し付けられる際には、凹部15においても、その表面にパリソン20の周壁部21が断面コ字状に押し付けられるが、周壁部21の厚さが薄く成形される。
【0050】
そして、図9に示すように、駆動シリンダ52を作動させて第1の弁体51を下方側へ移動させた後に第2の空間部24の圧力を高めると、凹部15内に断面コ字状に成形された周壁部21が、その底部21aにおいて開口させられる。なお、第2の空間部の圧力を高める際には、隔壁部21を所定の位置に保持するように第2の空間部24の圧力が制御される。
【0051】
次に、第2の弁体54が注入経路14を開くように移動され、第2の空間部24と注入経路14とが連通された後に、図10に示すように、発泡性樹脂47が、射出装置40から第2の空間部24内に注入される。なお、図8〜図10は、パリソン20がブロー成形されてなる中空成形体の内部への発泡性樹脂の注入の一例を示したものであり、その他の好適な手段によって発泡性樹脂47を注入するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態に係る前記成形装置1では、第2の空間部24に発泡性樹脂47を注入する際に、第2の空間部24内の気体がブローピン13aを通じて排出されているが、第2の空間部24を規定する周壁部21に、第2の空間部24内の気体を排出する気体排出用穴を設けるようにしてもよい。
【0053】
図11は、本発明の別の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す断面説明図であり、図12は、前記成形装置の成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。なお、これらの図では、前述した成形装置1と同様の構成を備え、同様の作用をなすものについては同一符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0054】
本発明の別の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置60では、図11に示すように、成形型10a、10bが型閉じされた状態において、キャビティ面11a、11bによって形成される空間内に突出するようにピン62が成形型10bに設けられている。このピン62は、その先端側が先細り形状に形成され、その後端側が可動プレート61に取り付けられている。該可動プレート61は、例えば駆動シリンダ等によって、キャビティ面11a、11bによって形成される空間に対して進退動可能に構成されている。
【0055】
また、前記成形装置60では、キャビティ面11a、11bによって形成される空間内の気体を排出するための排気経路64が成形型10bに形成されており、該排気経路64は、可動プレート61を前進させることで閉じられ、可動プレート61を後退させることで開かれるように構成されている。
【0056】
前記のように、パリソン20の第2の空間部24に加圧気体が供給されて周壁部21がキャビティ面11bに押し付けられる際には、図11に示すように、パリソン20の周壁部21にピン61が刺さった状態で周壁部21がキャビティ面11bに押し付けられ、周壁部21には、ピン61によって気体排出穴21bが形成される。
【0057】
そして、発泡性樹脂47が第2の空間部24内に注入される際には、図12に示すように、ブローピン13bを後退させるとともに、可動プレート61を後退させる。これにより、発泡性樹脂47の注入に伴って、第2の空間部24内の気体が、気体排出穴21bから排気経路64を通じて排出させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、図2に示すように、周壁部21と隔壁部22とを有するパリソン20が用いられているが、その他の形状のパリソンを用いることも可能である。図13は、本発明の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置に用いられるパリソンの変形例を示す断面説明図であり、図13の(a)は、パリソンの第1の変形例を示す断面説明図、図13の(b)は、パリソンの第2の変形例を示す断面説明図である。
【0059】
図13の(a)に示すように、二重管構造を有するパリソン80を用いることも可能である。パリソン80は、略円筒状に形成される外側円筒部81と、該外側円筒部81の内部に位置し略円筒状に形成される内側円筒部82とを備え、外側円筒部81の内部の空間が内側円筒部82によって区画されており、内側円筒部82の内部に第1の空間部83が設けられ、外側円筒部81と内側円筒部82との間に第2の空間部84が設けられている。
【0060】
前記パリソン80を用いる場合には、第2の空間部84に発泡性樹脂を注入し、第1の空間部83の圧力を制御することで、第1の空間部83の内圧に抗して、第2の空間部84に注入された発泡性樹脂を第1の空間部83側に向かって発泡させることができる。なお、第1の空間部83に発泡性樹脂を注入し、第2の空間部84の圧力を制御して、第2の空間部84の内圧に抗して、第1の空間部83に注入された発泡性樹脂を第2の空間部84側に向かって発泡させるようにしてもよい。
【0061】
また、図13の(b)に示すように、略8の字状に形成されるパリソン90を用いることも可能である。パリソン90は、略円筒状に形成される第1の円筒部91及び第2の円筒部92を備え、第1の円筒部91と第2の円筒部92とが一体的に押出成形されている。パリソン90では、第1の円筒部91の内部に第1の空間部93が設けられ、第2の円筒部92の内部に第2の空間部94が設けられている。
【0062】
前記パリソン90を用いる場合には、第1の空間部93に発泡性樹脂を注入し、第2の空間部94の圧力を制御することで、第2の空間部94の内圧に抗して第1の空間部93に注入された発泡性樹脂を発泡させることができる。あるいは、第2の空間部94に発泡性樹脂を注入し、第1の空間部93の圧力を制御して、第1の空間部93の内圧に抗して、第2の空間部94に注入された発泡性樹脂を発泡させるようにしてもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、加圧流体として、圧縮空気等の加圧気体を用いているが、非圧縮性の流体を使用することも可能である。非圧縮性の流体を使用する場合には、加熱して使用することが好ましい。また、本実施形態では、発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡材、あるいは化学発泡剤を使用することも可能である。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、樹脂成形品を成形する上で、発泡性樹脂が注入される第2の空間部及び該第2の空間部に隣接する第1の空間部が第1の樹脂によってシールされているので、発泡性樹脂を発泡成形させる際に、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、発泡性樹脂の発泡セルが肥大化することを抑制することができる。
【0065】
また、第1の空間部23に付与される内圧の大きさは、第2の空間部内に注入される発泡性樹脂の注入タイミングに同期して、発泡性樹脂の注入開始時からの時間に応じて制御されることにより、発泡性樹脂にかけるカウンタープレッシャを調節することができるので、発泡性樹脂の発泡を調節することができ、発泡性樹脂が過度に膨張する、あるいは収縮することを防止することができ、前記作用効果を確実に得ることができる。
【0066】
更に、樹脂成形品の外面を形成する第1の樹脂が、ソリッド樹脂であることにより、樹脂成形品の表面に破泡等の外観不良を引き起こすことなく、表面外観の良好な樹脂成形品を得ることができる。
【0067】
また更に、発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品の強度等の物性を向上させ、樹脂成形品の軽量化及び薄肉化を図ることが可能である。
【0068】
また更に、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記作用効果をより有効に奏することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、射出装置40によって発泡性樹脂47が第1の空間部24に注入されているが、発泡性樹脂47にさらに、該発泡性樹脂を補強する補強繊維を含有させるようにしてもよい。このように、発泡性樹脂に補強繊維が含有され、繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡が促進される場合においても、前述したような樹脂成形品の成形方法によれば、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができ、発泡性樹脂の発泡セルが肥大化することを抑制することができる。補強繊維が含有された発泡性樹脂から成形される樹脂成形品においては、樹脂成形品の表面に補強繊維が露出して表面外観を悪化させることがなく、前記作用効果をより有効に奏することができる。
【0070】
また、本実施形態では、パリソンの内部に2つの空間部が形成されているが、パリソンの内部に、例えば3つの空間部など複数の空間部を形成するようにしてもよい。かかる場合には、発泡性樹脂が注入される1つの空間部に隣接する空間部の圧力をそれぞれ制御することで、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
以上のように、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、パリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に発泡性樹脂を注入し発泡させる際に、発泡性樹脂にカウンタープレッシャを確実にかけることができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置であり、例えば車体に組み付けられるトランクボード等の樹脂成形品の成形に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の成形型及び押出ヘッドを示す断面説明図である。
【図2】図1におけるY2−Y2線に沿った断面説明図である。
【図3】前記成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す断面説明図である。
【図4】前記成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。
【図5】前記成形型内に発泡性樹脂が注入された状態を示す断面説明図である。
【図6】前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す断面説明図である。
【図7】前記成形装置を用いて成形される樹脂成形品の変形例を示す断面説明図である。
【図8】前記注入経路に設けられた第1の弁体及び第2の弁体が閉じた状態を示す説明図である。
【図9】前記注入経路に設けられた前記第1の弁体が開き前記第2の弁体が閉じた状態を示す説明図である。
【図10】前記注入経路に設けられた前記第1の弁体及び前記第2の弁体が開いた状態を示す説明図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す断面説明図である。
【図12】前記成形装置の成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。
【図13】本発明の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置に用いられるパリソンの変形例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 60 成形装置
10a、10b 成形型
13a、13b ブローピン
20、80、90 パリソン
23、83、93 第1の空間部
24、84、94 第2の空間部
30 押出ヘッド
40 射出装置
41 第2の樹脂
47 発泡性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂からなるパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に、第2の樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を注入し発泡させるようにした樹脂成形品の成形方法であって、
型開きされた成形型内に、前記パリソンの内部が複数の空間部に区画されてなる前記パリソンを垂下するステップと、
前記成形型内に前記パリソンが垂下された後に、前記成形型を型閉じするステップと、
前記成形型が型閉じされた後に、前記パリソンをブロー成形し、前記複数の空間部を有する中空成形体を成形するステップと、
前記中空成形体の前記複数の空間部のうち第1の空間部に所定の内圧を付与した状態で、前記複数の空間部のうち前記第1の空間部に隣接する第2の空間部内に前記発泡性樹脂を注入するステップと、
前記第1の空間部に付与される前記内圧に抗して、前記第2の空間部内に注入された前記発泡性樹脂を発泡成形させるステップと、
を備えていることを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記第1の空間部に付与される前記内圧の大きさは、前記第2の空間部内に注入される前記発泡性樹脂の注入タイミングに同期して、前記発泡性樹脂の注入開始時からの時間に応じて制御されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記発泡性樹脂に、該発泡性樹脂を補強する補強繊維が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記樹脂成形品の外面を形成する前記第1の樹脂が、ソリッド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
前記発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
第1の樹脂からなるパリソンをブロー成形して成形される中空成形体の内部に、第2の樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を注入して発泡成形させた樹脂成形品を成形する樹脂成形品の成形装置であって、
開閉可能な成形型と、
型開きされた前記成形型内に、前記パリソンの内部が複数の空間部に区画された前記パリソンを押し出す押出ヘッドと、
前記成形型内に押し出された前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉じさせた後に、前記パリソンの前記複数の空間部にそれぞれ加圧流体を供給し、前記複数の空間部を有する中空成形体を成形する加圧流体供給手段と、
前記中空成形体の前記複数の空間部のうち第1の空間部に所定の内圧を付与するように前記第1の空間部の圧力を制御する圧力制御手段と、
前記中空成形体の前記複数の空間部のうち前記第1の空間部に隣接する第2の空間部内に、前記発泡性樹脂を注入する注入手段と、
を備え、
前記圧力制御手段は、前記注入手段によって前記第2の空間部内に注入された前記発泡性樹脂を、前記第1の空間部に付与される前記内圧に抗して発泡成形させるように前記第1の空間部の圧力を制御する、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項8】
前記圧力制御手段は、前記第1の空間部に付与される前記内圧の大きさを、前記第2の空間部内に注入される前記発泡性樹脂の注入タイミングに同期して、前記発泡性樹脂の注入開始時からの時間に応じて制御することを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
前記注入手段は、前記第2の樹脂に物理発泡剤を含有させた前記発泡性樹脂を前記第2の空間部内に注入することを特徴とする請求項7又は8に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記注入手段は、前記第2の樹脂に前記物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた前記発泡性樹脂を前記第2の空間部内に注入することを特徴とする請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−87245(P2008−87245A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268354(P2006−268354)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】