説明

樹脂成形品

【課題】 射出成形により製造される樹脂歯車や樹脂プーリーなどの樹脂成形品において、成形品外周部の精度が高い樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 樹脂の射出成形により一体に成形され、円環状の外周部11と回転軸となる軸部13とがウェブ14によって連結された樹脂成形品において、ウェブ14には、複数のゲート痕16,16が軸部を囲むように円状に配置され、
ウェブ14のゲート痕16よりも外周側には、円周方向に沿ってリブ15が立設され、
リブ15は、ゲート痕に対応する周方向位置(AG位置)におけるリブ高さが、ゲート痕とゲート痕の間に対応する周方向位置(AI位置)におけるリブ高さよりも高く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂の射出成形により形成された樹脂歯車や樹脂プーリーといった樹脂成形品に関する。特に、成形品外周部に円環状のリムが形成され、成形品中央部に軸部(ボスなど)が形成されて、リムと軸部の間が円盤状のウェブによって接続された樹脂歯車や樹脂プーリーに関する。
【背景技術】
【0002】
こうした樹脂歯車やプーリーは、例えば、電子複写装置やプリンター装置などの駆動部品として汎用されるに至っており、こうした利用分野では、印刷の品質を高めるために、樹脂歯車やプーリーには非常に高い寸法精度(例えば外周部の真円度など)が要求されている。そして、こうした樹脂歯車やプーリーは、通常、合成樹脂の射出成形によりその製造が行われており、精度を高めながら効率的にこれら樹脂成形品の製造が行えるように、種々の技術が開発されてきている。
【0003】
こうした樹脂成形品の精度劣化を招く要因の一つとしては、以下のような要因が知られている。即ち、図8に示すように、外周部のリムと中心軸たるボスとを円盤状のウェブで連結した樹脂歯車を射出成形する場合には、溶融樹脂を金型内のキャビティに注入するためのゲートG(ピンゲート)をウェブ上に複数設けることが多い(図ではリムと同心円上に、4箇所等間隔で設けられている)。この場合、ゲートGから射出された溶融樹脂は、ゲート周りへ円状に広がりつつキャビティを満たしていくため、歯車周方向でゲートと一致する位置(図ではAG位置)においては、歯車周方向でゲートとゲートの中間の位置(図ではAI位置)においてよりも、樹脂が外周部のリムや歯先に速く到達する。即ち、溶融樹脂が樹脂成形品外周部に到達するタイミングが周方向位置によって異なり、それと関連して溶融樹脂の保圧状況にも差が生じることとなるために、図8中に2点鎖線でその傾向を示すように、周方向AG位置では径が比較的大きくなる傾向(外側向き矢印で示す)を示すとともに、周方向AI位置では径が比較的小さくなる傾向(内側向き矢印で示す)を示して、成形される樹脂成形品には花びら状の精度劣化傾向が生じやすくなり、特に成形品外周部の真円度が低下しやすい。
【0004】
このような精度劣化傾向を予防抑制する技術としては、特許文献1や特許文献2に示されたような技術が知られている。
特許文献1には、外周に歯部を有し、リムとウェブとボスとから構成される樹脂歯車に関し、ウェブに円環状のリブを立設して、樹脂を射出成形する際のゲートをリブ上に設けることにより、ゲートから供給される樹脂がリブを通じて周方向に多く流れることを促進し、径方向の流れを平均化することによって、上記花びら状の精度劣化傾向を抑制することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、外周に歯部を有し、リムとウェブとボスとから構成される樹脂歯車に関し、ウェブの内周側にゲートを配置すると共に、ウェブにリブなどが設けられていない環状領域をゲートよりも外周側に設けて、その環状領域によりリブに起因する歯車の精度劣化を予防することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−025501号公報
【特許文献2】特開2006−070914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示された技術は樹脂の流れを平均化することによって、樹脂成形品外周部への樹脂到達のタイミングや保圧状況を均質化して、樹脂成形品の精度向上を図るものであるが、より一層の精度向上を図る上で、こうした平均化という手段では、外周部への樹脂供給の均質化が十分に図れないことがあり、他の精度向上技術が求められている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、射出成形により製造される樹脂歯車や樹脂プーリーなどの樹脂成形品において、成形品外周部の精度が高い樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、ピンゲートを用いる場合であっても、ウェブのゲートよりも外周側の部分にリブを立設して、リブの高さを、周方向でゲートに対応する位置で高く、ゲートとゲートの中間の位置で低くなるようすると、上記課題が解決されることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、樹脂の射出成形により一体に成形され、円環状の外周部と回転軸となる軸部とがウェブによって連結された樹脂成形品であって、ウェブには、複数のゲート痕が軸部を囲むように円状に配置され、ウェブのゲート痕よりも外周側には、円周方向に沿ってリブが立設され、前記リブは、ゲート痕に対応する周方向位置におけるリブ高さが、ゲート痕とゲート痕の間に対応する周方向位置におけるリブ高さよりも高く形成されたことを特徴とする樹脂成形品である。(請求項1)
【0011】
本発明においては、複数のゲート痕及びリブが軸部及び外周部と同心円状に配置されることが好ましい(請求項2)。さらに、リブを設けた径方向位置を境界として、ウェブが内周側部分と外周側部分に分割されて、回転軸方向に互いにオフセットするように構成されることが好ましい(請求項3)。また、リブが周方向に断続的に立設されることが好ましく(請求項4)、リブ高さが周方向に連続的に変化することが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲートと成形品外周部の間に配置されるリブの部分が、射出成形時にはゲートから外周部に向けて流れる樹脂流れを分流させるバッファ領域となって、リブの存在によって樹脂流れが成形品外周部に到達するタイミングを遅延させることができ、ゲートに対応する周方向位置では、リブが高く設けられて、その遅延時間が大きくされ、ゲートとゲートの間に対応する周方向位置では、リブが低く設けられてその遅延時間が小さくされて、従来の樹脂成形品において現れていた成形品外周部への樹脂到達タイミングのばらつきを補償して、均一化することができ、高い真円度を有する樹脂成形品が得られる。
【0013】
さらに、請求項2ないし請求項5に記載したように、より好ましい構成を備える樹脂成形品とすることにより、リブによる樹脂到達タイミングの調整・補償効果をより効果的に発揮し、高い真円度を有する樹脂成形品が効果的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明第1実施形態の樹脂歯車の斜視図である。
【図2】本発明第1実施形態の樹脂歯車の正面図及び断面図である。
【図3】本発明の樹脂歯車の射出成形を行う際の溶融樹脂の流れを示す模式図である。
【図4】本発明におけるリブ形状の例を示す図である。
【図5】本発明第2実施形態の樹脂歯車の斜視図である。
【図6】本発明第2実施形態の樹脂歯車の正面図及び断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態を示す正面図である。
【図8】従来の樹脂歯車における真円度低下の傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、樹脂歯車を例にして、本発明の実施形態を説明する。図1、図2は、本発明第1の実施形態の樹脂歯車1の形状を示す図である。図1には斜視図を、図2には正面図と断面図(A−A断面)を示す。この樹脂歯車1は、合成樹脂の射出成形により形成され、プリンターやコピー機やメーターなどの歯車伝達機構に用いられる。
【0016】
樹脂歯車1の外周部には、円環状のリム11が形成され、リム11の外周部には、ハスバ歯車の歯部12が形成されている(歯部12の詳細な形状は図示を省略している)。また、樹脂歯車1の中央部に設けられた軸部には、ボス13が設けられており、ボス13の内周面に図示しないシャフトを勘合して樹脂歯車1の回転軸が構成される。軸部たるボス13と外周部たるリム11とは、略円盤状のウェブ14により互いに連結され一体化されている。本実施形態においては、ウェブ14は、同心円状に2つの部分に分かれて形成されており、内周側の第1ウェブ141と外周側の第2ウェブ142とで構成されている。そして、第1ウェブ141と第2ウェブ142とは、樹脂歯車の回転軸方向に互いにオフセットして設けられて、その間が円環状の連結部143によって接続されている。
【0017】
リム11やボス13はウェブ14よりも回転軸方向の厚み寸法が大きくされており、円盤状のウェブ14から、回転軸方向に円環状のリム11やボス13が突出するようにされている。換言すれば、ウェブ14の部分が肉盗みされた樹脂歯車形状とされている。ウェブ14の一方の面には、樹脂歯車1を射出成形する際に樹脂を射出したゲート部分の痕跡(ゲート痕16)が複数あり、ゲート痕16、16は、内周側の第1ウェブ141の表面に、軸部13を取り囲むような同心円上に配置されている。本実施形態においては、4つのゲート痕16,16が、歯車中心軸を中心とする円上に等間隔で配置されている。
【0018】
本発明においては、ウェブ14のゲート痕16、16よりも外周側に、円周方向に沿うように、リブ15、15が立設されている。本実施形態においては、リブ15、15は、第1ウェブ141と第2ウェブ142との境界部の連結部143に沿って設けられており、4つのリブ15,15がリム11やボス13と同心円状に設けられている。以下の説明において、リブ15の高さとは歯車回転軸方向のリブの寸法をいい、リブ15の厚さとは歯車径方向のリブの寸法をいい、リブ15の長さとは歯車周方向のリブの寸法をいうものとする。
【0019】
円周方向に沿って設けられるリブ15、15は、その高さが、歯車周方向の位置に関してゲート痕16に対応する位置(図中AG位置)において比較的高く、互いに隣接するゲート痕16とゲート痕16の中間の位置(図中AI位置)において比較的低くなるように設けられている。特に、本実施形態においては、ゲート痕16とゲート痕16の中間の位置(図中AI位置)においてリブ高さが実質的にゼロとなって、リブ15,15が周方向に断続的に存在するようになっているとともに、それぞれのリブ15で、リブ高さの変化がAG位置が最も高くAI位置に向けてその高さが徐々に減少するような、半径方向から見て円弧状となるような高さとされている。なお、リブ15の厚みは一定に、好ましくは、第2ウェブ142の歯車中心軸方向の厚みと同程度あるいはより厚くされて形成されている。
【0020】
樹脂歯車1は、射出成形に適した熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂やポリアミド樹脂などの汎用合成樹脂や、ポリアセタール樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどによって成形される。これら樹脂材料に充填材や補強繊維を練りこんでも良い。
【0021】
樹脂歯車1は、歯車の外形形状に合致したキャビティを形成可能な金型を用いて、キャビティに溶融状態の樹脂を射出する樹脂の射出成形により形成される。樹脂の射出は、成形品のゲート痕16に対応する位置に設けられた複数のピンゲートを通じて行われる。
【0022】
本発明の作用効果について説明する。本発明においては、周方向に高さ変化を有するリブが、ゲート痕よりもウェブ外周側に円周方向に沿って配置されていることにより、以下のような効果を発揮する。図3は樹脂歯車1の射出成形を行う際の、ゲートから射出された溶融樹脂のキャビティ内の流れを示す模式図であって、図の上側半分が、周方向でゲートに対応する位置(AG位置)における図であり、図の下側半分が、周方向でゲートとゲートの中間に対応する位置(AI位置)における図である。なお、図中で頭にCを付した符号は、樹脂成形品においてそれぞれの番号が付された部分を形成するキャビティ部分であることを意味している。
【0023】
ピンゲートから射出された樹脂は、ウェブを形成するキャビティ内で広がりながら、外周方向及び内周方向に向かって流れていくが、外周方向に向かう流れでは、第1ウェブ部分C141、連結部分C143、第2ウェブ部分C142と流れて、リム部分C11及び歯部C12へと至る。その際、連結部分C143に連続するようにリブ部分C15が設けられている周方向位置(例えばAG位置)においては、リブ部分C15の側にも樹脂が流れ込んで、その分だけ、樹脂が第2ウェブ部分C142やリム部分C11、歯部C12に流れ込むのが遅くなる。一方、図3の下側に示したようなリブ部分C15が設けられていない周方向位置(AI位置)においては、樹脂は、流れが分かれることもなく、第1ウェブ部分C141、連結部分C143、第2ウェブ部分C142と流れて、リム部分C11及び歯部C12へと至る。その結果、リブ部分C15を設けた周方向位置においては、樹脂がリブ部分C15に流れ込む分だけ、ゲートからリム部分C11に樹脂が至る速度を遅らせることができる。そして、この遅延効果はリブの高さが高いほど大きく、リブ高さが低いほど、遅延効果は小さいものとなる。
【0024】
本発明においては、成形品1におけるリブ15(即ちキャビティにおけるリブ部分C15)が、ゲートに対応する周方向位置(AG位置)で高く、隣接するゲートとゲートの間の周方向位置(AI位置)で低くされているため、AG位置ではリム部分C11に樹脂が充填されるタイミングが遅れ、AI位置ではリム部分C11に樹脂が充填されるタイミングの遅れが小さくなるので、従来技術において存在していたゲートからリム部分に樹脂が至る時間差を補償して、リム部分C11に樹脂が充填されるタイミングを周方向にわたって均質化することができる。
【0025】
その結果、本発明の樹脂歯車においては、その射出成形工程において、外周部や歯部に対する樹脂の充填時間差を小さくすることができ、樹脂の収縮率の差が減少されて、従来の樹脂歯車で生じたような花びら状の真円度の劣化傾向を補償し、樹脂歯車の精度、特にその真円度を高めることができる。
【0026】
本発明は、上記効果を得るために、リブ15の高さを、AG位置で高く、AI位置で低くしたことを特徴とするが、その限りにおいて、リブの具体的形状には種々のバリエーションを設けることができる。図4には、本発明におけるリブ15の形状例を示す。図4においては、歯車の半径方向から見たリブ形状を示し、図中央部がAG位置(ゲートに対応した位置)で、図の両側がAI位置(ゲートとゲートの中間の周方向位置)となるように、リブを展開した形状を示している。また、リブ15がウェブ14に対して立設する基礎となるウェブの表面を点線で示している。図4(a)は上記第1実施形態において示したリブの形状を示しており、リブ15はAG位置で高さが最大となり、AI位置で高さが実質的にゼロとなるように、周方向に断続的に設けられている。また、リブ高さはAG位置からAI位置に向けて単調かつ連続的(徐々に)に減少するようにされており、リブの頂部が半径方向から見て樹脂成形品の外側に向けて凸となった円弧状をなすようにされている。
【0027】
図4(b)には、リブの他の形状を示し、本形態においては、リブはAI位置でも高さがゼロになることなく、歯車全周にわたって円環状に設けられている。リブの高さはAG位置で最大となり、AI位置で最小となるように、周方向に沿って連続的かつ直線的に変化するようにされている。本形態のように、周方向に連続したリブであっても、AG位置とAI位置とで高さが異なるように(AG位置で高く)されていれば、樹脂の射出充填工程において、リブ部に樹脂が流れ込んで、樹脂がリム部C11に到達するタイミングが揃うように補償できる。
【0028】
図4(c)には、リブのさらに他の形状を示し、本形態においては、リブはAG位置付近において一定の高さで設けられ、AI位置付近では、その高さがゼロとなるように、断続的に設けられている。本形態のように、リブ高さが急変するようなリブであっても、AG位置とAI位置とでリブ高さが異なるように(AG位置で高く)されていれば、AG位置近傍において樹脂がリム部分C11に達するタイミングを遅らせることができ、樹脂がリム部C11に到達するタイミングが揃う方向に補償できる。
なお、樹脂がリム部C11に到達するタイミングがより均一に揃うように補償するためには、図4(a)や図4(b)に示したリブ形状のように、AG位置からAI位置にかけてリブ高さが連続的に、徐々に変化するような形状とすることが、より好ましい。
【0029】
また、本発明は、成形金型のキャビティのリム部C11や歯部C12に樹脂が充填されるタイミングを均一にそろえることにより、樹脂歯車やプーリーの外周部の真円度を高めようとするものであるが、そのためには、ゲート痕16,16(即ち射出工程においてはゲート位置)が、ボス13やリム11と同心円をなす円周上に等間隔で配置されており、リブ15、15も、ボス13やリム11と同心円をなす円周上に等間隔で同形状で設けられていることがより好ましい。そのようにすれば、真円度の高い樹脂成形品の設計及び製作がよりたやすく行える。
【0030】
また、第1の実施形態の樹脂歯車1において説明したように、ウェブ14は、内周側部分である第1ウェブ141と外周側部分である第2ウェブ142とに同心円状に分割されて構成され、第1ウェブ141と第2ウェブ142とは、歯車回転軸方向に互いにオフセットして設けられ、その境界部分(即ち連結部143)にリブ15、15が立設されていることが、真円度を高める上で、より好ましい。このように、第1ウェブ141と第2ウェブ142とが段差状になった部分にリブ15,15が設けられれば、キャビティのウェブ部分を流れる溶融樹脂が、リブ部分C15に効果的に流れ込むようになり、リブ部分C15によるタイミング調整効果がより効果的に発揮されて、真円度を高める上で、より好ましい。
【0031】
なお、第1の実施形態(図1、図2)においては、連結部143と第2ウェブ142が接続する部分からリブ15が立設された形態を説明したが、第1ウェブ141と連結部143が接続する部分からリブ15が立設された形態(即ち第1実施形態と比べてウェブの反対側の面から立設された形態)であっても、第1ウェブ141と第2ウェブがオフセットして段違いに設けられていれば、樹脂がリブ部C15に流れ込むことが促進されて、真円度を高める上で、同様に好ましい。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同一の番号を付すとともにその詳細な説明を省略する。
【0033】
図5及び図6には、本発明の第2の実施形態である樹脂歯車を示す。本実施形態においては、ウェブ14がリブ15の内周側も外周側も歯車回転軸方向にオフセットすることなく同一面となるように構成されている点、および、リブ15,15がウェブの両側に設けられている点で、第1実施形態と異なるが、他の点においては同様である。本実施形態のように、ウェブの内周側と外周側で段差が設けられていなくても、ゲートから射出された樹脂は、リブ15、15を形成する空間に流れ込んで、その分リム11を形成する空間に流れ込むタイミングが遅延されて、第1実施形態と同じく、リム部C11に樹脂が流れ込んで充填されるタイミングを均一化し、成形品の真円度を向上させる効果が得られる。なお、第1実施形態のように、ウェブ14がリブ15、15を設けた部分でオフセットされて段差状にされていたほうが、リブ15の部分によるタイミング遅延効果がより確実に発揮されてより好ましいことは前述したとおりである。
【0034】
また、ウェブ14にリブ15を設ける面は、ゲート痕16と同じ側であってもよいし、逆側でも良いし、本実施形態のように両側に設けてもよい。
【0035】
図7には、本発明のさらに他の実施形態を示すが、この実施形態においてはゲート痕16,16が6つ存在するとともに、歯車径方向と直交する方向に延在する略直線状の6つのリブ15’、15’がゲート痕16,16を取り囲むように設けられている。即ち、本発明において、円周方向に沿って立設されるリブは、図1、図2の第1実施形態や、図5、図6の第2実施形態において示されたような、歯車の正面図において、円弧状に湾曲して周方向に配置されたリブに限定されるものではなく、図7の本実施形態に示すように、略直線状のリブ15’、15’が、全体として一連の円状(本実施形態においては六角形状)となるように円周方向に沿って配置されたようなリブの形態をも含むものである。
【0036】
また、上記実施形態の説明においては、樹脂歯車を例にしてその実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、歯部を有しない樹脂プーリーにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、樹脂プーリーや樹脂歯車を射出成形によって成形する際に、成形品外周部に樹脂が到達するタイミングを均一化することができ、得られる樹脂成形品の精度を向上させることができる。得られる樹脂成形品は歯車伝達機構やベルト伝達機構の構成部品などとして使用することができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0038】
1 樹脂歯車
11 リム
12 歯部
13 ボス
14 ウェブ
15 リブ
16 ゲート痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の射出成形により一体に成形され、円環状の外周部と回転軸となる軸部とがウェブによって連結された樹脂成形品であって、
ウェブには、複数のゲート痕が軸部を囲むように円状に配置され、
ウェブのゲート痕よりも外周側には、円周方向に沿ってリブが立設され、
前記リブは、ゲート痕に対応する周方向位置におけるリブ高さが、ゲート痕とゲート痕の間に対応する周方向位置におけるリブ高さよりも高く形成されたことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
複数のゲート痕及びリブが軸部及び外周部と同心円状に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
リブを設けた径方向位置を境界として、ウェブが内周側部分と外周側部分に分割されて、回転軸方向に互いにオフセットするように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
リブが周方向に断続的に立設されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
リブ高さが周方向に連続的に変化することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−31470(P2011−31470A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179498(P2009−179498)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】