説明

樹脂材の射出成形方法および射出成形装置

【課題】射出成形されたレンズ部2を第一金型6から脱型した場合に熱収縮により発生する該レンズ部2の歪を補正する。
【解決手段】互いに型合わせされる第一、第二の金型6、7を用いてレンズ部2とハウジング3をそれぞれ射出成形した後、レンズ部2とハウジング3とを突き当てて一体化する前のハウジング3に成膜を施す工程と並行して、第二金型7に残るレンズ部2の第一金型6脱型面に、可動金型8の先端型面8aを押し当てて歪を補正するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形樹脂材を金型から脱型したときに発生する収縮による歪を補正するための樹脂材の射出成形方法および射出成形装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂材であるレンズ部と光源が組込まれるハウジングとを射出成形して一体化してサイドターンランプのようなランプ本体を製造する場合、レンズ部とハウジングとをそれぞれ同時に一次射出した後、レンズ部とハウジングとを互いに突き合わせ、しかる後、両者の突き合わせ部に樹脂材を二次射出して一体化するようにしたものが提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−46141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところがこのようなものにおいて、前記一次射出した樹脂材を二次射出する際に、一方の型面が樹脂材から脱型されることになるが、このとき、該脱型された樹脂材は、温度低下と共に脱型された面がフリーな状態になるため、脱型された面が収縮して歪が発生しやすいという問題がある。そして斯かる歪は、脱型していない側の型面から樹脂材を型離れする方向に作用し、これによって樹脂材の型面から脱型していない側の面に、型面から型離れした面が形成されることになり、これは射出成形される樹脂材が大きくなるほど顕著になり、そして、該型離れした面は、型離れしていない面に比して面荒れしやすく、このため高精度を要求される製品を製造することが難しいだけでなく、均一な面を製造することが難しいうえに強度的にも問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて樹脂材を射出成形するにあたり、樹脂材が第二金型に残る状態で第一金型を脱型した後、該樹脂材を第二金型から脱型するまでのあいだに、樹脂材の第一金型脱型面から圧力を付与する工程が設けられていることを特徴とする樹脂材の射出成形方法である。
請求項2の発明は、圧力付与工程は、第一金型側に設けられる型面を脱型面に押し当てて行うものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂材の射出成形方法である。
請求項3の発明は、圧力付与工程は、第一金型側に設けられる型面を、脱型面に対して射出スペースが形成される状態で型合わせし、該スペースに樹脂材を射出することに伴う射出圧で行うものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂材の射出成形方法である。
請求項4の発明は、互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて第一、第二の樹脂材をそれぞれ射出成形した後、第二樹脂材に成膜を施し、しかる後、第一、第二樹脂材同士を突き当て、該突き当て部に樹脂材を二次射出することで一体化するように構成するにあたり、第一樹脂材が第二金型に残り、第二樹脂材が第一金型に残る状態で脱型した後の第二樹脂材の成膜工程のあいだに、第一樹脂材の第一金型脱型面から圧力を付与する工程が設けられていることを特徴とする樹脂材の射出成形方法である。
請求項5の発明は、樹脂材を互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて射出成形する射出成形装置であって、第二金型は、第一金型を脱型したとき樹脂材が残るものであり、第一金型側には、前記樹脂材の第一金型からの脱型面に圧力を付与する圧力付与手段が設けられていることを特徴とする樹脂材の射出成形装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1、4、5の発明とすることにより、射出成形された樹脂材が、第二金型に残る状態で第一金型から脱型されることによって発生する歪の補正がなされることになって樹脂材の精度が向上するだけでなく、表面の均一化、強度アップも達成できることになる。
請求項2又は3の発明とすることにより、歪補正、表面の均一化、強度アップを簡単に行うことができる。
さらに請求項4の発明とすることにより、圧力付与工程が、成膜工程と並行して実行できることになって作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1は本発明を実施することで製造された燈体であって、該燈体1は、透光性のある樹脂材で成形されたレンズ部2と非透光性の樹脂材で成形されたハウジング3とを用いて構成されおり、そして該ハウジング3には光源(例えば電球(バルブ)やLED)4、端子5を組込んで構成されている。そして斯かる燈体1は、次のようにした一連状の射出工程によって形成される。
【0007】
図2にまず第一の実施の形態を示すが、このものにおいて、6、7は互いに対向する面に対して面に垂直な方向と面に平行な方向とに互いに相対移動する第一、第二の金型(ベース金型)であって、本実施の形態では第一金型6に、レンズ部2の内面を形成するための凸状の型面6aと、ハウジング3の外面を形成するための凹状の型面6bとが形成されるが、さらに本実施の形態では第一金型6に、これら型面6a、6bに挟まれる位置に位置して可動金型8が形成されているが、該可動金型8は、第二金型7に対向する方向に出没移動するように設定され、その出没方向先端に形成される型面8aは、前記レンズ部2の凹面と同形状になっている。
【0008】
一方、第二金型7には、前記型面6a、6bにそれぞれ対向する状態でレンズ部2の外面を形成するための凹状の型面7aとハウジング3の内面を形成するための凸状の型面7bが形成されるが、さらにこれら型面7a、7bに挟まれる位置であって、前記可動金型8に対向する位置に成膜装置(真空蒸着やスパッタリング等の通常知られた成膜装置を用いることができる)9を内装した凹状の型面7cが形成されている。
因みに、第一、第二金型6、7には、一次成形されたレンズ部2とハウジング部3とを突き合わせた状態でこれらを一体化するため樹脂材10を二次射出する射出スペースを形成する型面6d、7dが形成されている。
【0009】
次に、燈体1を製造するための工程を説明する。まず、レンズ部2、ハウジング3を一次射出すべく型面6aと7a、6bと7bとがそれぞれ対向する状態で型合わせをし、そして各樹脂材を射出してレンズ部2、ハウジング3とを一次射出する(図2(A)参照)。このとき可動金型8は、型面8aが対向する成膜装置9に干渉しない(邪魔にならない)よう可動にしたのであって、干渉しない場合には可動金型にする必要は必ずしもない。そしてこの状態で脱型をすると、型面6b側にハウジング3が残り、型面7a側にレンズ部2が残るように設定されている。
【0010】
しかる後、本実施の形態ではハウジング3の内面に反射膜11を成膜することになるが、これは必要な型移動に基づき、成膜装置9を内装した型面7cが型面6bに対向する状態で型合わせされ、成膜11が施されることになるが、この型合わせ成膜状態において、可動金型8とレンズ部2とが対向することになり、この状態で可動金型8を突出移動させて型面8aをレンズ部2の内面に押し当て当接することになり(図2(B)参照)、これによってレンズ部2が歪んでいた場合の補正をすることができる。この補正には、圧力を加えてより強制的な補正をしても良いことは勿論である。
【0011】
このように歪み補正と成膜をした後、型移動に基づき型面6bと7aとが対向すべく型合わせをし、該型合わせで形成されたスペースに樹脂材10を二次射出することで燈体1が一体化されて製造されることになる(図2(C)参照)。
【0012】
叙述のごとく構成された本発明の実施の形態において、レンズ部2は、第二金型7が型離れした後、可動金型8が嵌合型合わせされることになって歪み補正を受けることになり、この結果、レンズ部2の外面が型面7bから離間してしまうことが回避され、レンズ部2を精度よく製造できるばかりでなく、レンズ部外面2を均一なものにできることになる。
【0013】
しかもこのものでは、可動金型8の型合わせ工程が、ハウジング3の成膜工程と同時的にできるため、成膜成形する場合において、時間的に長くなってしまうことを回避できる。
【0014】
尚、本発明は前記実施の形態のように、型面による歪み補正だけでなく、樹脂材の射出圧によっても歪み補正ができる。つまり、図3に示す第二の実施の形態では、レンズ部2について、前記第二金型7から脱型した後の型合わせで第一金型6の型面6eが突き合わされることになるが、この突き合わせで型面6eとレンズ部2の内面とのあいだに射出スペースXが形成されたものとし、そしてこのスペースXに樹脂材12を射出した場合に、レンズ部2は該樹脂材12の射出圧を受けて歪み補正がなされることになり、このようにしても本発明を実施することができる。
【0015】
さらに図4に示すように、射出圧と型の押し当ての両者によっても歪み補正ができる。つまりこのものでは、金型6の一部の型面6fはレンズ部2に当接し、残りの型面6gはレンズ部2から離間して射出スペースYが形成され、この射出スペースYに樹脂材13を射出するものであり、このものでは、型面6fによる型押し力と射出圧との両者で歪み補正をすることができる。そしてこのものでは、樹脂材13をレンズ部2の樹脂材と同じにしても異ならしめてもどちらでもよいが、異ならしめた場合、色彩や屈折率を異ならしめることで、二色のものあるいは屈折率が異なったものにできることになる。
【0016】
さらに図5に示す第四の実施の形態のように、金型6による圧力付与によってレンズ部2を構成する樹脂材14の一部を強制的に押し流すようにしてレンズ部2を形成するようにしても本発明を実施することができる。つまりこのものは、金型6を、型合わせする前の段階で樹脂材14に当接する部分6hと、型合わせしても樹脂材14に当接せず、スペースZを形成する部分6iと設けられたものとし、そして当接部分6hで樹脂材14の一部を押しやって前記スペースZに樹脂材14aを充填するようにしてもよく、このようにした場合、歪補正に加えて、樹脂材14が強制的に流れることになって強度アップも図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】燈体の断面図である。
【図2】燈体を製造するための工程を示す工程図である。
【図3】第二の実施の形態を示す要部の拡大工程図である。
【図4】第三の実施の形態を示す要部の拡大工程図である。
【図5】第四の実施の形態を示す要部の拡大工程図である。
【符号の説明】
【0018】
1 燈体
2 レンズ部
3 ハウジング
6 第一金型
7 第二金型
8 可動金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて樹脂材を射出成形するにあたり、樹脂材が第二金型に残る状態で第一金型を脱型した後、該樹脂材を第二金型から脱型するまでのあいだに、樹脂材の第一金型脱型面から圧力を付与する工程が設けられていることを特徴とする樹脂材の射出成形方法。
【請求項2】
圧力付与工程は、第一金型側に設けられる型面を脱型面に押し当てて行うものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂材の射出成形方法。
【請求項3】
圧力付与工程は、第一金型側に設けられる型面を、脱型面に対して射出スペースが形成される状態で型合わせし、該スペースに樹脂材を射出することに伴う射出圧で行うものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂材の射出成形方法。
【請求項4】
互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて第一、第二の樹脂材をそれぞれ射出成形した後、第二樹脂材に成膜を施し、しかる後、第一、第二樹脂材同士を突き当て、該突き当て部に樹脂材を二次射出することで一体化するように構成するにあたり、第一樹脂材が第二金型に残り、第二樹脂材が第一金型に残る状態で脱型した後の第二樹脂材の成膜工程のあいだに、第一樹脂材の第一金型脱型面から圧力を付与する工程が設けられていることを特徴とする樹脂材の射出成形方法。
【請求項5】
樹脂材を互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて射出成形する射出成形装置であって、第二金型は、第一金型を脱型したとき樹脂材が残るものであり、第一金型側には、前記樹脂材の第一金型からの脱型面に圧力を付与する圧力付与手段が設けられていることを特徴とする樹脂材の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137016(P2009−137016A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312202(P2007−312202)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】