説明

樹脂組成物および半導体装置

【課題】 本発明は、接着力、厚さ精度、高さ均一性に優れ、かつ、段差埋め込み性に優れた樹脂組成物および該樹脂組成物を用いて作製した平坦性、機械強度に優れる半導体装置を提供することにある。
【解決手段】 (A)環状オレフィンの重合体またはその水素添加物および(B)下記一般式(1)で示される構造を有する化合物を含むことを特徴とする樹脂組成物、および該該樹脂組成物を用いて作製したことを特徴とする半導体装置である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置内において、半導体チップの回路を保護するパッシベーション層や、そのパッシベーション層にかかる応力を緩和するためのバッファコート、チップ上に多層回路を形成するための層間絶縁膜、また、ウェハーレベルパッケージの接続部の再配線層に、樹脂組成物を塗布・加工した有機層が一般的に形成されている。
さらに、受光素子や、微小電気機械システム(MEMS)素子、フラットパネルディスプレイなどの表示体などでも、中空構造の隔壁形成や半導体装置の平坦化のために、半導体チップなどの素子基板上に有機膜が形成されている。
そのような有機層には、一般的に、高い信頼性を付与させるための、高い耐熱性や高い電気特性などが要求され、これまではポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの芳香族系樹脂が一般的に使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。さらに、近年この用途に環状オレフィン系樹脂の適応が検討されている。特にノルボルネン構造を有するモノマーの付加重合体を使用したもの(例えば、特許文献2参照)は、剛直な分子構造に由来する高い耐熱性とともに、低い誘電率や低い吸水率などの半導体用有機層として非常に有用な特長も併せ持っている。
これら有機層に要求される一つの大きな特性が、有機層が半導体チップなどの素子基板上の段差形状を埋め込み、その上面を平坦化できることである。例えば、半導体チップ上に塗布した樹脂組成物をパターニングすることで半導体チップ周囲に隔壁を作製し、その上にガラスなどをマウントすることにより中空のパッケージ構造が得られることが知られている。しかし、バンプなどの突起をもつ半導体チップ上に樹脂組成物を塗布した際、形成した隔壁表面が平坦にならないとその後のガラスマウント時に隔壁とガラスとの間に空隙ができてしまい、パッケージ不良を招く恐れがある。また、上記層間絶縁膜においても、膜上の平坦性が不足すると、その段差部分で膜上に形成された配線層の断線などを引き起こす恐れがある。さらに、薄膜トランジスター(TFT)構造を有する液晶ディスプレイなどの表示体においては、信号配線やトランジスター部の上に有機膜による平坦化層を形成することで、開口率を向上させ、表示体の輝度や画質、消費電力などを大きく改善できることが知られている(例えば、非特許文献参照)。
一般的に上記の環状オレフィン樹脂は、硬化時の収縮も小さいため樹脂組成物を塗布後の平坦性が期待される。実際、回路配線上にアルカリ可溶性環状オレフィン樹脂層を形成した際、優れた平坦性を発現した例が確認されている(例えば、特許文献3、4参照)。
しかし、例えば上記中空パッケージ用の隔壁などへの適応時には、中空構造として充分な容積が必要であり、障壁が高くなるために、十分な埋め込み性が確保できず、加工性が低下する恐れがあった。また、半導体チップの回路を保護するパッシベーション層や、そのパッシベーション層にかかる応力を緩和するためのバッファコート、半導体チップ上に多層回路を形成するための層間絶縁膜、また、ウェハーレベルパッケージの接続部の再配線層においても、下層の段差埋め込み性に対する要求があった。
【非特許文献1】堀浩雄他「カラー液晶ディスプレイ」共立出版、121〜122ページ、152〜153ページ
【特許文献1】特開2001−194796号公報
【特許文献2】特開2005−136207号公報
【特許文献3】特開2006−98984号公報
【特許文献4】特開2006−106214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、接着力、厚さ精度、高さ均一性に優れ、かつ、段差埋め込み性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的は、下記[1]〜[7]に記載の本発明により達成される。
[1] (A)環状オレフィンの重合体またはその水素添加物および(B)下記一般式(1)で示される構造を有する化合物を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R、Rは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R〜R10はそれぞれ独立して水素原子あるいは炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシル基であり、X、Y、Zは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R11は直結あるいは炭素数1〜6の炭化水素基または酸素を含んでいる炭素数1〜12の有機基のいずれかであり、nは0〜6である。)
[2] 前記一般式(1)で示される化合物(B)のYが、直結、−COO−、−CONH−のいずれかであることを特徴とする前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)が、その構造中にカチオン重合性の官能基を有することを特徴とする、前記[1]または[2]項に記載の樹脂組成物。
[4] 前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)が、1種または複数のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体の付加重合体であることを特徴とする前記[1]〜[3]項のいずれか1項記載の樹脂組成物。
[5] さらに、酸を発生する化合物(C)を有することを特徴とする、前記[1]〜[4]項のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6] 前記[1]〜[5]項のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製したことを特徴とする半導体装置。
[7] 前記[1]〜[5]項のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製したことを特徴とするウエハーレベルの半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着力、厚さ精度、高さ均一性に優れ、かつ、段差埋め込み性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)および下記一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)を含むことを特徴とする樹脂組成物であり、接着力、厚さ精度、高さ均一性かつ、段差埋め込み性に優れる樹脂組成物を提供するものである。
以下、本発明の樹脂組成物、および半導体装置について、詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いる環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)は、特に制限されるものではないが、シクロヘキセン系、シクロオクテン系などの単環体オレフィン系モノマーの重合体、ノルボルネン系、ノルボルナジエン系、ジシクロペンタジエン系、ジヒドロジシクロペンタジエン系、テトラシクロドデセン系、トリシクロペンタジエン系、ジヒドロトリシクロペンタジエン系、テトラシクロペンタジエン系、ジヒドロテトラシクロペンタジエン系などの多環体オレフィン系モノマーの重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐湿性や耐薬品性に優れる多環体オレフィンモノマーの重合体が好ましく、その中でも、硬化後の樹脂組成物の耐熱性や機械強度の観点からノルボルネン系モノマーが特に好ましい。
【0010】
本発明に用いる環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)のカチオン重合性の官能基は、特に制限されるものではなく、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシシリル基などが挙げられるが、光解像性や硬化後の機械強度の観点より、エポキシ基、オキセタニル基が好ましい。
このようなカチオン重合性官能基を有するモノマーは、特に制限されるものではないが、例えば、エポキシ基を有するものとしては、5−[(2,3−エポキシプロポキシ)メ
チル]−2−ノルボルネンなど、オキセタニル基を有するものとしては5−[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]−2−ノルボルネンなど、ビニルエーテル基
を有するものとしては、5−ビニロキシメチル−2−ノルボルネンなど、アルケニル基を有するものとしては、5−アリル−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、8−エチリデンテトラシクロ[4
.4.0.12,5.17,12]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.
0.12,5.17,101,6]ドデック−3−エンなど、アルキニル基を有するものとしては
、5−エチニル−2−ノルボルネンなど、アルコキシシリル基を有するものとしては、ジメチル(5−ノルボルネン−2−イル)メトキシシラン、5−トリメトキシシリル−2−ノルボルネン、5−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(2−トリエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシシリルプロピル)−2−ノルボルネン、5−(4−トリメトキシシリルブチル)−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0011】
前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)は、上記のカチオン重合性官能基を有する環状オレフィン系モノマーの単量体だけではなく、カチオン重合性官能基を有する環状オレフィン系モノマーと他のモノマーとの重合体でもよい。光解像性や硬化後の機械強度の観点から、光反応性官能基を有する環状オレフィン系モノマーの重合割合は、20〜80mol%が好ましく、30〜70mol%が特に好ましい。
【0012】
また、前記他のモノマーは、特に制限されるものではないが、例えば、アルキル基を有するものとして、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−
プロピル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ペンチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−ヘプチル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−ノニル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなど、シリル基を有するものとしては、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジメチルビス(2−(5−ノルボルネン−2−イル)エチル)トリシロキサン、5ートリメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンなど、アリール基を有するものとしては、5−フェニルー2−ノルボルネン、5−ナフチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニル−2−ノルボルネンなど、アラルキル基を有するものとしては、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニルメチル−2−ノルボルネン、5−(2−ペンタフルオロフェニルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−ペンタフルオロフェニルプロピル)−2−ノルボルネンなど、ヒドロキシル基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものとしては、5−ノルボルネン−2−メタノール、及びこのアルキルエーテル、酢酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、プロピオン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、酪酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、吉草酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプロン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ラウリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ステアリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、オレイン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、リノレン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸i−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリエチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸イソボルニルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシエチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸メチルエステル、ケイ皮酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチルエチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルn−ブチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルt−ブチルカルボネート、5−メトキシ−2−ノルボルネン、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−エチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n―プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−デシルエステルなど、またテトラシクロ環から成るものとして、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ド
デック−3−エン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]
ドデック−3−エン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−i−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4
.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(2−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(1−メチルプロポ
キシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−
t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン
、8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデッ
ク−3−エン、8−(4’−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[
4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−テトラヒドロフラニロキシカ
ルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−テトラヒドロ
ピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン
、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデ
ック−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシク
ロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−i−プロポキシ
カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル
−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3
−エン、8−メチル−8−(2−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.
0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(1−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−
8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−
エン、8−メチル−8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(4’−t−ブチルシクロヘキシロキ
シ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メ
チル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−
3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4
.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8
−アセトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン
、8,9−ジ(メトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデッ
ク−3−エン、8,9−ジ(エトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−プロポキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(i−プロポキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−ブト
キシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,
9−ジ(t−ブトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック
−3−エン、8,9−ジ(シクロへキシロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.
2,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(フェノキシロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(テトラヒドロフ
ラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8
,9−ジ(テトラヒドロピラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−
エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック
−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン
、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.01,6]ドデック−3−エンなどが挙げられる。
【0013】
前記環状オレフィン系モノマーの重合形態は、特に制限されるものではなく、ランダム重合、ブロック重合などの公知の形態を適用することができ、また、重合方法は、付加重合法や開環重合法などが挙げられる。具体的に重合体としては、1種または複数のノルボルネン系化合物などのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体モノマ−の(共)重合体、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体モノマ−とα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマ−との共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが挙げられるが、樹脂の耐熱性の観点から、1種または複数のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体の付加重合体が好ましい。
【0014】
本発明に用いる環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)の重量平均分子量は、特に制限されるわけではないが、溶剤に対する溶解性や感光性樹脂組成物の流動性の観点から5,000〜500,000が好ましく、7,000〜200,000が特に好
ましい。重量平均分子量は、標準ポリノルボルネンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。(ASTMDS3635−91準拠)
本発明に用いる環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)の重量平均分子量は、重合開始剤とモノマーの比を変えたり、重合時間を変えたりすることにより制御することができる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)を含有することにより、硬化後に充分な機械強度をもたせるだけでなく、半導体装置を作製した場合に、充分な平坦性をもたせることができる。
【0016】
【化2】

(式中、R、Rは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R〜R10はそれぞれ独立して水素原子あるいは炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシル基であり、X、Y、Zは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R11は直結あるいは炭素数1〜6の炭化水素基または酸素を含んでいる炭素数1〜12の有機基のいずれかであり、nは0〜6である。)
【0017】
一般式(1)中の、R、Rは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜12の炭化水素基または酸素を含んだ炭素数1〜12の有機基が好ましい。R〜R10はそれぞれ独立して水素原子あるいは炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシル基である。R11は直結あるいは炭素数1〜6の炭化水素基または酸素を含んでいる炭素数1〜12の有機基のいずれかであり、好ましくは、直結または炭素数1〜4の炭化水素基である。X、Y、Zは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R11は炭素数1〜6の炭化水素基または酸素を含んだ炭素数1〜12の有機基であり、nは0〜6である。このような構成とすることにより、硬化後に充分な機械強度をもたせるだけでなく、半導体装置を作製した場合に、充分な平坦性をもたせることができる。
【0018】
本発明に用いる上記一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)は、特に制限されるものではないが、例えば、有機基であるYは、−C(CH−、−CH−、直結、−COO−、−CONH−などが挙げられ、その中でも直結、−COO−、−CONH−のいずれかであることが好ましい。有機基であるX、Zは、−CO−、−C(CH−、−CH−、直結、−COO−、−CONH−などが挙げられ、その中でも直結、−CO−、−COO−、−CONH−のいずれかであり、同一であることが好ましい。有機基であるR、Rは、エポキシ基や、炭素数1〜12の炭化水素基または酸素を含んだ炭素数1〜12の有機基が好ましい。さらに好ましい一般式(1)のR、Rは、下記式(2)の構造を有するものである。
これらの一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)は、単独でも2種以上混合して用いても良い。これらの構造の化合物を用いることにより、半導体装置を作製した場合に、充分な平坦性と、樹脂ワニスとの相溶性、機械強度に優れる点から好ましい。
【0019】
【化3】

(式中、R12は、アルキル基である。)
【0020】
上記一般式(1)のR、Rに式(2)の構造を有する化合物としては、例えば、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−シクロヘキシロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシロキシ)メチル]オキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラック型オキセタンなどを挙げることができる。
その中でも、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラック型オキセタンが好ましく、4,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル、イソフタル酸ビス[(3−エチル−3−オキセタルニル)メチル]エステルなどが特に好ましい。
本発明に用いる一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、溶剤との相溶性の観点から、前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、特に5〜10重量部が好ましい。
【0021】
本発明に用いる酸を発生する化合物(C)は、光照射や熱によりブレンステッド酸またはルイス酸を発生するものであれば特に制限されるものではなく、オニウム塩、ハロゲン化合物、硫酸塩やそれらの混合物などが挙げられる。例えばオニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、リン酸塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩などが挙げられ、前記のオニウム塩とカウンターアニオンを作ることができる化合物である限り、カウンターアニオンの制限はない。カウンターアニオンの例としては、ホウ酸、アルソニウム酸、リン酸、アンチモニック酸、硫酸塩、カルボン酸とそれらのハロゲン置換体などが挙げられる。
【0022】
前記オニウム塩の酸発生剤としては、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロアルセナート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロフォスフェート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロサルフェート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロアンチモネート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロアルセナート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロフォスフェート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロスルフォネート、トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロスルフォネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムトリフルオロフォスフォネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムトリフルオロスルフォネート、トリス(4
−メチルフェニル)スルフォニウムトリフルオロボレート、4,4’,4“−トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニウムトリフレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロアルセネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロスルフォネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メトキシフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリス(4−メトキシフェニル)スルフォニウムトリフルオロスルフォネート、トリフェニルスルフォニウムジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルヨードニウムトリフルオロスルフォネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムトリフルオロサルフォネート、4,4‘−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、4,4‘−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムトリフルオロサルフォネート、(4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられ、これらを単独で使用しても混合して使用しても良い。
【0023】
ハロゲンを含有している酸発生剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)トリアジン、2−アリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、α,β,α−トリブロモメチルフェニルスルフォン、α、α―2,3,5,6−ヘキサクロロキシレン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロキシレン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられ、これらを単独で使用しても混合して使用しても良い。
【0024】
スルフォネート系の酸発生剤としては、具体的に2−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2−ニトロベンジルメタンスルフォネート、2−ニトロベンジルエタンスルフォネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルフォネート、1,2,3−トリス(メタンスルフォニルロキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(エタンスルフォニルロキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(プロパンスルフォニルロキシ)ベンゼンなどが挙げられ、これらを単独で使用しても混合して使用しても良い。
【0025】
前述のような酸発生剤の中でも、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、4,4’,4”−トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルフォニウムジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート単体またはそれらの混合物の中から選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
酸を発生する化合物(C)の含有量は、特に限定されないが、前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)と酸を発生する化合物(C)の作用により硬化反応可能な化合物の合計100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、特に0.5〜10重量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に光解像後の開口形状、および感度に優れる。
酸を発生する化合物(C)の作用により硬化反応可能な化合物の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、1,000以下であることが好ましく、特に100〜600であることが好ましい。重量平均分子量を前記範囲とすることで、特に熱時の流動性に優れる。
酸を発生する化合物(C)の作用により硬化反応可能な化合物の配合量は、特に制限されるものではないが、光反応性官能基を有する環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、10〜40重量部が特に好ましい。
【0027】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は、前述の各成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用することが好ましい。
前記溶剤としては、樹脂や添加物のキャリアとして働き、基板や半導体素子の塗布後や硬化過程で除去される非反応性溶剤、樹脂組成物に含まれる樹脂と相溶性のある反応基を含んでいる反応性溶剤が挙げられる。
非反応性溶剤としては、特に制限されるものではないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどのアルカン、シクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族類が挙げられる。また、必要に応じて、ジエチルエーテル類、テトラヒドロフラン、アニソール、アセテート類、エステル類、ラクトン類、ケトン類、アミド類などを用いても良い。
反応性溶剤としては、特に制限されるものではないが、シクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイドなどのシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物、ビス(4−ビニルフェニル)メタンなどの芳香族類が挙げられる
これらの中でも、樹脂組成物の基板や半導体素子に対する塗布性の観点から、メシチレン、デカヒドロナフタレン、2−ヘプタノンが好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、固形分濃度が5〜60重量%であることが好ましく、30〜55重量%が特に好ましく、粘度は10〜25,000mPa・sが好ましく、100〜3,000mPa・sが特に好ましい。上記範囲とすることで、基板や半導体素子に対する塗布性を確保することが可能となる。
【0029】
本発明を用いた半導体装置の例として、表面平坦性が必要となるフラットパネルディスプレイや、特に突起を含む半導体チップ上に形成する中空構造の隔壁などを挙げることができる。具体的には、例えば、リードフレームと半導体素子、ガラスなどの基板と半導体素子、半導体素子と半導体素子、半導体ウエハーと半導体ウエハー、MEMS素子と蓋体乃至基板、などを接着した中空構造や、TFT方式の液晶表示体や有機EL(Electro Luminescence)表示体などのフラットパネルディスプレイ、半導体チップなどの基板上に該樹脂組成物を層間絶縁膜として多層配線が形成されたウェハーレベルパッケージなどの半導体素子などが挙げられる。
【0030】
次に、本発明の半導体装置の一例である中空構造体の一実施形態について、図を用いて説明する。
図1は、中空構造体の半導体装置を示す断面図であり、中空構造体4は、基板1と相手体2とが樹脂スペーサー3を介して接合されている。樹脂スペーサー3は、基板1の内側の内周面に沿って配置され、基板1と相手体2との間に空隙部(中空部)5が形成されるようになっている。
【0031】
基板1としては、例えばガラス、石英などの透明基板などが挙げられる。また、相手体2としては、半導体素子、ウエハー、TFTなどを形成するガラス、フィルムなどを挙げることができる。これらの中でも基板1が透明基板であり、相手体2が受光部を有する半導体素子に特に好ましく適応できる。すなわち、これにより、製造工程で受光部にキズが生じたり、ゴミが付着したりすることを防止することが容易になる。
【0032】
次に、本発明の一例である中空構造を有する半導体装置の製造方法について説明する。本発明の半導体装置の製造工程は、(1)樹脂組成物の塗布、乾燥工程、(2)光照射による硬化工程、(3)現像工程、(4)ダイシング工程、(5)熱圧着による貼り合わせ工程、の5つの工程から構成される。
(1)樹脂組成物の塗布、乾燥工程
半導体ウエハー21の機能面側(図3中の上側)にスピンコーターを用いて、本発明の樹脂組成物を塗布し、乾燥して樹脂層31を形成する(図3(a))。
(2)光照射による硬化工程
樹脂層31を所定のマスクパターン(ここでは、格子状のマスクパターン)を有するフォトマスク6で覆い、光照射する(図3(b))。光照射する照射線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200〜700nmの波長のものが好ましい。これにより、樹脂層31が選択的に光硬化される。すなわち、フォトマスク6で覆われていない部分311の樹脂層31が光硬化する。一方、フォトマスク6で覆われている部分の樹脂層31は、未硬化のままである。
(3)現像工程
樹脂層31を現像液により、フォトマスク6で覆われている部分の樹脂層31を除去する(図3(c))。これにより、樹脂層31が格子状に残存するようになる。この格子状に残存する部分が、後に樹脂スペーサー部311となる。
前記現像液としては、特に制限されるものではないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどのアルカンやシクロアルカン、トルエン、メシチレン、キシレンなどの芳香族炭化水素、リモネン、ジペンテン、ピネン、メクリンなどのテルペン類、シクロペンタン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどのケトン類などの溶剤が、また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウム塩などのアルカリ類の水溶液、及びこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類などの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液などが挙げられる。
(4)ダイシング工程
この半導体ウエハー21(図4)をダイシングして個片化して、樹脂スペーサー部311が形成されている半導体素子211を得る(図5)。
(5)熱圧着による貼り合わせ、熱硬化工程
樹脂スペーサー部311に接するように、透明基板11を接合する。この際、樹脂スペーサー部311は、光硬化後も接着性を有する樹脂組成物で構成されているので透明基板11と、半導体素子211とを樹脂スペーサー311を介して熱圧着して接合することできる。これにより、中空構造の半導体装置41を得ることができる(図2)。このように、中空構造とすることにより、イメージセンサ部に傷が生じたり、ごみが付着したりする
のを防止することができる。
【0033】
さらに、本発明の一例である半導体装置について図面を用いて説明する。図6は、本発明のバンプを有する半導体装置のパット部分の拡大断面図である。図6に示すように、シリコンウエハー7には入出力用のAlパッド8上にパッシベーション膜9が形成され、そのパッシベーション膜9にビアホールが形成されている。更に、この上にポリノルボルネン樹脂膜(バッファコート膜)10が形成され、更に、金属(Cr、Ti等)膜12がAlパッド8と接続されるように形成され、その金属膜12はハンダバンプ17の周辺をエッチングして、各パッド間を絶縁する。絶縁されたパッドにはバリアメタル15とハンダバンプ17が形成されている。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)として、光反応性官能基を有するデシルノルボルネン/グリシジルメチルエーテルノルボルネン/フェネチルノルボルネン=50/30/20の共重合体を使用した。該樹脂の合成方法を示す。
フェネチルノルボルネン、グリシジルメチルエーテルノルボルネンおよびデシルノルボルネンから得られるフェネチル、グリシジルメチルエーテルおよびデシル反復単位を含むポリマーを以下のようにして調製した。
反応容器に、エチルアセテート(230g)、シクロヘキサン(230g)、フェネチルノルボルネン(14.17g、0.071mol)、グリシジルメチルエーテルノルボルネン(14.0g、0.100mol)およびデシルノルボルネン(39.50g、0.168mol)を加え、乾燥窒素をこの溶液に30分間通すことによって、この反応媒体から酸素を取り除いた。窒素パージが完了した後、8mLのトルエン中に溶解した1.5g(3.1mmol)のビス(トルエン)ビス(ペルフルオロフェニル)ニッケルを反応器中に注入した。反応混合物を周囲温度で18時間撹拌し、次いで過酢酸溶液(ニッケル触媒に基づく50mol当量、150mmol、130mLの脱イオン水で希釈された57mLの氷酢酸を、およそ100mLの脱イオン水で希釈された115mLの30重量%過酸化水素と混ぜ合わせて調製した)で処理し、さらに18時間撹拌した。
撹拌を停止した後放置し水層と溶媒層とを分離させた。その後水層を除去し、残った溶媒層に蒸留水を加え、20分間撹拌した。撹拌を停止した後、層に分離し、次いで水層を除去した。この洗浄を500mLの蒸留水で3回実施した。その後洗浄した溶媒層に過剰のアセトンを加え、ポリマーを析出させ、濾過により回収し、そして真空炉中60℃で一晩乾燥した。乾燥後、66.1gの環状オレフィンの重合体(A)(転化率92%)を得た。環状オレフィンの重合体(A)の分子量はポリスチレン標準を用いてGPCにより測定し、Mw=105,138、Mn=46,439、多分散性(PDI)は2.26であることを確認した。環状オレフィンの重合体(A)の組成は1H−NMRを用いて測定し、20.2mol%のフェネチルノルボルネン、29.1mol%のグリシジルメチルエーテルノルボルネンおよび50.7mol%のデシルノルボルネンが取り込まれていることを確認した。
上記で得られた環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)100重量部と、一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)として、一般式(1)のRとRがRとRが式(2)の構造を有する化合物である4,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル(宇部興産社製、ETERNACOLL OXBP、重量平均分子量411、式(2)中のR12がエチル基)12重量部、光酸発生剤(C)として(4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、Rhodorsil Photoinitiator 2074)1.8重量部と、増感剤として1−クロロ−4−プロポロキシ−9H−チオキサントン(Lambson社製、SPEEDCURE CPTX)0.6重量部、酸拡散防止剤としてフェノチアジン(関東化学社製)0.1重量部、
酸化防止剤として3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(チバ・スペシャルティケミカルズ社製、Irganox1076)1.6重量部とを2−ヘプタノンに溶解して樹脂ワニスを得た。
【0035】
(評価方法)
[平坦化能]
上述の樹脂ワニスを用いて、幅200μmかつ厚さ15μmの段差が200μm間隔で表面に形成されているシリコンウエハー上にスピンコート法で塗布した後、ホットプレートにて100℃で5分乾燥させることにより厚さ約40μmの樹脂層を形成した。そして樹脂層表面の段差について接触式膜厚計を用いて測定し、以下の式より平坦化能を算出した。評価方法は、以下のように行い、測定結果を表1に表す。表1より、得られた樹脂層は、良好な平坦化能を示した。
◎:平坦化能が、70%以上であるもの。
○:平坦化能が、60%以上70%以下であるもの。
△:平坦化能が、40%以上60%以下であるもの。
×:平坦化能が、40%以下であるもの。
【0036】
【数1】

【0037】
[機械強度]
機械強度は、以下の方法で試験片を作製し、引張強度として測定した。
樹脂ワニスを、フィルム上にスピンコート法で塗布した後、ホットプレートにて110℃で5分間乾燥し、膜厚約40μmの塗膜を得た。この塗膜に超高圧水銀灯により1000mJ/cmのエネルギーの露光を行い、更に90℃で4分間加熱した後、熱風循環乾燥機内で、窒素雰囲気下、170℃、1時間で硬化し、最後にフィルムを剥がし試験片とした。
この試験片を用いて、常温での引張強度を測定した。評価は、以下の通りとした。
○:引張強度が20MPa以上であった。
△:引張強度が1MPa以上、20MPa未満であった。
×:引張強度が測定できなかった。
【0038】
[半導体装置の製造と評価]
上記作製した樹脂ワニスを用いて、以下の中空構造の半導体装置を作製し評価した。
上述の樹脂ワニスを、幅200μmかつ厚さ15μmの段差が200μm間隔で表面に形成されている8インチの半導体ウエハー(受光素子が形成されている。)にスピンコート法で塗布した後、ホットプレートにて100℃で5分乾燥し、膜厚約40μmの樹脂層を得た。この樹脂層にブロードバンドアライナー露光機(キヤノン(株)製)によりマスクを通して1500mJ/cm2でダムを形成する部分の露光を行った。その後ホットプ
レートにて90℃で4分、露光部の架橋反応を促進させるため加熱した。次にシクロペンタノンに30秒浸漬することによって未露光部を溶解除去した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで20秒間リンスした。その結果、受光素子を囲むように樹脂層のダムが形成された。次に形成された樹脂層のダムに上にガラス基板を乗せ、1Mpaの圧力をかけながら170℃、5分間圧着し、半導体ウエハーを受光素子が形成された半導体素子基板に切断し、この半導体素子基板とガラス基板とを接着した。次にオーブ
ンにて170℃、1時間で硬化し、半導体装置を作製した。
この半導体装置を作動させ、作動が問題ないことを確認した。
また、上記作製した樹脂ワニスを用いて、以下の図6の半導体装置を作製し評価した。
上述の樹脂ワニスを、シリコンウエハー7にすでに形成された入出力用のAlパッド8とパッシベーション膜9が形成された上に塗布して、そのパッシベーション膜9にビアホールを形成した。このパッシベーション膜9上に樹脂ワニスを、第1絶縁膜10として形成し、更に、金属(Cr、Ti等)膜12をAlパッド8と接続するように形成した。この金属膜12はハンダバンプ17の周辺をエッチングして、各パッド間を絶縁した。その後、この上に樹脂ワニスを塗布し、第2絶縁膜14を形成し、絶縁されたパッドにはバリアメタル15とハンダバンプ17を形成しウエハーレベルの半導体装置を作製した。作製したウエハーレベル半導体装置を作動させ、作動が問題ないことを確認した。
【0039】
(実施例2)
一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)として、一般式(1)のRとRがRとRが式(2)の構造を有するフェノールノボラック型オキセタン(東亜合成工業社製、PNOX−1009、重量平均分子量1009、式(2)中のR12がエチル基)を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に表す。得られた樹脂層は、良好な平坦性を示した。また、2種類の半導体装置は、問題なく作動することを確認した。
【0040】
(実施例3)
一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)として、一般式(2)のRとRが式(2)の構造を有する1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亜合成工業社製、OXT−121、重量平均分子量334、式(2)中のR12がエチル基)を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に表す。表1より、得られた樹脂層は、実施例1と比較して平坦性が劣っていたが、良好な平坦性を示した。また、2種類の半導体装置は、問題なく作動することを確認した。
【0041】
(実施例4)
一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)として、一般式(1)のRとRが式(2)の構造を有する3−エチル−3−[(2−エチルヘキシロキシ)メチル]オキセタン(東亜合成工業社製、OXT−212、重量平均分子量228、式(2)中のR12がエチル基)を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に表す。表1より、得られた樹脂層は、実施例1と比較して平坦性が劣っていたが、良好な平坦性を示した。また、2種類の半導体装置は、問題なく作動することを確認した。
【0042】
(実施例5)
一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)として、一般式(1)のRとRが式(2)の構造を含む化合物(宇部興産社製、ETERNACOLL OXBP、重量平均分子量411、式(1)中のR12がエチル基)の含有量を22重量部にした以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に表す。表1より、得られた樹脂層は、良好な平坦性を示した。また、2種類の半導体装置は、問題なく作動することを確認した。
【0043】
(実施例6)
環状オレフィン系樹脂(A)として、デシルノルボルネン/グリシジルメチルエーテルノルボルネン=70/30の共重合体を使用した以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に
表す。表1より、得られた樹脂層は、良好な平坦性を示した。また、2種類の半導体装置は、問題なく作動することを確認した。
【0044】
(実施例7)
一般式(1)で示される構造を有する化合物(B)として、イソフタル酸ビス[(3−エチル−3−オキセタルニル)メチル]エステルを用いた以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に表す。得られた樹脂層は、良好な平坦性を示した。また、2種類の半導体装置は、問題なく作動することを確認した。
【0045】
(比較例1)
実施例1の一般式(1)の構造を有する化合物(B)であり、一般式(1)のRとRが式(2)の構造を有する4,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル(宇部興産社製、ETERNACOLL OXBP、重量平均分子量411、式(2)中のR12がエチル基)を含有しない樹脂ワニスを用いて、実施例1と同様に樹脂ワニスの調整、樹脂層、半導体装置の作製を実施し、実施例1同様に評価した。測定結果を表1に表す。表1より、得られた樹脂層は、実施例1〜6と比較して平坦性が劣っていた。また、2種類の半導体装置は、作動しなかった。
【0046】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の中空構造体の半導体装置に関する一例を示す断面図である。
【図2】本発明の中空構造体の半導体装置に関する具体例を示す断面図である。
【図3】本発明の中空構造を有する半導体装置の製造方法についての断面図である。
【図4】半導体ウエハーをダイシングしたものである。
【図5】樹脂スペーサー部が形成されている半導体素子である。
【図6】本発明の半導体装置に関する一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
11 透明基板
2 相手体
21 半導体ウエハー
211 半導体素子
3 樹脂スペーサー
31 樹脂層
311 樹脂スペーサー部(フォトマスク6で覆われていない部分)
4 中空構造体
41 中空構造の半導体装置
5 空隙部
6 フォトマスク
7 シリコンウエハー
8 Alパッド
9 パッシベーション膜
10 第1絶縁膜
12 金属(Cr、Ti等)膜
13 配線(Al、Cu等)
14 第2絶縁膜
15 バリアメタル
16 レジスト
17 ハンダバンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)環状オレフィンの重合体またはその水素添加物および(B)下記一般式(1)で示される構造を有する化合物を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

(式中、R、Rは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R〜R10はそれぞれ独立して水素原子あるいは炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシル基であり、X、Y、Zは有機基であり、同じでも異なっていてもよく、R11は直結あるいは炭素数1〜6の炭化水素基または酸素を含んでいる炭素数1〜12の有機基のいずれかであり、nは0〜6である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される化合物(B)のYが、直結、−COO−、−CONH−のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)が、その構造中にカチオン重合性の官能基を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記環状オレフィンの重合体またはその水素添加物(A)が、1種または複数のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体の付加重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、酸を発生する化合物(C)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製したことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製したことを特徴とするウエハーレベルの半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−126606(P2010−126606A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301627(P2008−301627)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】