説明

樹脂組成物及び樹脂組成物を使用して作製した半導体装置

【課題】 接着性に優れ低弾性率でかつレジンブリードが発生しにくい半導体用ダイアタッチペースト及び特に耐半田クラック性等の信頼性に優れた半導体装置を提供すること。
【解決手段】 数平均分子量500〜5000のジエン系化合物の重合体又は共重合体で、重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基を少なくとも1つ有する化合物(A)、一般式(1)で示される化合物(B)、熱ラジカル重合開始剤(C)、充填材(D)を含み、実質的に光重合開始剤を含まないことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂組成物を使用して作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境対応の一環として半導体製品からの鉛撤廃が進められている中、半導体製品の外装めっきからの脱鉛化の目的でリードフレームのめっきをNi−Pdに変更する場合が増えてきている。ここでNi−Pdめっきは表面のPd層の安定性を向上する目的で薄く金めっき(金フラッシュ)が行われるが、Ni−Pdめっきそのものの平滑性および表面の金の存在のため通常の銀めっき銅フレーム等と比較すると接着力が低下する。このため接着力向上の目的でNi−Pdめっきフレーム表面を化学的、物理的に粗化する方法が取られる場合があるが、このような粗化表面ではしばしばダイアタッチペーストのレジンブリードが発生しパッケージ信頼性の低下という深刻な問題の原因となる。
また基板実装時に使用する半田も鉛フリー半田が使用されるため、錫−鉛半田の場合よりリフロー温度を高くする必要がある。接着力の低下およびリフロー温度の高温化に基づくストレスの増加のため、リフロー中に半導体製品中に剥離ひいてはクラックが発生しやすくなるため半導体製品の構成材料はより高いリフロー耐性を有する必要がある。
そこで従来より使用されているダイアタッチペースト(例えば、特許文献1参照)よりもNi−Pdめっきフレームへの接着性に優れ、弾性率が低い低応力性に優れ、かつレジンブリードが発生しない材料が望まれているが、満足なものはなかった。
【特許文献1】特開2000−273326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、接着性に優れ低弾性率でかつレジンブリードが発生しにくい半導体用ダイアタッチペースト及び特に耐半田クラック性等の信頼性に優れた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の[1]〜[13]により達成される。
[1]半導体素子を接着する樹脂組成物であって、(A)数平均分子量500〜5000のジエン系化合物の重合体又は共重合体で、重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基を少なくとも1つ有する化合物、(B)一般式(1)で示される化合物、(C)熱ラジカル重合開始剤、(D)充填材を含み、実質的に光重合開始剤を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
【0005】
【化3】

【0006】
[2]前記化合物(A)の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基が(メタ)アクリロイル基である第[1]項の樹脂組成物。
[3]前記化合物(A)の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基の(メタ)アクリロイル基が(メタ)アクリロイルオキシ基である第[1]又は[2]項記載の樹脂組成物。
[4]前記化合物(A)のジエン系化合物がポリブタジエン、ポリイソプレンのいずれかである第[1]〜[3]項記載の樹脂組成物。
[5]前記化合物(A)のジエン系化合物の共重合体がブタジエン、イソプレンと重合可能な化合物の共重合体である第[1]〜[4]項記載の樹脂組成物。
[6]前記化合物(A)がカルボキシル基を有するジエン系化合物の重合体又は共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレート又は一般式(2)で示される化合物とのエステル化化合物である第[1]〜[5]項のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0007】
【化4】

【0008】
[7]一般式(2)で示される化合物のR5が炭素数3あるいは4である第[1]〜[6]項に記載の樹脂組成物。
[8]さらにシランカップリング剤を含む第[1]〜[7]項に記載の樹脂組成物。
[9]上記カップリング剤がS−S結合を有するシランカップリング剤である第[8]項記載の樹脂組成物。
[10]さらにグリシジル基を有するカップリング剤を含む第[1]〜[9]項記載の樹脂組成物。
[11]さらにグリシジル基を有する化合物を含む第[1]〜[10]項に記載の樹脂組成物。
[12]充填材(D)が銀粉である第[1]〜[11]項に記載の樹脂組成物。
[13]第[1]〜[12]項のいずれか1項に記載の樹脂組成物をダイアタッチ材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、接着性に優れ、低弾性率でかつレジンブリードが発生しにくいため、ダイアタッチ材料として使用した場合、得られた半導体装置は耐半田クラック性に優れており、その結果高信頼性の半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、特定分子量のジエン系化合物の(共)重合体で炭素不飽和結合を有する官能基を含む化合物、特定のアクリルエステル化合物、熱ラジカル重合開始剤、充填材を含み、実質的に光重合開始剤を含まない樹脂組成物であって、接着性に優れ、低弾性率でかつレジンブリードが発生しにくい樹脂組成物を提供するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明では数平均分子量500〜5000のジエン系化合物の重合体又は共重合体で重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基を少なくとも1つ有する化合物(A)を使用する。このような化合物としては例えば水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有するポリイソプレン、ポリブタジエン等のジエン系化合物の単独重合体或いはジエン系化合物とアクリロニトリル、スチレン等との共重合体等と、前記重合体の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等と反応可能な官能基及び重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基である(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基を有する化合物とを反応することにより得ることができる。
【0012】
ここで数平均分子量は500〜5000に限定されるが、これは数平均分子量が500より小さい場合には期待する柔軟性を発揮できないので好ましくなく、5000より大きい場合には粘度が高くなりすぎ実用上好ましくない。またポリイソプレン、ポリブタジエン等のジエン系化合物の単独重合体或いはジエン系化合物とアクリロニトリル、スチレン等との共重合体等は硬化物の柔軟性を発揮するために必要であるが、これらの化合物を変性せずに用いると反応性に乏しいため重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基を導入する必要がある。導入する官能基は重合可能であれば使用可能であるが、反応性を考慮すると(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基などが好ましい。より好ましいのは(メタ)アクリロイル基、なかでも(メタ)アクリロイルオキシ基である。
【0013】
特に低弾性率化が必要な場合には数平均分子量500〜5000のジエン系化合物の重合体又は共重合体と重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基の間にポリアルキレンオキサイド構造を導入することが効果的である。このような化合物はカルボキシル基を有するジエン系化合物の単独重合体或いはジエン系化合物とアクリロニトリル、スチレン等との共重合体と一般式(2)で示される化合物をエステル化することで得ることが可能である。一般式(2)のR4は炭素数2〜6の炭化水素基であるがこれ以外のものは入手が困難であり、より好ましい炭素数は2〜4である。R5は炭素数3〜6の炭化水素基であるが、好ましくは芳香族環を含まない。炭素数がこれより少ないと吸水特性が悪化し吸水処理後の接着力の悪化が生じるためであり、これより多い場合には樹脂組成物の疎水性が強くなりすぎ銅等の酸化されやすい金属表面等への接着力が悪化するとともに結晶性が高くなってくるので使用できない。より好ましい炭素数は3又は4である。さらに繰り返し数nが50より多くなると粘度が高くなりすぎ実用上好ましくない。ここで繰り返し単位が上記条件を満たしていれば2種類以上あるいは他の成分との共重合物でも使用可能である。
【0014】
本発明では、一般式(1)に示される化合物(B)を使用する。一般にモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートなどの低粘度アクリルエステル化合物は反応性の希釈剤として使用されているが、一般式(1)に示される化合物(B)を使用することにより良好な接着性と優れたブリード性を示すことが可能となる。ここでブリードとは、樹脂組成物をリードフレーム等の被着体に塗布した時、あるいは加熱硬化中に樹脂組成物の樹脂成分が被着体表面に広がる現象を指し、しばしばブリードがグランドボンド(半導体素子からダイパッドへのワイヤボンド)不良の原因となったり、封止材料のダイパッドへの接着力を低下させ剥離の原因、クラックの原因となるため好ましくない現象である。ここでブリード性に優れるというのはブリードが発生しにくいということで、すなわち上述したような問題が起こりにくいということである。特に好ましいものとして一般式(1)に示される化合物(B)のR1がメチル基、R2がメチル基、x=1、y=1、z=1である化合物あるいはR1がメチル基、x=2、y=1、z=0である化合物が挙げられる。
【0015】
本発明では、熱ラジカル重合開始剤(C)を使用する。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、樹脂組成物の常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。
【0016】
これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチ−ルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられるが、これらは単独或いは硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。特に限定されるわけではないが樹脂組成物中0.001〜2重量%含有されるのが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、通常蛍光灯等の照明下で使用されるので光重合開始剤が含まれていると使用中に反応により粘度上昇が観察されるため実質的に光開始剤を含有することはできない。実質的にとは、粘度上昇が観察されない程度で光重合開始剤が微量に存在してもよく、好ましくは、含有しないことである。
【0018】
本発明では充填材(D)として、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉といった金属粉、アルミナ粉末、チタニア粉末、アルミニウムナイトライド粉末、ボロンナイトライド粉末といったセラミック粉末、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサン粉末といった高分子粉末を使用可能である。樹脂組成物を使用する際にはノズルを使用して吐出する場合があるので、ノズル詰まりを防ぐために平均粒径は30μm以下が好ましく、ナトリウム、塩素といったイオン性の不純物が少ないことが好ましい。特に導電性、熱伝導性が要求される場合には銀粉を使用することが好ましい。通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉等が入手可能で、好ましい粒径としては平均粒径が1〜30μmである。これ以下では樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、これ以上では上述のようにディスペンス時にノズル詰まりの原因となりうるからであり、電子材料用以外の銀粉ではイオン性不純物の量が多い場合があるので注意が必要である。形状はフレーク状、球状等特に限定されないが、好ましくはフレーク状のものを使用し、通常樹脂組成物中70〜90重量%含まれる。銀粉の割合がこれより少ない場合には導電性が悪化し、これより多い場合には樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるためである。
【0019】
本発明では化合物(B)以外の希釈剤として下記のような化合物を1種あるいは複数種使用することも可能であるが、化合物(B)の配合量と同程度あるいは少ないことが好ましい。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体。
【0020】
本発明では、良好な接着性を得る目的でシラン系のカップリング剤を使用することが可能である。なかでもS−S結合を有するシランカップリング剤は充填材(D)として銀粉を使用した場合には被着体との接着力向上のみならず、銀粉とも反応するため樹脂組成物硬化物の凝集力も向上するので特に優れた接着性を得ることが可能となるので好ましい。このようなS−S結合を有するシランカップシング剤としては、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。またS−S結合を有するシランカップシング剤とともにグリシジル基を有するシランカップリング剤を使用することがさらに好ましい。グリシジル基を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0021】
本発明では、グリシジル基を有する化合物を添加することも可能である。特に銅表面との良好な接着力が必要な場合にはグリシジル基を有する化合物の添加は効果的である。グリシジル基を有する化合物としてはビスフェノールA、ビスフェノールFといったビスフェノール類をグリシジルエーテル化したもの、フェノールノボラック、クレゾールノボラックといったフェノール類をグリシジルエーテル化したもの、アミノフェノールのエポキシ化物を使用することができる。また低粘度化の目的で脂肪族グリシジルエーテル類、水素添加により脂肪族環にしたグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ化合物などが挙げられ、必要に応じイミダゾールなどのグリシジル基と反応する化合物を添加する。特に保存性と反応性を両立させる目的から、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物あるいは2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを使用することが好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、必要により、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤等の添加剤を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物を用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームの所定の部位に樹脂組成物をディスペンス塗布した後、チップをマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を製作する。又はフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGAなどのチップ裏面に樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドといった放熱部品を搭載し加熱硬化するなどといった使用方法も可能である。
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。配合割合は重量部で示す。
【実施例】
【0024】
化合物Aの調整
化合物A1:カルボキシル基を有するポリブタジエン(日本曹達(株)製、C−1000、数平均分子量1200〜1500)120gとポリオキシブチレンオキシプロピレンモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマー10PPB−500B、一般式(2)のR3がメチル基、R4の炭素数3、R5の炭素数4、nが約6)150gならびにトルエン/酢酸エチル混合溶媒(7/3)500gをセパラブルフラスコに入れ、還流下ディーンスタークトラップにて1時間脱水を行った。室温まで冷却した後、攪拌しながらジシクロカルボジイミド/ジメチルアミノピリジンの酢酸エチル溶液を滴下し、滴下後室温で16時間反応した。イオン交換水を添加し30分攪拌した後、さらに用いてイオン交換水5回分液洗浄を行った後有機溶剤層をろ過することにより固形分を除去、エバポレータならびに真空乾燥機にて溶剤を除去し以下の試験に用いた。(以下化合物A1、収率約89%。室温で粘ちょうな液体。NMR、IRによりエステル結合の生成を確認した。GPCによるスチレン換算分子量は約2500であった。)
化合物A2:カルボキシル基を有するポリブタジエンのかわりに両末端カルボキシル基のブタジエン−アクリロニトリル共重合体(宇部興産(株)製、ハイカーCTBNx8、数平均分子量約3500)175gを使用したほかは化合物A1と同様にして反応生成物を得た。(以下化合物A2、収率約85%。室温で粘ちょうな液体。NMR、IRによりエステル結合の生成を確認した。GPCによるスチレン換算分子量は約4600であった。)
化合物A3:ポリオキシブチレンオキシプロピレンモノメタクリレートのかわりに2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルHOP)45gを使用したほかは化合物A1と同様にして反応生成物を得た。(以下化合物A3、収率約82%。室温で粘ちょうな液体。NMR、IRによりエステル結合の生成を確認した。GPCによるスチレン換算分子量は約1600であった。)
【0025】
[実施例1〜4]
化合物(A)として、上記化合物A1、A2ならびに化合物A3を、化合物(B)として2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルHOP、一般式(1)のR1がメチル基、R2がメチル基、x=1、y=1、z=1、以下化合物B1)、グリセリンジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルG−101P、一般式(1)のR1がメチル基、x=2、y=1、z=0、以下化合物B2)を、熱ラジカル重合開始剤(C)としてはジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解温度:126℃、以下化合物C)を、充填材(D)としては、平均粒径8μm、最大粒径30μmのフレーク状銀粉(以下銀粉)を用いた。
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1、6HX、以下化合物X1)、カップリング剤としてテトラスルフィド結合を有するもの(日本ユニカー(株)製、A−1289、以下カップリング剤1)、グリシジル基を有するもの(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下カップリング剤2)を表1のように配合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡することで樹脂組成物を得た。配合割合は重量部である。得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0026】
[実施例5]
グリシジル基を有する化合物として、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルビスフェノールA(エポキシ当量180、室温で液体、以下化合物X2)ならびに2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンの反応物(キュアゾール2MZ−A:四国化成工業(株)製、以下化合物X3)
【0027】
[比較例1、2]
表1に示す割合で配合し実施例1と同様に樹脂組成物を得た。
[比較例3]
化合物Aのかわりにカルボキシル基を有するポリブタジエン(日本曹達(株)製、C−1000、数平均分子量1200〜1500、以下化合物Y1)を使用した
得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0028】
評価方法
・接着強度:6×6mmのシリコンチップを銅フレームにマウントし、150℃オーブン中30分硬化した。使用した銅フレームは銀スポットめっき(ダイパッド部に銀めっきあり)、銀リングめっき(ダイパッド部は銅)、Ni−Pd/Auめっきの3種。硬化後ならびに吸湿処理(85℃、85%、72時間)後に自動接着力測定装置を用い260℃での熱時ダイシェア強度を測定した。260℃熱時ダイシェア強度が30N/チップ以上の場合を合格とした。接着強度の単位はN/チップである。
・ブリード:上記接着強度測定の前に硬化物端部からのブリードを光学顕微鏡にて観察し、試験片での最長の長さをもってブリードとした。ブリードの長さが50μm以下のものを合格とした。ブリードの単位はμm。
・耐リフロー性:表1に示す樹脂組成物を用い、下記の基板(リードフレーム)とシリコンチップを150℃30分間硬化し接着した。封止材料(スミコンEME−7026、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行なった。処理後のパッケージを超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
パッケージ:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:Ni−Pd/Auめっきした銅フレーム
チップサイズ:6×6mm
樹脂組成物の硬化条件:オーブン中150℃、30分
【0029】
・弾性率:樹脂組成物を用いて4×20×0.1mmのフィルム状の試験片を作製し(硬化条件150℃30分)、動的粘弾性測定機(DMA)にて引っ張りモードでの測定を行った。測定条件は以下の通り。
測定温度:室温〜300℃
昇温速度:5℃/分
周波数:10Hz
荷重:100mN
25℃における貯蔵弾性率を弾性率とし5000MPa以下の場合を合格とした。弾性率の単位はMPa。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の樹脂組成物は、接着性に優れ低弾性率でかつレジンブリードが発生しにくいため、半導体用ダイアタッチペースト用材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を接着する樹脂組成物であって、(A)数平均分子量500〜5000のジエン系化合物の重合体又は共重合体で、重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基を少なくとも1つ有する化合物、(B)一般式(1)で示される化合物、(C)熱ラジカル重合開始剤、(D)充填材を含み、実質的に光重合開始剤を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記化合物(A)の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基が(メタ)アクリロイル基である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する官能基の(メタ)アクリロイル基が(メタ)アクリロイルオキシ基である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(A)のジエン系化合物がポリブタジエン、ポリイソプレンのいずれかである請求項1〜3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(A)のジエン系化合物の共重合体がブタジエン、イソプレンと重合可能な化合物の共重合体である請求項1〜4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(A)がカルボキシル基を有するジエン系化合物の重合体又は共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレート又は一般式(2)で示される化合物とのエステル化化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】

【請求項7】
一般式(2)で示される化合物のR5が炭素数3あるいは4である請求項1〜6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらにシランカップリング剤を含む請求項1〜7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
上記カップリング剤がS−S結合を有するシランカップリング剤である請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらにグリシジル基を有するカップリング剤を含む請求項1〜9記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらにグリシジル基を有する化合物を含む請求項1〜10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
充填材(D)が銀粉である請求項1〜11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物をダイアタッチ材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2006−225460(P2006−225460A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38841(P2005−38841)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】