説明

機能性材料、フィルタ、化粧品原材料用組成物及び食品添加物並びにその機能性材料の製造方法

【課題】酸化力のある酸化チタン及び抗酸化力のあるアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体又はカテキン類を用い、その両者の機能を発揮できる機能性材料及びその製造方法を提供すること、またその機能性材料を用いた化粧品原材料用組成物、その機能性材料を用いた空気透過用フィルタ及びその機能性材料を用いた食品添加物を提供することを課題とする。
【解決手段】酸化チタン(1)と、前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分(2)と、前記被覆成分に担持される、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分(3)とを有する機能性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能を有する酸化チタンに抗酸化作用を持つアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体又はカテキン類を被覆させ、その両機能を併せ持つ機能性材料、その機能性材料を用いたフィルタ、その機能性材料を用いた化粧品原材料用組成物及びその機能性材料を用いた食品添加物並びにその機能性材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、その光触媒反応により強い酸化力が発揮される。酸化チタンは、接触する有機物を酸化分解して消滅させるため、すぐれた消臭作用及び抗菌作用を発揮する。また超親水性になるため、表面に汚れが付着しにくい。そのため酸化チタンは、消臭剤、抗菌剤、防汚剤として広く利用されている。この場合光触媒反応を起こすために、紫外線の照射が必要となる。けれども日光や蛍光灯の下でも相応の効果は発揮できる。また最近では、可視光領域の光でも機能を発揮するものも開発されている。
【0003】
ところで酸化チタンは、接触する有機物を分解する作用を有するため、これを有機材料に被覆すると、有機材料そのものも劣化する。このような有機材料の劣化は、強力な酸化作用に基づくものである。したがって消臭性、抗菌性、防汚性の性能が上がれば上がるほど、有機材料の劣化作用も強くなる。
【0004】
本出願人は、酸化チタンの表面を部分的に被覆し、有機材料の劣化を抑えた機能性材料を検討してきた。
【0005】
例えば、本出願人の出願にかかる特許文献1には、セラミックス成分(C)と、消臭性、抗微生物性または抗アレルギー性のうちの少なくとも1つの性質を有する動植物由来の有効成分(B)との複合体粒子(BC)により、光触媒機能を有する無機質粒子(T)の表面が部分的に被覆された構造を有する多元複合体粒子(BCT)からなることを特徴とする機能性材料が示されている。
【0006】
一方アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類は、強い抗酸化作用を持つ。そのため、健康維持の目的、老化防止の目的、生活習慣病の予防と治療の目的、さらには美白作用の目的で健康食品(サプリメント)、食品添加物(酸化防止剤)、医薬部外品及び医薬品として広く利用されている。なおアスコルビン酸は、光、熱、酸化に対し非常に不安定である。近年その不安定さを改善するために、様々なアスコルビン酸誘導体が開発されている。
【0007】
上記のように抗酸化力を持つアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体又はカテキン類と強い酸化力を持つ酸化チタンとを単に混ぜ合わせると、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体又はカテキン類は酸化力を持つ酸化チタンに分解されてしまう。
【0008】
そのため、酸化チタンと特に不安定であるアスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体とを組み合わせることは、検討されていなかった。
【0009】
また酸化チタンとカテキン類を組み合わせることは、上記特許文献1でも検討されていた。しかしながら特許文献1による製造方法によると、製造温度が200℃程度かかり、カテキン類の熱による分解がおこる可能性がある。カテキン類の熱による分解をさらに抑えた機能性材料が要望されていた。
【0010】
また、本出願人の出願による特許文献2には、機能性を有する有機成分(A)とセラミックス成分(B)とを含有する水性スラリー(C)を噴霧乾燥装置を用いて、有機成分(A)とセラミックス成分(B)とをハイブリッド化した微粉状のハイブリッド化物を得る製造法が示されている。
【特許文献1】特開2002−53416号公報
【特許文献2】特開2003−235948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
酸化チタンとアスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体とを混合することにより、酸化チタンへの新たな機能付与が期待できる。しかしながら本出願人が検討してきた上記特許文献1の手法を用いてもアスコルビン酸を分解させずに、機能性材料を作ることはできなかった。
【0012】
また酸化チタンとカテキン類を組み合わせることは、上記特許文献1でも検討されていた。しかしながらカテキン類の熱による分解をさらに抑えた機能性材料が要望されていた。
【0013】
本発明は、上記背景下において、酸化力のある酸化チタン及び抗酸化力のあるアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体又はカテキン類を用い、その両者の機能を発揮できる機能性材料及びその製造方法を提供すること、またその機能性材料を用いたフィルタ、その機能性材料を用いた化粧品原材料用組成物及びその機能性材料を用いた食品添加物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(機能性材料)
すなわち、上記課題を解決する本発明の機能性材料は、酸化チタン(1)と前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分(2)と、前記被覆成分に担持される、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分(3)とを有することを特徴とする。
【0015】
被覆成分によって機能性成分が酸化チタンと直接接触しないことにより、酸化チタンによる機能性成分の分解を抑えることができる。
【0016】
そして上記課題を解決するその他の本発明の機能性材料としては、酸化チタン(1)と前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分(2)と、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分(3)とを有する水性スラリーを微細な液滴状態にする液滴化工程と、前記微細な液滴を120℃以下の熱風に接触させて乾燥させる乾燥工程と、により製造され得ることを特徴とする。
【0017】
前記製造方法により製造された機能性材料は、酸化チタンによる前記機能性成分の分解を抑えることができる。
【0018】
(機能性材料の製造方法)
更に、上記課題を解決する本発明の機能性材料の製造方法は、酸化チタン(1)と前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分(2)と、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分(3)と、を有する水性スラリーを微細な液滴状態にする液滴化工程と、前記微細な液滴を120℃以下の熱風に接触させて乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の製造方法は、被覆成分によって機能性成分が酸化チタンと直接接触しないことにより、酸化チタンによる機能性成分の分解を抑えて機能性材料を製造することができる。
【0020】
また本発明の製造方法は、低温の製造温度及び短時間の製造時間を用いるため、機能性成分の熱による分解を抑え、高い機能性を備える機能性材料を簡便に得ることができる。
【0021】
更に本発明の製造方法は、上記機能性材料を、一挙に製造することが出来る。つまり、従来の混合−加熱処理−粉砕(−分級)という工程を大部分省略できるので、生産性、工数、設備、熱エネルギー、所要時間などの点で格段に有利となる。
【0022】
(その他の手段)
上記課題を解決する本発明の空気透過用フィルタは、表面及び/又は内部に機能性材料を担持及び/又は含有した、空気を少なくとも一方向に通過することができる多孔質体或いは繊維集合体であることを特徴とする。また上記課題を解決する化粧品原材料用組成物は、前記機能性材料を含有する。更に上記課題を解決する食品添加物は、前記機能性材料を含有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、酸化力を持つ酸化チタン及び抗酸化力のあるアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体又はカテキン類を用い、その両者の機能を発揮できる機能性材料及びその製造方法を提供できる。
【0024】
また表面及び/又は内部に前記機能性材料を担持及び/又は含有した、空気を少なくとも一方向に通過することができる多孔質体或いは繊維集合体である空気透過用フィルタ、前記機能性材料を含有する化粧品原材料用組成物、また前記機能性材料を含有する食品添加物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(機能性材料)
機能性材料の用途には、空調機、空気清浄機、掃除機及び美顔器などの空気透過用フィルター、化粧品原材料及び食品添加物が考えられる。また衣類及び寝具関連材料、衛生材料、履物材料、敷物材料、台所用品、トイレタリー用品、建物または乗り物の内装材料、建材、医療用材料、農業用または園芸用材料、包装材料をはじめとする多種の用途に前記機能性材料を添加等して用いることが出来る。
【0026】
本発明における機能性材料の形態は特に限定しない。微粒子形態、薄膜形態及び成形体などの形態が採用できる。特に微粒子形態が好ましい。
【0027】
微粒子形態の機能性材料は、粉体のままあるいはその粉体を袋に入れたり層間にサンドイッチして使用したり、粉体を造粒または、成形したり、粉体を高分子成分やセラミックス成分に内添して、成形物を製造したり、必要に応じてバインダーを用いて粉体から塗布液を調製して任意の対象物にコーティング乃至含浸させたり、不織布などに添着させたりするなど、種々の形態で応用に供することが出来る。
【0028】
機能性材料の粒径は、用途に応じて適した大きさに制御する。例えば、機能性材料の平均粒子径は、20μm以下、殊に15μm以下に制御することが好ましい。下限については、特に限定はないが、1μm前後、さらにはサブミクロン(0.1μm)のオーダーとすることも可能である。また、高分子成分に添加し、繊維を製造する場合は、粒径3μm以下にすることが望ましい。
【0029】
(機能性材料 第1実施形態)
本発明の機能性材料は酸化チタン(1)と被覆成分(2)と機能性成分(3)とを有する。酸化チタンは、好ましくは超微細酸化チタンが挙げられる。また酸化チタンの表面を金属又は金属化合物で修飾したものでもよい。被覆成分は、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される。前記被覆成分は、前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する。前記機能性成分はアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される。機能性成分は、被覆成分により酸化チタンと直接接触しないようになっている。直接接触すると、機能性成分は酸化チタンの酸化力により分解されてしまう。被覆成分以外に酸化チタンの活性点を抑えるためのものとしては、例えばリン酸が挙げられる。酸化チタンにリン酸を被覆させ、酸化チタンの活性点を抑制し、機能性成分との反応をさらに抑えても良い。
【0030】
酸化チタン(1)としては、特に好ましくは、X線散乱法で測定した粒径が例えば100nm以下、殊に50nm以下、さらには20nm以下の超微細酸化チタンが挙げられる。一般に酸化チタンの粒径が小さいほど酸素による光酸化反応の効率が高くなる。この超微細酸化チタンの表面を金属又は金属化合物(亜鉛、金、銀、銅、白金、ケイ素、鉄、タングステン、ルテニウム、クロムや、これらの金属の酸化物或いは水酸化物)で修飾したものも用いることが出来る。また可視光でも光触媒活性を持つ酸化チタンを用いることも出来る。例えば、クロムイオンを加速して添加した酸化チタン、水素プラズマ活性雰囲気中で処理した酸化チタン、スパッター法(薄膜半導体製造装置の一つ)を用いて還元雰囲気で作製された酸化チタン、表面に色素を吸着させた酸化チタン、酸化タングステンと複合化した酸化チタン、チタンに窒素雰囲気中で銅、亜鉛をドーピングした酸化チタン、窒化チタンを酸化させたオキシナイトライド等が挙げられる。
【0031】
酸化チタンの結晶型には、アナターゼ形、ブルッカイト形、及びルチル形がある。光触媒機能はアナターゼ形が優れており、アナターゼ形のほうが好ましい。
【0032】
被覆成分(2)は乾燥状態で微粒子である。微粒子は、表面積が大きく機能性成分を担持させやすい。被覆成分は、無機成分、セルロース及びセルロース誘導体からなる群から選択される。セルロース誘導体としては、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0033】
無機成分としては、各種の粘土鉱物、酸化物、水酸化物、複合酸化物、窒化物、炭化物、ケイ化物、ホウ化物、ゼオライト、クリストバライト、ケイ藻土、及びケイ酸の多価金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、セピオライト、コーディエライト、カオリン、ベントナイトなどが挙げられる。酸化物としては、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛などが挙げられる。水酸化物としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガンの水酸化物などが挙げられる。複合酸化物の例はミョウバンである。窒化物の例は、窒化ケイ素、窒化ホウ素などである。炭化物の例は、炭化ケイ素、炭化ホウ素などである。ケイ酸の多価金属塩としては、アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩などが挙げられ、ケイ酸のアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。無機成分としては、シリカ、水酸化アルミニウムが望ましい。
【0034】
被覆成分として無機成分を用いる場合、セルロース又はセルロース誘導体も併せて用いることが望ましい。セルロース又はセルロース誘導体を用いることにより、その製造温度をより低温にすることが出来、機能性成分の熱による分解を抑制できる。
【0035】
機能性成分(3)としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類が挙げられる。アスコルビン酸は、光、熱、酸化に対し非常に不安定である。その不安定さを改善するために、様々なアスコルビン酸誘導体が開発されている。主なアスコルビン酸の誘導体を示す。アスコルビルエチル、アスコルビルグルコシド、(アスコルビル/コレステリル)リン酸ナトリウム、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム、アスコルビルメチルシラノールペクチン、アスコルビルリン酸(Mg/K)、アスコルビルリン酸(Mg/Na)、アスコルビルリン酸(Mg/亜鉛)、アスコルビルリン酸Ca、アスコルビルリン酸Na、リン酸アスコルビルMg、リン酸アスコルビル3Na、リン酸アスコルビルアミノプロピル、アスコルビン酸Ca、アスコルビン酸Mg、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル、アスコルビン酸ポリペプチド、アスコルビン酸硫酸2Na、ステアリン酸アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル及びキトサンアスコルビン酸が挙げられる。なおアスコルビン酸誘導体の表示方法は、日本化粧品工業連合会の「化粧品の成分表示名称リスト」に一部ならって記載した。特にアスコルビルリン酸Ca、リン酸アスコルビルMg、アスコルビルリン酸Na、アスコルビルリン酸(Mg/Na)が好ましい。
【0036】
カテキン類は、茶由来のカテキンが例示できる。本発明に用いるカテキン類として特に重要性の高いものは、カテキン類の濃度を高めた茶由来のカテキン製剤である。茶由来のカテキンの主たる成分は、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレート等である。個々の成分に単離することは必ずしも必要ではないので、これらの混合物からなる茶カテキン製剤をそのまま好適に用いることが出来る。市販の茶由来のカテキン製剤にはカテキンの純度を規定した製品として、30%品、50%品、60%品、70%品、80%品、90%品などがあり、目的に応じて使用できる。特に90%品は、抗酸化力の強いエピガロカテキンガレートが主成分となっている。
【0037】
(機能性材料 第1実施形態の変形態様)
第1実施形態の機能性材料における、酸化チタンを酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムから選択した金属酸化物で置き換えることが出来る。前記金属酸化物は、紫外線散乱剤、顔料などに使用できる。また前記金属酸化物は、酸化チタンと同様に機能性成分と単に混合すると、その酸化力により機能性成分を分解してしまう。被覆成分及び機能性成分については、前述の第1実施形態で説明したものと同様なものが適用でき、ここでの更なる説明は省略する。
【0038】
(機能性材料 第2実施形態)
本発明の更なる機能性材料は液滴化工程及び乾燥工程を有する製造方法により製造され得ることを特徴とする。液滴化工程は酸化チタン(1)と、無機成分、セルロース及びセルロース誘導体からなる群から選択される1種以上の被覆成分(2)と、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分(3)と、を有する水性スラリーを微細な液滴状態にする工程である。乾燥工程はその微細な液滴を120℃以下の熱風に接触させて乾燥させる工程である。
【0039】
酸化チタン、被覆成分、及び機能性成分は、前述の第1実施形態で説明したものと同様のものが適用でき、液滴化工程及び乾燥工程については、製造方法で後述する工程と同様であるので、ここでの更なる説明は省略する。
【0040】
(機能性材料の製造方法)
本発明の製造方法は、液滴化工程及び乾燥工程を有することを特徴とする。液滴化工程は、酸化チタン(1)と無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分(2)と、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分(3)と、を有する水性スラリーを微細な液滴状態にする。乾燥工程は、上記微細な液滴を120℃以下の熱風に接触させて乾燥させる。液滴化工程及び乾燥工程は適正な大きさの槽内で行うことができる。
【0041】
酸化チタン、被覆成分、及び機能性成分については、前述の第1実施形態で説明したものと同様のものが適用できるので、ここでの更なる説明は省略する。
【0042】
水性スラリーの溶媒は、水を含有する。適当量の有機溶媒(アルコール等)を含んでいても差し支えない。
【0043】
水性スラリーの固形分濃度は、特に限定はないものの、通常は1質量%以上70質量%以下、殊に3質量%以上60質量%以下、なかんずく5質量%以上50質量%以下とするのが、微粒化及び熱エネルギーの点で好都合である。上限以下であると、微粒化しやすく、下限以上であると必要とする熱エネルギーが少なくてすむ。
【0044】
水性スラリーを調製する場合には、酸化チタンと被覆成分とを混合した後に、液滴化して熱風に接触させて形成した粉末と、機能性成分とを混合することが好ましい。ここで酸化チタンと被覆成分とを含むスラリーを液滴化する方法は、後述する液滴化工程で説明する方法が採用できる。その液滴に熱風を接触させる方法については後述する乾燥工程で説明する方法が採用できる、なお熱風の温度は機能性成分か液滴に入っていない場合、120℃よりも高い温度を採用することも可能である。
【0045】
微粒化した液滴径は、10μmを越える場合をスプレー、10μm以下をミストと区別するのが通常である。後者のミストとすることが特に好ましい。
【0046】
上記液滴化は、回転円盤、加圧ノズル、二流体ノズル、四流体ノズルなどを用いてなされる。特に四流体ノズルは、液滴をミストとして大量に噴霧することができるので、好ましい。
【0047】
四流体ノズルにあっては、ナイフ状のノズルエッジに、気体路と流体路とを各2経路、計4経路対称に設けたものである。ノズルエッジ先端は、2経路の液体流動面である斜面を流動してきた液体(水性スラリー)が1点に集まる衝突焦点があるように構成されている。ノズルエッジは、噴霧量により適正な長さの直線部分を設けることが望ましい。気体スリットから出た高速気体流体は、液体スリットから湧き出るように出た液体を流体流動面で混合しながら薄く引き延ばす。2経路から流動してきた引き延ばされた液体は、エッジ先端の衝突焦点で衝突し、発生する衝撃波でより微細化されて数μmの液滴となる。
【0048】
四流体ノズルは、上記の方法で平均粒子径が数μmの微細な液滴径が得られること、粒度がそろった液滴になること、気液比により任意に液滴径をコントロールできること、一つのノズルで大量の噴霧ができることなどの点から有利な方法である。
【0049】
乾燥工程では、液滴化した水性スラリーを120℃以下の熱風を接触させて乾燥させる。ここでは、温度制御が特に重要となる。各機能性成分の種類により、その成分が変質、揮散せず、なお且つ機能性成分が被覆成分に充分に担持できる温度設定が必要である。
【0050】
乾燥工程では、噴霧乾燥機を用いることが出来る。噴霧乾燥機としては、液滴が上から下に落下する「上→下落下型」のみならず、「吹き上げ型」、「横型」、「サイクロン型」など種々の型式を用いることができる。
【0051】
製造方法を実施する具体的な装置を図1に例示する。本装置は、液体供給手段1、気体供給手段2、ノズル(四流体ノズル)3、装置本体(槽)4、送風機5、ヒータ6、サイクロン7、バグフィルタ8、及び排風機9を持つサイクロン型の装置である。
【0052】
液体供給手段1、及び気体供給手段2は、それぞれ2経路ありそれぞれ水性スラリー及び気体を四流体ノズル3に供給する経路である。四流体ノズル3は槽4の上部に配設されている。四流体ノズル3は槽4内に開口する2つの液体供給経路(図略)と2つの気体供給路経路(図略)とを備える。液体供給経路と気体供給経路とは対になって対称的に配設される。液体供給経路には水性スラリーを供給する液体供給手段1が接続され、気体供給経路には空気を供給する気体供給手段2が接続される。四流体ノズル3は前述の液体供給経路及び気体供給経路が配設した対称中心部に先端部をもつ下部ノズルエッジ部(図略)を備える。気体供給経路は噴出する気体が下部ノズルエッジ部の表面に沿って流れ、下部ノズルエッジ部の先端部で気体が衝突するように配設される。液体供給経路は気体供給経路からの気体の流れの途中に水性スラリーを供給し気体の流れに伴って噴霧する手段である。
【0053】
槽4は内部が空洞になった円筒形の部材である。上部には四流体ノズル3が配設されるほか、送風機5から空気が送風される送風口が開口する。送風口は槽4の導入される空気の流れが内面に沿って回転しながら下降する方向に設けられている。送風機5と送風口との間には槽4内に送風される空気を所定温度にまで加熱できるヒータ6が設けられる。槽4の下部には下側に頂点のある円錐状の部分があり、その円錐状の部分の頂点から槽4内の内容物を排出できる排出口を備える。
【0054】
槽4の排出口はサイクロン7に接続される。サイクロン7の排出口はバグフィルタ8に接続される。バグフィルタ8には排風機9が接続される。
【0055】
水性スラリーは液体供給経路1を通じて四流体ノズル3の液体供給経路に供給される。同時に気体供給路2から四流体ノズル3の気体供給経路に気体が供給される。その結果、水性スラリーはミスト化されて槽4内に噴霧される(液滴化工程)。送風機5から送風される空気はヒータ6により加熱され槽4内に導入される。槽4内では水性スラリーのミスト(微細な液滴)と加熱された空気(熱風)とが接触してミストが乾燥することで機能性材料が製造される(乾燥工程)。熱風により乾燥させることで、機能性成分は、被覆成分に含有乃至は担持され、機能性成分を含有乃至は担持した被覆成分は、酸化チタンの表面に付着乃至は被覆し、機能性材料の乾燥微粒子が得られる。
【0056】
製造された機能性材料は送風機5からの熱風と共に槽4内を落下し、下部円錐からサイクロン7に送られる。サイクロン7内にて大部分の機能性材料は捕集される。サイクロン7で捕集されなかった機能性材料はバグフィルタ8に送出されて捕集される。バグフィルタ8では排風機9により負圧を生じさせており、サイクロン7から導入された機能性材料を伴う熱風に加えて外気を吸入する。なお、機能性材料の回収(捕集)は、サイクロン7およびバグフィルタ8の双方を用いて行ってもよく、それらのうちどちらか一方を用いて行っても良い。
【0057】
また被覆成分として無機成分を用いる場合は、無機成分を100質量部とするとき、酸化チタンを5質量部以上20質量部以下にすることが望ましい。
【0058】
乾燥工程において、微細な液滴に接触する熱風の温度を適正に制御する。熱風温度は、槽4の熱風の入口温度と排気温度に規定される。槽4における入口温度を100℃以上200℃以下に設定する事が好ましい。排気温度については、65℃以上100℃以下に設定すると共に、入口温度よりも30℃以上(殊に50℃以上)低い温度に設定することが好ましい。この範囲内の下限以上なら、乾燥条件が適正で、被覆成分の表面乃至は内部への機能性成分の担持が充分にできる。また上限以下なら機能性成分が変質せず、揮散するおそれが少なくなる。
【0059】
槽内から導出される機能性材料の平均粒子径は、20μm以下、殊に15μm以下に制御することが好ましい。平均粒子径の制御は、液滴の大きさ、酸化チタン、及び無機成分の粒子径などをコントロールすることにより達成できる。下限については、特に限定はなく、1μm前後、さらにはサブミクロン(0.1μm)のオーダーとすることも可能である。
【0060】
(その他の実施形態)
本発明の空気透過用フィルタは、表面及び/又は内部に機能性材料を担持及び/又は含有した、空気を少なくとも一方向に通過することができる多孔質体或いは繊維集合体である空気透過用フィルタである。また化粧品原材料用組成物は、前記機能性材料を含有する化粧品原材料用組成物である。更に食品添加物は、前記機能性材料を含有する食品添加物である。
【0061】
酸化チタン、被覆成分、及び機能性成分については、前述の機能性材料の第1実施形態で説明したものと同様のものが適用できるので、ここでの更なる説明は省略する。
【0062】
空気透過用フィルタを以下フィルタとも表す。
【0063】
フィルタは、空気を少なくとも一方向に通過することができるように、空気を通過させる一方の面から他方の面に向けて連通する孔を有する部材である。内部を通過する空気に対して担持された機能性成分が放出等されることで、機能性成分が作用する。
【0064】
フィルタの形態としては特に限定されず、繊維集合体、多孔質体、ハニカム体、ジャバラ状や円筒状にした薄膜状部材などの形態が例示できる。例えば、連続気泡を有する多孔質体或いは繊維集合体などが挙げられる。多孔質体に形成される細孔の大きさはμmオーダーから、mmオーダー、cmオーダーなど適用される分野に応じて適正に選択できる。多孔質体としては、粉粒体の集合体、粉粒体を固めたもの、ハニカム状のものなどが例示できる。ハニカム状のフィルタは押し出し成形などの常法で製造できる。また、繊維集合体としては通常の布、不織布や、繊維の圧縮成形体などが挙げられる。
【0065】
フィルタの構成材料は、セラミックスや高分子材料などがあげられる。例えば、ケイ酸塩、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカなどの酸化物やこれらの複合酸化物、粘土鉱物などのセラミックスや;ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどの合成高分子材料、セルロース(紙、綿など)などの(半)天然高分子材料などの有機高分子材料から構成できる。セラミックスとしてはコーディエライト、セピオライトなどが例示される。
【0066】
フィルタへの機能性材料の担持及び/又は含有は、フィルタを製造した後担持を行うこともできるし、フィルタの材料物質に機能性材料を添加した状態でフィルタの形状を成形するなどして行うこともできる。例えば、機能性材料を適正な溶媒に懸濁した液に、成形したフィルタを浸漬・乾燥することで担持することができる。また、ハニカム状のフィルタを押し出し成形する前の材料に機能性材料を混合することによっても行うことができる。また、繊維集合体からなるフィルタに担持させるために繊維集合体を構成する繊維に機能性材料を含有させることもできる。繊維に機能性材料を含有させるには紡糸工程において予め紡糸材料に機能性材料を混練しておく方法や、機能性材料の懸濁液に紡糸した繊維を浸漬する方法などが挙げられる。
【0067】
本発明の空気透過用フィルタは、空調機、空気清浄機、掃除機及び美顔器などに用いることができる。
【0068】
また本発明の化粧品原材料用組成物は、前記機能性材料を含有する化粧品原材料用組成物である。
【0069】
酸化チタンは、紫外線遮断剤として使用でき、化粧品分野で広く使用されている。また金属酸化物である酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムは、紫外線散乱剤、顔料として使用されている。一方アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体は、チロシナーゼ活性の阻害に基づくメラニン生成の抑制及びメラニンの還元作用、活性酸素の捕捉作用、コラーゲンタンパクの増生作用などを持つと考えられている。そのため化粧品領域においては主に、美白、シミやしわの防止、日焼け予防の目的で用いられている。またカテキン類は、強いラジカル捕捉作用、抗酸化作用、殺菌作用を持つ。化粧品領域においては、美白、シミやしわの防止、日焼け予防の目的で用いられている。
【0070】
本発明の化粧品原材料用組成物は、酸化チタンと機能性成分とを有し、その両者の機能を発揮できる機能性材料を含有する。また酸化チタンに変えて上記金属酸化物も使用できる。
【0071】
またさらに本発明の食品添加物は、前記機能性材料を含有する。酸化チタンは、白色顔料として、機能性成分は、酸化防止剤としてそれぞれ食品添加物に使用されている。上記金属酸化物も顔料として使用されている。本発明の食品添加物は、酸化チタンと機能性成分とを有し、その両者の機能を発揮できる機能性材料を含有するものである。また酸化チタンに変えて上記金属酸化物も使用できる。
【実施例】
【0072】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0073】
水に酸化チタン(石原テクノ(株)、品番ST−01、平均粒径5μm)を加え、ダマがなくなるまで攪拌した。次にリン酸を加えよく攪拌した。ここに機能性成分としてのアスコルビン酸、水に溶解させたリン酸アスコルビルマグネシウム又はカテキンを加えた。これに被覆成分としての酢酸セルロース(チッソ(株)製、セルフロー(R)品番TA−25)又はセルロース(チッソ(株)製、セルフロー(R)品番C−25)を少量のエタノールに分散させた溶液を加え攪拌、水性スラリーを調製した。用いた酢酸セルロース、及びセルロースは、多孔性の真球に近い球状の微粒子である。
【0074】
また被覆成分に無機成分を使用したものは、以下の手順でスラリーを調製した。水に酸化チタン及び被覆成分としての水酸化アルミニウムを加え、ダマがなくなるまで攪拌した。次に他の被覆成分としてのコロイダルシリカ40%水懸濁液(旭電化工業(株)製、アデライト(R)品番AT−40)を加え、ボールミルを用い凝集した混合物をほぐして分散させ、均一に混合した。この懸濁液を藤崎電機(株)製、噴霧乾燥装置「マイクロミストドライヤMDL−050−TypeM」(四流体ノズルを備えたもの)を使用してスプレードライし、粉末化した。(乾燥条件設定温度;入口200℃、出口100℃)得られた粉末に、機能性成分としてのアスコルビン酸水溶液を加え、ダマがなくなるまで攪拌した。これに他の被覆成分としての酢酸セルロース(チッソ(株)製、セルフロー(R)品番TA−25)又はセルロース(チッソ(株)製、セルフロー(R)品番C−25)を少量のエタノールに分散させた溶液を加え攪拌、水性スラリーを調製した。
【0075】
前記水性スラリーを前記噴霧乾燥装置を使用して、液滴化工程及び乾燥工程(設定温度:機能性成分がアスコルビン酸及びリン酸アスコルビルマグネシウムの場合入口100℃出口70℃、カテキンの場合入口110℃、出口80℃)を行い、機能性材料を製造・回収した。
【0076】
表1に各内容物の混合比を記載した。
【0077】
被覆成分として酢酸セルロースを用いたものを試験試料4、セルロースを用いたものを試験試料1〜3、5〜7及び9〜10、被覆成分としてコロイダルシリカ、水酸化アルミニウム及びセルロースを用いたものを試験試料8とした。また機能性成分として、試験試料1〜3は、リン酸アスコルビルマグネシウム、試験試料4〜8は、アスコルビン酸、試験試料9は、純度30質量%茶カテキン、試験試料10は、純度90質量%茶カテキンを用いた。
【0078】
【表1】

【0079】
[抗酸化能測定(アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体)]
試験試料1〜8を用いて、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の抗酸化能測定を行った。
【0080】
各試験試料を目付100gのポリエステル系不織布に、30g/m2の割合で担持させた。担持方法は、以下の方法を用いた。まずアクリル又はウレタンエマルジョンに試験試料を加え分散させる。試験試料を加えたエマルジョンを前記不織布に塗布し、塗布した不織布を乾燥させて試験試料を担持させた。各不織布を210×55mm寸法に切り出し、試験用不織布フィルターとした。空気清浄機に試験用不織布フィルターを取り付け、1m3の容器内に、加湿器、ヘヤードライヤー、純水100mlの入ったガラス容器と共に設置した。1m3の容器内は、加湿器を用い、湿度85%条件とした。1m3の容器は、あらかじめ室温25℃条件に保持された室内に設置した。空気清浄機から放出した空気をヘヤードライヤーを用い、純水の入ったガラス容器に吹き込んだ。ヘヤードライヤーは、冷風とし、1.1m3/minまたは1.3m3/minの送風量とした。
このようにしてフィルターを通過した空気を3時間または5時間純水に吹き込み、水中に溶出させたものを分析試料とした。
【0081】
抗酸化能は「DPPHラジカル消去法」を用いて測定した。「DPPHラジカル消去法」は、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)のエタノール溶液がラジカル減少により変色することを利用し、DPPHのエタノール溶液に分析試料を加え攪拌、分析試料中の機能性成分と反応させることで減少するラジカル量を分光光度計により測定する方法である。機能性成分がDPPHと反応してラジカル量が減少する値を抗酸化能を表す値として表した。
【0082】
今回は、既知濃度のアスコルビン酸から得られた検量線を用いて、抗酸化能をアスコルビン酸濃度に換算して比較した。結果を表2に示す。またアスコルビン酸の放出能力を図2に示す。試験試料1〜8を用いた試験用不織布フィルターの結果を試験例1〜8とした。試験例1−1、2、3及び8はヘヤードライヤー1.3m3/minの送風量で3時間純水に吹き込んだ。試験例1−2、4、5、6及び7は、ヘヤードライヤー1.1m3/minの送風量で5時間純水に吹き込んだ。総送風量は、234m3と330m3と3割程度異なっている。
【0083】
表2及び図2の結果より明らかなように、試験例3〜8は、抗酸化能があることがわかった。被覆成分として無機成分及びセルロースを用いた試験例8は、被覆成分としてセルロース又は酢酸セルロースを用いた試験例3〜7に比べて、抗酸化能が大きな結果となった。
【0084】
試験例1、2及び3は、機能性成分としてリン酸アスコルビルマグネシウムを用い、酸化チタンの活性点を抑え機能性成分の分解を抑える目的で加えたリン酸の量を変えたものである。リン酸の量が一番多かった試験例3は抗酸化能が認められた。
【0085】
同様に試験例5、6及び7は、機能性成分としてアスコルビン酸を用いた。その上で、リン酸の量を変えたものである。リン酸の量によらず、ほぼ同様の抗酸化能を持つ結果となった。抗酸化能に関しては、機能性成分がリン酸アスコルビルマグネシウムの場合は、リン酸使用量が多かった試験例3が抗酸化能がよく、機能性成分がアスコルビン酸の場合は、リン酸の量によらない結果となった。
【0086】
【表2】

【0087】
[抗酸化能測定(カテキン)]
上記アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の抗酸化能測定と同様の手法を用いて、カテキンの抗酸化能測定を行った。ただし、ヘヤードライヤーは、冷風とし、1.3m3/minの送風量とし、フィルターを通過した空気を3時間純水に吹き込み、水中に溶出させたものを分析試料とした。試験は、試験試料9、10及び参考試料1を用いた。なお試験試料9は、純度30質量%茶カテキン、試験試料10は、純度90質量%茶カテキンを用いた。参考試料1は、BAT法を用い、酸化チタンと純度30〜40質量%カテキンを組み合わせた機能性材料である。ここでBAT法とは、特許文献1に用いられた方法であり、以下の手順で参考試料1を作製した。酸化チタンと珪フッ化ナトリウムとを重量比で60:40の割合で混合し、ルツボにて800℃×1時間の条件で焼成した。得られた焼成体を、純度30〜40質量%カテキンとコロイダルシリカ40%水懸濁液との混合液に接触させ、100〜110℃で脱水した。
【0088】
既知濃度のカテキンから得られた検量線を用いて、抗酸化能をカテキン濃度に換算して比較した。結果を表3に示す。またカテキンの放出性能を図3に示す。試験試料9、10を用いた試験用不織布フィルターの結果を試験例9、10、参考試料1を用いた試験用不織布フィルターの結果を参考例1とした。
【0089】
表3及び図3の結果から明らかなように、参考例1に比べ、試験例9、10はカテキンの放出性能が高く、高い抗酸化能力を持っていることがわかった。参考試料1に比べ、試験試料9、10の製造方法のほうが、低い製造温度で機能性材料が作製できるため、カテキンの熱による分解が抑えられたと考えられる。また試験例9に比べ試験例10のほうが高い抗酸化能を示した。試験試料10に用いられたカテキンは、純度90質量%のものである。純度90質量%茶カテキンは、抗酸化力の強いエピガロカテキンガレートが主成分となっているので、試験例10は高い抗酸化能を示したと考えられる。
【0090】
【表3】

【0091】
[消臭効果試験]
試験試料1〜10を用いてアセトアルデヒドの消臭効果試験を行った。
測定方法は、JEM 1467-1995「脱臭性能試験」(日本電機工業会規格)に準じて実施した。
【0092】
各試験試料を前述の抗酸化能測定と同様にポリエステル系不織布に、担持させ試験用不織布フィルターとした。空気清浄機の前面フィルター取り付け部に試験用不織布フィルターを取り付け、1m3の密閉容器内に設置した。空気清浄機は、フィルター前面カバーを取り外し、試験用不織布フィルターから外側に10cmの位置に紫外線ランプを設置した。アセトアルデヒド蒸発装置は、試験容器床中央に設置した。アセトアルデヒド標準試薬を、蒸発装置に設置し、加熱して蒸散させた。蒸散は、アセトアルデヒドが完全気化されるまで行った。空気清浄機は、アセトアルデヒド完全気化後、容器外からリモコン操作して運転を開始した。紫外線ランプは、空気清浄機運転開始と同時に照射を開始した。紫外線ランプ照射条件は、1mW/cm2とした。照射条件は、ランプ面での面積当たりの照射量を表したものである。アセトアルデヒド脱臭測定は、(株)ガステック、アセトアルデヒド検知管を使用して測定した。測定環境は、室温25℃、湿度55%とした。測定は空気清浄機を運転開始5分後に計測を開始し、その濃度を初期濃度、測定時間を0時間とした。その後15分間隔で空気清浄機を運転し、その都度運転を停止させ、残存ガス濃度を60分後まで計測した。
アセトアルデヒド消臭能は、消臭率で表した。消臭率の算出方法は次式により求めた。
Aは、15、30、45、60分とする。
(A分後消臭率)(%)=(1−A分後残存アセトアルデヒド濃度/初期濃度)×100
表4に試験結果を示す。試験試料1〜10を用いた不織布フィルターの結果を試験例1〜10、参考試験として、抗酸化能測定で用いた参考試料1を用いた不織布フィルターの結果を参考例1、不織布フィルターのみ使用したものを参考例2、不織布フィルターなしで運転させたものを参考例3として表した。消臭率を比較したグラフを図4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
表4及び図4の結果より明らかなように、参考例2、3に比べ、試験例1〜10は、すべてアセトアルデヒド消臭率が高い結果となった。試験例1、2、及び3は、機能性成分としてリン酸アスコルビルMg、被覆成分としてセルロースを用い、酸化チタンの活性点を抑え機能性成分の分解を抑える目的で加えたリン酸の量を変えたものであるが、特に大きな消臭率の違いはなかった。一方試験例5、6及び7は、機能性成分としてアスコルビン酸、被覆成分としてセルロースを用い、リン酸の量を変えたものであるが、リン酸の量が少ない試験例5が消臭率は高い結果となった。試験例9と試験例10では、試験例9のほうが、消臭率は高い結果となった。また機能性成分にカテキンを用いた試験例9及び10は、機能性成分にアスコルビン酸又はリン酸アスコルビルMgを用いた試験例1〜8に比べ、消臭率は低めの結果となった。
【0095】
表2、表3、表4、図2、図3及び図4から明らかなように、試験例3〜10は、アセトアルデヒドの消臭能力、抗酸化能を持ち、酸化力と抗酸化力を合わせ持っていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施例に用いた噴霧乾燥装置を示した説明図である。
【図2】試験例1〜8を比較した抗酸化能測定結果を示す。
【図3】試験例9、10及び参考例1を比較した抗酸化能測定結果を示す。
【図4】試験例1〜10、参考例1、2及び3を比較したアセトアルデヒド消臭率測定結果を示す。
【符号の説明】
【0097】
(1)・・・液体供給手段
(2)・・・気体供給手段
(3)・・・ノズル(四流体ノズル)
(4)・・・装置本体(槽)
(5)・・・送風機
(6)・・・ヒータ
(7)・・・サイクロン
(8)・・・バグフィルタ
(9)・・・排風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンと、
前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分と、
前記被覆成分に担持される、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分と、
を有することを特徴とする機能性材料。
【請求項2】
酸化チタンと、
前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分と、
アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分と、
を有する水性スラリーを微細な液滴状態にする液滴化工程と、
前記微細な液滴を120℃以下の熱風に接触させて乾燥させる乾燥工程と、
により製造され得ることを特徴とする機能性材料。
【請求項3】
前記酸化チタンを、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムから選択した金属酸化物に置き換える請求項1又は2に記載の機能性材料。
【請求項4】
前記被覆成分がシリカ及び水酸化アルミニウムを有し、前記酸化チタンと前記被覆成分との混合比は前記被覆成分を100質量部とするとき、前記酸化チタンを5質量部以上20質量部以下とする請求項1〜3のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項5】
前記被覆成分はシリカ、セルロース及び水酸化アルミニウムを有し、前記機能性成分はアスコルビン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項6】
前記被覆成分は酢酸セルロースであり、前記機能性成分はアスコルビン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項7】
前記被覆成分はセルロースであり、前記機能性成分はアスコルビン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項8】
前記被覆成分はセルロースであり、前記機能性成分は、リン酸アスコルビルマグネシウムである請求項1〜3のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項9】
前記被覆成分はセルロースであり、前記機能性成分は、茶由来のカテキンである請求項1〜3のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項10】
前記酸化チタンがリン酸又はリン酸塩で被覆されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の機能性材料。
【請求項11】
前記水性スラリー作製時に、前記酸化チタンと前記被覆成分又はリン酸とを混合した後に、前記機能性成分と混合することを特徴とする請求項2に記載の機能性材料。
【請求項12】
請求項1〜11いずれかに記載の機能性材料を表面若しくは内部に担持及び/又は含有した、空気を少なくとも一方向に通過することができる多孔質体或いは繊維集合体である空気透過用フィルタ。
【請求項13】
請求項1〜11いずれかに記載の機能性材料を含有する化粧品原材料用組成物。
【請求項14】
請求項1〜11いずれかに記載の機能性材料を含有する食品添加物。
【請求項15】
酸化チタンと、
前記酸化チタンの表面を部分的に被覆する、無機成分、セルロース、及びセルロース誘導体よりなる群から選択される1種以上の被覆成分と、
アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びカテキン類から選択される1種以上の機能性成分と、
を有する水性スラリーを微細な液滴状態にする液滴化工程と、
前記微細な液滴を120℃以下の熱風に接触させて乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とする機能性材料の製造方法。
【請求項16】
前記液滴化工程の前記スラリーは、前記酸化チタンと前記被覆成分をあらかじめ混合し液滴化する工程と、該液滴を熱風に接触させて乾燥する工程と、前記機能性成分を加える工程とを持つ工程で調製される請求項15に記載の機能性材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−81971(P2006−81971A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266922(P2004−266922)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(596087812)株式会社エルブ (15)
【Fターム(参考)】