説明

正逆リリーフ付電動開閉弁

【課題】電動弁と正圧リリーフ弁と負圧リリーフ弁の3つを1つに設けても、圧力損失を抑えることができる正逆リリーフ付電動開閉弁を提供する。
【解決手段】バルブハウジング6の内部に、第1ポート1と第2ポート2の両方に連通するバルブ内空間αを設ける。また、バルブ内空間αを、第1ポート1に連通する空間と、第2ポート2に連通する空間とに区画する仕切り板7を設ける。さらに、仕切り板7に、電動弁の電動弁開口8、正圧リリーフ弁4の正圧リリーフ開口9、負圧リリーフ弁5の負圧リリーフ開口10を設ける。仕切り板7によって区画されたバルブ内空間αが、電動弁、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5の共通流路として機能するため、圧力損失を小さく抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「電動弁」と「正圧リリーフ弁」と「負圧リリーフ弁」の3つを1つに設けた正逆リリーフ付電動開閉弁に関し、例えば車両用の蒸発燃料蒸散防止装置に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
〔従来技術1〕
従来技術の具体的な一例を、タンク密閉弁を用いて説明する。
車両に搭載される燃料タンクは、気密性が求められるとともに、燃料タンク内の圧力を所定の適正圧力範囲に保つことが要求される。
そこで、蒸発燃料蒸散防止装置のタンク密閉弁として、「電動弁(電磁弁等)」と「正圧リリーフ弁」の2つを1つに設けた正リリーフ付電動開閉弁を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の正リリーフ付電動開閉弁は、「電動弁の弁体」と「正圧リリーフ弁の弁体」を共通化して、電動弁と正圧リリーフ弁を1つにしたものであり、電動弁の流路と正圧リリーフ弁の流路を共通に設けることで、小型化を図るものである。
【0003】
燃料タンク内の圧力は、燃料の気化に伴って正圧になる場合と、気化燃料の液化に伴って負圧になる場合の両方が起こり得る。
燃料タンクの保護目的で、燃料タンク内の圧力を所定の適正圧力範囲に保つには、燃料タンク内の圧力が適正圧力範囲より高圧側に上昇するのを防ぐ正圧リリーフ弁とは別に、燃料タンク内の圧力が適正圧力範囲より負圧側に下降するのを防ぐ負圧リリーフ弁が必要になる。
【0004】
しかし、特許文献1の技術によって「電動弁の弁体」と共通化できるのは、「正圧リリーフ弁の弁体」または「負圧リリーフ弁の弁体」の一方のみである。
このため、特許文献1の技術によって燃料タンク内の圧力を適正圧力範囲に保とうとすると、特許文献1に開示される正リリーフ付電動開閉弁の他に、負圧リリーフ弁と、この負圧リリーフ弁を接続するための接続流路とを、別途追加する必要があり、コストアップおよび搭載性の悪化を招いてしまう。
【0005】
〔従来技術2〕
上記の不具合を回避する手段として、特許文献2に開示される技術が知られている。
特許文献2は、上述した「特許文献1の正リリーフ付電動開閉弁(電動弁+正圧リリーフ弁)」と「負圧リリーフ弁」を一体化して正逆リリーフ付電動開閉弁を設けたものである。
【0006】
しかし、上述したように、「電動弁の弁体」と共通化できるのは、「正圧リリーフ弁の弁体」または「負圧リリーフ弁の弁体」の一方のみである。
このため、特許文献2の正逆リリーフ付電動開閉弁の内部には、「特許文献1の正リリーフ付電動開閉弁(電動弁+正圧リリーフ弁)」の流路とは別に、この流路の一部を迂回する「負圧リリーフ弁」の迂回流路が独立して設けられる。
【0007】
このように、特許文献2の正逆リリーフ付電動開閉弁は、「電動弁」と「正圧リリーフ弁」と「負圧リリーフ弁」の3つを1つに設けたものであるが、バルブハウジング内に設けられる流路が複雑化する問題があり、圧力損失の増大を招く不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−47649号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0269921号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動弁と正圧リリーフ弁と負圧リリーフ弁を1つに設けても、圧力損失を抑えることができる正逆リリーフ付電動開閉弁の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔請求項1の手段〕
請求項1の正逆リリーフ付電動開閉弁は、電動弁と正圧リリーフ弁と負圧リリーフ弁を1つに設けたものであるが、バルブハウジング内にバルブ内空間を設けるとともに、このバルブ内空間を仕切り板で区画し、その仕切り板に、電動弁によって開閉される電動弁開口と、正圧リリーフ弁によって開閉される正圧リリーフ開口と、負圧リリーフ弁によって開閉される負圧リリーフ開口とを設けている。
仕切り板によって区画されたバルブ内空間が、電動弁、正圧リリーフ弁および負圧リリーフ弁の共通流路として機能するため、独立した迂回路が形成されることなく、内部に設けられる流路構成をシンプルにできる。即ち、請求項1の正逆リリーフ付電動開閉弁は、電動弁、正圧リリーフ弁および負圧リリーフ弁の各流路が、バルブ内空間によって共通化されて、圧力損失を小さく抑えることができる。
【0011】
〔請求項2の手段〕
バルブハウジングは、バルブ内空間を形成するための空間形成用凹室が設けられる本体ケースと、空間形成用凹室の開口部を閉塞するカバーとを備え、仕切り板は空間形成用凹室の内部に組み入れられるものである。
正圧リリーフ弁または負圧リリーフ弁の一方は、仕切り板の内側(バルブ内空間における仕切り板の奥側)に配置される内側ピポット弁であり、空間形成用凹室の底壁に固定端を有する内側コイルスプリングの付勢力によって仕切り板に向けて付勢される。そして、本体ケースには、空間形成用凹室の底壁から仕切り板に向かう内側弁体ガイドが設けられ、この内側弁体ガイドによって内側ピポット弁が開閉可能に支持される。
また、正圧リリーフ弁または負圧リリーフ弁の他方は、仕切り板より外側(バルブ内空間における仕切り板の外側)に配置される外側ピポット弁であり、カバーに固定端を有する外側コイルスプリングの付勢力によって仕切り板に向けて付勢される。そして、仕切り板には、仕切り板からカバーに向かう外側弁体ガイドが設けられ、この外側弁体ガイドによって外側ピポット弁が開閉可能に支持される。
【0012】
この請求項2の手段を採用することにより、本体ケースの一方向(空間形成用凹室の開口方向)から、内側コイルスプリング、内側ピポット弁、仕切り板、外側ピポット弁、外側コイルスプール弁、カバーを順次組付けることができ、組付けの容易化が可能になる。
【0013】
〔請求項3の手段〕
請求項3は、内側弁体ガイドに設けた内側ストッパによって内側ピポット弁の最大開度が規制され、カバーに設けた外側ストッパによって外側ピポット弁の最大開度が規制されるものである。
これにより、内側ピポット弁および外側ピポット弁の開弁時の最大傾斜が抑えられる。その結果、内側ピポット弁および外側ピポット弁が大きく傾くことで、内側ピポット弁および外側ピポット弁が内側弁体ガイドまたは外側弁体ガイドに引っ掛かって作動不良を発生する不具合を回避することができる。
【0014】
〔請求項4の手段〕
請求項4における内側弁体ガイドおよび外側弁体ガイドは、流体が通過可能な隙間を備える。
これにより、バルブ内空間における通路抵抗を小さくすることができ、正逆リリーフ付電動開閉弁のさらなる低圧力損失化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)図2のA−A線に沿う断面図、(b)図2のB−B線に沿う断面図である。
【図2】(a)正逆リリーフ付電動開閉弁を第2ポート方向から見た図、(b)図1のC方向から見た外側弁体ガイドの説明図、(c)図1のC方向から見た内側弁体ガイドの説明図である。
【図3】タンク密閉弁として用いられる正逆リリーフ付電動開閉弁の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
正逆リリーフ付電動開閉弁は、例えば、蒸発燃料蒸散防止装置に搭載されるものであり、燃料タンクT内と直接または間接的に接続される第1ポート1(タンク側ポート)と、燃料タンクTとは異なったキャニスタC(あるいは大気等)に接続される第2ポート2(反タンク側ポート)とを備える。
【0017】
この正逆リリーフ付電動開閉弁の内部には、
・第1ポート1と第2ポート2の連通状態を断続する電動弁3と、
・第1ポート1側の圧力が第2ポート2側の圧力に比較して予め設定した正圧値より上昇した場合にのみ開弁して第1ポート1側から第2ポート2側のみへ流体を流す正圧リリーフ弁4と、
・第1ポート1側の圧力が第2ポート2側の圧力に比較して予め設定した負圧値より下降した場合にのみ開弁して第2ポート2側から第1ポート1側のみへ流体を流す負圧リリーフ弁5と、
が設けられる。
【0018】
さらに、正逆リリーフ付電動開閉弁は、
・第1ポート1および第2ポート2の両方に連通するバルブ内空間αを内部に形成するバルブハウジング6と、
・バルブ内空間αを「第1ポート1に連通する空間」と「第2ポート2に連通する空間」に区画する仕切り板7とを備える。
【0019】
そして、仕切り板7に、
・電動弁3によって開閉される電動弁開口8と、
・正圧リリーフ弁4によって開閉される正圧リリーフ開口9と、
・負圧リリーフ弁5によって開閉される負圧リリーフ開口10と、
を設けたものである。
【実施例】
【0020】
以下において本発明を蒸発燃料蒸散防止装置のタンク密閉弁に適用した具体例(実施例)を、図面を参照して説明する。以下の実施例は具体的な一例を示すものであって、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。
なお、以下の実施例において、上記「発明を実施するための形態」と同一符号は関連物を示すものである。
【0021】
この実施例の正逆リリーフ付電動開閉弁は、ガソリン等の液体燃料を蓄える燃料タンクTと、気化燃料の吸着を行うキャニスタCとを連通する配管途中に接続されるタンク密閉弁であり、燃料タンクT内の上部空間と連通する配管が装着される略パイプ形状を呈する第1ポート1と、キャニスタCの内部空間と連通する配管が装着される略パイプ形状を呈する第2ポート2とを備える。
【0022】
正逆リリーフ付電動開閉弁の内部には、
・第1ポート1と第2ポート2の連通状態を開閉によって断続する電動弁3と、
・第1ポート1側の圧力が第2ポート2側の圧力に比較して予め設定した正圧値より上昇した場合にのみ開弁して第1ポート1側から第2ポート2側のみへ流体を流す正圧リリーフ弁4と、
・第1ポート1側の圧力が第2ポート2側の圧力に比較して予め設定した負圧値より下降した場合にのみ開弁して第2ポート2側から第1ポート1側のみへ流体を流す負圧リリーフ弁5と、
が設けられている。
【0023】
ここで、正逆リリーフ付電動開閉弁におけるバルブハウジング6の内部には、第1ポート1および第2ポート2の両方に連通するバルブ内空間αが形成されている。
具体的にバルブハウジング6は、バルブ内空間αを形成するための空間形成用凹室11が設けられる本体ケース12と、本体ケース12に接合されて空間形成用凹室11の開口部を閉塞するカバー13とを備える。
【0024】
なお、本体ケース12、カバー13、仕切り板7の材料は限定されるものではないが、一例としてこの実施例ではそれぞれが樹脂によって設けられている。
また、この実施例では、第1ポート1が本体ケース12に設けられ、第2ポート2がカバー13に設けられる例を示すが、逆の構成を採用して第1ポート1をカバー13に設けるとともに第2ポート2を本体ケース12に設けても良い。あるいは、第1ポート1および第2ポート2の両方を本体ケース12に設けても良い。
【0025】
正逆リリーフ付電動開閉弁は、バルブハウジング6内に形成されるバルブ内空間αを、第1ポート1に連通する空間と、第2ポート2に連通する空間とに区画する仕切り板7を備える。
仕切り板7は、空間形成用凹室11の内部に組み入れられるものであり、仕切り板7を空間形成用凹部11の内部に組付けた後、カバー13を本体ケース12に組付けることで、仕切り板7が本体ケース12とカバー13の間で挟み付けられて固定されるものである。
【0026】
カバー13には、仕切り板7の周縁を全周に亘って押さえ付ける押圧筒14が設けられており、仕切り板7と押圧筒14の間には全周に亘ってシールを行うシールリング15(Oリング)が配置されている。
本体ケース12に組付けられたカバー13は、溶着や接着などの接合技術を用いて本体ケース12に固定されるものであり、本体ケース12とカバー13の接合部によってシール性が確保されるものである。
なお、この実施例の仕切り板7には、メインバルブ21に装着されたダイアフラムゴム16の外周縁を環状に押しつけるダイアフラム押さえ17が設けられているが、限定されるものではない。
【0027】
バルブ内空間αを区画する仕切り板7には、
・電動弁3によって開閉される電動弁開口8と、
・正圧リリーフ弁4によって開閉される正圧リリーフ開口9と、
・負圧リリーフ弁5によって開閉される負圧リリーフ開口10と、
が設けられている。
この電動弁開口8、正圧リリーフ開口9、負圧リリーフ開口10のそれぞれは、仕切り板7の異なる部位に独立して設けられるものであり、図1(a)、(b)に示すように、それぞれが仕切り板7の板厚方向に貫通して設けられた開口穴である。
【0028】
以下において、電動弁3、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5の具体例を説明する。
(電動弁3の説明)
電動弁3は、電動弁開口8の開閉を行うメインバルブ21を電気的な運転指示によって任意に開閉させるものであり、この実施例では具体的な一例としてメインバルブ21を電磁アクチュエータ22によって駆動する電磁弁を用いたものである。
電磁アクチュエータ22の構成はもちろん限定されるものではないが、具体的な一例を説明する。
【0029】
電磁アクチュエータ22は、メインバルブ21を仕切り板7に向けて押し付けるリターンスプリング23の付勢力に抗してムービングコア24をメインバルブ21とともに仕切り板7から離反する側へ駆動して電動弁開口8を開く駆動手段であり、メインバルブ21と一体に移動するムービングコア24、通電により磁力を発生するコイル25、コイル25の内外に磁路を形成する磁気固定子(コイル内側のステータコア+コイル外側のヨーク等)26、コイル25への通電を行うターミナル端子27を有するコネクタ部28等を備える。
ターミナル端子27は、蒸発燃料蒸散防止装置を制御するECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)と接続線を介して電気的に接続されるものであり、電動弁3がエンジン運転状態に応じてECUによって開閉制御(あるいは電流制御等による開度制御)されるものである。
【0030】
なお、図1では、リターンスプリング23が電磁アクチュエータ22内に配置されてムービングコア24を介してメインバルブ21を付勢する例を示しているが、リターンスプリング23が直接メインバルブ21に付勢力を付与するものであっても良い。
また、この実施例では、メインバルブ21において仕切り板7に当接する箇所(電動弁開口8を開閉する箇所)に環状のシールリング(ゴムパッキング)を設けて、電動弁開口8の閉塞時におけるシール性を高めているが、もちろん限定されるものではない。
【0031】
(正圧リリーフ弁4の説明)
正圧リリーフ弁4は、仕切り板7より外側(バルブ内空間αにおける仕切り板7の外側)に配置されて正圧リリーフ開口9の開閉を行う略円板形状を呈した外側ピポット弁であり、カバー13に固定端を有する外側コイルスプリング31の付勢力によって仕切り板7に向けて付勢される。
この構成により、燃料タンクT内の圧力が予め設定した正圧値(外側コイルスプリング31の付勢力等により設定された値)より上昇した場合にのみ開弁して燃料タンクT内からキャニスタC側へ向けて気化燃料を流し、燃料タンクT内の圧力が適正圧力範囲より上昇するのを防ぐものである。
【0032】
正圧リリーフ弁4(外側ピポット弁)は、仕切り板7に形成された外側弁体ガイド32によって開閉方向{図1(b)の上下方向}のみへ移動自在に支持されるものである。
この実施例の外側弁体ガイド32は、図2(b)に示すように、流体が通過可能な隙間Xを備えるものである。具体的に、この実施例の外側弁体ガイド32は、仕切り板7からカバー13に向かって伸びる複数の柱{図2(b)では円筒体の一部を、流体が通過可能なように除去した3本の円弧状の柱}によって設けられるものである。
【0033】
この実施例は、カバー13の内面(バルブ内空間α側の面)に、正圧リリーフ弁4の最大開度を規制する外側ストッパ33が設けられている。この外側ストッパ33は、カバー13の内面から仕切り板7に向かって伸びる小径の円筒体(または円柱体)であり、正圧リリーフ弁4の開度が所定開度に達すると外側ストッパ33の先端に当接して正圧リリーフ弁4の最大開度を規制するものである。
【0034】
この実施例の外側ストッパ33は、外側コイルスプリング31の内側に配置されて外側コイルスプリング31の支持ガイドの機能を果たすものである。
なお、この実施例では、正圧リリーフ弁4において仕切り板7に当接する箇所(正圧リリーフ開口9を開閉する箇所)に環状のシールリング(ゴムパッキング)を設けて、正圧リリーフ開口9の閉塞時におけるシール性を高めているが、限定されるものではない。
【0035】
(負圧リリーフ弁5の説明)
負圧リリーフ弁5は、仕切り板7より内側(バルブ内空間αにおける仕切り板7の奥側)に配置されて負圧リリーフ開口10の開閉を行う略円板形状を呈した内側ピポット弁であり、空間形成用凹室11の底壁に固定端を有する内側コイルスプリング41の付勢力によって仕切り板7に向けて付勢される。
この構成により、燃料タンクT内の圧力が予め設定した負圧値(内側コイルスプリング41の付勢力等により設定された値)より下降した場合にのみ開弁して燃料タンクT内にキャニスタC内の空気を導き、燃料タンクT内の圧力が適正圧力範囲より低下するのを防ぐものである。
【0036】
負圧リリーフ弁5(内側ピポット弁)は、本体ケース12に形成された内側弁体ガイド42によって開閉方向{図1(b)の上下方向}のみへ移動自在に支持されるものである。
この実施例の内側弁体ガイド42は、外側弁体ガイド42と同様、図2(c)に示すように、流体が通過可能な隙間Xを備えるものである。具体的に、この実施例の内側弁体ガイド42は、空間形成用凹室11の底壁からカバー13に向かって伸びる複数の柱{図2(c)では円筒体の一部を、流体が通過可能なように除去した3本の円弧状の柱}によって設けられるものである。
【0037】
この実施例は、内側弁体ガイド42に、負圧リリーフ弁5の最大開度を規制する内側ストッパ43が設けられている。
この内側ストッパ43は、内側弁体ガイド42の内径部位に形成された段差によって設けられている。具体的に内側弁体ガイド42は、段差より仕切り板7に近い側の内径が負圧リリーフ弁5より大径に設けられ、段差より空間形成用凹室11の底壁に近い側の内径が負圧リリーフ弁5より小径に設けられており、負圧リリーフ弁5の開度が所定開度に達すると内側ストッパ43(段差)に当接して負圧リリーフ弁5の最大開度を規制するものである。
【0038】
また、この実施例では、内側弁体ガイド42のうち、段差より空間形成用凹室11の底壁に近い側が、内側コイルスプリング41の支持ガイドの機能を果たすものである。
なお、この実施例では、負圧リリーフ弁5において仕切り板7に当接する箇所(負圧リリーフ開口10を開閉する箇所)に環状のシールリング(ゴムパッキング)を設けて、負圧リリーフ開口10の閉塞時におけるシール性を高めているが、限定されるものではない。
【0039】
(実施例の効果1)
この実施例の正逆リリーフ付電動開閉弁は、上述したように、バルブ内空間αを区画する仕切り板7に、電動弁3の電動弁開口8、正圧リリーフ弁4の正圧リリーフ開口9、負圧リリーフ弁5の負圧リリーフ開口10のそれぞれを独立して設けたものである。
仕切り板7によって区画されたバルブ内空間αが、電動弁3、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5の共通流路として機能するため、バルブハウジング6内に独立した迂回路が形成されることなく、バルブハウジング6内における流路構成をシンプルにできる。即ち、電動弁3、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5の各流路が、バルブ内空間αによって共通化されるため、正逆リリーフ付電動開閉弁の圧力損失を小さく抑えることができる。
【0040】
(実施例の効果2)
この実施例の正逆リリーフ付電動開閉弁は、本体ケース12の一方向(空間形成用凹室11の開口方向)から、内側コイルスプリング41、負圧リリーフ弁5(内側ピポット弁)、仕切り板7、正圧リリーフ弁4(外側ピポット弁)、外側コイルスプール弁、カバー13を順次組付けるものである。
これによって、組付けが容易になり、正逆リリーフ付電動開閉弁の製造コストを抑えることができる。
【0041】
(実施例の効果3)
この実施例では、内側ストッパ43によって負圧リリーフ弁5の最大開度を規制し、外側ストッパ33によって正圧リリーフ弁4の最大開度を規制している。
これにより、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5の開弁時における最大傾斜を抑えることができる。その結果、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5が大きく傾くことで、正圧リリーフ弁4および負圧リリーフ弁5が内側弁体ガイド42または外側弁体ガイド32に引っ掛かって作動不良を発生する不具合を回避することができる。
【0042】
(実施例の効果4)
この実施例では、内側弁体ガイド42および外側弁体ガイド32のそれぞれに流体の流れを妨げない隙間Xを設けている。
これにより、バルブ内空間αにおける通路抵抗を小さくすることができ、正逆リリーフ付電動開閉弁のさらなる低圧力損失化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上記の実施例では、燃料タンクTとキャニスタCの間のタンク密閉弁に本発明を適用する例を示したが、キャニスタCから大気に至る部位に設けられるキャニスタ大気解放弁に本発明を適用しても良い。
【0044】
上記の実施例では、電動弁3の一例として電磁弁を用いる例を示したが、限定されるものではなく、負圧を利用したVSV(バキューム・スイッチング・バルブ)、電動モータを利用したモータ弁、ピエゾアクチュエータを利用したピエゾ弁など、電気的な通電制御により開閉が可能な他の電動弁3を用いても良い。
【0045】
上記の実施例では、正圧リリーフ弁4の一例としてピポット弁(実施例中では外側ピポット弁)を用いる例を示したが、限定されるものではなく、金属製または樹脂製の板バネを用いたリード弁など、他の一方向弁を用いても良い。
【0046】
上記の実施例では、負圧リリーフ弁5の一例としてピポット弁(実施例中では内側ピポット弁)を用いる例を示したが、限定されるものではなく、金属製または樹脂製の板バネを用いたリード弁など、他の一方向弁を用いても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 第1ポート
2 第2ポート
3 電動弁
4 正圧リリーフ弁(外側ピポット弁)
5 負圧リリーフ弁(内側ピポット弁)
6 バルブハウジング
7 仕切り板
8 電動弁開口
9 正圧リリーフ開口
10 負圧リリーフ開口
11 空間形成用凹室
12 本体ケース
13 カバー
31 外側コイルスプリング
32 外側弁体ガイド
33 外側ストッパ
41 内側コイルスプリング
42 内側弁体ガイド
43 内側ストッパ
α バルブ内空間
X 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が連通可能に設けられた第1ポート(1)と第2ポート(2)の連通状態を断続する電動弁(3)と、
前記第1ポート(1)側の圧力が前記第2ポート(2)側の圧力に比較して予め設定した正圧値より上昇した場合にのみ開弁して前記第1ポート(1)側から前記第2ポート(2)側のみへ流体を流す正圧リリーフ弁(4)と、
前記第1ポート(1)側の圧力が前記第2ポート(2)側の圧力に比較して予め設定した負圧値より下降した場合にのみ開弁して前記第2ポート(2)側から前記第1ポート(1)側のみへ流体を流す負圧リリーフ弁(5)と、
を具備する正逆リリーフ付電動開閉弁において、
この正逆リリーフ付電動開閉弁は、
前記第1ポート(1)および前記第2ポート(2)の両方に連通するバルブ内空間(α)を内部に形成するバルブハウジング(6)と、
前記バルブ内空間(α)を前記第1ポート(1)に連通する空間と前記第2ポート(2)に連通する空間に区画する仕切り板(7)とを備え、
前記仕切り板(7)には、
前記電動弁(3)によって開閉される電動弁開口(8)と、
前記正圧リリーフ弁(4)によって開閉される正圧リリーフ開口(9)と、
前記負圧リリーフ弁(5)によって開閉される負圧リリーフ開口(10)と、
が設けられることを特徴とする正逆リリーフ付電動開閉弁。
【請求項2】
請求項1に記載の正逆リリーフ付電動開閉弁において、
前記バルブハウジング(6)は、前記バルブ内空間(α)を形成するための空間形成用凹室(11)が設けられる本体ケース(12)と、前記空間形成用凹室(11)の開口部を閉塞するカバー(13)とを備え、
前記仕切り板(7)は、前記空間形成用凹室(11)の内部に組み入れられるものであり、
前記正圧リリーフ弁(4)または前記負圧リリーフ弁(5)の一方は、前記空間形成用凹室(11)の底壁に固定端を有する内側コイルスプリング(41)の付勢力によって前記仕切り板(7)に向けて付勢される内側ピポット弁であり、
前記本体ケース(12)は、前記空間形成用凹室(11)の底壁から前記仕切り板(7)に向かって設けられ、前記内側ピポット弁を開閉可能に支持する内側弁体ガイド(42)を備え、
前記正圧リリーフ弁(4)または前記負圧リリーフ弁(5)の他方は、前記カバー(13)に固定端を有する外側コイルスプリング(31)の付勢力によって前記仕切り板(7)に向けて付勢される外側ピポット弁であり、
前記仕切り板(7)は、この仕切り板(7)から前記カバー(13)に向かって設けられ、前記外側ピポット弁を開閉可能に支持する外側弁体ガイド(32)を備えることを特徴とする正逆リリーフ付電動開閉弁。
【請求項3】
請求項2に記載の正逆リリーフ付電動開閉弁において、
前記内側弁体ガイド(42)によって支持される前記内側ピポット弁の最大開度を規制する内側ストッパ(43)は、前記内側弁体ガイド(42)に設けられ、
前記外側弁体ガイド(32)によって支持される前記外側ピポット弁の最大開度を規制する外側ストッパ(33)は、前記カバー(13)に設けられることを特徴とする正逆リリーフ付電動開閉弁。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の正逆リリーフ付電動開閉弁において、
前記内側弁体ガイド(42)および前記外側弁体ガイド(32)は、流体が通過可能な隙間(X)を備えることを特徴とする正逆リリーフ付電動開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−15208(P2013−15208A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149928(P2011−149928)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】