説明

歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法

【課題】足裏材の偏摩耗の発生を抑制するとともに,偏摩耗が生じた場合であっても,その進行を抑制することを可能とする歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明の歩行ロボット1は,上体15と2以上の脚部10R,10Lとを有し,脚部10R,10Lを用いて歩行により移動する歩行ロボット1であって,脚部10R,10Lの足首の足首関節13R,13Lと,足首関節13R,13Lの角度により歩行時の足裏の初期接地位置を設定する初期接地位置設定部(コントローラ16)とを有し,初期接地位置設定部は,反復的に初期接地位置を変更するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,複数の足を有し,交替に持ち上げて前に出すことにより歩行する歩行ロボットとその歩行制御方法に関する。さらに詳細には,足裏が着地する時の足裏接地状態の制御を行う歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の足を交互に持ち上げ,前方に接地させることにより歩行するロボットがある。例えば,人型の2足歩行ロボットでは,膝関節や股関節等の関節部に設けられたアクチュエータによって,体幹に対して左右の脚部を交互に前方に送り出して歩行する。このとき一般に,経時的に体幹と両足のそれぞれの位置を指示するデータ(いわゆる,歩容データ)に基づいて,各関節の関節角が制御される。ここで,体幹位置を指示するデータは,ZMP(Zero Moment Point)を利用して算出される。ZMPは,ロボットが床から受ける反力によるモーメントがゼロになる点である。このZMPが接地している脚部の足平内にあるようにすることにより,転倒しないように歩行制御される(例えば,特許文献1参照。)。
【0003】
ここで,足裏が接地する床面は必ずしも平らであるとは限らない。平らに見えても多少の傾斜や凹凸がある場合があり,また床面の性状も様々なものがある。どのような床面であっても,足つきや歩行が不安定にならないために,このようなロボットの足裏には厚く弾力性のある足裏材が貼り付けられていた。
【特許文献1】特開平10−230485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の歩行ロボットの歩行制御方法では,一般的に,歩行姿勢が最も安定するように,足裏の接地位置が決定されている。この方法によると,足裏の接地位置が毎回同じ位置ということになりがちである。しかしながら,常に同じ位置を接地させて歩行した場合,上記の足裏材が偏摩耗するおそれがあった。そして,足裏材の偏摩耗が発生した場合には,足裏の接地安定性が低下するという問題点があった。そのため,足裏材の寿命を全うできないという問題点もあった。
【0005】
本発明は,前記した従来の歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,足裏材の偏摩耗の発生を抑制するとともに,偏摩耗が生じた場合であっても,その進行を抑制することを可能とする歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の歩行ロボットは,上体と2以上の脚部とを有し,脚部を用いて歩行により移動する歩行ロボットであって,脚部の足首の足首関節と,足首関節の角度により歩行時の足裏の初期接地位置を設定する初期接地位置設定部とを有し,初期接地位置設定部は,反復的に初期接地位置を変更するものである。
【0007】
本発明の歩行ロボットによれば,歩行時に足裏のうち最初に接地する位置である初期接地位置は,足首関節の角度によって設定される。足首関節に2軸の自由度を有していれば,初期接地位置を足裏の前後左右のいずれの方にも設定できる。足裏材は,初期接地位置の付近が特に摩耗するので,この初期接地位置を変更すれば,足裏材の摩耗位置も変更される。本発明では初期接地位置が反復的に変更されるので,同じ側のみが特に摩耗するおそれはない。従って,足裏材の偏摩耗が防止されている。
【0008】
さらに本発明では,初期接地位置が変更されてからの歩行時間または歩行回数をカウントするカウント部を有し,初期接地位置設定部は,カウント部のカウント値が所定値を超えた場合に初期接地位置を変更することが望ましい。
一般に,足裏材の摩耗は,歩行時間や歩行回数に応じて進んでいく。そこで,歩行時間または歩行回数のカウントによって,ある程度の摩耗が進んだことを判断することができる。このようにすれば,ある程度の摩耗が進んだら初期接地位置が変更されるので,同じ位置が続けて摩耗されることが防止されている。
【0009】
さらに本発明では,足裏の偏摩耗を検出する偏摩耗検出部を有し,初期接地位置設定部は,偏摩耗検出部で偏摩耗が検出された場合に,摩耗が進んでいない位置を新たな初期接地位置とすることが望ましい。
このようにすれば,その後は摩耗が進んでいない位置が次第に摩耗されるので,足裏全体としての摩耗状態の偏りが解消される。従って,偏摩耗が生じた場合であっても,その進行が抑制されている。
【0010】
さらに本発明では,偏摩耗検出部は,足首関節の角度により上体を傾斜させた状態での足首関節の保持トルクを測定し,測定値がしきい値を超えている場合に,足裏の傾斜方向の端部が偏摩耗していると判断することが望ましい。
足裏が偏摩耗していると,その方向へ上体を傾斜させた状態を保持するのには,より大きいトルクが必要である。従って,このようにすれば,偏摩耗の方向を歩行ロボット1自身によって検出することができる。
【0011】
また,本発明は,上体と2以上の脚部と脚部の足首の足首関節とを有し,脚部を用いて歩行により移動する歩行ロボットの歩行制御方法であって,足首関節の角度により歩行時の足裏の初期接地位置を反復的に変更する歩行ロボットの歩行制御方法にも及ぶ。
【0012】
また本発明では,初期接地位置が変更されてからの歩行時間または歩行回数をカウントし,カウント値が所定値を超えた場合に初期接地位置を変更することが望ましい。
【0013】
また本発明では,足裏の偏摩耗を検出し,偏摩耗が検出された場合に,摩耗が進んでいない位置を新たな初期接地位置とすることが望ましい。
【0014】
また本発明では,足首関節の角度により上体を傾斜させた状態での足首関節の保持トルクを測定し,測定値がしきい値を超えている場合に,足裏の傾斜方向の端部が偏摩耗していると判断することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法によれば,足裏材の偏摩耗の発生が抑制されるとともに,偏摩耗が生じた場合であっても,その進行が抑制されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
「第1の形態」
以下,本発明を具体化した第1の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,2脚を交互に前に出して2足歩行を行う歩行ロボットおよび歩行ロボットの歩行制御方法に本発明を適用したものである。
【0017】
本形態の2足歩行ロボット1は,図1に示すように,2つの脚部10R,10Lを有している。両脚部10R,10Lはそれぞれ,歩行時に接地される部分である足部11R,11Lと,その裏面に貼り付けられた足裏材12R,12Lとを有している。さらに,2足歩行ロボット1は,この足部11R,11Lを適切に移動させるための足首関節13R,13Lと膝関節14R,14Lとを有している。
【0018】
また,両脚部10R,10Lの図中上方には上体15を有し,上体15の内部にはコントローラ16が設けられている。コントローラ16は,足首関節13R,13Lや膝関節14R,14L等の角度を制御するとともに,全身のバランスをとって転倒しないように歩行する制御も司っている。なお以下では,左右を区別する必要のない場合には,RまたはLの添え字を省略して表記する。
【0019】
この2足歩行ロボット1の脚部10は左右とも,図2に示すように,足首関節13に2軸の自由度を持っている。すなわち,この足首関節13には,ロール軸21とピッチ軸22とが備えられている。さらに,ロール軸21とピッチ軸22とはそれぞれ,エンコーダ付きのモータにより,関節角を調節しつつある程度の回転ができるようになっている。なお,この図では,図中手前側を2足歩行ロボット1の進行方向(前方)とし,片足の膝より下部のみを図示している。
【0020】
この2足歩行ロボット1の歩行時には,体幹位置の制御とともに,遊脚(足裏が浮いた状態の脚部10)の膝関節や股関節の駆動によって,設定された着地位置へその足裏が接地するように制御される。このとき,足裏全体が一度に接地されるように制御することも可能である。しかしここでは,足首関節13を制御して足部11をやや傾けた状態で接地させることにより,足裏の一部分をまず接地させる。この,足裏中で,遊脚から最初に接地される位置を初期接地位置Pとする。その後,体重をその足部11にのせることにより足裏全体を接地させるとともに,各関節の角度を制御して,上体15の位置や角度等が適切に制御される。
【0021】
例えば,足首関節13のピッチ軸22を制御して,つま先側がかかと側よりやや下がった状態で足部11を接地させることができる。この場合,初期接地位置Pは,図3に上視図を示すように,足裏全体の中で前寄りの位置となる。またこれとは逆に,かかと側が下がった状態にピッチ軸22を制御して足部11を接地させることもできる。この場合には,初期接地位置Pは,図3に示したものより図中右方向,すなわち進行方向に対して後方よりの位置となる。さらには,ロール軸21を利用して足首関節の角度を変更すれば,初期接地位置Pを進行方向に対して左右方向に変化させることもできる。
【0022】
一般に,足裏材12のうち,この初期接地位置P周辺には床材との間で比較的大きな摩擦力が加わることが多い。そのため,同じ位置を長く続けて初期接地位置Pとしていると,その部分の足裏材12が他の部分より大きく摩耗する。そこで,本形態の2足歩行ロボット1では,この初期接地位置Pを所定のタイミングで変更させるのである。なお,この図3では,図中左方向を進行方向とし,右足部11Rが遊脚状態から接地する時の初期接地位置Pの例を示している。また,左足部11Lの初期接地位置は,一般的には右足部11Rの左右対称の位置となるが,独立に制御しても良い。
【0023】
次に,初期接地位置Pの変更方法の例を,図4と図5に示す。例えば,図4に示すように,初期接地位置Pを右位置P1として所定時間歩いた後,初期接地位置Pを左位置P2に変更する。さらに,初期接地位置Pを左位置P2として所定時間歩いた後,再び,初期接地位置Pを右位置P1に変更する。この初期接地位置Pの変更は,ロール軸21を構成するモータによって,初期接地時の足裏の傾きによって制御できる。
【0024】
またあるいは,図5に示すように,初期接地位置Pを前位置P3として所定時間歩いた後,初期接地位置Pを後位置P4に変更する。さらに,初期接地位置Pを後位置P4として所定時間歩いた後,再び,初期接地位置Pを前位置P3に変更する。この初期接地位置Pの変更は,ピッチ軸22を構成するモータによって,初期接地時の足裏の傾きによって制御できる。
【0025】
図5のようにピッチ軸22を制御して右足の初期接地位置Pを変更させる場合は,図6の側視図に示すように,右足部11Rの水平面Hからの角度をθ1とθ2とに変更すればよい。この変更角度は,数度程度で十分である。また,上記では所定時間歩いたら初期接地位置Pを変更するとしたが,この初期接地位置Pを変更するタイミングは歩行回数で設定してもよい。また,初期接地位置Pの変更方法は,上記の左右方向(右位置P1と左位置P2)および前後方向(前位置P3と後位置P4)のように2箇所を交互に変更するものに限らない。これらの併用や,さらに多くの初期接地位置Pを設定しておいて使い分けることもできる。
【0026】
次に,本形態の2足歩行ロボット1のコントローラ16による歩行制御処理について,図7のフローチャートを参照して説明する。コントローラ16は,経時的な歩容データに基づいて,各関節を制御する。そして,歩行の指示を受けた場合には,この処理もあわせて実行される。まず,足首関節13のロール軸21とピッチ軸22とを制御して,初期接地位置Pを第1の位置として歩行する(S101)。すなわち,遊脚状態となってから接地するまでの間に,第1の位置が低位置となるように,足首関節13の角度を調整する。足首関節13以外の各関節の制御は,従来通りであり,ここでは説明を省略する。
【0027】
次に,第1の位置で接地する歩行を開始してからの歩行時間が所定時間を超えたか,あるいは,初期接地位置Pを第1の位置とした連続歩行回数が所定回数を超えたかを判断する(S102)。そして,これらが所定値を超えていない間は(S102:No),初期接地位置Pを第1の位置とした歩行を継続する(S101)。なお,このS102の判断は,これらのいずれか一方のみをカウントすることにより判断してもよいし,両方をカウントしていずれかが超えたときで判断してもよい。
【0028】
次に,S102でYesとなったら,足首関節13のロール軸21とピッチ軸22とを制御して,初期接地位置Pを第1の位置から第2の位置へと変更する。そして,第2の位置で接地するように歩行する(S103)。そして,第2の位置で接地する歩行を開始してからの歩行時間が所定時間を超えたか,あるいは,初期接地位置Pを第2の位置とした連続歩行回数が所定回数を超えたかを判断する(S104)。S102と同様に,第2の位置での連続歩行時間または連続歩行回数が所定値を超えるまで(S104:No),そのままで歩行する(S103)。
【0029】
次に,S104でYesとなったら,第2の位置で接地する歩行を停止し,第1の位置で接地する歩行に戻す(S101)。ここで,第1の位置と第2の位置とは,異なる位置であればよく,例えば右位置P1と左位置P2,前位置P3と後位置P4等の組が利用できる。また,ここでは,2箇所を交互に使用するとしたが,より多数の初期接地位置Pを設定しておき,順に変更するようにしてもよい。以上で,この処理の説明を終了する。
【0030】
以上詳細に説明したように本形態の2足歩行ロボット1によれば,初期接地位置Pを適宜変更させて歩行する。すなわち,足裏材12の同じ位置ばかりが摩耗され続けることはなく,できるだけ均一に摩耗させることができる。従って,足裏材12の偏摩耗が防止された2足歩行ロボット1の歩行制御方法となっている。またこのようにすることにより,足裏材12として初期厚さがより薄いものを使用できるようになる。
【0031】
「第2の形態」
以下,本発明を具体化した第2の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,歩行ロボット1の制御方法が第1の形態とはやや異なるものであり,歩行ロボット1自体は第1の形態と同様のものである。
【0032】
本形態では,初期接地位置Pを変更するタイミングを歩行時間や歩行回数ではなく,摩耗度合を検出することによって決定する。そして,ある程度以上の摩耗があると判断されたら,摩耗の少ない方へ初期接地位置Pを変更するのである。この判断処理は,2足歩行ロボット1が動作指示を受けていない空き時間等に適宜行われる。あるいは,所定の時間ごとや所定回数の歩行の後に行うようにしても良い。
【0033】
まず,摩耗度合いの検出方法について説明する。摩耗度合いを検出する際には,歩行ロボット1を,両足裏を平地に接地させて立たせ,足首関節13を制御して上体15を前後左右にやや傾けた状態でそれぞれ保持させる。そして,その姿勢を保持するために必要な足首関節13のトルクを測定する。重力によってさらに倒れ込んでいったり起きあがってしまわないように保持するためのトルクである。トルクを計測する代わりに,モータの実電流やエンコーダ値を計測してもよい。
【0034】
例えば,図8に破線で示すように,ピッチ軸22方向である前方向に上体15を角度θだけ傾けさせる。そして,その状態を保持するために必要な足首関節13のピッチ軸22のトルクを計測する。また,後ろ方向へも同様に角度θだけ傾けさせ,その状態を保持するためのトルクを計測する。図8は,本形態の2足歩行ロボット1を側面から見た様子を簡略化して示したものである。
【0035】
あるいは,図9に示すように,ロール軸21方向である左方向に上体15を角度θだけ傾けさせる。そして,その状態を保持するために必要な足首関節13のロール軸21のトルクを計測する。また右方向へも同様に行う。図9は,本形態の2足歩行ロボット1を正面から見た様子を簡略化して示したものである。なおここでは,前後と左右で同じ角度θだけ傾けるとしたが,これらは異なる角度としてもよい。
【0036】
足裏材12の摩耗がなければ,前後のどちらの方向に傾けても同じトルクが必要となるはずである。また,左右でも同じトルクが必要となるはずである。これが,前後であるいは左右で異なっている場合は,偏摩耗が発生している。例えば,偏摩耗によって後方の足裏材12が前方に比べて薄くなっていれば,上体15を後方へ傾けて保持するためには,前方へ傾けて保持するよりも大きなトルクが必要となる。そこで,このトルクが所定値を超えて大きい場合には,偏摩耗が発生していると判断する。
【0037】
偏摩耗が発生していると判断された場合には,摩耗が進んでいない側へと初期接地位置Pを変更する。例えば,上記のように上体15を後方へ傾けて保持した場合のトルク値が所定値を超えている場合には,足裏材12の後端付近の摩耗が進んでいるので,初期接地位置Pを前端付近へと変更する。すなわち,図10に示すように,接地時の足首関節13のロール軸21をつま先側が下がった足首角度θaとなるように制御する。あるいは,上体15を右方向に傾けて保持した場合のトルク値が所定値を超えている場合には,初期接地位置Pを左方へと変更する。すなわち,図11に示すように,接地時のピッチ軸22を足首角度θbとなるように制御する。
【0038】
次に,本形態の2足歩行ロボット1のコントローラ16による歩行制御処理について,図12のフローチャートを参照して説明する。コントローラ16によって足裏材12の偏摩耗状態の検出指示が出されると,まず,歩行ロボット1を平地に立たせ,ピッチ軸22方向である前後方向に上体15を傾けさせる。そして,その状態を保持するために必要な足首モータのトルクを,前後それぞれについて計測する(S201)。次に,ロール軸21方向である左右方向に上体15を傾け,その状態を保持するために必要な足首モータのトルクを,左右それぞれについて計測する(S202)。
【0039】
次に,S201とS202で計測された各トルク値を,あらかじめ設定されたそれぞれの所定値と比較する(S203)。ここでの所定値は,ピッチ軸22方向とロール軸21方向とで異なる値であっても良い。また,S201,S202での上体15を傾ける角度との関係で設定されていてもよい。そして,これらのトルク値の少なくともいずれか一方が,所定値を超えていたら(S203:Yes),初期接地位置Pを変更する(S204)。
【0040】
このとき,初期接地位置Pの変更方向は,上記の測定によってトルク値が所定値を超えていた方向の逆方向へ,ロール軸21とピッチ軸22とを制御するように変更するとよい。そして,ZMPを計算して体幹位置と各関節の角度を制御して歩行する。また,S203の結果が,いずれも所定値を超えていない場合には(S203:No),初期接地位置Pを変更することなく,そのまま歩行する。以上で,この処理の説明を終了する。
【0041】
なお,上記では,上体15を各方向へ所定角度傾けた状態を保持するためのトルクを測定するとしたが,所定角度傾けた後,直立状態へ復帰するためのトルクを測定しても良い。またあるいは,所定角度傾けるために必要なトルクを測定しても良い。ただし,この方法では,トルク値が所定値より小さい場合に摩耗が進んでいると判断される。このように,種々のトルク値を利用した判断が可能である。
【0042】
以上詳細に説明したように本形態の2足歩行ロボット1の制御方法によっても,初期接地位置Pを適宜変更させて歩行する。従って,第1の形態と同様に,足裏材12の偏摩耗が防止された2足歩行ロボット1の歩行制御方法となっている。さらには,本形態の制御方法によれば,足裏材12の摩耗状態を検出して,摩耗していない方へ初期接地位置Pを変更するので,偏摩耗が生じた場合であっても,その進行が抑制されている。
【0043】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の形態では左右の足裏の初期接地位置を左右対称にするとしたが,これに限らず,点対称位置としたり,それぞれの摩耗状態に合わせて個別に設定したりしてもよい。
また例えば,2足歩行ロボット1の足数は2足に限らず,より多数有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本形態のロボットの概略構成を示す説明図である。
【図2】本形態のロボットの脚部の概略構成を示す説明図である。
【図3】足裏の接地位置の例を示す説明図である。
【図4】足裏の接地位置の例を示す説明図である。
【図5】足裏の接地位置の例を示す説明図である。
【図6】足裏の接地姿勢の例を示す説明図である。
【図7】接地位置制御の例を示すフローチャート図である。
【図8】上体の傾き姿勢の例を示す説明図である。
【図9】上体の傾き姿勢の例を示す説明図である。
【図10】足裏の接地姿勢の例を示す説明図である。
【図11】足裏の接地姿勢の例を示す説明図である。
【図12】接地位置制御の例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0045】
1 2足歩行ロボット
10R,10L 脚部
13R,13L 足首関節
16 コントローラ
P 初期接地位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上体と2以上の脚部とを有し,前記脚部を用いて歩行により移動する歩行ロボットにおいて,
前記脚部の足首の足首関節と,
前記足首関節の角度により歩行時の足裏の初期接地位置を設定する初期接地位置設定部とを有し,
前記初期接地位置設定部は,反復的に初期接地位置を変更することを特徴とする歩行ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行ロボットにおいて,
初期接地位置が変更されてからの歩行時間または歩行回数をカウントするカウント部を有し,
前記初期接地位置設定部は,前記カウント部のカウント値が所定値を超えた場合に初期接地位置を変更することを特徴とする歩行ロボット。
【請求項3】
請求項1に記載の歩行ロボットにおいて,
足裏の偏摩耗を検出する偏摩耗検出部を有し,
前記初期接地位置設定部は,前記偏摩耗検出部で偏摩耗が検出された場合に,摩耗が進んでいない位置を新たな初期接地位置とすることを特徴とする歩行ロボット。
【請求項4】
請求項3に記載の歩行ロボットにおいて,前記偏摩耗検出部は,
前記足首関節の角度により前記上体を傾斜させた状態での前記足首関節の保持トルクを測定し,
測定値がしきい値を超えている場合に,足裏の傾斜方向の端部が偏摩耗していると判断することを特徴とする歩行ロボット。
【請求項5】
上体と2以上の脚部と前記脚部の足首の足首関節とを有し,前記脚部を用いて歩行により移動する歩行ロボットの歩行制御方法において,
前記足首関節の角度により歩行時の足裏の初期接地位置を反復的に変更することを特徴とする歩行ロボットの歩行制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の歩行ロボットの歩行制御方法において,
初期接地位置が変更されてからの歩行時間または歩行回数をカウントし,
カウント値が所定値を超えた場合に初期接地位置を変更することを特徴とする歩行ロボットの歩行制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の歩行ロボットの歩行制御方法において,
足裏の偏摩耗を検出し,
偏摩耗が検出された場合に,摩耗が進んでいない位置を新たな初期接地位置とすることを特徴とする歩行ロボットの歩行制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の歩行ロボットの歩行制御方法において,
足首関節の角度により上体を傾斜させた状態での足首関節の保持トルクを測定し,
測定値がしきい値を超えている場合に,足裏の傾斜方向の端部が偏摩耗していると判断することを特徴とする歩行ロボットの歩行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−315089(P2006−315089A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136952(P2005−136952)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】