説明

歯科用セメントや関連した骨セメントに使用するホスホシリケートスラリーを得るための方法と製造物

本発明は、リン酸マグネシウムセラミックスおよびそれらの製造法に関する。本発明の組成物は、実質的に乾燥した粉末成分と液体成分とを混合することによって得られる。実質的に乾燥した粉末成分は、溶解性の乏しい酸化物粉末、アルカリ金属リン酸塩粉末、溶解性の乏しいケイ酸塩粉末、ならびに、残部として、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末を含んだ実質的に乾燥した粉末成分、を含む。液体成分は、pH調整剤、水性液中一価アルカリ金属リン酸塩、および残部としての水を含む。焼成した酸化マグネシウムを酸化物粉末として、そしてヒドロキシアパタイトを生体活性粉末として使用すると、歯科用途や整形外科用途に使用するのに特に適した自己硬化性のセラミックスが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー省が裁定した契約W-31-109-ENG-38の下、政府の支援を得て行われた。
【0002】
本発明は、歯科や整形外科における結合材として、および骨結合材として使用するリン酸マグネシウムセラミックを得るための方法とリン酸マグネシウムセラミック製品に関する。
【背景技術】
【0003】
リン酸塩コンクリートの場合とほとんど同じ方法で混合することができる急結セラミック(a quick setting ceramic)は、最初は、アルゴンヌ国立研究所によって放射性廃棄物や有害廃棄物の安定化のために開発された。この製品は一般にセラミックリート(Ceramicrete)と呼ばれ、使用する前に混合する2つの成分(粉末成分と水性成分)で構成される。最終的に得られるセラミックリート製品はリン酸マグネシウムカリウム硬化物質である。セラミックリートの利用は構造用材料の製造にも及んでいるが、その過程でホスホシリケートセラミックが開発された。セラミックリート技術における最近の開発が、幾つかの発行済み特許〔いずれも、本発明の発明者の一人であるArun S.Waghが、単独の発明者として、または共同発明者として権利を有しており、米国特許第5,645,518号(1997年7月8日付け特許取得);米国特許第5,830,815号(1998年11月3日付け特許取得);米国特許第5,864,894号(1998年12月8日付け特許取得);米国特許第6,133,498号(2000年10月17日付け特許取得);米国特許第6,153,809号(2000年11月28日付け特許取得);米国特許第6,204,214号(2001年3月20日付け特許取得);米国特許第6,498,119号B2(2002年12月24日付け特許取得);米国特許第6,518,212号B1(2003年2月11日付け特許取得);および米国特許第6,569,263号B2(2003年5月27日付け特許取得);を含み、これらの特許全てを参照により本明細書に含める〕に開示されている。

工業的利用および廃棄物管理のための結合材としてある程度の成功を収めているセラミックス材料の1つがセラミックリート結合材である。開示されているセラミックリート結合材としては、リン酸マグネシウムカリウム(MgKPO4・6H2O)等の化合物がある。これらのセラミックリート結合材は、従来の材料より多孔度がかなり低く、無毒性または不燃性であり、制御可能な速度で硬化し、ポリマー樹脂に代わるものとして低コストである。
【0004】
最終的に硬化して得られるセラミックリートホスホシリケート材料は、実質的に小孔をもたない。実質的に小孔をもたないセラミックリートは、ケイ酸カルシウム(CaSiO3)を加えて非晶質のシリコ-ホスフェート相(より結晶質のMgKPO4・6H2Oの間に形成される)を生成させるときに可能になる。最終的なセラミックリートホスホシリケート材料は、ポルトランドセメントと同等以上の圧縮強さを有する。
【0005】
しかしながら、生体適合性の成分だけが、歯科や整形外科で使用される結合材を構成することができる。たとえば、リン酸亜鉛物質は緻密で硬く、そしてさらに生体適合性を有するので、歯科材料として使用されている。しかしながら、リン酸亜鉛セメントは強度が低く、金属に対する接着性が低い。こうした理由に加え、ポルトランドセメントよりコストが高いことから、リン酸亜鉛セメントは、建設プロジェクトや廃棄物封入プロジェクトに使用するのには実用的でない。リン酸亜鉛セメントはさらに、骨組織の成長にとって望ましい成分であるリン酸カルシウムやヒドロキシアパタイトを含有しない。
【0006】
従来の結合材はいずれも、歯科と整形外科向けの生体材料工業において使用するのに必要な高い強度、低多孔度、速やかな硬化、容易な彩色、および生体活性の化学組成物をもたらさない。
【0007】
セラミックリートのもつ高強度と極めて低い多孔度が、歯科材料と骨セメントの分野にとって重要な2つの特性である。基本的なセラミックリート組成物は生体適合性を有する。しかしながら、現在設計されているセラミックリートは、歯科用途や整形外科用途において使用できるようにするための多くの特性を欠いている。これらの特性としては、室温および体温での速硬化性、硬化する前にペーストが低粘度〜高粘度のある範囲の粘度を有すること、生体活性であること、放射線不透過性であること、そして歯と骨の物質との良好な接着性などがある。セラミックリートはさらに、蛍光を発したり、フッ化物を放出したり、放射線不透過性であったり、あるいは生歯と良好な色の調和が得られるようには設計されていない。
【0008】
さらに、歯科材料と骨セメントは、人体に使用されるので、一般には発熱が少ないものでなければならず、またこのような材料としての寸法安定性は、形状を目立つ程度に膨張または変化させたりしない、というものでなければならない。さらに、使用する乾燥粉末は、滑らかな手触りおよび速やかな溶解と反応が得られるよう、きめの細かいものでなければならない。このような特性をもつ最終的なホスホシリケート硬化材料をもたらすホスホシリケート材料混合物を作り出すには、もとのセラミックリート配合物に対してかなりの改良を施すことを必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
歯科材料と整形外科用セメントの大幅な進歩が、新規の組成物と方法の開発によって達成された。しかしながら、歯科分野や医療分野においては絶えず改良が期待されているので、歯科用結合材、並びに骨を骨の他の一部分および他のセラミック修復材や金属修復材に結合するための結合材を得るための方法とそれにより得られる材料に対するさらなる改良が依然として求められている。さらに、体内に導入される材料が体を刺激して骨の形成を促し、これによって欠損を癒す、という生体活性の考え方が益々重要となっている。本発明はこうしたニーズを満たし、さらに、こうしたニーズに関連した利点を提供する。
【0010】
本発明は、化学的に結合可能な公知のホスホシリケート組成物を凌ぐ新規の改良組成物、および化学的に結合可能な公知のホスホシリケート組成物に対してこのような改良を施すための方法を提供する。本発明は2つの主要成分(すなわち、粉末成分と液体成分)を有し、これらを混合して、種々の歯科用途や整形外科用途に使用できるペーストが得られるように設計されている。本発明のペーストは、歯科材料が使用される技術分野では公知の種々の用途で、口腔内の歯科材料として使用されるように設計されている。本発明のペーストはさらに、整形外科の分野において汎用の骨セメントとして使用されるように設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のホスホシリケートセラミック混合物は、約65重量%〜約85重量%の粉末成分と約15重量%〜約35重量%の液体成分を含む。
【0012】
粉末成分は、約5重量%〜約15重量%の溶解性の乏しい(sparsely soluble)酸化物粉末、約15重量%〜約45重量%の1価アルカリ金属リン酸塩粉末、および約15重量%〜約35重量%の溶解性の乏しいケイ酸塩粉末を含む。残部の粉末成分は、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光性粉末、フッ化物放出性粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末である。さらに、材料の用途として提案されている適応症に応じて、材料を体内で使用するのにより適したものにする他の粉末を0重量%〜約25重量%加える。この粉末は、生体活性(bioactive)、生体適合性、蛍光、フッ化物放出、または放射線不透過性が得られるよう加えることができる。これらの粉末はブレンドされる。
【0013】
本発明はさらに、材料を歯科材料および/または整形外科用骨セメントとして使用するのに有用な少なくとも1つの特性を、本発明のホスホシリケート材料が有することを可能にする少なくとも1種のさらなる粉末成分を含む。当業界には周知のことであるが、このような材料にはある程度の放射線不透過性を付与させることができれば有用である。該材料が使用されている体の部分にX線を当てたときに該材料が見え、セラミックス品に置き換わっていることを医師が見つけることができるからである。このような放射線不透過性は、追加の放射線不透過性粉末成分(たとえば、無害の重金属酸化物もしくは重金属硫酸塩)を使用することによって付与することができる。歯科材料向けの粉末中にフッ化物含有化合物が含まれている場合、フッ化物は、口腔環境中に非常にゆっくりとフッ素を浸出させ、虫歯を減少させる可能性をもたらす。本発明においては、フッ化物は、材料の硬化をあまり変化を与えることなく、セラミックペースト中に容易に含有させることができる。フッ素原子は、本発明の材料からの浸出速度が極めて遅い。
【0014】
液体成分は、最大で約20重量%までのpH調整剤〔たとえば、リン酸や、二価もしくは三価金属の二水素リン酸塩(オルトリン酸、Ca(H2PO4)2・H2O、Fe(H2PO4)2・nH2O、Zn(H2PO4)2・nH2O、Al(H2PO4)3・H2O、およびH3PO4(リン酸)などを含むが、これらに限定されない)〕と、最大で約60重量%までのこれら酸性リン酸塩(MgH2PO4・H2Oを含むが、これに限定されない)の水性液中粉末と、残部としての水とを含む。本発明の材料を形成する反応を起こさせるのに、外部から熱を加える必要はない。
【0015】
本発明はさらに、紫外線に暴露されたときに蛍光を発する任意の物質を含んでよい。物質中のカリウムによって、該物質は自然にわずかに蛍光性を有するようになるが、追加の蛍光性物質(たとえば、ランタニドを含有する蛍光性ガラスやランタニド含有フッ化物)を材料中に容易に含有させることができる。
【0016】
本発明のホスホシリケート材料はさらに、材料の質感(texture)と彩色を変えるための追加の任意物質を含んでよい。当業界には周知のことであるが、質感と彩色は、歯科材料にとって重要である場合が多い。なぜなら、歯科材料は、いったん口腔に使用されると肉眼で見えることが極めて多いからである。歯科材料の彩色と質感は、周りの組織と歯の彩色および質感と調和するものでなければならない。外観的に感じの良い材料を作り出すために、また生歯と調和させるために、無害の金属酸化物もしくは金属水酸化物を粉末成分に加えて、彩色または表面光沢を付与することができる。
【0017】
歯科材料と骨セメントは、こうした材料が長期間にわたって存在することから、周囲の生体組織と容易に相互作用できるよう、ある程度の生体活性を必要とする部分に使用されることが多い。必要に応じて、公知のさらなる生体活性物質〔ヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3OH)〕を粉末成分に加えることもできるし、および/または、硬化ホスホシリケート材料を形成して硬化材料の生体活性を増大させる化学反応の間に合成してもよい。材料の硬化中に、本発明における物質が歯物質および/または骨物質と反応して、ファンデルワールス結合もしくはより弱いと思われる物理的結合とは対照的に、化学結合を形成する。本発明に対して使用される生体活性物質および/または生体適合性物質に応じて、材料の成分を体内に再吸収することもできるし、および/または、体内における組織の再生を可能にすることもある。
【0018】
口腔および/または骨に使用する前に、粉末成分をブレンドし、液体成分である酸性水溶液と混合してペーストを形成させる。ペーストが、歯科セメントまたは骨セメントに使用するのに充分なコンシステンシーを有するようになったら、ペーストを、当業界に公知の歯科材料および/または整形外科用セメントの場合と同じ方法で口腔および/または骨に使用する。本発明のペーストは当業界に知られているように適切に使用されると、材料は硬化する。
【0019】
ペーストの滑らかなコンシステンシーと硬化材料の均一性が得られるように、粉末は約400メッシュ以下(混合時間と処理時間を短縮するのに役立つ)の細かさに粉砕しなければならない。なぜなら、より小さな粒子であれば、本発明の化学反応はより速やかに進行することが可能になるからである。ある一定重量の微細粉末は、同じ重量のより大きい粉末の場合より大きな表面積を有する。反応物の表面積が増大すると、一般には、反応が平衡を達成する速度が増大する。さらに、微細粉末を使用すると、より均一なペーストの生成が可能となる。さらに、これにより、医師には混合するときのペーストが滑らか感じられるようになり、材料を骨と歯における極めて細かい孔に入り込ませることが可能になる。
【0020】
粉末の粒径を小さくすることに加えて、混合ペーストのpHを低くすれば、本発明の混合時間と処理時間が短くなる。標準的なホスホシリケート材料のペーストは、最初に混合したときには7.0未満のpHを有する。pH調整剤を添加して本発明のペーストのpHをさらに低下させることによって、混合時間と処理時間を、医師の要求どおりに短縮することができる。周囲の生体組織に対する有害な影響を避けるために、pHは約3.0より高いままであるのが理想的である。
【0021】
本発明の材料は、歯科および/または整形外科において使用するのに必要な少量のスケールで容易に混合することができる。混合時間の短縮は、超音波歯科用プローブおよび/または超音波浴を使用することによって達成することもできる。このような超音波エネルギーを使用することで粉末の速やかな溶解が可能となり、これによってペースト中の化学反応が促進される。
【0022】
本発明に関して、“混合時間(mixing time)”という用語は、粉末と液体を混合して、硬化が始まって最終的なホスホシリケート硬化材料になる前に、口腔または骨に対して使用することができる充分なコンシステンシーと化学組成をもつペーストをいかに速やかに形成させることができるか、ということの目安を表わしている。本発明に関して、“処理時間(working time)”という用語は、ペーストがもはや充分な展性がなくなる程度にまで硬化する前に、歯科または整形外科の医師が、混合されたセラミックペーストを使用してどの程度の長さの時間で処理しなければならないか、ということの目安を表わしている。本発明のペーストの混合時間は約3分以下であり、これは、歯科用材料や整形外科用材料向けには適切な混合時間である。本発明のペーストの処理時間は、材料を混合した後、約5分〜約15分である。歯科用材料や骨セメントとして使用する上では、混合時間は約3分以下、そして処理時間は約5分〜約15分であるべきであり、これらは、本発明の混合時間と処理時間に相当する。処理時間が約5分より短いと、医師は、材料を使用して作業するための充分な時間が持てない。処理時間が約15分より長いと、医師は、処置を完了するのに必要以上の多くの時間を費やさなければならず、このことは、医師と患者にとって不都合なことである。さらに、硬化の進行中に、材料が意図する場所から偶発的に分散されることがあり、このため結合されたエレメントのずれが生じることがある。
【0023】
粉末成分と液体成分を混合することによって得られる最終品は、Mg、Ca、および他の任意金属の結晶質リン酸塩および非結晶質リン酸塩を含む。
【0024】
本発明の利点は、公知のホスホシリケート材料がもつ高強度を、強くて長持ちする結合が得られるように、口腔内部および骨や関連した物質に対して使用することができる、という点である。
【0025】
本発明の他の利点は、ペーストのpHを下げることができ、このことが、粉末の粒径が小さいことと相俟って混合時間と処理時間を短縮する、という点である。
【0026】
本発明のさらに他の利点は、生体適合性材料および/または生体活性材料をホスホシリケート材料に加えることができ、これによって体内への再吸収が可能となり、新たな組織の成長が促進される、という点である。
【0027】
本発明のさらに他の利点は、医師がX線を使用して硬化材料品の配置を検知できるよう、本発明の材料に放射線不透過性の物質を加えることができる、という点である。
【0028】
本発明のさらに他の利点は、紫外線中において歯の自然の蛍光と調和するよう、本発明の材料に蛍光物質を加えることができる、という点である。
【0029】
本発明のさらに他の利点は、歯科用ホスホシリケート材料の質感および/または彩色を高めるよう、本発明の材料に粉末を加えることができる、という点である。
【0030】
本発明のさらに他の利点は、歯科用材料にフッ素を加えることができ、これによって歯科用材料の領域では虫歯の数を減らせる可能性がある、という点である。
【0031】
本発明の他の特徴と利点は、本発明の原理を、例を挙げて示している添付図面を参照しつつ、下記の好ましい実施態様のより詳細な説明を読めば明らかとなろう。
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、歯科用材料または整形外科用セメントとして使用するための、水性成分と粉末成分とを含む、速硬化性のホスホシリケート材料を作り出すための新規組成物である。本発明のスラリー組成物は、2つの主要な成分(実質的に乾燥した粉末および水溶液)を含む。本発明のホスホシリケートセラミック混合物は、約65重量%〜約85重量%の粉末成分と約15重量%〜約35重量%の水性成分を含む。粉末と水溶液との間の反応は、主として酸-塩基反応であり、結晶質物質と非晶質物質が形成される。最終的な硬化材料は、酸化物やリン酸塩のほかに、任意の放射線不透過性、彩色、蛍光、生体活性、および生体適合性を付与し、材料を歯科用基材および/または骨基材に化学的に結合させるヒドロホスフェート(hydrophosphates)を含む。
【0033】
本発明の材料は、歯根管シーラー、歯根管充填材料、歯根管修復材料、歯髄キャッピング(pulp-capping)材料、テンポラリーセメント(temporary cement)、テンポラリー修復材料、補てつクラウン(金属またはセラミック)用のセメント、インプラント用のセメント、脱臼歯用のセメント、歯の隆線を増強する材料、歯周欠損充填材、たとえば根尖切除術後などでの骨欠損充填材、歯列矯正用のブラケットセメントまたはバンドセメント、歯髄キャッピング材料、歯内治療学用の歯冠キャッピング材料、人工関節用のセメント、および骨安定化用セメントとして使用することができる。本発明の材料の用途はこれらの用途に限定されず、歯科および/または整形外科の分野において材料を必要とするいかなる用途に対しても使用することができる。
【0034】
粉末成分は、約5重量%〜約15重量%の溶解性の乏しい酸化物粉末、約15重量%〜約45重量%のアルカリ金属リン酸塩粉末、および約15重量%〜約35重量%の溶解性の乏しいケイ酸塩粉末を含む。残部の粉末成分は、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末を含む。
【0035】
好ましい実施態様においては、溶解性の乏しい酸化物粉末、一価アルカリ金属リン酸塩粉末、および溶解性の乏しいケイ酸塩粉末の合計重量%は約75重量%であり、残部の粉末成分は、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末を含む。
【0036】
溶解性の乏しい酸化物粉末は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄(FeO、Fe3O4、および/またはFe2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ランタン(La2O3)、およびこれらの組み合わせ物(これらに限定されない)を含めた、当業界に公知のセラミックリート酸化物粉末結合材を含んでよい。好ましい実施態様においては、溶解性の乏しい酸化物粉末はMgOである。他の実施態様においては、溶解性の乏しい酸化物粉末は、MgOとCaOとの混合物、Al(OH)3、Zr(OH)4、およびこれらの組み合わせ物である。
【0037】
本発明の粒径は、ペーストの滑らかなコンシステンシーと材料の均一性を得る上で重要である。従来のタイプのセラミックリートでは、粉末が約200メッシュより細かく粉砕されている。本発明においては、MgOとKH2PO4の粒径は約400メッシュ未満でなければならない。特に、微細な粒径を用いると、より均一な微細構造を有する最終硬化材料が得られる。このことは、本発明の最終的な硬化材料が、従来のセラミックリートより滑らかな表面を有する、ということを意味している。さらに、粒径がより微細であると、大量の物質を混合して反応させなければならないという廃棄物処理用途において必要とされる場合より速い硬化が可能となる。ケイ酸カルシウム粉末(細長い針状構造を有する)の任意の寸法における最大長さが約100μm以下であるという条件で、種々のケイ酸カルシウムの粒径を異なった用途に対して使用することができる。好ましい実施態様においては、ケイ酸カルシウム粉末のいずれの長さにおける平均寸法も約3μmから約10μmである。これらのより微細な粉末を使用すると、混合後に、比較的低い粘度有するワーキングペースト(a working paste)と比較的滑らかなペーストが得られる。より高い粘度を有するワーキングペーストとより粗いペーストをもたらすより粗い粉末のほうが、強度が幾らか高い。ケイ酸カルシウム(針状の粉末粒子)のアスペクト比が高いからである。
【0038】
一価アルカリ金属リン酸塩粉末は、当業界に公知のいかなるセラミックリート成分粉末〔KH2PO4(リン酸二水素カリウム)、NaH2PO4、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない〕を含んでもよい。他の実施態様においては、二価と三価の金属リン酸塩粉末〔たとえば、Mg(H2PO4)2(リン酸二水素マグネシウム)やAl(H2PO4)3(リン酸二水素アルミニウム)などがあるが、これらに限定されない〕を、一価アルカリ金属リン酸塩粉末の代わりに使用することができる。さらに他の実施態様においては、金属リン酸塩粉末は、NaH2PO4、KH2PO4、Mg(H2PO4)2、Al(H2PO4)3、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択することができる。NaH2PO4が使用される場合、MgO対NaH2PO4のモル比は約1:1であるのが好ましい。KH2PO4が使用される場合、MgO対KH2PO4のモル比は約1:1であるのが好ましい。Mg(H2PO4)2が使用される場合、MgO対Mg(H2PO4)2のモル比は約2:1である。Al(H2PO4)3が使用される場合、MgO対Al(H2PO4)3のモル比は約2:1である。
【0039】
溶解性の乏しいケイ酸塩粉末は、CaSiO3(メタケイ酸カルシウム、珪灰石としても知られている)、MgSiO3(ケイ酸マグネシウム、タルクとしても知られている)、BaSiO3(ケイ酸バリウム)、Mg3Si2O5(OH)4(クリソタイル)、およびこれらの組み合わせ物を含んでよい。
【0040】
粉末成分はさらに、約0重量%〜約25重量%の生体活性粉末〔たとえばCa5(PO4)3OH(ヒドロキシアパタイト)〕を含んでよい。ヒドロキシアパタイトの粒径が小さくて、粒子が球形(約16μmの平均直径)であってもよいし、あるいは粒子がより大きくて(最大で約500μm)針状であってもよい。特定の理論で拘束されるつもりはないが、より針状のヒドロキシアパタイトのほうがさらなる強度をもたらすと考えられる。ヒドロキシアパタイトは、天然の骨組成によく似ていて体内の組織の再生を刺激する強くて緻密な物質であることから、生体材料の用途に対して有用な成分である。ヒドロキシアパタイトが他の物質の表面上に存在すると、組織の再生が起こることがある。ヒトの骨と歯は、ヒドロキシアパタイトや他のリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム化合物を高い割合で含有する。他の実施態様においては、ヒドロキシアパタイトの前駆体であるリン酸四カルシウム(Ca4(PO4)2O)を、ヒドロキシアパタイトそのものを使用する代わりに粉末成分として使用することができる。リン酸四カルシウムが硬化すると、ヒドロリン酸カルシウム(a calcium hydrophosphate)が形成され、これが体内でリン酸四カルシウムと反応してヒドロキシアパタイトを形成する。さらに他の実施態様においては、ヒドロキシアパタイトとリン酸四カルシウムの両方を粉末成分として使用することもできる。
【0041】
X線を使用して硬化物の配置をユーザーが検知できるようにするために、本発明の組成物をより放射線不透過性となるように変性する必要がある。X線によるこのような検知は、歯科医および他の医療分野の医師にとって、X線が照射された体の部分を特定するのに役立つ。必要に応じて利用可能な粉末成分は、有害ではない種々の重金属酸化物、硫酸塩、およびフッ化物を含めた追加の放射線不透過性材料である。代表的な例としては、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化ランタン(La2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ネオジム、ジルコニア(ZrO2)、ストロンチア(SrO2)、酸化スズ(SnO2)、ならびにケイ酸バリウム含有ガラス、シリコ-アルミノバリウム含有ガラス、またはストロンチウム含有ガラス等の放射線不透過性ガラスがあるが、これらに限定されない。バリウムやストロンチウムを含有する放射線不透過性のケイ酸塩ガラスは当業界ではよく知られており、2003年6月26日付け取得の米国特許第4,936,775号と2002年5月14日付け取得の米国特許第6,387,980B2号(どちらもDentsply Research & Development Corp.に譲渡されている;これに2つの特許を参照により本明細書に含める)に開示されている。このような放射線不透過性ガラスを使用することで、口腔または他の身体部分へのX線照射にて本発明の組成物の存在を容易に視認できるようになる。好ましい実施態様においては、粉末成分は、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化セリウム、ジルコニア、ストロンチア、酸化スズ、硫酸バリウム、ケイ酸バリウムおよび/またはケイ酸ストロンチウムをベースとするガラス、ならびにこれらの組み合わせ物からなる群から選択される放射線不透過性酸化物を約0重量%〜約25重量%含む。より好ましい実施態様においては、粉末成分は、最大で約25重量%の酸化ビスマスを任意の重金属成分として含む。
【0042】
ヒドロキシアパタイトのほかにも、セラミックの生体適合性とセラミックの生体活性を高める他の材料を、粉末成分中に必要に応じて含有させることができる。このような材料の一つがペプゲン-15(PEPGEN-15)(登録商標)(合成ペプチド含有粉末)であり、この製品は、コラーゲンについて細胞結合を増強する、よく知られた特許合成化合物である(2001年7月31日付け取得の米国特許第6,263,348号に開示されており、該特許を参照により本明細書に含める)。このような材料のもう一つがバイオガラス(BIOGLASS)(登録商標)(カルシウムとリンを含有するガラス)であり、この製品は、骨組織と歯周組織の再生を促進する、よく知られた特許骨移植材料(実際には、骨刺激性で骨再吸収性である)。ペプゲンP-15(PEPGEN P-15)(登録商標)は、コロラド州レークウッドのCeraMed Dental,L.L.C.の商標である。バイオガラスは、フロリダ州ゲインズビルのフロリダ大学の商標である。好ましい実施態様においては、粉末成分は、コラーゲンについて細胞結合を強化する合成化合物、骨組織と歯周組織の再生を促進する骨移植材料、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される生体活性材料を約0重量%〜約25重量%含む。
【0043】
粉末成分中の追加材料は、必要に応じて、紫外線が当たると蛍光を発する無害の材料であってもよい。このような蛍光により、特に紫外線が当たった状態で見ると、歯科用修復材は本当の歯のように見える。本発明の組成物はカリウムを含有するので、紫外線が当たると自然にわずかに蛍光を発する。こうした蛍光現象を増大させるために、ランタニドを含有する蛍光ガラス、および/または、ランタニドを含有する酸化物を、本発明の組成物中に最大約25重量%の量にて使用することができる。このようなガラスとしては、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、酸化エルビウム、酸化ウラン、酸化イッテルビウム、酸化ネオジム、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。ランタニドを含有するガラスは当業界によく知られており、1986年7月15日付け取得の米国特許第4,600,389号、1983年2月15日付け取得の米国特許第4,374,120号、および1981年8月11日付け取得の米国特許第4,283,382号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に開示されている。このような蛍光ガラスは、歯科医が歯科用修復材の美観を向上できるよう、歯科用配合物中に使用されることが多い。ランタニドを含有する蛍光ガラスを本発明の組成物中に使用すると、歯科用修復材用に使用されたときに、材料の自然さが高められるであろう。
【0044】
粉末成分における上記の任意の補充材料のほかに、フッ化物も、本発明の組成物に加えることができる。ランタニドを含有する蛍光ガラスは、最大で約25重量%の量にて本発明の組成物中に使用することができる。このようなフッ化物としては、フッ化カルシウム、フッ化カリウム、フッ化第一スズ、フッ化物放出ガラス、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。当業界に公知のように、フッ化物は口腔環境へのフッ素の浸出が極めて遅く、したがって虫歯を減らせる可能性がある。本発明の組成物おいてはこの利点が得られる。なぜなら、本発明の組成物の硬化時間を変えることなく、フッ化物を組み込むことができるからである。特定の理論で拘束されるつもりはないが、フッ素原子は、本発明の硬化物からの浸出速度が極めて遅いと考えられる。
【0045】
本発明の粉末成分は、材料の質感と彩色を変えるための追加の物質を必要に応じて含んでよい。当業界には周知のことであるが、質感と彩色は、歯科材料にとって重要である場合が多い。なぜなら、歯科材料は、いったん口腔に使用されると肉眼で見えることが極めて多いからである。歯科材料の彩色と質感は、周りの組織と歯の彩色および質感と調和するものでなければならず、あるいは本発明の材料を使用する際に医師の助けとなるように、下にある骨、歯、および/または他の組織より目立つものでなければならない。外観的に感じの良い材料を作り出して生歯と調和させるために、あるいは生の象牙質と対比させるために、無害の金属酸化物を粉末成分に加えて、彩色または表面光沢を付与することができる。好ましい実施態様においては、粉末組成物は、Al2O3(表面光沢を付与するためのアルミナ)、Al(OH)3(表面光沢を付与するための水酸化アルミニウム)、Fe3O4(灰色を付与するための酸化鉄)、Fe2O3(赤色を付与するための酸化鉄)、CeO2(白色または黄褐色を付与するための酸化セリウム)、Bi2O3(黄色を付与するための酸化ビスマス)、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される彩色修正材料(a color altering material)および/または質感修正材料(a texture altering material)を最大で約25重量%含む。このような追加の彩色用粉末を使用すれば、硬化材料を、市場で得られる幾つかの市販製品より優れている宿主の歯または骨と、彩色、質感、および外観において調和させることができる。
【0046】
好ましい実施態様においては、予め選択した粉末組成物成分をブレンドしてから、粉末成分と水性成分とを混合する。
【0047】
本発明においては、液体成分は、最大で約20重量%のpH調整用酸、最大で約50重量%の溶液中一価アルカリ金属リン酸塩粉末、および残部としての水を含む。pH調整用酸は、任意の適切な酸であってもよいが、好ましいのはリン酸アンモニウム(NH4H2PO4)とリン酸(H3PO4)である。好ましい実施態様においては、pH調整用酸は、水性液中にて約5重量%〜約11重量%を構成するH3PO4である。好ましい実施態様においては、pH調整用酸は、水性液中にて約11重量%を構成するH3PO4である。pHを低下させると(H3PO4の使用により低下する)、本発明のホスホシリケートペーストの混合時間と処理時間が短くなる。このようなpH低下はさらに、特定の用途(たとえば、セラミッククラウンの接着)における歯のエッチングに対しても有用である。しかしながら、pHが低いと、特定の用途(たとえば歯髄キャッピング)において歯に損傷を引き起こすことがある。好ましい実施態様においては、一価アルカリ金属リン酸塩はMg(H2PO4)・H2O(リン酸二水素マグネシウム水和物)である。さらに好ましい実施態様においては、Mg(H2PO4)・H2Oを水性液中に溶解してから、液体成分と粉末成分とを約50重量%の水性液となるよう混合する。Mg(H2PO4)・H2Oを使用すると、本発明のホスホシリケートペーストの混合時間と処理時間が短くなる。全ての場合において、本発明の材料を充分に混合すれば、pHは約7になる。
【0048】
水性成分と粉末成分とを混合する場合、適切なコンシステンシーのペーストは、約3分以下で混ざり合うことができる。好ましい実施態様においては、混合時間は約2分未満である。骨セメントは、歯科用セメントより長い混合時間を要してよい。任意の実施態様においては、このような混合は、超音波歯科用プローブまたは超音波浴を使用することによって行う。超音波エネルギーを使用すると、液体中への粉末の速やかな溶解が可能となり、これによって本発明の全体的な酸-塩基反応が促進される。いったんペーストが混合されると、本発明のペーストの処理時間は、材料が混合されてから約5分〜約15分である。
【0049】
粉末成分と液体成分とが混合されると、本発明の最終的なホスホシリケートの構成成分の形成を開始させる多くの反応が起こる。
【0050】
当業界では公知のことであるが、溶解性の乏しいケイ酸塩(たとえば、ワラストナイトや蛇紋石)はわずかにアルカリ性であり、水と混合するとイオン化して、金属カチオンを放出する。たとえば、酸性水(たとえば、H3PO4、KH2PO4、またはAl(H2PO4)3等の水溶液)中に溶解したワラストナイトは、カチオンCa+2とシリケートアニオンSiO3-2を放出する。カルシウムカチオンは、リン酸塩と反応してリン酸カルシウムを形成する。シリケートアニオンがメタケイ酸(H2SiO3)を形成し、このメタケイ酸がさらに利用可能なカチオンと反応して、式5に示すようにK2SiO3を形成する。特定の理論で拘束されるつもりはないが、下記の式6で示す反応によってCaHPO4・2H2Oの形成が引き起こされると考えられる。
【0051】
CaSiO3 → Ca+2(aq)+SiO3-2 式1
H3PO4 → 2H++HPO4-2 式2
2H++SiO3-2 → H2SiO3 式3
Ca+2(aq)+HPO4-2 → CaHPO4 式4
2K++H2SiO3+2OH- → K2SiO3+2H2O 式5
Ca+2(aq)+HPO4-2+2H2O→ CaHPO4・2H2O 式6
式1と式3は、溶解性の乏しいケイ酸塩(たとえばケイ酸カルシウム)を加えると、メタケイ酸が生成する、ということを示している。メタケイ酸は引き続き、他の利用可能なカチオン(たとえば2K+)と式5に示すように反応してケイ酸塩ガラスを形成する。たとえば、リン酸水の代わりにリン酸二水素カリウムをリン酸イオンの供給物質として使用すると、メタケイ酸がK+またはH+と反応してアルカリ金属ガラスを形成する。本発明のホスホシリケートセラミック中に形成されるこのアルカリ金属ガラスがセラミック粒子間のボイドを充填し、これにより小孔のない緻密な固化セラミック製品が得られると考えられる。セラミック製品中のガラス相はさらに、セラミック製品の粒子を結びつけて高強度のセラミックを生成し、これにより得られるセラミック製品の圧縮強さと曲げ強さが増大すると考えられる。
【0052】
ケイ酸塩と結合材との化学反応後、少なくとも3種の物質、すなわち、リン酸マグネシウムカリウム(MgKPO4・6H2O)、ヒドロリン酸カルシウム(CaHPO4・2H2O)、およびケイ酸カリウム(K2SiO3)が生成される。リン酸マグネシウムカリウムは新たなホスホシリケートセラミックに対してバルク強度をもたらし、ケイ酸カリウムはバルク化合物間のボイドを充填するガラス相を生成し、この結果、ほとんど完全に緻密な生成物が得られる。ガラス相は、得られるセラミック品の小孔を減少もしくは完全に消失させ、その表面を滑らかにするという利点をもたらす。
【0053】
任意の実施態様においては、Ca4(PO4)2O(リン酸四カルシウム)を反応混合物にさらに加えて、ヒドロキシアパタイトを反応生成物として形成させることもできる。Fukaseら(「J.Dental Research,69(12),1990年12月,pp.1852-1856」における「Setting Reactions and Compressive Strengths of Calcium Phosphate Cements」)は、CaHPO4とCa4(PO4)2Oとを下記の式7に示す反応によって反応させることによって合成することができる、ということを示している。
【0054】
CaHPO4+Ca4(PO4)2O → Ca5(PO4)3OH 式7
Ca4(PO4)2Oの必要に応じた添加は、粉末混合物に加えることによって、あるいは粉末成分と液体成分との混合物に加えることによって行うことができる。プロセス中でのCa4(PO4)2Oを加えるべき適切な時点は、液体成分のpHに依存する。なぜならCa4(PO4)2Oの溶解性は、Ca4(PO4)2Oが加えられる溶液のpHにしたがって変わるからである。必要とされるCaHPO4とCa4(PO4)2Oの量は、所望のCa5(PO4)3OHの量に依存する。たとえば、25重量%のCa5(PO4)3OHが要求されるが、最初の粉末中にはCa5(PO4)3OHが存在しない場合、最初の粉末は、6重量%のCaHPO4と19重量%のCa4(PO4)2Oを含んでいなければならない。ヒトの骨と歯は、高い割合のリン酸カルシウム化合物(たとえば、ヒドロキシアパタイトや他のリン酸カルシウム)を含有する。Ca5(PO4)3OHを修復材中に保持することで、本発明のセラミック材料の生体適合性が増す。
【0055】
さらに、他の実施態様、すなわちFe2(HPO4)3、Fe3(HPO4)4、および/またはBi2(HPO4)3を含む実施態様は、下記の式8〜10に示すように、各化合物のそれぞれのヒドロリン酸塩相の生成を伴う。ヒドロリン酸塩相の色は最初の酸化物相と同じではなく、少量の酸化物だけが反応してヒドロリン酸塩を形成する。ヒドロリン酸塩は、酸化物によってもたらされる彩色に対して大きな影響は及ぼさない。
【0056】
2Fe+3+3HPO4-2 → Fe2(HPO4)3 式8
Fe+2+2Fe+3+4HPO4-2 → Fe3(HPO4)4 式9
2Bi+3+3HPO4-2 → Bi2(HPO4)3 式10
これらのヒドロリン酸塩は、それぞれの酸化物から形成されるリン酸塩相の量を増大させることによって、最終的な硬化材料の機械的特性に寄与する。
【0057】
本発明に至った研究の全てにおいて、焼成MgOは実質的に乾燥した粉末の構成成分であった。本発明において使用する粉末を製造するための最も適切な焼成法を見出すために、3つの異なった焼成法を初期スクリーニングにおいて分析した。3つの焼成法のそれぞれは異なった時間/温度プロフィールを有した。3つの方法のそれぞれにおける最高浸漬温度と加熱・冷却の速度が、3つの方法の全てにおいて異なったからである。部分焼成法の時間/温度プロフィールは、図1において見ることができる。3つの異なった焼成法が、図1にNo.01020702、No.01020701、およびNo.01020703として記載されている。最も良い焼成法はNo.01020702〔約1400℃(2552°F)で焼成し、次いで約一日間にわたって徐々に冷却する〕であることがわかった。この焼成法は、通常のセラミックリート焼成法〔約1300℃(2370°F)の最高焼成温度を有する〕とは異なる。No.01020701として示されている焼成法は、硬化中に温度が上昇しすぎた。MgO-01020703として示されている焼成法は、本発明の材料にとって許容しうるMgOをもたらしたが、粉末と液体のスラリーの粘度があまりにも高かった。
【0058】
本発明の下記実施例に使用したMgOは全て、便宜上230メッシュの篩にかけたが、実際の粒径は400メッシュ(40μm)より細かかった。使用した他の粉末は全て200メッシュより細かく〔すなわち、200メッシュのスクリーン(20μm)を通過した〕、6μmよりは大きいと思われた。任意の実施態様においては、粉末成分の一部を325メッシュ(45μm)で篩にかけることができる。MgOの粒径が重要である。なぜなら、MgO粒子の少なくとも一部が結晶成長のための核のように作用するために、少なくとも部分的に未反応のままでなければならないからである。さらに、本発明の全ての実施例において10gの実質的に乾燥した粉末ブレンドが使用され、少なくとも一日間にわたって硬化させた。下記の実施例において使用したヒドロキシアパタイトも全て、極めて微細であった。ヒドロキシアパタイトの粒径は、平均粒径が約5μmであるような粒径であった。本発明の粒径分析を図2に示す。図2のグラフの左側から右側へと上昇している暗線は、左軸に対して累加粒径を示している。粒径分布チャネルのそれぞれに対する容量パーセントは、曲線の下の面積として与えられる。この分布に対する軸は示されていないが、最大でも10容量%未満である。特定の理論で拘束されるつもりはないが、ヒドロキシアパタイトの粒径が小さいために、ヒドロキシアパイイトが本発明の硬化反応に関与できるようになると考えられる。このような関与は、普通には見られない。なぜなら、ヒドロキシアパタイトは非常に反応性が低い物質だからである。
【0059】
本発明の材料は、歯根管シーラー、歯根管充填材料、たとえば穿孔用などの歯根管修復材料、歯根管をアペキシフィケーション(apexification)用の材料、歯髄キャッピング材料、歯根管処置後のテンポラリーセメント、虫歯切削後のテンポラリー材料、テンポラリー修復材料、補てつクラウン(金属またはセラミック)用のセメント、歯科インプラント用のセメント、脱臼歯を交換または再インプラントするためのセメント、歯科用インプラントまたは入れ歯プレートの保持を容易にするための、歯の隆線を増強する材料、歯周欠損充填材、たとえば根尖切除術後などの骨欠損充填材、歯列矯正用のブラケットセメントまたはバンドセメント、歯髄キャッピング材料、充填材料上部の歯内治療学用の歯冠キャッピング材料、人工関節(たとえば、代用の腰、膝、または肩など)用のセメント、折れた骨または損傷した骨を安定化させるためのセメント、および/または骨安定化用セメントとして使用することができる。さらに、材料の粘度は、体内での意図した用途に適合するように、必要に応じてリン酸(phosphate acids)または可溶性リン酸塩を必要に応じて加えることによって調節することができる。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
本発明の第1の実施例においては、約1重量部の液体成分と約5重量部の実質的に乾燥した粉末成分とを混合して、本発明の材料を製造した。実質的に乾燥した粉末成分は、約12.5重量%のMgO、約38.5重量%のKH2PO4、約25重量%のCaSiO3、約12.5重量%のCeO2、および約12.5重量%のCa5(PO4)3OHを含んでいた。液体成分は、約11重量%のH3PO4と約89重量%の水を含んでいた。粉末成分と液体成分を約1分混合し、混合物を約10分硬化させた。最終的に得られたセラミック構造物は実質的に小孔を含まなかった。セラミックの圧縮強さの試験により、サンプルの圧縮強さは約14,000psiであることがわかった。硬化生成物は、リン酸マグネシウムカリウム六水和物を結合相として含んでいた。
【0061】
(実施例2)
本発明の第2の実施例においては、約1重量部の液体成分と約1.875重量部の実質的に乾燥した粉末成分とを混合して、本発明の材料を製造した。実質的に乾燥した粉末成分は、約10.3重量%のMgO、約27.8重量%のKH2PO4、約41.2重量%のCaSiO3、約10.3重量%のBi2O3、および約12.5重量%のCa5(PO4)3OHを含んでいた。液体成分は、約50重量%のMgH2PO4・H2Oと約50重量%の水を含んでいた。強度を最大にするために、MgH2PO4・H2Oを水に溶解してから、液体と他の粉末とを混合した。粉末成分と溶液成分を約2分混合した。ペーストは、約2.5分の処理時間を有した。本実施例の材料の圧縮強さは、約3日後には約10,017±1162psiであることがわかった。密度は1.89g/ccであり、開放気孔率は2%であった。水和相(たとえば、MgKPO4・6H2OとCaHPO4・2H2Oなど)が、ペーストの硬化後数時間で形成され、この水和相が材料の強度を高めた。
【0062】
(実施例3)
本発明の第3の実施例においては、約1重量部の液体成分と約1.875重量部の実質的に乾燥した粉末成分とを混合して、本発明の材料を製造した。実質的に乾燥した粉末成分は、約10.3重量%のMgO、約27.8重量%のKH2PO4、約41.2重量%のCaSiO3、約10.3重量%のCeO2、および約12.5重量%のCa5(PO4)3OHを含んでいた。液体成分は、約50重量%のMgH2PO4・H2Oと約50重量%の水を含んでいた。処理用ペースト(working paste)のpHは約4.34であることがわかり、したがって患者の歯髄組織または他の口腔組織に対していかなる酸性ショックも引き起こさない。MgH2PO4・H2Oを粉末混合物中に含有させた場合、最終製品の圧縮強さはわずか約900psiであり、これは歯科用途や整形外科用途としては低い。強度を最大にするために、MgH2PO4・H2Oを水に溶解してから、液体と他の粉末とを混合した。粉末と溶液を約2分混合した。ペーストは、約2.5分の処理時間を有した。水和相(たとえば、MgKPO4・6H2OとCaHPO4・2H2Oなど)が、ペーストの処理後数時間で形成され、この水和相が材料の強度を高めた。本実施例の材料の圧縮強さは、約3日後にて約8,924±142psiであることがわかった。
【0063】
(実施例4)
本発明の第4の実施例においては、約2.4重量部の液体成分と約8重量部の実質的に乾燥した粉末成分とを混合して、本発明の材料を製造した。実質的に乾燥した粉末成分は、約1重量部のMgO、約3重量部のKH2PO4、約2重量部のCaSiO3、約1重量部のCeO2、および約1重量部のCa5(PO4)3OHを含んでいた。液体成分は、約11重量%のH3PO4と約89重量%の水を含んでいた。粉末と溶液を約1分混合し、低粘度のペーストが形成され、約5分以内で硬質のセラミックに硬化した。この材料のサンプルを7つ製造し、圧縮強さに関して試験した。硬化後約3時間の時点で、本実施例の材料の2つのサンプルを圧縮強さに関して試験し、約14,170±2,754psiであることがわかった。混合後約1日の時点で、本実施例の材料の4つのサンプルを圧縮強さに関して試験し、それほど変化していないことがわかった(統計的には同じで、約13,905±149psi)。硬化後約7日の時点で、本実施例の材料の1つのサンプルを圧縮強さに関して試験し、約13,703psiであることがわかった。こうしたデータは、材料の充分な強度が、材料を混合した後の最初の3時間以内に得られるということを示しているので、材料が速硬化性であることがわかり、このため、材料がこうした強度を得るまでの長い時間を待つことを患者が望んでいない歯科での使用には、この材料が格好の材料となる。本実施例の材料の密度は約2.165g/cm3であり、開放気孔の体積は、本実施例の材料の全体積の約0.77%であることがわかった。開放気孔率(open porosity)は、水銀イントルージョンポロジメトリー(mercury intrusion porosimetry)によって測定することができなかった。なぜなら、小孔の排気のプロセスは結合水を材料から除去し、したがって測定に誤差が生じるからである。代わりに、開放気孔率の測定には水浸漬法が使用され、0.77%の開放気孔率測定は本方法の誤差限界内であり、開放気孔体積は、実際には約0に近づき得るということがわかった。本実施例は、全ての実施例のうちで最良の圧縮強さであることが分かった。
【0064】
本実施例のX線回折スペクトルを図3に示す。図3は、予想される相〔MgKPO4・6H2O、未反応のCeO2、未反応のCaSiO3、未反応のMgO、およびCa5(PO4)3OHの非常にシャープなピークによって示されている〕のほかに、CaHPO4・2H2Oの新たな相が観察されたことを示している。CaHPO4・2H2O相は生体適合性の相であり、したがって、この組成物は歯科用途や他の生体材料用途に最も適したものとなる。
【0065】
図4は、サンプルの1つにおける破断面の走査電子顕微鏡写真である。この写真は、特徴のない(おそらくは、非晶質または微晶質の)相当量の物質が存在することを示している。この材料に使用されている粉末が極めて微細であるので、材料中に形成されるMgKPO4・6H2Oの結晶は非常に微細であり、したがって顕微鏡写真において簡単には視認できない。この顕微鏡写真における唯一の顕著な特徴は、非晶質の塊中に埋め込まれているCaSiO3の細長い結晶である。細長い結晶の周りの亀裂たわみ(crack deflection)は通常、破壊靭性がより高いことを示しており、細長い結晶自体がより高い曲げ強さをもたらしている。図4は、材料中に小孔が全く存在しないことを示している。小孔がないということは、材料の多孔度がおそらくは約ゼロであるということの目に見える証拠となる。
【0066】
(さらなる実施例)
本発明に至る研究において、12のさらなる実施例を行った。これらの実験は全て、種々の割合のMgO、KH2PO4、Ca5(PO4)3OH、CeO2、およびCaSiO3を含んだ粉末成分と、水またはH3PO4の水溶液を含んだ液体成分とを使用して行った。下記の表1には、これらの研究からの結果が記載してある。最初の3つの欄は、Ca5(PO4)3OH、CeO2、およびCaSiO3のおよその重量部数である。全てのサンプルにおいて、粉末成分は、表1に記載の成分のほかに、約2重量部のMgOと約2重量部のKH2PO4を含む。第4の欄は、液体成分中のH3PO4の濃度である。第1行においてH3PO4の濃度がゼロとなっているが、これは使用した液体成分が水だけだったからである。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の第1行は、添加剤を一切含まない従来の速硬化性セラミックリートの例である。この例は、比較的低い圧縮強さを示している。表1の第2行は、従来の速硬化性セラミックリートにH3PO4を含有させており、従来のセラミックリート組成物に対して圧縮強さが約4倍増大していることがわかる。特定の理論で拘束されるつもりはないが、圧縮強さがより高いのは、H3PO4を加えたことによるものと考えられる。
【0069】
表1の第3行は、従来のセラミックリートにH3PO4を含有させ、2重量部のCaSiO3を加えた場合の例であり、材料の圧縮強さがさらに増大した。表1の第4行および第5行に示されるように、Ca5(PO4)3OHやCeO2を加えた場合にも、同様の強度増大が見られた。その後の行のサンプルは、従来のセラミックリート成分を使用してCaSiO3、Ca5(PO4)3OH、およびCeO2をH3PO4と混合すると、材料の強度が、基本となるセラミックリートより増大する、ということを示している。
【0070】
好ましい実施態様を参照しつつ本発明を説明してきたが、当業者にとっては、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってよいのはもちろんである。さらに、本発明の必須の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の開示内容に対して特定の状況または物質に適合するよう種々の改良を施すことができる。したがって、本発明は、本発明を実施する上で最良の方式として開示されている特定の実施態様に限定されることはなく、本発明は、特許請求の範囲に記載の範囲内に含まれる全ての実施態様を含む、ということが意図されている。
【0071】
クラスVキャビティにおける歯髄キャッピングに関して、本発明のセラミック材料を使用して組織学的試験を行った。類人猿(ヒヒ)において、33日後と120日後の組織構造を調べた。大きな象牙質ブリッジが形成されており、治癒硬化を示している。形成された象牙質は、望んだほどの緻密さはなかったが、得られた結果は生体適合性を示した。
【0072】
さらに、本発明の材料とリン酸亜鉛セメントの硬化を比較すべく、インビトロにて研究を行った。この研究から、歯から金属クラウンを取り除くための力は、従来のリン酸亜鉛セメントの場合も、本発明の材料の場合も同じである、ということがわかった。しかしながら、この研究はさらに、本発明のセラミック組成物の化学的耐久性がリン酸亜鉛のそれよりも優れている、ということも示した。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明の種々の実施態様の実験サンプルを作製するのに使用されるMgOの焼成における時間と温度の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の実験に使用されるヒドロキシルアパタイトの粒径分析である。
【図3】図3は、本発明のリン酸マグネシウムセラミックスの実施態様のX線回折分析である。
【図4】図4は、本発明のリン酸マグネシウムセラミックスの実施態様のサンプルの破壊表面における走査電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5重量%〜約15重量%の溶解性の乏しい酸化物粉末、約15重量%〜約45重量%のアルカリ金属リン酸塩粉末、約15重量%〜約35重量%の溶解性の乏しいケイ酸塩粉末、ならびに残部として、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末を含む、約65重量%〜約85重量%の実質的に乾燥した粉末成分;および
残部として、最大で約20重量%までのpH調整剤と、最大で約50重量%までの水性液中一価アルカリ金属リン酸塩と、残部としての水とを含む液体成分;
を含む、歯科用途や整形外科用途に使用するセラミック材料を製造するための混合物。
【請求項2】
溶解性の乏しい酸化物粉末、アルカリ金属リン酸塩粉末、および溶解性の乏しいケイ酸塩粉末が合わさって、実質的に乾燥した粉末成分の約75重量%を構成する、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項3】
溶解性の乏しい酸化物粉末、アルカリ金属リン酸塩粉末、および溶解性の乏しいケイ酸塩粉末が、それぞれ20μm未満の粒径を有する、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項4】
溶解性の乏しい酸化物粉末が、MgO、CaO、ZrO2、Zr(OH)4、FeO、Fe2O3、TiO2、La2O3、およびAl(OH)3のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項5】
溶解性の乏しい酸化物粉末が、MgO、CaO、Zr(OH)4、およびAl(OH)3を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項6】
アルカリ金属リン酸塩粉末が、KH2PO4、NaH2PO4、Mg(H2PO4)2、およびAl(H2PO4)3のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項7】
アルカリ金属リン酸塩粉末が、溶解性の乏しい酸化物粉末に対して約1:1のモル比のH2PO4;溶解性の乏しい酸化物粉末に対して約1:1のモル比のNaH2PO4;溶解性の乏しい酸化物粉末に対して約1:2のモル比のMg(H2PO4)2;および溶解性の乏しい酸化物粉末に対して約1:2のモル比のAl(H2PO4)3;からなる群から選択される、請求項6に記載のセラミック粉末。
【請求項8】
溶解性の乏しいケイ酸塩粉末が、CaSiO3、MgSiO3、BaSiO3、およびMg3Si2O5(OH)4のうちの少なくとも1種である、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項9】
溶解性の乏しいケイ酸塩粉末が約100μm以下の粒径を有する、請求項8に記載のセラミック材料。
【請求項10】
溶解性の乏しいケイ酸塩粉末が約1μm〜約20μmの粒径を有する、請求項9に記載のセラミック材料。
【請求項11】
生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末が、Ca5(PO4)3OHとCa4(PO)2Oの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項12】
少なくとも1種の粉末が、約0重量%〜約25重量%の実質的に乾燥した粉末成分を含む、請求項11に記載のセラミック材料。
【請求項13】
少なくとも1種の粉末が約5μm〜約500μmの粒径を有する、請求項11に記載のセラミック材料。
【請求項14】
生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末が、重金属酸化物、硫酸塩、フッ化物含有組成物、および放射線不透過性ガラスのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項15】
フッ化物含有組成物が、フッ化カルシウム含有ガラス、フッ化カリウム含有ガラス、フッ化第一スズ含有ガラス、およびフッ化物含有ガラスのうちの少なくとも1種であり、重金属酸化物が、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ネオジム、ジルコニア、ストロンチア、酸化スズ、および硫酸バリウムのうちの少なくとも1種であり、そして放射線不透過性ガラスが、ケイ酸バリウム含有ガラス、シリコ-アルミノバリウム含有ガラス、およびストロンチウム含有ガラスのうちの少なくとも1種である、請求項14に記載のセラミック材料。
【請求項16】
生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末が、コラーゲンについて細胞結合を向上させる合成化合物および骨組織と歯周組織の再生を促進する骨移植材料の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項17】
生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末が、少なくとも1種のランタニドを含む蛍光ガラス、および少なくとも1種のランタニドを含む酸化物、からなる群から選択される蛍光粉末を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項18】
ランタニドが、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、酸化エルビウム、酸化ウラン、酸化イッテルビウム、および酸化ネオジムのうちの少なくとも1種である、請求項17に記載のセラミック材料。
【請求項19】
生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末が、硬化したときにセラミック材料に彩色と質感をもたらすように選択された無害の金属酸化物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項20】
無害の金属酸化物が、Al2O3、Al(OH)3、Fe3O4、Fe2O3、CeO2、およびBi2O3のうちの少なくとも1種である、請求項19に記載のセラミック材料。
【請求項21】
pH調整剤がH3PO4とNH4H2PO4のうちの少なくとも1種である、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項22】
pH調整剤が約5重量%〜約15重量%の液体成分を含む、請求項21に記載のセラミック材料。
【請求項23】
水性液中一価アルカリ金属リン酸塩粉末がMgH2PO4・H2Oである、請求項21に記載のセラミック材料。
【請求項24】
約5重量%〜約15重量%の焼成MgO、約15重量%〜約45重量%のアルカリ金属リン酸塩粉末、約15重量%〜約35重量%のCaSiO3、約0.5重量%〜約25重量%のCa5(PO4)3OH、ならびに残部として、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末を含む、約65重量%〜約85重量%の実質的に乾燥した粉末成分;および
残部として、最大で約20重量%までのH3PO4と、最大で約50重量%までのMgH2PO4・H2Oと、残部としての水とを含む液体成分;
を含む、歯科用途や整形外科用途に使用するセラミック材料を製造するための混合物。
【請求項25】
約5重量%〜約15重量%の溶解性の乏しい酸化物粉末、約15重量%〜約45重量%のアルカリ金属リン酸塩粉末、約15重量%〜約35重量%の溶解性の乏しいケイ酸塩粉末、ならびに残部として、生体活性粉末、生体適合性粉末、蛍光粉末、フッ化物放出粉末、および放射線不透過性粉末からなる群から選択される少なくとも1種の粉末を含む、実質的に乾燥した粉末成分を供給する工程(ここで、前記の実質的に乾燥した粉末成分は、実質的に乾燥した成分と液体成分とを混合したときに形成される混合物の約65重量%〜約85重量%を構成する);
約0重量%〜約20重量%のpH調整剤と、約0重量%〜約50重量%の水性液中一価アルカリ金属リン酸塩と、残部としての水とを含む、液体成分を供給する工程;および
実質的に乾燥した粉末成分と液体成分とを混合してペーストを製造する工程;
を含む、歯科用セメントや整形外科用セメントとして使用するセラミックペーストの製造法。
【請求項26】
実質的に乾燥した粉末成分を供給する工程が、400μm以下の粒径を有する焼成MgOを含む溶解性の乏しい酸化物粉末を供給することを含む、請求項25に記載の製造法。
【請求項27】
MgOを約1400℃に焼成し、次いで約24時間にわたって徐々に冷却する、請求項26に記載の製造法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−501845(P2007−501845A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523246(P2006−523246)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/025470
【国際公開番号】WO2005/013923
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503366450)デンツプリー・インターナショナル・インコーポレーテッド (2)
【出願人】(506044683)アルゴン・ナショナル・ラボラトリー (1)
【Fターム(参考)】