説明

殺生物組成物及びその製造方法

無機殺生物剤及び第一の熱可塑性樹脂を含む外面を有する成形品は、良好な組合せの殺生物活性及び物理的性質を与えることができる。殺生物活性は、成形品又は多層成形品を熱成形して所望レベルの殺生物活性を有する成形品とすることによって向上させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺生物活性の向上した成形品の製造方法及び該方法で得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅及び亜鉛のような殺生物金属イオンを含む無機殺生物剤を材料に添加して殺生物性を付与することができる。かかる殺生物剤は、細菌やウイルスのような病原性生物の増殖を低減させることができる。コロイド銀、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、銀錯体、及び銀イオンを含むゼオライトのような銀系物質が公知の殺生物剤である。これらの添加剤の1つの欠点は、殺生物効果を達成するために比較的高い濃度が必要とされることである。高濃度の無機殺生物剤を使用した場合、プラスチックの材料特性(例えば、耐衝撃性、光透過率、黄色度及びヘイズ)が望ましくない状態に変化することがある。さらに、着色プラスチックシートの場合には、殺生物添加剤の添加で色が影響を受けることがある。別の欠点は、ゼオライト添加剤のコストが高いことである。
【0003】
各種ポリマー組成物に殺生物性ゼオライトの使用することは従前報告されている。米国特許第4775585号及び同第4938958号には、殺生物性ゼオライトを含むポリマー成形品が記載されている。国際公開第01/34686号には、殺生物性ゼオライトを添加し得るポリウレタンフォームのようなポリマーフォームが記載されている。国際公開第01/46900号には、殺生物性ゼオライトを含むプラスチック層をタッチスクリーンに適用し得るコンピューター用タッチスクリーンが記載されている。国際公開第02/18003号には、多糖成分及び殺生物性ゼオライトを含んでなるコーティングが記載されている。米国特許第5003683号には、抗菌性ゼオライトを含む有機ポリマーフィルム層を有する滅菌手袋が記載されている。
【0004】
ゼオライトのような殺生物性無機物質を含む成形成形品の短所として、コストが高いこと、プラスチックの性質が悪影響を受けることが挙げられる。米国特許第5566699号には、厚さ15マイクロメートル以下の殺生物性ゼオライト含有ポリマーフィルムが記載されている。かかるフィルムを基体にラミネートすれば、食品及び医療用品の包装材料として使用できる。
【0005】
現存の殺生物性プラスチック組成物及び成形品はその所期の目的に適しているが、追加の殺生物性成形品(特に、殺生物活性の向上した成形品)及びかかる成形品の製造方法に対するニーズが依然として存在している。
【特許文献1】米国特許第4775585号明細書
【特許文献2】米国特許第4938958号明細書
【特許文献3】国際公開第01/34686号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/46900号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/18003号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5003683号明細書
【特許文献7】米国特許第5566699号明細書
【特許文献8】米国特許第2071250号明細書
【特許文献9】米国特許第2071251号明細書
【特許文献10】米国特許第2130523号明細書
【特許文献11】米国特許第2130948号明細書
【特許文献12】米国特許第2241322号明細書
【特許文献13】米国特許第2312966号明細書
【特許文献14】米国特許第2465319号明細書
【特許文献15】米国特許第2512606号明細書
【特許文献16】米国特許第2933480号明細書
【特許文献17】米国特許第3047539号明細書
【特許文献18】米国特許第3093621号明細書
【特許文献19】米国特許第3211709号明細書
【特許文献20】米国特許第3646168号明細書
【特許文献21】米国特許第3790519号明細書
【特許文献22】米国特許第3884993号明細書
【特許文献23】米国特許第3894999号明細書
【特許文献24】米国特許第4059654号明細書
【特許文献25】米国特許第4166055号明細書
【特許文献26】米国特許第4217438号明細書
【特許文献27】米国特許第4584334号明細書
【特許文献28】米国特許第4774005号明細書
【特許文献29】米国特許第6071542号明細書
【特許文献30】米国特許第6187456号明細書
【特許文献31】米国特許第6585989号明細書
【特許文献32】欧州特許第00270129号明細書
【特許文献33】国際公開第00/18577号パンフレット
【特許文献34】国際公開第00/25726号パンフレット
【特許文献35】国際公開第03/049914号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
成形品の製造方法であって、無機殺生物剤及び第一の熱可塑性樹脂を含む外面を有する成形品を熱成形することによって、未成形品に比べて殺生物活性の向上した成形品を形成することを含んでなる方法が開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
開示される成形品及び多層成形品は、成形品又は多層成形品の外面に無機殺生物剤が存在することに由来する殺生物活性を有する。本明細書に開示される成形品及び多層成形品は、好ましくは従前報告された成形品に比べて向上した殺生物活性を有する。好ましくは、成形品は約2.5以上の外面からの殺生物金属放出率を有する。やはり好ましくは、成形品は25℃で24時間以上にわたり外面に接触する病原性生物の50%以上を殺すのに有効である。
【0008】
成形品の殺生物性は、最終用途に関して効力を示す。一態様では、殺生物活性は成形品の外面から放出される殺生物金属の量に関係する。別の態様では、抗菌力の程度はダウ・シェーカー試験、直接接種、及び当業者に公知の他の試験法のような幾つかの試験法の1つで測定でき、これらは最終用途に基づいて選択される。
【0009】
成形品の殺生物活性の1つの尺度は、成形品の外面からの殺生物金属(例えば、銀)放出量である。殺生物金属放出量は、好ましくは、2インチ×2インチ(0.05メートル×0.05メートル又は5cm×5cm)の試料の外面から放出される殺生物金属の量として測定される。試験すべき試料の外面を室温(即ち、25℃)で24時間にわたって硝酸ナトリウム溶液(40mLの0.8%硝酸ナトリウム)に接触させて試験溶液を生成する。次いで、試験溶液を分析して試験溶液中の殺生物金属の量をppb単位(μg/mlに相当)で測定し、かくして成形品の外面における無機殺生物剤の露出量を測定する。次いで、黒鉛炉原子吸光分光光度計を用いて試験溶液中の殺生物金属の量を測定できる。成形品の重量又は多層成形品の層の重量を基準にして2.0重量%(wt%)の無機殺生物剤を含むと共に、無機殺生物剤が無機殺生物剤の全重量を基準にして2.0wt%の殺生物金属を含む成形品に関しては、外面は約10ppb以上、好ましくは約20ppb以上、さらに好ましくは約30ppb以上、最も好ましくは約40ppb以上の殺生物金属放出量を有する。
【0010】
殺生物金属放出量は、使用する無機殺生物剤の百分率及び無機殺生物剤中の殺生物金属の百分率に依存する。殺生物金属放出量を標準化するため、下記のように放出率を定義する。
【0011】
【数1】

無機殺生物剤のwt%は、単層成形品中の総合濃度、又は多層成形品の表面層中の濃度である。殺生物金属のwt%は、無機殺生物剤中の殺生物金属のwt%である。例えば、銀の放出量が10ppbであり、成形品が2wt%の銀を含む銀ゼオライトを2wt%含む場合、放出率は(10)/(2*2)=2.5である。好ましくは、放出率は約2.5以上、さらに好ましくは約3以上、最も好ましくは約4以上である。
【0012】
成形品及び多層成形品の殺生物活性のもう1つの尺度は、抗菌力試験である。この試験は、ASTM試験E2180−01及び欧州IBRG抗菌力検定法の基礎である日本工業規格JIS−2108Zに基づいている。約10コロニー形成単位/ミリリットル(CFU/ml)の大腸菌(Escherichia coli)(以後は大腸菌(E.coli))培養物を成形品に直接接種し、プラスチックフィルムで覆って培養物を試料表面に一様に接触させればよい。培養物の容量は、例えば0.1〜0.2mlでよい。別法として、約1.3×10〜約1.4×10CFU/mlの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を試料に接種してもよい。0.1mlの培養物を50mm×50mmの成形品に接触させる。かかる試験では、殺生物性成形品に暴露しない対照試料を性能の尺度として処理試料と比較することができる。試料を37℃のインキュベーター内に24時間配置し、残った細菌数を標準の微生物学的方法で測定できる。例えば、培養物及び/又はその希釈物をトリプトン・大豆・寒天平板のような細菌の増殖に適した平板培地上に塗り広げればよい。平板を37℃で24〜48時間インキュベートし、コロニー数を計数して殺生物性成形品に暴露しない対照試料でのコロニー数と比較すればよい。抗菌力は、培養物中の大腸菌又は黄色ブドウ球菌のパーセント致死率として測定できる。成形品及び多層成形品は、好ましくは大腸菌培養物又は黄色ブドウ球菌培養物の致死率として約50%以上、好ましくは70%超、最も好ましくは約95%以上の抗菌力を有する。
【0013】
本発明者らは、例えば押出、ミリング又は成形で成形品又は多層成形品を製造した場合、成形品の本体と組成の異なるポリマーの薄膜が成形品の外面上に形成されることを見出した。この薄膜又はスキンは数オングストロームから約4ミリメートルまでの薄いものでよいが、この薄膜の存在は成形品及び/又は多層成形品の殺生物活性(即ち、殺生物金属放出量及び/又は抗菌力)を妨害することがある。成形品の十分な殺生物活性は、例えば、殺生物金属放出量として測定できる。例えば、成形品は約2.5以上の殺生物金属放出率を有するのが好ましい。
【0014】
一態様では、所望レベルの殺生物活性は、外面が無機殺生物剤及び第一の熱可塑性樹脂を含む成形品又は多層成形品によって提供できる。外面にはテクスチャー加工を施すことができる。多層成形品は第一の熱可塑性樹脂層及び第一の熱可塑性樹脂層を含んでいて、第一の熱可塑性樹脂層の第一の面が第二の熱可塑性樹脂層の第一の面の少なくとも一部分に配置されており、第一の熱可塑性樹脂層が無機殺生物剤を含んでいる。第一の熱可塑性樹脂層の第二の面は、少なくともその一部分にテクスチャー加工外面を含んでいてもよい。場合によっては、第一の熱可塑性樹脂層はキャップ層といわれることがある。第一及び第二の熱可塑性樹脂は同一のものでも異なるものでもよい。さらに、第二の熱可塑性樹脂層及び以後の層も、テクスチャー加工外面のものと同一又は異なる無機殺生物剤を含んでいてもよい。多層成形品は第一及び第二の熱可塑性樹脂層に加えて他の層を含むことができ、かかる層も第一及び第二の熱可塑性樹脂と同一又は異なる熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0015】
所望の殺生物活性は、成形品(例えば、押出シート、押出フィルム、成形成形品、成形フィルム又は成形シート)を熱成形して成形品にすることによっても達成できる。熱成形は、成形品の外面が無機殺生物剤を含むテクスチャー加工済み又はテクスチャー加工なしの成形品又は多層成形品に対して実施できる。「テクスチャー加工済み」とは、成形品の外面層が所望レベルの殺生物活性を生み出すのに有効な方法でかつ有効な程度に粗面化されていることを意味する。好ましくは、成形品は25℃で24時間にわたって外面に接触する病原性生物の50%以上を殺すのに有効である。殺生物金属放出率は、好ましくは約2.5以上であり、さらに好ましくは約3以上であり、最も好ましくは約4以上である。熱成形は、熱成形前の成形品の殺生物活性に比べて成形品の殺生物活性を向上させるのに有効な条件下で実施される。成形品又は多層成形品を熱成形した場合、成形品の表面は引き伸ばされる。理論に束縛されることはないが、この引伸ばしが成形品の表面上にある上述の薄膜の厚さを低下させ、銀放出量の向上、したがって熱成形成形品の抗菌力の向上をもたらすと考えられる。
【0016】
成形品(即ち、単層成形品)は、約50マイクロメートル(μm)ないし約25cmの厚さを有し得る。成形品は、好ましくは約50マイクロメートル以上、さらに好ましくは約0.85mm以上、最も好ましくは約1mm以上の厚さを有する。成形品はまた、好ましくは約30mm以下、さらに好ましくは約25mm以下、最も好ましくは約20mm以下の厚さを有する。
【0017】
多層成形品は、無機殺生物剤を含む第一の熱可塑性樹脂層と、第一の熱可塑性樹脂層の第一の面の少なくとも一部分に配設されてそれに接触している第二の熱可塑性樹脂層とを含んでいる。第一の熱可塑性樹脂の第二の面は、少なくともその一部分にテクスチャー加工外面を含んでいてもよい。第一の熱可塑性樹脂層は、約5〜約150μmの厚さを有し得る。第一の熱可塑性樹脂層は、好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、最も好ましくは約25μm以上の厚さを有する。第一の熱可塑性樹脂層はまた、好ましくは約90μm以下、好ましくは約80μm以下、最も好ましくは約70μm以下の厚さを有する。第二の熱可塑性樹脂層は、約50マイクロメートル(μm)ないし約25cmの厚さを有し得る。第二の熱可塑性樹脂層は、好ましくは約0.75mm以上、さらに好ましくは約0.85mm以上、最も好ましくは約1mm以上の厚さを有する。第二の熱可塑性樹脂層はまた、好ましくは約30mm以下、さらに好ましくは約25mm以下、最も好ましくは約20mm以下の厚さを有する。
【0018】
無機殺生物剤は殺生物金属を含んでいる。好適な無機殺生物剤は、水銀、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、タリウム、銀、金、銅及び亜鉛イオン並びにこれらの金属の1種以上を含む組合せを包含し得る。殺生物金属イオン(陽イオン)は、例えば細菌又は真菌細胞に吸収されると呼吸系及び電子伝達系を破壊することでその効果を及ぼすと考えられる。特に銀、金、銅及び亜鉛は、イン・ビボでの使用のためにも安全であると考えられる。銀は、生体内には実質的に吸収されないので、イン・ビボでの使用のために特に有用である。即ち、かかる材料を使用する場合には、それが健康に対して顕著な危険を引き起こすべきでない。
【0019】
殺生物金属を含む無機殺生物剤は、殺生物金属塩、殺生物金属を含むヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム又は殺生物性ゼオライト、或いはこれらの1種以上を含む組合せの形態を有し得る。殺生物金属及び金属塩は、ナノ構造(即ち、1〜100ナノメートルの粒度)を有し得る。
【0020】
好適な殺生物金属塩には、例えば、酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、塩化銀、酸化亜鉛、銅塩及びこれらの殺生物金属塩の1種以上を含む組合せがある。
【0021】
好適な殺生物性ゼオライトは、そのイオン交換可能なイオンが殺生物金属イオンで部分的又は完全にイオン交換されたものである。好適な殺生物イオンの例には、銀、銅、亜鉛、水銀、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム及びタリウムイオン並びにこれらの金属イオンの1種以上を含む組合せがある。好ましい殺生物金属イオンは、銀、銅及び亜鉛イオンである。これらの金属イオンは、単独で又は組み合わせて使用できる。また、殺生物性ゼオライトを配合した樹脂の変色を低減させるため、殺生物金属イオンに加えてアンモニウムイオンでイオン交換された殺生物性ゼオライトを使用することも可能である。
【0022】
天然ゼオライト又は合成ゼオライトのいずれも使用できる。ゼオライトは、式MO2/n−xAl−ySiO−zHOで表される三次元骨格構造を有するアルミノケイ酸塩である。一般式では、Mはイオン交換可能なイオン、一般にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンのような一価又は二価金属イオンを表し、nは(金属)イオンMの原子価を表し、x及びyはそれぞれ金属酸化物及びシリカの係数を表し、zは結晶水の数を表す。
【0023】
かかるゼオライトの例には、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、T型ゼオライト、高シリカゼオライト、方ソーダ石、モルデン沸石、方沸石、シャプチロ沸石、斜方沸石、毛沸石など及びこれらのゼオライトの1種以上を含む組合せがある。これらの例示されたゼオライトのイオン交換容量は下記の通りである。A型ゼオライト=7ミリ当量/グラム(meq/g)、X型ゼオライト=6.4meq/g、Y型ゼオライト=5meq/g、T型ゼオライト=3.4meq/g、方ソーダ石=11.5meq/g、モルデン沸石=2.6meq/g、方沸石=5meq/g、シャプチロ沸石=2.6meq/g、斜方沸石=5meq/g、及び毛沸石=3.8meq/g。このように、上述したゼオライトのすべてが、殺生物金属イオン及びアンモニウムイオンとのイオン交換を受けるのに十分なイオン交換容量を有する。これらのゼオライトは、殺生物性成形品及び層に単独で又は組み合わせて使用できる。
【0024】
殺生物性ゼオライト中の殺生物金属イオンは、一般に、ゼオライトの重量を基準にして約0.1〜約15wt%の量でゼオライトに含まれる。ゼオライトに有効な殺生物作用を付与するためには、銀イオンの比率は好ましくは約0.1〜約5wt%であり、銅及び亜鉛イオンの比率は好ましくは約0.1〜約8wt%である。ゼオライト中のアンモニウムイオンの含有量は、ゼオライトの総重量を基準にして約0.0〜約5wt%、好ましくは約0.5〜約2wt%である。「wt%」という用語は、110℃の温度で乾燥した後に秤量したゼオライトの重量に対して表した重量パーセントを意味する。
【0025】
殺生物性ゼオライトは、銀、銅及び/又は亜鉛イオンのような殺生物金属イオン及び任意にはアンモニウムイオンを含む水溶液にゼオライトを接触させてゼオライトに存在するイオン交換可能なイオンと殺生物金属イオンとの間でイオン交換を行わせることによって製造できる。かかる接触は、バッチ技術又は連続技術(例えば、カラム法)に従い、約10〜約70℃(好ましくは約40〜約60℃)の温度で約3〜約24時間(好ましくは約10〜約24時間)にわたり実施される。接触時には、ゼオライトの表面上又はゼオライトの細孔内への酸化銀などの沈着を低減させるため、混合水溶液のpHを約3〜約10、好ましくは約5〜約7)に調整する。
【0026】
水溶液を調製するためには、各々のイオン種を塩として使用できる。好適なアンモニウムイオン源には、例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びこれらのアンモニウムイオン源の1種以上を含む組合せがある。好適な銀イオン源には、例えば、硝酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、ジアミン硝酸銀及びこれらの銀イオン源の1種以上を含む組合せがある。好適な銅イオン源には、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅、過塩素酸銅、酢酸銅、テトラシアン銅カリウム及びこれらの銅イオン源の1種以上を含む組合せがある。好適な亜鉛イオン源には、例えば、硝酸亜鉛(II)、過塩素酸亜鉛、酢酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛及びこれらの亜鉛イオン源の1種以上を含む組合せがある。好適な水銀イオン源には、例えば、過塩素酸水銀、硝酸水銀、酢酸水銀及びこれらの水銀イオン源の1種以上を含む組合せがある。好適なスズイオン源には、例えば、硫酸スズがある。好適な鉛イオン源には、例えば、硫酸鉛、硝酸鉛及びこれらの鉛イオン源の1種以上を含む組合せがある。好適なビスマスイオン源には、例えば、塩化ビスマス、ヨウ化ビスマス及びこれらのビスマスイオン源の1種以上を含む組合せがある。好適なカドミウムイオン源には、例えば、過塩素酸カドミウム、硫酸カドミウム、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム及びこれらのカドミウムイオン源の1種以上を含む組合せがある。好適なクロムイオン源には、例えば、過塩素酸クロム、硫酸クロム、硫酸クロムアンモニウム、酢酸クロム及びこれらのクロムイオン源の1種以上を含む組合せがある。好適なタリウムイオン源には、例えば、過塩素酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム、酢酸タリウム及びこれらのタリウムイオン源の1種以上を含む組合せがある。異種イオン及び/又は異種イオン源の組合せを用いて単一の殺生物性ゼオライトを製造することもできる。さらに、異種の殺生物金属イオンを含むゼオライトの組合せを使用することもできる。
【0027】
イオンの含有量は、水溶液中の各イオン種(又は塩)の濃度を調整することによって調節できる。例えば、殺生物性ゼオライトがアンモニウムイオン及び銀イオンを含む場合には、約0.85〜約3.1モル/リットルのアンモニウムイオン濃度及び約0.002〜約0.15モル/リットルの銀イオン濃度を有する水溶液にゼオライトを接触させることによって、約0.5〜約5wt%のアンモニウムイオン含有量及び約0.1〜約5wt%の銀イオン含有量を有する殺生物性ゼオライトを得ることができる。殺生物性ゼオライトがさらに銅及び/又は亜鉛イオンを含む場合には、上述の量のアンモニウムイオン及び銀イオンに加えて約0.1〜約0.85モル/リットルの銅イオン及び/又は約0.15〜約1.2モル/リットルの亜鉛イオンを含む混合水溶液を使用することによって、それぞれ約0.1〜約8wt%の銅及び/又は亜鉛イオン含有量を有する殺生物性ゼオライトを製造できる。
【0028】
別法として、それぞれに単一のイオン種(又は塩)を含む別々の水溶液を使用し、ゼオライトを各溶液に個別に接触させて両者間でイオン交換を行わせることによっても殺生物性ゼオライトを製造できる。特定の溶液中での各イオン種の濃度は、前述の水溶液中でのイオン種の濃度に従って決定できる。
【0029】
イオン交換処理後、得られた殺生物性ゼオライトを水洗し、次いで乾燥すればよい。乾燥は、ピンホールのない殺生物性最終生成物の製造を可能にする。したがって、殺生物性ゼオライトと混合した樹脂から殺生物性フィルムを形成する際にゼオライトが水の蒸発又は排除を起こさないような条件下で殺生物性ゼオライトを乾燥することができる。ゼオライト中の残留含水量が約3〜5wt%に達するまで殺生物性ゼオライトを乾燥することが好ましい。そのためには、常圧下では約100〜400℃、好ましくは約150〜250℃で、減圧(例えば、約1〜30トル)下では50〜250℃、好ましくは約100〜200℃でゼオライトを乾燥することが望ましい。
【0030】
乾燥後、殺生物性ゼオライトを微粉砕して分級し、次いで所望の殺生物性組成物に配合することができる。殺生物性ゼオライトの平均粒度は、約6ミクロン以下、好ましくは約0.3〜約4ミクロン、さらに好ましくは約0.5〜約2ミクロンである。
【0031】
殺生物金属を含むヒドロキシアパタイト粒子は、例えば、米国特許第5009898号に記載されている。ヒドロキシアパタイトは、式Ca10(PO)(OH)で示されるような合成及び天然ヒドロキシアパタイトを包含する。一部のOH基がF又はBr−変化したアパタイトも使用できる。殺生物金属イオンを含む殺生物性ヒドロキシアパタイトは、ヒドロキシアパタイトの製造時に殺生物金属塩を存在させることによって、或いはヒドロキシアパタイトを殺生物金属塩と反応させることによって製造される。ヒドロキシアパタイトに含まれる殺生物金属イオンの量は、使用する殺生物金属塩の種類、処理する溶液の濃度、及び反応温度に合わせて任意に調整される。しかし、製造される殺生物性ヒドロキシアパタイトの構造がアパタイト構造から変化するのであれば、ヒドロキシアパタイト当たりの金属塩の量を30wt%以下、好ましくは0.0001〜5wt%に限定することが好ましい。
【0032】
殺生物金属を含むリン酸ジルコニウムは、例えば、米国特許第5296238号、同第5441717号及び同第5405644号に記載されている。好適なリン酸塩はM(PO)・nHOで表すことができる。式中、Mは銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウム及びクロムから選択される1種以上の元素を表し、Mは四価金属元素から選択される1種以上の元素を表し、Aは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びアンモニウムイオンから選択される1種以上のイオンを表し、nは0≦n≦6を満足する数であり、a及びbは正数であってla+mb=1又はla+mb=2(式中、lはMの原子価を表し、mはAの原子価を表す。)を満足し、a及びbがla+mb=1を満足する場合、cは2、dは3であり、a及びbがla+mb=2を満足する場合、cは1、dは2である。
【0033】
無機殺生物剤を1種以上の熱可塑性樹脂及び任意の追加添加剤と混合することによって殺生物性熱可塑性樹脂組成物が製造される。無機殺生物剤は、殺生物性熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして約0.1〜約20重量%(wt%)の量で使用できる。無機殺生物剤は、好ましくは殺生物性熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして約0.2wt%以上、さらに好ましくは約0.5wt%以上、最も好ましくは約1wt%以上の量で存在する。無機殺生物剤は、好ましくは殺生物性熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして約15wt%以下、さらに好ましくは約10wt%以下、最も好ましくは約5wt%以下の量で存在する。実際には、殺生物性熱可塑性樹脂組成物は単層成形品又は多層成形品の1層を形成するために使用できる。
【0034】
殺生物層、成形品及び多層成形品を形成するための殺生物性熱可塑性樹脂は、層状に形成し得る限り、適当な熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂の組合せからなる。多層成形品では、複数の層は同一又は異なる熱可塑性樹脂又は樹脂混合物からなり得る。使用できる熱可塑性樹脂は、オリゴマー、ポリマー、イオノマー、デンドリマー、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーやスターブロックコポリマーやランダムコポリマーなどのコポリマー及びこれらのポリマーの1種以上を含む組合せである。かかる熱可塑性樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネートとスチレンのコポリマー、ポリカーボネート−ポリブタジエンブレンド、ポリカーボネートブレンド、コポリエステルポリカーボネート、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート樹脂のようなポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、コポリエステル樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアクリル樹脂、ポリアセタール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンゾイミタゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン樹脂、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリ塩化ビニル及びこれらの樹脂の1種以上を含む組合せがある。好ましい熱可塑性樹脂には、(General Electric Co.からLexan(登録商標)として入手できる)ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレンブレンド(例えば、General Electric Co.から入手できるNoryl(登録商標)樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(例えば、General Electric Co.から入手できるUltem(登録商標)樹脂)、ポリブチレンテレフタレート−ポリカーボネートブレンド(例えば、General Electric Co.から入手できるXenoy(登録商標)樹脂)、コポリエステルカーボネート樹脂(例えば、General Electric Co.から入手できるLexan(登録商標)SLX樹脂)及びこれらの樹脂の1種以上を含む組合せがある。特に好ましい樹脂には、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル又はこれらの樹脂の1種以上を含む組合せのホモポリマー及びコポリマーがある。
【0035】
本明細書で使用する「ポリカーボネート」、「ポリカーボネート組成物」及び「芳香族カーボネート連鎖単位を含む組成物」という用語は、下記の式(I)の構造単位を有する組成物を包含する。
【0036】
【化1】

式中、R基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、その残部は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。好ましくは、Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは下記の式(II)の基である。
【0037】
【化2】

式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAとを隔てる1つ又は2つの原子を有する橋かけ基である。場合によっては、1つの原子がAとAとを隔てている。この種の基の非限定的な具体例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンである。橋かけ基Yは、例えば、メチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデンのような炭化水素基又は飽和炭化水素基である。
【0038】
ポリカーボネートは、ただ1つの原子がAとAとを隔てているジヒドロキシ化合物の界面反応で製造できる。本明細書で使用する「ジヒドロキシ化合物」という用語は、例えば、下記の一般式(III)を有するビスフェノール化合物を包含する。
【0039】
【化3】

式中、R及びRの各々はハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは下記の式(IV)の基の1つを表す。
【0040】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基、酸素又は硫黄である。また、R及びRは一緒になって置換又は非置換環を形成し得る。
【0041】
好適なジヒドロキシ化合物の非限定的な具体例としては、米国特許第4217438号に名称或いは式(一般式又は特定式)で開示されたジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。式(III)で表すことができる種類のビスフェノール化合物の具体例の非排他的リストは、下記のものを包含する。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後は「ビスフェノールA」又は「BPA」)、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、及び
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン。
【0042】
式(III)で表すことができる他のビスフェノール化合物には、Xが−O−、−S−、−SO−又は−S(O)−であるものがある。かかるビスフェノール化合物の具体例を幾つか挙げると、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン及びこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0043】
ポリカーボネートの重縮合で使用できる他のビスフェノール化合物は、下記の式(V)で表される。
【0044】
【化5】

式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、又はハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4の値を有する。nが2以上である場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。式(V)で表すことができるビスフェノール化合物の例は、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物(例えば、5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−ブチルレゾルシン、5−t−ブチルレゾルシン、5−フェニルレゾルシン、5−クミルレゾルシンなど)、カテコール、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン(例えば、3−メチルヒドロキノン、3−エチルヒドロキノン、3−プロピルヒドロキノン、3−ブチルヒドロキノン、3−t−ブチルヒドロキノン、3−フェニルヒドロキノン、3−クミルヒドロキノンなど)及びこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0045】
下記の式(VI)で表される2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオールのようなビスフェノール化合物も使用できる。
【0046】
【化6】

好適なポリカーボネートには、さらに、アルキルシクロヘキサン単位を含むビスフェノールから導かれるものがある。かかるポリカーボネートは、下記の式(VII)に対応する構造単位を有する。
【0047】
【化7】

式中、R〜Rは各々独立に水素、C〜C12ヒドロカルビル、又はハロゲンであり、R〜Rは各々独立に水素又はC〜C12ヒドロカルビルである。本明細書で使用する「ヒドロカルビル」とは、炭素及び水素のみを含む残基をいう。かかる残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、枝分れ、飽和又は不飽和である。ヒドロカルビル残基は、置換残基の炭素及び水素に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。かくして、かかるヘテロ原子を含むと特記された場合、ヒドロカルビル残基はカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含んでいてもよいし、或いはヒドロカルビル残基の主鎖内にヘテロ原子を含んでいてもよい。アルキルシクロヘキサン含有ビスフェノール(例えば、2モルのフェノール類と1モルの水素化イソホロンとの反応生成物)は、高いガラス転移温度及び高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーの製造に有用である。かかるイソホロンビスフェノール含有ポリカーボネートは、下記の式(VIII)に対応する構造単位を有する。
【0048】
【化8】

式中、R〜Rは上記に定義した通りである。非アルキルシクロヘキサンビスフェノールを含むポリカーボネートコポリマー及びアルキルシクロヘキシルビスフェノール含有ポリカーボネートと非アルキルシクロヘキシルビスフェノールポリカーボネートとのブレンドを含め、これらのイソホロンビスフェノール系ポリマーは、Bayer Co.からAPECの商品名で供給されている。好ましいビスフェノール化合物はビスフェノールAである。
【0049】
ジヒドロキシ化合物をヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)と反応させてポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを生成できる。好ましくは、ポリカーボネート−ポリ(ジオルガノシロキサン)コポリマーは、BPAのようなジヒドロキシ化合物とヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)との混合物に界面反応条件下でホスゲンを導入することによって製造できる。反応体の重合は、第三アミン触媒又は相間移動触媒の使用で促進できる。
【0050】
ヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)は、下記の式(IX)のシロキサンヒドリドと脂肪族不飽和一価フェノールとの間で白金触媒付加を行うことによって製造できる。
【0051】
【化9】

式中、Rは例えばC(1−8)アルキル基、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロプロピル)又はシアノアルキル基、或いはフェニル、クロロフェニル及びトリルのようなアリール基である。Rは、好ましくはメチル、又はメチルとトリフルオロプロピルの混合物、又はメチルとフェニルの混合物である。
【0052】
ヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)の製造に使用できる脂肪族不飽和一価フェノールの幾つかの具体例は、例えば、オイゲノール、2−アルキルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノールなど及びこれらのフェノール類の1種以上を含む組合せである。
【0053】
典型的なカーボネート前駆体には、ハロゲン化カルボニル(例えば、塩化カルボニル(ホスゲン)及び臭化カルボニル)、ビスハロギ酸エステル(例えば、ビスフェノールAやヒドロキノンなどの二価フェノールのビスハロギ酸エステル、及びエチレングリコールやネオペンチルグリコールのようなグリコールのビスハロギ酸エステル)並びにジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート、ジ(トリル)カーボネート及びジ(ナフチル)カーボネート)がある。界面反応にとって好ましいカーボネート前駆体は、塩化カルボニルである。
【0054】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーの使用が所望される場合には、2種以上の二価フェノールの重合から得られるポリカーボネート、或いは二価フェノールとグリコール、ヒドロキシ−若しくは酸−末端ポリエステル、二塩基酸、ヒドロキシ酸又は脂肪族二酸とのコポリマーを使用することも可能である。一般に、有用な脂肪族二酸は約2〜約40の炭素原子を有する。好ましい脂肪族二酸はドデカン二酸である。
【0055】
コア層には、枝分れポリカーボネート及び線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも使用できる。枝分れポリカーボネートは、重合時に枝分れ剤を添加することによって製造できる。これらの枝分れ剤は3以上の官能基を含む多官能性有機化合物からなり、官能基はヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル及びこれらの枝分れ剤の1種以上を含む組合せでよい。その具体例には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)−α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸など及びこれらの枝分れ剤の1種以上を含む組合せがある。枝分れ剤は、所定の層のポリカーボネートの総重量を基準にして約0.05〜約4.0wt%のレベルで添加できる。
【0056】
ポリカーボネートは、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応で製造できる。ポリカーボネートの製造に使用できる炭酸ジエステルの例は、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ビス(o−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(o−エトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(o−プロポキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス−o−メトキシフェニルカーボネート、ビス(o−ブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(イソブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、o−メトキシカルボニルフェニル−o−エトキシカルボニルフェニルカーボネート、ビス−o−(tert−ブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、o−エチルフェニル−o−メトキシカルボニルフェニルカーボネート、p−(tert−ブチルフェニル)−o−(tert−ブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス−メチルサリチルカーボネート、ビス−エチルサリチルカーボネート、ビス−プロピルサリチルカーボネート、ビス−ブチルサリチルカーボネート、ビス−ベンジルサリチルカーボネート、ビス−メチル−4−クロロサリチルカーボネートなど及びこれらの炭酸ジエステルの1種以上を含む組合せである。好ましい炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネート又はビス−メチルサリチルカーボネートである。
【0057】
好ましくは、ポリカーボネートの重量平均分子量は約3000〜約1000000グラム/モル(g/モル)である。ポリカーボネートは、好ましくは約10000〜約100000g/モルの分子量を有する。ポリカーボネートは、さらに好ましくは約20000〜約50000g/モルの分子量を有する。ポリカーボネートは、最も好ましくは約25000〜約35000g/モルの分子量を有する。
【0058】
本明細書で使用する「ポリスチレン」という用語は、バルク重合、懸濁重合及び乳化重合をはじめとする当技術分野で公知の方法で製造され、下記の式のモノマーから導かれる構造単位を25重量%以上含むポリマーを包含する。
【0059】
【化10】

式中、Rは水素、低級アルキル又はハロゲンであり、Zはビニル、ハロゲン又は低級アルキルであり、pは0〜約5である。これらの樹脂には、スチレン、クロロスチレン及びビニルトルエンのホモポリマー、スチレンとアクリロニトリル、ブタジエン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸で例示される1種以上のモノマーとのランダムコポリマー、並びにブレンド及びグラフトからなるゴム変性ポリスチレン(ここで、ゴムはポリブタジエン又は約98〜約70%のスチレンと約2〜約30%のジエンモノマーとのゴム状コポリマーである。)がある。
【0060】
ポリアルキルメタクリレートは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)をからなり得る。ポリメチルメタクリレートは、メチルメタクリレートモノマーの重合で製造できる。ポリメチルメタクリレートは、ポリメチルメタクリレートホモポリマー又はポリメチルメタクリレートと1種以上のC〜Cアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート)とのコポリマーからなり得る。一般にポリメチルメタクリレートホモポリマーは、ホモポリマーとして又はメチルメタクリレートと1種以上のC〜Cアルキルアクリレートとの1種以上のコポリマーとして商業的に入手できる。
【0061】
好適なポリエステルには、約2〜約10の炭素原子を含む脂肪族、脂環式又は芳香族ジオール又はこれらの混合物と脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルボン酸とから導かれ、下記の一般式の繰返し単位を有するものがある。
【0062】
【化11】

式中、R及びRは各々独立に二価C〜C20脂肪族基、C〜C12脂環式アルキル基又はC〜C24芳香族基である。
【0063】
ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチレングリコールのようなグリコール、或いは1,4−ブタンジオール、ヒドロキノン又はレゾルシノールのようなジオールである。
【0064】
脱炭酸残基Rで表される芳香族ジカルボン酸の例は、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4′−ジカルボキシジフェニルエーテル4,4′−ビス安息香酸及びこれらの混合物である。これらの酸のすべてが1以上の芳香核を含んでいる。縮合環を含む酸(例えば、1,4−、1,5−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸)も存在し得る。好ましいジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はこれらの混合物である。
【0065】
好ましい脂環式ポリエステルは、下記の式(XII)の繰返し単位を有するポリ(1,4−シクロヘキサンジメタノール−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)である。
【0066】
【化12】

この場合、式(XI)におけるRはシクロヘキサン環であり、Rはシクロヘキサンジカルボキシレート又はその化学的同等物から導かれるシクロヘキサン環であり、そのシス異性体、トランス異性体、及びシス異性体とトランス異性体の混合物から選択される。脂環式ポリエステルポリマーは、一般に、適当量(一般に最終生成物の総重量を基準にして約50〜400ppmのチタン)の好適な触媒(例えば、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート)の存在下で製造できる。
【0067】
PCCDは、一般にポリカーボネートと完全に混和し得る。ポリカーボネート−PCCD混合物は、265℃、2.16キログラムの荷重、及び4分の滞留時間で測定した場合、約5立方センチメートル/10分(cc/10min又はmm/10min)以上で約150立方センチメートル/10分以下のメルトボリュームレートを有することが一般に望ましい。この範囲内では、265℃、2.16キログラムの荷重、及び4分の滞留時間で測定した場合、約7cc/10min以上、好ましくは約9cc/10min以上、さらに好ましくは約10cc/10min以上のメルトボリュームレートを有することが一般に望ましい。やはりこの範囲内では、約125cc/10min以下、好ましくは約110cc/10min以下、さらに好ましくは約100cc/10min以下のメルトボリュームレートが望ましい。
【0068】
ポリカーボネートと混合できる他の好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)(PETG)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)及びこれらのポリエステルの1種以上を含む組合せである。
【0069】
他のポリマーと混合できる別の好ましいポリエステルは、ポリアリーレートである。ポリアリーレートとは、一般的には芳香族ジカルボン酸とビスフェノールとのポリエステルをいう。アリールエステル結合に加えてカーボネート結合を含むポリアリーレートコポリマーはポリエステルカーボネートと呼ばれ、やはり混合物に有利に使用できる。ポリアリーレートは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル生成誘導体とビスフェノール又はその誘導体とから溶液重合又は溶融重合で製造できる。
【0070】
一般に、ポリアリーレートは、1種以上の芳香族ジカルボン酸残基と共にジフェノールから導かれる1種以上のジフェノール成分を含むことが好ましい。下記の式(XIII)で示される好ましいジフェノール残基は、1,3−ジヒドロキシベンゼン成分(本明細書全体を通じてレゾルシノール又はレゾルシノール成分という)から導かれる。レゾルシノール又はレゾルシノール成分は、非置換1,3−ジヒドロキシベンゼン及び置換1,3−ジヒドロキシベンゼンの両方を包含する。
【0071】
【化13】

式(XIII)において、RはC1〜12アルキル又はハロゲンであり、bは0〜3である。好適なジカルボン酸残基には、単環式成分(好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸とテレフタル酸の混合物)或いは多環式成分(例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸など及びこれらの多環式成分の1種以上を含む組合せ)から導かれる芳香族ジカルボン酸残基がある。好ましい多環式成分はナフタレン−2,6−ジカルボン酸である。
【0072】
好ましくは、芳香族ジカルボン酸残基は、下記の式(XIV)で一般的に示されるようなイソフタル酸及び/又はテレフタル酸の混合物から導かれる。
【0073】
【化14】

したがって、一実施形態では、ポリアリーレートは下記の式(XIV)(式中、R及びnは式(XV)に関して前記に定義した通りである。)で示されるようなレゾルシノールアリーレートポリエステルからなる。
【0074】
【化15】

式中、RはC1−12アルキル又はハロゲンの1種以上であり、cは0〜3であり、dは約8以上である。Rは水素であることが好ましい。好ましくは、cは0であり、dは約10〜約300である。イソフタレートとテレフタレートとのモル比は約0.25:1〜約4.0:1である。
【0075】
別の実施形態では、ポリアリーレートは、下記の式(XV)で示されるような多環式芳香族基を有する熱安定性レゾルシノールアリーレートポリエステルからなる。
【0076】
【化16】

式中、RはC1−12アルキル又はハロゲンの1種以上であり、eは0〜3であり、fは約8以上である。
【0077】
別の実施形態では、ポリアリーレートを共重合させることによって、カーボネートブロック及びアリーレートブロックを含むブロックコポリエステルカーボネートが生成される。これらは、下記の式(XVII)の構造単位を含むポリマーを包含する。
【0078】
【化17】

式中、各Rは独立にハロゲン又はC1−12アルキルであり、rは1以上であり、sは約0〜約3であり、各Rは独立に二価有機基であり、tは約4以上である。好ましくは、rは約10以上、さらに好ましくは約20以上、最も好ましくは約30〜約150である。好ましくは、rは約3以上、さらに好ましくは約10以上、最も好ましくは約20〜約200である。例示的な実施形態では、rは約20〜約50の量で存在する。
【0079】
ポリエステルの重量平均分子量は、約500〜約1000000グラム/モル(g/モル)であることが一般に望ましい。ポリエステルは、好ましくは約10000〜約200000g/モルの重量平均分子量を有する。ポリエステルは、さらに好ましくは約30000〜約150000g/モルの重量平均分子量を有する。ポリエステルは、最も好ましくは約50000〜約120000g/モルの重量平均分子量を有する。キャップ層で使用するポリエステルに関する例示的な分子量は、60000〜120000g/モルである。これらの分子量は、ポリスチレン標準に対して測定される。
【0080】
上記のポリエステルは、脂肪族酸及び/又は脂肪族ポリオールから導かれる少量(例えば、約0.5〜約30wt%)の単位を含んでコポリエステルを生成することができる。脂肪族ポリオールには、ポリ(エチレングリコール)のようなグリコールがある。かかるポリエステルは、例えば、米国特許第2465319号及び同第3047539号の教示に従って製造できる。
【0081】
好適なポリエステルには、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(「PBT」)及びポリ(プロピレンテレフタレート)(「PPT」)がある。1種の好ましいPBT樹脂は、約70モル%以上(好ましくは約80モル%以上)がテトラメチレングリコールからなるグリコール成分と、約70モル%以上(好ましくは約80モル%以上)がテレフタル酸及びそのポリエステル生成誘導体からなる酸成分とを重合させて得られるものである。好ましいグリコール成分は、エチレングリコール、トリメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチレングリコールのような他のグリコールを約30モル%以下(好ましくは約20モル%以下)含んでいる。好ましい酸成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェノキシエタンジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、セバシン酸、アジピン酸及びそのポリエステル生成誘導体のような他の酸を約30モル%以下(好ましくは約20モル%以下)含んでいる。
【0082】
ブロックコポリマー樹脂成分も有用であり、(a)直鎖又は枝分れポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)と、(b)線状脂肪族ジカルボン酸及び任意には芳香族二塩基酸(例えば、テレフタル酸又はイソフタル酸)と1種以上の直鎖又は枝分れ二価脂肪族グリコールとのコポリエステルとのエステル交換反応で製造できる。例えば、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)をアジピン酸とエチレングリコールとのポリエステルと混合し、混合物を235℃で加熱して成分を溶融し、さらにブロックコポリエステルの生成が完了するまで減圧下で加熱すればよい。第二の成分として、置換ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(1,6−ヘキシレンアゼレート−コ−イソフタレート)、ポリ(1,6−ヘキシレンアジペート−コ−イソフタレート)などが存在し得る。この種の例示的なブロックコポリマーは、General Electric Company(ピッツフィールド、米国マサチューセッツ州)からVALOX(登録商標)330の商品名で商業的に入手できる。
【0083】
包含され得るポリオレフィンは一般構造C2nを有するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリイソブチレンを包含する。好ましいホモポリマーは、ポリエチレン、LLPDE(線状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)及びアイソタクチックポリプロピレンである。この一般構造のポリオレフィン樹脂及びその製造方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第2933480号、同第3093621号、同第3211709号、同第3646168号、同第3790519号、同第3884993号、同第3894999号、同第4059654号、同第4166055号及び同第4584334号に記載されている。
【0084】
ポリオレフィンのコポリマー(例えば、エチレンとプロピレンや4−メチルペンテン−1のようなα−オレフィンとのコポリマー)も使用できる。エチレンとC〜C10モノオレフィンと非共役ジエンとのコポリマー(本明細書ではEPDMコポリマーという)も好適である。EPDMコポリマー用の好適なC〜C10モノオレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセンがある。好適なジエンには、1,4−ヘキサジエン並びに単環式及び多環式ジエンがある。エチレンと他のC〜C10モノオレフィンモノマーとのモル比は約95:5〜約5:95の範囲内にあると共に、ジエン単位は約0.1〜約10モル%の量で存在し得る。EPDMコポリマーは、米国特許第5258455号に開示されているようにポリフェニレンエーテル上にグラフトするため、アシル基又は求電子基で官能化し得る。
【0085】
ポリアミド樹脂は、アミド基(−C(O)NH−)の存在を特徴とする、ナイロンとして知られる樹脂族の総称である。ナイロン6及びナイロン6,6が一般に好ましいポリアミドであり、様々な商業的供給源から入手できる。しかし、ナイロン4,6、ナイロン12、ナイロン6,10、ナイロン6,9、ナイロン6/6T及びナイロン6,6/6T(ただし、トリアミン含有量約0.5重量%未満)のような他のポリアミド、並びに非晶質ナイロンのような他のものも、特定のPPE−ポリアミド用途のために有用である。各種ポリアミドの混合物並びに各種のポリアミドコポリマーも有用である。
【0086】
ポリアミドは、米国特許第2071250号、同第2071251号、同第2130523号、同第2130948号、同第2241322号、同第2312966号及び同第2512606号に記載されたもののような多数の公知方法で得ることができる。例えば、ナイロン6はカプロラクタムの重合生成物である。ナイロン6,6は、アジピン酸と1,6−ジアミノヘキサンとの縮合生成物である。同様に、ナイロン4,6はアジピン酸と1,4−ジアミノブタンとの縮合生成物である。アジピン酸のほか、ナイロンの製造にために有用な他の二酸には、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、並びにテレフタル酸及びイソフタル酸などがある。他の有用なジアミンには、とりわけ、m−キシリレンジアミン、ジ(4−アミノフェニル)メタン、ジ(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノシクロヘキシル)プロパンがある。カプロラクタムと二酸及びジアミンとのコポリマーも有用である。
【0087】
ポリエーテルは、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルイミドを包含する。これらのポリマーは、ジヒドロキシ芳香族化合物の塩(例えば、ビスフェノールA二ナトリウム塩)をジハロ芳香族分子(例えば、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、類似のケトン、及び1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンで例示されるようなビス(ハロフェニル)ビスイミド又はビス(ニトロフェニル)ビスイミド)と反応させることによって製造できる。
【0088】
多層成形品では、第一の熱可塑性樹脂層及び第二の熱可塑性樹脂層は、同一又は異なる熱可塑性樹脂からなり得る。多層シートの成形時に、第二の層で使用される熱可塑性樹脂の溶融粘度を、第一の層で使用される熱可塑性樹脂の溶融粘度と整合させることが望ましい場合がある。第一の層の熱可塑性樹脂の溶融粘度は、第二の層の熱可塑性樹脂の溶融粘度の約20%以内、約10%以内、さらには約5%以内にある。多層シートの成形時に2種の融液が最初に接触する時点で、第一の層で使用される熱可塑性樹脂の溶融粘度が第二の層で使用される熱可塑性樹脂の溶融粘度に実質的に等しいことが望ましい場合がある。実質的に等しいとは、多層シートの成形時に2種の融液が最初に接触する時点で、第一の層で使用される熱可塑性樹脂の溶融粘度が第二の層で使用される熱可塑性樹脂の溶融粘度の約1%以内にあることを意味する。
【0089】
成形品では、熱可塑性樹脂は成形品の総重量を基準にして約70〜約99.9wt%の量で使用できる。この範囲内では、成形品の総重量を基準にして約75wt%以上、好ましくは約80wt%以上、さらに好ましくは約85wt%以上の量が使用できる。やはりこの範囲内では、成形品の総重量を基準にして約98wt%以下、好ましくは約97wt%以下、さらに好ましくは約95wt%以下の量が望ましい。
【0090】
多層成形品では、第一の層の熱可塑性樹脂は第一の層の総重量を基準にして約70〜約99.9wt%の量で使用できる。この範囲内では、第一の層の総重量を基準にして約75wt%以上、好ましくは約80wt%以上、さらに好ましくは約85wt%以上の量が使用できる。やはりこの範囲内では、第一の層の総重量を基準にして約98wt%以下、好ましくは約97wt%以下、さらに好ましくは約95wt%以下の量が望ましい。加えて、第二の層の熱可塑性樹脂は第二の層の総重量を基準にして約70〜約100wt%の量で使用できる。この範囲内では、第二の層の総重量を基準にして約75wt%以上、好ましくは約80wt%以上、さらに好ましくは約85wt%以上の量が使用できる。やはりこの範囲内では、第二の層の総重量を基準にして約98wt%以下、好ましくは約97wt%以下、さらに好ましくは約95wt%以下の量が望ましい。
【0091】
殺生物層及び成形品は、例えば、酸化防止剤、難燃剤、滴下抑制剤、染料、顔料、着色剤、UV安定剤、熱安定剤、小粒子鉱物(例えば、粘土、雲母及びタルク)、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤及びこれらの添加剤の1種以上を含む組合せのような任意添加剤の有効量を適宜含んでいてもよい。また、例えば成形品が筐体として使用される透明成形品である場合には、IR遮熱添加剤も使用できる。好適なIR遮熱添加剤は六ホウ化ランタンである。これらの添加剤は当技術分野で公知であり、その有効レベル及び配合方法も同様である。添加剤の有効量は広範囲に変化し得るが、通常は殺生物性成形品及び/又は殺生物層の重量を基準にして約50重量%以下又はそれ以上の量で存在する。
【0092】
好適なUV吸収剤は、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2′−カルボキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチルアリールオキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2,2′−(ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−(ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−(ヒドロキシ−X−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類、フェニルサリチレート、カルボキシフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、サリチル酸ストロンチウム、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、メチルサリチレート、ドデシルサリチレートなどのサリチレート、及びレゾルシノールモノベンゾエート、2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、[2,2′−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)−1−n−ブチルアミンなどの他の紫外線吸収剤並びにこれらのUV吸収剤の1種以上を含む組合せである。押出ポリカーボネート組成物用の好ましいUV吸収剤は、BASF社から商業的に入手できるUVINUL 3030である。
【0093】
UV吸収剤は、一般に成形品又は多層成形品の第一の層の重量を基準にして約5〜約15wt%の量で使用される。UV吸収剤は、好ましくは成形品又は多層成形品の第一の層の総重量を基準にして約7〜約14wt%の量で使用できる。さらに好ましくは、UV吸収剤は成形品又は多層成形品の第一の層の総重量を基準にして約8〜約12wt%の量で使用できる。最も好ましくは、UV吸収剤は成形品又は多層成形品の第一の層の総重量を基準にして約9〜約11wt%の量で使用できる。多層成形品の第二及び以後の層(即ち、コア層)に関しては、UV安定剤は約0.05〜約2wt%、好ましくは約0.1〜約0.5wt%、最も好ましくは約0.2〜約0.4wt%の量で使用できる。
【0094】
成形品又は多層成形品は、押出、共押出、キャスティング、被覆、真空蒸着、ラミネーション、ミリング、カレンダー掛け、成形及びこれらの組合せで製造できる。押出及び共押出の範囲内では、各種の技術が使用できる。例えば、独立のシートダイを通して多層成形品の2以上の層を独立の押出機から押し出し、熱いうちに互いに接触させ、次いで1組のローラーの間を通すことができる。別法として、各種の層を形成するための組成物を、共押出用アダプター/フィードブロックを通し、次いで単一ダイ又はマルチマニホルドダイに通して合体させて互いに接触させることができる。アダプター/フィードブロックは、別々の層を形成する融液が中心層の融液上に密着層として堆積するように構成されている。共押出後、生じた融液の多層長尺物を下流に連結された押出ダイで所望形状、中実シートなどに形成することができる。
【0095】
第一の層及び第二の層用の所望組成物は、押出、共押出、成形などに先立って別々に予備配合できる。多層成形品の共押出の場合には、続く共押出のために適した形状(例えば、ペレット、シートなど)に形成するのに先立ち、予備配合材料をまず二軸押出機、一軸押出機、バスニーダー、ロールミルなどで溶融ブレンドすることができる。次いで、予備配合した第一の層及び第二の層用組成物を共押出用のそれぞれの押出機に供給すればよい。
【0096】
別法として、第一の層及び第二の層の押出に際し、添加剤(例えば、無機殺生物剤)を熱可塑性樹脂と共に押出機の供給スロートに添加できる。別の実施形態では、第一の層及び第二の層の押出に際し、添加剤をマスターバッチとして押出機に添加できる。熱可塑性樹脂が押出機のスロートに添加されるのに対し、マスターバッチは押出機のスロート又はスロートの下流に供給できる。第二の層の製造に際しては、熱可塑性樹脂は一軸押出機のスロートに供給できる。第一の層又はキャップ層の製造に際しては、熱可塑性樹脂が一軸又は二軸押出機のスロートに供給されるのに対し、無機殺生物剤はマスターバッチとして供給スロートの下流に添加される。一軸押出機によるこれらの層の共押出も使用できる。
【0097】
例えばシート又はフィルム状の多層成形品は、例えば成形品への熱成形のような各種の方法でさらに加工できる。熱成形は、例えば型内で、成形品又は多層成形品(例えば、押出シート)を同時に加熱及び成形して所望の形状にすることからなる。成形品又は多層成形品を成形するためには、型に対して真空又は圧力を使用することができる。所望の形状が得られた後、成形品をその熱可塑性温度未満に冷却し、型から取り出す。意外にも、成形品の熱成形は成形品の殺生物効力を向上させることが見出された。
【0098】
テクスチャー加工成形品及び多層成形品は、例えばウイルス、細菌、真菌及び酵母のような病原性生物の増殖を低減させるのに有効である。かかる病原性生物には、例えば、セレウス菌(Bacillus cereus)、大腸菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、鶏チフス菌(Salmonella gallinarum)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、ケトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、B型及びC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、センダイウイルス、シンドビスウイルス、ワクシニアウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス並びにこれらの生物の1種以上を含む組合せがある。
【0099】
こうして製造された成形品及び多層成形品は、例えば、輸送用途、病院用途、食品接触用途及び器具用途で使用できる。シートは、例えば、航空機用壁パネル、列車用壁パネル、実験室用家具、病院用ベッド、航空機座席、バス用壁パネル、バス座席、列車座席、タッチスクリーンなどに使用できる。フィルムは、例えば、キーボード、携帯電話、タッチスクリーンなどに使用できる。成形品及び多層成形品は、例えば、シート、フィルム及び多層壁シートの形態を有し得る。シートは、特に壁間に空気流路を有する多層壁シートとして共押出した後には、屋根材又は窓材として使用できる。多層壁シートの個々の単層又は多層シートは、ブラケットで隔離され、ブラケット間に空気ポケットを有することができる。ブラケットも、上述の熱可塑性ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル又はポリエステルカーボネート−ポリエステル)から形成できる。
【実施例】
【0100】
以下の非限定的実施例で本発明をさらに例証する。
【0101】
実施例1
ポリカーボネート及び表1に示す量の殺生物性ゼオライトからなる第一の熱可塑性樹脂層又はキャップ層を、やはりポリカーボネートからなる第二の層上に形成した。第一の層の厚さは100μmであり、第二の層の厚さは1.2mmであった。Agion X2は約1.8wt%の銀を含む銀ゼオライトであり、これを2wt%の濃度で第一の層に配合した。次いで、成形品を熱成形して成形品を形成した。
【0102】
銀放出量は、黒鉛炉原子吸光分光光度計を用いて、約2インチ×約2インチ(約0.05メートル×約0.05メートル)の試料の表面から放出される銀の量として測定した。試験すべき試料の外面を室温で24時間にわたって硝酸ナトリウム溶液(40mLの0.8%硝酸ナトリウム)に浸すことによって試験溶液を生成した。次いで、試験溶液を分析して試験溶液中の銀イオンの量を測定し、かくして成形品の外面における無機殺生物剤の露出量を測定した。
【0103】
【表1】


表1に示す通り、殺生物性成形品の熱成形は銀放出量を向上させ、したがって殺生物活性を向上させる。銀放出量は、縁部よりも中央部及び側面で向上している。上記の透明シートに加え、不透明材料も評価したところ、同様な結果が得られた(データは示さず)。
【0104】
実施例2
表2は、単層成形品の性質と三層成形品の性質との比較を示している。
【0105】
【表2】


単層成形品及び三層成形品に関する実験結果を表3に示す。
【0106】
殺生物効力は、50mm×50mmの成形品を、約1.3×10〜約1.4×10CFU/mlの濃度を有する黄色ブドウ球菌の培養物0.1〜0.2mlに接触させることによって測定した。蒸発を最小限に抑えるため、培養物をフィルム又はスライドガラスで覆った。試料を37℃及び90%超の相対湿度で約24時間インキュベートした。培養物を中和液で洗って段階希釈することによって、生存菌をトリプトン・大豆・寒天平板上に回収した。平板を27℃で48時間インキュベートし、コロニー数を計数した。このプロトコルをBiocidal Sarpu並びにIraguard B6000、B7000及びB5021添加剤に関して使用した。
【0107】
光透過率及びヘイズはASTM D1003に従って測定した一方、labカラーはCIE lab DIN 5033に従って測定した。
【0108】
【表3】


表3からわかる通り、多層アプローチの使用により、良好な殺生物活性と光学的性質に対するわずかな影響との所望の組合せを達成できる。
【0109】
また、成形品又は多層成形品を熱成形して成形品を形成することによっても所望量の殺生物活性を達成できる。テクスチャー加工と同様に、熱成形は成形品の表面上の層を破壊し、銀放出量の向上、したがって抗菌活性の向上を可能にする。
【0110】
以上、好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるため、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
【0111】
すべての引用された特許、特許出願及び他の参考文献の開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の製造方法であって、
無機殺生物剤及び第一の熱可塑性樹脂を含む外面を有する成形品を熱成形することによって、未成形品に比べて殺生物活性の向上した成形品を形成することを含んでなる方法。
【請求項2】
第一の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル又はこれらの樹脂の1種以上を含む組合せのホモポリマー又はコポリマーからなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成形品が、25℃で24時間にわたって外面に接触する病原性生物の50%以上を殺すのに有効な殺生物活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
5cm×5cmの外面を40ミリリットルの0.8%(重量/体積)硝酸ナトリウムに25℃で24時間接触させて試験溶液を生成し、試験溶液中の殺生物金属の量をppb単位で測定してppb単位の殺生物金属放出量を求めるとともに、ppb単位で表した試験溶液中の殺生物金属の量を成形品の総重量を基準にした無機殺生物剤の重量パーセントと無機殺生物剤中の殺生物金属の重量パーセントとの積で除した値を殺生物金属放出率とした場合、成形品が2.5を超える外面からの殺生物金属放出率を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
殺生物金属放出率が約3以上である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
殺生物金属放出率が約4以上である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
外面が成形品の少なくとも一部分に配設された層の形態を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
成形品の少なくとも一部分が、第一の熱可塑性樹脂と同一又は異なる第二の熱可塑性樹脂を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
成形品の少なくとも一部分が、外面の無機殺生物剤と同一又は異なる無機殺生物剤を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
殺生物活性が、成形品のテクスチャー加工外面を大腸菌(E.coli)培養物又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)培養物に接触させ、成形品を37℃で24時間インキュベートし、大腸菌培養物又は黄色ブドウ球菌培養物のパーセント致死率を求めることによって測定して大腸菌培養物又は黄色ブドウ球菌培養物の致死率70%以上の抗菌力である、請求項3記載の方法。
【請求項11】
成形品の抗菌力が約95%以上である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
無機殺生物剤が、銀、金、銅、亜鉛、水銀、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、タリウム又はこれらの殺生物金属の1種以上を含む組合せからなる殺生物金属を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
無機殺生物剤が、1種以上の殺生物金属を含む金属塩、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム又はゼオライト、或いはこれらの1種以上を含む組合せの形態を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
無機殺生物剤が殺生物性ゼオライトである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
殺生物性ゼオライトが銀を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第一の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂からなる、請求項2記載の方法。
【請求項17】
無機殺生物剤が外面の総重量を基準にして約0.1〜約20wt%の濃度で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
外面層が約5〜約50マイクロメートルの厚さを有する、請求項6記載の方法。
【請求項19】
成形品が、セレウス菌(Bacillus cereus)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、鶏チフス菌(Salmonella gallinarum)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、ケトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、センダイウイルス、シンドビスウイルス、ワクシニアウイルス、重症急性呼吸器症候群ウイルス又はこれらの生物の1種以上を含む組合せからなる病原性生物の増殖を低減させる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法で得られる製品。

【公表番号】特表2007−528439(P2007−528439A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503039(P2007−503039)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008082
【国際公開番号】WO2005/087008
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】