説明

気化器

【課題】固体原料を昇華して発生させた原料ガスを成膜装置へ供給する場合において、十分な気化量を継続して安定的に供給することができる気化器を提供する。
【解決手段】固体原料RMを加熱して昇華させ、原料ガスRを発生させる加熱部2と、加熱部2の上方に設けられ、加熱部2に固体原料RMを供給する供給部1と、加熱部2で発生させた原料ガスRを搬送するキャリアガスCを導入するガス導入部3と、発生させた原料ガスRをキャリアガスCとともに導出するガス導出部4とを有する。ガス導入部3から導入されたキャリアガスCが、加熱部2を通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置の成膜室に、キャリアガスとともに原料ガスを供給する気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる材料は、近年無機材料から有機材料へと幅を広げつつあり、無機材料にはない有機材料の特質等から半導体デバイスの特性や製造プロセスをより最適なものとすることができる。
【0003】
このような有機材料の1つとして、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは密着性が高く、リーク電流も低いことから絶縁膜として用いることができ、半導体デバイスにおける絶縁膜として用いることも可能である。
【0004】
このようなポリイミド膜を成膜する方法としては、原料モノマーとして無水ピロメリット酸(PMDA:Pyromellitic Dianhydride)と4,4'−オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline)を用いた蒸着重合による成膜方法が知られている。
【0005】
この蒸着重合は、原料モノマーとして用いられるPMDA及びODAを昇華させてチャンバー内で重合させる方式であるが、良好なポリイミド膜を得るためには、気化させたPMDA及びODAを継続的に一定量チャンバー内に供給する必要がある。
【0006】
ここで、PMDAが固体原料であり、昇華する性質を有するため、ポリイミドの薄膜を成膜する成膜装置において、固体原料であるPMDAを昇華させ、気化させるための気化器を備えなければならない。
【0007】
PMDAを昇華させ、気化させて原料ガスを供給する気化器においては、原料タンク内に固体原料を充填し、固体原料を充填した原料タンク内を真空に保った状態で加熱することによって原料ガスを発生させている。特に、PMDAのように昇華性を有する有機化合物を昇華させる方法として、ビーズ等の支持体の表面を有機化合物で被覆して昇華容器に充填する方法も開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−535112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、成膜されたポリイミド膜を半導体素子の一部として用いる場合、緻密で付着性の高い良好なポリイミド膜が要求される。しかし、単にPMDAを容器に入れて加熱することによりチャンバー内に供給する方法では、PMDAが昇華して減少するため、容器から直接熱を受けるPMDAの表面積は減少し、気化したPMDAを一定量継続して安定的に供給することは困難であった。また、PMDAは容器の内壁からしか熱を受けず、内壁と直接接していないPMDAは十分に加熱されないため、十分な気化量が得られないという問題もあった。
【0010】
一方、特許文献1に記載された有機化合物材料を昇華させる方法では、支持体の表面に有機化合物が被覆され、キャリアガス等を熱媒体として加熱されることから、直接熱を受ける有機化合物の表面積は増え十分な気化量は得られるものの、有機化合物が昇華するにつれて直接熱を受ける有機化合物の表面積が減少してしまい、気化した有機化合物を一定量継続して安定的にチャンバーに供給することができない。
【0011】
更に、特許文献1に記載の技術では、有機化合物を昇華容器に充填するときは運転を停止しなければならず、チャンバーに継続して気化した有機化合物を供給することが困難であった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、十分な気化量を継続して安定的に供給することができる気化器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明は、固体原料を昇華して発生させた原料ガスを成膜装置へ供給する気化器において、前記固体原料を加熱して昇華させ、原料ガスを発生させる加熱部と、前記加熱部の上方に設けられ、前記加熱部に前記固体原料を供給する供給部と、前記加熱部で発生させた原料ガスを搬送するキャリアガスを導入するガス導入部と、発生させた原料ガスをキャリアガスとともに導出するガス導出部とを有し、前記ガス導入部から導入されたキャリアガスが、前記加熱部を通過することを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に係る気化器において、前記加熱部は、メッシュ部を有し、前記ガス導入部から導入されたキャリアガスは、前記メッシュ部を介して、前記加熱部へ導入されるとともに、前記加熱部へ導入されたキャリアガスは、前記メッシュ部を介して、前記加熱部から導出されることを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、第2の発明に係る気化器において、前記メッシュ部のメッシュのサイズは、前記固体原料の原料粉末の粒径より小さいことを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか一つの発明に係る気化器において、前記固体原料は、前記加熱部で加熱されていることを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか一つの発明に係る気化器において、前記ガス導入部から導入されるキャリアガスは、常温より高い温度であることを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、第1乃至第4のいずれか一つの発明に係る気化器において、前記ガス導入部から導入されるキャリアガスは、前記固体原料の昇華点よりも高い温度であることを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか一つの発明に係る気化器において、前記貯蔵部を振動させる振動機構を有することを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、固体原料を昇華して発生させた原料ガスを成膜装置へ供給する気化器において、前記固体原料を加熱して昇華させ、原料ガスを発生させる加熱部と、前記加熱部の上方に設けられ、前記加熱部に前記固体原料を供給する供給部と、前記加熱部の下方に設けられ、前記加熱部で発生させた原料ガスを搬送するキャリアガスが通流するガス通路とを有し、前記加熱部は、メッシュ部を有し、前記ガス通路を通流するキャリアガスは、前記メッシュ部を介して前記固体原料と接することを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、第8の発明に係る気化器において、前記メッシュ部のメッシュのサイズは、前記固体原料の原料粉末の粒径より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固体原料を昇華して発生させた原料ガスを成膜装置へ供給する気化器において、十分な気化量を継続して安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る気化器の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る気化器の構成を模式的に示す横断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る気化器が、固体原料を昇華して気化する気化量を安定化させることができる作用効果を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る気化器の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る気化器の構成を模式的に示す横断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る気化器の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る気化器が、固体原料を昇華して気化する気化量を安定化させることができる作用効果を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
最初に、本発明の第1の実施の形態に係る気化器について説明する。
【0026】
本実施の形態は、原料モノマーとしてPMDAとODAを用いて蒸着重合によりポリイミド膜を成膜するための成膜装置に気化したPMDAを供給するための気化器である。以下、固体状態のPMDAは「PMDA」、気体状態のPMDAは「PMDAガス」とする。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る気化器の構成を示す縦断面図である。図2は、本実施の形態に係る気化器の構成を模式的に示す横断面図である。また、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係る気化器10は、供給部1、加熱部2、ガス導入部3、ガス導出部4とから構成される。
【0029】
供給部1は、原料貯蔵部5と、断熱材6aと、原料貯蔵部5の上側に配置された原料導入口7を有する。原料貯蔵部5を含む供給部1(以下、主として原料貯蔵部5を示す場合においても、断熱材6aと原料導入口7も含め、供給部1(原料貯蔵部5)と表すことがある。)には、PMDAの原料粉末(以下、「PMDA粉末」という。)RMが貯蔵されている。供給部1は、加熱部2に、原料貯蔵部5に貯蔵されたPMDA粉末RMを供給する。加熱部2は、PMDA粉末RMを貯蔵するとともに、PMDA粉末RMを加熱し、昇華させてPMDAの原料ガス(以下、「PMDAガス」という。)Rを発生させる。加熱部2は、供給部1の下方に設けられる。加熱部2は、キャリアガスCを導入でき、気化したPMDAガスRを輸送する機構を有する。
【0030】
供給部1は、図1に示すように、充分にPMDA粉末RMを充填できる容積を有し、簡単に追加原料の再充填が可能な原料導入口7を有する。供給部1は、原料貯蔵部5の下側が加熱部2と連通している。供給部1(原料貯蔵部5)は、原料導入口7から充填されたPMDA粉末RMが加熱部2に重力Gにより自重で落下して充填されるために、加熱部2の上方でPMDA粉末RMを保持するためのものである。
【0031】
供給部1(原料貯蔵部5)の容積は、加熱部2の容積よりも大きくすることができる。供給部1(原料貯蔵部5)の容積を加熱部2の容積よりも大きくするため、例えば図1に示すように、供給部1(原料貯蔵部5)の高さを、加熱部2の高さよりも大きくすることができる。
【0032】
加熱部2は、前述したように、上側が供給部1(原料貯蔵部5)と連通している。加熱部2は、側面にメッシュ部8を有する。メッシュ部8は、PMDA粉末RMを加熱部2内に充填し、保持するとともに、加熱部2の外側と内側との間でガスが通過可能にするためのものである。メッシュ部8は、例えばステンレス等の金属のメッシュよりなる。供給部1(原料貯蔵部5)に充填されたPMDA粉末RMは、供給部1(原料貯蔵部5)から加熱部2へ重力Gにより落下し、メッシュ部8を含む側面で囲まれた加熱部2に充填された状態にある。すなわち、加熱部2でPMDA粉末RMが昇華し気化して消失し、使用されることにより生じた隙間へ、供給部1(原料貯蔵部5)に充填されているPMDA粉末RMが新たに落下・充填され、補充される機構を有する。
【0033】
また、供給部1の中央部及び上部と、下部とは、互いに熱交換がされないように、原料貯蔵部5の側壁の一部が置き換えられた断熱材6aによって、熱の移動が遮断される構成になっている。このような配置により、加熱部で発生した熱が、供給部の中央部以上に伝播されないようになっている。
【0034】
一方、気化器10のうち、供給部1の下部、加熱部2、ガス導入部3、ガス導出部4は、図示しない断熱材で囲まれている。図示しない断熱材の一部であって、加熱部2の近傍には加熱機構9が設置されており、加熱部2に入った原料を加熱・気化できるようになっている。なお、加熱機構9としてヒータ9等を用いることができ、加熱部2を加熱することができればよく、加熱機構9の設置される場所は、加熱部2の近傍でなく、気化器10の任意の場所に設けることもできる。
【0035】
ガス導入部3は、ガス導入管11、ガス導入口12、ガス導入室13を有する。ガス導入室13は、気化器10の内部に加熱部2と隣接して設けられている。ガス導入管11は、PMDAガスRを搬送するキャリアガスCを気化器10の外部から気化器10の内部へ導入するための配管であり、ガス導入口12で気化器10のガス導入室13と接続されている。また、PMDAガスRを成膜装置の成膜室へ輸送する際に、常温より高温に加熱されたキャリアガスCを導入できるような図示しない加熱機構も有している。
【0036】
ガス導出部4は、ガス導出室14、ガス導出口15、ガス導出管16を有する。ガス導出室14は、気化器10の内部に、加熱部2と隣接し、かつ、加熱部2を中心としてガス導入部3と反対側に設けられている。ガス導出管16は、キャリアガスC及びPMDAガスRを気化器10の内部から気化器10の外部へ導出するための配管であり、ガス導出口15でガス導出室14と接続されている。
【0037】
なお、加熱部2は、ガス導入部3側において、第1のメッシュ部8aを介してガス導入室13と隣接し、ガス導出部4側において、第2のメッシュ部8bを介してガス導出室14と隣接する。すなわち、加熱部2のガス導入部3側、ガス導出部4側の対向する一組の側面は、第1のメッシュ部8a、第2のメッシュ部8bよりなる一組のメッシュ部8である。このとき、キャリアガスCの流路の上流から下流に沿って、ガス導入室13、加熱部2、ガス導出室14を連続して一体に形成してもよい。この場合、加熱部2とガス導入室13とは第1のメッシュ部8aにより仕切られ、加熱部2とガス導出室14とは第2のメッシュ部8bにより仕切られる。また、加熱部2のガス導入部3側、ガス導出部4側の対向する一組の側面は、図1及び図2に示すように、ガス導入室13とPMDA粉末RMとの境界を、全面にわたりメッシュ部8とすることもできる。また、メッシュ部8のメッシュのサイズは、PMDA粉末RMの粒径より小さくすることができる。
【0038】
PMDA粉末の粒度分布は、例えば平均粒径が200〜300μm程度、100μm以下の粒径を有する粒子の含有率が1%程度である。また、このような粒度分布を有するPMDA粉末を使用する場合は、例えばメッシュ部8のメッシュのサイズを100μm程度とすることができる。
【0039】
ここで、図1及び図3を参照し、本実施の形態に係る気化器10が、長期間に亘って気化量を安定化させることができ、長期間連続運転しながら原料を補充することができる作用効果について説明する。図3は、本実施の形態に係る気化器が、PMDAを昇華して気化する気化量を安定化させることができる作用効果を説明するための図であり、加熱部におけるPMDA粉末の状態を模式的に拡大して示す図である。
【0040】
始めに、図3を参照し、本実施の形態に係る気化器が、長期間に亘って気化量を安定化させることができる作用効果について説明する。
【0041】
図3(a)は、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1が加熱され始める時点を示す。メッシュ部8(第1のメッシュ部8a、第2のメッシュ部8b)を介して、キャリアガスCが加熱部2をガス導入室13からガス導出室14にかけて通過している。このようにPMDA粉末RM1が充填された状態でヒータをONし、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1を加熱して昇華させ、気化させる。加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1は、ヒータで発生する熱量が、加熱部2の底面又はメッシュ部8を含む側面からの熱伝導等による熱量Hとして移動されることによって加熱される。また、ガス導入室13から導入されるキャリアガスCも、PMDA粉末RM1の加熱及び昇華を補助するため、予め常温より高い温度にされており、好ましくはPMDA粉末RM1の昇華点よりも高い温度にされている。キャリアガスCは、ガス導入室13側の第1のメッシュ部8aから加熱部2の内部に導入され、加熱部2の内部を通過し、ガス導出室14側の第2のメッシュ部8bから加熱部2の外部に導出される。また、図2に示すように、メッシュ部8は、対向する側面のそれぞれ全面に形成されているため、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1の略全ては、キャリアガスCと接触する。
【0042】
図3(b)は、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1が加熱され昇華して消失する時点を示す。加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1は、充分加熱され、昇華点よりも高い温度に保持される。従って、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1は昇華して気化し、消失する。その結果、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1は、減少する。図3(a)の説明で前述したように、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1の略全てがキャリアガスCと接触しているため、PMDA粉末RM1が昇華する昇華速度が大きく、PMDAガスRの発生効率が高い。PMDA粉末RM1が気化して発生したPMDAガスRは、図3(b)に示すように、ガス導出室14側の第2のメッシュ部8bを介してキャリアガスCとともにガス導出室14へ導出され、成膜装置の成膜室へ輸送される。
【0043】
一方、加熱部2の上側と連通している供給部1(原料貯蔵部5)においては、充填されているPMDA粉末RM2等が、原料の昇華点よりも低い温度に保持されているため、PMDA粉末RM2等が昇華してPMDAガスRが発生することはほとんどない。なお、供給部1(原料貯蔵部5)の下部においては、加熱部2からの熱量Hの熱伝導等により、一部において昇華点よりも高い温度となり、一部のPMDA粉末RM2等が昇華される場合もある。
【0044】
図3(c)は、加熱部2に充填されているPMDA粉末RM1が消失して減少した減少分を、供給部1(原料貯蔵部5)に充填されているPMDA粉末RM2等が重力Gにより自重で落下して補充する時点を示す。PMDA粉末RM1が気化したことにより生じた加熱部2の内部のPMDA粉末RM1の隙間は、供給部1(原料貯蔵部5)に充填されているPMDA粉末RM2が重力Gにより落下することにより埋められ、加熱部2のPMDA粉末の充填状態は初期状態に戻る。それによりPMDAガスRの発生量も初期状態に戻るため、気化器10は長期間に亘り一定量でPMDAガスRを発生させることができる。また、供給部1(原料貯蔵部5)の下部には、供給部1(原料貯蔵部5)の中央部又は上部に充填されているPMDA粉末RM3が重力Gにより自重で落下してくる。このようにして、供給部1(原料貯蔵部5)に充填されているPMDA粉末が重力Gにより自重で落下して加熱部2に補充されるため、加熱部2においてPMDAガスRの発生が自動的に継続される。
【0045】
ここで、図3においては、作用効果の説明を理解しやすくするために、加熱部2においてPMDA粉末RM1が昇華して消失する時点と、消失したPMDA粉末RM1の上に供給部1(原料貯蔵部5)から新たなPMDA粉末RM2等が重力Gにより自重で落下する時点を明確に分けて示している。しかしながら、実際にPMDAガスRを発生させる場合においては、加熱部2においてPMDA粉末RM1が微量ずつ消失する毎に供給部1(原料貯蔵部5)から微量のPMDA粉末RM2が重力Gにより落下してくる場合もあり、図3(b)及び図3(c)の状態は、実際には明確に分かれていない場合もある。その場合は、原料貯蔵部5から加熱部2にPMDA粉末が徐々に重力Gにより自重で落下するとともに、加熱部2でPMDA粉末が連続して昇華して、PMDAガスRを発生させる。このようにして、PMDAガスの量を一定に保つことができ、気化量を長期間にわたって安定化することができる。
【0046】
次に、図1を参照し、本実施の形態に係る気化器が長期間連続運転しながら原料を補充することができる作用効果について説明する。
【0047】
供給部1(原料貯蔵部5)の容積は加熱部2の容積よりも大きく構成されているため、供給部1(原料貯蔵部5)にPMDAを十分に貯蔵すれば、所定の時間PMDAを補充する必要がなく、長時間継続してPMDAガスをチャンバーに送ることができる。
【0048】
また、所定の時間が経過し、PMDAが少なくなったときであっても、原料導入口7は加熱部2から離れており、原料導入口7を開いても加熱部2での気化に影響を与えることがないため、気化器10の運転を停止させることなく原料導入口7よりPMDAを補充することができる。運転を停止することなくPMDAを補充することができるため、更に長時間継続してPMDAガスをチャンバーに送ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、気化器を静置させているが、供給部(原料貯蔵部)若しくは加熱部又は気化器の他の部分を振動させる振動機構を設けてもよい。振動機構を設けることにより、供給部(原料貯蔵部)から加熱部へ自重で落下するPMDA粉末の落下を促進することができる。従って、加熱部に補充されるPMDA粉末の量を更に安定化させることができ、気化器で発生するPMDAガスの気化量を更に安定化させることができる。
【0050】
また、本実施の形態において、供給部(原料貯蔵部)の上端に、前述した原料導入口から、又は原料導入口とは別にガス導入口を設け、ガス導入口から少量の例えばNガスよりなる不活性ガス等のガスを供給部(原料貯蔵部)に導入してもよい。供給部(原料貯蔵部)に少量のガスを導入することにより、加熱部で発生したPMDAガスがPMDA内を加熱部から供給部(原料貯蔵部)に向けて拡散することを防止することができ、加熱部で発生するPMDAガスを安定してガス導出部から成膜装置に供給することができる。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図4及び図5を参照し、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例について説明する。
【0051】
図4は、本変形例に係る気化器の構成を模式的に示す縦断面図である。図5は、本変形例に係る気化器の構成を模式的に示す横断面図である。また、図5は、図4のA−A線に沿う断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0052】
本変形例に係る気化器は、供給部の原料貯蔵部の下部が下側ほど細くなり、加熱部の断面積が原料貯蔵部の上部及び中央部の断面積よりも小さい点で、第1の実施の形態に係る気化器と相違する。すなわち、第1の実施の形態に係る気化器において、供給部の原料貯蔵部は、上部から下部まで略同一の断面形状を有するとともに、加熱部の断面積も原料貯蔵部の断面積と略等しいのと相違し、本変形例に係る気化器では、原料貯蔵部の下部が下側ほど細くなるような形状を有する。
【0053】
図4に示すように、本発明の実施に係る気化器10aは、供給部1aと、加熱部2aと、ガス導入部3aと、ガス導出部4aとから構成される。
【0054】
供給部1aは、原料貯蔵部5aと、断熱材6bと、原料貯蔵部5aの上側に配置された原料導入口7aを有する。原料貯蔵部5aを含む供給部1aにPMDA粉末RMが貯蔵されているのは、第1の実施の形態と同様である。供給部1aが、加熱部2aに、原料貯蔵部5aに貯蔵されたPMDA粉末RMを供給するのも、第1の実施の形態と同様である。加熱部2aが、PMDA粉末RMを貯蔵するとともに、PMDA粉末RMを加熱し、昇華させてPMDAガスを発生させるのも、第1の実施の形態と同様である。加熱部2aは、供給部1aの下方に設けられる。加熱部2aが、キャリアガスCを導入でき、気化したPMDAガスRを輸送する機構を有するのも、第1の実施の形態と同様である。
【0055】
ただし、第1の実施の形態において、原料貯蔵部5の側壁の一部が断熱材6aによって置き換えられた構成になっているのと相違し、本変形例では、断熱材6bは、原料貯蔵部5aを囲むように設けられる。また、加熱部2a、ガス導入部3a、ガス導出部4aも、図示しない断熱材で囲まれている。
【0056】
また、供給部1aが、図4に示すように、上側にPMDA粉末RMを充填、又は追加充填するための原料導入口7aを有するのは、第1の実施の形態と同様である。また、供給部1aが、原料貯蔵部5aの下側で加熱部2aと連通しており、供給部1a(原料貯蔵部5a)から加熱部2aにPMDA粉末RMを自重で落下・充填させるような構造になっているのも、第1の実施の形態と同様である。
【0057】
一方、本変形例では、供給部1a(原料貯蔵部5a)の容積を、加熱部2aの容積よりも大きくするために、供給部1a(原料貯蔵部5a)の高さを加熱部2aの高さより大きくするとともに、供給部1a(原料貯蔵部5a)の断面積を加熱部2aの断面積より大きくすることができる。例えば、図4に示すように、供給部1a(原料貯蔵部5a)は、上部の断面積が加熱部2aの断面積よりも大きく、供給部1a(原料貯蔵部5a)の中央部よりも下側の部分において、供給部1a(原料貯蔵部5a)の側面が傾斜し、上側から下側に向けて断面積が減少するような、下方に向けて絞り込まれた形状を有している。
【0058】
加熱部2aは、前述したように、上側が供給部1a(原料貯蔵部5a)と連通している。加熱部2aは、側面にメッシュ部8を有する。メッシュ部8は、第1の実施の形態と同様に、PMDA粉末RMを加熱部2a内に充填し、保持するとともに、加熱部2aの外側と内側との間でガスが通過可能にするためのものである。メッシュ部8は、例えばステンレス等の金属のメッシュよりなる。供給部1a(原料貯蔵部5a)に充填されたPMDA粉末RMが、供給部1a(原料貯蔵部5a)から加熱部2aへ重力Gにより落下し、メッシュ部8を含む側面で囲まれた加熱部2aに充填されるのは、第1の実施の形態と同様である。
【0059】
加熱部2aの近傍に加熱機構9が設置されており、加熱部2aに入った原料を加熱・気化できるようになっているのは、第1の実施の形態と同様である。なお、加熱機構9としてヒータ9等を用いることができること、また、加熱機構9が、気化器10aの任意の場所に設けることもできるのも、第1の実施の形態と同様である。
【0060】
ガス導入部3aが、ガス導入管11、ガス導入口12、ガス導入室13aを有し、ガス導入管11がガス導入口12でガス導入室13aと接続されていることも第1の実施の形態と同様である。ただし、第1の実施の形態に比べて、本変形例では、ガス導入室13aが広くなっている。
【0061】
また、ガス導出部4aが、ガス導出室14a、ガス導出口15、ガス導出管16を有し、ガス導出管16が、ガス導出口15でガス導出室14aと接続されていることも第1の実施の形態と同様である。ただし、第1の実施の形態と比べて、本変形例では、ガス導出室14aが広くなっている。
【0062】
また、加熱部2aが、ガス導入部3a側において、第1のメッシュ部8aを介してガス導入室13aと隣接し、ガス導出部4a側において、第2のメッシュ部8bを介してガス導出室14aと隣接するのは、第1の実施の形態と同様である。また、加熱部2aのガス導入部3a側、ガス導出部4a側の対向する一組の側面は、図4及び図5に示すように、ガス導入室13aと固体原料の原料粉末RMとの境界を、全面にわたりメッシュ部8とすることもできる。また、メッシュ部8のメッシュのサイズは、PMDA粉末RMの粒径より小さくすることができる。
【0063】
本変形例に係る気化器10aが、長期間に亘って気化量を安定化させることができ、長期間連続運転しながら原料を補充することができる作用効果も、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
一方、本変形例においては、供給部1a(原料貯蔵部5a)の上部の断面積が加熱部2aの断面積よりも大きく、供給部1a(原料貯蔵部5a)の中央部よりも下側の部分において、供給部1a(原料貯蔵部5a)の側面が傾斜し、上側から下側に向けて断面積が減少する、下方に向けて絞り込まれた形状を有している。このように下方に向けて絞り込まれた形状を有する供給部1a(原料貯蔵部5a)を通ってPMDA粉末が自重で落下して加熱部2aに充填されるため、加熱部2aの異なる場所におけるPMDA粉末RMが供給される供給速度を略均一にすることができ、PMDAガスRの発生量を安定化させることができる。
【0065】
また、図4、図5に示すように、加熱部2aのメッシュ部8を通過するキャリアガスCの通過する距離を小さくすることができるため、キャリアガスCが通過するPMDA粉末の全てと略等しい条件で熱交換することができ、また、昇華して発生したPMDAガスRをキャリアガスCを用いて効率よく搬送することができる。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図6を参照し、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例について説明する。
【0066】
図6は、本変形例に係る気化器の構成を模式的に示す縦断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0067】
本変形例に係る気化器は、貯蔵部の下方にキャリアガスが通流するガス通路を有する点で、第1の実施の形態の第1の変形例に係る気化器と相違する。すなわち、第1の実施の形態の第1の変形例に係る気化器において、キャリアガスが、貯蔵部の下部である加熱部を通過するのと相違し、本変形例に係る気化器では、キャリアガスがメッシュ部を介してPMDAと接する。
【0068】
図6に示すように、本変形例に係る気化器10bは、供給部1bと、加熱部2bと、ガス通路17と、ガス導入部3bと、ガス導出部4bとを有する。
【0069】
供給部1bが、原料貯蔵部5aと、断熱材6bと、原料貯蔵部5aの上側に配置された原料導入口7aを有するのは、第1の実施の形態の第1の変形例と同様である。しかしながら、加熱部2bの構造は、第1の実施の形態の第1の変形例と相違する。
【0070】
本変形例では、加熱部2bは、図6に示すように、上側が原料貯蔵部5aと連通し、下側がメッシュ部8cを介してガス通路17と連通している。メッシュ部8cは、PMDA粉末RMを加熱部2b内に保持するとともに、加熱部2bの外側と内側との間でガスが通過可能にするためのものである。メッシュ部8cが、ステンレス等の金属のメッシュよりなるのは、第1の実施の形態の第1の変形例と同様である。また、原料貯蔵部5aに充填されたPMDA粉末RMが、原料貯蔵部5aから加熱部2bへ落下して充填された状態にあるのも、第1の実施の形態の第1の変形例と同様である。
【0071】
ガス通路17は、加熱部2bの下方に設けられる。ガス通路17は、加熱部2bでPMDA粉末RMを昇華して発生させたPMDAガスRを搬送するキャリアガスCが通流するためのものである。ガス通路17は、第1の実施の形態の第1の変形例におけるガス導入室13aからガス導出室14aにかけての空間を一体にした構造を有する。ガス通路17は、ガス通路17の上方に設けられた加熱部2bと、加熱部2bのメッシュ部8cを介して連通する。従って、ガス通路17を通流するキャリアガスCは、メッシュ部8cを介してPMDA粉末RMと接する。
【0072】
本変形例におけるガス導入部3bは、第1の実施の形態の第1の変形例におけるガス導入室に相当する部分がガス通路17の一部であるため、ガス導入管11、ガス導入口12のみを有する。ガス導入管11は、キャリアガスCを気化器10bの内部へ導入するための配管であり、ガス導入口12でガス通路17と接続されている。また、キャリアガスCを加熱するための図示しない加熱機構も有している。
【0073】
本変形例におけるガス導出部4bは、第1の実施の形態の第1の変形例におけるガス導出室に相当する部分がガス通路17の一部であるため、ガス導出口15、ガス導出管16のみを有する。ガス導出管16は、キャリアガスC及びPMDAガスRを気化器10bの外部へ導出するための配管であり、ガス導出口15でガス通路17と接続されている。
【0074】
また、断熱材6bの一部であって、加熱部2bの近傍には加熱機構であるヒータ9aが設置されており、加熱部2bに充填されているPMDA粉末RMを加熱・気化できるようになっている。なお、ヒータ9aの設置される場所は、加熱部2bを加熱することができればよく、加熱部2bの近傍でなく、気化器10bの任意の場所に設けることもできる。
【0075】
なお、本変形例では、説明の便宜上供給部1bと加熱部2bとを区別して図示しているが、供給部1bと加熱部2bとは明確に分かれていなくてもよい。例えば、図6に示すように、供給部1bと加熱部2bとの境界が明確に区別されない場合でもよい。更に、供給部1bと加熱部2bとが一体で形成されていてもよい。
【0076】
また、本変形例においては、供給部1bと加熱部2bは一つの容器の中に設けられており、供給部1bから自重によりPMDAが加熱部2bに補充されるが、このような効果を有するものがあれば供給部1bと加熱部2bは別体で形成されていてもよい。
【0077】
本変形例において、メッシュ部のメッシュのサイズをPMDA粉末RMの粒径より小さくすることができること、PMDA粉末RMとしてPMDAの原料粉末を用いることができることは、第1の実施の形態の第1の変形例と同様である。また、PMDA粉末RMの粒度分布及びメッシュのサイズも、第1の実施の形態の第1の変形例と同様である。
【0078】
次に、図7を参照し、本変形例に係る気化器が、長期間に亘ってPMDAの気化量を安定化することができる作用効果について説明する。図7は、本変形例に係る気化器が、PMDAを昇華して気化する気化量を安定化させることができる作用効果を説明するための図であり、加熱部2bにおけるPMDA粉末の状態を模式的に拡大して示す図である。
【0079】
図7(a)は、加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1が加熱され始める時点を示す。ガス通路17を通流するキャリアガスCの一部は、メッシュ部8cを介して加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1に接している。このようにPMDA粉末RM1が充填された状態でヒータをONし、加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1を加熱して昇華させ、気化させる。加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1は、ヒータで発生する熱量が、加熱部2bの側面又はメッシュ部8cからの熱伝導等による熱量Hとして移動されることによって加熱される。また、第1の実施の形態の第1の変形例と同様に、ガス通路17から導入されるキャリアガスCも、予めPMDA粉末RM1の昇華点よりも高い温度にされている。
【0080】
図7(b)は、加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1が加熱され昇華して消失する時点を示す。加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1は、例えば昇華点よりも高い温度に保持されることによって、昇華して気化し、消失する。その結果、加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1は、減少する。PMDA粉末RM1が気化して発生したPMDAガスRは、図7(b)に示すように、メッシュ部8cを介してキャリアガスCとともにガス通路17へ導出される。一方、供給部1b(原料貯蔵部5a)及び加熱部2bの上部においては、PMDA粉末RM2等が、原料の昇華点よりも低い温度に保持されているため、PMDA粉末RM2等が昇華してPMDAガスRが発生することはほとんどない。なお、加熱部2bの上部においては、加熱部2bの下部からの熱伝導等により、一部のPMDA粉末RM2等が昇華される場合もある。
【0081】
図7(c)は、加熱部2bの下部に充填されているPMDA粉末RM1が消失して減少した減少分を、加熱部2bの上部に充填されているPMDA粉末RM2が重力Gにより自重で落下して補充する時点を示す。PMDA粉末RM1が気化したことにより生じた加熱部2bの下部のPMDA粉末RM1の隙間は、加熱部2bの上部に充填されているPMDA粉末RM2が重力Gにより落下することにより埋められ、加熱部2bの下部の原料の充填状態は初期状態に戻る。それによりPMDAガスRのガス発生量も初期状態に戻るため、気化器10bは長期間に亘り一定のガス発生量でPMDAガスRを発生させることができる。なお、加熱部2bの上部に充填されているPMDA粉末RM2が加熱部2bの下部へ自重で落下するのに伴い、加熱部2bの上部には、更に上方の原料貯蔵部5aからPMDA粉末RM3が自重で落下して補充される。
【0082】
本変形例においても、第1の実施の形態及び第1の実施の形態の第1の変形例と同様に、図7(b)及び図7(c)の状態は、実際には明確に分かれておらず、加熱部2bの上部から加熱部2bの下部に徐々にPMDA粉末が徐々に自重で落下するとともに、加熱部2bの下部でPMDA粉末が連続して昇華して、PMDAガスを発生させる。従って、PMDAを昇華して気化する気化量を一定に保持することができ、長期間に亘って気化量を安定化することができる。
【0083】
また、本変形例でも、第1の実施の形態の第1の変形例と同様に、上側にPMDA粉末を充填、又は追加充填するための原料導入口7aを有することによって、長期間連続運転しながら原料を補充することができる。
【0084】
なお、本変形例でも、供給部(原料貯蔵部)若しくは加熱部又は気化器の他の部分を振動させる振動機構を設けることにより、供給部(原料貯蔵部)から加熱部へ自重で落下するPMDA粉末の落下を促進することができる。
【0085】
また、本変形例でも、供給部(原料貯蔵部)の上端に、前述した原料導入口から、又は原料導入口とは別にガス導入口を設け、ガス導入口から少量の例えばNガスよりなる不活性ガス等のガスを供給部(原料貯蔵部)に導入することにより、加熱部で発生したPMDAガスがPMDA内を加熱部から供給部(原料貯蔵部)に向けて拡散することを防止することができ、加熱部で発生するPMDAガスを安定してガス導出部から成膜装置に供給することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置について説明する。本実施の形態に係る成膜装置は、本発明の第1の実施の形態に係る気化器から供給されるPMDAガスを用いてウェハ表面に絶縁保護膜を成膜する成膜装置である。
【0086】
図8は、本実施の形態に係る成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0087】
図8に示すように、本実施の形態に係る成膜装置20は、不図示の真空ポンプ等により排気が可能なチャンバー21内にポリイミド膜が成膜されるウェハWを複数設置することが可能なウェハボート22を有している。また、チャンバー21内には、気化したPMDA及びODAを供給するためのインジェクタ23a、23bを有している。このインジェクタ23a、23bの側面には開口部が設けられており、気化器により気化したPMDA及びODAが図面において矢印で示すようにウェハWに供給される。供給された気化したPMDA及びODAは、ウェハW上で反応し蒸着重合によりポリイミド膜が成膜される。なお、ポリイミド膜の成膜に寄与しない気化したPMDA及びODA等は、そのまま流れ、排気口25よりチャンバー21の外に排出される。また、ウェハW上に均一にポリイミド膜が成膜されるようにウェハボート22は、回転部26により回転するよう構成されている。更に、チャンバー21の外部には、チャンバー21内のウェハWを一定の温度に加熱するためのヒータ27が設けられている。
【0088】
また、インジェクタ23a、23bは、第1の実施の形態に係る気化器であるPMDA気化器(気化器)10及びODA気化器30がバルブ31及び32並びに導入部33を介しそれぞれ接続されており、PMDA気化器10及びODA気化器30より気化したPMDA及びODAが供給される。なお、本実施の形態では、PMDA気化器として第1の実施の形態に係る気化器10が用いられているが、第1の実施の形態の第1及び第2の変形例に係る気化器10a、10bのいずれかを用いることもできる。
【0089】
PMDA気化器10には、高温の窒素ガスをキャリアガスとして供給し、PMDA気化器10においてPMDAを昇華させることにより気化した状態で供給する。このため、PMDA気化器10は、260℃の温度に保たれている。また、ODA気化器30では、高温の窒素ガスをキャリアガスとして供給し、高温に加熱され液体状態となったODAを供給された窒素ガスによりバブリングすることにより、窒素ガスに含まれるODAの蒸気とし、気化した状態で供給する。このため、ODA気化器30は220℃の温度に保たれている。
【0090】
この後、バルブ31及び32を介し、気化したPMDA及びODAが、インジェクタ23a、23b内に供給され、ウェハWに成膜される。このときの、PMDAとODAとの重合反応は、次の式(1)に示す反応式に従って行われる。
【0091】
【化1】

以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1、1a、1b 供給部
2、2a、2b 加熱部
3、3a、3b ガス導入部
4、4a、4b ガス導出部
5、5a 原料貯蔵部
6a、6b 断熱材
7、7a 原料導入口
8、8c メッシュ部
8a 第1のメッシュ部
8b 第2のメッシュ部
9、9a ヒータ(加熱機構)
10、10a、10b 気化器(PMDA気化器)
11 ガス導入管
12 ガス導入口
13、13a ガス導入室
14、14a ガス導出室
15 ガス導出口
16 ガス導出管
17 ガス通路
20 成膜装置
21 チャンバー
22 ウェハボート
23a、23b インジェクタ
25 排気口
27 ヒータ
30 ODA気化器
31、32 バルブ
33 導入部
C キャリアガス
R PMDAガス(原料ガス)
RM、RM1、RM2 PMDA粉末(固体原料)
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体原料を昇華して発生させた原料ガスを成膜装置へ供給する気化器において、
前記固体原料を加熱して昇華させ、原料ガスを発生させる加熱部と、
前記加熱部の上方に設けられ、前記加熱部に前記固体原料を供給する供給部と、
前記加熱部で発生させた原料ガスを搬送するキャリアガスを導入するガス導入部と、
発生させた原料ガスをキャリアガスとともに導出するガス導出部と
を有し、
前記ガス導入部から導入されたキャリアガスが、前記加熱部を通過することを特徴とする気化器。
【請求項2】
前記加熱部は、メッシュ部を有し、
前記ガス導入部から導入されたキャリアガスは、前記メッシュ部を介して、前記加熱部へ導入されるとともに、
前記加熱部へ導入されたキャリアガスは、前記メッシュ部を介して、前記加熱部から導出されることを特徴とする請求項1に記載の気化器。
【請求項3】
前記メッシュ部のメッシュのサイズは、前記固体原料の原料粉末の粒径より小さいことを特徴とする請求項2に記載の気化器。
【請求項4】
前記固体原料は、前記加熱部で加熱されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の気化器。
【請求項5】
前記ガス導入部から導入されるキャリアガスは、常温より高い温度であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気化器。
【請求項6】
前記ガス導入部から導入されるキャリアガスは、前記固体原料の昇華点よりも高い温度であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気化器。
【請求項7】
前記貯蔵部を振動させる振動機構を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の気化器。
【請求項8】
固体原料を昇華して発生させた原料ガスを成膜装置へ供給する気化器において、
前記固体原料を加熱して昇華させ、原料ガスを発生させる加熱部と、
前記加熱部の上方に設けられ、前記加熱部に前記固体原料を供給する供給部と、
前記加熱部の下方に設けられ、前記加熱部で発生させた原料ガスを搬送するキャリアガスが通流するガス通路と
を有し、
前記加熱部は、メッシュ部を有し、
前記ガス通路を通流するキャリアガスは、前記メッシュ部を介して前記固体原料と接することを特徴とする気化器。
【請求項9】
前記メッシュ部のメッシュのサイズは、前記固体原料の原料粉末の粒径より小さいことを特徴とする請求項8に記載の気化器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219146(P2010−219146A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61587(P2009−61587)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】