気相成長用半導体基板支持サセプタおよびエピタキシャルウェーハ製造装置およびエピタキシャルウェーハの製造方法
【課題】エピタキシャルウェーハ主表面側の周辺部のエピタキシャル層の層厚を制御することによってエピタキシャルウェーハの平坦性を向上させることができる気相成長の際に半導体基板を支持するためのサセプタと、このサセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板Wが配置される座ぐり部31を備え、前記座ぐり部31の端上部31bから外側に向かって、上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部33を有するサセプタ30とする。
【解決手段】半導体基板Wが配置される座ぐり部31を備え、前記座ぐり部31の端上部31bから外側に向かって、上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部33を有するサセプタ30とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長工程において半導体基板を支持するために用いるサセプタと、このサセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造装置およびエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の主表面上へのエピタキシャル層(例えばシリコンエピタキシャル層)の気相成長は、反応容器内にサセプタを配し、このサセプタ上に基板を配した状態で、基板を加熱装置により所望の成長温度に加熱するとともに、ガス供給装置により基板の主表面上に原料ガスを供給することによって行われている。
このようにして形成されたエピタキシャルウェーハは、ダメージフリーで欠陥も少ない極めて良質な表面を有している。
【0003】
近年、MPUやDRAM、フラッシュメモリー等のMOS FET、IGBT等のPowerデバイス、CCD、CIS等の撮像デバイスにシリコンエピタキシャルウェーハが使用され始めている。
また、高収率化、高性能化のためにデバイスの高集積化、微細化が進み、基板表面品質のみならず、基板の平坦性が特に重要となってきている。
さらにデバイスの収率向上を目的に平坦性を保証する領域についても、外周5mmを除外した領域から外周3mmあるいは外周2mmを除外した領域へと広がってきている。
【0004】
ここで、非常に高い平坦性を要求されているシリコンウェーハのエピタキシャル成長については、バッチ処理から枚葉処理の装置を用いることでエピタキシャル層の層厚均一性の向上を図ってきている。
しかしながら、エピタキシャル成長前の基板が平坦でない場合には、単純に均一な層厚のエピタキシャル層を形成するのでなく、成長前の基板の形状に合わせてエピタキシャル層の層厚分布を調整する必要がある。
【0005】
例えばシリコンウェーハの場合、エピタキシャル成長前の基板に研磨加工を施して平坦化処理を行っており、シリコンウェーハの中心部は高平坦性が達成されている。しかし、周辺部については十分な平坦性が達成できておらず、エピタキシャル成長工程において周辺部の層厚を調整して平坦性を改善する必要がある。
【0006】
このような問題に対して、サセプタの座ぐり部の深さを調整する方法がある。
また、例えば特許文献1にあるように、基板の中心と外周部に原料ガスを供給するための複数のインジェクタを設けて、各インジェクタから供給する原料ガスの濃度や流量を調整してシリコンウェーハの中心部と周辺部のエピタキシャル層の層厚をコントロールして平坦化を図る方法等も提案されている。
【0007】
更に、特許文献2にあるように、サセプタとシリコンウェーハ裏面が近接・接触するレッジと呼ばれる領域の長さを変化させて、シリコンウェーハ周辺部裏面側にもエピタキシャル層を形成し、シリコンウェーハ周辺部の形状を選択的に制御する方法等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許2790009号公報
【特許文献2】特開2007−273623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、座ぐり部の深さを調整する方法では、ウェーハエッジとサセプタ間で段差が生じて、ガスの流れに乱れが発生し、エッジ部分だけでなく、ウェーハの内側の領域まで層厚が変化してしまう問題がある。
また特許文献1に記載されている各々のインジェクタからの原料ガスの流量等を調節する方法では、原料ガスが拡散するために、基板となるシリコンウェーハの周辺部分のみのエピタキシャル層の層厚を選択的に制御できないという問題がある。
【0010】
そして、特許文献2に記載された方法では、シリコンウェーハの表面側のエピタキシャル層の層厚分布と裏面側のエピタキシャル層の層厚分布の足し合わせで周辺部形状が形成されるため、複雑で安定性に欠ける等の課題がある。そして、形状の制御がうまく行かなかった場合には、逆にウェーハ外周部にうねりが生じてフラットネスを大幅に悪化させる恐れもある。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、エピタキシャルウェーハ主表面側の周辺部のエピタキシャル層の層厚を制御することによってエピタキシャルウェーハの平坦性を向上させることができる気相成長の際に半導体基板を支持するためのサセプタと、このサセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造装置および製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、気相成長の際に半導体基板を支持するサセプタであって、該サセプタは、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するものであることを特徴とする気相成長用半導体基板支持サセプタを提供する。
【0013】
このように、座ぐり部の端から外側に向かってある一定距離の間に徐々にサセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタを用いると、半導体基板の周辺部の原料ガスの流れを調整することができ、半導体基板の周辺部のエピタキシャル層の層厚を制御することができるようになる。
このため、例えばあるエピタキシャル成長条件下で外周部の層厚均一性が悪化している場合でも、エピタキシャル成長条件を変更しないでサセプタ形状のみを調整することで半導体基板外周部のエピタキシャル層の層厚均一性を改善する事が可能となり、制御の自由度を上げることができる。すなわち制御が容易になり、層厚が均一且つ安定したエピタキシャル層を気相成長させることが可能となり、製造歩留りの改善を図ることができる。
【0014】
また、エピタキシャル成長を行う前の半導体基板の外周部の平坦性が悪い場合にも、本発明のサセプタを用いる事で、半導体基板の周辺部のエピタキシャル層の層厚分布を調整して、該半導体基板の外周部形状を修正することができ、高平坦な表面を有するエピタキシャルウェーハを安定して供給することも可能となる。
【0015】
ここで、前記テーパー部は、前記座ぐり部端から外側に向かう長さが、前記半導体基板の直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満の長さであるものとすることが好ましい。
このように、座ぐり部の端から外側に向かう長さが半導体基板の直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満であれば、半導体基板の周辺部の層厚調整効果を十分に高いものとすることができ、高平坦性のエピタキシャルウェーハの製造に大きく貢献することができるサセプタになる。
【0016】
また、前記テーパー部は、その高さが前記半導体基板の厚さの30%以下であるものとすることが好ましい。
このように、テーパー部の高さを半導体基板の厚さの30%以下とすることによって、半導体基板周辺部での原料ガスの流れが乱れることを確実に抑制でき、より確実に層厚が均一なエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0017】
そして、前記テーパーが、前記座ぐり部の全周に渡って途切れることなく形成されたものとすることができ、また、前記座ぐり部の周方向に沿って間欠的に形成されたものとすることもできる。
このように、テーパーが、座ぐり部の全周に渡って途切れることなく形成されたサセプタとすることによって、半導体基板の外周部の層厚を半導体基板の全周において均一に調整することができる。
また、テーパーが、座ぐり部の周方向に沿って間欠的に形成されたサセプタであれば、半導体基板の外周部の一部のみを層厚調整することができるため、気相成長前の半導体基板の表面形状に合わせて適宜選択することによって平坦性に優れたエピタキシャルウェーハが得られる。
【0018】
また、前記サセプタの前記座ぐり部の深さが、前記半導体基板の厚さの0.9〜1.1倍であるものとすることが好ましい。
このように、座ぐり部の深さが、半導体基板の厚さの0.9〜1.1倍のサセプタとすることによって、エピタキシャル成長を行う半導体基板の基板厚さと座ぐり部の座ぐり深さを略等しくすることができ、半導体基板の外周部の層厚制御を更に高い精度で行うことができる。
【0019】
また、本発明では、半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させるためのエピタキシャルウェーハ製造装置であって、少なくとも、反応容器と、原料ガス導入管と、排気管と、加熱装置と、本発明に記載のサセプタとを備えるものであることを特徴とするエピタキシャルウェーハ製造装置を提供する。
【0020】
このように、本発明に係る半導体基板を支持するサセプタを備えたエピタキシャルウェーハの製造装置であれば、これを用いて半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させることによって、エピタキシャル成長条件を変更しないで半導体基板の外周部のエピタキシャル層を均一に形成することができる。
また、半導体基板の外周形状に合わせて半導体基板の外周部のエピタキシャル層厚を調整することができる。すなわち、半導体基板の外周部形状を修正することができるので、高平坦なエピタキシャルウェーハを安定して供給することも可能となる。
【0021】
そして、本発明では、半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、本発明に記載のサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0022】
更に、本発明では、半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0023】
このように、半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させる際に半導体基板を支持するサセプタに、座ぐり部の端から外側に向かってある一定距離の間に徐々にサセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタを用いることによって、エピタキシャル層が形成された後の半導体基板の外周のハネ及びダレ量の調整を行うことができ、中心部だけではなく、外周部も平坦度の高いエピタキシャルウェーハを製造することができる。
特に、テーパーの高さを調整することによって外周部のハネ及びダレを容易にコントロールでき、また座ぐり部端から外側に向かう長さを調節することでエピタキシャル層の外周部のハネ及びダレが発生する位置を調節することができるため、気相成長前の半導体基板の表面形状に応じてサセプタのテーパー形状等を調整することのみでエピタキシャル層の表面形状を制御することができ、高平坦性のエピタキシャルウェーハを容易に製造できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、半導体基板の外周部のエピタキシャル層の厚さも均一なものとすることができる。また、エピタキシャル成長前の半導体基板の外周形状に合わせて外周部のエピタキシャル層の分布を調整することができ、高平坦なエピタキシャルウェーハを安定して供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るエピタキシャル製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るエピタキシャル製造装置の他の様態を示す概略図である。
【図3】本発明に係るサセプタの第1の態様を示す概略図である。
【図4】本発明に係るサセプタの第2の態様を示す概略図である。
【図5】本発明に係るサセプタを上から視た時の一例(全周にテーパー部がある場合)を示す図である。
【図6】本発明に係るサセプタを上から視た時の他の一例(間欠的にテーパー部がある場合)を示す図である。
【図7】実施例1−5、比較例2−3のシリコンエピタキシャル層の外周部の層厚分布を示した図である。
【図8】実施例6−9、比較例1−2のシリコンエピタキシャル層の外周部の層厚分布を示した図である。
【図9】比較例1−3のシリコンエピタキシャル層の外周部の層厚分布を示した図である。
【図10】従来のサセプタの断面形状の概略を示した図である。
【図11】座ぐり深さが深い従来のサセプタの断面形状の概略を示した図である。
【図12】座ぐり深さが浅い従来のサセプタの断面形状の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
先ず、図1及び図2を参照して、本発明に係るエピタキシャルウェーハ製造装置の一例としての枚葉式のエピタキシャルウェーハの製造装置について説明する。
【0027】
図1に示すように、エピタキシャルウェーハ製造装置10は、少なくとも、サセプタ20(詳細後述)と該サセプタ20が内部に配される反応容器11と、サセプタ20を支持して回転駆動及び昇降動作させるサセプタ支持部材12と、サセプタ20を表裏に貫通するとともに該サセプタ20に対して昇降動作可能に設けられ、半導体基板W(以下基板Wと省略する事がある)を支持した状態で昇降動作するのに伴わせてサセプタ20上に着脱するためのリフトピン13と、気相成長の際に基板Wを所望の成長温度に加熱するための加熱装置14a、14b(具体的には、例えばハロゲンランプ)と、原料ガス(具体的には、例えばトリクロロシラン等)及びキャリアガス(具体的には、例えば水素等)を含む気相成長用ガスを反応容器11内のサセプタ20上側の領域に導入して該サセプタ20上の基板Wの主表面上に供給する気相成長用の原料ガス導入管15と、反応容器11に対しこの気相成長用ガス導入管15と同じ側に設けられパージガス(具体的には、例えば水素等)を反応容器11内のサセプタ20下側の領域に導入するパージガス導入管16と、これらパージガス導入管16及び原料ガス導入管15と反応容器11に対し反対側に設けられ該反応容器11からガス(気相成長用の原料ガス及びパージガス)を排気する排気管17とを備えて構成されている。
【0028】
このうち、サセプタ20は、気相成長の際に基板Wを支持するものであり、例えば炭化珪素で被覆されたグラファイトにより構成されている。
【0029】
まず、一般的な従来のサセプタの形状を図10に示す。
従来のサセプタ100は、例えば略円盤状に構成され、その主表面には、該主表面上に基板Wを位置決めするための座ぐり部101(平面視円形の凹部)が形成されている。この座ぐり部101の底面は、平面のものや凹曲面上になっているものもある。また、座ぐり部底面の座ぐり部端底部101aの近傍を平面、その内側を凹曲面にしたものや、更に座ぐり部端底部101a近傍にサセプタ100の裏面まで貫通した孔を設けたもの等も提案されている。
【0030】
また、図10に示すように、サセプタ100の座ぐり部101の底面には、サセプタ100の裏面に貫通した状態に形成され、リフトピンが挿通されるリフトピン貫通用孔部102が形成されている。このリフトピン貫通用孔部102は、例えば、座ぐり部101上に等角度間隔で三箇所に配設されているものである。
【0031】
ここで例えば図1に示すように、リフトピン13は、例えば丸棒状に構成された胴体部13bと、該胴体部13bの上端部に形成され、基板Wを下面側から支持する頭部13aとを備えている。このうち頭部13aは、基板Wを支持しやすいように胴体部13bよりも拡径されている。
そして、リフトピン13は、その下端部から、リフトピン貫通用孔部20aに挿入された結果、該リフトピン貫通用孔部20aの縁部により頭部13aが下方に抜け止めされて、サセプタ20により支持されるとともに、その胴体部13bを該リフトピン貫通孔20aより垂下させた状態となっている。なお、リフトピン13の胴体部13bは、サセプタ支持部材12の支持アーム12aに設けられた貫通孔12bも貫通している。
【0032】
また、サセプタ支持部材12は、複数の支持アーム12aを放射状に備え、これら支持アーム12aにより、サセプタ20を下面側から支持している。これにより、サセプタ20は、その上面が略水平状態に保たれている。
【0033】
エピタキシャル製造装置10は、以上のように構成されている。
そして、このエピタキシャルウェーハ製造装置10を用いて、以下の要領で気相成長を行うことにより、基板Wの主表面上にシリコンエピタキシャル層を形成してシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0034】
先ず、基板Wを反応容器11内のサセプタ20により支持させる。
このためには、先ず、リフトピン13上に基板Wを受け渡すために、各リフトピン13を互いに略等量だけサセプタ20上面より上方に突出するように該サセプタ20に対し相対的に上昇させる。また、サセプタ支持部材12を下降させるのに伴わせてサセプタ20を下降させるようにしてもよい。この下降の過程で、リフトピン13の下端部が、例えば反応容器11の内部底面に到達して以降は、リフトピン13はそれ以上に下降できないが、サセプタ20はさらに下降することができる。
このため、サセプタ20に対し相対的にリフトピン13が上昇し、やがてリフトピンとサセプタは図2のような位置関係となる(図2において基板Wが無い状態)。
【0035】
次に図示しないハンドラにより基板Wを反応容器11内に搬送し、上記上昇動作後の各リフトピン13の頭部13aにより、主表面を上にして基板Wを支持させる(図2の状態)。
次に、基板Wをサセプタ20により支持させるために、各リフトピン13をサセプタ20に対し相対的に下降させる。このためには、ハンドラを待避させる一方で、サセプタ支持部材12を上昇させるのに伴わせて、サセプタ20を上昇させる。この上昇の過程で、座ぐり部21の座ぐり部端底部21aが基板Wの主裏面に到達すると、それまでリフトピン13の頭部13a上に支持されていた基板Wが、座ぐり部21の座ぐり部端底部21a近傍で支持された状態へと移行する。
さらに、リフトピン貫通用孔部20bの縁部がリフトピン13の頭部13aに到達すると、それまで反応容器11の内部底面により支持された状態であったリフトピン13は、サセプタ20により支持された状態へと移行する。
【0036】
このようにサセプタ20により基板Wを支持させたら、気相成長を行う。
まず、サセプタ支持部材12を鉛直軸周りに回転駆動することによりサセプタ20を回転させるのに伴わせて基板Wを回転させるとともに、該サセプタ20上の基板Wを加熱装置14a,14bにより所望の成長温度に加熱しながら、原料ガス導入管15を介して基板Wの主表面上に気相成長用ガスを略水平に供給する一方で、パージガス導入管16を介してサセプタ20の下側にパージガスを略水平に導入する。
【0037】
従って、気相成長中、サセプタ20の上側には、気相成長用ガス流が、下側には、パージガス流が、それぞれサセプタ20及び基板Wと略平行に形成される。このように気相成長を行うことにより、基板Wの主表面上にエピタキシャル層を形成して、エピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0038】
このようにエピタキシャルウェーハを製造したら、該製造後のエピタキシャルウェーハを、反応容器11外に搬出する。
すなわち、サセプタ20の回転を止めた後に、サセプタ支持部材12を下降させて、図2に示すように各リフトピン13を互いに略等量だけサセプタ20の上方に突出動作させ、この突出動作に伴わせて基板Wをサセプタ20の座ぐり部21の上方に上昇させる。そして、図示しないハンドラにより基板Wを搬出する。
【0039】
ここで、気相成長中は、気相成長ガスは気相成長ガス導入管15から導入され、サセプタ20の表面を沿って流れ、基板Wのエッジ部に運ばれる。基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル層の成長速度は、基板Wのエッジ近傍の気相成長ガスの濃度や流速に大きく依存する。
一般的には図11や図12に示すように、サセプタ110,120の基板Wを支持する為の座ぐり部111,121の座ぐり深さ(座ぐり部111,121の座ぐり部端底部111a,121aと座ぐり部端上部111b,121bの高さの差)を調節することで、基板Wのエッジ近傍の気相成長用ガスの流れを変化させて、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を調整する方法が用いられている。
【0040】
例えば、図11に示すようにサセプタ110の座ぐり深さを基板Wの厚さよりも深くすれば、基板Wのエッジ部に供給される気相成長用ガスの濃度が低下し、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度は低下する。
しかしながら、基板Wと座ぐり部111の座ぐり部端上部111bとの間で段差が生じる結果、気相成長ガスの流れの乱れが発生し、基板Wのエピタキシャル成長速度の低下は、基板Wのエッジ部からさらに内側の領域にまで及ぶようになる。この為、基板Wの外周部のエピタキシャル成長速度の精密な制御ができない。
【0041】
また、図12に示すようにサセプタ120の座ぐり深さを基板Wの厚さよりも浅くすれば、基板Wのエッジ部に供給される気相成長用ガスの濃度が上昇し、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度は上昇する。
しかしながら、基板Wとサセプタの座ぐり部121の座ぐり部端上部121bとの間で段差が生じる結果、気相成長ガスの流れの乱れが発生し、基板Wのエピタキシャル成長速度の上昇は、基板Wのエッジ部からさらに内側の領域にまで及ぶようになる。この為、同様に基板Wの外周部のエピタキシャル成長速度の精密な制御ができない。
【0042】
これに対し、図3に示すように本発明の第1の実施形態のサセプタ30は、座ぐり部31の座ぐり部端上部31bの高さを基板Wの主表面の高さに略等しく保ち(t≒tw)、座ぐり部端上部31bからテーパー部末端31cにかけて、座ぐり部31の外側に向けて徐々にサセプタの上面が上方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部33を有するものである。
【0043】
このように、本発明に係る半導体基板を支持するサセプタを備えたエピタキシャルウェーハの製造装置を用いて半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させることによって、エピタキシャル成長条件を変更しないで基板の外周部のエピタキシャル層を均一に形成することができる。
また、エピタキシャル成長前の半導体基板の外周形状に合わせて半導体基板の外周部のエピタキシャル層厚を調整することができる。従って、半導体基板の外周部形状を気相成長条件を変更することなく修正することができるようになり、特に外周部まで高平坦となったエピタキシャルウェーハを安定して供給することも可能となる。
【0044】
ここで、座ぐり部31の座ぐり部端上部31bとテーパー部末端31cの高さの差h(テーパー部自体の高さ)を調整する事で、基板のエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を所望のレベルまで抑制する事が可能となる。
例えば、テーパー部33は、その高さhが半導体基板Wの厚さtwの30%以下とすることができる。これによって、原料ガスの流れが乱れることを確実に抑制できるため、より確実かつ安定して均一な層厚のエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハを製造するのに好適なサセプタとすることができる。
【0045】
そして、テーパー部末端31cの位置と半導体基板が配置される座ぐり部31の座ぐり部端上部31bにかけての長さdを調整することにより、基板のエッジから所望の領域まで基板のエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を抑制する事が可能となる。例えば、長さdを長くすることで半導体基板の周辺部で層厚が変化する開始点を半導体基板のエッジに近い位置に変化させることができる。また、長さdを短くすると、半導体基板の周辺部で層厚が変化する開始点を半導体基板のエッジよりも遠い位置に変化させる事が可能となる。
例えば、テーパー部33は、座ぐり部端上部31bから外側に向かう長さdが、半導体基板の直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満の長さとすることができる。これによって、座ぐり部端近傍の気相成長速度の制御を確実に行うことができ、平坦性に優れたエピタキシャルウェーハを製造することができるサセプタになる。
【0046】
また、座ぐり部31の深さtは、半導体基板の厚さtwの0.9〜1.1倍とすることができる。
これによって、エピタキシャル成長を行う半導体基板の基板厚さtwと座ぐり部の座ぐり深さtをほぼ等しくすることができ、より高い精度で半導体基板Wの外周部の層厚の制御を行うことができるようになる。
【0047】
また、図4に示すように、本発明の第2の実施形態のサセプタ40は、座ぐり部41の座ぐり部端上部41bの高さを基板Wの主表面の高さに略等しく保ち(t≒tw)、座ぐり部端上部41bからテーパー部末端41cにかけて、座ぐり部41の外側に向けて徐々にサセプタの上面が下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部43を有するものである。
【0048】
このようなサセプタ40においては、テーパー部末端41cの径(すなわちテーパー部43の長さd)を調整することにより、基板Wのエッジから所望の領域まで基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を上昇させる事が可能となる。
また、座ぐり部41の座ぐり部端上部41bとテーパー部末端41cの高さの差h(テーパー部43自体の高さ)を調整する事で、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を所望のレベルまで上昇させる事が可能となる。
【0049】
ここで、前述のように、テーパー部43の高さhを基板Wの厚さtwの30%以下の範囲で調整する事によって、気相成長ガスの流れを大きく乱してしまう恐れを確実に避けることができる。
また、テーパー部43の長さdも基板Wの直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満の範囲で調整する事によって、同様にエッジ近傍の成長速度の十分な制御ができ、層厚が均一なエピタキシャル層を容易且つ安定して気相成長させることができる。
さらに、該サセプタ40の座ぐり深さtを基板の厚さtwに対して0.9〜1.1倍の範囲にする事によって、より高い精度で半導体基板Wの外周部の層厚の制御を行うことができるようになる。
【0050】
更に、半導体基板Wの外周部の層厚を半導体基板Wの全周において均一に調整する場合には、図5に示すように、半導体基板Wが配置される座ぐり部51の全周に渡って途切れることなく座ぐり部端上部51bからサセプタ50の外側に向かってテーパー部53が形成されたものとすることがよい。
【0051】
また、半導体基板Wの外周部の一部のみを層厚調整する場合には、図6に示すように、半導体基板Wが配置される座ぐり部61の半導体基板Wの外周部の層厚を調整する部分に相当する領域に、座ぐり部61の座ぐり部端上部61bの周方向に沿って間欠的に座ぐり部端上部61bからサセプタ60の外側に向かってテーパー部63が形成されたものとすることがよい。
【0052】
以上のように、本発明では、テーパー部自体の高さh、テーパーの端と半導体基板が配置される座ぐり部の座ぐり部端との長さd、座ぐり部の深さt、テーパーの向き、周方向におけるテーパーの有無を調整することにより、半導体基板周辺部のエピタキシャル層の形状を調整することができるため、様々の基板・気相成長条件に従ってこれらのファクターを調整することで、平坦なエピタキシャルウェーハを作製することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1−5)
図3に示すようなサセプタを作製した。サセプタの座ぐり深さtは、シリコン単結晶基板の厚さに近い800μmとし、テーパーの高さhを100μmに固定して、テーパー長さ(座ぐり部端から外側に向かう長さ)dを実施例1ではd=22.5mm、実施例2はd=15mm、実施例3はd=10mm、実施例4はd=7.5mm、実施例5はd=3mmとした5種類のサセプタを作製した。
サセプタの上記パラメータを表1にまとめて示す。なお、表1及び後述する図7には、後述する比較例2,3のサセプタのパラメータと、それを用いた時のシリコンエピタキシャル層の厚さのバラツキを比較のために記載しておく。
【0054】
【表1】
【0055】
そして図1に示すようなエピタキシャル製造装置のサセプタの位置に先に作製したサセプタを搭載して、直径300mm、抵抗率0.01〜0.02Ω・cm、厚さ775μmのP+型シリコン単結晶基板上の主表面上に厚さ約5μmのP−型シリコンエピタキシャル層を各々のサセプタを用いて気相成長させた。
【0056】
その後、フーリエ赤外線分光を用いたナノメトリクス社製シリコンエピタキシャル層厚測定装置QS3300EGを用いて、前記シリコン基板の外周2mmから30mmまでの範囲を1mmピッチで測定して、シリコンエピタキシャル層の厚さ分布を測定した。その結果を図7に示す。図7では、各点の測定値を全測定点の平均値で割って、その値から1を引いたものをパーセント表示し、エピタキシャル層の厚さのばらつきを表す指標とした。
【0057】
図7に示すように、テーパー長さdを長くした実施例1の場合は、テーパーを形成した事による外周ダレ効果が弱まり、比較例2に近い層厚分布となった。
逆にテーパー長さdを短くした実施例5の場合は、テーパーを形成した事による外周ダレ効果が強まり、比較例3に近い層厚分布となっていることが判った。
このようにテーパー長さdを適切な値に調整する事で所望のダレの位置に調整でき、また、実施例2の場合には、外周までほぼフラットな層厚分布を得ることができることが判った。
【0058】
(実施例6−9)
図4に示すようなサセプタを作製した。サセプタの座ぐり深さtは、シリコン単結晶基板の厚さに近い800μmとし、テーパーの高さhを100μmに固定して、テーパー長さ(座ぐり部端から外側に向かう長さ)dを実施例6ではd=22.5mm、実施例7はd=15mm、実施例8はd=7.5mm、実施例9はd=3mmとした4種類のサセプタを作製した。
サセプタの上記パラメータを表2にまとめて示す。なお、表2及び後述する図8には、後述する比較例1,2のサセプタのパラメータと、それを用いた時のシリコンエピタキシャル層の厚さのバラツキを比較のために記載しておく。
【0059】
【表2】
【0060】
そして、図1に示すようなエピタキシャル製造装置のサセプタの位置に先に作製したサセプタを搭載して、直径300mm、抵抗率0.01〜0.02Ω・cm、厚さ775μmのP+型シリコン単結晶基板上の主表面上に厚さ約5μmのP−型シリコンエピタキシャル層を各々のサセプタを用いて気相成長させた。
【0061】
その後、フーリエ赤外線分光を用いたナノメトリクス社製シリコンエピタキシャル層厚測定装置QS3300EGを用いて、前記シリコン基板の外周2mmから30mmまでの範囲を1mmピッチで測定して、シリコンエピタキシャル層の厚さ分布を測定した。その結果を図8に示す。図8では、図7と同様に、各点の測定値を全測定点の平均値で割って、その値から1を引いたものをパーセント表示し、エピタキシャル層の厚さのばらつきを表す指標とした。
【0062】
図8に示すように、テーパー長さdを長くした実施例6の場合は、テーパーを形成した事による外周ハネ効果が弱まり、比較例2に近い層厚分布となった。
逆にテーパー長さdを短くした実施例9の場合は、テーパーを形成した事による外周ハネ効果が強まり、比較例1に近い層厚分布となっていることが判った。
このようにテーパー長さdを適切な値に調整する事で所望のハネの位置に調整できることが判った。
【0063】
(比較例1−3)
図10に示すようなサセプタを作製した。サセプタの座ぐり部の深さtを、比較例1では700μm、比較例2は800μm、比較例3は900μmとした3種類を準備した。
【0064】
そして、図1に示したエピタキシャル製造装置のサセプタの位置に実施例で用いたものに変えて、上記各々のサセプタを搭載して、直径300mm、抵抗率0.01〜0.02Ω・cm、厚さ775μmのP+型シリコン単結晶基板上の主表面上に厚さ約5μmのP−型シリコンエピタキシャル層を各々のサセプタを用いて気相成長させた。
【0065】
その後、フーリエ赤外線分光を用いたナノメトリクス社製シリコンエピタキシャル層厚測定装置QS3300EGを用いて、前記シリコン基板の外周2mmから30mmまでの範囲を1mmピッチで測定して、シリコンエピタキシャル層の厚さ分布を測定した。その結果を図9に示す。図9では、図7,8と同様に、各点の測定値を全測定点の平均値で割って、その値から1を引いたものをパーセント表示し、エピタキシャル層の厚さのばらつきを表す指標とした。
【0066】
図9に示すように、座ぐり深さを浅い方から深い方に変化させる事で、シリコンエピタキシャル層の層厚分布はハネからダレ形状に変化している。
しかし、ダレ及びハネ位置も同様に大きく変化しており、外周部のエピタキシャル層のダレ及びハネ量とその位置を同時に制御して平坦にする事が困難であることが判った。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
10…エピタキシャルウェーハ製造装置、
11…反応容器、 12…サセプタ支持部材、 12a…支持アーム、 12b…貫通孔、 13…リフトピン、 13a…頭部、 13b…胴体部、 14a,14b…加熱装置、 15…原料ガス導入管、 16…パージガス導入管、 17…排気管、
20,30,40,50,60…サセプタ、
20a,20b…リフトピン貫通用孔部、
21,31,41,51,61…座ぐり部、
21a…座ぐり部端底部、
31b,41b,51b,61b…座ぐり部端上部、
31c,41c…テーパー部末端、
33,43,53,63…テーパー部、
100,110,120…サセプタ、
101,111,121…座ぐり部、
101a,111a,121a…座ぐり部端底部、
102…貫通用孔部、
111b,121b…座ぐり部端上部、
W…半導体基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長工程において半導体基板を支持するために用いるサセプタと、このサセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造装置およびエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の主表面上へのエピタキシャル層(例えばシリコンエピタキシャル層)の気相成長は、反応容器内にサセプタを配し、このサセプタ上に基板を配した状態で、基板を加熱装置により所望の成長温度に加熱するとともに、ガス供給装置により基板の主表面上に原料ガスを供給することによって行われている。
このようにして形成されたエピタキシャルウェーハは、ダメージフリーで欠陥も少ない極めて良質な表面を有している。
【0003】
近年、MPUやDRAM、フラッシュメモリー等のMOS FET、IGBT等のPowerデバイス、CCD、CIS等の撮像デバイスにシリコンエピタキシャルウェーハが使用され始めている。
また、高収率化、高性能化のためにデバイスの高集積化、微細化が進み、基板表面品質のみならず、基板の平坦性が特に重要となってきている。
さらにデバイスの収率向上を目的に平坦性を保証する領域についても、外周5mmを除外した領域から外周3mmあるいは外周2mmを除外した領域へと広がってきている。
【0004】
ここで、非常に高い平坦性を要求されているシリコンウェーハのエピタキシャル成長については、バッチ処理から枚葉処理の装置を用いることでエピタキシャル層の層厚均一性の向上を図ってきている。
しかしながら、エピタキシャル成長前の基板が平坦でない場合には、単純に均一な層厚のエピタキシャル層を形成するのでなく、成長前の基板の形状に合わせてエピタキシャル層の層厚分布を調整する必要がある。
【0005】
例えばシリコンウェーハの場合、エピタキシャル成長前の基板に研磨加工を施して平坦化処理を行っており、シリコンウェーハの中心部は高平坦性が達成されている。しかし、周辺部については十分な平坦性が達成できておらず、エピタキシャル成長工程において周辺部の層厚を調整して平坦性を改善する必要がある。
【0006】
このような問題に対して、サセプタの座ぐり部の深さを調整する方法がある。
また、例えば特許文献1にあるように、基板の中心と外周部に原料ガスを供給するための複数のインジェクタを設けて、各インジェクタから供給する原料ガスの濃度や流量を調整してシリコンウェーハの中心部と周辺部のエピタキシャル層の層厚をコントロールして平坦化を図る方法等も提案されている。
【0007】
更に、特許文献2にあるように、サセプタとシリコンウェーハ裏面が近接・接触するレッジと呼ばれる領域の長さを変化させて、シリコンウェーハ周辺部裏面側にもエピタキシャル層を形成し、シリコンウェーハ周辺部の形状を選択的に制御する方法等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許2790009号公報
【特許文献2】特開2007−273623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、座ぐり部の深さを調整する方法では、ウェーハエッジとサセプタ間で段差が生じて、ガスの流れに乱れが発生し、エッジ部分だけでなく、ウェーハの内側の領域まで層厚が変化してしまう問題がある。
また特許文献1に記載されている各々のインジェクタからの原料ガスの流量等を調節する方法では、原料ガスが拡散するために、基板となるシリコンウェーハの周辺部分のみのエピタキシャル層の層厚を選択的に制御できないという問題がある。
【0010】
そして、特許文献2に記載された方法では、シリコンウェーハの表面側のエピタキシャル層の層厚分布と裏面側のエピタキシャル層の層厚分布の足し合わせで周辺部形状が形成されるため、複雑で安定性に欠ける等の課題がある。そして、形状の制御がうまく行かなかった場合には、逆にウェーハ外周部にうねりが生じてフラットネスを大幅に悪化させる恐れもある。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、エピタキシャルウェーハ主表面側の周辺部のエピタキシャル層の層厚を制御することによってエピタキシャルウェーハの平坦性を向上させることができる気相成長の際に半導体基板を支持するためのサセプタと、このサセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造装置および製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、気相成長の際に半導体基板を支持するサセプタであって、該サセプタは、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するものであることを特徴とする気相成長用半導体基板支持サセプタを提供する。
【0013】
このように、座ぐり部の端から外側に向かってある一定距離の間に徐々にサセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタを用いると、半導体基板の周辺部の原料ガスの流れを調整することができ、半導体基板の周辺部のエピタキシャル層の層厚を制御することができるようになる。
このため、例えばあるエピタキシャル成長条件下で外周部の層厚均一性が悪化している場合でも、エピタキシャル成長条件を変更しないでサセプタ形状のみを調整することで半導体基板外周部のエピタキシャル層の層厚均一性を改善する事が可能となり、制御の自由度を上げることができる。すなわち制御が容易になり、層厚が均一且つ安定したエピタキシャル層を気相成長させることが可能となり、製造歩留りの改善を図ることができる。
【0014】
また、エピタキシャル成長を行う前の半導体基板の外周部の平坦性が悪い場合にも、本発明のサセプタを用いる事で、半導体基板の周辺部のエピタキシャル層の層厚分布を調整して、該半導体基板の外周部形状を修正することができ、高平坦な表面を有するエピタキシャルウェーハを安定して供給することも可能となる。
【0015】
ここで、前記テーパー部は、前記座ぐり部端から外側に向かう長さが、前記半導体基板の直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満の長さであるものとすることが好ましい。
このように、座ぐり部の端から外側に向かう長さが半導体基板の直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満であれば、半導体基板の周辺部の層厚調整効果を十分に高いものとすることができ、高平坦性のエピタキシャルウェーハの製造に大きく貢献することができるサセプタになる。
【0016】
また、前記テーパー部は、その高さが前記半導体基板の厚さの30%以下であるものとすることが好ましい。
このように、テーパー部の高さを半導体基板の厚さの30%以下とすることによって、半導体基板周辺部での原料ガスの流れが乱れることを確実に抑制でき、より確実に層厚が均一なエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0017】
そして、前記テーパーが、前記座ぐり部の全周に渡って途切れることなく形成されたものとすることができ、また、前記座ぐり部の周方向に沿って間欠的に形成されたものとすることもできる。
このように、テーパーが、座ぐり部の全周に渡って途切れることなく形成されたサセプタとすることによって、半導体基板の外周部の層厚を半導体基板の全周において均一に調整することができる。
また、テーパーが、座ぐり部の周方向に沿って間欠的に形成されたサセプタであれば、半導体基板の外周部の一部のみを層厚調整することができるため、気相成長前の半導体基板の表面形状に合わせて適宜選択することによって平坦性に優れたエピタキシャルウェーハが得られる。
【0018】
また、前記サセプタの前記座ぐり部の深さが、前記半導体基板の厚さの0.9〜1.1倍であるものとすることが好ましい。
このように、座ぐり部の深さが、半導体基板の厚さの0.9〜1.1倍のサセプタとすることによって、エピタキシャル成長を行う半導体基板の基板厚さと座ぐり部の座ぐり深さを略等しくすることができ、半導体基板の外周部の層厚制御を更に高い精度で行うことができる。
【0019】
また、本発明では、半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させるためのエピタキシャルウェーハ製造装置であって、少なくとも、反応容器と、原料ガス導入管と、排気管と、加熱装置と、本発明に記載のサセプタとを備えるものであることを特徴とするエピタキシャルウェーハ製造装置を提供する。
【0020】
このように、本発明に係る半導体基板を支持するサセプタを備えたエピタキシャルウェーハの製造装置であれば、これを用いて半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させることによって、エピタキシャル成長条件を変更しないで半導体基板の外周部のエピタキシャル層を均一に形成することができる。
また、半導体基板の外周形状に合わせて半導体基板の外周部のエピタキシャル層厚を調整することができる。すなわち、半導体基板の外周部形状を修正することができるので、高平坦なエピタキシャルウェーハを安定して供給することも可能となる。
【0021】
そして、本発明では、半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、本発明に記載のサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0022】
更に、本発明では、半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0023】
このように、半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させる際に半導体基板を支持するサセプタに、座ぐり部の端から外側に向かってある一定距離の間に徐々にサセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタを用いることによって、エピタキシャル層が形成された後の半導体基板の外周のハネ及びダレ量の調整を行うことができ、中心部だけではなく、外周部も平坦度の高いエピタキシャルウェーハを製造することができる。
特に、テーパーの高さを調整することによって外周部のハネ及びダレを容易にコントロールでき、また座ぐり部端から外側に向かう長さを調節することでエピタキシャル層の外周部のハネ及びダレが発生する位置を調節することができるため、気相成長前の半導体基板の表面形状に応じてサセプタのテーパー形状等を調整することのみでエピタキシャル層の表面形状を制御することができ、高平坦性のエピタキシャルウェーハを容易に製造できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、半導体基板の外周部のエピタキシャル層の厚さも均一なものとすることができる。また、エピタキシャル成長前の半導体基板の外周形状に合わせて外周部のエピタキシャル層の分布を調整することができ、高平坦なエピタキシャルウェーハを安定して供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るエピタキシャル製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るエピタキシャル製造装置の他の様態を示す概略図である。
【図3】本発明に係るサセプタの第1の態様を示す概略図である。
【図4】本発明に係るサセプタの第2の態様を示す概略図である。
【図5】本発明に係るサセプタを上から視た時の一例(全周にテーパー部がある場合)を示す図である。
【図6】本発明に係るサセプタを上から視た時の他の一例(間欠的にテーパー部がある場合)を示す図である。
【図7】実施例1−5、比較例2−3のシリコンエピタキシャル層の外周部の層厚分布を示した図である。
【図8】実施例6−9、比較例1−2のシリコンエピタキシャル層の外周部の層厚分布を示した図である。
【図9】比較例1−3のシリコンエピタキシャル層の外周部の層厚分布を示した図である。
【図10】従来のサセプタの断面形状の概略を示した図である。
【図11】座ぐり深さが深い従来のサセプタの断面形状の概略を示した図である。
【図12】座ぐり深さが浅い従来のサセプタの断面形状の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
先ず、図1及び図2を参照して、本発明に係るエピタキシャルウェーハ製造装置の一例としての枚葉式のエピタキシャルウェーハの製造装置について説明する。
【0027】
図1に示すように、エピタキシャルウェーハ製造装置10は、少なくとも、サセプタ20(詳細後述)と該サセプタ20が内部に配される反応容器11と、サセプタ20を支持して回転駆動及び昇降動作させるサセプタ支持部材12と、サセプタ20を表裏に貫通するとともに該サセプタ20に対して昇降動作可能に設けられ、半導体基板W(以下基板Wと省略する事がある)を支持した状態で昇降動作するのに伴わせてサセプタ20上に着脱するためのリフトピン13と、気相成長の際に基板Wを所望の成長温度に加熱するための加熱装置14a、14b(具体的には、例えばハロゲンランプ)と、原料ガス(具体的には、例えばトリクロロシラン等)及びキャリアガス(具体的には、例えば水素等)を含む気相成長用ガスを反応容器11内のサセプタ20上側の領域に導入して該サセプタ20上の基板Wの主表面上に供給する気相成長用の原料ガス導入管15と、反応容器11に対しこの気相成長用ガス導入管15と同じ側に設けられパージガス(具体的には、例えば水素等)を反応容器11内のサセプタ20下側の領域に導入するパージガス導入管16と、これらパージガス導入管16及び原料ガス導入管15と反応容器11に対し反対側に設けられ該反応容器11からガス(気相成長用の原料ガス及びパージガス)を排気する排気管17とを備えて構成されている。
【0028】
このうち、サセプタ20は、気相成長の際に基板Wを支持するものであり、例えば炭化珪素で被覆されたグラファイトにより構成されている。
【0029】
まず、一般的な従来のサセプタの形状を図10に示す。
従来のサセプタ100は、例えば略円盤状に構成され、その主表面には、該主表面上に基板Wを位置決めするための座ぐり部101(平面視円形の凹部)が形成されている。この座ぐり部101の底面は、平面のものや凹曲面上になっているものもある。また、座ぐり部底面の座ぐり部端底部101aの近傍を平面、その内側を凹曲面にしたものや、更に座ぐり部端底部101a近傍にサセプタ100の裏面まで貫通した孔を設けたもの等も提案されている。
【0030】
また、図10に示すように、サセプタ100の座ぐり部101の底面には、サセプタ100の裏面に貫通した状態に形成され、リフトピンが挿通されるリフトピン貫通用孔部102が形成されている。このリフトピン貫通用孔部102は、例えば、座ぐり部101上に等角度間隔で三箇所に配設されているものである。
【0031】
ここで例えば図1に示すように、リフトピン13は、例えば丸棒状に構成された胴体部13bと、該胴体部13bの上端部に形成され、基板Wを下面側から支持する頭部13aとを備えている。このうち頭部13aは、基板Wを支持しやすいように胴体部13bよりも拡径されている。
そして、リフトピン13は、その下端部から、リフトピン貫通用孔部20aに挿入された結果、該リフトピン貫通用孔部20aの縁部により頭部13aが下方に抜け止めされて、サセプタ20により支持されるとともに、その胴体部13bを該リフトピン貫通孔20aより垂下させた状態となっている。なお、リフトピン13の胴体部13bは、サセプタ支持部材12の支持アーム12aに設けられた貫通孔12bも貫通している。
【0032】
また、サセプタ支持部材12は、複数の支持アーム12aを放射状に備え、これら支持アーム12aにより、サセプタ20を下面側から支持している。これにより、サセプタ20は、その上面が略水平状態に保たれている。
【0033】
エピタキシャル製造装置10は、以上のように構成されている。
そして、このエピタキシャルウェーハ製造装置10を用いて、以下の要領で気相成長を行うことにより、基板Wの主表面上にシリコンエピタキシャル層を形成してシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0034】
先ず、基板Wを反応容器11内のサセプタ20により支持させる。
このためには、先ず、リフトピン13上に基板Wを受け渡すために、各リフトピン13を互いに略等量だけサセプタ20上面より上方に突出するように該サセプタ20に対し相対的に上昇させる。また、サセプタ支持部材12を下降させるのに伴わせてサセプタ20を下降させるようにしてもよい。この下降の過程で、リフトピン13の下端部が、例えば反応容器11の内部底面に到達して以降は、リフトピン13はそれ以上に下降できないが、サセプタ20はさらに下降することができる。
このため、サセプタ20に対し相対的にリフトピン13が上昇し、やがてリフトピンとサセプタは図2のような位置関係となる(図2において基板Wが無い状態)。
【0035】
次に図示しないハンドラにより基板Wを反応容器11内に搬送し、上記上昇動作後の各リフトピン13の頭部13aにより、主表面を上にして基板Wを支持させる(図2の状態)。
次に、基板Wをサセプタ20により支持させるために、各リフトピン13をサセプタ20に対し相対的に下降させる。このためには、ハンドラを待避させる一方で、サセプタ支持部材12を上昇させるのに伴わせて、サセプタ20を上昇させる。この上昇の過程で、座ぐり部21の座ぐり部端底部21aが基板Wの主裏面に到達すると、それまでリフトピン13の頭部13a上に支持されていた基板Wが、座ぐり部21の座ぐり部端底部21a近傍で支持された状態へと移行する。
さらに、リフトピン貫通用孔部20bの縁部がリフトピン13の頭部13aに到達すると、それまで反応容器11の内部底面により支持された状態であったリフトピン13は、サセプタ20により支持された状態へと移行する。
【0036】
このようにサセプタ20により基板Wを支持させたら、気相成長を行う。
まず、サセプタ支持部材12を鉛直軸周りに回転駆動することによりサセプタ20を回転させるのに伴わせて基板Wを回転させるとともに、該サセプタ20上の基板Wを加熱装置14a,14bにより所望の成長温度に加熱しながら、原料ガス導入管15を介して基板Wの主表面上に気相成長用ガスを略水平に供給する一方で、パージガス導入管16を介してサセプタ20の下側にパージガスを略水平に導入する。
【0037】
従って、気相成長中、サセプタ20の上側には、気相成長用ガス流が、下側には、パージガス流が、それぞれサセプタ20及び基板Wと略平行に形成される。このように気相成長を行うことにより、基板Wの主表面上にエピタキシャル層を形成して、エピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0038】
このようにエピタキシャルウェーハを製造したら、該製造後のエピタキシャルウェーハを、反応容器11外に搬出する。
すなわち、サセプタ20の回転を止めた後に、サセプタ支持部材12を下降させて、図2に示すように各リフトピン13を互いに略等量だけサセプタ20の上方に突出動作させ、この突出動作に伴わせて基板Wをサセプタ20の座ぐり部21の上方に上昇させる。そして、図示しないハンドラにより基板Wを搬出する。
【0039】
ここで、気相成長中は、気相成長ガスは気相成長ガス導入管15から導入され、サセプタ20の表面を沿って流れ、基板Wのエッジ部に運ばれる。基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル層の成長速度は、基板Wのエッジ近傍の気相成長ガスの濃度や流速に大きく依存する。
一般的には図11や図12に示すように、サセプタ110,120の基板Wを支持する為の座ぐり部111,121の座ぐり深さ(座ぐり部111,121の座ぐり部端底部111a,121aと座ぐり部端上部111b,121bの高さの差)を調節することで、基板Wのエッジ近傍の気相成長用ガスの流れを変化させて、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を調整する方法が用いられている。
【0040】
例えば、図11に示すようにサセプタ110の座ぐり深さを基板Wの厚さよりも深くすれば、基板Wのエッジ部に供給される気相成長用ガスの濃度が低下し、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度は低下する。
しかしながら、基板Wと座ぐり部111の座ぐり部端上部111bとの間で段差が生じる結果、気相成長ガスの流れの乱れが発生し、基板Wのエピタキシャル成長速度の低下は、基板Wのエッジ部からさらに内側の領域にまで及ぶようになる。この為、基板Wの外周部のエピタキシャル成長速度の精密な制御ができない。
【0041】
また、図12に示すようにサセプタ120の座ぐり深さを基板Wの厚さよりも浅くすれば、基板Wのエッジ部に供給される気相成長用ガスの濃度が上昇し、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度は上昇する。
しかしながら、基板Wとサセプタの座ぐり部121の座ぐり部端上部121bとの間で段差が生じる結果、気相成長ガスの流れの乱れが発生し、基板Wのエピタキシャル成長速度の上昇は、基板Wのエッジ部からさらに内側の領域にまで及ぶようになる。この為、同様に基板Wの外周部のエピタキシャル成長速度の精密な制御ができない。
【0042】
これに対し、図3に示すように本発明の第1の実施形態のサセプタ30は、座ぐり部31の座ぐり部端上部31bの高さを基板Wの主表面の高さに略等しく保ち(t≒tw)、座ぐり部端上部31bからテーパー部末端31cにかけて、座ぐり部31の外側に向けて徐々にサセプタの上面が上方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部33を有するものである。
【0043】
このように、本発明に係る半導体基板を支持するサセプタを備えたエピタキシャルウェーハの製造装置を用いて半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させることによって、エピタキシャル成長条件を変更しないで基板の外周部のエピタキシャル層を均一に形成することができる。
また、エピタキシャル成長前の半導体基板の外周形状に合わせて半導体基板の外周部のエピタキシャル層厚を調整することができる。従って、半導体基板の外周部形状を気相成長条件を変更することなく修正することができるようになり、特に外周部まで高平坦となったエピタキシャルウェーハを安定して供給することも可能となる。
【0044】
ここで、座ぐり部31の座ぐり部端上部31bとテーパー部末端31cの高さの差h(テーパー部自体の高さ)を調整する事で、基板のエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を所望のレベルまで抑制する事が可能となる。
例えば、テーパー部33は、その高さhが半導体基板Wの厚さtwの30%以下とすることができる。これによって、原料ガスの流れが乱れることを確実に抑制できるため、より確実かつ安定して均一な層厚のエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハを製造するのに好適なサセプタとすることができる。
【0045】
そして、テーパー部末端31cの位置と半導体基板が配置される座ぐり部31の座ぐり部端上部31bにかけての長さdを調整することにより、基板のエッジから所望の領域まで基板のエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を抑制する事が可能となる。例えば、長さdを長くすることで半導体基板の周辺部で層厚が変化する開始点を半導体基板のエッジに近い位置に変化させることができる。また、長さdを短くすると、半導体基板の周辺部で層厚が変化する開始点を半導体基板のエッジよりも遠い位置に変化させる事が可能となる。
例えば、テーパー部33は、座ぐり部端上部31bから外側に向かう長さdが、半導体基板の直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満の長さとすることができる。これによって、座ぐり部端近傍の気相成長速度の制御を確実に行うことができ、平坦性に優れたエピタキシャルウェーハを製造することができるサセプタになる。
【0046】
また、座ぐり部31の深さtは、半導体基板の厚さtwの0.9〜1.1倍とすることができる。
これによって、エピタキシャル成長を行う半導体基板の基板厚さtwと座ぐり部の座ぐり深さtをほぼ等しくすることができ、より高い精度で半導体基板Wの外周部の層厚の制御を行うことができるようになる。
【0047】
また、図4に示すように、本発明の第2の実施形態のサセプタ40は、座ぐり部41の座ぐり部端上部41bの高さを基板Wの主表面の高さに略等しく保ち(t≒tw)、座ぐり部端上部41bからテーパー部末端41cにかけて、座ぐり部41の外側に向けて徐々にサセプタの上面が下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部43を有するものである。
【0048】
このようなサセプタ40においては、テーパー部末端41cの径(すなわちテーパー部43の長さd)を調整することにより、基板Wのエッジから所望の領域まで基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を上昇させる事が可能となる。
また、座ぐり部41の座ぐり部端上部41bとテーパー部末端41cの高さの差h(テーパー部43自体の高さ)を調整する事で、基板Wのエッジ近傍のエピタキシャル成長速度を所望のレベルまで上昇させる事が可能となる。
【0049】
ここで、前述のように、テーパー部43の高さhを基板Wの厚さtwの30%以下の範囲で調整する事によって、気相成長ガスの流れを大きく乱してしまう恐れを確実に避けることができる。
また、テーパー部43の長さdも基板Wの直径の1%以上7.5%未満、より好ましくは2.5%以上7.5%未満の範囲で調整する事によって、同様にエッジ近傍の成長速度の十分な制御ができ、層厚が均一なエピタキシャル層を容易且つ安定して気相成長させることができる。
さらに、該サセプタ40の座ぐり深さtを基板の厚さtwに対して0.9〜1.1倍の範囲にする事によって、より高い精度で半導体基板Wの外周部の層厚の制御を行うことができるようになる。
【0050】
更に、半導体基板Wの外周部の層厚を半導体基板Wの全周において均一に調整する場合には、図5に示すように、半導体基板Wが配置される座ぐり部51の全周に渡って途切れることなく座ぐり部端上部51bからサセプタ50の外側に向かってテーパー部53が形成されたものとすることがよい。
【0051】
また、半導体基板Wの外周部の一部のみを層厚調整する場合には、図6に示すように、半導体基板Wが配置される座ぐり部61の半導体基板Wの外周部の層厚を調整する部分に相当する領域に、座ぐり部61の座ぐり部端上部61bの周方向に沿って間欠的に座ぐり部端上部61bからサセプタ60の外側に向かってテーパー部63が形成されたものとすることがよい。
【0052】
以上のように、本発明では、テーパー部自体の高さh、テーパーの端と半導体基板が配置される座ぐり部の座ぐり部端との長さd、座ぐり部の深さt、テーパーの向き、周方向におけるテーパーの有無を調整することにより、半導体基板周辺部のエピタキシャル層の形状を調整することができるため、様々の基板・気相成長条件に従ってこれらのファクターを調整することで、平坦なエピタキシャルウェーハを作製することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1−5)
図3に示すようなサセプタを作製した。サセプタの座ぐり深さtは、シリコン単結晶基板の厚さに近い800μmとし、テーパーの高さhを100μmに固定して、テーパー長さ(座ぐり部端から外側に向かう長さ)dを実施例1ではd=22.5mm、実施例2はd=15mm、実施例3はd=10mm、実施例4はd=7.5mm、実施例5はd=3mmとした5種類のサセプタを作製した。
サセプタの上記パラメータを表1にまとめて示す。なお、表1及び後述する図7には、後述する比較例2,3のサセプタのパラメータと、それを用いた時のシリコンエピタキシャル層の厚さのバラツキを比較のために記載しておく。
【0054】
【表1】
【0055】
そして図1に示すようなエピタキシャル製造装置のサセプタの位置に先に作製したサセプタを搭載して、直径300mm、抵抗率0.01〜0.02Ω・cm、厚さ775μmのP+型シリコン単結晶基板上の主表面上に厚さ約5μmのP−型シリコンエピタキシャル層を各々のサセプタを用いて気相成長させた。
【0056】
その後、フーリエ赤外線分光を用いたナノメトリクス社製シリコンエピタキシャル層厚測定装置QS3300EGを用いて、前記シリコン基板の外周2mmから30mmまでの範囲を1mmピッチで測定して、シリコンエピタキシャル層の厚さ分布を測定した。その結果を図7に示す。図7では、各点の測定値を全測定点の平均値で割って、その値から1を引いたものをパーセント表示し、エピタキシャル層の厚さのばらつきを表す指標とした。
【0057】
図7に示すように、テーパー長さdを長くした実施例1の場合は、テーパーを形成した事による外周ダレ効果が弱まり、比較例2に近い層厚分布となった。
逆にテーパー長さdを短くした実施例5の場合は、テーパーを形成した事による外周ダレ効果が強まり、比較例3に近い層厚分布となっていることが判った。
このようにテーパー長さdを適切な値に調整する事で所望のダレの位置に調整でき、また、実施例2の場合には、外周までほぼフラットな層厚分布を得ることができることが判った。
【0058】
(実施例6−9)
図4に示すようなサセプタを作製した。サセプタの座ぐり深さtは、シリコン単結晶基板の厚さに近い800μmとし、テーパーの高さhを100μmに固定して、テーパー長さ(座ぐり部端から外側に向かう長さ)dを実施例6ではd=22.5mm、実施例7はd=15mm、実施例8はd=7.5mm、実施例9はd=3mmとした4種類のサセプタを作製した。
サセプタの上記パラメータを表2にまとめて示す。なお、表2及び後述する図8には、後述する比較例1,2のサセプタのパラメータと、それを用いた時のシリコンエピタキシャル層の厚さのバラツキを比較のために記載しておく。
【0059】
【表2】
【0060】
そして、図1に示すようなエピタキシャル製造装置のサセプタの位置に先に作製したサセプタを搭載して、直径300mm、抵抗率0.01〜0.02Ω・cm、厚さ775μmのP+型シリコン単結晶基板上の主表面上に厚さ約5μmのP−型シリコンエピタキシャル層を各々のサセプタを用いて気相成長させた。
【0061】
その後、フーリエ赤外線分光を用いたナノメトリクス社製シリコンエピタキシャル層厚測定装置QS3300EGを用いて、前記シリコン基板の外周2mmから30mmまでの範囲を1mmピッチで測定して、シリコンエピタキシャル層の厚さ分布を測定した。その結果を図8に示す。図8では、図7と同様に、各点の測定値を全測定点の平均値で割って、その値から1を引いたものをパーセント表示し、エピタキシャル層の厚さのばらつきを表す指標とした。
【0062】
図8に示すように、テーパー長さdを長くした実施例6の場合は、テーパーを形成した事による外周ハネ効果が弱まり、比較例2に近い層厚分布となった。
逆にテーパー長さdを短くした実施例9の場合は、テーパーを形成した事による外周ハネ効果が強まり、比較例1に近い層厚分布となっていることが判った。
このようにテーパー長さdを適切な値に調整する事で所望のハネの位置に調整できることが判った。
【0063】
(比較例1−3)
図10に示すようなサセプタを作製した。サセプタの座ぐり部の深さtを、比較例1では700μm、比較例2は800μm、比較例3は900μmとした3種類を準備した。
【0064】
そして、図1に示したエピタキシャル製造装置のサセプタの位置に実施例で用いたものに変えて、上記各々のサセプタを搭載して、直径300mm、抵抗率0.01〜0.02Ω・cm、厚さ775μmのP+型シリコン単結晶基板上の主表面上に厚さ約5μmのP−型シリコンエピタキシャル層を各々のサセプタを用いて気相成長させた。
【0065】
その後、フーリエ赤外線分光を用いたナノメトリクス社製シリコンエピタキシャル層厚測定装置QS3300EGを用いて、前記シリコン基板の外周2mmから30mmまでの範囲を1mmピッチで測定して、シリコンエピタキシャル層の厚さ分布を測定した。その結果を図9に示す。図9では、図7,8と同様に、各点の測定値を全測定点の平均値で割って、その値から1を引いたものをパーセント表示し、エピタキシャル層の厚さのばらつきを表す指標とした。
【0066】
図9に示すように、座ぐり深さを浅い方から深い方に変化させる事で、シリコンエピタキシャル層の層厚分布はハネからダレ形状に変化している。
しかし、ダレ及びハネ位置も同様に大きく変化しており、外周部のエピタキシャル層のダレ及びハネ量とその位置を同時に制御して平坦にする事が困難であることが判った。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
10…エピタキシャルウェーハ製造装置、
11…反応容器、 12…サセプタ支持部材、 12a…支持アーム、 12b…貫通孔、 13…リフトピン、 13a…頭部、 13b…胴体部、 14a,14b…加熱装置、 15…原料ガス導入管、 16…パージガス導入管、 17…排気管、
20,30,40,50,60…サセプタ、
20a,20b…リフトピン貫通用孔部、
21,31,41,51,61…座ぐり部、
21a…座ぐり部端底部、
31b,41b,51b,61b…座ぐり部端上部、
31c,41c…テーパー部末端、
33,43,53,63…テーパー部、
100,110,120…サセプタ、
101,111,121…座ぐり部、
101a,111a,121a…座ぐり部端底部、
102…貫通用孔部、
111b,121b…座ぐり部端上部、
W…半導体基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長の際に半導体基板を支持するサセプタであって、
該サセプタは、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するものであることを特徴とする気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項2】
前記テーパー部は、前記座ぐり部端から外側に向かう長さが、前記半導体基板の直径の1%以上7.5%未満の長さであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項3】
前記テーパー部は、前記座ぐり部端から外側に向かう長さが、前記半導体基板の直径の2.5%以上7.5%未満の長さであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項4】
前記テーパー部は、その高さが前記半導体基板の厚さの30%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項5】
前記テーパーが、前記座ぐり部の全周に渡って途切れることなく形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項6】
前記テーパーが、前記座ぐり部の周方向に沿って間欠的に形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項7】
前記サセプタの前記座ぐり部の深さが、前記半導体基板の厚さの0.9〜1.1倍であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項8】
半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させるためのエピタキシャルウェーハ製造装置であって、
少なくとも、反応容器と、原料ガス導入管と、排気管と、加熱装置と、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のサセプタとを備えるものであることを特徴とするエピタキシャルウェーハ製造装置。
【請求項9】
半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項10】
半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項1】
気相成長の際に半導体基板を支持するサセプタであって、
該サセプタは、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するものであることを特徴とする気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項2】
前記テーパー部は、前記座ぐり部端から外側に向かう長さが、前記半導体基板の直径の1%以上7.5%未満の長さであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項3】
前記テーパー部は、前記座ぐり部端から外側に向かう長さが、前記半導体基板の直径の2.5%以上7.5%未満の長さであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項4】
前記テーパー部は、その高さが前記半導体基板の厚さの30%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項5】
前記テーパーが、前記座ぐり部の全周に渡って途切れることなく形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項6】
前記テーパーが、前記座ぐり部の周方向に沿って間欠的に形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項7】
前記サセプタの前記座ぐり部の深さが、前記半導体基板の厚さの0.9〜1.1倍であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の気相成長用半導体基板支持サセプタ。
【請求項8】
半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させるためのエピタキシャルウェーハ製造装置であって、
少なくとも、反応容器と、原料ガス導入管と、排気管と、加熱装置と、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のサセプタとを備えるものであることを特徴とするエピタキシャルウェーハ製造装置。
【請求項9】
半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項10】
半導体基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
半導体基板の主表面上にエピタキシャル層を気相成長させる気相成長工程において、前記半導体基板が配置される座ぐり部を備え、前記座ぐり部の端から外側に向かって、前記サセプタの上面が上方または下方に傾斜するテーパーが形成されたテーパー部を有するサセプタの前記座ぐり部に前記半導体基板を配置して、前記エピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−176213(P2011−176213A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40313(P2010−40313)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
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