説明

気相成長装置

【課題】ビューポート内面に熱分解生成物などが付着することを防止し、ビューポートからの基板の光学的な監視、測定を確実に行うことができる気相成長装置を提供する。
【解決手段】シーリングプレート15で覆われた反応炉11内に設置した基板12を、あらかじめ設定された温度に加熱するとともに、前記反応炉内に原料ガスを供給して前記基板面に薄膜を形成する気相成長装置において、前記シーリングプレートの反応炉外部側に設けたビューポート16と前記シーリングプレートに設けた通孔23との間に筒状部材21を配置し、該筒状部材内を、基板表面を監視、測定する光学的測定器20の測定光を通すための光路とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に関し、詳しくは、薄膜を形成する基板の表面温度や変形状態を監視するためのビューポートを備えた気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長装置として、気相成長中における基板の表面温度や変形(反り)状態などを光学的測定器によって観察、測定するためのビューポートを備えたものが知られている。ビューポートとして、チャンバ内の気流の影響を抑えるため、ビューポートのチャンバー内部側を延長させたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−53359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたビューポートは、基板の表面温度が1000℃程度までならば十分な効果を得ることができるが、1000℃を超える温度になると、原料ガスの熱分解反応などにより生成した物質がビューポートの内面に付着して曇りが発生し、ビューポートが汚れて光学的測定器による基板表面の測定を正確に行えなくなってしまうことがあった。
【0005】
そこで本発明は、ビューポート内面に熱分解生成物などが付着することを防止し、ビューポートからの基板の光学的な監視、測定を確実に行うことができる気相成長装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の気相成長装置は、シーリングプレートで覆われた反応炉内に設置した基板を、あらかじめ設定された温度に加熱するとともに、前記反応炉内に原料ガスを供給して前記基板面に薄膜を形成する気相成長装置において、前記シーリングプレートの反応炉外部側に設けたビューポートと前記シーリングプレートに設けた通孔との間に筒状部材を配置し、該筒状部材内を光学的測定器の光路としたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の気相成長装置では、前記シーリングプレートと前記ビューポートとの間に、パージガスが流れるパージガス通路が設けられていること、前記筒状部材は、長さ方向中間部に、筒状部材内にパージガスを導入するパージガス導入部を備えていること、前記筒状部材は、シーリングプレート側の端部が前記通孔内に挿入されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気相成長装置によれば、シーリングプレートの外側に光路を形成する筒状部材を配置しているので、筒状部材によって反応炉内からビューポートへのガスの流出を抑えることができ、ビューポートの内面が曇ることを防止できる。さらに、シーリングプレートと前記ビューポートとの間にパージガスを流すことにより、反応炉内のガスが筒状部材内を通ってビューポート側に流れてくるのをより確実に抑えることができる。
【0009】
また、筒状部材の長さ方向中間部から筒状部材内にパージガスを導入することにより、反応炉内のガスが筒状部材内を通ってビューポート側に流れてくるのをより確実に抑えることができる。さらに、筒状部材のシーリングプレート側の端部を、シーリングプレートに設けた通孔内に挿入することにより、反応炉内のガスが通孔部分からシーリングプレートの外側に流出することをより確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の気相成長装置の一形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例に示す気相成長装置は、軸線を水平方向に向けた筒状の反応炉11の中央下部に、基板12を保持するサセプタ13が配置されるとともに、該サセプタ13の下方に、サセプタ13を介して基板12を加熱するヒータ14が配置されている。また、基板12に対向する反応炉11の天井部にはシーリングプレート15が設けられ、さらに、反応炉11の上方には、基板12の状態を監視するためのビューポート16が設けられている、また、反応炉11の一側方には原料ガス流入口11aが設けられ、他側方には排ガス流出口11bが設けられている。
【0012】
ビューポート16は、反応炉11の天井部外面との間に、反応炉11内のガス流れ方向と同じ方向にパージガスが流れるパージガス通路17を介して設けられた略円筒状のビューポートカバー18と、該ビューポートカバー18の中間部に設けられた透光性部材19と、該透光性部材19の外部側に設けられた光学的測定器20と、透光性部材19の内部側に設けられた筒状部材21とを備えている。前記透光性部材19は、例えば、耐腐食性・耐熱性を有する石英ガラスからなるもので、透光性部材19の外周はビューポートカバー18の内周面に気密に接合されている。また、反応炉11内とパージガス通路17内とは、同じ圧力となっている。
【0013】
前記光学的測定器20は、基板12から放射される近赤外光をセンサーに取り込んで基板12の表面温度を測定する放射温度計や、レーザ光を基板表面に入射してその反射位置を2次元光センサーで捕捉することにより基板12の反り量を算出する変位計など、基板12の状態を光学的に無接触状態で計測する各種計測器を、監視目的、測定目的に応じて用いることができる。
【0014】
前記筒状部材21は、石英、アルミナ、ステンレス鋼などによってパイプ状に形成されたものであって、透光性部材19側が、ビューポートカバー18の内周面に設けられた支持部材22によって支持されている。また、筒状部材21のシーリングプレート15側の端部は、前記反応炉11及び前記シーリングプレート15を貫通して設けられた通孔23内に、反応炉11内に突出しない範囲で挿入されている。この筒状部材21は、光学的測定器20による基板12の表面状態の光学的測定を妨げることなく、かつ、反応炉11内のガスが透光性部材19の内面に向かって流れることを抑制するためのものであって、筒状部材21の内周側が、光学的測定器20で基板12の状態を光学的に監視、測定する際の光学的測定器20の測定光が通る光路となっている。
【0015】
筒状部材21の内径は、光学的測定器20の光路として必要な大きさ以上に形成され、光学的測定器20の種類や性能によっても異なるが、通常は7mm以上の内径を有するものが用いられる。一方、筒状部材21の内径が大きすぎたり、筒状部材21の長さが短すぎると、反応炉11からビューポート16へ筒状部材21内を通ってガスが流れることを十分に抑制することが困難となるため、内径は25mm以下で、長さは内径の4倍以上であることが好ましい。また、前記通孔23の内径は、筒状部材21が気密状態で嵌合するように、筒状部材21の外径と同じ内径とすることにより、筒状部材21の外周面よ通孔23の内周面との間を通ってガスが流出することを確実に防止できる。一方、各部材の熱伸縮や製作誤差、取付誤差などを考慮すると、通孔23の内径は、筒状部材21の外径より僅かに大きな内径としておくことが好ましい。
【0016】
このように、反応炉11及びシーリングプレート15を貫通して設けられた通孔23の外部側に筒状部材21を設けることにより、反応炉11内のガスがビューポート16側に流出して透光性部材19の内面に熱分解生成物などが付着し、透光性部材19に曇りが発生することを防止でき、さらに、光路における気流の影響も抑えることができるので、基板12の表面温度が1000℃を超える高温域においても、光学的測定器20による基板12の表面状態の光学的な監視や測定を確実に行うことができる。
【0017】
さらに、本形態例に示す筒状部材21は、筒状部材21の中間部からパージガスの流れ方向上流側に向かってパージガス導入部となる筒部24を設け、筒状部材21と筒部24とでT字管形状としている。このように、パージガスの流れ方向上流側に向かって筒部24を設けることにより、筒部24から筒状部材21内にパージガスを導入することができ、筒状部材21内に導入されたパージガスの一部が筒状部材21内をシーリングプレート15側に向かって流れることにより、筒状部材21内に反応炉11内のガスが流入してくることを防止できる。これにより、透光性部材19の内面に向かって反応炉11内のガスが流れることを確実に防止できる。また、筒状部材21の内周面に熱分解生成物などが付着することも防止できる。
【0018】
なお、気相成長装置における反応炉の構造や基板を載置するサセプタの構造などは任意であり、本発明のビューポートの構成は、周知の各種構造の気相成長装置に適用することが可能である。また、パージガスの種類は任意であるが、通常は窒素ガスを用いることができる。
【符号の説明】
【0019】
11…反応炉、11a…原料ガス流入口、11b…排ガス流出口、12…基板、13…サセプタ、14…ヒータ、15…シーリングプレート、16…ビューポート、17…パージガス通路、18…ビューポートカバー、19…透光性部材、20…光学的測定器、21…筒状部材、22…支持部材、23…通孔、24…筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリングプレートで覆われた反応炉内に設置した基板を、あらかじめ設定された温度に加熱するとともに、前記反応炉内に原料ガスを供給して前記基板面に薄膜を形成する気相成長装置において、前記シーリングプレートの反応炉外部側に設けたビューポートと前記シーリングプレートに設けた通孔との間に筒状部材を配置し、該筒状部材内を光学的測定器の光路とした気相成長装置。
【請求項2】
前記シーリングプレートと前記ビューポートとの間に、パージガスが流れるパージガス通路が設けられている請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記筒状部材は、長さ方向中間部に、筒状部材内にパージガスを導入するパージガス導入部を備えている請求項1又は2記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記筒状部材は、シーリングプレート側の端部が前記通孔内に挿入されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の気相成長装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−33842(P2013−33842A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168962(P2011−168962)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(509054005)大陽日酸イー・エム・シー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】