説明

水に溶けにくい化合物のための可溶化剤としてのポリビニルラクタム−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの使用

本発明は、水に十分に溶けない物質のための可溶化剤としてのポリビニルラクタム−ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に溶けにくい生物学的に活性な物質の可溶化剤としてのポリビニルラクタム−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの使用に関する。さらに、本発明はヒト、動物、および植物に使用するための対応する調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物活性物質の均質な調製物を製造する場合、疎水性物質、すなわち水に溶けにくい物質の可溶化は、非常に大きな実用的な重要性を果たしてきた。
【0003】
可溶化とは、ある溶媒、特に水に溶けないかまたは溶けにくい物質を、界面活性化合物(すなわち可溶化剤)により可溶性にすることを意味すると理解される。このような可溶化剤は、難水溶性または非水溶性物質を、該物質の化学構造をその過程で変化させることなく、透明な、よくて乳白色の水溶液に変えることができる(Roempp Chemie Lexikon, 9th edition, Vol. 5, p. 4203, Thieme Verlag, Stuttgart, 1992(非特許文献1)参照)。
【0004】
調製された可溶化物について、難水溶性または非水溶性物質が水溶液中で形成される界面活性化合物の分子集合体、いわゆるミセルでコロイド的に溶解された形で存在するということは、注目に値する。得られた溶液は、視覚的に透明〜乳白色であるように見え、エネルギーを供給することなく調製できる安定な単相系である。
【0005】
可溶化剤は、例えば、製剤を透明にすることにより、化粧品製剤および食品調製物の外見を改善することができる。さらに、医薬調製物の場合、可溶化剤の使用によりバイオアベイラビリティとそれによる薬剤の効果も増強させることができる。
【0006】
医薬品および化粧品の活性成分のために用いられる可溶化剤は、主として、界面活性剤、例えばエトキシレート化(水素添加)ヒマシ油、エトキシレート化ソルビタン脂肪酸エステル、またはエトキシレート化ヒドロキシステアリン酸である。
【0007】
しかしながら、上記のこれまでに使用された可溶化剤には、適用に関する不利な点が多く存在する。
【0008】
公知の可溶化剤には、例えばクロトリマゾールなどの幾つかの溶けにくい薬剤に対する可溶化の効果が少ししかない。
【0009】
また、これまでに公知の可溶化剤はほとんどが液体か半固体の化合物であり、このため、比較的不都合な加工特性を有している。
【0010】
WO94/20073(特許文献1)には、ポリビニルピロリドンブロックコポリマー、およびリポソームのための壁材としての使用が開示されている。
【0011】
WO03/072158(特許文献2)には、ポリビニルピロリドンブロックコポリマー、および医薬技術における、例えばカテーテルの表面改質のためのそれらの使用を開示する。ブロックコポリマーの製造のため、イソプロポキシエタノールを用いたポリビニルピロリドンのヒロドキシル官能化が開示されている。
【特許文献1】WO94/20073
【特許文献2】WO03/072158
【非特許文献1】Roempp Chemie Lexikon, 9th edition, Vol. 5, p. 4203, Thieme Verlag, Stuttgart, 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、医薬、化粧品、食品および農産物加工に適用するための新規可溶化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、水に溶けにくい物質のための可溶化剤としてのポリビニルラクタム−ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの使用により該目的が達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の記載において、ポリビニルラクタムブロックは、Aブロックと称し、ポリアルキレンオキシドブロックは、Bブロックと称する。
【0015】
ポリアルキレンブロックをポリビニルラクタムブロックに結合できるようにするために、ポリビニルラクタムを、ヒドロキシル基で鎖の先端および/または鎖の末端を官能化する。OH官能化は、フリーラジカル開始剤または調節剤のどちらかにより達成することができる。フリーラジカル開始剤による官能化は、鎖の先端で起こり、調節剤による官能化は鎖の末端で起こる。従って、官能化を達成するため、ポリビニルラクタムプレポリマーの重合に、少なくとも1種類のヒドロキシル基を有するフリーラジカル開始剤またはヒドロキシル基を有する調節剤を用いることが必要である。B−A−Bブロックコポリマーを製造する場合は、フリーラジカル開始剤と調節剤がヒドロキシル基を有していなければならない。
【0016】
ビニルラクタムプレポリマーの製造の一般的な方法は、それ自体公知である。該製造では、水混和性溶媒または混合した非水系/水系溶媒で、フリーラジカルにより開始される重合を行う。適切なN−ビニルラクタムはN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、もしくはN−ビニルピペリドン、またはこれらの混合物である。好ましくは、N−ビニルピロリドンを用いる。
【0017】
適切な非水系溶媒は、例えばアルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノールなど)であり、またグリコール(エチレングリコールおよびグリセロールなど)もある。
【0018】
別の適切な溶媒は、酢酸エステル、例えばエチルアセテートまたはブチルアセテートなどである。
【0019】
重合は、好ましくは60〜100℃の温度で行う。
【0020】
重合を開始するため、フリーラジカル開始剤を用いる。用いられる開始剤または開始剤混合物の量は、用いられるモノマーに対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%である。
【0021】
用いられる溶媒のタイプによって、有機もしくは無機過酸化物のいずれか、例えば過硫酸ナトリウム、またはアゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2-アミド-プロパン)ジヒドロクロライド、もしくは2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)が適切である。
【0022】
過酸化物の開始剤は、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、tert-ブチルペルピバレート、tert-ブチル2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルマレエート、ビス−(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルアセテート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、および上記開始剤の混合物である。また、開始剤は、アスコルビン酸などのレドックス成分と組合せて使用することもできる。
【0023】
OH官能化をフリーラジカル開始剤で行う場合、適合性のある開始剤は、特にOH官能化開始剤、例えば、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、 2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド} または2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロライドである。
【0024】
フリーラジカル重合は、適切であれば乳化剤、適切であればさらに保護コロイド、適切であれば緩衝系の存在下で行うことができ、および適切であればその後塩基または酸を用いてpH調節を行うことができる。
【0025】
適切な分子量調節剤は、アルキルメルカプタンなどの硫化水素化合物、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸およびそのエステル、メルカプトエタノールなどのメルカプトアルカノールである。さらに適切な調節剤は、例えばDE 197 12 247 A1、第4頁に特定されている。分子量調節剤の必要量は、重合されるモノマーの量に基づいて、0〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1.5重量%の範囲内である。好ましくは、メルカプトエタノールを用いる。
【0026】
モノマーもしくはモノマーの混合物またはこれらのモノマーのエマルジョンを、重合温度で攪拌反応器に、通常は溶液の形の開始剤とともに最初に導入し(バッチ工程)、あるいは、適切であれば、継続的にまたは幾つかの連続的なステージで重合反応器に計量導入する(フィード方法)。フィード方法では、実際の重合の開始前に、(反応器の攪拌を可能にするため)水だけでなく、フィード材料、例えば乳化剤、保護コロイド、モノマー、調節剤などの一部の量、あるいはフィード(一般的にモノマーまたは乳剤フィードよび開始剤フィード)の一部の量も入れることは(重合しようとする全量を入れることはほとんどない)、反応器でよく行われることである。
【0027】
適切なポリアルキレンオキシドは、好ましくはポリアルキレングリコールである。ポリアルキレングリコールは、300〜25,000D(ダルトン)、好ましくは1,000から15,000D、とくに好ましくは1,000〜10,000Dの分子量を有し得る。分子量は、DIN 53240に従って測定されたヒドロキシル数から決定される。
【0028】
適切で特に好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。さらに、ポリプロピレングリコール、2-エチルオキシラン、2,3-ジメチルオキシランから得られるポリテトラヒドロフランまたはポリブチレングリコールも適切である。
【0029】
また、適切なポリエーテルは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから得られるポリアルキレングリコールのランダムまたはブロック状のコポリマー(例えばポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなど)である。ブロックコポリマーは、ABまたはABAタイプのものであり得る。
【0030】
また、好ましいポリアルキレングリコールとして、2つのOH末端基の1つで置換されたものが挙げられる。適切な置換基は、1〜30個の炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアラルキル基である。適切なアリール基は、フェニル、ナフチル基である。適切なアラルキル基は、例えばベンジル基である。適切なアルキル基は、分枝もしくは非分枝状の、開鎖または環状のC1-〜C22-アルキル基である。適切なシクロアルキル基は、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル基であり、適切であれば、これらは1つ以上のC1−C4-アルキル基で置換されていてもよい。好ましくは、C1-C18-アルキル基、例えばメチル、エチル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシルまたはオクタデシル基が適切である。
【0031】
このようなポリアルキレンオキシドは、調製が容易であるか、または市販されている。
【0032】
ポリアルキレンオキシドは、ポリアルキレンオキシドおよびビニルラクタムプレポリマー中のヒドロキシル基に基づいて、等モル量で反応させる。存在するOH基の量は、必要であれば、当業者にそれ自体が公知である方法で行うことができる。ヒドロキシル数を決定するには、例えばRoempp Chemie Lexikon, 9th edition, 1990を参照されたい。
【0033】
個々のケースでどのポリアルキレンオキシドを使用するかは、所望のブロック構造によって決定される。B−A−BタイプまたはA−Bタイプが所望であれば、一方の端でOH基が置換されているポリアルキレンオキシドを用いることができる。A−B−Aタイプが所望であれば、両端に遊離のOH基を有するポリアルキレンオキシドを用いることができるのみである。
【0034】
ビニルラクタムポリマーとポリアルキレンオキシドの結合は、ジイソシアネートとの反応により行い、ビニルラクタムコポリマーのヒドロキシル基の反応は、ウレタン基を介してビニルラクタムコポリマー上にポリアルキレンオキシドを結合させる。ここで、ビニルラクタムポリマーまたはポリアルキレンオキシドのいずれかが、ジイソシアネートと第一に反応し得る。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記結合は、末端基としてのイソシアネート基で官能化されたポリアルキレンオキシドを介して行われる。このため、最初にポリアルキレンオキシドがジイソシアネートと反応し、次にこうして官能化されたポリアルキレンオキシドがビニルラクタムポリマーと反応する。
【0036】
選択された態様に関係なく、反応は以下のように行うことができる:
適切なジイソシアネートは、一般式OCN−R−NCO(式中、Rは、アルキル基で置換されていてもよい、脂肪族基、脂環式基、または芳香族基であり得る。)で表される化合物である。
【0037】
適切なジイソシアネートは、好ましくは、そのイソシアネート基が、分子構造のために、求核試薬に対して異なる反応性を有する化合物、例えばイソホロンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートである。
【0038】
また、対称性のジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートまたは4,4’-メチレンジ(フェニルイソシアネート)なども、原則として適切である。
【0039】
好ましくは、イソホロンジイソシアネートを用いる。
【0040】
ジイソシアネートとの反応は、好ましくは有機溶媒中、例えばケトンなど、例えばアセトン、また、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、または一般的に非プロトン性極性有機溶媒、あるいはそのような溶媒の混合物中で行う。該反応は、通常温度を上げて行い、また、その温度は選択された溶媒の沸点により決定される。ジイソシアネートと第1成分の反応は、20〜50℃で行うことができるが、所望であれば100℃までよい。第2のイソシアネート基の反応は、50〜100℃の温度で行うことができる。
【0041】
反応は、好ましくは等モルで行い、等モルとは、好ましくは1モルのジイソシアネートが、反応させるヒドロキシル基の1モルに対して用いられるように、量比を選択することを意味する。ビニルラクタムポリマーを調節剤でOH官能化すると、ジイソシアネートは調節剤に対して等モルで反応する。ビニルラクタムポリマーをフリーラジカル開始剤でOH官能化すると、フリーラジカル開始剤の1モル当たり2モルのジイソシアネートが用いられる。
【0042】
また、対称性のジイソシアネートの場合、過剰量のジイソシアネートを用い、その過剰分を蒸留により除去することも望ましいであろう。
【0043】
好ましくは、上記反応は触媒の存在下で行う。適切な触媒は、例えば、有機金属化合物、例えば有機チタン化合物または亜鉛化合物など、例えばジブチルスズジラウレートまたはスズオクトエートなど、また、塩基、例えば1,4-ジアザ(2.2.2)ビシクロオクタンまたはテトラメチルブタンジアミンである。触媒は、1モルのジイソシアネート当たり0.05〜0.2mol、好ましくは0.1〜0.14molの量で用いることができる。
【0044】
反応は、通常温度を上げて50〜100℃の範囲で行う。該温度は、用いられる有機溶媒のタイプに応じて具体的なケースで選択される。その後、有機溶媒は、蒸留により除去することができる。
【0045】
通常、反応は、まずイソシアネート基で官能化するべき成分を、触媒と溶媒の存在下でジイソシアネートで、反応混合物中のイソシアネート値が半分に下がるまで反応させることを含む方法で行われる。これは、公知の方法により、例えば滴定法で確認することができる。その後、他の成分を、イソシアネート基とOHまたはアミノ基が再び等モル量になるように選択された量で加える。反応は、イソシアネート値がゼロに下がるまで続ける。
【0046】
このようにして得られたコポリマーは水溶性であるか水分散性である。用いられるプレポリマーによるが、分子量Mwは、500〜250,000g/mol、好ましくは500〜20,000g/molであり得る。分子量はゲルクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0047】
適用:
本発明に従って用いられるコポリマーは、水に溶けないかまたは少しだけ溶ける物質が水性調製物に使用されるか、または水性媒体でその効果が発揮される、あらゆる分野で原則的に使用することができる。従って、該コポリマーは、水に溶けにくい物質、特に生物学的活性物質の可溶化剤として用いられる。
【0048】
本発明において、用語「水に溶けにくい」は、実質的に不溶性の物質も含み、20℃でその物質の水溶液の場合、物質1g当たり少なくとも30〜100gの水が必要とされることを意味する。実質的に不溶性の物質の場合、物質1gあたり少なくとも10000gの水が必要とされる。
【0049】
本発明の目的において、水に溶けにくい生物学的活性物質は、ヒトおよび動物用の医薬活性成分、化粧品または農薬活性成分、あるいは補助食品または栄養活性成分を意味すると理解される。
【0050】
さらに、可溶化される適切な物質は、無機または有機色素などの染料である。
【0051】
本発明により、医薬および化粧品調製物用ならびに食品調製物用の可溶化剤として特に用いられる両親媒性化合物が提供される。該化合物は、医薬および化粧品の分野の溶けにくい活性成分、溶けにくい補助食品、例えばビタミンやカロテノイド、また作物保護組成物に使用するための溶けにくい活性成分、さらに動物用医薬活性成分を可溶化する性質を有する。
【0052】
化粧品用可溶化剤:
本発明に従って、上記コポリマーは化粧品製剤における可溶化剤として使用することができる。例えば、該コポリマーは化粧用オイルの可溶化剤として適切である。該コポリマーは、脂肪および油、例えば落花生油、ホホバ油、ココナッツ油、アーモンド油、オリーブ油、パーム油、ヒマシ油、ダイズ油、コムギ胚芽油など、または精油、例えば小松葉油、ラベンダー油、ローズマリー油、エゾマツ針葉油、マツ葉油、ユーカリ油、ペパーミント油、セージ油、ベルガモット油、テレビン油、メリッサ油、セージ油、杜松油、レモン油、アニス油、カルダモン油、ペパーミント油、樟脳油など、あるいはこれらの油の混合物に対して良好な可溶化能を有する。
【0053】
さらに、本発明のポリマーは、水に不溶性または溶けにくいUV吸収剤、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(Uvinul(登録商標) M 40, BASF)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(Uvinul(登録商標) D 50)、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(Uvinul(登録商標) D49)、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(Uvinul(登録商標) 400)、 2'-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(Uvinul(登録商標) N 539)、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン(Uvinul(登録商標) T 150)、3-(4-メトキシベンジリデン)カンファー(Eusolex(登録商標) 6300、Merck)、2-エチルヘキシルN,N-ジメチル-4-アミノベンゾエート(Eusolex(登録商標) 6007)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルサリチレート、4-イソプロピルジベンゾイルメタン(Eusolex(登録商標) 8020)、2-エチルヘキシル p-メトキシシンナマートおよび2-イソアミル p-メトキシシンナマート、およびこれらの混合物などの可溶化剤として用いることができる。
【0054】
従って、本発明は、可溶化剤として冒頭で特定された組成物の本発明のコポリマーの少なくとも1種類を含む化粧品調製物も提供する。好ましくは、可溶化剤のほかに、1つ以上の溶けにくい化粧品用活性物質、例えば上述の油またはUV吸収剤を含む、調製物である。
【0055】
これらの製剤は、水または水/アルコールをベースにした可溶化物(solubilizate)である。本発明の可溶化剤は、溶けにくい化粧品活性成分に対して、0.2:1〜20:1、好ましくは1:1〜15:1、特に好ましくは2:1〜12:1の割合で用いられる。
【0056】
化粧品調製物中の本発明の可溶化剤の含有量は、活性成分によるが、1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%の範囲である。
【0057】
また、さらに補助物質をこの製剤に加えることができ、例えば、非イオン、陽イオンまたは陰イオン界面活性剤、例えばアルキルポリグリコシド、脂肪アルコールスルフェート、脂肪アルコールエーテルスルフェート、アルカンスルホネート、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪アルコールホスフェート、アルキルベタイン、ソルビタンエステル、POEソルビタンエステル、糖脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリセロールエステル、脂肪酸部分グリセリド、脂肪酸カルボキシレート、脂肪アルコールスルホスクシネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸タウリネート、クエン酸エステル、シリコーンコポリマー、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、脂肪酸アルカノールアミド、第四アンモニウム化合物、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪アミンエトキシレート、補助溶剤、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどである。
【0058】
さらに、添加してもよい成分は、天然または合成化合物、例えばラノリン誘導体、コレステロール誘導体、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、電解質、染料、防腐剤、酸(例えば乳酸、クエン酸)である。
【0059】
これらの製剤は、例えば、浴用添加用調製物に、例えばバスオイル、アフターシェーブローション、フェーストニック、ヘアトニック、オーデコロン、オードトワレ、およびサンスクリーン組成物に使用される。使用のさらなる分野はオーラルケア部門であり、例えばマウスウオッシュ、歯磨き粉、入れ歯用接着クリームなどである。
【0060】
さらに、コポリマーは、工業上の利用、例えば溶けにくい染料の調製物、トナー、磁性顔料の調製物などにも適切である。
【0061】
可溶化方法の説明:
化粧品製剤の可溶化物の調製において、本発明のコポリマーは、100%の濃度(strength)の物質として、または好ましくは水溶液として用いることができる。
【0062】
通常、可溶化剤は水に溶解し、各場合で用いられる溶けにくい化粧品活性成分と共に強力に混合する。
【0063】
しかしながら、可溶化剤と各場合に用いられる溶けにくい化粧品活性成分を強力に混合し、次に連続的に攪拌しつつ脱塩水を加えることも可能である。
【0064】
医薬適用のための可溶化剤:
本発明のコポリマーは、同様に、水に溶けないか、または溶けにくい、1種類以上の医薬物質、ならびにビタミンおよび/またはカロテノイドを含みうるということが注目される、あらゆるタイプの医薬の調剤における可溶化剤としての使用にも適切である。具体的には、これらは経口適用のための水溶液または可溶化物である。
【0065】
従って、本発明のコポリマーは、経口投与形態、例えば錠剤、カプセル、粉末および溶液での使用にも適切である。ここで、溶けにくい医薬のバイオアベイラビリティを増強させることができる。特に好ましくは、活性成分と可溶化剤の固溶体を用いる。
【0066】
非経口での適用の場合、可溶化物のほかに、エマルジョン、たとえば脂肪エマルジョンを用いることも可能である。また本発明のコポリマーは、溶けにくい医薬物質を処理するという該目的のためにも適切である。
【0067】
上記の種類の医薬製剤は、常法により、本発明のコポリマーと、医薬活性成分、ならびに公知の活性成分および新規の活性成分を処理することによって得られ得る。
【0068】
本発明の使用は、さらに、薬学的補助物質および/または希釈剤を含むことができる。補助物質として、共溶媒、安定剤および防腐剤が特に挙げられる。
【0069】
使用される医薬活性成分は、水に不溶性であるかまたはやや溶ける物質である。DAB9(ドイツ薬局方)によれば、医薬活性成分の可溶性は次のように分類される:やや溶ける(slightly soluble)(30〜100部の溶媒に溶ける);溶けにくい(sparingly soluble)(100〜1000部の溶媒に溶ける);ほとんど溶けない(virtually insoluble)(10000部を超える溶媒に溶ける)。ここで、活性成分は、あらゆる適応症のものであり得る。
【0070】
本明細書で言及される例は、ベンゾジアゼピン、抗高血圧症薬、ビタミン、細胞増殖抑制剤、特にタキソール、麻酔剤、神経弛緩薬、抗鬱薬、抗生物質、抗真菌薬、殺菌剤、化学療法剤、泌尿器科薬、血小板凝集抑制剤、スルホンアミド、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、向精神薬、抗パーキンソン薬および他の抗多動症薬、眼科薬、神経障害用剤、カルシウム代謝調節剤、筋弛緩薬、麻酔剤、抗脂血薬、肝臓治療薬、冠状動脈血栓症剤、強心剤、免疫療法薬、調節ペプチドおよびその抑制剤、催眠薬、鎮静剤、婦人科薬、抗痛風剤、血栓溶解薬、酵素調製物および輸送タンパク質、酵素抑制剤、催吐薬、血流刺激薬、利尿薬、診断薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆管治療剤、抗喘息薬、鎮気管支痙攣薬、β受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE抑制剤、抗動脈硬化剤、抗炎症剤、血液凝固阻止薬、抗低血圧症薬、低血糖症薬、抗高血圧症薬、抗繊維素溶解薬、抗てんかん薬、鎮吐薬、解毒剤、糖尿病薬、抗不整脈薬、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫薬、鎮痛剤、興奮薬、アルドステロン拮抗薬、およびスリミング薬である。
【0071】
1つの可能な調製の変法は、適切であれば穏やかに加熱しつつ、可溶化剤を水相に溶解し、次に可溶化剤水溶液に活性成分を溶解する。同様に、可溶化剤および活性成分を水相に同時に溶解することが可能である。
【0072】
また、可溶化剤としての本発明のコポリマーの使用は、例えば、適切であれば加熱しつつ、活性成分を可溶化剤に分散させ、それを水と一緒に攪拌して混合することにより、行うことができる。
【0073】
さらに、可溶化剤を活性成分と共に溶融して処理することもできる。特に固溶体は、この方法で得ることができる。特に、これに適切なのは溶融押出法である。また、固溶体を調製する別の方法は、適切な有機溶媒で可溶化剤と活性成分の溶液を調製し、次によく用いられる方法で溶媒を除去する。
【0074】
従って一般的に、本発明は、可溶化剤としての本発明のコポリマーの少なくとも1つを含む医薬調製物を提供する。好ましくは、これらの調製物は、可溶化剤のほかに、例えば上記の表示範囲の、水に不溶性または溶けにくい医薬活性成分を含む。
【0075】
上記の医薬調製物は、特に好ましくは経口で適用可能な製剤のものである。
【0076】
医薬調製物における本発明の可溶化剤の含有量は、活性成分によるが、1〜75重量%、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは5〜50重量%の範囲である。
【0077】
さらに特に好ましい実施形態は、活性成分と可溶化剤が固溶体として存在する、医薬調製物に関する。ここで、活性成分に対する可溶化剤の重量比は、好ましくは1:1〜4:1である。
【0078】
食品調製物のための可溶化剤:
化粧品および薬学での使用の他に、本発明のコポリマーは、水に不溶性または溶けにくい栄養剤、補助剤または添加剤、例えば脂溶性ビタミンまたはカロテノイドのための食品部門での可溶化剤としても適切である。例えば言及され得る例は、カロテノイドで着色した透明な飲物である。
【0079】
作物保護調製物のための可溶化剤:
農芸化学における可溶化剤としての本発明のコポリマーの使用は、特に殺虫剤、除草剤、殺菌剤または殺昆虫剤を含む製剤を含むことができ、特に、噴霧用混合物または灌注用混合物として使用される作物保護組成物の調製物を含むことができる。
【0080】
本発明のブロックコポリマーは、特に優れた可溶化効果のために注目に値する。
【0081】
本発明のブロックコポリマーの調製および使用を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0082】
<ビニルラクタムポリマーの調製>
VP: N-ビニルピロリドン;
一般的手順
初期仕込: 19.8kgのフィード1、880kgの水
フィード1: 360kgのVP、36kgのメルカプトエタノール
フィード2: 3.1kg、27.9kgの水
フィード3: 1.8kg 16.2kgの水
正確な量は、以下の表を参照されたい。
【0083】
調製は、窒素雰囲気下の攪拌反応器で行った。初期仕込物を60rpmの攪拌速度で80℃に加熱し、1.6kgのフィードと、2gのフィード2を混合し、15分間重合した。フィード1とフィード2の残りの量を2時間にわたって添加した。その後、フィード3をバッチで加え、混合物を3時間、80℃で後重合した。次に、混合物を30℃に冷却し、ポリマーを噴霧乾燥により単離した。
【0084】
K値は、水中で1%の重量濃度(strength)で測定し、12であった。ヒドロキシル数を、Roempp Chemie Lexikon, 9th editionに記載されたように測定し、65mg KOH/gであった。
【0085】
ゲル透過クロマトグラフィーによるビニルラクタムポリマーの分子量の測定は、M=720g/mol、M=3560g/mol、M/M=4.9であった。この測定は、溶媒としてジメチルアセトアミド+0.5重量%のLiBrを用いて行った(温度:80℃、流速:1ml/分、溶液の濃度:5g/l)。GPCカラムは、適切なPMMA標準試料を用いてキャリブレーションした。
【0086】
<ブロックコポリマーの調製:実施例1−9>
一般的手順
25mmolのイソホロンジイソシアネート、200gの溶媒、および5mmolのジブチル錫ジラウレートを最初に導入し、所望の温度にした。次に、OH基に基づいて、25mmolのポリアルキレンオキシドを添加し、該混合物を、イソシアネート値が50%に下がるまで、設定温度に維持した。次に、OH基に基づいて、25mmolのビニルラクタムプレポリマーを添加し、温度を選択した反応温度に上げた。
【0087】
ポリアルキレンオキシドとビニルラクタムプレポリマーのOH数は、無水酢酸を用いたヒドロキシル基のアセチル化と、その後の得られた酢酸の塩基での滴定により測定する(DIN 53240およびDIN 16945、Roempp、第9版参照)。
【0088】
イソシアネート値は滴定法で測定した:1gの生成物をトルエンに溶解したジブチルアミンの0.1モル濃度溶液20mlに溶解し、指示薬としてブロモフェノールブルーを用い、0.1モル濃度の塩酸で逆滴定した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0089】
<可溶化物の調製>
2gのコポリマーをビーカーに秤量して入れた。次に、それぞれに1種類の薬剤を、過飽和溶液を得るため、以下の混合物になるよう秤量して入れた(秤量分が溶剤に溶解した場合、沈殿物が形成されるまで、初期の重量を増やした)。
【0090】
添加された活性成分量:17-β-エストラジオール0.2g;ピロキシカム0.2g;クロトリマゾール0.2g;カルバマゼピン0.3g;ケトコナゾール0.25g;グリセオフルビン0.25g;シンナリジン0.25g。
【0091】
次に、リン酸バッファーpH7.0を、可溶化剤とリン酸バッファーが重量比1:10になるまで添加した。マグネチックスターラーを用いて、この混合物を20℃で72時間攪拌した。次に、少なくとも1時間の静止時間をとった。混合物の濾過後、測光法で測定し、活性成分の含量を測定した。
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶けにくい物質のための可溶化剤としてのポリビニルラクタム−ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの使用。
【請求項2】
ブロックコポリマーを、ジイソシアネートとの反応を介して、一方の端または両端がヒドロキシル基で終結されたポリビニルラクタムと、ポリアルキレンオキシドとの結合により調製する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリビニルラクタムが6〜20のK値を有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
用いられるポリビニルラクタムがポリビニルピロリドンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ポリアルキレンオキシドが300〜10,000ダルトンの分子量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリブチレングリコール、およびこれらのポリアルキレンオキシドのモノアルコキシル化誘導体からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
用いられるポリアルキレンオキシドがポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリアルキレンオキシド側鎖の結合をジイソシアネートを介して行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
ポリアルキレンオキシドを、ビニルラクタムコポリマーとの反応の前にジイソシアネートと反応させることにより官能化する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
ポリアルキレンオキシドを、ビニルラクタムコポリマーのヒドロキシル基に対して等モル量で用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
用いられるジイソシアネートがイソホロンジイソシアネートである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
ポリビニルラクタム−ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーがA−B、A−B−AまたはB−A−B構造を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
コポリマーが700〜20,000g/molの分子量Mwを有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
水に溶けにくい物質が生物的に活性な物質である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
病気の治療のための医薬調製物を調製するための請求項1または14に記載の使用。
【請求項16】
化粧品調製物のための請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
農芸化学品のための請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
補助食品または栄養剤のための請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
食品のための請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
染料の調製のための請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の可溶化剤としてのポリビニルラクタム−ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの使用により得られうる、水に溶けにくい物質の調製物。
【請求項22】
水に溶けにくい物質として生物学的に活性な物質を含む、請求項22に記載の調製物。
【請求項23】
水に溶けにくい生物学的に活性な物質として医薬活性成分を含む、請求項22または23に記載の調製物。
【請求項24】
経口的に適用可能な投与形態の形である、請求項23に記載の調製物。
【請求項25】
水に溶けにくい生物学的に活性な物質として化粧品活性成分を含む、請求項21または22に記載の調製物。
【請求項26】
水に溶けにくい生物学的に活性な物質として農薬活性成分を含む、請求項21または22に記載の調製物。
【請求項27】
水に溶けにくい生物学的に活性な物質として補助食品または栄養活性成分を含む、請求項21または22に記載の調製物。
【請求項28】
水に溶けにくい物質として染料を含む、請求項21に記載の調製物。

【公表番号】特表2009−523119(P2009−523119A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543791(P2008−543791)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069129
【国際公開番号】WO2007/065846
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】