説明

水処理方法および水処理装置

【課題】飼育水の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる水処理装置を提供する。
【解決手段】魚2が存在する飼育部24で魚2の飼育に使用された水を、マイクロナノバブル発生部22に導入してマイクロナノバブル発生機5でマイクロナノバブルを含有させてから、充填材部23を通過させて、再び、上記飼育部24に導入して上記飼育部24で魚2の飼育に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば魚類や貝類等の生き物の飼育に使用された飼育水を処理する水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水族館などでは、飼育水槽の飼育水を水処理装置としての重力式濾過槽に送って浄化していた(特開2002−027863号公報:特許文献1参照)。
【0003】
従来の重力式濾過槽には飼育水槽から汚れた飼育水が流入する。この飼育水には生き物から排出されたアンモニア性窒素を含んでおり、このアンモニア性窒素は濾過槽内の微生物によって酸化処理される。
【0004】
上記微生物は濾過槽において主として用いられる濾材の砂に繁殖させている。亜硝酸生成菌や硝酸生成菌などの微生物を砂に繁殖させるためには、濾過槽の容積を大きくする必要があった。
【0005】
また、上記亜硝酸生成菌や硝酸生成菌を常に繁殖させるためには、飼育水槽および濾過槽を経由するように、飼育水を1日24時間連続して循環させて、濾過槽に繁殖している亜硝酸生成菌や硝酸生成菌などの好気性の微生物に酸素を供給する必要があった。
【0006】
したがって、上記従来の重力式濾過槽では、飼育水を浄化するための電力使用量が多くなり、電気代がかかるという問題が生じていた。つまり、上記従来の重力式濾過槽はランニングコストが高いという問題があった。
【特許文献1】特開2002−027863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、飼育水の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の水処理方法は、
生き物を飼育する飼育水槽内の水を処理する方法において、
上記飼育水槽内に、互いに連通する第1領域、第2領域および第3領域を形成し、
上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域に導入して、上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させた水を、上記第2領域を通過させる工程と、
上記第2領域を通過させた水を、再び、上記第3領域に導入して、上記第3領域で上記生き物の飼育に使用する工程と
を備えることを特徴としている。
【0009】
ここで、マイクロナノバブルとは、10μmから数百nm前後の直径を有する気泡をいう。
【0010】
この発明の水処理方法によれば、上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させる工程と、上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させた水を、上記第2領域を通過させる工程と、上記第2領域を通過させた水を、再び、上記第3領域で上記生き物の飼育に使用する工程とを有するので、上記マイクロナノバブルによって、例えば上記第2領域で繁殖した微生物を、効率的に活性化できて、この微生物によって、上記生き物から排出されて上記生き物にとって有害なアンモニアを分解すると共に、上記生き物に悪影響を及ぼすマイクロバブルを減少できる。
【0011】
したがって、上記飼育水槽内の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる。
【0012】
また、一実施形態の水処理装置では、上記第2領域に充填材を収容する。
【0013】
この実施形態の水処理装置によれば、上記第2領域に充填材を収容するので、この充填材に微生物を効率的に繁殖できる。したがって、上流側の上記第1領域から導入されるマイクロナノバブルによって、微生物を効率的に活性化できる。
【0014】
また、この発明の水処理装置は、
生き物の飼育に使用されると共に、互いに連通する第1領域、第2領域および第3領域を有する飼育水槽と、
この飼育水槽の上記第1領域に配置されたマイクロナノバブル発生機と
を備え、
上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域に導入して上記マイクロナノバブル発生機でマイクロナノバブルを含有させてから、上記第2領域を通過させて、再び、上記第3領域に導入して上記第3領域で上記生き物の飼育に使用することを特徴としている。
【0015】
この発明の水処理装置によれば、上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域に導入して上記マイクロナノバブル発生機でマイクロナノバブルを含有させてから、上記第2領域を通過させて、再び、上記第3領域に導入して上記第3領域で上記生き物の飼育に使用するので、上記マイクロナノバブルによって、例えば上記第2領域で繁殖した微生物を、効率的に活性化できて、この微生物によって、上記生き物から排出されて上記生き物にとって有害なアンモニアを分解すると共に、上記生き物に悪影響を及ぼすマイクロバブルを減少できる。
【0016】
したがって、上記飼育水槽内の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる。
【0017】
また、一実施形態の水処理装置では、上記第2領域に収容される充填材を有する。
【0018】
この実施形態の水処理装置によれば、上記第2領域に収容される充填材を有するので、この充填材に微生物を効率的に繁殖できる。したがって、上流側の上記第1領域から導入されるマイクロナノバブルによって、微生物を効率的に活性化できる。
【0019】
また、一実施形態の水処理装置では、上記飼育水槽は、上記第1領域、上記第2領域および上記第3領域に互いに連通すると共に上記第2領域の下側に配置された第4領域を有する。
【0020】
この実施形態の水処理装置によれば、上記飼育水槽は、上記第1領域、上記第2領域および上記第3領域に互いに連通すると共に上記第2領域の下側に配置された第4領域を有するので、上記第2領域で繁殖して自然沈降する微生物(汚泥)を、上記第4領域に集めて、上記第4領域から抜き出すことができる。
【0021】
また、一実施形態の水処理装置では、上記マイクロナノバブル発生機は、水中ポンプ型のマイクロナノバブル発生機である。
【0022】
この実施形態の水処理装置によれば、上記マイクロナノバブル発生機は、水中ポンプ型のマイクロナノバブル発生機であるので、上記マイクロナノバブル発生機を上記第2領域に容易に設置することができて、コスト増となる循環ポンプや配管が不要となる。
【0023】
また、一実施形態の水処理装置では、上記充填材は、ポリ塩化ビニリデン充填材である。
【0024】
ここで、ポリ塩化ビニリデン充填材の形状は、例えば、ひも状やリング状である。
【0025】
この実施形態の水処理装置によれば、上記充填材は、ポリ塩化ビニリデン充填材であるので、上記充填材に微生物を高濃度に繁殖させることができ、この微生物によって、生き物から排出されて生き物にとって有害なアンモニア性窒素を、処理することができる。また、上記ポリ塩化ビニリデン充填材は、マイナスの電荷を有しているので、マイクロナノバブルのうち、魚のえらに付着するマイクロバブルを、上記ポリ塩化ビニリデン充填材に付着させて処理することができる。
【0026】
また、一実施形態の水処理装置では、上記第2領域に、上記ポリ塩化ビニリデン充填材よりも下流側に配置される炭酸カルシウム鉱物を有する。
【0027】
この実施形態の水処理装置によれば、上記第2領域に、上記ポリ塩化ビニリデン充填材よりも下流側に配置される炭酸カルシウム鉱物を有するので、上記ポリ塩化ビニリデン充填材に繁殖した微生物によって、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化し、その後、上記炭酸カルシウム鉱物によって、硝酸性窒素の増加で酸性化した飼育水を中和することができる。
【0028】
また、一実施形態の水処理装置では、上記第2領域に、上記ポリ塩化ビニリデン充填材よりも下流側に配置される活性炭を有する。
【0029】
この実施形態の水処理装置によれば、上記第2領域に、上記ポリ塩化ビニリデン充填材よりも下流側に配置される活性炭を有するので、上記ポリ塩化ビニリデン充填材に繁殖した微生物によって、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化し、その後、上記活性炭によって、飼育水中に残存している有機物を吸着し、水質を向上させることができる。また、上記活性炭は飼育水中の有機物を吸着するばかりでなく、上記活性炭に繁殖した微生物によって、活性炭が吸着した有機物を分解する。さらに、上記活性炭に繁殖した微生物は、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化処理する。
【0030】
また、一実施形態の水処理装置では、上記飼育水槽内に空気を吐出する散気部を有し、上記散気部は、上記飼育水槽内の水に、空気を供給する。
【0031】
この実施形態の水処理装置によれば、上記散気部は、上記飼育水槽内の水に、空気を供給するので、上記飼育水槽内の水の撹拌を、上記マイクロナノバブル発生機からのマイクロナノバブルによる上昇水流に加えて、上記散気部からの空気による上昇水流によって、確実に行うことができる。
【0032】
また、一実施形態の水処理装置では、上記マイクロナノバブル発生機に接続されるタイマーを有し、上記タイマーは、上記マイクロナノバブル発生機を、間欠運転する。
【0033】
この実施形態の水処理装置によれば、上記タイマーは、上記マイクロナノバブル発生機を、間欠運転するので、ランニングコストを一層低減できる。これは、マイクロナノバブルは、水中に長く持続するので、上記マイクロナノバブル発生機を間欠運転しても、飼育水の溶存酸素濃度を維持できる。
【0034】
また、一実施形態の水処理装置では、上記飼育水槽内に配置されて上記飼育水槽内の水の溶存酸素を計る溶存酸素計と、上記溶存酸素計の信号に基づいて上記マイクロナノバブル発生機の運転を制御する制御部とを有する。
【0035】
この実施形態の水処理装置によれば、上記飼育水槽内の水の溶存酸素を計る溶存酸素計と、上記溶存酸素計の信号に基づいて上記マイクロナノバブル発生機の運転を制御する制御部とを有するので、生き物を飼育できる溶存酸素濃度ならば、上記マイクロナノバブル発生機を停止できて、ランニングコストを低減できる。
【発明の効果】
【0036】
この発明の水処理方法によれば、上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させる工程と、上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させた水を、上記第2領域を通過させる工程と、上記第2領域を通過させた水を、再び、上記第3領域で上記生き物の飼育に使用する工程とを有するので、上記飼育水槽の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる。
【0037】
また、この発明の水処理装置によれば、上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域に導入して上記マイクロナノバブル発生機でマイクロナノバブルを含有させてから、上記第2領域を通過させて、再び、上記第3領域に導入して上記第3領域で上記生き物の飼育に使用するので、上記飼育水槽の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0039】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の水処理装置の第1の実施形態である模式図を示している。この水処理装置は、生き物の飼育に使用される飼育水槽1と、この飼育水槽1に配置されるマイクロナノバブル発生機5とを有する。
【0040】
上記飼育水槽1は、例えば水族館で使用され、海水魚や淡水魚の魚2が飼育される。海水や淡水としての水は、(図示しない)流入配管を通じて、上記飼育水槽1に導入される。また、上記飼育水槽1を養殖で使用する場合、上記飼育水槽1に、淡水または海水を導入して対象魚を養殖する。
【0041】
上記飼育水槽1に、水を常時流入する必要はなく、上記飼育水槽1内の水が、蒸発などにより減った時に、追加される場合が多いが、絶対的ではなく、多少入れ替えることもある。
【0042】
上記飼育水槽1は、第1領域としてのマイクロナノバブル発生部22、第2領域としての充填材部23、および、第3領域としての飼育部24を有する。上記マイクロナノバブル発生部22、上記充填材部23および上記飼育部24は、互いに連通している。
【0043】
上記マイクロナノバブル発生部22と上記充填材部23との間は、一部連通するように、鉛直方向に配置された仕切板9によって、仕切られている。上記充填材部23と上記飼育部24との間は、一部連通するように、鉛直方向に配置された仕切板10によって仕切られている。上記仕切板9,10は、水平方向に並んでいる。つまり、上記マイクロナノバブル発生部22、上記充填材部23および上記飼育部24は、左右方向に、順に、並んでいる。上記仕切板9,10の材質は、腐蝕に強い材質ならば特に限定せず、合成樹脂や塩化ビニル等が用いられる。
【0044】
上記マイクロナノバブル発生部22には、マイクロナノバブル発生機5が配置されている。つまり、上記マイクロナノバブル発生部22の下部に架台16が設置され、この架台16の上部に上記マイクロナノバブル発生機5が設置される。上記マイクロナノバブル発生機5は、水中ポンプ型のマイクロナノバブル発生機である。
【0045】
上記マイクロナノバブル発生機5には、空気配管6を介して、ブロワー8が接続されている。この空気配管6には、バルブ7が接続されており、このバルブ7は、上記マイクロナノバブル発生機5が最適なマイクロナノバブルを発生するように、上記マイクロナノバブル発生機5への空気量を調整している。
【0046】
ここで、マイクロナノバブルとは、10μmから数百nm前後の直径を有する気泡をいう。なお、通常のバブル(気泡)は、水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。また、マイクロバブルとは、10μm〜数十μmの気泡径を有する気泡をいい、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。また、ナノバブルとは、数百nm以下の直径を有する気泡をいい、いつまでも水の中に存在できる。
【0047】
上記マイクロナノバブル発生部22において、マイクロナノバブルを含有した飼育水は、マイクロナノバブルが上昇する際に発生する(矢印にて示す)水流4によって、上記充填材部23に導入される。
【0048】
なお、上記充填材部23には、充填材が設置されていない。これは、魚2を一定容積当り、少ない数だけ飼育する場合に、適合される。
【0049】
上記充填材部23を出た飼育水は、上記飼育部24に自動的に流入する。上記飼育部24に、魚2が存在する。上記飼育部24には、空気を吐出する散気部14を有する。上記散気部14は、上記飼育水槽1内の水に、空気を供給する。つまり、上記散気部14には、空気配管13を介して、ブロワー12が接続される。上記散気部14から吐出される空気によって、(矢印にて示す)上昇水流11が起こり、上記飼育部24内を攪拌する。
【0050】
上記飼育水槽1は、上記マイクロナノバブル発生部22、上記充填材部23および上記飼育部24に互いに連通すると共に、上記充填材部23の下側に配置された第4領域としての沈澱部29を有する。上記沈殿部29は、上記飼育水槽1の底部15を、すり鉢状等の傾斜を有する形状に形成して、構成される。
【0051】
すなわち、上記マイクロナノバブル発生部22の最下部と上記充填材部23の最下部とは、1つの上記沈澱部29を構成しており、上記飼育水槽1が攪拌されることによって、生き物が排泄した糞などが、上記沈殿部29に、自動的に溜まってくる。
【0052】
また、上記飼育部24の下部の上記底部15は、上記沈殿部29側に傾斜しており、魚2が糞を排出した場合、この糞は、(矢印にて示す)水流11によって、自動的に上記沈澱部29に移動する。
【0053】
上記沈殿部29には、排出管30が接続され、この排出管30にはバルブ3が接続されている。そして、沈澱物が上記沈澱部29に多く堆積した時点で、上記バルブ3を開として、上記飼育水槽1から沈殿物を排出して、上記飼育部24の水質を維持する。
【0054】
次に、上記水処理装置によって、上記飼育水槽1内の水を処理する方法を説明する。
【0055】
まず、魚2が存在する上記飼育部24で魚2の飼育に使用された水を、上記マイクロナノバブル発生部22に導入して、上記マイクロナノバブル発生部22でマイクロナノバブルを含有させる。
【0056】
その後、上記マイクロナノバブル発生部22でマイクロナノバブルを含有させた水を、上記充填材部23を通過させる。
【0057】
そして、上記充填材部23を通過させた水を、再び、上記飼育部24に導入して、上記飼育部24で魚2の飼育に使用する。
【0058】
上記構成の水処理装置によれば、魚2が存在する上記飼育部24で魚2の飼育に使用された水を、上記マイクロナノバブル発生部22に導入して上記マイクロナノバブル発生機5でマイクロナノバブルを含有させてから、上記充填材部23を通過させて、再び、上記飼育部24に導入して上記飼育部24で魚2の飼育に使用するので、上記マイクロナノバブルによって、例えば上記充填材部23で繁殖した微生物を、効率的に活性化できて、この微生物によって、魚2から排出されて魚2にとって有害なアンモニアを酸化すると共に、魚2に悪影響を及ぼすマイクロバブルを減少できる。
【0059】
したがって、上記飼育水槽1内の水質を向上させることができ、かつ、ランニングコストを低減できる。
【0060】
ここで、微生物とは、例えば、亜硝酸生成菌や硝酸生成菌等であり、魚2から尿として排出された有害なアンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化して水処理を行う。
【0061】
また、上記飼育水槽1は、上記マイクロナノバブル発生部22、上記充填材部23および上記飼育部24に互いに連通すると共に上記充填材部23の下側に配置された上記沈殿部29を有するので、上記充填材部23で繁殖して自然沈降する微生物(汚泥)を、上記沈殿部29に集めて、上記沈殿部29から抜き出すことができる。
【0062】
また、上記マイクロナノバブル発生機5は、水中ポンプ型のマイクロナノバブル発生機であるので、上記マイクロナノバブル発生機5を上記充填材部23に容易に設置することができて、コスト増となる循環ポンプや配管が不要となる。
【0063】
また、上記散気部14は、上記飼育水槽1内の水に、空気を供給するので、上記飼育水槽1内の水の撹拌を、上記マイクロナノバブル発生機5からのマイクロナノバブルによる上昇水流に加えて、上記散気部14からの空気による上昇水流によって、確実に行うことができる。
【0064】
(第2の実施形態)
図2は、この発明の水処理装置の第2の実施形態を示している。図1に示す上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、上記充填材部23に、充填材としてのひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17を複数有する。なお、この第2の実施形態において、図1に示す上記第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0065】
このように、上記充填材部23には、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17が収容されるので、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17に微生物を効率的にかつ高濃度に繁殖できる。したがって、上流側の上記マイクロナノバブル発生部22から導入されるマイクロナノバブルによって、微生物を効率的に活性化できる。
【0066】
そして、この微生物によって、魚2から排出されて魚2にとって有害なアンモニア性窒素を、処理することができる。また、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17は、マイナスの電荷を有しているので、マイクロナノバブルのうち、魚2のえらに付着するマイクロバブルを、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17に付着させて処理することができる。
【0067】
つまり、魚2のえらに付着して魚2に悪影響を及ぼすマイクロバブルを、上記充填材部23に通過させることで、このマイクロバブルを、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17に付着させ、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17に繁殖した微生物によって、減少させている。
【0068】
(第3の実施形態)
図3は、この発明の水処理装置の第3の実施形態を示している。図1に示す上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第3の実施形態では、上記充填材部23に、充填材としてのリング状ポリ塩化ビニリデン充填材18を複数有する。このリング状ポリ塩化ビニリデン充填材18は、上記充填材部23に取り付けられた上下の多孔板19,19の間に、設置されている。なお、この第3の実施形態において、図1に示す上記第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0069】
このように、上記充填材部23には、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18が収容されるので、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18に微生物を効率的にかつ高濃度に繁殖できる。したがって、上流側の上記マイクロナノバブル発生部22から導入されるマイクロナノバブルによって、微生物を効率的に活性化できる。
【0070】
そして、この微生物によって、魚2から排出されて魚2にとって有害なアンモニア性窒素を、処理することができる。また、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18は、マイナスの電荷を有しているので、マイクロナノバブルのうち、魚2のえらに付着するマイクロバブルを、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18に付着させて処理することができる。
【0071】
つまり、魚2のえらに付着して魚2に悪影響を及ぼすマイクロバブルを、上記充填材部23に通過させることで、このマイクロバブルを、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18に付着させ、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18に繁殖した微生物によって、減少させている。
【0072】
また、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18を、上記上下の多孔板19,19の間に、ただ単に、投入するだけでよいので、設置が容易である。
【0073】
(第4の実施形態)
図4は、この発明の水処理装置の第4の実施形態を示している。図2に示す上記第2の実施形態と相違する点を説明すると、この第4の実施形態では、上記充填材部23に、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17よりも下流側に配置される炭酸カルシウム鉱物20を複数有する。なお、この第4の実施形態において、図2に示す上記第2の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0074】
この炭酸カルシウム鉱物20は、上記充填材部23に取り付けられた上下の多孔板19,19の間に、設置されている。上記炭酸カルシウム鉱物20は、例えば、サンゴ、カキガラや石灰石である。
【0075】
そして、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17に繁殖した微生物によって、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化し、その後、上記炭酸カルシウム鉱物20によって、硝酸性窒素の増加で酸性化した飼育水を中和することができる。
【0076】
つまり、微生物が飼育水中のアンモニア性窒素を酸化することによって、硝酸性窒素が増加して、飼育水の液性が酸性側に傾く。しかし、酸性水で、上記炭酸カルシウム鉱物20が溶け出して、結果的に中和される。
【0077】
(第5の実施形態)
図5は、この発明の水処理装置の第5の実施形態を示している。図2に示す上記第2の実施形態と相違する点を説明すると、この第5の実施形態では、上記充填材部23に、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17よりも下流側に配置される活性炭21を複数有する。この活性炭21は、上記充填材部23に取り付けられた上下の多孔板19,19の間に、設置されている。なお、この第5の実施形態において、図2に示す上記第2の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0078】
そして、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17に繁殖した微生物によって、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化し、その後、上記活性炭21によって、飼育水中に残存している有機物を吸着し、水質を向上させることができる。
【0079】
また、上記活性炭21は飼育水中の有機物を吸着するばかりでなく、上記活性炭21に繁殖した微生物によって、上記活性炭21が吸着した有機物を分解する。つまり、上記活性炭21は、あたかも再生された状態になる。よって、上記活性炭21を取り替える必要がない。
【0080】
さらに、上記活性炭21に繁殖した微生物は、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化処理する。
【0081】
(第6の実施形態)
図6は、この発明の水処理装置の第6の実施形態を示している。図4に示す上記第4の実施形態と相違する点を説明すると、この第6の実施形態では、上記マイクロナノバブル発生部22に、他の上記散気部14が設置されている。なお、この第6の実施形態において、図4に示す上記第4の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0082】
上記飼育部24に設置される上記一の散気部14と上記ブロワー12とが接続される上記空気配管13から、空気配管6が分岐され、この空気配管6に、上記他の散気部14が接続される。つまり、上記他の散気部14は、上記ブロワー12から空気を供給される。
【0083】
したがって、上記マイクロナノバブル発生部22では、上記マイクロナノバブル発生機5による水流のみならず、上記他の散気部14から吐出される空気(気泡25)によって、飼育水が効率的に循環される。
【0084】
そして、上記充填材部23を通過する飼育水の量が格段に多くなって、飼育水中のアンモニア性窒素がより多く酸化される。すなわち、水質が向上すると同時に、飼育水も硝酸性窒素が多くなって飼育水の液性が酸性側となるが、この飼育水は上記炭酸カルシウム鉱物20によって中和される。
【0085】
(第7の実施形態)
図7は、この発明の水処理装置の第7の実施形態を示している。図2に示す上記第2の実施形態と相違する点を説明すると、この第7の実施形態では、上記マイクロナノバブル発生機5および上記ブロワー8に接続されるタイマー26を有し、このタイマー26は、上記マイクロナノバブル発生機5および上記ブロワー8を、間欠運転する。なお、この第7の実施形態において、図2に示す上記第2の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0086】
つまり、上記飼育部24で、飼育する魚2が少ない場合、上記マイクロナノバブル発生機5を24時間連続運転する必要はない。これは、発生したマイクロナノバブルは、水中に長く持続して滞留するからである。
【0087】
すなわち、上記飼育部24の溶存酸素濃度を測定して、基準以上の溶存酸素を確保できれば、上記タイマー26による上記マイクロナノバブル発生機5および上記ブロワー8を間欠運転することができる。したがって、ランニングコストを一層低減できる。
【0088】
(第8の実施形態)
図8は、この発明の水処理装置の第8の実施形態を示している。図2に示す上記第2の実施形態と相違する点を説明すると、この第8の実施形態では、上記飼育水槽1内に配置されて上記飼育水槽1内の水の溶存酸素を計る溶存酸素計27と、上記溶存酸素計27の信号に基づいて上記マイクロナノバブル発生機1の運転を制御する制御部としての溶存酸素調節計28とを有する。なお、この第8の実施形態において、図2に示す上記第2の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0089】
上記溶存酸素計27は、上記飼育部24内の水の溶存酸素を計り、上記溶存酸素調節計28は、上記溶存酸素調節計28の計測結果に基づいて、上記マイクロナノバブル発生機1および上記ブロワー8の運転を制御する。
【0090】
つまり、上記飼育部24で、飼育する魚2が少ない場合、上記マイクロナノバブル発生機5を24時間連続運転する必要はない。これは、発生したマイクロナノバブルは、水中に長く持続して滞留するからである。
【0091】
すなわち、上記飼育部24の溶存酸素濃度を測定して、基準以上の溶存酸素が確保できれば、上記溶存酸素計27および上記溶存酸素調節計28によって、上記マイクロナノバブル発生機5および上記ブロワー8を間欠運転することができる。
【0092】
したがって、魚2を飼育できる溶存酸素濃度ならば、上記マイクロナノバブル発生機5を停止できて、ランニングコストを低減できる。
【0093】
(実験例)
図1の第1の実施形態に対応する実験装置を製作した。この実験装置において、上記飼育水槽1の全体容量を1000リットルとし、上記マイクロナノバブル発生部22の容量を150リットルとし、上記充填材部23の容量を150リットルとし、上記飼育部24の容量を700リットルとして、1ケ月間、試運転をおこなった。
【0094】
試運転後、海水魚を入れて、7日後のアンモニア性窒素を測定したところ、0.1ppmであり、従来のマイクロナノバブル発生機が設置されていない水槽と比較したところ、水質的には、上記マイクロナノバブル発生機5を有する上記飼育水槽1が、アンモニア性窒素に関する水質では、良かった。
【0095】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記仕切板9,10のそれぞれを水平方向に配置すると共に、上記仕切板9,10を鉛直方向に並べてもよい。つまり、上記マイクロナノバブル発生部22、上記充填材部23および上記飼育部24を、下から上に、順に、並べてもよい。
【0096】
また、上記第4と上記第5の実施形態において、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17の代わりに、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18を用いても良い。
【0097】
また、上記第6の実施形態において、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17の代わりに、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18を用いてもよく、上記炭酸カルシウム鉱物20の代わりに、上記活性炭21を用いてもよく、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17または上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18のみとしてもよい。
【0098】
また、上記第7と上記第8の実施形態において、上記ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材17の代わりに、上記リング状ポリ塩化ビニリデン充填材18を用いてもよく、上記炭酸カルシウム鉱物20または上記活性炭21を追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の冷却装置の第1実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の冷却装置の第2実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の冷却装置の第3実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の冷却装置の第4実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の冷却装置の第5実施形態を示す模式図である。
【図6】本発明の冷却装置の第6実施形態を示す模式図である。
【図7】本発明の冷却装置の第7実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明の冷却装置の第8実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0100】
1 飼育水槽
2 魚
3 バルブ
4 水流
5 マイクロナノバブル発生機
6 空気配管
7 バルブ
8 ブロワー
9 仕切板
10 仕切板
11 水流
12 ブロワー
13 空気配管
14 散気部
15 底部
16 架台
17 ひも状ポリ塩化ビニリデン充填材
18 リング状ポリ塩化ビニリデン充填材
19 多孔板
20 炭酸カルシウム鉱物
21 活性炭
22 マイクロナノバブル発生部(第1領域)
23 充填材部(第2領域)
24 飼育部(第3領域)
25 気泡
26 タイマー
27 溶存酸素計
28 溶存酸素調節計(制御部)
29 沈澱部(第4領域)
30 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生き物を飼育する飼育水槽内の水を処理する方法において、
上記飼育水槽内に、互いに連通する第1領域、第2領域および第3領域を形成し、
上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域に導入して、上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第1領域でマイクロナノバブルを含有させた水を、上記第2領域を通過させる工程と、
上記第2領域を通過させた水を、再び、上記第3領域に導入して、上記第3領域で上記生き物の飼育に使用する工程と
を備えることを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法において、
上記第2領域に充填材を収容することを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
生き物の飼育に使用されると共に、互いに連通する第1領域、第2領域および第3領域を有する飼育水槽と、
この飼育水槽の上記第1領域に配置されたマイクロナノバブル発生機と
を備え、
上記生き物が存在する上記第3領域で上記生き物の飼育に使用された水を、上記第1領域に導入して上記マイクロナノバブル発生機でマイクロナノバブルを含有させてから、上記第2領域を通過させて、再び、上記第3領域に導入して上記第3領域で上記生き物の飼育に使用することを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記第2領域に収容される充填材を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記飼育水槽は、上記第1領域、上記第2領域および上記第3領域に互いに連通すると共に上記第2領域の下側に配置された第4領域を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記マイクロナノバブル発生機は、水中ポンプ型のマイクロナノバブル発生機であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項4に記載の水処理装置において、
上記充填材は、ポリ塩化ビニリデン充填材であることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の水処理装置において、
上記第2領域に、上記ポリ塩化ビニリデン充填材よりも下流側に配置される炭酸カルシウム鉱物を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の水処理装置において、
上記第2領域に、上記ポリ塩化ビニリデン充填材よりも下流側に配置される活性炭を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記飼育水槽内に空気を吐出する散気部を有し、
上記散気部は、上記飼育水槽内の水に、空気を供給することを特徴とする水処理装置。
【請求項11】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記マイクロナノバブル発生機に接続されるタイマーを有し、
上記タイマーは、上記マイクロナノバブル発生機を、間欠運転することを特徴とする水処理装置。
【請求項12】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記飼育水槽内に配置されて上記飼育水槽内の水の溶存酸素を計る溶存酸素計と、
上記溶存酸素計の信号に基づいて上記マイクロナノバブル発生機の運転を制御する制御部と
を有することを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−312609(P2007−312609A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142445(P2006−142445)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】