説明

水晶振動子

【課題】 剛性の高い金属製のカバーを有する水晶振動子を提供する。
【解決手段】 水晶振動子は、少なくとも2本の金属リード端子が絶縁材を介して貫通している第1金属(9)と、この第1金属の周囲に配置され第1金属とは異なる第2金属(9F)とからなる金属ベースと、金属リード端子のインナー側に配置される金属サポータ(50)と、金属サポータに配置される水晶振動板(2)と、インナー側の第2金属(203)とアウター側の第2金属とは異なる第3金属(202)とを有するクラッド材からなり、水晶振動板を覆う金属カバー(10)と、を備える。そして、水晶振動子は、金属カバーと金属ベースの第2金属とが冷間圧接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベースと金属カバーとによって気密封止する水晶振動子に関する。特に水晶振動子の金属カバーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、金属ベースにはガラスなどの絶縁材を介して一対の金属リード端子が配置されている。この金属リード端子のインナーリード部分には、一対の金属平板のサポータが対向して取り付けられている。水晶振動板は、例えば、厚みすべり振動してなるATカット水晶振動板であり、表裏面には励振電極と、各励振電極からの引出電極が形成されている。そして、サポータの上に水晶振動板が搭載され、導電接合材により電気的機械的に接続される。そして、金属ベースに金属製のカバーを被せ、これらをお互いに抵抗溶接により気密封止する構成となっている。
【0003】
一方、抵抗溶接では、溶接時に金属片が、金属ベースと金属製のカバーとの間に形成されたキャビティ内に混入するおそれがある。そこで高精度が求められる水晶振動子には、冷間圧接が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−308669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでの冷間圧接用の金属製のカバーは、無酸素銅が用いられてきた。高精度が求められる水晶振動子はATカット水晶振動板が使われるため、気密試験など高い圧力が加わると、剛性が弱い無酸素銅のカバーが凹んでしまうことがあった。なお、冷間圧接用に硬度が高い金属が使用されると、必要とされる冷間圧接の圧力が大きくなってしまい、無酸素銅以外に他の適した金属がなかった。
【0006】
そこで、本発明は、剛性の高い金属製のカバーを有する水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の水晶振動子は、少なくとも2本の金属リード端子が絶縁材を介して貫通している第1金属とこの第1金属の周囲に配置され第1金属とは異なる第2金属とからなる金属ベースと、金属リード端子のインナー側に配置される金属サポータと、 金属サポータに配置される水晶振動板と、インナー側の第2金属とアウター側の第2金属とは異なる第3金属とを有するクラッド材からなり水晶振動板を覆う金属カバーと、を備える。そして、水晶振動子は、金属カバーと金属ベースの第2金属とが冷間圧接される。
【0008】
第2の観点の水晶振動子では、水晶振動板が金属ベースに平行に配置される。
第3の観点の水晶振動子では、金属カバーが天井面と壁面とフランジ面とを有しており、天井面は断面が凸凹の波状に形成されている。
第4の観点の水晶振動子では、第1金属及び第3金属がコバール材であり、第2金属が銅である。また金属カバーのインナー側及びアウター側の表面は、ニッケルメッキが施されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水晶振動子によれば、剛性の高い金属製のカバーにより耐熱性が向上し、気密試験など高い圧力が加わってもカバーの変形を抑制し、ベースとカバーとを冷間圧接封止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、第1金属カバー10を取り外した水晶振動子100の平面図である。 (b)は、水晶振動子100のA−A’断面図である。
【図2】水晶振動片2が金属サポータ50で支えられている拡大断面図である。
【図3】(a)は、第1金属カバー10の構成を示す断面図である。 (b)は、第1金属カバー10の変形例10Aの構成を示す断面図である。
【図4】(a)は、第2金属カバー11の平面図である。 (b)は、第2金属カバー11のB−B’断面図である。
【図5】(a)は、第3金属カバー12の平面図である。 (b)は、第3金属カバー12のC−C’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<水晶振動子100の全体構成>
水晶振動子100の全体構成について、図1及び図3を使って説明する。
図1(a)は、第1金属カバー10を取り外した水晶振動子100の平面図であり、(b)は、第1金属カバー10を取りつけた状態の水晶振動子100のA−A’断面図である。水晶振動子100は、図1に示されたように、金属ベース9と第1金属カバー10とからなる金属容器キャビティCT内に水晶振動片2を有している。
【0012】
水晶振動子100は、水晶振動片として円盤状のATカットの水晶振動片2が使われている。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されているが、ATカットの水晶振動片2の結晶軸に関係なく、金属ベース9と、第1金属カバー10とからなる金属容器の主軸を用いて説明する。
【0013】
図1(a)及び(b)に示されるように、水晶振動子100のパッケージは、金属製のベース9と金属カバー10とからなる。金属ベース9は、例えば直径20mmの円盤状のコバール材(鉄にニッケル、コバルトを配合した合金)からなる。そのコバール材の外周にフランジ9Fを備える。フランジ9Fは金属ベース9にロウ付けされている。フランジ9Fは、銅(Cu)材より形成されその表面にニッケルメッキが施されている。金属ベース9にはZ軸方向に伸びる4つの貫通孔が形成されている。その4つの貫通孔に4本のリード端子8(8a,8b,8c、8d)が入り、金属ベース9の貫通孔と4本のリード端子8との間には絶縁材であるガラス7が配置されている。このガラス7は、金属ベース9とリード端子8とがショートしないようにする役割と、パッケージ内を気密封止する役割とを有している。
【0014】
リード端子8は、金属ベース9にガラス7を介して固定され、先端(インナー側)に金属サポータ50(50a,50b、50c、50d)を備えている。金属サポータ50はリード端子8の先端に、融点350°C以上の金ゲルマニューム(Au・Ge)合金又は金シリコン(Au・Si)合金などの高温ハンダ、又はレーザ溶接を用いて固定される。金属サポータ50は、電子管用ニッケルからプレス成形される略L字状に加工されている。
【0015】
図1(a)に示されるように、水晶振動片2はZ軸方向から見て、それぞれ90度ずつ離れた金属サポータ50で、支えられている。また図2に示されるように、各金属サポータ50は、下面支え部53と上面支え部51とを有している。下面支え部53はリード端子8の先端が固定される。上面支え部51は、水晶振動片2の−Z軸側の主面を支える。
【0016】
水晶振動片2は、一対の励振電極3a、3bが、水晶振動片2の中央付近の両主面に対向して配置される。また、励振電極3aには水晶振動片2の底面(−Z側)の−Y側まで伸びた引出電極4aが接続され、励振電極3bには水晶振動片2の底面(−Z側)の+Y側まで伸びた引出電極4bが接続される。また、励振電極3a,3b及び引出電極4a,4bは、例えば下地としてのクロム層が用いられ、クロム層の上面に金層が用いられる。
【0017】
引出電極4a,4bは、金属サポータ50a,50bに導通する位置に配置された状態で、金属サポータ50の上面支え部51に導電性接着剤21によって固定される。これにより、励振電極3a,3bは、引出電極4a,4b及び導電性接着剤21を介して、電源(不図示)まで電気的に接続される。一方、金属サポータ50c、50dは、引出電極4a,4bが形成されていない領域を、導電性接着剤21で固定される。
【0018】
図1(b)に示されるように、第1金属カバー10が、水晶振動片2を覆うように金属ベース9に取り付けられる。第1金属カバー10の−Z軸側は少なくとも銅(Cu)材が使われており、第1金属カバー10のフランジ10Fと金属ベース9のフランジ9Fとが冷間圧接される。冷間圧接とは、常温において金属材料同士を高い圧力で互いに押し当て変形させながら接合することである。本実施形態では、第1金属カバー10のフランジ10Fと金属ベース9のフランジ9Fとの材料相互が拡散し合い、しっかりとした金属結合される。フランジ10Fとフランジ9Fとは、これらの面に存在する金属酸化物、有機及び無機汚染物を実質的に浄化し、接合面間の金属間結合が行われる。
【0019】
水晶振動子100は、水晶振動片2を搭載した金属ベース9のフランジ9Fと第1金属カバー10のフランジ10Fとを重ね合わせ、真空中で冷間圧接され密封される。水晶振動子100は、冷間圧接封止することにより接合時のガスの発生もなく、ガスによるパッケージ内部への悪影響を回避できる。
【0020】
<第1金属カバー10の構成>
図3(a)は、第1金属カバー10の構成を示す断面図である。図3(a)に示されたように、第1金属カバー10は、円筒形で天井面15と壁面16とフランジ面10Fとを有している。第1金属カバー10は、コバール層202と銅(無酸素銅)層203とのクラッド材20からなり、コバール層202の表面(上面)にニッケルメッキ201が施され、銅層203の表面(下面)にニッケルメッキ201が施されている。クラッド材20は、コバール層202と銅層203との板を積層して、例えば熱間圧延の手法を用いて、それらの界面を接合して形成される。第1金属カバー10は、コバール層202の金属ベース9側(インナー側:−Z軸側)に銅層203を備えている。天井面15と壁面16とフランジ面10Fとは、一枚のクラッド材をプレス成形により一度に成形される。
【0021】
これまでの金属カバーは、銅層に両面にニッケルメッキを施した材料が使われていた。このため、気密試験など高い圧力が加わると、剛性が弱い銅のカバーが凹んでしまうことがあった。しかし、本実施形態では金属カバーにクラッド材が使用されることで、高い圧力が第1金属カバー100に加わっても、金属カバーが凹むことが無い。
【0022】
<第1金属カバーの変形例10Aの構成>
図3(b)は、第1金属カバー10の変形例10Aの構成を示す断面図である。金属カバー10Aも、コバール層202と銅層203とのクラッド材20が使われている。金属カバー10Aは、円筒形の天井面15と壁面16とのなす角部に傾斜面19が形成される。傾斜面19は、天井面15の直径を小さくするとともに、Z軸方向に加われる力を分散させることで、Z軸方向からの圧力に対して強度を高めている。天井面15と壁面16とのなす角部は、直線的な傾斜面19に代えて曲線状の傾斜面にすることもできる。
【0023】
<第2金属カバー11の構成>
図4(a)は、第2金属カバー11の平面図であり、(b)は、第2金属カバー11のB−B’断面図である。第1金属カバー10と同じ構成部分は、第1金属カバー10と同じ番号を付している。同じ構成については、その説明を割愛する。
【0024】
第2金属カバー11は、コバール層202と銅層203とのクラッド材20をプレス成形して形成されている。第2金属カバー11の天井面15の両面は、正方形の箱型凸部17が互い違いに碁盤目状に形成されている。プレス成形されたクラッド材20は、その後、上下両面にニッケルメッキが施されている。図4(b)に示されるように、碁盤目状の箱型凸部17は、矩形の波形状に形成される。箱型凸部17の稜線は、図に描かれていないが、プレス成形し易いように角部にR面が付けられていてもよい。
【0025】
第2金属カバー11は、箱型凸部17が天井面15の全面に形成されることで、曲げ剛性が高くなり、高い圧力が第2金属カバー11に加わっても、第2金属カバー11の天井面が凹むことが無い。
【0026】
<第3金属カバー12の構成>
図5(a)は、第3金属カバー12の平面図であり、(b)は、第3金属カバー12のC−C’断面図である。第1金属カバー10と同じ構成部分は、第1金属カバー10と同じ番号を付している。同じ構成については、その説明を割愛する。
【0027】
第3金属カバー12は、コバール層202と銅層203とのクラッド材20をプレス成形して形成されている。第3金属カバー12の天井面は、その中心から同心円状の凹凸18が形成されている。プレス成形されたクラッド材20は、その後、上下両面にニッケルメッキが施されている。図5(b)に示されたように、天井面の断面は、サイン波の波形状の凹凸18が形成されている。
【0028】
第3金属カバー12は、天井面に波形状の凹凸18が全面に形成されることで、曲げ剛性が高くなり、高い圧力が第3金属カバー12に加わっても、第3金属カバー12の天井面が凹むことが無い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。例えば、実施形態では、矩形波及びサイン波の波形状を示したが、三角波又はのこごり歯形状の波であってもよい。また、実施形態では円板状のATカットの水晶振動片を用いたが、正方形や長方形状の水晶振動片を用いることができる。また、ATカットの水晶振動片だけでなく、SCカット又はITカット等の水晶振動片を用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
2 … 水晶振動片
3a,3b … 励振電極
4a,4b … 引出電極
50(50a,50b,50c、50d) … 金属サポータ
9F,10F … フランジ
7 … ガラス
8a,8b,8c,8d … リード端子
9 … 金属ベース
10,11,12 … (第1、第2、第3)金属カバー、 10A … 変形例
15 … 天井面、 16 … 壁面
17 … 正方形箱型凸部
18 … 波形、 19 … 傾斜面
20 … クラッド材
100 … 水晶振動子
CT … キャビティ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の金属リード端子が絶縁材を介して貫通している第1金属と、この第1金属の周囲に配置され前記第1金属とは異なる第2金属とからなる金属ベースと、
前記金属リード端子のインナー側に配置される金属サポータと、
前記金属サポータに配置される水晶振動板と、
インナー側の前記第2金属とアウター側の前記第2金属とは異なる第3金属とを有するクラッド材からなり、前記水晶振動板を覆う金属カバーと、を備え、
前記金属カバーと前記金属ベースの第2金属とが冷間圧接される水晶振動子。
【請求項2】
前記水晶振動板は、前記金属ベースに平行に配置される請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記前記金属カバーは、天井面と壁面とフランジ面とを有しており、前記天井面は断面が凸凹の波状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記第1金属及び前記第3金属がコバール材であり、前記第2金属が銅である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水晶振動子。
【請求項5】
前記金属カバーのインナー側及びアウター側の表面は、ニッケルメッキが施されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水晶振動子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74577(P2013−74577A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213994(P2011−213994)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】