説明

汚染機器の洗浄方法および洗浄システム

【課題】有機ハロゲン化合物を含有する絶縁油の入った機器から該絶縁油を抜き取った後、有機ハロゲン化合物が完全には除去されていない汚染機器の容器(ケース)からコイル等の内部部材を分離する前に、容器と内部部材を、大掛かりな設備を用いることなく簡易に無害化処理することができる洗浄方法および洗浄システムを提供する。
【解決手段】汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、 汚染機器内の洗浄液を、汚染機器の開口面近傍に配された洗浄液噴射ノズルより噴射させ、該機器の内面を洗浄する噴射洗浄工程と、汚染機器内の洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程とを、同時に実施できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニール(以下、PCBと略記する)等の有機ハロゲン化合物を含有する絶縁油が入っていた変圧器等の機器(以下、「汚染機器」という)の洗浄方法および洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
PCB等の有機ハロゲン化合物を含有する絶縁油が入っていた変圧器等の無害化処理においては、内部から絶縁油を抜き出し、コイル等の内部部材を分離し、個別に無害化処理をする方法が知られている。この場合、絶縁油や内部部材を除去した後の容器(以下、「汚染容器」という)についても、内面にはPCBを含有する絶縁油が残留しているため、該PCBを除去する必要がある。
【0003】
しかしながら、変圧器等の機器は複雑な内部構造を有するため、絶縁油を全て抜き取ることは事実上不可能である。そのため、変圧器を一次洗浄した後、PCBを含有したままの状態で内部部材を容器から取り出し解体しなければならず、密閉空間での慎重な作業が必要とされることから、作業時間がかかり、かつ作業員への負担も大きいという問題がある。
【0004】
汚染機器から絶縁油を抜き取り、抜油後の汚染機器を丸ごと加熱もしくは真空加熱し、PCBを蒸発させて除去する方法もあり、該方法では機器を解体することなく処理できる利点はあるが、機器が丸ごと収納可能な加熱炉もしくは真空加熱室等の大掛かりな設備が必要で、なおかつ、反応も真空加熱で260〜600℃、加熱炉の場合850℃以上の加熱が必要である。
【0005】
汚染機器から絶縁油を抜き取り、抜油後の汚染機器を解体せずに全体を洗浄液に浸漬して、容器と内部部材を同時に洗浄する方法は、新たに生じる洗浄廃液の処理が不要という利点があり、解体時には内部部材が無害化されているため作業上の制限も少ない。
【0006】
しかしながら、機器全体を洗浄槽に浸漬して洗浄するとなれば、数百L級の柱上変圧器や1万L級の大型変圧器の場合には、洗浄設備が大掛かりにならざるを得ないし、かつ機器の搬送も容易でない。一方、内部部材を分離する際にもPCBを含有したままの状態で容器から取り出さなければならないので、それも大変である。そのため、大型変圧器の場合には、全体を浸漬洗浄すること以外の方法で汚染機器(すなわち、汚染された容器と内部部材)を無害化できることが、最も望ましい。
【0007】
特許文献1には、絶縁油抜き取り後の汚染機器を、ウォータージェットにより水で一次洗浄した後、容器と内部部材とに解体・分別し、容器を更に水および溶剤で洗浄することにより、柱上変圧器容器を無害化する方法が開示されているが、この洗浄方法では、解体後に水洗と溶剤洗浄を行っている。
【0008】
特許文献2には、汚染容器の開口を介して汚染容器の内部にシャワーノズルより溶剤を噴射させ、容器内面に付着した油を洗浄し、その後、さらに汚染容器を溶剤蒸気に曝すことにより汚染容器の内面に付着した油を洗浄する方法が開示されている。シャワーノズルによる洗浄は、蒸気洗浄では除去されにくいような、油の付着量が多い底面および該底面の角部分を効率的に洗浄する目的で実施しており、逆さにした容器内部においてシャワーノズルにより溶剤を噴射させ、付着した油を洗浄するので、複数の汚染容器を連続して洗浄処理することができる利点はある。しかしながら、この洗浄方法で大型変圧器を搬送するのは容易でないし、容器を逆さにして洗浄するので内部部材が入ったままの状態で洗浄することもできない。
【0009】
特許文献3には、汚染機器の中に、アルカリとイソプロピルアルコールを添加し、イソプロピルアルコール溶液を触媒充填装置に流通させながら機器内で循環させることにより、絶縁紙中のPCBを無害化処理する方法が開示されている。
【特許文献1】特許第377941号公報(請求項1等)
【特許文献2】特開2002−233845号公報(請求項1〜6等、段落0009、0020等)
【特許文献3】特開2006−142278号公報(請求項1、請求項3、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3記載の方法によれば、絶縁紙や木片が含有するPCBが、時間とともに洗浄液中に溶出するので、それを分解すれば、時間とともにPCB濃度を減少させることが可能であるが、容器の上部および上蓋の内面を洗浄できない。さらに、容器の内面の上部には、絶縁油の空気酸化によって生成した変性物が付着している恐れがあるため、洗浄液に浸漬するだけの溶出分解では該変性物中の有機ハロゲン化合物を除去することは時間が余計にかかる恐れがあり、あるいは困難である。
【0011】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、有機ハロゲン化合物を含有する絶縁油の入った機器から該絶縁油を抜き取った後、有機ハロゲン化合物が完全には除去されていない汚染機器の容器(ケース)からコイル等の内部部材を分離する前に、容器と内部部材を、大掛かりな設備を用いることなく簡易に無害化処理することができる洗浄方法および洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、
汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、
該汚染機器に充填された洗浄液を、該機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配された噴射ノズルより噴射させ、該機器および上蓋の内面を洗浄する噴射洗浄工程と、
該汚染機器に充填された洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程と、を同時に実施することを特徴とする汚染機器の洗浄方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、
汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、
該汚染機器に充填された洗浄液を、該機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配された噴射ノズルより噴射させ、該機器および上蓋の内面を洗浄する噴射洗浄工程と、
該汚染機器に充填された洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程と、を同時に実施し、
その後、前記分解洗浄工程のみ実施することを特徴とする汚染機器の洗浄方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、
汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、
該汚染機器に充填された洗浄液を、該機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配された噴射ノズルより噴射させ、該機器および上蓋の内面を洗浄する噴射洗浄工程を実施し、
その後、該汚染機器に充填された洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程と、前記噴射洗浄工程とを同時に実施することを特徴とする汚染機器の洗浄方法を提供する。
【0015】
本発明の洗浄方法によれば、溶出分解を目的とした洗浄では処理困難であった部位に洗浄液を噴射するため、機器の容器内面の上部に付着していたPCB等を含有する絶縁油あるいは該絶縁油由来の付着物を、速やかに洗浄することが可能となる。洗浄液噴射による洗浄は、洗浄液による絶縁油およびPCB等の溶解作用と、流体の衝突による物理的な剥離作用をも有するものであるため、容器を洗浄液に浸漬させる方法に比べて汚染油の除去効果が大きい。
且つ、本発明の洗浄方法によれば、洗浄液の量を汚染機器内のコイルが完全に浸る程度の量にしておくことにより、内部部材のコイル表面に付着、あるいは、絶縁紙や木片に含浸していたPCB等を徐々に洗浄液中に溶出させることが可能となる。このPCB等が溶解した洗浄液を、PCB等を分解可能な触媒が充填された触媒充填装置に流通させながら循環させることにより、該循環洗浄によって洗浄液中のPCB等を徐々に分解することが可能となる。
洗浄液噴射による洗浄で除去されたPCB等や絶縁油も洗浄液の中に溶解してくるため、噴射洗浄と溶出分解は、同時進行する。このため、水洗後に溶剤洗浄したり、溶剤洗浄後に蒸気洗浄したりする洗浄法に比べて、処理工程が少ないという利点を有する。洗浄に際しては、汚染機器を洗浄槽に搬送する必要がないため、1万L級の大型機器でも効率的に洗浄することが可能になる。
【0016】
本発明の洗浄方法によれば、上部の汚染が少なく落ちやすい時は、汚染機器内面の上部の付着物が除去されるまで、噴射洗浄工程と分解洗浄工程とを同時に実施し、その後は、コイル等の各内部部材に残留するPCB等濃度が、各内部部材の卒業基準値を満たすまで分解洗浄工程を実施することもできる。逆に、上部の汚染が多く落ちにくい時は、先ず、噴射洗浄工程のみ実施し、その後、噴射洗浄工程と分解洗浄工程とを同時に実施することにより、噴射洗浄の間に内部部材からPCB等が溶出するので効率的に洗浄できる。
【0017】
さらに、本発明の洗浄方法では、洗浄液中のPCB等の含有量は次第に低くなっていくことから、噴射洗浄用の洗浄液にも、最初に汚染機器内に充填した洗浄液を繰り返し使用することが可能になるため、経済的である。このように、トータルの洗浄液の量が少ないため、洗浄終了後の洗浄液を再生する際の負荷を低減することもできる。洗浄液を噴射ノズルを経由して汚染機器の中に充填することにより、最初は完全にフレッシュな溶媒で洗浄することができる。
【0018】
本発明の洗浄方法においては、水素供与性溶媒をベースとする洗浄液で、特に濃度2.0重量%以下のアルカリを含有する水素供与性溶剤からなる洗浄液が好ましい。該洗浄液を使用することにより、噴射洗浄工程や分解洗浄工程において溶解もしくは溶出したPCB等を効率的に分解することが可能になる。さらに、触媒充填装置内の洗浄液へマイクロ波を照射することにより、PCB等の分解を促進することが可能となる。
【0019】
また、本発明の洗浄方法においては、水素供与性溶剤が、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、1−ペンタノール、t−ブチルアルコール、1−オクタノール、メタノール、エチレングリコールまたはイソペンチルアルコールであることが好ましく、アルカリがKOHおよびNaOHから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の洗浄方法においては、触媒が、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物および金属担持複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることが好ましい。触媒使用量(重量)は、洗浄液(体積)に対して0.5〜5.0%であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の洗浄方法においては、有機ハロゲン化合物がポリ塩化ビフェニールであることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、汚染機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配される洗浄液を噴射可能なノズルと、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒が充填され且つ洗浄液が流通可能に構成された触媒充填装置と、を備えていることを特徴とする汚染機器の洗浄システムを提供する。
【0023】
本発明の洗浄システムにおいては、機器の開口面近傍に配される噴射ノズルによって、機器内面の上部を洗浄することが可能となり、同時に、噴射洗浄で除去した有機ハロゲン化合物や内部部材から溶出してきた有機ハロゲン化合物を、連続して効率的に分解することが可能となる。前記触媒充填装置は、マイクロ波発振装置を備えているので、洗浄液が触媒層を流通する際に、必要に応じてマイクロ波を照射することが可能となる。
【0024】
また、本発明の洗浄システムにおいては、汚染機器に充填された洗浄液が、前記ノズルおよび触媒充填装置を介して循環するように構成されていることが好ましい。
【0025】
また、本発明の洗浄システムにおいては、汚染機器に充填された洗浄液を、汚染機器に取り付けられていたラジエータを取り外した後にできた開口またはドレン弁から排出し、排出した洗浄液を前記ノズルまたは触媒充填装置に供給するように構成されていることが好ましい。
【0026】
また、本発明の洗浄システムにおいては、前記ノズルが回転式洗浄ノズルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、PCB等の有機ハロゲン化合物が残存している汚染機器、特に大型変圧器等の汚染機器を、内部部材を内蔵している状態で、簡易にかつ経済的に無害化処理することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る汚染機器の洗浄方法およびシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明で洗浄の対象とする汚染機器は、前処理工程において機器に入っていた有機ハロゲン化合物を含有する絶縁油が、排油口抜き、ポンプ上抜き、傾倒排油等の任意の方法で抜き出された後、コイル等の内部部材が入っているもので、有機ハロゲン化合物を含有する絶縁油が少量程度残っている状態のもの、または予備洗浄後の残渣に有機ハロゲン化合物が少量程度残っている状態のものである。
【0029】
上記汚染機器としては、柱上変圧器、大型変圧器等が挙げられるが、ここで大型変圧器とは絶縁油容量が100L〜30万Lのものを言う。
【0030】
有機ハロゲン化合物としては、PCB、ダイオキシン類等を挙げることができ、その種類は特に限定されるものではない。PCB市販品としては、例えば、鐘淵化学(株)のKC−200(主成分:2塩化ビフェニール)、KC−300(主成分:3塩化ビフェニール)、KC−400(主成分:4塩化ビフェニール)、KC−500(主成分:5塩化ビフェニール)、KC−600(主成分:6塩化ビフェニール)や、三菱モンサント(株)のアロクロール1254(54% Chlorine)等を挙げることができる。
【0031】
図1および図2は、本発明に係る汚染機器の洗浄システムの一実施形態を説明する図である。該洗浄システムは、汚染機器の天面(すなわち、機器上蓋)(1d)の開口部(1c)を介して機器内部の天面近傍に配される洗浄液を噴射可能なノズル4と、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒が充填され且つ洗浄液が流通可能に構成された触媒充填装置14と、を備えている。シャワーノズル4は、汚染機器1に充填した洗浄液2を用いて、汚染機器1の内面および内部部材3を洗浄する役割をする。触媒充填装置14は、充填された触媒により洗浄液に含まれている有機ハロゲン化合物を分解する役割をする。
【0032】
洗浄の対象となる汚染機器1には、蓋の開口部(フランジ接続部など)を利用して、あるいは新たに設けた開口部を利用して、ノズル4を汚染機器の上蓋開口部(1c)近傍に配置する。汚染機器の中に充填した洗浄液は、ポンプ5および導管6によってノズル4に供給可能に構成されている。
【0033】
ノズルは、汚染機器の少なくとも内面の上部(上部壁面(1a)および上蓋内面)を隈なく均一に噴射できるもの、あるいは油の付着量が多い絶縁油と空気の界面に対してのみ直接噴射することができるものなどを使用することができる。
【0034】
触媒充填装置は、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒が充填され且つ洗浄液が流通可能に構成されたものを使用することができる。該触媒充填装置には、触媒および洗浄液にマイクロ波を照射するためのマイクロ波発振装置が備えられていると、触媒層を流通する洗浄液および触媒にマイクロ波を照射することが可能となる。汚染機器の中に充填した洗浄液は、ポンプ11およびライン12,13によって触媒充填装置14に供給可能で、その後機器へ戻すことができるように構成されている。
【0035】
上記の装置を用いた洗浄方法および洗浄システムについて、図1および図2を参照しながら詳細に説明する。図1および図2において、1が汚染機器、2が洗浄液、3がコイル、4がノズル、10がマイクロ波発振装置、14が触媒充填装置である。図1は大型変圧器の洗浄に好適な洗浄システムの概略図であり、排出口7はラジエータ取り外し後の開口、排出口8はドレン弁を利用したものである。図2は柱上変圧器の洗浄に好適な洗浄システムの概略図である。
【0036】
先ず、汚染機器1の中に洗浄液2を、内部部材のコイル3が完全に浸る高さ(1b)まで充填する。この高さまで充填しておけば、コイルの隙間に浸透あるいはコイルの絶縁紙や紙に含浸しているPCB等を、経時で徐々に洗浄液の中に拡散・溶出させることが可能となるからである。これ以上の高さの内面(1a)には、絶縁油の空気酸化によって生成した変性物が付着している恐れがあるため、洗浄液に浸漬しただけでは該変性物中の有機ハロゲン化合物を除去することは余計に時間がかかる恐れがあったり、あるいは困難であり、噴射洗浄による方が効率的で除去効果も大きいからである。
【0037】
洗浄液を充填する際には、洗浄液タンク20からノズル4を経由して洗浄液を充填すれば、最初はフレッシュな溶媒で噴霧洗浄することができるので洗浄効果が高く、しかも装置の簡素化にもなるため、好ましい。
【0038】
噴射洗浄工程においては、汚染機器の内面の上部(1a)に、機器内の洗浄液2を、機器上蓋の開口部(1c)を介して該機器内部の天面近傍に配された洗浄液噴射ノズル4より噴射させ、該汚染機器内面および上蓋内面を噴射洗浄する。この際、図示していないが、コイルより高位置に設置されている鉄枠、端子、リード線を洗浄することも可能である。噴射洗浄することにより、内面上部に付着している頑固な絶縁油の変性物汚れ中の有機ハロゲン化合物をも除去することが可能となる。噴射洗浄時は、ノズルの向きを洗浄液の水流により回転させながら洗浄液を噴射してもよい。ノズルは回転式洗浄ノズルが好ましく、特に液圧駆動・回転式洗浄ノズルは安全である。
【0039】
ノズルから噴射する洗浄液の圧力は、汚染機器の容量によって異なり、吐出部において0.05〜10MPa程度、洗浄液の噴出量は1〜2000L/min程度、とすることが洗浄効果の点で好ましい。洗浄時間は、絶縁油の付着量や付着物の種類によっても異なるが、約8時間〜30日である。洗浄温度は、PCB等の溶解度を高めるためには高い方が好ましい。但し、洗浄温度が高すぎると溶媒が蒸発して洗浄効率が著しく低下する恐れがあるため、洗浄液の温度は常温〜60℃程度にすることが最も好ましい。
【0040】
ノズルから噴射された洗浄液によって、機器内面の上部にこびりついていた絶縁油を物理的に剥離させるとともに、洗浄液中に溶解させる。噴射洗浄後の洗浄液は、下方に流下して機器に充填した洗浄液2と混ざる。噴射洗浄は、機器内の洗浄液を循環させながら、機器内面および上蓋内面の汚れが除去されるまで、相応の時間実施する。
【0041】
洗浄液としては、イソプロピルアルコール(IPA)等の水素供与性の溶剤をベースとするものが好ましく使用される。洗浄液中の有機ハロゲン化合物を還元分解するには、水素が必要であるが、別途水素を供給するとなると、防爆装置が必要となり安全性も懸念される。しかし、洗浄液に水素供与体が含まれていれば別途水素を供給する必要がない。したがって、洗浄液には、有機ハロゲン化合物を溶解させる溶剤としての機能と、有機ハロゲン化合物を分解させるための水素供与体としての機能との、2つの機能が要求される。水素供与性の溶剤としては、イソプロピルアルコール以外でも、シクロヘキサノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、1−ペンタノール、t−ブチルアルコール、1−オクタノール、メタノール、エチレングリコール、イソペンチルアルコール等を使用することができる。
【0042】
洗浄液には、低濃度のアルカリを含有させることが好ましい。アルカリとしては、脱ハロゲン化効率が高く、コストおよびハンドリング性に優れている観点より、KOHまたはNaOHが好ましい。アルカリは、単独でまたは2種以上を任意に組合わせて使用することができる。アルカリは、有機ハロゲン化合物の分解により脱離した塩素を中和する中和剤となるため、中和剤の量が多すぎても経済性に劣り、少なすぎると反応速度が低下することになる。アルカリは、汚染機器内の有機ハロゲン化合物のハロゲンに対し1.0〜1.5倍当量(より好ましくは1.1〜1.2倍当量)を洗浄液中に含有させるようにするのがよいと考えられるが、実際にはこれでは濃度が低すぎて反応が進まない。そこで、低濃度PCB混入油の処理で得た知見と、容器処理では残油が反応液としては70〜170倍に希釈されることを考慮し、容器処理時のアルカリは残油量の1〜20重量%を添加するのが好ましい。そのように調製したときの洗浄液中のアルカリ濃度は、通常、2.0重量%以下、具体的には0.01〜2.0重量%になる。アルカリ濃度が0.01重量%未満の場合は反応速度が低下し、2.0重量%を超えても反応速度は上がらず、頭打ちになる。
【0043】
一方、分解洗浄工程においては、汚染機器1内の洗浄液2を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置14に流通させながら、循環させることにより、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する。この際、コイルに含浸されている有機ハロゲン化合物が洗浄液の中に溶出し、洗浄液量によっては鉄枠の内部部材に付着している有機ハロゲン化合物も洗浄液の中に溶出する。
【0044】
分解洗浄工程では、アルカリ濃度が低下すると有機ハロゲン化合物の分解効率が低下するおそれがある。そのため、アルカリ濃度が0.01〜2.0重量%の範囲を保持するよう、必要に応じて、アルカリを適時添加することが好ましい。
【0045】
汚染機器に充填された洗浄液は、ノズルおよび触媒充填装置を介して循環するように構成されている。機器内に充填した洗浄液は、触媒充填装置に循環洗浄させるためにポンプ11を介して循環を開始すると、配管および触媒充填装置の中にも入り込むので、循環させながら洗浄液の量を調整してもよい。或いは、あらかじめ配管および触媒層吸収分を加味して洗浄液を添加してもよいし、あらかじめ配管内に洗浄液を満たしてから循環を開始してもよい。洗浄液は機器内のコイルが完全に浸るまで充填されていることが不可欠である。なお、触媒は初期活性が高いため、循環洗浄の前に洗浄液に接触させないようにする方が好ましい。
【0046】
機器内の洗浄液の量を調整した後、図1,図2に示すように、ポンプ5およびポンプ11を介して、ノズル4およびマイクロ波装置10内に設置された触媒充填装置14へ供給する。この際、大型変圧器では、機器内の洗浄液を、排出口7から排出し、触媒充填装置14に供給するようにすれば、液循環が円滑になるため洗浄効率が高くなる。同様の理由から、機器内の洗浄液を排出口8から排出してノズル4に供給する。排出口7,8としては、汚染機器に採り付けられていたラジエータを取り外した後にできた開口(大型変圧器では通常4〜8箇所)、或いはドレン弁を利用するのがよい。
【0047】
図に示す触媒充填装置14には、図示を省略しているが、有機ハロゲン化合物を分解しうる触媒が充填された触媒充填層が形成されている。洗浄液2は、図中の矢印で示すように、ポンプ11、供給ライン12を介して触媒充填装置14に導入され、導入された洗浄液は触媒充填層を流通した後、回収ライン13を介して変圧器内へ戻されるように構成されている。この際、触媒充填装置を流通する際の洗浄液の量は、0.1〜10L/min程度とすることが、分解効率の点で好ましい。
【0048】
触媒充填装置に充填する触媒としては、有機ハロゲン化合物(特に、PCB)の脱ハロゲン化反応を促進しうるものであれば限定されないが、無機系触媒は触媒寿命が長く、かつ、アルカリ化合物存在下でも安定であるため、有機系触媒よりも好ましい。無機系触媒としては、脱ハロゲン化効率を高める観点より、複合金属酸化物、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物、金属担持複合金属酸化物および金属酸化物等が好ましく用いられる。中でも、アルカリ性雰囲気で安定性が高い点より、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物および金属担持複合酸化物が好ましく、特に金属担持炭素化合物が好ましい。これらの触媒は、単独でまたは2種以上を任意に組合せて使用することができ、再生触媒を使用してもよい。
【0049】
触媒使用量は、洗浄対象物(汚染機器)の種類または汚染度合によって、適宜決定すればよい。触媒が少なすぎると、有機ハロゲン化合物の分解効率が悪くなるため洗浄時間が長くなったり、或いは、触媒を洗浄途中で取り換える必要性が生じたりするために却って非効率となる。一方、触媒が多すぎると不経済である。通常、触媒(重量)は、洗浄液(体積)に対して0.5〜5.0%使用することが好ましい。
【0050】
金属担持炭素化合物としては、金属を担持した炭素化合物であればよく、その金属担持量は、触媒全量に対して0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。担持される金属としては、例えば、鉄、銀、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム等が挙げられ、脱ハロゲン化効率を高める観点より、パラジウム、ルテニウム、白金が好ましいが、特にパラジウムが好ましい。金属担持炭素化合物の具体例としては、例えば、Pd/C(パラジウム担持炭素化合物)、Ru/C(ルテニウム担持炭素化合物)、Pt/C(白金担持炭素化合物)等が挙げられる。アルカリ化合物存在下で安定なものであれば、ポリエチレン等の樹脂に金属を担持した触媒も使用することができる
【0051】
触媒の形状は、粒状のものでもハニカム状のものでもよい。粒状の場合はカラムの上下をメッシュ等で固定する必要があり、その場合の粒子径は75μm〜10mmが好ましい。10mmを超える場合は比表面積が不足し、75μm未満の場合はメッシュが詰まり差圧が高くなる。より好ましくは150μm〜5mmが望ましい。触媒粒子は、できるだけ粒子径のそろったものがよい。
【0052】
機器内の洗浄液を触媒充填装置に流通させ、有機ハロゲン化合物を触媒と接触させながら、該機器内で循環洗浄することにより、機器のコイル等に残留している有機ハロゲン化合物は徐々に洗浄液に溶解もしくは溶出する。同時に、洗浄液が触媒に接触することにより、洗浄液に混ざり込んだ残留有機ハロゲン化合物が、洗浄液から供給される水素と反応して脱塩素化分解する。
【0053】
分解洗浄工程における循環洗浄は、洗浄液を触媒充填装置に流通させながら循環させる状態で、所定時間、継続して行うことが好ましい。その間、適宜洗浄液中の有機ハロゲン化合物濃度を測定することにより、反応の進行状況を確認することができる。基本的には循環洗浄工程は、少なくとも噴射洗浄工程が実施されている間、継続的もしくは断続的に実施する。
【0054】
洗浄液を触媒充填装置に流通させる際には、触媒充填装置内で洗浄液にマイクロ波発振装置10によりマイクロ波を照射することによって、有機ハロゲン化合物の分解を促進することができる。マイクロ波は連続的または断続的に照射すればよい。この場合、マイクロ波の出力、周波数は、設定する洗浄条件に応じて適宜決定することができるが、周波数1〜300GHzのマイクロ波を電気的に制御しながら、10W〜20kWの範囲で照射することが好ましい。この場合も、洗浄時の液温は常温以上60℃以下が好ましい。常温未満では有機ハロゲン化物の分解が遅いため処理時間が長くなり、温度が高すぎると副生物やダイオキシン類が生成しやすくなるからである。
【0055】
噴射洗浄工程および分解洗浄工程を同時に実施することにより、汚染機器の容器(ケース)および内部部材を無害化することが可能になる。洗浄はここで終了してもよいが、噴射洗浄工程が終了した後、さらに分解洗浄工程のみを実施することにより、特に内部部材に残存する有機ハロゲン化合物を所定の卒業基準を満たすまで無害化処理することが可能になる。分解洗浄時間はコイルの大きさ、絶縁油の付着量や付着物の種類によっても異なるが、約2日〜30日である。
【0056】
以上の方法により、コイル等の内部部材に残留している有機ハロゲン化合物が卒業基準を満たすまで循環させることにより、汚染機器を内部部材も含めて無害化することができる。
【0057】
洗浄処理終了後、洗浄液を汲み上げポンプ等により機器から抜き出し、機器を液切りした後、鉄製の容器(ケース)と内部部材とに解体する。内部部材は鉄芯とコイル(銅線)と碍子とに分解し、コイルは破砕した後に銅と紙・木等とに分解する。分解した各部材は、部材ごとに所定の卒業基準値を満たしているかどうかを、分析により確認する。その後、部材をリサイクルする。
【0058】
本発明に係る洗浄方法によれば、汚染機器を解体前に内部部材も含めて無害化処理することができるが、該洗浄方法による処理を実施した後に、万一、容器(ケース)または内部部材が卒業基準値を満たしていない場合は、従来公知の洗浄方法を用いてさらに洗浄すればよい。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の洗浄方法およびシステムを適用して汚染機器を洗浄した例を、図3の概略フロー図を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0060】
(部材からのPCB事前溶出処理=噴射洗浄工程)
あらかじめドレン弁より絶縁油(絶縁油中にPCB5.7ppmを含む)を排油した1300L容大型変圧器(残油量は約28L)(1)から、上下2箇所でフランジ接続されているラジエータ計4基を取り外し、本体側の下部接続部(7)4箇所に、それぞれマイクロ波分解用循環ポンプ(11)4台を接続し、上部接続部4箇所には閉鎖板を設置した。また、ドレン弁(8)には本体循環ポンプを接続した。
続いて、IPAの入った溶媒タンク(20)にKOHを加え(KOHはあらかじめ適量のIPAに溶解)、循環ポンプ(5)を使って、変圧器の蓋を貫通して本体天面近くに設置したシャワーノズル(スプレーイングシステムス社製、液圧駆動・回転式洗浄ノズルD25468)(4)を介して、変圧器内に洗浄液(IPA600L(内部部材が十分に浸る量、残油に対して約21倍)とKOH1200g(洗浄液に対し0.2%、残油量に対し4%)の混合溶液)を噴霧添加し、20L/分にて2日間(8時間/日)本体内を循環運転した。大型変圧器内のコイル(3)は洗浄液に浸漬していた。
【0061】
(容器洗浄処理)
その後、大型変圧器内の洗浄液(2)を、大型変圧器外部に設置した4台のマイクロ波出力最大1kW、処理槽容量約50Lの処理装置へ、循環量1L/分のマイクロ波分解用循環ポンプ(11)4台を用いて通液した。処理槽において、マイクロ波発振装置(10)によりマイクロ波を照射させながらパラジウムを担持した活性炭触媒層(14)(2kg×4台)を通過させた後、洗浄液は1台の帰還タンク(15)にまとめ、帰還ポンプ(16)を用いて大型変圧器蓋部に設置した貫通管から変圧器内に戻すことで、循環運転を行った。なお、帰還ポンプは帰還タンク内のレベル制御により間欠運転を行った。洗浄処理においては処理温度を60℃に保ちながらマイクロ波を8時間照射して液を循環させ、その後16時間はマイクロ波照射、ポンプ共に停止させた。また、本体循環ポンプも、マイクロ波分解用循環ポンプと同様の運転を行った。このような状態にて5日間洗浄処理を行った。
【0062】
容器洗浄処理を行っている期間中、処理日数0日、1日、3日、5日目に、PCB濃度を測定し、PCB濃度が基準値(0.5ppm)以下に保たれ、かつ減少していくことを確認した。
【0063】
柱上変圧器内のコイルを吊り上げ、薬液が垂れなくなるまで液切りをしたのち、以下に記述する卒業判定方法にて、柱上変圧器内壁、コイル部の鉄、銅、碍子、紙、木に残留するPCB量を分析した。
【0064】
なお、PCB濃度は、ポリシロキサンDB−5MS(カラム長さ30m)(Agilent Technologies社製)をキャピラリーカラムとする島津製作所製のガスクロマトグラフィー質量分析計QP5050Aを用いて分析した。
【0065】
(卒業判定)
柱上変圧器内壁部を有機溶剤(トルエン、ヘキサン、または第4石油類に属する有機溶剤)を浸した脱脂綿(1.5g)またはガラスウール(20g)を用いて500cmの範囲を拭取り、拭取り試験用試料とした(鉄(本体))。
【0066】
コイル部を分解し、材料別に鉄、銅、碍子、紙、木に分別をした。
【0067】
鉄(コイル部)については、巻いてある状態のものを広げ表面部を有機溶剤(トルエン、ヘキサン、または第4石油類に属する有機溶剤)を浸した脱脂綿(1.5g)またはガラスウール(20g)を用いて約500cmの範囲を拭取り、拭取り試験用試料とした。
【0068】
銅、碍子については、有機溶剤(トルエン、ヘキサン、または第4石油類に属する有機溶剤)を用い、金属製容器(深型バット)に部材を入れ、これに部材重量と同重量の有機溶剤を加えて洗浄した。
【0069】
各材料毎に、液に浸漬し超音波洗浄を行った。銅、碍子は試料1つに対して洗浄容器に試料を入れ6時間超音波洗浄を実施し、分析試料とした(平成4年厚生省告示第192号、改正平成10年8月第222号;別表第2の第三に準拠)。
【0070】
紙材料は、コイルの外側、中、内側の部分を採取し10cm以下に裁断し、縮分にて試料160gを採取した。160g採取した試料を3cm以下に裁断し、分析試料とした。
【0071】
木材料はコイルの中間部の木材料およびコイル上部にあるプレスボードをそれぞれ採取し試料とした。
【0072】
コイルの中間部の木材は全ての部分を5cm以下に裁断し、縮分にて試料160gを採取した。50g採取した試料を2mm目のふるいを通過する大きさに裁断し、分析試料とした。
【0073】
コイル上部のプレスボードは5cm以下に裁断し、縮分にて試料160gを採取した。150g採取した試料を2mm目のふるいを通過する大きさに裁断し、分析試料とした。
【0074】
本体の拭取り試料、および鉄、銅、碍子の有機溶剤抽出液については、PCB濃度分析を行い、紙、木材については、溶出試験(平成16年環境省告示第31号に基づく)を行った。これらの分析結果を表1にまとめて示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、柱上変圧器本体および付属部材は、全て卒業基準を満たしていた。
【0077】
洗浄処理に使用した薬液(処理液)中のPCB濃度は、処理開始から処理終了まで
表2に示すように0.5mg/kg以下で推移した。また、処理終了後の液中のダイオキ
シン類の濃度は、表3に示すが、ダイオキシン等の生成はなかった。なお、ダイオキシン類の測定法はJIS K 0311に準拠した。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る洗浄方法および洗浄システムは、PCB等が入っていた変圧器(特に、大型変圧器)の洗浄処理に極めて優れた効果を発揮するが、その他、一次洗浄処理がなされた変圧器等の容器(ケース)の無害化洗浄処理にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る汚染機器の洗浄システムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係る汚染機器の洗浄システムの一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明に係る汚染機器の洗浄方法の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、
該汚染機器に充填された洗浄液を、該機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配された噴射ノズルより噴射させ、該機器および上蓋の内面を洗浄する噴射洗浄工程と、
該汚染機器に充填された洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程と、を同時に実施することを特徴とする汚染機器の洗浄方法。
【請求項2】
汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、
該汚染機器に充填された洗浄液を、該機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配された噴射ノズルより噴射させ、該機器および上蓋の内面を洗浄する噴射洗浄工程と、
該汚染機器に充填された洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程と、を同時に実施し、
その後、前記分解洗浄工程のみ実施することを特徴とする汚染機器の洗浄方法。
【請求項3】
汚染機器の中に、該機器内のコイルが完全に浸るまで洗浄液を充填した後、
該汚染機器に充填された洗浄液を、該機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配された噴射ノズルより噴射させ、該機器および上蓋の内面を洗浄する噴射洗浄工程を実施し、
その後、該汚染機器に充填された洗浄液を、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒を充填した触媒充填装置に流通させながら循環させ、洗浄液が含有する有機ハロゲン化合物を分解する分解洗浄工程と、前記噴射洗浄工程とを同時に実施することを特徴とする汚染機器の洗浄方法。
【請求項4】
汚染機器の中への洗浄液の充填を、噴射ノズルを経由して行う請求項1〜3のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液が、濃度2.0重量%以下のアルカリを含有する水素供与性溶剤である請求項1〜4のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項6】
前記分解洗浄工程において、触媒充填装置内の洗浄液へマイクロ波を照射する請求項1〜5のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項7】
水素供与性溶剤が、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、1−ペンタノール、t−ブチルアルコール、1−オクタノール、メタノール、エチレングリコールまたはイソペンチルアルコールである請求項5に記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項8】
アルカリが、KOHおよびNaOHから選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項9】
触媒が、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物および金属担持複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項10】
触媒使用量(重量)が、洗浄液(体積)に対して0.5〜5.0%である請求項1〜9のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項11】
有機ハロゲン化合物がポリ塩化ビフェニールである請求項1〜10のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項12】
汚染機器が柱上変圧器または大型変圧器である請求項1〜11のいずれかに記載の汚染機器の洗浄方法。
【請求項13】
汚染機器の上蓋開口部を介して該機器内部に配される洗浄液を噴射可能なノズルと、有機ハロゲン化合物を分解可能な触媒が充填され且つ洗浄液が流通可能に構成された触媒充填装置と、を備えていることを特徴とする汚染機器の洗浄システム。
【請求項14】
前記触媒充填装置が、洗浄液にマイクロ波を照射するためのマイクロ波発振装置を備えている請求項13に記載の汚染機器の洗浄システム。
【請求項15】
汚染機器に充填された洗浄液が、前記ノズルおよび触媒充填装置を介して循環するように構成されている請求項13または14に記載の汚染機器の洗浄システム。
【請求項16】
汚染機器に充填された洗浄液を、汚染機器に取り付けられていたラジエータを取り外した後にできた開口またはドレン弁から排出し、排出した洗浄液を前記ノズルまたは触媒充填装置に供給するように構成されている請求項13〜15のいずれかに記載の汚染機器の洗浄システム。
【請求項17】
前記ノズルが回転式洗浄ノズルである請求項13〜16のいずれかに記載の汚染機器の洗浄システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−233654(P2009−233654A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6368(P2009−6368)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】