説明

油圧制御装置

【課題】油圧アクチュエータにかかる負荷に対応した適切なリリーフ圧に調整することが可能な油圧制御装置を提供すること。
【解決手段】タンク13内の作動油を送り出す油圧ポンプ11と、その油圧ポンプ11から供給される作動油によって駆動する油圧アクチュエータ10と、油圧ポンプ11によって油圧アクチュエータ10に供給される作動油の流れを制御する制御弁12と、作動油が流れる油圧回路の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁15と、油圧アクチュエータ10を動作させる作動油の圧力を計測する一対の圧力計測器17,18と、その圧力計測器17,18によって計測された圧力値に基づいて電磁比例リリーフ弁15を調整するコントローラ20とを有する油圧制御装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モータや油圧シリンダなど、油圧施工機を構成する油圧アクチュエータを駆動制御するための油圧制御装置に関し、特に油圧回路内の圧力を所定値内に保持するリリーフ弁について、その設定値を作業に応じて自動的に調整するようにした油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、土木等の基礎工事では、例えばケーシングや鋼管杭を地盤に回転圧入するために高トルクの回転を発生させるチュービング装置が使用される。そのチュービング装置は、ケーシングや鋼管杭を把持するチャック機構を備え、把持したケーシングなどに回転力を与える油圧モータや、ケーシングなどを昇降させる油圧シリンダなどの油圧アクチュエータが設けられている。チュービング装置では、こうした油圧アクチュエータが油圧ポンプに接合され、供給される作動油によって駆動するように油圧回路が構成されている。そして、その油圧回路には路内の圧力を設定値に保つように圧力制御を行うリリーフ弁が設けられている。
【特許文献1】特開平11−292474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、チュービング装置では、一台で径の異なる複数のケーシングを取り扱えることが望まれている。その場合、径の異なるケーシングや鋼管杭を把持するため、サイズに合わせてチャック機構のチャック爪を取り替えたり、油圧アクチュエータの回転トルクや押込み力を調節する必要がある。大径ケーシングを施工するときの回転トルクで小径ケーシングを回転圧入させると、その大きな回転トルクによって剛性の低い小径ケーシングが無理にねじられて変形し、更にはねじ切れてしまうことがあるからである。その際、例えば油圧モータから小さな回転トルクを出力させるようにするためには、油圧回路に設けられたリリーフ弁の設定圧を下げることが行われる。
【0004】
しかし、リリーフ圧を低く設定すると、油圧回路内を流れて油圧モータに供給される作動油は、配管内の抵抗によって圧力損失を受けて油圧モータに達したところで十分な圧力が得られなくなる。例えば、油圧ポンプにプランジャポンプを使用する場合、そのプランジャポンプで行う馬力制御は低圧力の時ほど流量が増えるため、管内の作動油圧力が高まってしまってリリーフ弁から作動油が排出され、油圧モータが駆動しなくなる。
また、小径ケーシングに対して回転トルクを低い値で制限する場合は、先ず制限したい負荷時の最大流量でリリーフ弁の設定圧力を調整する。しかし、リリーフ弁は、図6に示すように、流量が減少するとリリーフ圧が設定した値よりも低下してしまう特性があるため、小径ケーシングを低速で回転させる場合は、油圧ポンプからの流量が減るためリリーフ圧が低下してしまって制限したい値まで油圧モータの負荷が上がらない。
【0005】
昇降用の油圧アクチュエータである油圧シリンダは、フレームやチャック機構などチュービング装置自身の重量やケーシングの重量が荷重としてかかっている。そのため、リリーフ圧をケーシングの引抜き負荷を考慮して設定するには、ケーシングや装置自身の荷重を差し引かなければ実際の引抜き力が得られず、圧力設定は面倒な作業であった。
そこで従来は、例えば大径のケーシングなどを扱う大型のチュービング装置で小径のケーシングを扱うことが困難であったため、様々なサイズのケーシングに対応したチュービング装置を用意しなければならなかった。
【0006】
よって、本発明は、かかる課題を解決すべく、油圧アクチュエータにかかる負荷に対応した適切なリリーフ圧に調整することが可能な油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る油圧制御装置は、タンク内の作動油を送り出す油圧ポンプと、その油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する油圧アクチュエータと、油圧ポンプによって油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する制御弁と、作動油が流れる油圧回路の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁と、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の圧力を計測する一対の圧力計測器と、その圧力計測器によって計測された圧力値に基づいて電磁比例リリーフ弁を調整するコントローラとを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る油圧制御装置は、前記コントローラが、作業時に受ける負荷に対応したリリーフ圧を特定するための制御データを格納し、前記圧力計測器の計測値から実質負荷を求め、その実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る油圧制御装置は、前記油圧アクチュエータが油圧モータであって、前記圧力計測器は、その油圧モータを動作させる作動油の入力側と出力側の両方に設けられ、前記コントローラは、作業時に受ける負荷に対応したリリーフ圧を特定するための制御データを格納し、2つの圧力計測器の計測値から差圧を実質負荷として求め、その実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る油圧制御装置は、前記コントローラに格納された制御データが、作業時に受ける負荷が大きくなるに従いリリーフ圧を低下させるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る油圧制御装置は、前記コントローラに格納された制御データが、作動油の流量減少に伴いリリーフ圧が設定した値よりも低下するリリーフ弁の特性に従って形成したものであることが好ましい。
また、本発明に係る油圧制御装置は、前記コントローラが、作業時に受ける最大負荷や前記油圧ポンプから送られる流量に対応した複数の制御データを有し、制限したい最大負荷の入力により、前記油圧ポンプの最大流量に対応した制御データが選択され、その制御データから前記実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る油圧制御装置は、前記コントローラが、前記圧力計測器の計測値から求めた実質負荷と前記最大負荷とを比較し、実質負荷が最大負荷を超えた場合には、別の制御データを選択し、その制御データから実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明の油圧制御装置によれば、油圧アクチュエータを駆動させる作動油の圧力から実質負荷を算出し、制御データを基にリリーフ圧を自動制御することで、油圧アクチュエータにかかる負荷に対応した適切なリリーフ圧に調整することが可能になる。
そのため本発明では、例えば強度の低い小径ケーシングなどを打ち込む場合、打ち込みはじめの負荷が小さいときには回転トルクが大きくてもケーシングへの影響はないためリリーフ圧を高くしたまま作業を行い、その一方で、打ち込み深さに従って負荷も大きくなってきたときには、負荷に合わせてリリーフ圧を下げてケーシングへ過剰な回転トルクが作用しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係る油圧制御装置について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、チュービング装置を構成する油圧制御装置であって、特に油圧アクチュエータとして油圧モータを例に挙げて説明する。ここで図5は、チュービング装置を示した図である。
チュービング装置100は、中心をケーシング200が貫通し、それをチャック101によって把持する。それには、チャックシリンダ102の収縮によりチャックフレーム103が下降し、複数のチャック101がケーシング200とコーン104との間に強く差し込まれ、ケーシング200がチャック101によって軸心方向に押し付けられて把持される。
【0012】
こうして把持したケーシング200を地盤に回転圧入する場合には、油圧シリンダ110が収縮し、それによって第1ガイド筒112を介してギヤフレーム105が下降し、更にチャックシリンダ102で連結されたチャックフレーム103も同時に下降する。また、油圧モータ120が駆動し、ギヤフレーム105に設けられたコーン104に高トルクの回転が伝達される。従って、チャック101によって把持されたケーシング200が回転しながら地盤に対して圧入される。
【0013】
一方、ケーシング200を引き抜く場合には、昇降シリンダ110が伸び、第1ガイド筒112に固定されたギヤフレーム105が上昇し、更にチャックシリンダ102で連結されたチャックフレーム103も同時に上昇する。従って、チャック101によって把持されたケーシング200は、圧入された地盤から引き抜かれる。このとき油圧モータ120には逆回転が与えられ、圧入時とは逆方向に回転しながらケーシング200が引き抜かれる。
【0014】
次に、このような油圧施工装置1に設けられた油圧制御装置について説明するが、前述したように油圧アクチュエータには油圧モータを例に挙げて説明する。そこで図1は、本実施形態の油圧制御装置を示した回路図である。
この油圧制御装置1には、油圧モータ10に対して作動油を供給する油圧ポンプ11が設けられ、油圧モータ10と油圧ポンプ11とを接続した油圧回路には、油圧モータ10に供給する作動油の入出力を反転させる方向切換弁12が接続されている。方向切換弁12は、図示する中立状態と、Aポート接続そしてBポート接続との切り換えが、操作レバーによってパイロット圧をコントロールすることで操縦できるようになっている。
【0015】
油圧ポンプ11と方向切換弁12とは供給流路21を介して接続されており、方向切換弁12とタンク13とが排出流路22によって接続されている。供給流路21と排出流路22との間には、電磁比例リリーフ弁15を介して接続されている。供給流路21は、電磁比例リリーフ弁15が接続されたリリーフ流路27の他、方向切換弁12の中立ポートへ接続された中立流路25および、方向切換弁12の入力ポートに接続された入力流路26に分岐している。そして、その入力流路26には逆止弁14が設けられ、方向切換弁12からの逆流を防止するようになっている。
【0016】
油圧モータ10は、正転及び逆転が可能であり、給排ポート10a,10bが方向切換弁12との間に正転側流路23と逆転側流路24によって接続されている。なお、この油圧モータ10は、ピストンロッド先端にシューを取付けたスプリングリターン式の油圧シリンダよって制動手段16が設けられている。ところで、方向切換弁12は、供給流路21又は排出流路22と正転側流路23と逆転側流路24との互いの接続を切り換えるようにしたものである。具体的には、方向切換弁12のAポート側の切り換え時に供給流路21と正転側流路23とが接続され、Bポート側の切り換え時に逆転側流路24が供給流路21と接続されるようになっている。
【0017】
また、この油圧施工装置1には、油圧モータ10を駆動させる作動油の入力側圧力と出力側圧力とを計測するため、圧力センサ17,18が正転側流路23と逆転側流路24に接続されている。そして、この圧力センサ17,18から送られた計測値に基づいて電磁比例リリーフ弁15を制御するコントローラ20が設けられている。電磁比例リリーフ弁15は、詳しく図示しないが、例えば弁本体に電磁比例ソレノイドを取付けられ、このソレノイドによって軸方向に移動するプッシュロッド先端のニードルが調整され、その作動量によってリリーフ圧の設定を調整するようにしたものである。そして、コントローラ20は、こうした電磁比例リリーフ弁15の動作を制御してリリーフ圧を調整する制御プログラムが格納されている。
【0018】
次に、本実施形態の油圧制御装置1の動作について、前述したチュービング装置でケーシングを地盤に回転圧入させる場合を想定して説明する。チュービング装置の起動によりエンジンが回転して油圧ポンプ11が駆動する。タンク13内の作動油が油圧ポンプ11によって汲み上げられると、供給流路21を介して油圧制御装置1の油圧回路内に送り込まれる。操作レバーが中立状態の場合、方向切換弁12が図示するように中立ポート状態にある。そのため、供給流路21を流れる作動油は、中立流路25を流れて排出流路22からタンク13へと戻される。
【0019】
そして、ケーシングを地盤に回転圧入させる場合、すなわち油圧モータ10を正転させてチャックによって把持したケーシングに回転を与える場合は、操作レバーによって方向切換弁12がAポート側に切り換えられる。すると、油圧ポンプ11によって汲み上げられた作動油は、供給流路21から入力流路26へと流れ、方向切換弁12を介して正転側流路23へと流れる。そのため、油圧モータ10へ供給された作動油は、油圧モータ10を給排ポート10aから10bへと流れ、その圧力によって油圧モータ10に正回転が発生する。そして、油圧モータ10を通った作動油は、逆転側流路24から方向切換弁12を通って排出流路22へと流れ、再びタンク13へと戻される。
【0020】
一方、ケーシングを地盤から引き抜く場合には、操作レバーによって方向切換弁12がBポート側へと切り換えられる。この場合、油圧ポンプ11によって汲み上げられた作動油は、供給流路21から入力流路26へと流れ、方向切換弁12を介して逆転側流路24へと流れる。そして、油圧モータ10へ供給された作動油は、給排ポート10bから10aへと流れ、その圧力によって油圧モータ10に逆回転が発生する。油圧モータ10を流れた作動油は、正転側流路23から方向切換弁12を通って排出流路22へと流れ、再びタンク13へと戻される。
【0021】
チュービング装置では、こうして油圧モータ10の回転によって把持したケーシングに回転が与えられるが、本実施形態では、大径や小径の各種サイズのケーシングを扱うことができるようにコントローラ20によってリリーフ圧の制御が行われる。そのため、前述したように油圧ポンプ11から供給される作動油によって油圧モータ10に回転が与えられている際、その給排ポート10a,10bの油圧が圧力センサ17,18によって逐次計測され、その計測値がコントローラ20へと送られている。
【0022】
コントローラ20では、圧力センサ17,18の計測値から油圧モータ10の入出力における差圧が求められ、これによって油圧モータ10にかかっている作業時の実質負荷を得ている。そして、コントローラ20には、この負荷に応じたリリーフ圧を特定するための制御データが格納されている。図3は、そうした電磁比例リリーフ弁15を制御するための制御データについて示した図であり、これは油圧モータ10の負荷に対応する電磁比例リリーフ弁15のリリーフ圧を示したものである。こうした制御データは、制限したい最大荷Nや流量に応じて複数設けられている。なお、|A−B|は、圧力センサ17の計測値Aと圧力センサ18の計測値Bの差を示した値であり、正転時と逆転時との両方で算出するため差の絶対値を求めている。
【0023】
チュービング装置では、通常、電磁比例リリーフ弁23のリリーフ圧は、大径ケーシングに対応して設定されている。しかし、小径ケーシングの施工を行う場合には、油圧モータ10から過大な回転トルクを出力させないように、制御データに従ったリリーフ圧制御が行われる。小径ケーシングは、地盤への深さが浅い場合には小径ケーシングにかかる抵抗が小さいため大きな回転トルクを発生させても、小径ケーシングは変形することなく地盤内に回転圧入することができる。しかし、圧入深さが深くなるに従って小径ケーシングが受ける負荷が大きくなるため、大きな回転トルクのまま作業を継続すると小径ケーシングがねじれなどの変形を生じてしまう。そこで本実施形態では、回転抵抗の増加に伴って回転トルクを小さくすべく、油圧モータ10へ供給される作動油の圧力を、リリーフ圧を制御して下げることとした。
【0024】
ここで、図2は、電磁比例リリーフ弁15のリリーフ圧制御を行うフローチャートを示した図である。コントローラ20には、これを実行するための制御プログラムが格納されている。小径ケーシングを施工する場合のチュービング装置で、ケーシングのサイズに合わせてチャック機構のチャック爪が取り替えられる。そして、油圧制御装置1では、大径モードから小径モードへ切り換えられ、コントローラ20によって図2のフローチャートに示すプログラムが実行される。なお、大径モードの場合には電磁比例リリーフ弁15のリリーフ圧が最大に設定され、油圧モータ10から高回転トルクを発生させた作業が行われる。
【0025】
一方、小径モードの場合には、先ずモード切り換えによって図2に示すフローチャートが開始する。そして、作業者によってコントローラ20に対して予め制限したい最大負荷(回転トルク)Nが入力される。すると、その最大負荷Nの値に対応して制御データからリリーフ圧の入力値Kが設定される(S101)。すなわち、作業者がケーシングにかかる最大限の負荷Nを入力することにより、油圧ポンプ11の最大流量に対応した図3に示す制御データが選択され、その制御データから最大負荷Nに対応する入力値Kが設定される。そして、コントローラ20から電磁比例リリーフ弁15へ指令値Kの制御信号が送られ、そこでリリーフ圧の調整が行われる。
【0026】
小径ケーシングの回転圧入は、前述したように油圧ポンプ11から供給される作動油によって油圧モータ10に回転が発生する。そして、その際、圧力センサ17,18によって計測された油圧モータ10の入出力側の各圧力値がコントローラ20へ送信される。コントローラ20では、その計測値A,Bから油圧モータ10の入出力における差圧|A−B|が計算され、その差圧をケーシングにかかる負荷として先に入力した最大負荷Nとの比較が行われる(S102)。そして、この実質負荷|A−B|が最大負荷N以上の場合には(S102:NO)、対応する図3に示す制御データから分かるように制御範囲から外れてしまうため、再度コントローラ20に対して予め制限したい最大負荷(回転トルク)Nを入力し、それに伴う入力値Kの設定をし直す(S101)。
【0027】
一方、実質負荷|A−B|が最大負荷N未満の場合には(S102:YES)次のステップに移り、ケーシングに負荷がかかっているか否かが確認される(S103)。通常は、小径ケーシングが地盤に入り込むまでは抵抗を受けることがないため、ケーシングが抵抗を受けずに実質負荷|A−B|がゼロとなる(S103:YES)。このとき電磁比例リリーフ弁15の設定圧は、図3に示す制御データから最大のリリーフ圧Kmaxになるように制御される(S104)。すなわち、コントローラ20から電磁比例リリーフ弁15へ最大値Kmaxの制御信号が送られ、リリーフ圧の調整が行われる。
【0028】
そして、再び圧力センサ17,18からの計測値から実質負荷|A−B|が算出され、最大負荷Nとの比較が行われる(S102)。施工開始直後は地盤に回転圧入されるケーシングへの抵抗は小さいため、実質負荷|A−B|の値も小さい(S102:YES)。しかし、回転圧入時の抵抗によって小径ケーシングが負荷を受けるようになる(S103:NO)。そこで、電磁比例リリーフ弁15のリリーフ圧は、例えば実質負荷|A−B|=nの場合、図3に示す制御データから、そのn値に対応するリリーフ指令値Kref(リリーフ圧k)になるように制御される(S105)。それには、コントローラ20から電磁比例リリーフ弁15へリリーフ指令値Krefの制御信号が送られ、リリーフ圧の調整が行われる。
【0029】
そして作業が進み、ケーシングが地盤の深くまで打ち込まれると、次第にケーシングにかかる負荷が大きくなり、その値を示す圧力センサ17,18の計測値から得られる差圧|A−B|も大きくなる。そして、コントローラ20では、逐次、ケーシングの実質負荷|A−B|を算出し、図3に示す制御データからその負荷に対応するリリーフ指令値Krefを電磁比例リリーフ弁15へ制御信号として送り、電磁比例リリーフ弁15では油圧回路のリリーフ圧の調整が繰り返し行われる(S102,S103,S105)。そして、更にケーシングの打ち込みが進むと、ケーシングへの回転抵抗が大きくなって実質負荷|A−B|が制御する最大負荷Nを超えてしまう(S102:NO)。
【0030】
こうして負荷が大きくなった場合には、小径ケーシングの変形を防止するため、例えば流量を減少させて油圧モータ10の回転を落とし負荷を小さくして作業を継続する。その際、油圧制御装置1では、油圧モータ10の回転を低速にするため、可変の油圧ポンプ11が作動油の送り流量を減少させる。また、油圧回路を流れる作動油の流量が減ると設定したリリーフ圧が低下する特性を有する。コントローラ20には、図3に示す制御データの他にも流量に応じた制御データが格納されているため、前述したように実質負荷|A−B|が最大負荷N以上(S102:NO)になった場合は、新たに負荷(回転トルク)Nが入力され、別の制御データから最大負荷Nに対応する入力値Kが設定される。
【0031】
そこで、コントローラ20から電磁比例リリーフ弁15へ指令値Kの制御信号が送られ、そこでリリーフ圧の調整が行われる。従って、その後の作業では、図3に示すような別の新たな制御データに基づいて、コントローラ20による電磁比例リリーフ弁15を制御したリリーフ圧調整が繰り返される(S102,S103,S105)。
ところで、これまではケーシングの回転圧入について説明したが、逆にケーシングの引抜きを行う場合には、徐々に抵抗が小さくなって実質負荷|A−B|も小さくなる。そこで、コントローラ20からは、負荷の減少にともなって電磁比例リリーフ弁15へリリーフ指令値Krefの制御信号が送られ、そこでリリーフ圧の調整が行われる。
【0032】
本実施形態の油圧制御装置1では、油圧アクチュエータである油圧モータ10を駆動させる作動油の差圧から実質負荷|A−B|を算出し、制御データを基にリリーフ圧を自動制御することで、油圧アクチュエータにかかる負荷に対応した適切なリリーフ圧に調整することが可能になった。
そのため、強度の低い小径ケーシングなどを打ち込む場合、打ち込みはじめの負荷が小さいときには回転トルクが大きくてもケーシングへの影響はないためリリーフ圧を高くしたまま作業を行い、その一方で、打ち込み深さに従って負荷も大きくなってきたときには、負荷に合わせてリリーフ圧を下げてケーシングへ過剰な回転トルクが作用しないようにすることができた。
【0033】
また、実質負荷を油圧センサ17,18によって計測することで、低負荷などの負荷状態を判断することができるため、リリーフ圧を高くするように電磁比例リリーフ弁15を制御することで、低負荷時にリリーフ弁を通って排出される作動油を無くして油圧アクチュエータによる効率の良い仕事が行わせることができる。
また、油圧センサ17,18の計測値から実質負荷を算出してリリーフ圧を制御するので、油圧モータ10やその他の油圧シリンダなど、油圧アクチュエータの出力を非常に小さい負荷に制限したい場合でも、油圧回路中の圧力損失分や自重分などによる一定圧力に影響されずにリリーフ圧が設定できる。そのため、油圧回路内の圧力がリリーフ圧に近い値でも作業速度が極端に遅くなることはない。
更に、プランジャポンプを使用して作動油の流量を変化させた場合、流量変化によってリリーフ圧が設定した値よりも低下してしまう特性があっても、コントローラ20に格納した制御データによってリリーフ圧を一定に保つことができる。
【0034】
以上、本発明に係る油圧制御装置1について一実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、コントローラ20によって電磁比例リリーフ弁15を制御するための制御データを図4に示したが、流量変化によってリリーフ圧が設定した値よりも低下してしまうリリーフ弁の特性を考慮した図4に示すような制御データを用いるようにしてもよい。これによれば、リリーフ指令値Krefの調整制御幅、すなわち最大負荷Nに対応する入力値Kと最大値Kmaxとの幅を小さくすることができる。
更に、前期実施形態ではチュービング装置に関連して説明したが、油圧制御装置はこの他の施工装置に関するものであってもよい。そして、油圧アクチュエータとしては油圧モータだけでなく油圧シリンダなどであってもよく、その場合、前記実施形態と同様に油圧を計測して実質負荷を算出し、それに応じてリリーフ圧を調整制御するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の油圧制御装置を示した回路図である。
【図2】電磁比例リリーフ弁のリリーフ圧制御を行うフローチャートを示した図である。
【図3】電磁比例リリーフ弁を制御するための制御データについて示した図である。
【図4】電磁比例リリーフ弁を制御するための他の制御データについて示した図である。
【図5】チュービング装置を示した図である。
【図6】リリーフの特性をグラフにして示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 油圧施工装置
10 油圧モータ
11 油圧ポンプ
12 方向切換弁
13 タンク
15 電磁比例リリーフ弁
17,18 圧力センサ
20 コントローラ
21 供給流路
22 排出流路
23 正転側流路
24 逆転側流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の作動油を送り出す油圧ポンプと、
その油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する油圧アクチュエータと、
油圧ポンプによって油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する制御弁と、
作動油が流れる油圧回路の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁と、
前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の圧力を計測する一対の圧力計測器と、
その圧力計測器によって計測された圧力値に基づいて電磁比例リリーフ弁を調整するコントローラとを有することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載する油圧制御装置において、
前記コントローラは、作業時に受ける負荷に対応したリリーフ圧を特定するための制御データを格納し、前記圧力計測器の計測値から実質負荷を求め、その実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載する油圧制御装置において、
前記油圧アクチュエータが油圧モータであって、前記圧力計測器は、その油圧モータを動作させる作動油の入力側と出力側の両方に設けられ、前記コントローラは、作業時に受ける負荷に対応したリリーフ圧を特定するための制御データを格納し、2つの圧力計測器の計測値から差圧を実質負荷として求め、その実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する油圧制御装置において、
前記コントローラに格納された制御データは、作業時に受ける負荷が大きくなるに従いリリーフ圧を低下させるようにしたものであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載する油圧制御装置において、
前記コントローラに格納された制御データは、作動油の流量減少に伴いリリーフ圧が設定した値よりも低下するリリーフ弁の特性に従って形成したものであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載する油圧制御装置において、
前記コントローラは、作業時に受ける最大負荷や前記油圧ポンプから送られる流量に対応した複数の制御データを有し、制限したい最大負荷の入力により、前記油圧ポンプの最大流量に対応した制御データが選択され、その制御データから前記実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載する油圧制御装置において、
前記コントローラは、前記圧力計測器の計測値から求めた実質負荷と前記最大負荷とを比較し、実質負荷が最大負荷を超えた場合には、別の制御データを選択し、その制御データから実質負荷に対応するリリーフ圧のリリーフ指令値を送って前記電磁比例リリーフ弁の調整を行うようにしたものであることを特徴とする油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303584(P2007−303584A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133841(P2006−133841)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】