説明

油圧制御装置

【課題】シフトポジションがドライブポジションに維持された状態で原動機の運転停止により油圧が生成されなくなっても、油圧クラッチへの油圧を調圧するソレノイドバルブに油圧を供給可能とする状態を維持する。
【解決手段】油圧制御装置50のライン圧供給バルブ60は、シフトポジションがドライブポジションであってエンジン12からの動力により駆動されるオイルポンプ29が駆動されているときには、ライン圧PLに基づく圧力により複数のソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側にライン圧PLを供給可能とする供給状態を形成可能であると共に、オイルポンプ29が駆動されないときには、電力により駆動される電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopにより上記供給状態を形成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に付与された動力を複数の油圧クラッチの係脱により変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な車両用自動変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧制御装置としては、複数の摩擦係合要素と、それら複数の摩擦係合要素を係脱させる複数の油圧サーボと、油圧サーボに供給する係合圧を制御する複数の係合圧制御用ソレノイドバルブと、エンジンからの動力により駆動されるオイルポンプからの油圧を調圧してライン圧を生成するプライマリレギュレータバルブと、シフトポジションが走行用ポジションに設定されているときにライン圧に基づいて信号圧を生成するソレノイドバルブと、複数の係合圧制御用ソレノイドバルブに対するライン圧の供給/遮断を上記信号圧に応じて切替自在な元圧切替バルブとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この油圧制御装置の元圧切替バルブは、シフトポジションが走行用ポジションに設定されてソレノイドバルブからライン圧に基づく信号圧が供給されているときには、複数の係合圧制御用ソレノイドバルブにライン圧を供給する供給位置を形成すると共に、シフトポジションがパーキングポジションに設定されてソレノイドバルブからライン圧に基づく信号圧が供給されていないときには、複数の係合圧制御用ソレノイドバルブに対するライン圧を遮断する遮断位置を形成する。このように、複数の係合圧ソレノイドバルブへのライン圧の供給/遮断をシフトポジションに応じて元圧切替バルブにより切替えることで、同様の役割を果たすマニュアルバルブやマニュアルバルブを作動させるためのアクチュエータ、アクチュエータを駆動させるための制御ユニット等を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−84873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような油圧制御装置を搭載した自動車において、例えば、いわゆるアイドルストップ制御の実行により、シフトポジションが走行用ポジションに維持されたままエンジンの運転が停止されることがある。このような場合、エンジンの運転停止に伴ってオイルポンプも停止してライン圧が生成されなくなるため、シフトポジションが走行用ポジションに維持されているにも拘わらず元圧切替バルブは遮断位置を形成する。そのため、エンジンの再始動に伴ってオイルポンプが駆動され、元圧切替バルブにライン圧に基づく信号圧が供給されたとしても、元圧切替バルブを再び遮断位置から供給位置まで切替えるのに時間を要してしまい、係合圧制御用ソレノイドバルブに速やかにライン圧を供給できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明の油圧制御装置は、シフトポジションが走行用ポジションに維持された状態で原動機の運転停止により油圧が生成されなくなっても、油圧クラッチへの油圧を調圧するソレノイドバルブに油圧を供給可能とする供給状態と当該ソレノイドバルブへの油圧の供給を遮断する遮断状態とを切替えるバルブを供給状態に維持することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油圧制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の油圧制御装置は、
入力部材に付与された動力を複数の油圧クラッチの係脱により変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な車両用自動変速機の油圧制御装置において、
前記複数の油圧クラッチに供給する油圧を調圧する複数のソレノイドバルブと、
原動機からの動力により駆動される第1ポンプと、
電力により駆動される第2ポンプと、
前記第1ポンプからの油圧を調圧してライン圧を生成するライン圧生成バルブと、
シフトポジションが走行用ポジションであるときに、前記複数のソレノイドバルブに前記ライン圧を供給可能とする供給状態を形成すると共に、前記シフトポジションが非走行用ポジションであるときに、前記複数のソレノイドバルブへの前記ライン圧の供給を遮断する遮断状態を形成するライン圧供給バルブとを備え、
前記ライン圧供給バルブは、シフトポジションが走行用ポジションであって前記第1ポンプが駆動されているときには、前記ライン圧に基づく圧力により前記供給状態を形成すると共に、シフトポジションが走行用ポジションであって前記第1ポンプが駆動されないときには、前記第2ポンプからの油圧により前記供給状態を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明の油圧制御装置は、原動機からの動力により駆動される第1ポンプと、電力により駆動される第2ポンプと、複数の油圧クラッチに供給する油圧を調圧する複数のソレノイドバルブと、シフトポジションが走行用ポジションであるときに、複数のソレノイドバルブにライン圧を供給可能とする供給状態を形成すると共に、シフトポジションが非走行用ポジションであるときに、複数のソレノイドバルブへのライン圧の供給を遮断する遮断状態を形成するライン圧供給バルブとを備える。そして、当該ライン圧供給バルブは、シフトポジションが走行用ポジションであって原動機からの動力により第1ポンプが駆動されているときには、ライン圧に基づく圧力により供給状態を形成すると共に、シフトポジションが走行用ポジションであって第1ポンプが駆動されないときには、電力により駆動される第2ポンプからの油圧により供給状態を形成する。これにより、シフトポジションが走行用ポジションであるときに、原動機の運転停止に伴って第1ポンプが停止してライン圧が生成されなくなったとしても、電力により駆動される第2ポンプからの油圧によりライン圧供給バルブを供給状態に維持することができる。従って、原動機が再始動され、原動機からの動力により第1ポンプが駆動されると共にライン圧生成バルブによりライン圧が生成された段階から、ライン圧供給バルブを切替える時間を要することなく、当該ライン圧供給バルブを介して複数のソレノイドバルブへと速やかにライン圧を供給することが可能となる。
【0009】
また、前記ライン圧供給バルブは、前記第2ポンプからの油圧を入力する入力ポートを有してもよく、前記第2ポンプの吐出口と前記入力ポートとを接続する油路の途中には、オリフィスが配置されてもよい。これにより、第2ポンプが停止した際に、ライン圧供給バルブから入力ポートおよび油路を介して第2ポンプの吐出口側へと油が急激に流出するのをオリフィスにより抑制することができるため、第2ポンプの停止に伴ってライン圧供給バルブが直ちに供給状態から遮断状態に切替わるのを抑制することが可能となる。
【0010】
更に、前記ライン圧供給バルブは、軸方向に移動自在に配置されるプランジャと、該プランジャと同軸に移動自在に配置されると共に前記供給状態と前記遮断状態とを形成可能なスプールと、該スプールを前記プランジャ側に付勢するスプリングとを含んでもよく、前記スプールは、前記スプリングの付勢力を受ける第1受圧面と、該第1受圧面の反対側に形成されると共に前記第2ポンプからの油圧を受ける第2受圧面とを有してもよく、前記プランジャは、前記スプールの前記第2受圧面と対向すると共に前記第2ポンプからの油圧を受ける第1受圧面と、該第1受圧面の反対側に形成されると共に前記ライン圧に基づく圧力を受ける第2受圧面とを有してもよい。これにより、第1ポンプが駆動されているときには、プランジャの第2受圧面にライン圧に基づく圧力が作用し、プランジャがスプールをスプリングの付勢方向と逆方向に移動させる。すなわち、第1ポンプが駆動されているときには、ライン圧に基づく圧力の作用によりプランジャの第2受圧面に付与される推力がスプリングの付勢力に打ち勝つことで供給状態が保持される。これに対して、第1ポンプが駆動されていないときには、第2ポンプからの油圧の作用によりスプールの第2受圧面に付与される推力がスプリングの付勢力に打ち勝つことで供給状態が保持される。これにより、スプールの第2受圧面をプランジャの第1受圧面よりも大きくすることなく、第2ポンプからの油圧の作用により供給状態を形成することが可能となる。
【0011】
また、前記ライン圧供給バルブは、少なくとも前記供給状態で前記スプールの前記第2受圧面に油圧が作用するように前記第2ポンプからの油圧を入力する第1入力ポートと、少なくとも前記遮断状態から前記供給状態に切替わるまでの間に前記スプールの前記第2受圧面に油圧が作用するように前記第2ポンプからの油圧を入力する第2入力ポートとを含んでもよい。これにより、第2ポンプが駆動されたときに、例えば油温が低いこと等に起因して当該第2ポンプからライン圧供給バルブの第1入力ポートへの油圧の供給が遅れ、スプールの第2受圧面に作用する油圧が不足してライン圧供給バルブが供給状態から遮断状態に切替わってしまったとしても、第2入力ポートに供給された第2ポンプからの油圧をスプールの第2受圧面に作用させてライン圧供給バルブを遮断状態から供給状態へと変化させることができる。
【0012】
更に、前記第1ポンプが駆動されているときには、前記複数のソレノイドバルブのうちの車両発進時に係合される発進クラッチに対応したソレノイドバルブからの油圧を該発進クラッチに供給する第1状態を形成すると共に、前記第1ポンプが駆動されないときには、前記第2ポンプからの油圧を前記発進クラッチに供給する第2状態を形成するクラッチ供給圧切替バルブを備えてもよく、前記第2ポンプは、アイドルストップ制御の実行による前記原動機の運転停止に伴って前記第1ポンプが停止する前に駆動されてもよい。これにより、アイドルストップ制御の実行により原動機の運転が停止され、第1ポンプが停止すると共にライン圧が生成されなくなったとしても、電力により駆動される第2ポンプからの油圧をクラッチ供給圧切替バルブを介して発進クラッチに供給し、発進クラッチを例えば係合直前の状態に維持することができる。従って、車両に対する発進要求に応じて原動機が再始動され、第1ポンプが駆動されると共にライン圧が生成され、ライン圧供給バルブを介して発進クラッチに対応したソレノイドバルブにライン圧が供給されたときに、発進クラッチをより速やかに係合させることができる。また、原動機の運転停止に伴って第1ポンプが停止する前に第2ポンプを駆動することにより、第1ポンプが停止したときにライン圧供給バルブが供給状態から遮断状態に切替わるのをより良好に抑制すると共に、第1ポンプが停止したときに発進クラッチをより良好に係合直前の状態に維持することが可能となる。
【0013】
また、前記第2ポンプは、電磁ポンプであってもよい。これにより、油圧制御装置をコンパクト化すると共に、低コスト化することができる。ただし、第2ポンプは、電動ポンプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る油圧制御装置50を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。
【図2】油圧制御装置50を示す系統図である。
【図3】ライン圧供給バルブ60が供給状態であるときに、第1および第2入力ポート65,66に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopが供給されている様子を示す説明図である。
【図4】ライン圧供給バルブ60が遮断状態であるときに、第1および第2入力ポート65,66に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopが供給されている様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る油圧制御装置50を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。図1に示す自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関である動力発生源としてのエンジン12と、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)15と、流体伝動装置(発進装置)23や有段の自動変速機30、これらに作動油(作動流体)を給排する油圧制御装置50、これらを制御する変速用電子制御ユニット(以下、「変速ECU」という)21等を有し、エンジン12の図示しないクランクシャフトに接続されると共に動力発生源としてのエンジン12からの動力を左右の駆動輪DWに伝達する動力伝達装置20とを備える。
【0017】
図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや、車速センサ99からの車速V、クランクシャフトの回転を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU15や変速ECU21からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式スロットルバルブや燃料噴射弁、点火プラグ等を制御する。また、実施例のエンジンECU14は、自動車10の停車に伴って通常エンジン12がアイドル運転されるときにエンジン12の運転を停止させると共にアクセルペダル91の踏み込みによる自動車10に対する発進要求に応じてエンジン12を再始動させる自動始動停止制御(以下、「アイドルストップ制御」という)を実行可能に構成されている。
【0018】
ブレーキECU15には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や、車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速ECU21からの信号等が入力され、ブレーキECU15は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。動力伝達装置20の変速ECU21は、トランスミッションケース22の内部に収容される。変速ECU21には、複数のシフトポジション(実施例では、パーキングポジション、ニュートラルポジション、リバースポジションおよびドライブポジション)の中から所望のシフトポジションを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトポジションセンサ96からのシフトポジションSPや、車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU15からの信号等が入力され、変速ECU21は、これらの信号に基づいて流体伝動装置23や自動変速機30等を制御する。
【0019】
上述のエンジンECU14、ブレーキECU15および変速ECU21は、何れも図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。そして、エンジンECU14、ブレーキECU15および変速ECU21は、バスライン等を介して相互に接続されており、これらのECU間では制御に必要なデータのやり取りが随時実行される。
【0020】
動力伝達装置20は、トランスミッションケース22の内部に収容される流体伝動装置23や、油圧発生源としてのオイルポンプ(機械式ポンプ)29(図2参照)、自動変速機30等を含む。流体伝動装置23は、例えば、周知の流体式トルクコンバータとして構成され、エンジン12からの動力をポンプインペラやタービンランナ等を介して自動変速機30のインプットシャフトへと伝達する(何れも図示省略)。油圧発生源としてのオイルポンプ29は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23の図示しないポンプインペラに接続された外歯ギヤ(何れも図示省略)とを備えるギヤポンプとして構成されており、油圧制御装置50に接続される。エンジン12が運転されているときには、当該エンジン12からの動力により外歯ギヤが回転し、それによりオイルポンプ29によってストレーナを介してオイルパン(何れも図示省略)に貯留されている作動油が吸引されると共に当該オイルポンプ29から吐出される。従って、エンジン12の運転中には、オイルポンプ29により流体伝動装置23や自動変速機30により要求される油圧を発生させたり、各種軸受等の潤滑部分に作動油を供給したりすることができる。
【0021】
自動変速機30は、例えば8段変速式変速機として構成されており、図示しない遊星歯車機構や、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための複数のクラッチC1,C2,C3およびC4ならびにブレーキB1およびB2、図示しないワンウェイクラッチ等を含む。そして、自動変速機30のアウトプットシャフトは、ギヤ機構および差動機構(何れも図示省略)を介して駆動輪DWに接続される。クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置50による作動油の給排を受けて動作する。自動変速機30は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の係合または係合の解除を組み合わせることで、前進1〜8速の変速段と後進段とを提供する。なお、実施例の自動変速機30において前進1速が設定されるときには、エンジンブレーキを発生させる場合を除いてクラッチC1のみが係合される。
【0022】
図2は、上述の流体伝動装置23や自動変速機30に対して作動油を給排する油圧制御装置50を示す系統図である。油圧制御装置50は、図2に示すように、オイルポンプ29からの作動油を調圧してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ(プライマリレギュレータバルブ)51や、一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ52、シフトポジションSPに応じてレギュレータバルブ51からのライン圧PLの供給状態を切替えるライン圧供給バルブ60、シフトポジションSPに応じてライン圧供給バルブ60からのライン圧PLの供給先を切替える切替バルブ70、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLを調圧してクラッチC1,C2およびC4並びにブレーキB1のうち対応したものに供給するC1,C2およびC4リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLC4並びにB1リニアソレノイドバルブSLB1、レギュレータバルブ51からのライン圧PLを調圧して出力するC3リニアソレノイドバルブSLC3、それぞれシフトポジションSPに応じてモジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを調圧して信号圧としてのソレノイドバルブ圧Ps1〜Ps3を生成するソレノイドバルブS1〜S3、ソレノイドバルブS1およびS2の出力ポートに接続されるシャトルバルブ53、クラッチC3にC3リニアソレノイドバルブSLC3からのC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を供給可能とすると共に、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLをブレーキB2に供給可能とするC3−B2供給状態と、ブレーキB2にC3リニアソレノイドバルブSLC3からのC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を供給可能とするB2供給状態とを形成可能なC3−B2切替バルブ80、図示しない補機バッテリからの電力により駆動されると共にオイルパンから作動油を吸引して吐出する電磁ポンプEMOP、クラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を供給可能とする第1状態と、クラッチC1に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを供給可能とする第2状態とを形成可能なC1切替バルブ85を含む。
【0023】
実施例のレギュレータバルブ51は、オイルポンプ29からの作動油をアクセル開度Accあるいはエンジン12のスロットルバルブの開度に応じて調圧して制御圧を出力するリニアソレノイドバルブ(不図示)からの制御圧により駆動される。また、実施例のモジュレータバルブ52は、スプリングの付勢力とフィードバック圧とによりレギュレータバルブ51からのライン圧PLを調圧して略一定のモジュレータ圧Pmodを生成する調圧バルブである。
【0024】
ライン圧供給バルブ60は、シフトポジションSPが走行用ポジション(ドライブポジションおよびリバースポジション)であるときに、切替バルブ70側(リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側またはブレーキB2側)にライン圧PLを供給可能とする供給状態を形成可能であると共に、シフトポジションSPが非走行用ポジション(パーキングポジションおよびニュートラルポジション)であるときに、切替バルブ70側へのライン圧PLの供給を遮断する遮断状態を形成可能なスプールバルブである。切替バルブ70は、シフトポジションSPがドライブポジションであるときに、ライン圧供給バルブ60を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PL(ドライブレンジ圧Pd)をリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1に供給可能とする前進供給状態を形成可能であると共に、シフトポジションSPがリバースポジションであるときに、ライン圧供給バルブ60を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PL(リバースレンジ圧Pr)をC3−B2切替バルブ80を介してブレーキB2に供給可能とする後進供給状態を形成可能なスプールバルブである。ライン圧供給バルブ60と切替バルブ70とは、一般的な油圧制御装置に含まれてシフトレバーに連動して作動するマニュアルバルブと同様に機能する。
【0025】
C1リニアソレノイドバルブSLC1は、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してクラッチC1に供給されるC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。C2リニアソレノイドバルブSLC2は、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してクラッチC2に供給されるC2ソレノイドバルブ圧Pslc2を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。C3リニアソレノイドバルブSLC3は、レギュレータバルブ51からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してクラッチC3またはブレーキB2に供給されるC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。C4リニアソレノイドバルブSLC4は、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してクラッチC4に供給されるC4ソレノイドバルブ圧Pslc4を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。B1リニアソレノイドバルブSLB1は、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してブレーキB1に供給されるB1ソレノイドバルブ圧Pslb1を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。これらリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4およびSLB1(それぞれに印加される電流)は、何れも変速ECU21により制御される。
【0026】
ソレノイドバルブS1は、シフトポジションSPがパーキングポジションやニュートラルポジションであるとき、並びにシフトポジションSPがドライブポジションであって前進1速が設定されているときに、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを信号圧としてのソレノイドバルブ圧Ps1として出力する常閉型ソレノイドである。ソレノイドバルブS2は、シフトポジションSPがリバースポジションであるときに、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを信号圧としてのソレノイドバルブ圧Ps2として出力し、切替バルブ70に供給する常閉型ソレノイドバルブである。ソレノイドバルブS3は、シフトポジションSPがパーキングポジションやニュートラルポジションであるときに、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを信号圧としてのソレノイドバルブ圧Ps3として出力し、ライン圧供給バルブ60に供給する常閉型ソレノイドバルブである。これらソレノイドバルブS1〜S3(それぞれに印加される電流)は、何れも変速ECU21により制御される。シャトルバルブ53は、ソレノイドバルブS1からのソレノイドバルブ圧Ps1と、ソレノイドバルブS2からのソレノイドバルブ圧Ps2とを入力すると共に、ソレノイドバルブ圧Ps1およびPs2の大きい方をライン圧供給バルブ60に信号圧として供給する最大圧選択バルブである。なお、シャトルバルブ53は、ソレノイドバルブ圧Ps1およびPs2の何れか一方のみを入力したる場合には、当該入力した一方の油圧を出力する。ソレノイドバルブS1〜S3、それらを制御する変速ECU21およびシャトルバルブ53は、上述のライン圧供給バルブ60および切替バルブ70と共に、油圧式シフトバイワイヤ装置を構成する。
【0027】
C3−B2切替バルブ80は、ソレノイドバルブS1からソレノイドバルブ圧Ps1が出力されていないときには、クラッチC3にC3リニアソレノイドバルブSLC3からのC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を供給可能とすると共に、ライン圧供給バルブ60および切替バルブ70を介してレギュレータバルブ51から供給されるライン圧PLをブレーキB2に供給可能とするC3−B2供給状態(図2に実線で示す油圧供給経路)を形成する。これに対して、C3−B2切替バルブ80は、ソレノイドバルブS1からソレノイドバルブ圧Ps1が出力されているときには、当該ソレノイドバルブ圧Ps1を信号圧として入力し、ブレーキB2にC3リニアソレノイドバルブSLC3からのC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を供給可能とするB2供給状態(図2に破線で示す油圧供給経路)とを形成する。
【0028】
電磁ポンプEMOPは、上述のアイドルストップ制御によりエンジン12の運転が停止され、オイルポンプ29の作動停止に伴ってレギュレータバルブ51からのライン圧PLが生成されなくなったとき(レギュレータバルブ51からのライン圧PLが低下したとき)に、自動変速機30を発進待機状態に保つべく前進1速の設定時に係合される発進クラッチとしてのクラッチC1に油圧を供給するのに用いられる。電磁ポンプEMOPは、図示しないソレノイド部のコイルに矩形波電流が印加されるのに伴ってオイルパンから作動油を吸引すると共に吐出して油圧Pemopを発生する周知の構成を有するものであり、変速ECU21により制御される。このような電磁ポンプを用いることにより、油圧制御装置50をコンパクト化すると共に、低コスト化することができる。ただし、電磁ポンプEMOPの代わりに、電力により駆動される電動ポンプを用いてもよい。電磁ポンプEMOPは、例えばエンジン12の回転数が所定の閾値以下に低下したとき等、アイドルストップ制御によりエンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29が停止する直前に駆動される。
【0029】
C1切替バルブ85は、オイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されているときには、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを信号圧として入力し、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1をクラッチC1に供給可能とする第1状態(図2に実線で示す油圧供給経路)を形成する。また、C1切替バルブ85は、オイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されておらず、モジュレータバルブ52から信号圧としてのモジュレータ圧Pmodを入力しないときに、電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをクラッチC1に供給可能とする第2状態(図2に点線で示す油圧供給経路)を形成する。
【0030】
ここで、エンジンECU14によりアイドルストップ制御が実行されてエンジン12の運転が停止されるときには、クラッチC1を完全な係合状態に維持しておく必要はない。このため、実施例では、電磁ポンプEMOPとして、エンジン12の運転停止中にクラッチC1を係合直前(係合完了直前)の状態に設定し得る程度(油圧サーボにおけるストロークを無くすことができる程度)の油圧を発生可能なものが用いられる。これにより、エンジン12が運転停止されてから再始動されるまでの間に自動変速機30を発進待機状態により適正に保つことが可能となり、電磁ポンプEMOPに要求される性能(ポンプ容量)を低下させることで当該電磁ポンプEMOPひいては動力伝達装置20の全体を小型化することができる。
【0031】
次に、上述のライン圧供給バルブ60および切替バルブ70について詳細に説明する。
【0032】
ライン圧供給バルブ60は、図2に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるプランジャ600と、バルブボディ内にプランジャ600と同軸に移動自在に配置されるスプール601と、スプール601を付勢するスプリング602と、レギュレータバルブ51の出力ポートと油路を介して連通するライン圧入力ポート61と、ライン圧出力ポート62と、シャトルバルブ53の出力ポートと油路を介して連通する信号圧入力ポート63と、保持圧入力ポート64とを有する。実施例において、保持圧入力ポート64には、シフトポジションSPがドライブポジションであると共にレギュレータバルブ51によりライン圧PLが生成されているときに、当該ライン圧PLが保持圧として供給される。また、ライン圧供給バルブ60のスプリング602を収容するスプリング室603は、ソレノイドバルブS3の出力ポートと油路を介して連通する。更に、ライン圧供給バルブ60は、電磁ポンプEMOPの吐出口と油路を介して連通する第1入力ポート65および第2入力ポート66を有する。電磁ポンプEMOPの吐出口と第1入力ポート65とを接続する油路の途中には、オリフィス90が配置されており、第2入力ポート66は、当該油路のオリフィス90と第1入力ポート65との間から分岐された油路に接続される。なお、電磁ポンプEMOPの吐出口と第1入力ポート65とを接続する油路は、ライン圧PLに基づく油圧が供給されない油路であり、すなわち、ライン圧PLに基づく油路が供給される油路を介さずに電磁ポンプEMOPからの油圧が第1入力ポート65に直接供給される。
【0033】
スプール601は、スプリング602の付勢力を受ける第1受圧面601aと、当該第1受圧面601aの反対側に形成されると共に第1または第2入力ポート65,66に供給された電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを受ける第2受圧面601bとを有する。また、プランジャ600は、スプール601の第2受圧面601bと対向すると共に第1または第2入力ポート65,66に供給された電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを受ける第1受圧面600aと、当該第1受圧面600aの反対側に形成されると共に保持圧入力ポート64に供給された油圧を受ける第2受圧面600bと、第1受圧面600aおよび第2受圧面600bの間に形成されると共に信号圧入力ポート63に供給されるソレノイドバルブ圧Ps1またはPs2を受ける第3および第4受圧面600c,600dを有する。実施例において、スプール601の第1および第2受圧面601a,601bとプランジャ600の第1および第3受圧面600a,600cとは、同一の面積を有する。また、プランジャ600の第1および第3受圧面600a,600cは、第2および第4受圧面600b,600dよりも大きな面積を有する。
【0034】
ライン圧供給バルブ60の取付状態は、図2における右側半分の状態すなわち遮断状態とされている。ライン圧供給バルブ60の取付状態では、スプリング602の付勢力によってプランジャ600およびスプール601が図中上方に付勢され、それによりレギュレータバルブ51の出力ポートに接続されたライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62との連通が遮断される。そして、ライン圧供給バルブ60の信号圧入力ポート63にソレノイドバルブS1からのソレノイドバルブ圧Ps1またはソレノイドバルブS2からのソレノイドバルブ圧Ps2がシャトルバルブ53を介して供給されたときには、ソレノイドバルブ圧Ps1またはPs2の作用によりプランジャ600に付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝ってプランジャ600およびスプール601を図中下方に移動させ、ライン圧供給バルブ60は、ライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62とを連通させる図2における左側半分の状態すなわち供給状態を形成する。また、ライン圧供給バルブ60の保持圧入力ポート64にライン圧PLが供給されると、信号圧入力ポート63へのソレノイドバルブ圧Ps1またはPs2の供給の有無に拘わらず、ライン圧PLの作用によりプランジャ600に付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝ち、ライン圧供給バルブ60は供給状態に維持される。更に、ライン圧供給バルブ60の信号圧入力ポート63にシャトルバルブ53を介してソレノイドバルブS1からソレノイドバルブ圧Ps1が供給されると共に、スプリング室603にソレノイドバルブS3からソレノイドバルブ圧Ps3が供給されたときには、ソレノイドバルブ圧Ps3の作用によりスプール601に付与される推力とスプリング602の付勢力とが保持圧としてライン圧PLおよびソレノイドバルブ圧Ps1の作用によりプランジャ600およびスプール601に付与される推力に打ち勝ってプランジャ600およびスプール601を図中上方に移動させ、ライン圧供給バルブ60は遮断状態を形成する。
【0035】
更に、保持圧入力ポート64に保持圧としてのライン圧PLが供給されなくなったときに第1および第2入力ポート65,66に電磁ポンプEMOPから油圧Pemopが供給されると、油圧Pemopの作用によりスプール601に付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝ってスプール601を図中下方に移動させると共に、油圧Pemopの作用によりプランジャ600が図中上方に押圧され、ライン圧供給バルブ60は、ライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62とを連通させる図3に示す状態すなわち供給状態を形成する。また、保持圧入力ポート64に保持圧としてのライン圧PLが供給されなくなってライン圧供給バルブ60が遮断状態を形成しても、第1および第2入力ポート65,66に電磁ポンプEMOPから油圧Pemopが供給されれば、ライン圧供給バルブ60は、油圧Pemopの作用により図3に示す供給状態を形成する。このように、プランジャ600とスプール601との間の油室に電磁ポンプEMOPから油圧Pemopが作用したときに、プランジャ600とスプール601とがバルブボディ内で互いに離間可能とすることにより、スプール601の第2受圧面601bをプランジャ600の第1受圧面600aよりも大きくすることなく、油圧Pemopの作用により供給状態を形成することが可能となる。
【0036】
切替バルブ70は、図2に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール700と、スプール700を付勢するスプリング701と、ライン圧供給バルブ60のライン圧出力ポート62と油路を介して連通するライン圧入力ポート71と、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1の入力ポートと油路を介して連通する第1出力ポート72と、C3−B2切替バルブ80を介してブレーキB2の入力ポートと油路を介して連通する第2出力ポート73と、ソレノイドバルブS2の出力ポートと油路を介して連通する信号圧入力ポート74とを有する。切替バルブ70の第1出力ポート72は、ライン圧供給バルブ60の保持圧入力ポート64と油路を介して連通する。また、切替バルブ70のスプール700は、スプリング701の付勢力を受ける第1受圧面700aと、当該第1受圧面700aの反対側に形成されると共に信号圧入力ポート74に供給されるソレノイドバルブS2からのソレノイドバルブ圧Ps2を受ける第2受圧面700bとを有する。
【0037】
切替バルブ70の取付状態は、図2における右側半分の状態すなわち前進供給状態とされている。切替バルブ70の取付状態では、スプリング701の付勢力によってスプール700が図中上方に付勢され、それによりライン圧入力ポート71と第1出力ポート72とが連通される。また、切替バルブ70の信号圧入力ポート74にソレノイドバルブS2からソレノイドバルブ圧Ps2が供給されたとき、すなわちシフトポジションSPがリバースポジションであるときには、ソレノイドバルブ圧Ps2の作用によりスプール700に付与される推力がスプリング701の付勢力に打ち勝ってスプール700を図中下方に移動させ、切替バルブ70は、ライン圧入力ポート71と第2出力ポート73とを連通させる図2における左側半分の状態すなわち後進供給状態を形成する。従って、信号圧入力ポート74にソレノイドバルブS2からソレノイドバルブ圧Ps2が供給されないドライブポジションの設定時に切替バルブ70のライン圧入力ポート71にライン圧供給バルブ60からライン圧PLが供給されれば、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1にライン圧PLを供給すると共に、ライン圧供給バルブ60の保持圧入力ポート64にライン圧PLを保持圧として供給することができる。
【0038】
引き続き、動力伝達装置20を搭載した自動車10における油圧制御装置50の動作について説明する。
【0039】
自動車10のエンジン12が運転されているときには、オイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されることから、レギュレータバルブ51によりライン圧PLが生成され、モジュレータバルブ52により一定のモジュレータ圧Pmodが生成される。そして、エンジン12の運転中に運転者によりシフトポジションSPがパーキングポジションまたはニュートラルポジションに設定されているときには、ライン圧供給バルブ60の信号圧入力ポート63にシャトルバルブ53を介してソレノイドバルブS1からソレノイドバルブ圧Ps1が供給されると共にスプリング室603にソレノイドバルブS3からソレノイドバルブ圧Ps3が供給され、ライン圧供給バルブ60は、ライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62との連通を遮断する遮断状態(図2における右側半分の状態)を形成する。従って、シフトポジションSPがパーキングポジションまたはニュートラルポジションに設定されているときには、レギュレータバルブ51からのライン圧PLの切替バルブ70側(リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側またはブレーキB2側)への供給が遮断される。
【0040】
また、エンジン12の運転中にシフトポジションSPがパーキングポジションまたはニュートラルポジションからドライブポジションへと変更されて自動変速機30の前進1速が設定されるときには、ライン圧供給バルブ60の信号圧入力ポート63にシャトルバルブ53を介してソレノイドバルブS1からソレノイドバルブ圧Ps1が供給されると共に、スプリング室603へのソレノイドバルブS3からのソレノイドバルブ圧Ps3の供給が停止される。これにより、ライン圧供給バルブ60は、供給状態(図2における左側半分の状態)を形成し、ライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62とが連通される。この際、切替バルブ70の信号圧入力ポート74にソレノイドバルブS2からソレノイドバルブ圧Ps2が供給されないことから、当該切替バルブ70は、ライン圧入力ポート71と第1出力ポート72とを連通させる前進供給状態(図2における右側半分の状態)を形成する。従って、シフトポジションSPがパーキングポジションまたはニュートラルポジションからドライブポジションに変更されて前進1速が設定されるときには、レギュレータバルブ51からのラインPLがライン圧供給バルブ60のライン圧入力ポート61、ライン圧出力ポート62、切替バルブ70のライン圧入力ポート71および第1出力ポート72を介してドライブレンジ圧PdとしてリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1に供給される。そして、変速ECU21は、発進時に係合される発進クラッチとしてのクラッチC1にC1ソレノイドバルブ圧Pslc1が供給されるようにC1リニアソレノイドバルブSLC1を制御する。これにより、自動変速機30の変速段が前進1速に設定される。
【0041】
このようにしてシフトポジションSPがドライブポジションに設定されると、切替バルブ70の第1出力ポート72から出力されたライン圧PLがライン圧供給バルブ60の保持圧入力ポート64に供給される。従って、保持圧入力ポート64に供給されるライン圧PLの作用によりプランジャ601に付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝つことから、ライン圧供給バルブ60を供給状態に維持することができる。これにより、シフトポジションSPがドライブポジションであって前進2〜前進8速に設定されるときには、ソレノイドバルブS1の駆動を停止させることができる。また、前進2〜前進8速が設定される際にも、切替バルブ70は、ライン圧入力ポート71と第1出力ポート72とを連通させる前進供給状態(図2における右側半分の状態)を形成する。更に、この際、C3−B2切替バルブ80は、クラッチC3にC3リニアソレノイドバルブSLC3からのC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を供給可能とするC3−B2供給状態(図2に実線で示す油圧供給経路)を形成する。従って、シフトポジションSPがドライブポジションであって前進2〜前進8速が設定される際にも、レギュレータバルブ51からのラインPLがライン圧供給バルブ60のライン圧入力ポート61,ライン圧出力ポート62,切替バルブ70のライン圧入力ポート71および第1出力ポート72を介してドライブレンジ圧PdとしてリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1に供給される。なお、C3ソレノイドバルブSLC3には、上述のようにレギュレータバルブ51からライン圧PLが供給される。そして、変速ECU21は、クラッチC1〜C4およびブレーキB1のうち所望の変速段を形成する際に係合すべきものに必要な油圧が供給されるように、対応したリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4およびSLB1を制御する。これにより、自動変速機30の変速段が前進2速〜前進8速に設定される。
【0042】
また、運転者によりシフトポジションSPがリバースポジションに設定されたときには、ライン圧供給バルブ60の信号圧入力ポート63にシャトルバルブ53を介してソレノイドバルブS2からのソレノイドバルブ圧Ps2が供給される。これにより、ライン圧供給バルブ60は、ライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62とを連通させる供給状態(図2における左側半分の状態)を形成する。この際、切替バルブ70の信号圧入力ポート74にソレノイドバルブS2からのソレノイドバルブ圧Ps2が供給されることから、当該切替バルブ70は、ライン圧入力ポート71と第2出力ポート73とを連通させる後進供給状態(図2における左側半分の状態)を形成する。また、この際、C3−B2切替バルブ80は、クラッチC3にC3リニアソレノイドバルブSLC3からのC3ソレノイドバルブ圧Pslc3を供給可能とすると共に、切替バルブ70の第2出力ポート73からのライン圧PL(リバースレンジ圧Pr)をブレーキB2に供給可能とするC3−B2供給状態(図2に実線で示す油圧供給経路)を形成する。従って、シフトポジションSPがリバースポジションに設定されたときには、レギュレータバルブ51からのラインPLがライン圧供給バルブ60のライン圧入力ポート61,ライン圧出力ポート62,切替バルブ70のライン圧入力ポート71、第2出力ポート73およびC3−B2切替バルブ80を介してリバースレンジ圧PrとしてブレーキB2に供給され、それによりブレーキB2が係合される。なお、リバースポジションの設定時にブレーキB2と共に係合されるクラッチC3に対応したC3ソレノイドバルブSLC3には、レギュレータバルブ51からライン圧PLが直接供給される。そして、変速ECU21は、C3−B2切替バルブ80を介してクラッチC3にC3ソレノイドバルブ圧Pslc3が供給されるようにC3リニアソレノイドバルブSLC3を制御する。これにより、自動変速機30の変速段が後進段に設定される。
【0043】
一方、例えば信号待ちに伴う自動車10の停車時等には、上述したように、エンジンECU14によりアイドルストップ制御が実行されてエンジン12の運転が停止される。この際、エンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29の駆動が停止されることからライン圧PLが低下し、発進クラッチとしてのクラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1も油圧(C1ソレノイドバルブ圧Pslc1)を生成し得なくなる。また、ライン圧PLの低下に伴ってモジュレータ圧Pmodも低下するが、実施例のC1切替バルブ85は、信号圧である信号圧としてのモジュレータ圧Pmodが供給されなくなると、電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをクラッチC1に供給可能とする第2状態(図2中の点線で示す油圧供給経路)を形成する。これにより、エンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29が停止する直前に電磁ポンプEMOPを駆動することで、運転者によりシフトポジションSPがドライブポジションに設定されているときにアイドルストップ制御によりエンジン12が運転停止されても、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを発進クラッチであるクラッチC1に供給して自動変速機30を発進待機状態に保つことができる。なお、自動車10に対する発進要求に応じてエンジン12が再始動されてオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されると、C1切替バルブ85は、信号圧としてのモジュレータ圧Pmodにより第2状態から第1状態へと切替えられる。そして、エンジン12が再始動されると、電磁ポンプEMOPは、例えばエンジン12の回転数が所定値以上になった段階で停止される。
【0044】
ここで、アイドルストップ制御の実行中には、シフトポジションSPがドライブポジションであっても切替バルブ70からライン圧供給バルブ60の保持圧入力ポート64に保持圧としてのライン圧PLが供給されなくなることから、ライン圧供給バルブ60を供給状態に維持することができなくなる。また、アイドルストップ制御の実行中には、モジュレータバルブ52からモジュレータ圧Pmodが出力されなくなることから、ソレノイドバルブS1等からのソレノイドバルブ圧Ps1等によりライン圧供給バルブ60を供給状態に維持するもできなくなる。
【0045】
これを踏まえて、実施例の油圧制御装置50は、アイドルストップ制御に伴ってエンジン12の運転が停止され、オイルポンプ29の駆動が停止される直前に電磁ポンプEMOPが駆動されると、当該電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopをライン圧供給バルブ60の第1および第2入力ポート65,66に供給するように構成されている。これにより、実施例では、アイドルストップ制御によりエンジン12の運転が停止されるのに伴ってライン圧PLやモジュレータ圧Pmodが値0になる前に、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopがライン圧供給バルブ60の第1および第2入力ポート65,66に供給され始める。
【0046】
ライン圧供給バルブ60が供給状態を形成している状態で電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopが第1入力ポート65に供給された場合、保持圧入力ポート64にライン圧PLが供給されなくなった段階から、図3に示すように油圧Pemopの作用によりプランジャ600が図中上方に移動されると共にスプール601が図中下方の位置で保持され、それによりレギュレータバルブ51の出力ポートに接続されたライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62とを連通させる供給状態に維持することができる。なお、プランジャ600とスプール601とは、図3に示すように、第2入力ポート66が開通した段階から第1および第2入力ポート65,66からの油圧Pemopの作用を受ける。また、アイドルストップ制御の実行中、切替バルブ70は、取付状態すなわち前進供給状態を形成している。従って、エンジン12が再始動されてオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動され、レギュレータバルブ51によりライン圧PLが生成されると、供給状態で維持されたライン圧供給バルブ60のライン圧入力ポート61,ライン圧出力ポート62,切替バルブ70のライン圧入力ポート71および第1出力ポート72を介して、レギュレータバルブ51により生成されたライン圧PLをC1リニアソレノイドバルブSLC1に速やかに供給することができる。これにより、C1切替バルブ85を介してC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1をクラッチC1の油圧入口に速やかに供給し、クラッチC1を良好に係合させ、係合圧低下に起因した摩擦材焼けの発生等を抑制することができる。
【0047】
また、例えば作動油の温度が低い場合等には、電磁ポンプEMOPの駆動が開始されてから充分な大きさの油圧Pemopがライン圧供給バルブ60の第1入力ポート65に供給されるまでに若干時間を要し、スプール601の第2受圧面601bに作用する油圧が不足して、図4に示すようにライン圧供給バルブ60が供給状態から遮断状態に切替わってしまう可能性がある。この場合、ライン圧供給バルブ60のスプール601により第1入力ポート65が閉鎖されてしまうが、実施例の油圧制御装置50では、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopがライン圧供給バルブ60の第2入力ポート66にも供給される。これにより、第2受圧面601bへの油圧Pemopの作用によりスプール601が図中下方に移動される(図4中の白抜き矢印参照)と共に、第1受圧面600aへの油圧Pemopの作用によりプランジャ600が図中上方の位置に保持される。そして、スプール601は、第1入力ポート65が開通した段階から第1入力ポート65からの油圧Pemopの作用も受けることになり、油圧Pemopの作用により図3に示す位置まで移動し、レギュレータバルブ51の出力ポートに接続されたライン圧入力ポート61とライン圧出力ポート62とを連通させる供給状態が形成されることになる。これにより、アイドルストップ制御によりエンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29が停止されたときに、ライン圧供給バルブ60をより確実に供給状態に維持することが可能となる。
【0048】
そして、実施例の油圧制御装置50では、電磁ポンプEMOPの吐出口とライン圧供給バルブ60の第1および第2入力ポート65,66とを接続する油路の途中にオリフィス90が配置される。これにより、エンジン12が再始動されてオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動され、電磁ポンプEMOPが駆動停止されたときに、ライン圧供給バルブ60の第1および第2入力ポート65,66から電磁ポンプEMOPの吐出口側に作動油が急激に流出するのを抑制することができる。この結果、電磁ポンプEMOPの停止に伴ってライン圧供給バルブ60が直ちに供給状態から遮断状態に切替わるのを抑制することが可能となる。
【0049】
以上説明した実施例の油圧制御装置50は、エンジン12からの動力により駆動されるオイルポンプ29と、オイルポンプ29が駆動されないときに電力により駆動される電磁ポンプEMOPと、クラッチC1〜C4およびブレーキB1に供給する油圧を調圧するリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4およびSLB1と、シフトポジションSPが走行用ポジション(ドライブポジションおよびリバースポジション)であるときに、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側またはブレーキB2側にライン圧PLを供給可能とする供給状態を形成すると共に、シフトポジションSPが非走行用ポジション(パーキングポジションおよびニュートラルポジション)であるときに、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側またはブレーキB2側へのライン圧PLの供給を遮断する遮断状態を形成するライン圧供給バルブ60とを備える。そして、当該ライン圧供給バルブ60は、シフトポジションSPがドライブポジションであってエンジン12からの動力により駆動されるオイルポンプ29が駆動されているときには、切替バルブ70からのライン圧PLにより供給状態を形成すると共に、オイルポンプ29が駆動されないときには、当該オイルポンプ29が駆動されないときに電力により駆動される電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopにより供給状態を形成する。これにより、シフトポジションSPがドライブポジションであるときに、アイドルストップ制御によるエンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29が停止してライン圧PLが生成されなくなったとしても、電力により駆動される電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopによりライン圧供給バルブ60を供給状態に維持することができる。従って、エンジン12が再始動され、エンジン12からの動力によりオイルポンプ29が駆動されると共にレギュレータバルブ51によりライン圧PLが生成された段階から、ライン圧供給バルブ60を切替える時間を要することなく、当該ライン圧供給バルブ60を介してリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側またはブレーキB2側へと速やかにライン圧PLを供給することが可能となる。
【0050】
また、ライン圧供給バルブ60は、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを入力する第1および第2入力ポート65,66を有し、電磁ポンプEMOPの吐出口と第1および第2入力ポート65,66とを接続する油路の途中には、オリフィス90が配置される。これにより、電磁ポンプEMOPが停止した際に、ライン圧供給バルブ60から第1および第2入力ポート65,66および油路を介して電磁ポンプEMOPの吐出口側へと油が急激に流出するのをオリフィス90により抑制することができるため、電磁ポンプEMOPの停止に伴ってライン圧供給バルブ60が直ちに供給状態から遮断状態に切替わるのを抑制することが可能となる。
【0051】
更に、ライン圧供給バルブ60は、軸方向に移動自在に配置されるプランジャ600と、当該プランジャ600と同軸に移動自在に配置されると共に供給状態と遮断状態とを形成可能なスプール601と、当該スプール601をプランジャ600側に付勢するスプリング602とを含み、スプール601は、スプリング602の付勢力を受ける第1受圧面600aと、当該第1受圧面601aの反対側に形成されると共に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを受ける第2受圧面601bとを有し、プランジャ600は、スプール601の第2受圧面601bと対向すると共に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを受ける第1受圧面600aと、当該第1受圧面600aの反対側に形成されると共にライン圧PLに基づく圧力を受ける第2受圧面600bとを有する。これにより、オイルポンプ29が駆動されているときには、プランジャ600の第2受圧面600bに切替バルブ70からのライン圧PLが作用し、プランジャ600がスプール601をスプリング602の付勢方向と逆方向に移動させる。すなわち、オイルポンプ29が駆動されているときには、ライン圧PLの作用によりプランジャ600の第2受圧面600bに付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝つことで供給状態が保持される。これに対して、オイルポンプ29が駆動されていないときには、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopの作用によりスプール601の第2受圧面601bに付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝つことで供給状態が保持される。これにより、スプール601の第2受圧面601bをプランジャ600の第1受圧面600aよりも大きくすることなく、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopの作用により供給状態を形成すること可能となる。
【0052】
また、ライン圧供給バルブ60は、少なくとも供給状態でスプール601の第2受圧面601bに油圧が作用するように電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを入力する第1入力ポート65と、少なくとも遮断状態から供給状態に切替わるまでの間にスプール601の第2受圧面601bに油圧が作用するように電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを入力する第2入力ポート66とを含む。これにより、電磁ポンプEMOPが駆動されたときに、例えば油温が低いこと等に起因して当該電磁ポンプEMOPからライン圧供給バルブ60の第1入力ポート65への油圧Pemopの供給が遅れ、スプール601の第2受圧面601bに作用する油圧が不足してライン圧供給バルブ60が供給状態から遮断状態に切替わってしまったとしても、第2入力ポート66に供給された電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopをスプール601の第2受圧面601bに作用させてライン圧供給バルブ60を遮断状態から供給状態へと変化させることができる。
【0053】
更に、実施例の油圧制御装置50は、オイルポンプ29が駆動されているときには、車両発進時に係合される発進クラッチであるクラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1をクラッチC1に供給する第1状態を形成すると共に、オイルポンプ29が駆動されないときには、電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをクラッチC1に供給する第2状態を形成するC1切替バルブ85を備え、電磁ポンプEMOPは、アイドルストップ制御の実行によるエンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29が停止する直前に駆動される。これにより、アイドルストップ制御の実行によりエンジン12の運転が停止され、オイルポンプ29が停止すると共にライン圧PLが生成されなくなったとしても、電力により駆動される電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをC1切替バルブ85を介してクラッチC1に供給し、クラッチC1を例えば係合直前の状態に維持することができる。従って、自動車10に対する発進要求に応じてエンジン12が再始動され、オイルポンプ29が駆動されると共にライン圧PLが生成され、ライン圧供給バルブ60を介してクラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1にライン圧PLが供給されたときに、クラッチC1をより速やかに係合させることができる。また、エンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29が停止する前に電磁ポンプEMOPを駆動することにより、オイルポンプ29が停止したときにライン圧供給バルブ60が供給状態から遮断状態に切替わるのをより良好に抑制すると共に、オイルポンプ29が停止したときにクラッチC1をより良好に係合直前の状態に維持することが可能となる。
【0054】
なお、実施例の油圧制御装置50は、シフトレバー95の操作位置に応じてライン圧供給バルブ60からのライン圧PLの供給先を切替える(前進供給状態と後進供給状態とを切替える)切替バルブ70を有するものとしたが、当該切替バルブ70を省略すると共にブレーキB2に対応したリニアソレノイドバルブを用いてもよい。また、実施例の油圧制御装置50では、ライン圧供給バルブ60の保持圧入力ポート64には、シフトポジションSPがドライブポジションであるときに切替バルブ70の第1出力ポート72から出力されたライン圧PLが供給されるが、当該保持圧入力ポート64には、シフトポジションSPがドライブポジションであるときに切替バルブ70または他のバルブ等を介してライン圧PLに基づく他の油圧(例えば、モジュレータ圧Pmodやレギュレータバルブ51のドレン油を調圧して得られるセカンダリ圧等)が保持圧として供給されてもよい。また、保持圧入力ポート64には、シフトポジションSPがリバースポジションであるときにライン圧PLあるいはライン圧PLに基づく他の油圧が保持圧として供給されてもよい。
【0055】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、インプットシャフト(入力部材)に付与された動力を油圧クラッチC1〜C4および油圧ブレーキB1の係脱により変速比を複数段に変更してアウトプットシャフト(出力部材)に伝達可能な車両用の自動変速機30の油圧制御装置50が「油圧制御装置」に相当し、クラッチC1〜C4およびブレーキB1に供給する油圧を調圧するリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4およびSLB1が「複数のソレノイドバルブ」に相当し、エンジン12からの動力により駆動されるオイルポンプ29が「第1ポンプ」に相当し、電力により駆動される電磁ポンプEMOPが「第2ポンプ」に相当し、オイルポンプ29からの油圧を調圧してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ51が「ライン圧生成バルブ」に相当し、シフトポジションSPが走行用ポジションであるときに、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側にライン圧PLを供給可能とする供給状態を形成可能であると共に、シフトポジションSPが非走行用ポジションであるときに、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC4およびSLB1側へのライン圧PLの供給を遮断する遮断状態を形成可能なライン圧供給バルブ60が「ライン圧供給バルブ」に相当する。
【0056】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、油圧制御装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 自動車、12 エンジン、14 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、15 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、20 動力伝達装置、21 変速用電子制御ユニット(変速ECU)、22 トランスミッションケース、23 流体伝動装置、29 オイルポンプ、30 自動変速機、50 油圧制御装置、51 レギュレータバルブ、52 モジュレータバルブ、53 シャトルバルブ、60 ライン圧供給バルブ、600 プランジャ、600a 第1受圧面、600b 第2受圧面、600c 第3受圧面、600d 第4受圧面、601 スプール、601a 第1受圧面、601b 第2受圧面、602 スプリング、603 スプリング室、61 ライン圧入力ポート、62 ライン圧出力ポート、63 信号圧入力ポート、64 保持圧入力ポート、65 第1入力ポート、66 第2入力ポート、70 切替バルブ、700 スプール、700a 第1受圧面、700b 第2受圧面、701 スプリング、71 ライン圧入力ポート、72 第1出力ポート、73 第2出力ポート、74 信号圧入力ポート、80 C3−B2切替バルブ、85 C1切替バルブ、90 オリフィス、91 アクセルペダル、92 アクセルペダルポジションセンサ、93 ブレーキペダル、94 マスタシリンダ圧センサ、95 シフトレバー、96 シフトポジションセンサ、99 車速センサ、B1,B2 ブレーキ、C1〜C4 クラッチ、S1〜S3 ソレノイドバルブ、SLB1 B1リニアソレノイドバルブ、SLC1 C1リニアソレノイドバルブ、SLC2 C2リニアソレノイドバルブ、SLC3 C3リニアソレノイドバルブ、SLC4 C4リニアソレノイドバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材に付与された動力を複数の油圧クラッチの係脱により変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な車両用自動変速機の油圧制御装置において、
前記複数の油圧クラッチに供給する油圧を調圧する複数のソレノイドバルブと、
原動機からの動力により駆動される第1ポンプと、
電力により駆動される第2ポンプと、
前記第1ポンプからの油圧を調圧してライン圧を生成するライン圧生成バルブと、
シフトポジションが走行用ポジションであるときに、前記複数のソレノイドバルブに前記ライン圧を供給可能とする供給状態を形成すると共に、前記シフトポジションが非走行用ポジションであるときに、前記複数のソレノイドバルブへの前記ライン圧の供給を遮断する遮断状態を形成するライン圧供給バルブとを備え、
前記ライン圧供給バルブは、シフトポジションが走行用ポジションであって前記第1ポンプが駆動されているときには、前記ライン圧に基づく圧力により前記供給状態を形成すると共に、シフトポジションが走行用ポジションであって前記第1ポンプが駆動されないときには、前記第2ポンプからの油圧により前記供給状態を形成することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置であって、
前記ライン圧供給バルブは、前記第2ポンプからの油圧を入力する入力ポートを有し、
前記第2ポンプの吐出口と前記入力ポートとを接続する油路の途中には、オリフィスが配置されることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧制御装置において、
前記ライン圧供給バルブは、軸方向に移動自在に配置されるプランジャと、該プランジャと同軸に移動自在に配置されると共に前記供給状態と前記遮断状態とを形成可能なスプールと、該スプールを前記プランジャ側に付勢するスプリングとを含み、
前記スプールは、前記スプリングの付勢力を受ける第1受圧面と、該第1受圧面の反対側に形成されると共に前記第2ポンプからの油圧を受ける第2受圧面とを有し、
前記プランジャは、前記スプールの前記第2受圧面と対向すると共に前記第2ポンプからの油圧を受ける第1受圧面と、該第1受圧面の反対側に形成されると共に前記ライン圧に基づく圧力を受ける第2受圧面とを有することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧制御装置において、
前記ライン圧供給バルブは、少なくとも前記供給状態で前記スプールの前記第2受圧面に油圧が作用するように前記第2ポンプからの油圧を入力する第1入力ポートと、少なくとも前記遮断状態から前記供給状態に切替わるまでの間に前記スプールの前記第2受圧面に油圧が作用するように前記第2ポンプからの油圧を入力する第2入力ポートとを含むことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の油圧制御装置において、
前記第1ポンプが駆動されているときには、前記複数のソレノイドバルブのうちの車両発進時に係合される発進クラッチに対応したソレノイドバルブからの油圧を該発進クラッチに供給する第1状態を形成すると共に、前記第1ポンプが駆動されないときには、前記第2ポンプからの油圧を前記発進クラッチに供給する第2状態を形成するクラッチ供給圧切替バルブを備え、
前記第2ポンプは、前記原動機の運転停止に伴って前記第1ポンプが停止する前に駆動されることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
前記第2ポンプは、電磁ポンプであることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50178(P2013−50178A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188800(P2011−188800)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】