説明

油圧走行作業車両

【課題】車両の走行速度に合わせてアプリケーションの作動速度が調節される油圧走行作業車両を提供する。
【解決手段】アプリケーション変速機30は、エンジン50によって駆動されるアプリケーション油圧ポンプ31と、アプリケーション(モア72)を駆動するアプリケーション油圧モータ32と、アプリケーション油圧ポンプ31とアプリケーション油圧モータ32との間で作動油を循環させるアプリケーション油圧回路33と、ランニング油圧回路13に介装される走行速度検出絞り(第一、第二オリフィス21、22)の前後差圧が増大するのに応動してアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量を増大させるアプリケーション流量調節手段(流量調節弁23)とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油圧によって車両を走行させるとともに、作動油圧によってアプリケーションを駆動して作業をする油圧走行作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧走行作業車両は、油圧ポンプと油圧モータの間で作動油を循環させることによって動力を伝達する静油圧式無段変速機(HST)を備え、エンジンの回転を走行装置(車輪)に伝達するとともに、エンジンの回転をアプリケーションに伝達するようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アプリケーションとして例えば芝を刈るモアを搭載するモアトラクタ(芝刈り機)の場合、車両の走行速度とモアの作動速度とを同期させていないため、低速走行時にモアの作動速度が必要以上に高められたり、高速走行時にモアの作動速度が不足して、芝を刈り残すという問題点があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車両の走行速度に合わせてアプリケーションの作動速度が調節される油圧走行作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行速度を変えるランニング変速機と、アプリケーションの作動速度を変えるアプリケーション変速機とを備える油圧走行作業車両であって、ランニング変速機は、エンジンによって駆動されるランニング油圧ポンプと、走行装置を駆動するランニング油圧モータと、ランニング油圧ポンプとランニング油圧モータとの間で作動油を循環させるランニング油圧回路と、このランニング油圧回路に介装される走行速度検出絞りとを備え、アプリケーション変速機は、エンジンによって駆動されるアプリケーション油圧ポンプと、アプリケーションを駆動するアプリケーション油圧モータと、アプリケーション油圧ポンプとアプリケーション油圧モータとの間で作動油を循環させるアプリケーション油圧回路と、走行速度検出絞りの前後差圧が増大するのに応動してアプリケーション油圧モータに供給される作動油の流量を増大させるアプリケーション流量調節手段とを備えたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、油圧走行作業車両の走行速度が高まるのに応じてアプリケーションの作動速度が高まり、アプリケーションを効率よく作動させることができる。低速走行時に、アプリケーションの作動速度が必要以上に高められることがなく、アプリケーションを駆動するエネルギ損失を抑えられ、エンジンの燃費低減がはかれる。
【0008】
アプリケーション流量調節手段は、アプリケーション油圧回路またはアプリケーション油圧ポンプ等の構成を変更することによって実現され、装置の大型化が避けられる。
【0009】
また、アプリケーション流量調節手段は、車両の速度を検出する速度センサ及びその検出信号に応じてアプリケーションの作動を制御するコントローラ等を用いることなく実現されるため、構造を簡素化して、製品のコストダウンがはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【図2】他の実施の形態を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【図3】他の実施の形態を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【図4】他の実施の形態を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【図5】他の実施の形態を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【図6】他の実施の形態を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【図7】参考例を示す油圧走行作業車両の油圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、芝刈り機(モアトラクタ)として用いられる油圧走行作業車両は、エンジン50の回転を車輪63に伝えるランニング変速機10と、エンジン50の回転を芝刈り機のモア72に伝えるアプリケーション変速機30とを備え、車輪63を回転駆動して走行しながらモア72のカッタ刃を回転駆動して芝を刈るようになっている。
【0013】
ランニング変速機10は、例えば斜板式可変容量形のランニング油圧ポンプ11と斜板式定容量形のランニング油圧モータ12をランニング油圧回路13に介装し、ランニング油圧ポンプ11とランニング油圧モータ12との間に作動油が循環する静油圧式無段変速機(HST)である。
【0014】
ランニング油圧ポンプ11は、エンジン50の回転がメインシャフト(出力軸)51によって伝えられ、エンジン50と同期して回転駆動される。
【0015】
ランニング油圧モータ12は、その出力回転がモータシャフト60、ディファレンシャルギヤ61、ドライブシャフト62等を介して左右の車輪63に伝えられる。
【0016】
なお、油圧走行作業車両に備えられる走行装置として、車輪63に限らず、例えばクローラを用いてもよい。
【0017】
ランニング油圧回路13は、ランニング油圧ポンプ11、ランニング油圧モータ12の各給排ポートを連通する第一、第二油圧通路14、15を備える、クローズ形油圧回路によって構成される。
【0018】
油圧走行作業車両の前進時、ランニング油圧ポンプ11から吐出される加圧作動油が第一油圧通路14を通ってランニング油圧モータ12に供給され、ランニング油圧モータ12から排出される作動油が第二油圧通路15を通ってランニング油圧ポンプ11に吸い込まれる。こうして作動油ランニング油圧回路13を図1にて時計回り方向に循環し、ランニング油圧モータ12が前進方向に回転作動する。
【0019】
油圧走行作業車両の後進時、ランニング油圧ポンプ11に備えられる斜板(図示せず)の傾転方向が変えられ、ランニング油圧ポンプ11から吐出される加圧作動油が第二油圧通路15を通ってランニング油圧モータ12に供給され、ランニング油圧モータ12から排出される作動油が第一油圧通路14を通ってランニング油圧ポンプ11に吸い込まれる。こうして作動油がランニング油圧回路13を図1にて反時計回り方向に循環し、ランニング油圧モータ12が後進方向に回転作動する。
【0020】
ランニング変速機10は、ランニング油圧ポンプ11に備えられるサーボ機構を介して、または、斜板に直結されたトラニオン軸を介して斜板の傾転角度を変えることにより、ランニング油圧モータ12の出力回転速度を変え、車両の停止から前後進の最高速度まで無段変速する。
【0021】
ランニング油圧回路13の第一、第二油圧通路14、15に第一、第二オリフィス21、22がそれぞれ介装され、この第一、第二オリフィス21、22は走行速度検出絞りとして設けられる。この第一、第二オリフィス21、22はランニング油圧モータ12を流れる作動油に抵抗を付与し、第一、第二オリフィス21、22の前後に生じる差圧が走行速度に応じて高まる。後述するアプリケーション流量調節手段は、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧に応動してアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量を調節するようになっている。
【0022】
油圧走行作業車両にアプリケーションとして搭載されるモア72は、図示しないカッタ刃の回転によって芝を刈るようになっている。
【0023】
なお、油圧走行作業車両に備えられるアプリケーションとして、モア72に限らず、他の作業装置を用いてもよい。
【0024】
モア72を回転駆動するアプリケーション変速機30は、例えばギア式定容量形のアプリケーション油圧ポンプ31とギア式定容量形のアプリケーション油圧モータ32をアプリケーション油圧回路33に介装したものである。
【0025】
アプリケーション油圧ポンプ31は、エンジン50の回転がPTOシャフト52によって伝えられ、エンジン50と同期して回転駆動される。アプリケーション油圧ポンプ31は、タンク19の作動油を吸い込み、加圧作動油を油圧通路34に吐出し、この加圧作動油が油圧通路34を通ってアプリケーション油圧モータ32に供給される。
【0026】
アプリケーション油圧モータ32は、これに供給される加圧作動油によって回転作動し、これから排出される作動油がタンク19に戻される。
【0027】
アプリケーション油圧モータ32は、その出力回転がモータシャフト71を介してモア72に伝えられる。
【0028】
アプリケーション油圧回路33は、アプリケーション油圧ポンプ31とアプリケーション油圧モータ32によってタンク19に貯留される作動油を循環させるオープン形油圧回路によって構成される。
【0029】
なお、これに限らず、アプリケーション油圧回路33は、アプリケーション油圧ポンプ31、アプリケーション油圧モータ32の各給排ポートを連通する第一、第二油圧通路を備える、クローズ形油圧回路によって構成してもよい。
【0030】
アプリケーション油圧回路33の油圧通路34にはリリーフ弁35が接続される。このリリーフ弁35は、アプリケーション油圧ポンプ31の吐出圧力が所定値を超えて上昇すると開弁し、アプリケーション油圧ポンプ31から吐出される作動油をタンク19に戻す。これにより、例えば芝刈り機の作動時にモア72の回転が止まってアプリケーション油圧モータ32における作動油の流れが止められる場合、リリーフ弁35が開弁することによって、アプリケーション油圧ポンプ31から吐出される作動油がタンク19に戻され、油圧通路34の圧力が所定値以下に保たれる。
【0031】
アプリケーション変速機30は、ランニング油圧モータ12を流れる作動油の流量が増大するのに応じてアプリケーション油圧モータ32を流れる作動油の流量を増大させるアプリケーション流量調節手段を備え、油圧走行作業車両が通過する単位面積あたりにおいてモア72のカッタ刃が回転する回数を略一定に保つようにアプリケーション油圧モータ32の回転速度を調節する。
【0032】
アプリケーション流量調節手段として、アプリケーション油圧モータ32に供給される作動油を逃がす流量調節弁23を備える。この流量調節弁23は、ランニング油圧回路13に介装された第一、第二オリフィス21、22の前後差圧に応動してアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の一部をタンク19に逃がす。
【0033】
走行速度検出絞りとして設けられる第一、第二オリフィス21、22は、第一、第二油圧通路14、15にそれぞれ介装されている。第一、第二オリフィス21、22の前後に生じる油圧力が高圧選択弁26、27を介して第一、第二パイロット油圧通路36、37にて取り出される。
【0034】
流量調節弁23は、油圧通路34をタンク19に連通するポジションと、油圧通路34とタンク19の連通を遮断するポジションとを有し、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧力が高まるのに伴ってスプリング24に抗して油圧通路34とタンク19とを連通する流路断面積を小さくし、油圧通路34からタンク19に逃がされる作動油の流量を調節する。
【0035】
油圧走行作業車両の前進時、ランニング油圧ポンプ11から吐出される加圧作動油が第一油圧通路14を通ってランニング油圧モータ12に供給され、第一オリフィス21の前後差圧が高圧選択弁26、27を介して第一、第二パイロット油圧通路36、37にて取り出され、流量調節弁23に導かれる。
【0036】
油圧走行作業車両の後進時、ランニング油圧ポンプ11から吐出される加圧作動油が第二油圧通路15を通ってランニング油圧モータ12に供給され、第二オリフィス22の前後差圧が高圧選択弁26、27を介して第一、第二パイロット油圧通路36、37にて取り出され、流量調節弁23に導かれる。
【0037】
油圧走行作業車両の低速走行時、ランニング油圧モータ12を流れる作動油の流量が少なく、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧力が低いため、流量調節弁23は、油圧通路34とタンク19とを連通する流路断面積を大きく調節する。これにより、アプリケーション油圧ポンプ31から吐出される作動油の一部がアプリケーション油圧モータ32を迂回してタンク19に逃がされ、アプリケーション油圧ポンプ31から吐出される作動油のうちアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量割合が減らされ、アプリケーション油圧モータ32の回転速度が低くなる。これにより、油圧走行作業車両の低速走行時に、モア72におけるカッタ刃の回転速度が低くなり、カッタ刃の回転速度が必要以上に高められることがなく、モア72を駆動するエネルギ損失を抑えられる。
【0038】
油圧走行作業車両の走行速度が高まると、ランニング油圧モータ12を流れる作動油の流量が増え、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧力が高まるのに伴って、流量調節弁23は、油圧通路34とタンク19とを連通する流路断面積を次第に小さく調節し、アプリケーション油圧ポンプ31から吐出される作動油のうちアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量割合を増やし、アプリケーション油圧モータ32の回転速度が高くなる。これにより、油圧走行作業車両の高速走行時に、モア72におけるカッタ刃の回転速度が高くなり、カッタ刃の回転速度が不足して芝を刈り残すことが抑えられる。
【0039】
上記したアプリケーション変速機30における油圧走行作業車両の走行速度に応じた変速作動は、油圧走行作業車両の前進時と後進時に行われる。
【0040】
なお、これに限らず、図2に示すように、アプリケーション変速機30は、高速走行が行われることが少ない油圧走行作業車両の後進時に変速を行わない構成してもよい。この場合、第二オリフィス22及び高圧選択弁26、27を廃止し、第一オリフィス21の前後差圧が第一、第二パイロット油圧通路36、37を介して流量調節弁23に導かれるように構成され、構造の簡素化がはかれる。
【0041】
また、図3に示すように、第一油圧通路14に第一オリフィス21と並列に介装されるチェック弁28を設けてもよい。この場合、油圧走行作業車両の後進時にランニング油圧モータ12からランニング油圧ポンプ11へと戻される作動油が第一オリフィス21を迂回してチェック弁28を通過することにより、第一オリフィス21によって付与される圧力損失を低減できる。
【0042】
本実施の形態では、走行速度を変えるランニング変速機10と、アプリケーション(モア72)の作動速度を変えるアプリケーション変速機30とを備える油圧走行作業車両であって、ランニング変速機10は、エンジン50によって駆動されるランニング油圧ポンプ11と、走行装置(車輪63)を駆動するランニング油圧モータ12と、ランニング油圧ポンプ11とランニング油圧モータ12との間で作動油を循環させると、このランニング油圧回路13に介装される走行速度検出絞り(第一、第二オリフィス21、22)とを備え、アプリケーション変速機30は、エンジン50によって駆動されるアプリケーション油圧ポンプ31と、アプリケーション(モア72)を駆動するアプリケーション油圧モータ32と、アプリケーション油圧ポンプ31とアプリケーション油圧モータ32との間で作動油を循環させるアプリケーション油圧回路33と、走行速度検出絞り(第一、第二オリフィス21、22)の前後差圧が増大するのに応動してアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量を増大させるアプリケーション流量調節手段とを備える構成とした。
【0043】
上記構成に基づき、油圧走行作業車両の走行速度が高まるのに応じてアプリケーション(モア72)の作動速度が高まり、アプリケーション(モア72)を効率よく作動させることができる。低速走行時に、アプリケーション(モア72)の作動速度が必要以上に高められることがなく、エンジン50がアプリケーション(モア72)を駆動するエネルギ損失を抑えられ、エンジン50の燃費低減がはかれる。
【0044】
アプリケーション流量調節手段は、既存のアプリケーション油圧回路33またはアプリケーション油圧ポンプ31等を変更することによって実現され、装置の大型化が避けられる。
【0045】
また、アプリケーション流量調節手段は、車両の速度を検出する速度センサ及びその検出信号に応じてアプリケーション(モア72)の作動を制御するコントローラ等を用いることなく実現されるため、構造を簡素化して、製品のコストダウンがはかれる。
【0046】
本実施の形態では、アプリケーション流量調節手段としてアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の一部を逃がす流量調節弁23を備え、この流量調節弁23は走行速度検出絞り(第一、第二オリフィス21、22)の前後差圧が増大するのに応動して作動油を逃がすブリード流量を減少させる構成とした。
【0047】
上記構成に基づき、油圧走行作業車両の走行速度が高まるのに応じて流量調節弁23の開度が小さくなってアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量が増大し、アプリケーション(モア72)を効率よく作動させることができる。
【0048】
アプリケーション流量調節手段は、アプリケーション油圧回路33を変更することによって実現され、装置の大型化が避けられる。
【0049】
次に図4に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図1の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0050】
アプリケーション油圧ポンプ41は、例えば斜板式の可変容量形の油圧ポンプが用いられる。図示しない斜板の傾転角度は、サーボ機構の油圧シリンダ42によって変えられる。
【0051】
アプリケーション流量調節手段として、ランニング油圧回路13に介装されランニング油圧モータ12を流れる作動油が通過する第一、第二オリフィス21、22と、アプリケーション油圧回路33に介装され第一、第二オリフィス21、22の前後差圧に応動して油圧シリンダ42に導かれる作動油圧を調節する流量補償弁43とを備える。
【0052】
流量補償弁43は、油圧通路34を油圧シリンダ42に連通するポジションと、油圧通路34と油圧シリンダ42の連通を遮断するポジションとを有し、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧力が高まるのに伴ってスプリング44に抗して油圧通路34と油圧シリンダ42とを連通する流路断面積を大きくし、油圧シリンダ42に導かれる油圧力を高めるように調節する。
【0053】
油圧走行作業車両の前進時、ランニング油圧ポンプ11から吐出される加圧作動油が第一油圧通路14を通ってランニング油圧モータ12に供給され、第一オリフィス21の前後差圧が高圧選択弁26、27を介して第一、第二パイロット油圧通路36、37にて取り出され、流量補償弁43に導かれる。
【0054】
油圧走行作業車両の後進時、ランニング油圧ポンプ11から吐出される加圧作動油が第二油圧通路15を通ってランニング油圧モータ12に供給され、第二オリフィス22の前後差圧が高圧選択弁26、27を介して第一、第二パイロット油圧通路36、37にて取り出され、流量補償弁43に導かれる。
【0055】
油圧走行作業車両の低速走行時、ランニング油圧モータ12を流れる作動油の流量が少なく、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧力が低いため、流量補償弁43は、油圧シリンダ42に導かれる油圧力を小さく調節する。これにより、アプリケーション油圧ポンプ41の吐出容量が減らされ、アプリケーション油圧モータ32の回転速度が低くなる。これにより、油圧走行作業車両の低速走行時に、モア72におけるカッタ刃の回転速度が低くなり、カッタ刃の回転速度が必要以上に高められることがなく、モア72を駆動するエネルギ損失を抑えられる。
【0056】
油圧走行作業車両の走行速度が高まると、ランニング油圧モータ12を流れる作動油の流量が増え、第一、第二オリフィス21、22の前後差圧力が高まるのに伴って、流量補償弁43は、油圧シリンダ42に導かれる油圧力を大きく調節する。これにより、アプリケーション油圧ポンプ41の吐出容量が増やされ、アプリケーション油圧モータ32の回転速度が高くなる。これにより、油圧走行作業車両の高速走行時に、モア72におけるカッタ刃の回転速度が高くなり、カッタ刃の回転速度が不足して芝を刈り残すことが抑えられる。
【0057】
なお、これに限らず、図5に示すように、アプリケーション変速機30は、高速走行が行われることが少ない油圧走行作業車両の後進時に変速を行わない構成してもよい。この場合、第二オリフィス22及び高圧選択弁26、27を廃止し、第一オリフィス21の前後差圧が第一、第二パイロット油圧通路36、37を介して流量調節弁23に導かれるように構成され、構造の簡素化がはかれる。
【0058】
また、図6に示すように、第一油圧通路14に第一オリフィス21と並列に介装されるチェック弁28を設けてもよい。この場合、油圧走行作業車両の後進時にランニング油圧モータ12からランニング油圧ポンプ11へと戻される作動油が第一オリフィス21を迂回してチェック弁28を通過することにより、第一オリフィス21によって付与される圧力損失を低減できる。
【0059】
本実施の形態では、アプリケーション流量調節手段としてアプリケーション油圧ポンプ41の吐出容量を変える油圧シリンダ42と、この油圧シリンダ42に導かれる作動油圧を調節する流量補償弁43とを備え、この流量補償弁43は走行速度検出絞り(第一、第二オリフィス21、22)の前後差圧が増大するのに応動してアプリケーション油圧ポンプ41の吐出容量を増大させるように油圧シリンダ42に導かれる作動油圧を調節する構成とした。
【0060】
上記構成に基づき、油圧走行作業車両の走行速度が高まるのに応じてアプリケーション油圧ポンプ41の吐出容量を増大してアプリケーション油圧モータ32に供給される作動油の流量が増大し、アプリケーション(モア72)を効率よく作動させることができる。
【0061】
アプリケーション流量調節手段は、既存のアプリケーション油圧回路33またはアプリケーション油圧ポンプ41を変更することによって実現され、装置の大型化が避けられる。
【0062】
前記図1〜6に示す各実施の形態では、アプリケーションとして芝を刈るモア72を設ける構成とした。
【0063】
上記構成に基づき、油圧走行作業車両の低速走行時に、モア72におけるカッタ刃の回転速度が低くなるように調節され、カッタ刃の回転速度が必要以上に高められることがなく、モア72を駆動するエネルギ損失を抑えられ、エンジン50の燃費を低減できる。特に図4〜6に示す構成では、アプリケーション油圧ポンプ41の吐出量自体を少なく抑えることができるため、燃費の低減効果を高められる。一方、油圧走行作業車両の高速走行時に、モア72におけるカッタ刃の回転速度が高くなるように調節され、カッタ刃の回転速度が不足して芝を刈り残すことが抑えられ、芝をむら無く刈ることができる。
【0064】
次に図7に示す参考例を説明する。これは基本的には図1〜6の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0065】
アプリケーション変速機80は、例えば斜板式可変容量形のアプリケーション油圧ポンプ81と斜板式定容量形のアプリケーション油圧モータ82をアプリケーション油圧回路83に介装し、アプリケーション油圧ポンプ81とアプリケーション油圧モータ82との間に作動油が循環する静油圧式無段変速機(HST)である。
【0066】
ランニング油圧モータ12のモータシャフト60の回転が、ギヤ式伝達機構85によってアプリケーション油圧ポンプ81のポンプシャフト79に伝えられる。アプリケーション油圧ポンプ81の回転が、アプリケーション油圧回路83を循環する作動油によってアプリケーション油圧モータ82に伝えられる。これにより、ランニング油圧モータ12のモータシャフト60の回転とアプリケーション油圧モータ82のモータシャフト71の回転とが互いに同期し、油圧走行作業車両の走行速度が高まるのに応じてモア72の作動速度を高められる。
【0067】
しかし、この場合、油圧走行作業車両にギヤ式伝達機構85の介装スペースを設ける必要があり、装置の大型化を招くという問題点がある。
【0068】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の油圧走行作業車両は、芝刈り機に限らず、走行しながら種々の作業を行う作業車両や建設機械等に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
10 ランニング変速機
11 ランニング油圧ポンプ
12 ランニング油圧モータ
13 ランニング油圧回路
21 第一オリフィス(走行速度検出絞り)
22 第二オリフィス(走行速度検出絞り)
23 流量調節弁
30 アプリケーション変速機
31 アプリケーション油圧ポンプ
32 アプリケーション油圧モータ
33 アプリケーション油圧回路
41 アプリケーション油圧ポンプ
42 油圧シリンダ
43 流量補償弁
50 エンジン
63 車輪
72 モア(アプリケーション)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行速度を変えるランニング変速機と、
アプリケーションの作動速度を変えるアプリケーション変速機とを備える油圧走行作業車両であって、
前記ランニング変速機は、
エンジンによって駆動されるランニング油圧ポンプと、
走行装置を駆動するランニング油圧モータと、
前記ランニング油圧ポンプと前記ランニング油圧モータとの間で作動油を循環させるランニング油圧回路と、
このランニング油圧回路に介装される走行速度検出絞りとを備え、
前記アプリケーション変速機は、
エンジンによって駆動されるアプリケーション油圧ポンプと、
アプリケーションを駆動するアプリケーション油圧モータと、
前記アプリケーション油圧ポンプと前記アプリケーション油圧モータとの間で作動油を循環させるアプリケーション油圧回路と、
前記走行速度検出絞りの前後差圧が増大するのに応動して前記アプリケーション油圧モータに供給される作動油の流量を増大させるアプリケーション流量調節手段とを備えたことを特徴とする油圧走行作業車両。
【請求項2】
前記アプリケーション流量調節手段として前記アプリケーション油圧モータに供給される作動油の一部を逃がす流量調節弁を備え、
この流量調節弁は前記走行速度検出絞りの前後差圧が増大するのに応動して作動油を逃がすブリード流量を減少させることを特徴とする請求項1に記載の油圧走行作業車両。
【請求項3】
前記アプリケーション流量調節手段として前記アプリケーション油圧ポンプの吐出容量を変える油圧シリンダと、
この油圧シリンダに導かれる作動油圧を調節する流量補償弁とを備え、
この流量補償弁は前記走行速度検出絞りの前後差圧が増大するのに応動してアプリケーション油圧ポンプの吐出容量を増大させるように前記油圧シリンダに導かれる作動油圧を調節することを特徴とする請求項1に記載の油圧走行作業車両。
【請求項4】
前記アプリケーションとして芝を刈るモアを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の油圧走行作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−230083(P2010−230083A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78162(P2009−78162)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】