説明

波長可変光フィルター

【課題】反射膜間の距離を精度よく制御することができる波長可変光フィルターの提供。
【解決手段】厚み方向に変位可能な第1の可動部11と厚み方向に変位可能な第2の可動部12とを備えた第1の基板10と、第1の基板10との間で内部空間13を形成し、第1の基板10に接合された第2の基板20と、第1の基板10を挟んで第2の基板20の反対側に配置された第3の基板30と、第2の可動部12と第3の基板30との間に挟持された圧電素子50と、内部空間13に満たされた液体60と、第1の可動部11の面14上に設けられた第1の反射膜15と、第2の基板20上に設けられた第2の反射膜22とを備え、圧電素子50の厚み方向の変位に応じて、第2の可動部12が厚み方向の一方に変位することにより液体60に加わる圧力で第1の可動部11が厚み方向の他方に変位し、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離Gが変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変光フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長可変光フィルターに代表される光学デバイスに関して、可動部を備えた第1の構造体と、第1の構造体との間に可動部の変位を許容する空隙(内部空間)を形成し、第1の構造体に接合された第2の構造体と、可動部に設けられた第1の反射膜と、第2の構造体に設けられた第2の反射膜とを有し、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離に応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、可動部に設けられた第1の駆動電極と第2の構造体に設けられた第2の駆動電極との間に電圧を印加することにより、静電引力を生じさせて、可動部を変位させるようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−116669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の光学デバイスにおいては、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離を精度よく制御することが重要であるが、対象となる光の波長によっては、上記距離が極めて短くなる(例えば、数百nm〜数μm)。
このことから、光学デバイスにおいては、第1の駆動電極と第2の駆動電極との間に電圧を印加して生じさせた静電引力により、第1の駆動電極と第2の駆動電極との接触、貼り付きが発生することがある。
この結果、光学デバイスは、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離を精度よく制御することが困難となる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変光フィルターは、厚み方向に変位可能に形成された第1の可動部と前記第1の可動部の周囲にあって前記厚み方向に変位可能に形成された第2の可動部とを備えた光透過性を有する第1の基板と、前記第1の基板との間で前記第1の可動部及び前記第2の可動部の変位を許容する内部空間を形成し、前記第1の基板に接合された光透過性を有する第2の基板と、前記第1の基板を挟んで前記第2の基板の反対側に配置され前記第1の基板に接合された第3の基板と、前記第2の可動部と前記第3の基板との間に挟持された圧電素子と、前記内部空間に満たされた液体と、前記第1の可動部の前記第2の基板側の面上に設けられた第1の反射膜と、前記第2の基板上に前記第1の反射膜に対向するように設けられた第2の反射膜とを備え、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間で光反射を繰り返し、干渉を生じさせることにより、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間の距離に応じた波長の光を外部へ出射可能に構成され、電圧印加によって発生する前記圧電素子の前記厚み方向の変位に応じて、前記第2の可動部が前記厚み方向の一方に変位することにより前記液体に加わる圧力で前記第1の可動部が前記厚み方向の他方に変位し、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間の前記距離が変化することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、波長可変光フィルターは、電圧印加によって発生する圧電素子の厚み方向の変位に応じて、第2の可動部が厚み方向の一方に変位することにより液体に加わる圧力で第1の可動部が厚み方向の他方に変位し、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離が変化する。
このことから、波長可変光フィルターは、対向する駆動電極を用いた従来技術の課題であった、電極間の接触、貼り付きのない波長可変光フィルターを具現化できる。
この結果、波長可変光フィルターは、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離を精度よく制御することができる。
【0008】
加えて、波長可変光フィルターは、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離を、液体を介して変化させることから、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離を、従来のような空間における静電引力で変化させる場合と比較して、距離の制御が容易である。
この結果、波長可変光フィルターは、距離の制御の応答性を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変光フィルターにおいて、前記液体が屈折率の異なる複数の種類から選択可能であることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、波長可変光フィルターは、液体が屈折率の異なる複数の種類から選択可能であることから、複数の波長可変光フィルター間で異なる液体を選択することにより、第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離を変更することなく、それぞれ異なる波長の光を外部へ出射できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変光フィルターにおいて、前記液体が屈折率の異なる他の液体と交換可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、波長可変光フィルターは、液体が屈折率の異なる他の液体と交換可能に構成されていることから、1つの波長可変光フィルターにおいて、液体を屈折率の異なる他の液体と入れ替えることによって、適用例2と同様の効果を得ることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる波長可変光フィルターにおいて、前記第1の可動部の前記第1の反射膜が設けられた面の反対側の面上に、第1の反射防止膜を設けたことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、波長可変光フィルターは、第1の可動部の第1の反射膜が設けられた面の反対側の面上に、第1の反射防止膜を設けたことから、第1の反射膜が設けられた面の反対側の面における光の反射を抑制させて、例えば、第1の基板側の外部から入射する光を第1の反射膜に効率的に入射させることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる波長可変光フィルターにおいて、前記第2の基板の前記第2の反射膜が設けられた面の反対側の面上に、第2の反射防止膜を設けたことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、波長可変光フィルターは、第2の基板の第2の反射膜が設けられた面の反対側の面上に、第2の反射防止膜を設けたことから、例えば、第1の基板側から透過してきた第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離に応じた波長の光を、第2の反射膜が設けられた面の反対側の面における第1の反射膜側への反射を抑制させて、効率的に第2の基板側の外部へ出射できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の波長可変光フィルターの概略構成を示す模式図。
【図2】波長可変光フィルターの動作について説明する模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態)
図1は、本実施形態の波長可変光フィルターの概略構成を示す模式図である。図1(a)は、第2の基板側から俯瞰した平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図である。
【0019】
図1に示すように、波長可変光フィルター1は、光を受け、干渉作用によりその光の波長のうち特定の波長に対応する光(干渉光)だけを出射させるものである。
波長可変光フィルター1は、光透過性を有する第1の基板10と、光透過性を有する第2の基板20と、第3の基板30とを備えている。
波長可変光フィルター1は、第1の基板10の一方の側に第2の基板20が接合され、第1の基板10の他方の側に第3の基板30が接合された積層構造をなしている。
【0020】
第1の基板10は、平面形状が略円形に形成され、厚み方向(延在方向と直交する方向)である矢印B方向に変位可能に形成された第1の可動部11と、第1の可動部11の周囲にあって、同じく厚み方向に変位可能に形成された第2の可動部12とを備えている。
第2の基板20は、平面形状が略円形に形成され、第1の基板10側に凹部が設けられることにより、第1の基板10との間で第1の可動部11及び第2の可動部12の変位を許容する内部空間13を形成し、第1の基板10の一方の側に接合されている。
第3の基板30は、平面視において、第1の可動部11と重ならず、第2の可動部12と重なるように平面形状が環状に形成され、第1の基板10の他方の側に接合されている。つまり、第3の基板30は、第1の基板10を挟んで第2の基板20の反対側に配置されている。なお、第2の基板20及び第3の基板30は、変形を抑制するために第1の基板10より剛性が高くなるように形成されている。
【0021】
第1の基板10及び第2の基板20の材料としては、用いる光の波長に関し光透過性を有していれば特に限定されないが、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などが挙げられる。
第3の基板30の材料としては、光透過性は不要であるが、熱応力の抑制などの観点から線膨張係数が第1の基板10の材料と近似した材料を用いるのが好ましい。
なお、各基板には、可視光領域での光学特性、寸法精度や機械的特性、熱応力の抑制などの観点から同一材料のガラスを用いるのが好ましい。
【0022】
なお、第1の基板10と第2の基板20との接合には、例えば、(1)低融点ガラスによる接合方法、(2)互いの接合面をプラズマ照射などにより親水化処理して表面を活性化させ、接合面同士を貼り合わせることで水素結合させるなどの直接接合方法、(3)アルコキシド、オルガノシロキシ基などを含む接合部材を用い、紫外線やプラズマ照射により接合する接合方法、(4)金錫合金被膜などの金属被膜を接合部材に用いた共晶接合方法などを用いる。
また、第1の基板10と第3の基板30との接合には、後述する一部を除き、非導電性の例えば、エポキシ系、ポリイミド系などの接着剤40を用いる。
【0023】
第1の基板10の外周部より内側にあって、第2の基板20側に環状に凹むように薄肉に形成された第2の可動部12と、第3の基板30の外周部より内側にあって、第1の基板10側に環状に突出するように肉厚に形成された第3の基板30の支持部31との間には、圧電素子(ピエゾ素子)50が挟持されている。
圧電素子50は、圧電効果により第2の可動部12を厚み方向(矢印B方向)に変位させるアクチュエーターとして用いられる。
圧電素子50は、第3の基板30の支持部31の形状に合わせて平面形状が環状に形成され、第2の可動部12側と第3の基板30側とに電極を備えている。ここでは、便宜的に第2の可動部12側の電極を上電極51といい、第3の基板30側の電極を下電極52という。
【0024】
上電極51は、第1の基板10の外周から第2の可動部12まで配線された引き出し電極51aと接続され、下電極52は、第3の基板30の外周から第2の可動部12との対向面まで配線された引き出し電極52aと接続されている。
なお、引き出し電極51aは、引き出し電極51aと対向するように第3の基板30の外周部に設けられた引き出し電極51bと、例えば、エポキシ系、ポリイミド系などの接着剤に金属フィラーを混合した導電性接着剤53などを介して接続されている。
なお、引き出し電極51b及び引き出し電極52aは、図示しない通電回路に接続されており、波長可変光フィルター1は、上電極51と下電極52とを介して圧電素子50に電圧を印加することが可能となっている。
【0025】
圧電素子50の材料としては、圧電効果を有していれば特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、水晶などが挙げられる。
上電極51、下電極52、引き出し電極51a、引き出し電極51b及び引き出し電極52aの材料としては、例えば、Au,Cr,Al,Al合金、Ni,Zn,Tiなどの金属が挙げられる。
【0026】
内部空間13には、液体60が満たされている。内部空間13には、図示しない注入口が連通し、第1の基板10と第2の基板20とが接合された後、注入口から液体60が注入される。なお、内部空間13は、液体が漏洩しないように図示しない封止材により封止され、密封状態が保持されている。
液体60の種類としては、例えば、アセトンやエチルアルコール、メチルアルコール、メタノールなどのアルコール系類、これらの溶液類、水、水溶液類などが挙げられる。なお、液体60には、後述する第1の反射膜15、第2の反射膜22などを劣化させない種類のものが好ましい。
【0027】
なお、波長可変光フィルター1は、液体60が上記のような屈折率の異なる複数の種類から選択可能となっている。屈折率の一例としては、エチルアルコールが、約1.36、水が約1.33、ベンゼンが約1.50などである。
また、波長可変光フィルター1は、封止材の着脱により液体60が屈折率の異なる他の液体60と交換可能に構成されている。
【0028】
第1の基板10には、周囲が薄肉に形成され、平面形状が円形に形成された円柱状(円板状)の第1の可動部11の、第2の基板20側の面14上に、平面形状が円形に形成された第1の反射膜15が設けられている。
また、第1の基板10には、第1の可動部11の第1の反射膜15が設けられた面14の反対側の面16上に、平面形状が円形に形成された第1の反射防止膜17が設けられている。
【0029】
第2の基板20の第1の基板10側の面21上には、第1の可動部11の第1の反射膜15に対向するように、平面形状が円形に形成された第2の反射膜22が設けられている。
また、第2の基板20には、第2の反射膜22が設けられた面21の反対側の面23上に、平面形状が円形に形成された第2の反射防止膜24が設けられている。
第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離Gは、用いられる光の波長などに応じて適宜設定されるが、通常、数百nm〜数μmである。
波長可変光フィルター1は、この距離Gが、第1の可動部11及び第2の可動部12の変位によって変化する構成となっている(詳細後述)。
【0030】
第1の反射膜15及び第2の反射膜22は、光を比較的高い反射率で反射させ、第1の反射防止膜17及び第2の反射防止膜24は、光の反射を抑制する機能を有している。
第1の反射膜15及び第2の反射膜22と、第1の反射防止膜17及び第2の反射防止膜24とは、誘電体多層膜で構成されているものが好ましい。
詳述すれば、各反射膜及び各反射防止膜は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層されてなるものが好ましい。これにより、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間での光の干渉時における光の損失を低減して光学特性を向上させることができる。
【0031】
高屈折率層の材料としては、可視光領域や赤外光領域で用いる場合には、例えば、Ti2O,Ta25、酸化ニオブなどが挙げられ、紫外光領域で用いる場合には、例えば、Al23,HfO2,ZrO2,ThO2などが挙げられる。
低屈折率層の材料としては、例えば、MgF2,SiO2などが挙げられる。
各反射膜及び各反射防止膜を構成する高屈折率層及び低屈折率層の層数、厚さは、所望の光学特性に応じて適宜設定される。一般的に、多層膜により反射膜を構成する場合、通常の光学特性を得るために必要な層数は、12層以上であり、多層膜により反射防止膜を構成する場合、通常の光学特性を得るために必要な層数は、4層程度である。
【0032】
このような構成の波長可変光フィルター1の動作(作用)について説明する。
図1(b)に示すように、波長可変光フィルター1は、例えば、可視光などの光Lが、第3の基板30側から第1の反射防止膜17、第1の反射膜15を透過して、内部空間13に入射すると、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間で光反射を繰り返し、干渉を生じさせること(干渉作用)により、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離Gに応じた波長の光L1だけが、第2の反射膜22、第2の反射防止膜24を透過して外部へ出射する(他の波長の光は、干渉作用により減衰し、外部へ出射されない)。
【0033】
このとき、波長可変光フィルター1は、第1の反射防止膜17によって、光Lの入射側(第3の基板30側)への反射が抑制され、光Lが殆ど損失せずに内部空間13に入射する。また、波長可変光フィルター1は、第2の反射防止膜24によって、光L1の第2の基板20の面23における内部空間13側への反射が抑制され、光L1が殆ど損失せずに外部へ出射する。
【0034】
図2は、波長可変光フィルターの動作について説明する模式断面図である。
図2に示すように、波長可変光フィルター1は、通電回路から、上電極51と下電極52とを介して圧電素子50に所定の電圧を印加すると、圧電効果によって圧電素子50に厚み方向(矢印B方向)の変位が発生する。
波長可変光フィルター1は、この電圧印加によって発生する圧電素子50の厚み方向の変位に応じて、第2の可動部12が、厚み方向の一方である例えば、矢印C方向に変位する。このとき、圧電素子50と重なっている第3の基板30の支持部31は、肉厚に形成されるなどによって第1の基板10より剛性が高いことから、厚み方向に殆ど変位しない。
【0035】
この第2の可動部12の矢印C方向の変位により、波長可変光フィルター1は、液体60の第2の可動部12近傍領域に、矢印C方向の圧縮圧力が加わる。
波長可変光フィルター1は、この液体60に加わった圧縮圧力により、第2の可動部12近傍領域の液体60が第1の可動部11近傍領域に移動する。
これにより、波長可変光フィルター1は、第1の可動部11が液体60によって矢印D方向に押圧され、厚み方向の他方である矢印D方向に変位して、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G1が長くなる。
【0036】
波長可変光フィルター1は、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G1が変化した(距離Gより長くなった)ことにより、距離G1に応じた波長の光L2(光L1より長波長)だけが、第2の反射膜22、第2の反射防止膜24を透過して外部へ出射する。
このように、波長可変光フィルター1は、圧電素子50に印加する電圧と圧電素子50の変位量との相関関係、及び圧電素子50の変位量と第2の可動部12を介した第1の可動部11の変位量との相関関係を予め把握した上で、圧電素子50に所定の電圧を印加することにより、所望の光L1,L2の波長に応じて第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1を変化させることができる。
【0037】
上述したように、本実施形態の波長可変光フィルター1は、電圧印加によって発生する圧電素子50の厚み方向の変位に応じて、第2の可動部12が厚み方向の一方(矢印C方向)に変位することにより、液体60に加わる圧力(圧縮圧力)で第1の可動部11が厚み方向の他方(矢印D方向)に変位し、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1が変化する。
このことから、波長可変光フィルター1は、対向する駆動電極を用いた従来技術の課題であった、電極間の接触、貼り付きのない波長可変光フィルター1を具現化できる。
この結果、波長可変光フィルター1は、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1を精度よく制御することができる。
【0038】
加えて、波長可変光フィルター1は、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1を、液体60を介して変化させることから、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1を、従来のような空間における静電引力で変化させる場合と比較して、距離G,G1の制御が容易である。
この結果、波長可変光フィルター1は、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1の制御の応答性を向上させることができる。
【0039】
また、波長可変光フィルター1は、液体60が屈折率の異なる複数の種類から選択可能であることから、複数の波長可変光フィルター1間で異なる液体60を選択することにより、第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1を変更することなく、それぞれ異なる波長の光(例えば、L1,L2)を外部へ出射できる。
また、波長可変光フィルター1は、封止材の着脱により液体60が屈折率の異なる他の液体60と交換可能に構成されていることから、1つの波長可変光フィルター1において、上記と同様に第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離Gを変更することなく、液体60の交換前と交換後とで、異なる波長の光(例えば、L1,L2)を外部へ出射できる。
【0040】
また、波長可変光フィルター1は、第1の可動部11の第1の反射膜15が設けられた面の反対側の面16上に、第1の反射防止膜17を設けたことから、第1の反射膜15が設けられた面の反対側の面16における光の第3の基板30側への反射を抑制させて、外部から入射する光Lを殆ど損失させずに効率的に内部空間13へ入射させることができる。
【0041】
また、波長可変光フィルター1は、第2の基板20の第2の反射膜22が設けられた面21の反対側の面23上に、(以下、単に面23ともいう)に、第2の反射防止膜24を設けたことから、第1の基板10側から透過してきた第1の反射膜15と第2の反射膜22との間の距離G,G1に応じた波長の光L1,L2(以下、単に光L1,L2ともいう)を、面23における内部空間13側への反射を抑制させて、殆ど損失させずに効率的に外部へ出射させることができる。
なお、第2の反射防止膜24は、面23の全体に設けられてもよい。これによれば、波長可変光フィルター1は、面23における光L1,L2の内部空間13側への反射を、広範囲に亘って抑制できる。
【0042】
なお、波長可変光フィルター1は、外部から入射する光Lを図1(b)、図2に示す方向とは反対方向の、第2の基板20側から入射させてもよい。これによれば、波長可変光フィルター1は、光L1,L2を、図1(b)、図2に示す方向とは反対方向の、第1の基板10の第3の基板30側から外部へ出射させることができる。
【0043】
また、波長可変光フィルター1は、第1の反射防止膜17及び第2の反射防止膜24を設けなくてもよい。これによれば、波長可変光フィルター1は、製造工程を簡略化できることから、製造工数を低減できる。
また、波長可変光フィルター1は、平面形状を円形に限定するものではなく、矩形、多角形、楕円形など用途に応じて適宜設定してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…波長可変光フィルター、10…第1の基板、11…第1の可動部、12…第2の可動部、13…内部空間、14…第2の基板側の面、15…第1の反射膜、16…第1の反射膜が設けられた面の反対側の面、17…第1の反射防止膜、20…第2の基板、21…第1の基板側の面、22…第2の反射膜、23…第2の反射膜が設けられた面の反対側の面、24…第2の反射防止膜、30…第3の基板、31…支持部、40…接着剤、50…圧電素子、51…上電極、51a,51b…引き出し電極、52…下電極、52a…引き出し電極、53…導電性接着剤、60…液体、G,G1…第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離、L…外部から入射する光、L1,L2…第1の反射膜と第2の反射膜との間の距離に応じた波長の光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に変位可能に形成された第1の可動部と前記第1の可動部の周囲にあって前記厚み方向に変位可能に形成された第2の可動部とを備えた光透過性を有する第1の基板と、
前記第1の基板との間で前記第1の可動部及び前記第2の可動部の変位を許容する内部空間を形成し、前記第1の基板に接合された光透過性を有する第2の基板と、
前記第1の基板を挟んで前記第2の基板の反対側に配置され前記第1の基板に接合された第3の基板と、
前記第2の可動部と前記第3の基板との間に挟持された圧電素子と、
前記内部空間に満たされた液体と、
前記第1の可動部の前記第2の基板側の面上に設けられた第1の反射膜と、
前記第2の基板上に前記第1の反射膜に対向するように設けられた第2の反射膜とを備え、
前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間で光反射を繰り返し、干渉を生じさせることにより、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間の距離に応じた波長の光を外部へ出射可能に構成され、
電圧印加によって発生する前記圧電素子の前記厚み方向の変位に応じて、前記第2の可動部が前記厚み方向の一方に変位することにより前記液体に加わる圧力で前記第1の可動部が前記厚み方向の他方に変位し、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間の前記距離が変化することを特徴とする波長可変光フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変光フィルターにおいて、前記液体が屈折率の異なる複数の種類から選択可能であることを特徴とする波長可変光フィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長可変光フィルターにおいて、前記液体が屈折率の異なる他の液体と交換可能に構成されていることを特徴とする波長可変光フィルター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長可変光フィルターにおいて、前記第1の可動部の前記第1の反射膜が設けられた面の反対側の面上に、第1の反射防止膜を設けたことを特徴とする波長可変光フィルター。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長可変光フィルターにおいて、前記第2の基板の前記第2の反射膜が設けられた面の反対側の面上に、第2の反射防止膜を設けたことを特徴とする波長可変光フィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−39141(P2011−39141A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184235(P2009−184235)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】