説明

洗浄料

【課題】高温時及び低温時において粘度が安定な洗浄料であり、特に、一旦高温環境に置かれた後、低温環境に保管されても、適切な粘度状態を保つことの出来る洗浄料の提供。
【解決手段】(A)高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上、(B)ベタイン系両性界面活性剤、(C)平均重合度200〜1540のポリエチレングリコール、(D)HLB=4以下のモノステアリン酸グリセリル、(E)脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを配合した洗浄料。脂肪酸アルカリ塩を洗浄基剤とした洗浄料において、高温時、低温時は勿論、高温時から低温時等の過酷な温度変化下においても、適切な粘度が保たれた洗浄料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄料に関する。更に詳しくは、脂肪酸石鹸において、低温時及び高温時における粘度安定性の高い洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄料には、脂肪酸アルカリ塩である石鹸が洗浄基剤として用いられてきた。脂肪酸石鹸は、洗浄効果に優れ、クリーミーで豊かな泡立ち、素早い泡切れ、さっぱり感があるという皮膚の洗浄には好ましい感触が得られるので、クレンジングフォーム、ボディソープ、洗顔石鹸等として多くの洗浄料に応用されている。
【0003】
しかしながら、一方でさっぱり感、すっきり感が強すぎ、洗浄後にしっとり感を与えることが困難であるので、洗浄料中に種々の保湿成分や油分や合成界面活性剤を配合したりして、その使用感を調整している。
【0004】
ところで、最近の住宅事情においては、浴室乾燥機を具備している家庭が多く、浴室は、浴室乾燥機使用時は、非常に高温になる一方で、浴室乾燥機を使用していない時間帯の冬場や、早朝などは、非常に低温になる。その為、浴室に保管されているシャンプー、ボディソープ、洗顔料などの洗浄製品は、常に急激な温度変化にさらされていると言える。このような環境化においては、脂肪酸アルカリ塩を主体とする洗浄基剤としたペースト状の洗浄料は、経時で粘度が上昇し、チューブから出しにくくなるという欠点があった。
そこで、予め低い粘度でペースト状の洗浄料を調整すると、高温時において、粘度が低下し過ぎ、チューブから漏れ出てしまうことがあった。
【0005】
そこで、高温時又は低温時における経時の粘度上昇を解消する為に種々の試みがなされてきた。例えば、特許文献1では、(A)炭素数12〜18の高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上、(B)炭素数12〜18の脂肪酸モノエタノールアミド及び/又はジエタノールアミドから選ばれる一種又は二種以上、(C)水、(D)1,2−ペンタンジオールを含有することを特徴とする洗浄剤組成物が提案されている。
しかしながら、特許文献1は低温時の粘度は安定であることが示されているが、高温時の粘度安定性、また高温から低温へ温度変化を繰り返したときの経時粘度安定性に関する効果は示されていない。
【0006】
特許文献2では、(A)N−長鎖アシルグリシン及び/又はその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、(C)ベタイン型両性界面活性剤、(D)無機塩及び/又はピロリドンカルボン酸塩、(E)水、(F)高級脂肪酸及び/又は(G)アルキルポリグルコシドを特定量配合したクリーム状皮膚洗浄剤組成物が提案されている。
しかしながら、特許文献2はpH4〜6の弱酸性領域での製剤化に限定される手段であり、洗浄基剤として最も汎用性の高い脂肪酸石鹸主体の洗浄料には適用されない。
【0007】
他には、脂肪酸石鹸を基材としたものではないが、低温時の粘度硬化を抑制する試みとして、特許文献3では、(A)N−アシルアミノ酸アルカリ塩、(B)ベタイン系両性界面活性剤、(C)水、(D)有機酸を含有することを特徴とする弱酸性皮膚洗浄料が提案されている。
しかしながら、特許文献3も弱酸性領域での製剤化に限定される手段であり、洗浄基剤として最も汎用性の高い脂肪酸石鹸主体の洗浄料には適用されない。
【0008】
このように、前記提案では、特定の処方系における粘度安定性は解決されているものの、脂肪酸石鹸主体の洗浄料において、低温時及び高温時、特に高温から低温に変化した場合における粘度安定性に関しては、未だ満足のいく洗浄料は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−234967号公報
【特許文献2】特開2007−269662号公報
【特許文献3】特開2001−19632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、高温時及び低温時において粘度が安定な洗浄料を提供することにある。特に、一旦高温環境に置かれた後、低温環境に保管されても、適切な粘度状態を保つことの出来る洗浄料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上、(B)ベタイン系両性界面活性剤、(C)平均重合度200〜1540のポリエチレングリコール、(D)HLB=4以下のモノステアリン酸グリセリル、(E)脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを配合することにより、本課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脂肪酸アルカリ塩を洗浄基剤とした洗浄料において、高温時、低温時は勿論、高温時から低温時等の過酷な温度変化下においても、適切な粘度が保たれた洗浄料が提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る洗浄料の最良の形態に関し、詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは、言うまでもない。
【0014】
本発明で使用される(A)成分の高級脂肪酸塩は、脂肪酸石鹸を構成する目的で配合しているので、高級脂肪酸塩の種類は特段の制限はない。主に製剤における起泡力の付与の目的で配合され、化粧品一般に通常用いられる高級脂肪酸塩であれば特に制限なく用いることができ、予め中和された脂肪酸塩であっても、脂肪酸と塩基を製造工程内で中和することにより脂肪酸塩を形成させて配合しても良い。また性状としては固形状、液状などの制限もない。
このような(A)成分として用いられる高級脂肪酸塩としては、特に限定されず、脂肪酸としては飽和、不飽和もしくは直鎖、分岐いずれの脂肪酸も用いることができるが、脂肪酸残基の炭素数が9〜21、好ましくは11〜19、より好ましくは12〜18の脂肪酸塩であることが好ましい。
例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの単一脂肪酸の他、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の混合脂肪酸が挙げられる。また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパンジオールなどのアルカノールアミン、リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられ、この中で無機塩基およびトリエタノールアミン塩が好ましく、特に起泡性等の観点から水酸化カリウムが好ましい。これらはあらかじめ中和物として配合してもよいし、別々に配合して中和しても構わない。尚、一部未中和の脂肪酸が存在する場合には、pHの上昇が抑えられ、皮膚刺激抑制の観点からも好ましいことから、中和率は50〜95%が好ましい。(A)成分の市販例は、固形粉末状のラウリン酸カリウムである、ニッコール
KM−4150(日光ケミカルズ社製)、ラウリン酸亜鉛である、ジンクラウレート パウダーベースL(日油社製)、ステアリン酸カルシウムである、カルシウムステアレート(日油社製)等が挙げられる。また、液状の(A)成分の市販例としては、ヤシ油脂肪酸カリウム液である、アルホームK−100(新日本理化社製)、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン液である、アルホームT−200(新日本理化社製)、ヤシ油脂肪酸カリウム・ミリスチン酸カリウム配合液体である、ニッコールMNK−40(日光ケミカルズ社製)、ベヘニン酸である、NAA−222(日油社製)等が挙げられる。
【0015】
(A)成分の配合量は、特に限定されるものではないが、洗浄料全体に対して20〜40質量%(以下、「質量%」は単に「%」と略す)が好ましく、また25〜35%がより好ましい。この範囲にすることで、起泡力と品質に優れたものを得ることができる。
【0016】
本発明で使用される(B)成分のベタイン系両性界面活性剤は、泡立ちの補助、洗い流しの良さ、使用感においては、つっぱり感を減少させ、しっとり感を増強させる目的で配合される。ベタイン型両性界面活性剤としては、特に制限はないが、具体的には酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アミドベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、ホスホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤を使用することができる。ベタイン型両性界面活性剤の好ましい例として、下記一般化学式(1)で表されるアミドベタイン型両性界面活性剤をあげることができる。アミドベタイン型両性界面活性剤の好ましい例としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタインが挙げられる。泡立ち、および組成物の安定性の観点から、ラウリン酸アミドプロピルベタインが特に好ましい。
【化1】

(式中、Rは炭素原子数5〜21の直鎖または分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を、R、R3は水素原子又は炭素原子数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を、nは1〜3の整数を、mは1〜4の整数を示す。)
尚、本発明においては、予め他の溶剤と混合した物(例えば、「ラウリン酸アミドプロピルベタイン液」等)も利用出来る。
(B)成分の市販例は、例えば、アンホレックス LB−2(商品名,ミヨシ油脂社製)、リカビオン B−300(商品名,新日本理化社製)、ソフタゾリンLPB(商品名,川研ファインケミカル社製)、アンヒトール20AB(花王社製)などを例示することができる。
【0017】
(B)成分の配合量は、ベタイン型両性界面活性剤は純分換算で、洗浄料全体に対して、0.5〜10%が好ましく、より好ましくは、1〜5%である。更に好ましくは、1.5〜3%である。0.5%未満では、十分な泡質改善が得られず、10%を超えると泡切れが悪くぬるみを過度に感じる感触となるので、好ましくない。尚、本発明で言及するベタイン型両性界面活性剤は、すべて純分換算した配合量で記している。
前述のような、ベタイン液を用いる場合は、ベタイン型両性界面活性剤の量を純分換算し、適宜調調整して配合する。
【0018】
本発明で使用される(C)成分の平均重合度200〜1540のポリエチレングリコールは、保湿感の付与と系の分散安定性の目的で配合される。具体的には、ポリエチレングリコール(4EO)又はPEG−4、ポリエチレングリコール(6EO)又はPEG−6、ポリエチレングリコール(8EO)又はPEG−8、ポリエチレングリコール(12EO)又はPEG−12、ポリエチレングリコール(20EO)又はPEG−20、ポリエチレングリコール(32EO)又はPEG−32、及びそれらの混合物を挙げることができる。
(C)成分の市販例は、PEG♯200、PEG♯300、PEG♯400、PEG♯600、PEG♯1000、PEG♯1540(以上:商品名、日油社製)、ルトロールE300、ルトロールE400(BASFジャパン社製)などを例示することができる。
【0019】
(C)成分の配合量は、洗浄料全体に対して、5〜25%である。より好ましくは10〜20%である。5%未満であると、十分な保湿感が得られず、25%より多い場合には洗浄料の水分量が少なくなることから状態不良を招き、好ましくない。
【0020】
本発明で使用される(D)成分のHLB=4以下のモノステアリン酸グリセリルは、低温時の粘度上昇を抑制、特に高温時から低温時に変化した場合における粘度上昇を抑制する目的で配合される。具体的には、下記一般化学式(化2)で示される。尚、(D)成分には、(E)成分に該当する成分は含まれない。つまり、脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルは除かれる。
【化2】

(D)成分の市販例は、レオドールMS−50(花王社製)、NIKKOL
MGS−AMV(日光ケミカルズ社製)などを例示することができる。
【0021】
(D)成分の配合量は、洗浄料全体に対して、0.1〜3.0%が好ましく、より好ましくは1〜2%である。0.1%未満であると低温時の粘度上昇を抑制する十分な効果が得られず、3%より多いと高温で粘度低下を起こす原因となる。HLBは4以下が好ましく、中でも3〜4が特に好ましい。HLBが4より高いと、低温時の粘度上昇、特に高温時から低温時に変化した場合における粘度上昇を抑制する十分な効果が得られず好ましくない。
【0022】
本発明で使用される(E)成分の脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルは、高温時の粘度安定性を保持する目的で配合される。ステアリン酸グリセリルに脂肪酸塩を添加し、親水性を高めたものである。
(E)成分の市販例は、NIKKOL MGS−BSEV(日光ケミカルズ社製)、EMALEX GMS−195(日本エマルション社製)などを例示することができる。
【0023】
(E)成分の配合量は、洗浄料全体に対して、0.1〜3.0%が好ましく、より好ましくは1.0〜2.0%である。0.1未満であると、高温時の粘度安定性を保持する効果が得られず、相分離など安定性不良を起こしてしまい、3.0%より多いと設計粘度が高くなりすぎ、使用性が損なわれる。
【0024】
自己乳化型モノステアリン酸グリセリルには、脂肪酸塩を含有したタイプや、非イオン界面活性剤を含有したタイプがあるが、本発明で用いられるのは、脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを用いる。HLBには特段制限はないが、HLB=5〜8が好ましい。
【0025】
ここで、(D)成分と(E)成分の違いについて言及する。(D)成分、(E)成分ともにモノステアリン酸グリセリルであるが、(E)成分は予め脂肪酸塩を含有させものであり、(E)成分の乳化能力は、(D)成分より高い。洗浄料に配合した場合においては、(E)成分は、予め乳化しやすい処理をしたことにより、脂肪酸塩とモノステアリン酸グリセリルを別々に配合した場合とは、異なる挙動を示すことを今回確認した。詳細は、実施例において説明する。
本願発明における(D)成分、(E)成分の配合量は、前述の通りであるが、(D)成分≦(E)成分である洗浄料であると、より高温状態においても粘度低下の少ない洗浄料が得られる。
【0026】
本願発明における各成分の配合量は、前述の通りであるが、(B)成分:(E)成分=100:1〜1:6である。好ましくは30:1〜1:2、更に好ましくは、5:1〜1:1である。(B)成分の比率が多いほどぬるみが多くなる傾向があり、(E)成分の比率が多いほど製剤が硬くなる傾向がある。
【0027】
本発明の洗浄料の製造方法としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分を加熱溶解し、水酸化カリウムで中和した後、攪拌しながら冷却することで、洗浄料を得る事が出来る。
【0028】
本発明の洗浄料には、上記の必須成分の他に通常洗浄料に使用できる成分、即ち、油性成分、低級アルコール、保湿成分等の水性成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、油溶性高分子、油溶性樹脂、染料、清涼剤、色素、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で適宜配合することが可能である。
【実施例】
【0029】
下記[表1]及び[表2]に示す洗浄料を調製し、その起泡力、洗い上がりのしっとり感、粘度、高温時(37℃)での製剤の垂れ、低温時(5℃)での製剤の出しやすさ、高温から低温に温度変化させた場合の製剤の出しやすさに関し、下記の方法により確認をした。
【0030】
(製造方法)
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、および任意成分を80℃で加熱溶解し、そこに80℃に加熱溶解した中和剤水溶液を、プロペラ300rpmの条件下で少しずつ滴下して中和したのち、同じく300rpmの条件下で80℃以上を保ちながら5分間攪拌維持した。その後、攪拌しながら水冷を行い、35℃で取り出した。
尚、[表2]中のE成分(下2段)においては、比較例として、自己乳化型モノステアリン酸グリセリルの構成成分をバラバラに入れて、同程度のHLBに調整した場合を示している。
【0031】
(評価方法)
(評価項目)
イ.起泡力
ロ.洗いあがりのしっとり感
ハ.粘度
ニ.高温時(37℃)の製剤垂れ
ホ. 低温時(5℃)の製剤の出しやすさ
へ. 高温から低温に温度変化させた場合の製剤の出しやすさ
【0032】
イについては、各試料の1質量%の水溶液を作成し、ロスマイルス法にて起泡力の評価を行った。更に得られた泡の高さ値を下記3段階判定基準により判定した。ロについては専門パネル10名による使用テストを行い、そのしっとり感について、それぞれ下記絶対評価にて5段階に評価し評点をつけ、各試料ごとにパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記3段階判定基準により判定した。ハについては、各試料の30℃における粘度を、リオン株式会社製 ビスコテスターVT−04Fを用いて測定した。ニ、ホ、へについては、各試料をチューブ容器(ヒンジキャップ、チューブ径φ40、口内径φ8)に100gずつ充填したものを使用した。ニについては、チューブ試料を37℃条件に4時間静置し、口部を下向きにしてキャップを開けたときの自重での垂れ度合いを3段階判定基準により判定した。ホについては、チューブ試料を5℃条件に24時間静置したのち、株式会社イマダ製プッシュプルスケールを用いて圧迫し、製剤が1.5cm押し出された時の値を測定した。またへについては、チューブ試料を37℃条件に4日間静置したのち、さらに5℃条件に24時間静置したものをホと同様にプッシュプルスケールを用いて製剤が1.5cm押し出された時の値を測定した。
【0033】
本発明の起泡力の評価に用いたロスマイルス法(ISO696、JIS K 3362)は、次に示す手順に準じて行なった。具体的には、試験液200mlを90cmの高さから、同濃度、同温度の試験液50mlを入れた目盛管中へ、直径2.9mmの細孔を通して流し込み、流下直後の泡の高さを測定するという方法を用いて行った。
【0034】
本発明のチューブからの出しやすさの測定は下記方法により行なった。具体的には、昇降機にプッシュプルスケールをとりつけ、圧迫する冶具は直径1cmの丸型をセットした。試料を昇降機の台上に設置し、チューブの肩から4cmの部位を100mm/minの速度で圧迫し、製剤が1.5cm押し出された時の数値を測定するという方法で行なった。
【0035】

【0036】
<ロスマイルス法による泡高さ値>
3段階判定基準
○ : 300mm以上
△: 100mm以上300mm未満
× : 100mm未満
【0037】
<洗いあがりのしっとり感>
絶対評価基準
(評点) : (評価)
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
【0038】
3段階判定基準
(判定) : (評点の平均点)
○:4.0点以上:良好
△:2.5点以上4.0点未満:普通
×:2.5点未満:不良
【0039】
<高温時(37℃)のチューブ垂れ>
3段階判定基準
(判定) : (評価)
○: 全く垂れ落ちない
△ :若干垂れ落ちる
× : 流れ出る
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
脂肪酸石鹸の粘度は、一般的に20〜35Pa・s(30℃)が使用性に優れる硬さと言われている。プッシュプルスケール(kgf)は、目安として10kgf以下であると出しやすいと言える。また、低温時における製剤のプッシュプルスケール(kgf)と、高温から低温に移行した時のプッシュプルスケール(kgf)の値に差がないと、温度変化に安定であると言える。
【0043】
[表1]に本願実施例を示す。
[表1]より、本願の洗浄料は、(A)高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上、(B)ベタイン系両性界面活性剤、(C)平均重合度200〜1540のポリエチレングリコール、(D)HLB=4以下のモノステアリン酸グリセリル((E)成分に該当する成分を除く)、(E)脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルの構成にすることにより、起泡力が高く、しっとり感が十分ありながら、30℃において適切な粘度を有し、低温時、高温時、高温時から低温時へ移行した場合の製剤の出しやすさについても、適切な出しやすさを有しており、外部環境の変化においても安定な洗浄料が得られることが分かる。尚、実施例10において、高温時の製剤の垂れに若干の垂れが見られたので△の判定になっているが、比較例10における△判定よりも垂れの程度は少なく、商品化には支障のない範囲であった。
【0044】
[表2]に本願比較例を示す。各成分中破線以下の成分は、比較成分である。
比較例1より、B成分、D成分を含有しない場合には、起泡力が悪く、しっとり感に劣るだけでなく、高温から低温に変化した場合に、製剤が硬くなることが分かる。
比較例2より、B成分を含有しない場合においても、起泡力が悪く、しっとり感に劣るだけでなく、高温から低温に変化した場合に、製剤が硬くなることが分かる。
比較例3から5より、B成分をアニオン系界面活性剤や、ノニオン界面活性剤にした場合には、起泡力、しっとり感が劣ることがあり、30℃において既に硬い洗浄料になっていると言え、高温から低温に変化した場合には、急激に硬くなることが分かる。
比較例6より、C成分のポリエチレングリコールの重合度が4000となると、30℃における粘度が非常に高くなり使用性が悪くなる。また、高温から低温に変化した場合にも、非常に硬くなってしまうことが分かる。
比較例7から10より、D成分とE成分の役割を確認出来る。
比較例7は、E成分の代わりにD成分を増やした場合、比較例8は、D成分の代わりにE成分を増やした場合、比較例9は、D成分の代わりに、HLBが同程度の非イオン界面活性剤を含有する自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを配合した場合、比較例10は、E成分の代わりに非イオン界面活性剤を含有する自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを配合した場合を示す。
比較例7においては、製剤としては、起泡力、しっとり感は得られるものの、高温時にはチューブ容器から製剤が漏れ出てしまい、高温時の安定が悪いことが分かる。
比較例8から10においては、製剤としては、起泡力、しっとり感は得られるものの、高温から低温に変化した場合に、製剤が硬くなることが分かる。
比較例11、12は、E成分が含有する成分をバラバラに配合した場合を示す。比較例11、12は、製剤化後の成分としては、実質的にぞれぞれ実施例1、5と同じであるにも関わらず、高温時にはチューブ容器から製剤が漏れ出てしまい、高温時の安定が悪いことが分かる。このことから、E成分は、製剤化の際に、含有成分がバラバラに働くのではなく、ある一定の関係性を持って製剤化に関与しているものと思われる。
以上のことから、本願の構成にすることにより、起泡力が高く、しっとり感が十分ありながら、30℃において適切な粘度を有し、低温時、高温時、高温時から低温時へ移行した場合の製剤の出しやすさについても、適切な出しやすさを有しており、外部環境の変化においても安定な洗浄料が得られることが分かる。
【0045】
(処方例1)(洗顔料)
(配合成分)(質量%)
(1)ステアリン酸 14%
(2)ラウリン酸 6%
(3)ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル) 1%
(4)ジイソステアリン酸PEG−60グリセリル 3%
(5)自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1.6%
(6)モノステアリン酸グリセリル 0.4%
(7)ソルビット液 8%
(8)ポリエチレングリコール300 5%
(9)ポリエチレングリコール1540 5%
(10)ヤシ油アルキルベタイン 1.5%
(11)濃グリセリン 18%
(12)エデト酸ニナトリウム 0.05%
(13)精製水 残余
(14)水酸化カリウム(50%水溶液) 11.43%
(製法)
(1)〜(13)を80℃まで加熱し、溶解する(A相)。(14)を80℃まで加熱する(B相)。A相を攪拌しながらB相を加え、ケン化する。均一に溶解したら35℃まで冷却する。
【0046】
(処方例2)(ボディソープ)
(配合成分)(質量%)
(1)ラウリン酸 6%
(2)ミリスチン酸 6%
(3)パルミチン酸 6%
(4)ラウリン酸カリウム 2%
(5)ジイソステアリン酸PEG−30グリセリル 2%
(6)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50EO) 0.5%
(7)自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 0.5%
(8)モノステアリン酸グリセリル 0.5%
(9)N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム 3%
(10)ラウリン酸アミドプロピルベタイン 12%
(11)プロピレングリコール 3%
(12)ポリエチレングリコール1000 5%
(13)パラオキシ安息香酸メチル 0.1%
(14)エデト酸四ナトリウム 0.05%
(15)精製水 残余
(16)水酸化カリウム(50%水溶液)9.9%
(製法)
(1)〜(8)を70℃まで加熱し溶解する(A相)。(9)〜(15)を50℃まで加熱し溶解する(B相)。
(16)を50℃まで加熱する(C相)。B相を攪拌しながらA相、C相の順に加えケン化する。均一に溶解したら35℃まで冷却する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、浴室乾燥機等が設置された過酷な温度条件の浴室等においても、粘度が適切に保たれ、ペースト状の洗浄料をチューブに充填した場合においても、中身がスムーズに出すことの出来る洗浄料を提供することが出来る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(E)成分を含有する洗浄料。
(A)高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上、
(B)ベタイン系両性界面活性剤
(C)平均重合度200〜1540のポリエチレングリコール
(D)HLB=4以下のモノステアリン酸グリセリル((E)成分に該当する成分を除く)
(E)脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリル
【請求項2】
(A)〜(E)成分を含有する洗浄料。
(A)高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上を20〜40質量%
(B)ベタイン系両性界面活性剤を0.5〜10質量%
(C)平均重合度200〜1540のポリエチレングリコールを5〜25質量%
(D)HLB=4以下のモノステアリン酸グリセリル((E)成分に該当する成分を除く)を0.1〜3質量%
(E)脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを0.1〜3質量%
【請求項3】
(A)〜(E)成分を含有する洗浄料。
(A)高級脂肪酸塩から選ばれる一種又は二種以上を20〜40質量%
(B)ベタイン系両性界面活性剤を0.5〜10質量%
(C)平均重合度200〜1540のポリエチレングリコールを5〜25質量%
(D)HLB=4以下のモノステアリン酸グリセリル((E)成分に該当する成分を除く)を0.1〜3質量%
(E)HLB=5〜8の脂肪酸塩を含有した自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを0.1〜3質量%
であって、配合質量が、(D)成分≦(E)成分である洗浄料。
【請求項4】
請求項1から請求項3記載のいずれかの洗浄料において、(A)、(B)、(C)成分が下記より選択される成分であることを特徴とする洗浄料。
(A)成分が、高級脂肪酸塩中の脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ベヘニン酸から選択される選択される1種又は2種以上
(B)成分が、ベタイン系両性界面活性剤が、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインから選択される1種又は2種以上
(C)成分が、平均重合度200〜1540のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール(4EO)又はPEG−4、ポリエチレングリコール(6EO)又はPEG−6、ポリエチレングリコール(8EO)又はPEG−8、ポリエチレングリコール(12EO)又はPEG−12、ポリエチレングリコール(20EO)又はPEG−20、ポリエチレングリコール(32EO)又はPEG−32から選択される1種又は2種


【公開番号】特開2012−214391(P2012−214391A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79706(P2011−79706)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】