説明

洗浄用組成物及び洗浄方法

【課題】危険なヒドロキシルアミンを使用することなく、レジスト、レジスト残渣、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等からなる電子デバイスを洗浄する。
【解決手段】炭酸及び/又は炭酸塩、過酸化水素、フッ化アルミニウム及び水を含んで成る洗浄用組成物を用いる。炭酸及び/又は炭酸塩の含量が0.01〜40重量%、過酸化水素の含量が10ppm〜3.9重量%、フッ化アルミニウムの含量が0.01〜100重量ppm、水の含量が25〜99.9重量%とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄用組成物及び洗浄方法、特に電子デバイスの洗浄用組成物及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、LCDの製造工程において、現像、エッチングの工程を経た後の不要なレジスト残渣は、そのまま、或いはアッシングした後に、レジスト剥離液によって剥離されている。
【0003】
レジスト剥離液としては、アッシングを経ないレジスト残渣を剥離する液としてアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン)と有機溶媒から成る組成物が最も広く使用されており、アッシングを経たレジスト残渣を剥離する液としてはヒドロキシルアミンを含有する組成物が使用されている。現在では、アッシングを経た後に剥離する工程が一般的であり、ヒドロキシルアミンを含有する組成物がレジスト剥離液として主に用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、ヒドロキシルアミンは爆発性があるため危険であり、工業的に使用するには問題があり、その代替材料が求められている。
【0005】
一方、アルカノールアミンやヒドロキシルアミンを用いないレジスト剥離剤として過酸化水素とアンモニウムの炭酸塩又は燐酸塩を用いる方法が知られている(例えば特許文献2参照)。これらのレジスト剥離剤はレジスト剥離能力を上げるために過酸化水素を高濃度にする必要があった。しかし高濃度の過酸化水素は分解し易いため、それを抑制するためにラジカルトラップ性安定剤を添加する必要があり、レジスト剥離剤として必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平04−289866号公報
【特許文献2】特開2003−330205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、危険なヒドロキシルアミンを含まずに、電子デバイスを洗浄できる洗浄用組成物及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、電子デバイスの洗浄について鋭意検討した結果、炭酸及び/又は炭酸塩、過酸化水素、フッ化アルミニウム及び水を含んで成る組成物が洗浄性に極めて優れることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明は、炭酸及び/又は炭酸塩、過酸化水素、フッ化アルミニウム及び水を含んで成る洗浄用組成物及び洗浄方法である。
【0011】
本発明の洗浄用組成物において、炭酸とは、二酸化炭素水溶液のことであり、炭酸塩とはHCOの塩であり、正塩、酸性塩(炭酸水素塩)、塩基性塩がある。炭酸塩は一般的に金属酸化物又は水酸化物とニ酸化炭素とを水の存在で作用させて得ることができる。
【0012】
本発明の洗浄用組成物で使用する炭酸塩は水に可溶なものが好ましく、水に可溶な炭酸塩としては、炭酸アンモニウム塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸テルル塩等が例示できる。金属イオンの存在を嫌う用途(例えば半導体製造)においては、炭酸アンモニウム塩を用いることが特に好ましい。炭酸アンモニウム塩としてはアンモニアと炭酸の塩、アミンと炭酸の塩、第四級アンモニウムの炭酸塩等が例示できる。炭酸アンモニウムは、通常、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムの混合物として流通しており、これらの混合物を使用しても良い。さらに炭酸アンモニウム水溶液は、70℃で炭酸とアンモニアに分解することが、炭酸とアンモニアに分解した状態で使用しても良い。
【0013】
本発明の洗浄用組成物には、過酸化水素が含まれるが、使用する過酸化水素に制限はなく、過酸化水素単独で使用しても良いし、過酸化水素水などの溶液でも使用できる。
【0014】
本発明の洗浄用組成物で使用されるフッ化アルミニウムは、三フッ化アルミニウムをそのまま使用することができるが、アルミニウムとフッ酸の組み合わせを使用しても良い。
【0015】
本発明の洗浄用組成物には、水溶性有機溶媒を添加することができる。使用できる有機溶媒に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ジメチルドデシルアミンオキシド、メチルモルホリンオキシドなどのアミンオキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、バレロニトリル、トルニトリルなどの有機ニトリル、ブトキシプロパノール、ブトキシエタノール、プロポキシプロパノール、プロポキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシエタノール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルメーテルなどのエーテルアルコールを挙げることが出来、特にエーテルアルコール、有機ニトリルがレジストの剥離を促進するため好ましい。これらは単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。水溶性有機溶媒の使用量は、用途、使用条件により大きく変動するが、洗浄用組成物の総重量を基準に水溶性有機溶媒の含量が0.1〜70重量%が好ましく、1〜50重量%がさらに好ましい。水溶性有機溶媒が0.1重量%未満であると、水溶性有機溶媒を添加した効果が小さく、70重量%を越えても、水溶性有機溶媒を増やした効果は小さい。
【0016】
本発明の洗浄用組成物に含まれる水の形態にも制限はなく、水単独で使用しても良いし、他の有機溶媒などとの混合液、塩、酸、塩基などを加えた水溶液としても使用できる。
【0017】
本発明の洗浄用組成物において、炭酸及び/又は炭酸塩、過酸化水素、フッ化アルミニウム及び水の含量は、用途、使用条件により幅があるが、洗浄用組成物の総重量を基準に炭酸及び/又は炭酸塩の含量が0.01〜40重量%、過酸化水素の含量が10ppm〜3.9重量%、フッ化アルミニウムの含量が0.01〜100重量ppm、水の含量が25〜99.9重量%が好ましく、炭酸塩の含量が0.1〜30重量%、過酸化水素の含量が100ppm〜3.5重量%、フッ化アルミニウムが0.1〜60重量ppm、水の含量が39〜99.9重量%がさらに好ましい。炭酸及び/又は炭酸塩が0.01重量%未満であると、洗浄速度が実用的でないほど遅く、40重量%を越えると炭酸及び/又は炭酸塩が水溶液に溶解し難くなり、実用的ではない。過酸化水素については、10ppm未満であると洗浄速度が実用的でないほど遅く、3.9重量%を越える過酸化水素は危険性が高く、安定剤を必要とするため工業的ではない。フッ化アルミニウムについては、0.01重量ppm未満だと洗浄速度が実用的でないほど遅く、100重量ppmを超えると水に溶解しなくなるので工業的ではない。水については、25重量%未満だと、炭酸が水溶液に溶解し難くなり、99.9重量%を超えると洗浄速度が実用的でないほど遅くなる。
【0018】
本発明の洗浄用組成物は0〜100℃で使用することが好ましい。0℃未満では、洗浄速度が現実的でないほど遅く、100℃を越える温度では炭酸が水に溶解せず、洗浄性能が低下する。
【0019】
本発明の洗浄用組成物を使用して、電子デバイスを洗浄することができる。特に、電子デバイス製造工程で発生する不要のレジスト、反射防止膜などの有機物、アッシング後のレジスト残渣、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの無機物を洗浄、除去することができる。
【0020】
本発明は、アルミニウム金属へのダメージが非常に小さいため、特にアルミニウム配線の半導体を洗浄するのに有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の洗浄用組成物は、危険なヒドロキシルアミンを使用することなく、電子デバイスを洗浄することができる。
【実施例】
【0022】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
AC:炭酸アンモニウム
HPO:過酸化水素
ALF:フッ化アルミニウム
MeCN:アセトニトリル
DEG:ジエチレングリコール
BP:ブトキシプロパノール
実施例1〜9、比較例1〜3
KrF用反射防止膜を成膜したシリコンウエハを、表1記載の組成(表1の組成における残部は水である。)の水溶液に35℃で2分間浸漬した。その後、水洗、乾燥し、表面状態を観察した結果を表1に記載した。なお、反射防止膜剥離性の評価は、以下のようにした。
【0023】
◎ 完全に剥離
○ 90%以上剥離
△ 部分的に(90%未満)剥離
× 剥離せず
【0024】
【表1】

実施例10
炭酸アンモニウム1重量%、過酸化水素1重量%、フッ化アルミニウム2ppmを含む水溶液に、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタンが付着したウエハを、40℃で1分浸漬した後、流水中で2分洗浄した。表面を電子顕微鏡で観察したところ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンは完全に除去できていた。
比較例4
炭酸アンモニウム1重量%、過酸化水素1重量%、フッ化アンモニウム0.5重量%を含む水溶液に、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタンが付着したウエハを、40℃で1分浸漬した後、流水中で2分洗浄した。表面を電子顕微鏡で観察したところ、酸化アルミニウム、酸化チタンは完全に除去できていたが、酸化ケイ素は残存していた。
実施例11
実施例10と同じ液に、アルミニウムをスパッタ成膜したウエハを40℃で10分親浸漬した。アルミニウムの腐食速度を測定したところ、1分あたり2nmであった。
比較例5
比較例4同じ液に、アルミニウムをスパッタ成膜したウエハを40℃で10分浸漬した。アルミニウムの腐食速度を測定したところ、1分あたり31nmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸及び/又は炭酸塩、過酸化水素、フッ化アルミニウム及び水を含んで成る洗浄用組成物。
【請求項2】
洗浄用組成物の総重量を基準に炭酸及び/又は炭酸塩の含量が0.01〜40重量%、過酸化水素の含量が10ppm〜3.9重量%、フッ化アルミニウムの含量が0.01〜100重量ppm、水の含量が25〜99.9重量%である請求項1に記載の洗浄用組成物。
【請求項3】
炭酸塩が炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムから成る群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜請求項2に記載の洗浄用組成物。
【請求項4】
水溶性有機溶媒を含んでなることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の洗浄用組成物。
【請求項5】
水溶性有機溶媒の含量が、洗浄用組成物の総重量を基準に0.1〜70重量%である請求項4記載の洗浄用組成物。
【請求項6】
水溶性有機溶媒が、エーテルアルコール及び/又は有機ニトリルである請求項4乃至請求項5記載の洗浄用組成物。
【請求項7】
エーテルアルコールがブトキシプロパノール、ブトキシエタノール、プロポキシプロパノール、プロポキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシエタノール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルメーテルから成る群より選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の洗浄用組成物。
【請求項8】
有機ニトリルがアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、バレロニトリル、トルニトリルから成る群より選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の洗浄用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の洗浄用組成物を使用して、レジスト、レジスト残渣、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素を洗浄する方法。
【請求項10】
請求項1〜8に記載の洗浄用組成物を使用して、アルミニウム配線の半導体を洗浄する方法。

【公開番号】特開2006−56965(P2006−56965A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239200(P2004−239200)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】