説明

洗浄装置

【課題】スピンコーターカップ、半導体ウェハ、液晶ガラス基板等の被洗浄物に付着したレジスト等の有機被膜を短時間で除去するとともに、洗浄液を換えずに多数回にわたり繰り返し使用することが可能な生産性、経済性に優れた洗浄装置を提供する。
【解決手段】 洗浄室内に被洗浄物を保持する保持かごを回転可能に配設し、さらに洗浄室内に被洗浄物に向けて噴射ノズルを設置して、炭酸アルキレンによる洗浄、純水によるすすぎの後に、被洗浄物に向けて温風を噴射して液切りする。被洗浄物を洗浄した後の炭酸アルキレンは、洗浄液再生装置でオゾンにより有機被膜成分を分解して、循環再使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機被膜が付着した被洗浄物の洗浄装置に係り、特に、洗浄液として炭酸アルキレンを使用し、炭酸アルキレンを効率的に被洗浄物と接触させて洗浄時間を短縮するとともに、洗浄により炭酸アルキレン中に溶解した有機被膜成分を分解処理して洗浄効果を長時間持続するようにした洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、各工程で半導体ウェハへのレジストの塗布が繰り返し行われている。半導体ウェハへのレジストの塗布は、スピンコーターにより半導体ウェハを回転させながら、半導体ウェハ中央部に滴下されたレジストを遠心力により振り切って、所定の膜厚を半導体ウェハ表面に形成することによって行われる。スピンコート方式によって、レジストを塗布する場合、遠心力により振り切られたレジストはドレーン用のカップ(スピンコーターカップ)に落とされて回収された後、カップ外へ排出されて別の処理槽に送られる。
【0003】
このような処理工程が繰り返されると、スピンコーターカップにはカップ外へ排出されずに残留したレジストが徐々に堆積するため、定期的にスピンコーターカップをエチレングリコールやシンナー系の有機溶剤あるいはオゾン水によって洗浄することが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体ウェハ上の酸化膜やポリシリコン膜等の微細加工に使用したフォトレジスト等の有機被膜を除去・洗浄する方法としては、例えば、ピラニア処理と呼ばれる110〜140℃に加熱した硫酸(3容又は4容)/過酸化水素(1容)の混合液に半導体ウェハを10〜20分浸漬する方法、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)或いはアミン類のような有機溶剤に半導体ウェハを浸漬しイソプロピルアルコール(IPA)で該有機溶剤を置換した後、純水を用いてリンスする方法、オゾン水或いは高濃度オゾンガスを水蒸気とともに半導体ウェハに接触させる方法、炭酸エチレン及び炭酸エチレンを主体とする炭酸アルキレン洗浄液に浸漬する方法、更に本出願人が開発した被洗浄物を炭酸アルキレン洗浄液で洗浄した後、該洗浄液中にオゾンガスを吹き込みフォトレジスト等の有機被膜を分解処理して除去・洗浄性能を向上させる方法等が知られている。
【0005】
一方、洗浄を促進する方法としては、例えば、洗浄液や被洗浄物を揺動する方法、被洗浄物に超音波を照射する方法、洗浄液や被洗浄物の揺動と超音波照射とを組み合わせる方法等が一般的に用いられている。
【特許文献1】特開2002−205021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の洗浄方法は、いずれも洗浄に時間がかかり生産性が低い上に、同一洗浄液による洗浄可能回数が少ないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、スピンコーターカップ、半導体ウェハ、液晶ガラス基板等の被洗浄物に付着したレジストのような樹脂被膜を初めとする油膜や塗膜等の有機被膜を、短時間で除去するとともに、洗浄液を換えずに多数回にわたり繰り返し洗浄できる生産性、経済性の優れた洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄装置は、底部に排液口を有する洗浄室と、前記洗浄室内に鉛直方向の回転軸により回転可能に支持された被洗浄物を保持する保持かごと、前記洗浄室内に噴射ノズルを前記保持かごに向けて配置された洗浄液噴射ノズルヘッダーと、前記洗浄室内の排液口と開閉弁を介して連通され、洗浄液を再生する洗浄液再生装置と、前記洗浄液再生装置内で再生された洗浄液を前記洗浄液噴射ノズルヘッダーに圧送する洗浄液還流装置とを具備することを特徴とする。
【0009】
この洗浄装置によれば、被洗浄物を洗浄した洗浄液を洗浄液再生装置で再生し、この再生した洗浄液で被洗浄物を洗浄することにより、一度使用した洗浄液を廃棄することなく、再生した洗浄液で繰り返し被洗浄物を洗浄することができる。さらには、被洗浄物が保持された保持かごを再生した洗浄液の噴射圧力で回転させ、被洗浄物に均一に洗浄液を吹き付けることができる。
【0010】
また、本発明の洗浄装置は、底部に洗浄液排液口及びすすぎ液排液口を有する洗浄室と、前記洗浄室内に鉛直方向の回転軸により回転可能に支持された被洗浄物を保持する保持かごと、前記洗浄室内に噴射ノズルを前記保持かごに向けて配置された洗浄液噴射ノズルヘッダー及びすすぎ液噴射ノズルヘッダーと、前記洗浄室内の洗浄液排液口及びすすぎ液排液口との分岐部に設置された切り替え弁と、前記洗浄室内の前記洗浄液排液口と前記切り替え弁を介して連通され、下部にオゾン放出装置を配設した洗浄液再生装置と、前記洗浄液再生装置内で再生された洗浄液を前記洗浄液噴射ノズルヘッダーに圧送する洗浄液還流装置と、すすぎ液を前記すすぎ液噴射ノズルヘッダーに供給するすすぎ液供給装置と、前記洗浄室内の前記すすぎ液排液口と前記切り替え弁を介して連通するドレーン配管と、前記洗浄室内に前記保持かごへ向けて配置された送風ノズルとを具備することを特徴とする。
【0011】
この洗浄装置によれば、被洗浄物を洗浄した洗浄液を洗浄液再生装置でオゾンにより再生することにより、洗浄液を繰り返し使用することができる。さらには、被洗浄物が保持された保持かごを噴射ノズルからの噴射圧力や送風ノズルからの風圧で回転させ、被洗浄物に均一に吹き付けることができる。さらには、洗浄、すすぎ、液切り、乾燥を同一装置で行うことができるため、作業スペースを広くとらずに生産性を上げることができる。
【0012】
本発明における洗浄液還流装置は、直接、洗浄液再生装置内で再生した洗浄液を洗浄液噴射ノズルヘッダーに供給してもよいが、新しい洗浄液が補給されている洗浄液補給槽に再生した洗浄液を一旦貯留し、この洗浄液補給槽から洗浄液噴射ノズルヘッダーに供給するようにしてもよい。洗浄液補給槽を介して洗浄液噴射ノズルヘッダーへ供給することにより、洗浄力が低下した時に、新しい洗浄液を追加又は交換して洗浄を続けることにより、常に迅速に洗浄工程を行うことが可能となる。
【0013】
本発明における洗浄液としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸アルキレンを好適に使用することができる。炭酸エチレンを単独で用いてもよいし、炭酸エチレンに炭酸プロピレンを添加して用いてもよい。炭酸エチレンは、融点が36.4℃であるため、洗浄液を融点以上に保持するとともに、洗浄力を向上させるため、洗浄液再生装置内に温度調節装置を設け加温して用いることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明における洗浄液としては、炭酸エチレンにγ‐ブチロラクトンを添加して用いてもよい。洗浄液を加温することなく室温で被洗浄物に付着した有機被膜を剥離することができ、オゾンによる分解を多数回繰り返しても炭酸エチレン単独で用いた場合と同等の洗浄力を有することができる。
【0015】
洗浄液再生装置内には、その上部に余剰なオゾンを放出するオゾン排気口が設けられ、オゾンを接触分解するオゾン分解手段と連通している。オゾン排気口は、さらに洗浄室に設けてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄装置によれば、被洗浄物に付着した有機被膜を効率良く剥離、溶解することができる。また、この有機被膜の溶解により汚染した洗浄液は、洗浄液再生装置において分解され低分子量化されるので、洗浄液を交換することなく多数回にわたり繰り返し洗浄しても強い洗浄力を保持することができる。
【0017】
さらに、本発明の洗浄装置によれば、被洗浄物を保持する保持かごを回転可能としたことにより、噴射ノズルから被洗浄物に均一に吹き付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る洗浄装置の一例を図1に示す。図2は、図1に示す洗浄装置の上面図である。
この洗浄装置は、洗浄室1と、洗浄室1の下方に別体として設置された洗浄液再生装置2から本体部分が構成されている。
【0019】
洗浄室1のほぼ中央には、スピンコーターカップ等の被洗浄物3を保持するラック4(保持かご)が配置されている。ラック4は、洗浄室1内に鉛直方向に設けられたラック回転軸5とラック回転用ベアリング6により、独立に回転させることが可能である。
【0020】
図2に示すように、洗浄室1は、前面に被洗浄物3を出し入れする扉31の付いた密閉構造の箱型であり、洗浄室1の四隅の少なくとも1箇所には、直線状に所定間隔で配列された複数の噴射ノズル7を有する洗浄液噴射ノズルヘッダー8が設置されている。また、同様にして複数の噴射ノズル7を配列したすすぎ液噴射ノズルヘッダー9が、洗浄室1の四隅の少なくとも1箇所に設置されている。
【0021】
噴射ノズル7は、ラック4に向けて該ヘッダー8、9に設置されているが、噴射圧力によりラック4を回転させるため、ラック回転軸5に対してやや外れた方向を向くようにして該ヘッダー8、9に設置されている。噴射ノズル7としては、特に限定されるものではないが、洗浄液及びすすぎ液を狭い領域に、均一に吐出できるものが望ましい。好ましくは、ホローコーン又はフルコーンのスプレーパターンを有する1流体型あるいは2流体型スプレーが挙げられる。噴射ノズル7には、矢印で示した管路を介してポンプ20、27により洗浄液又はすすぎ液が供給される。26は、すすぎ液供給管路である。
【0022】
洗浄室1内の上部には、被洗浄物3に向けて送風ノズル10が設置されている。送風ノズル10は、送風用空気加熱器11を介して送風機12と連通している。送風機12から供給される空気流を送風用空気加熱器11で加熱して温風にする。この温風を、洗浄液液切り工程又はすすぎ液液切り工程において、送風ノズル10から被洗浄物3に向けて吹き付けることにより、被洗浄物3の表面に付着した洗浄液又はすすぎ液を下方に吹き飛ばして液切りする。
【0023】
本発明では、上述した噴射ノズル7からの噴射圧力、送風ノズル10からの風圧によって、ラック4を回転させることにより被洗浄物3全体に均一に液や空気を吹き付けることができる。なお、ラック4を一定の回転速度で回転させるため、一定の摩擦抵抗を与えるブレーキ装置を洗浄室1外のラック回転軸5の上端に動的に接続してもよい。
【0024】
洗浄室1の底部には洗浄液排液口13及びすすぎ液排液口14が開口しており、その分岐部には切り替え弁15が設置されている。本実施形態では、図3に示すように、切り替え弁15は、ロータリーアクチュエーター付き作動部32を有し、該作動部32により洗浄液排液口13側又はすすぎ液排液口14側に液の流れを切り替えることが可能である。洗浄液排液口13は洗浄液再生装置2に連通しており、すすぎ液排出口14は排すすぎ液をドレーン配管16を介して排出する。
【0025】
この切り替え弁15を切り替えることにより、洗浄液排液口13側のみ、又はすすぎ液排液口14側のみに通液できるようになっている。例えば、洗浄工程では、洗浄液排液口13を使用済みの洗浄液が通過するように切り替え弁15を切り替えて洗浄液排液口13側を開き、有機被膜成分を含む洗浄液を吐出させることができる。また、すすぎ工程では、すすぎ液排液口14をすすぎ液が通過するように切り替え弁15を切り替えてすすぎ液排液口14側を開き、使用済みの排すすぎ液を吐出させることができる。このように切り替え弁15を切り替えることで洗浄液再生装置2への排すすぎ液の混入を容易に防止することができる。なお、切り替え弁15は、洗浄室の底部に開口する排液口の数に応じて複数設置してもよい。また、その種類についても、特に限定されるものではなく、例えば、電気的に作動される電磁開閉弁、三方弁等を用いてもよい。
【0026】
洗浄液再生装置2内には、洗浄液を適温に加温するヒーター17等の温度調節装置が配置されている。洗浄液として、炭酸エチレンを単独で用いる場合は、融点が36.4℃であるため、36.4℃以上に保持する。また、洗浄液再生装置2内の底部には、中空管に多数の放出口を設けたオゾン放出器18(オゾン放出装置)が配設されている。オゾン放出器18は、オゾンを供給するオゾン供給管19と連通しており、洗浄液再生装置2内の使用済みの洗浄液中にオゾンを放出して、洗浄液に溶解している有機被膜成分を分解処理する。分解処理されて再生した洗浄液は、図1の矢印に示す管路を介してポンプ20(洗浄液還流装置)により洗浄液噴射ノズルヘッダー8に供給される。なお、このように洗浄液再生装置2内で再生した洗浄液を、直接、洗浄液噴射ノズルヘッダー8に供給してもよいが、洗浄液の洗浄効果が低減した場合に迅速に洗浄工程を行うため、新しい洗浄液が補給されている洗浄液補給槽に再生した洗浄液を一旦貯留し、この洗浄液補給槽から洗浄液噴射ノズルヘッダー8に供給するようにしてもよい。
【0027】
なお、洗浄液再生装置2内の洗浄液の洗浄力が低下した場合には、その下方に設けたバルブ21を開けて、排洗浄液が排洗浄液タンク22に送られる。
【0028】
洗浄室1及び洗浄液再生装置2の上部には、オゾン排気口23がそれぞれ開口している。余剰なオゾンが、オゾン排気口23から吸気されオゾン排気管24を通ってオゾンガス処理塔25(オゾン分解手段)に送られ、接触分解されて大気中に放出される。
【0029】
上述した洗浄装置による被洗浄物の洗浄方法は、例えば以下のようにして行う。本発明において、被洗浄物の洗浄は、洗浄工程、洗浄液液切り工程、すすぎ工程、すすぎ液液切り工程及び洗浄液のオゾン処理工程によって行われる。
【0030】
〈洗浄工程〉
洗浄液再生装置2内に注入された洗浄液をポンプ20により洗浄液噴射ノズルヘッダー8の噴射ノズル7から吐出させる。洗浄液は、噴射量30〜60L/min、噴射圧力0.1〜0.5MPaであることが好ましい。洗浄液の噴射圧力によってラックを10〜50rpmで回転させて、ラック4内に保持された被洗浄物3全体に均一に洗浄液を吐出して洗浄する。このとき、洗浄室1底部の切り替え弁15を切り替えて洗浄液排液口13側を開き、有機被膜成分を含む使用済みの洗浄液を洗浄液再生装置2に送る。洗浄液再生装置2に送られた該洗浄液は、オゾンによる有機被膜成分の分解処理を経て、ポンプ20により洗浄液噴射ノズルヘッダー8に供給されて、再び噴射される。
【0031】
なお、被洗浄物3をラック4内に保持する際、被洗浄物3が、例えばレジスト塗布用スピンコーターカップのようなお椀型の形状である場合には、洗浄の効率を上げるために、重なり合わないように配置することが望ましい。
【0032】
洗浄液として、炭酸エチレンを単独で用いる場合は、洗浄液再生装置2内のヒーター17等により加温して用いることが好ましい。具体的には、炭酸エチレンの融点の36.4℃以上に加温して用いることが好ましく、特に、洗浄液循環中に固化することを防ぐために40℃以上、被洗浄物3の熱による変形を防止するために80℃以下の温度範囲で加温して用いることがより好ましい。
【0033】
また、洗浄液として、炭酸エチレンにγ‐ブチロラクトンを添加して用いてもよい。洗浄液を加温することなく室温で、炭酸エチレンを単独で用いる場合と同等の洗浄力を有することができる。炭酸エチレンとγ‐ブチロラクトンは、85/15(炭酸エチレン85wt%、γ‐ブチロラクトン15wt%)〜55/45(炭酸エチレン55wt%、γ‐ブチロラクトン45wt%)となる重量比で配合することが好ましい。
【0034】
洗浄時間は、通常は1分〜5分間であるが、有機被膜の付着の程度に応じて変えることが望ましい。例えば、有機被膜の付着量も少なく、付着してから洗浄を行うまでの時間が短い場合には、短時間で洗浄することが可能であるが、有機被膜が付着してから洗浄を行うまでに時間が経って有機被膜が乾燥固化していたり、或いは有機被膜の付着量が多い場合には洗浄時間を長くする必要がある。
【0035】
通常、洗浄液として炭酸エチレンを用いて揺動洗浄を行う従来の場合には、最低でも20分間程度の洗浄時間を必要とするが、本発明によれば5分以下で同等以上の洗浄効果を発揮することが可能である。
【0036】
〈洗浄液液切り工程〉
洗浄液による洗浄が終了後、洗浄室1内面や被洗浄物3に付着した洗浄液を除去し洗浄液の持ち出し量を減らすために、洗浄室1内面や被洗浄物3に空気流を吹き付け洗浄液の液切りを行う。洗浄室1内の上部には、配管を介して送風機12と連通した送風ノズル10が設置されている。被洗浄物3に付着した洗浄液の液切りを行うことによって、洗浄液の持ち出し量を低減し、循環洗浄による洗浄液の減少を抑えることができる。
【0037】
〈すすぎ工程〉
洗浄液の液切りが完了した後、純水によるすすぎを5〜20分間行う。すすぎ液供給装置から供給された純水をポンプ27によりすすぎ液噴射ノズルヘッダー9の噴射ノズル7から吐出させる。すすぎ液は、噴射量5〜20L/min、噴射圧力0.1〜0.5MPaであることが好ましい。すすぎ液の噴射圧力によってラックを10〜50rpmで回転させ、ラック4内に保持され洗浄液の付着した被洗浄物3全体に均一にすすぎ液を噴射してすすぎを行う。このとき、洗浄液再生装置2に廃すすぎ液が混入することを防止するため、切り替え弁15を切り替えて、すすぎ液排出口14側を開き、排すすぎ液をドレーン配管16を介して、洗浄室1外へ排出する。
【0038】
すすぎ液としては、比抵抗値が1MΩ・cm以上の純水が好ましい。また、すすぎ液の温度は、被洗浄物3の熱による変形を防止し、次工程のすすぎ液液切り工程にて有利になるよう25〜80℃の範囲とすることが好ましい。
【0039】
〈すすぎ液液切り工程〉
すすぎ液(純水)によるすすぎが完了後、60℃程度の温風により被洗浄物3の乾燥を20〜40分間行う。ここでは、洗浄液液切り工程で使用した送風ノズル10を兼用する。このとき送風量0.1〜0.8m/minであることが好ましい。この風量によってラック4を10〜50rpmで回転させ、ラック4内に保持された被洗浄物3全体に均一に温風を吹き付けて乾燥させる。
【0040】
〈洗浄液のオゾン処理工程〉
洗浄液再生装置2内において、オゾン放出器18から放出されたオゾンにより洗浄液中の有機被膜成分(有機物)を分解処理する。オゾン放出器18は有機物を効率よく分解するため、洗浄液再生装置2の底部に配置され、できるだけ広い領域に均等に気泡を放出するものであることが好ましい。このような分解処理は、すすぎ工程及びすすぎ液液切り工程の各工程で行われる。分解処理の済んだ洗浄液は、洗浄工程にて再び洗浄液として再利用される。
【0041】
一方、オゾン放出器18から放出された余剰なオゾンガスは洗浄室1及び洗浄液再生装置2上部のオゾン排気口23を通ってオゾンガス処理塔25に送られ、分解処理されて大気中へ無害な物質として放出される。余剰なオゾンを分解処理方法としては、例えば、活性炭吸着分解法、加熱分解法、接触分解法(二酸化マンガン・酸化第一鉄・酸化ニッケル等)、薬液洗浄法(水酸化ナトリウム水溶液等)、薬液還元法(還元性薬剤)等が挙げられ、特に限定されるものではないが、取扱いやコスト面から、接触分解法を用いることが好ましい。
【0042】
以上の各工程は、予めコンピュータにプログラムされており、シーケンシャルに自動又は半自動でこれらの工程が順に行われる。
【0043】
なお、本発明の洗浄装置は、被洗浄物について特に限定はなく、レジスト等の樹脂被膜を初めとする油膜や塗膜等の有機被膜が付着した被洗浄物に適用することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
本実施例に用いられる洗浄装置は、図1に示す構成である。洗浄室は480mm×410mmの扉を有する600mm×600mm×560Hmmの密閉構造の箱型である。この洗浄室内には、そのコーナーに洗浄液噴射ノズルヘッダー、すすぎ液噴射ノズルヘッダーが1つずつ設置されている。該ノズルヘッダーには、それぞれ噴射ノズルが5つ設置されている。また、洗浄室の中央部には、8インチ用のレジスト塗布用スピンコーターカップを2セット収容できる550mm×550mm×190Hmmのラックが回転可能に設けられている。洗浄室の下方に設置された洗浄液再生装置は、600mm×390mm×280Hmm(内容積:約65L)でSUS−316材の厚み1mmのSUS板を用いて作製されている。
【0045】
(実施例1)
50℃に加温溶解した炭酸エチレン46L(約60kg)を洗浄液再生装置に注入した。これをヒーターにより60℃まで昇温した。約40gのノボラック型レジストが付着した8インチ用のレジスト塗布用スピンコーターカップ1セットをラックに収容し、切り替え弁の洗浄液排液口側を開にし、30秒間ポンプにて噴射ノズルより噴出させ、スピンコーターカップの洗浄を行った。このとき洗浄液の噴射量は40L/min、噴射圧力は0.2MPaであり、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に洗浄液がかかるように洗浄を行った。
【0046】
炭酸エチレンによる洗浄後、洗浄室の壁面、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した炭酸エチレン溶液の液切りを行うために0.5m/minのエアーにて液の吹き飛ばしを5分間行った。その後、切り替え弁のすすぎ液排液口側を開にし、すすぎポンプより比抵抗値1MΩ・cmの純水を10L/min、0.1MPaで10分間スピンコーターカップに噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に純水がかかるようにすすぎを行った。
【0047】
すすぎ後、洗浄室の壁面、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した純水を吹き飛ばすために洗浄室内に60℃の温風を0.5m/minで30分間供給し、この風量によりラックを30rpmで回転させスピンコーターカップ全体に温風を吹き付けた。これにより、スピンコーターカップに付着していたノボラック型レジストは完全に除去されて、スピンコーターカップを洗浄室から取り出すことができた。
【0048】
すすぎ工程及びすすぎ液液切り工程の各工程において、洗浄液再生装置では、洗浄工程で炭酸エチレン中に溶け込んだノボラック型レジストを分解するために、オゾン放出管よりオゾンを8L/min、60g/Nm3で40分間供給した。ノボラック型レジストの溶解により赤褐色になった炭酸エチレンが淡黄色透明の液になり、ノボラック型レジストのオゾンによる分解が確認された。
【0049】
(実施例2)
実施例1で使用した炭酸エチレン溶液を50℃に加温溶解し、46L(約60kg)を洗浄液再生槽に注入した。これをヒーターにより60℃まで昇温した。約40gのノボラック型レジストが付着した8インチ用のレジスト塗布用スピンコーターカップ1セットをラックに収容し、切り替え弁の洗浄液排液口側を開にし、30秒間ポンプにて噴射ノズルより噴出させ、スピンコーターカップの洗浄を行った。このときの洗浄液の噴射量は40L/minで噴射圧力は0.2MPaで噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に液がかかるように洗浄を行った。
【0050】
炭酸エチレンによる洗浄後、洗浄室の壁面、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した炭酸エチレン溶液の液切りを行うために、0.5m/minのエアーにて液の吹き飛ばしを5分間行った。その後、切り替え弁のすすぎ液排液口側を開にし、すすぎポンプより比抵抗値1MΩ・cmの純水を10L/min、0.1MPaで10分間スピンコーターカップに噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に純水がかかるようにすすぎを行った。
【0051】
すすぎ後、洗浄室の壁面や、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した純水を乾燥させるために洗浄室内に、60℃の温風を0.5m/minで30分間供給し、この風量によりラックを30rpmで回転させスピンコーターカップ全体に温風を吹き付けた。これにより、洗浄室より取り出したスピンコーターカップは、付着したノボラック型レジストは完全に除去され、すすぎでの純水も乾燥して取り出すことができた。
【0052】
すすぎ工程及びすすぎ液液切り工程の各工程において、洗浄液再生装置では、洗浄工程で炭酸エチレン中に溶け込んだノボラック型レジストを分解するために、オゾン放出管より8L/minで60g/Nmで40分間供給した。ノボラック型レジストの溶解により、赤褐色になった炭酸エチレンが淡黄色透明の液になり、ノボラック型レジストのオゾンによる分解が確認された。
【0053】
(実施例3)
ノボラック型レジストを6.4kg溶解し30g/hrで480hrオゾン処理を行った炭酸エチレン溶液60kgを50℃に加温溶解し、洗浄液再生装置に注入した。ヒーターにより60℃まで昇温した。約40gのノボラック型レジストが付着した8インチ用のレジスト塗布用スピンコーターカップ1セットをラックに収容し、切り替え弁を洗浄液排液口側を開にし、90秒間ポンプにて噴射ノズルより噴出、スピンコーターカップの洗浄を行った。このときの洗浄液の噴射量は40L/minで噴射圧力は0.2MPaで噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に液がかかるように洗浄を行った。
【0054】
炭酸エチレンでの洗浄後、洗浄室の壁面や、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した炭酸エチレン溶液の液切りを行うために0.5m/minのエアーにて液の吹き飛ばしを5分間行った。その後、切り替え弁のすすぎ液排液口側を開にし、すすぎポンプより比抵抗値1MΩ・cmの純水を10L/min、0.1MPaで10分間スピンコーターカップに噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に純水がかかるようにすすぎを行った。
【0055】
すすぎ後、洗浄室の壁面や、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した純水を乾燥させるために洗浄室内に、60℃の温風を0.5m/minで30分間供給し、この風量によりラックを30rpmで回転させスピンコーターカップ全体に温風を吹き付けた。これにより、洗浄室より取り出したスピンコーターカップは付着していたノボラック型レジストは完全に除去され、すすぎでの純水も乾燥して取り出すことができた。
【0056】
すすぎ工程及びすすぎ液液切り工程の各工程において、洗浄液再生装置では、洗浄工程で炭酸エチレン中に溶け込んだノボラック型レジストを分解するために、オゾン放出管より8L/minで60g/Nmで40分間供給した。ノボラック型レジストの溶解により赤褐色になった炭酸エチレンが淡黄色透明の液になり、ノボラック型レジストのオゾンによる分解が確認された。
【0057】
(実施例4)
炭酸エチレン60kgにγ−ブチロラクトンを26kg添加して混合液を調整し、これを洗浄液として46Lを洗浄液再生装置に注入した。この洗浄液は室温のままで使用した。約40gのノボラック型レジストが付着した8インチ用のレジスト塗布スピンコーターカップ1セットをラックに収容し、切り替え弁の洗浄液排液口側を開にし、30秒間ポンプにて噴射ノズルより噴出させ、スピンコーターカップの洗浄を行った。このときの洗浄液の噴射量は40L/minで噴射圧力は0.2MPaで噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に液がかかるように洗浄を行った。
【0058】
洗浄液による洗浄後、洗浄室の壁面、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した洗浄液の液切りを行うために、0.5m/minのエアーにて液の吹き飛ばしを5分間行った。その後、切り替え弁のすすぎ液排液口側を開にし、すすぎポンプより比抵抗値1MΩ・cmの純水を10L/min、0.1MPaで10分間スピンコーターカップに噴射し、この噴射圧力によりラックを30rpmで回転させ、スピンコーターカップ全体に純水がかかるようにすすぎを行った。
【0059】
すすぎ後、洗浄室の壁面、スピンコーターカップ、ラック、噴射ノズル等に付着した純水を乾燥させるために洗浄室内に、60℃の温風を0.5m/minで30分間供給し、この風量によりラックを30rpmで回転させスピンコーターカップ全体に温風を吹き付けた。これにより、洗浄室より取り出したスピンコーターカップは付着していたノボラック型レジストは完全に除去され、すすぎでの純水も乾燥して取り出すことができた。
【0060】
すすぎ工程及びすすぎ液液切り工程の各工程において、洗浄液再生装置では、洗浄工程で洗浄液中に溶け込んだノボラック型レジストを分解するために、オゾン放出管より8L/minで60g/Nmで40分間供給した。ノボラック型レジストの溶解により、赤褐色になった洗浄液が淡黄色透明の液になり、ノボラック型レジストのオゾンによる分解が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る洗浄装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す洗浄装置の上面図である。
【図3】図1に示す切り替え弁の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0062】
1…洗浄室、2…洗浄液再生装置、3…被洗浄物、4…ラック、5…ラック回転軸、6…ラック回転用ベアリング、7…噴射ノズル、8…洗浄液噴射ノズルヘッダー、9…すすぎ液噴射ノズルヘッダー、10…送風ノズル、11…送風用空気加熱器、12…送風機、13…洗浄液排液口、14…すすぎ液排液口、15…切り替え弁、16…ドレーン配管、17…ヒーター、18…オゾン放出器、19…オゾン供給管、20…ポンプ、21…バルブ、22…排洗浄液タンク、23…オゾン排気口、24…オゾン排気管、25…オゾン処理塔、26…すすぎ液供給管、27…ポンプ、31…扉、32…作動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に排液口を有する洗浄室と、
前記洗浄室内に鉛直方向の回転軸により回転可能に支持された被洗浄物を保持する保持かごと、
前記洗浄室内に噴射ノズルを前記保持かごに向けて配置された洗浄液噴射ノズルヘッダーと、
前記洗浄室内の排液口と開閉弁を介して連通され、洗浄液を再生する洗浄液再生装置と、
前記洗浄液再生装置内で再生された洗浄液を前記洗浄液噴射ノズルヘッダーに圧送する洗浄液還流装置と
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
底部に洗浄液排液口及びすすぎ液排液口を有する洗浄室と、
前記洗浄室内に鉛直方向の回転軸により回転可能に支持された被洗浄物を保持する保持かごと、
前記洗浄室内に噴射ノズルを前記保持かごに向けて配置された洗浄液噴射ノズルヘッダー及びすすぎ液噴射ノズルヘッダーと、
前記洗浄室内の洗浄液排液口及びすすぎ液排液口との分岐部に設置された切り替え弁と、
前記洗浄室内の前記洗浄液排液口と前記切り替え弁を介して連通され、下部にオゾン放出装置を配設した洗浄液再生装置と、
前記洗浄液再生装置内で再生された洗浄液を前記洗浄液噴射ノズルヘッダーに圧送する洗浄液還流装置と、
すすぎ液を前記すすぎ液噴射ノズルヘッダーに供給するすすぎ液供給装置と、
前記洗浄室内の前記すすぎ液排液口と前記切り替え弁を介して連通するドレーン配管と、
前記洗浄室内に前記保持かごへ向けて配置された送風ノズルと
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液還流装置は、前記洗浄液再生装置内の洗浄液とは別の新規な洗浄液を補給可能とする洗浄液補給槽を介して、前記洗浄液噴射ノズルヘッダーに洗浄液を圧送することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液の温度を所定温度に保持する温度調節装置を、さらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液再生装置は、その上部にオゾン排気口を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液は、炭酸エチレンを主体とする炭酸アルキレンからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液は、炭酸エチレンにγ‐ブチロラクトンを添加してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−278685(P2006−278685A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95208(P2005−95208)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【出願人】(595071759)株式会社ナムテック (3)
【Fターム(参考)】