説明

流体処理装置および流体処理方法

マイクロ波放射を用いた流体処理装置であって、実質的に円柱状のチャンバーを画する側壁と、対向する第1および第2の端壁と、を有する容器であって、前記第1の端壁は、前記第2の端壁から予め決められた間隔dを持って配置された容器と、流体を流すためのパイプラインであって、前記容器の前記第2の端壁に向かって前記第1の端壁を貫通し、前記チャンバーと実質的に同軸であり、マクロ波放射に対して実質的に透明であるパイプラインと、前記チャンバー内に波長λのマイクロ波を放射させるための前記容器の側壁に設けられたマイクロ波放射の導入口と、を備え、前記チャンバーがマイクロ波共振器となるように、前記間隔dがλ/2の整数倍に実質的に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、スラリー、半固体および懸濁液を処理するマイクロ波装置および方法に関する。その処理は、例えば、加熱、溶解、滅菌、低温殺菌、調理、化学反応の促進および成分の分別を含む。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波の照射を用いた流体の処理、滅菌および低温殺菌のための装置および方法が知られている。典型的には、これらは、製造および組立が難しい高価で複雑な部品を含み、RU2087084に例示されるように、導波路や照射エネルギーが高い電源を必要とする場合が多い。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つの形態によれば、マイクロ波の放射により流体の流れを処理するための装置が提供される。その装置は、実質的に円筒形のチャンバーを画する側壁と、対向する第1および第2の端壁(end wall)と、を有し、第1の端壁が第2の端壁から予め決められた距離dをもって配置された容器と、流体を流すためのパイプラインであって、その容器の第1の端壁から第2の端壁に貫通し、チャンバーと同軸であり、マイクロ波の照射に対し実質的に透明なパイプラインと、容器の側壁において、チャンバー内に波長λのマイクロ波を照射可能にするマイクロ波照射の導入口と、を備え、チャンバーがマイクロ波共振器となるように、距離dは実質的にλ/2の整数倍に等しい。
【0004】
本発明に係る装置は、処理される流体にマイクロ波照射源のエネルギーを移送する高効率な手段を提供する。
【0005】
マイクロ波を用いた処理、マイクロ波を用いて処理する、マイクロ波を用いて処理されたという表現、および、それらに関連する形態は、熱処理、非熱処理を含み、調理、低温殺菌、滅菌、凝析、成分の分別、および、部分的もしくは実質的に完全な不活性化のいずれか、または、ウィルスまたは原生動物もしくはその両方のような、生物分子または他の分子種、もしくはその両方の破壊のいずれかを含む。
【0006】
発明に係るマイクロ波処理は、例えば、血液やミルクなどタンパク性の流体に関し特に有効である。その処理は、成分の分別またはタンパク液のある成分の破壊に帰着できる。
【0007】
典型的には所定の動作周波数を有するマグネトロンであるマイクロ波の照射源に対し、得られるマイクロ波照射の波長λは、いくらかの広がりを持って、共振チャンバーおよびその中身のパラメータに依存するだろう。例えば、2.45GHzのマグネトロンは、真空中において、λ=12.2cmのマイクロ波を放射するが、発明に係る装置のチャンバー内では、通常、λ=13cm程度のマイクロ波照射が得られる。
【0008】
容器のチャンバーにより供されるマイクロ波共振器の効率は、容器の対抗する端壁の間の距離dに敏感であり、その感度は、dに対応するλ/2の倍数に依存する。効率は、λ/2からの±1%までのわずかなdのずれに対し非常に高い感度を有するが、λ(=2×λ/2)からの±10%程度までのdのずれに対しては、かなり鈍感である。さらに、λ/2の倍数が大きくなるほど効率は低下する。λの倍数が大きくなるほど、装置は扱いにくくなる。したがって、dはλ/2の1から3倍であることが望ましく、λ/2の1または2倍であれば有利である。そして、λ(=2×λ/2)に実質的に等しいことが最も好ましい。
【0009】
チャンバー容器の内径dは、長さdほど重要ではない。しかしながら、直径dが、2λより大きくなく、0.6λより小さくならないように選択されることが望ましい。dは、1〜2λであることが望ましい。
【0010】
チャンバー容器の壁は、通常、導電材であるか、導電材がコートされるべきである。望ましくは、導電性の高い金属、好ましくは、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮などである。チャンバーの壁には、適宜、銀または金メッキが施される。その材料は、一般的に、チャンバー容器の内部からのマイクロ波照射の漏れを最小にするか、チャンバー容器の壁にマイクロ波照射が吸収されるように選択される。
【0011】
本発明には、大抵のマイクロ波放射源を使用することができる。電子レンジに用いられるような市販の標準的なマグネトロンを用いても良い。本発明によれば、これらは広く利用され、比較的安価であり、装置への組み込みが容易である。そのようなマグネトロンは、典型的には、2.3から2.7GHzの範囲の周波数、例えば、2.45GHzまたは2.6GHz程度(チャンバー内における典型的なマイクロ波放射の波長、13.04〜11.11cms、例えば、12.24または11.54cms程度)のマイクロ波を発生する。
【0012】
マイクロ波照射は、マイクロ波照射の導入口を介し、チャンバー容器の側壁を通してチャンバー容器に導入される。好ましくは、マイクロ波照射の導入口は、チャンバーの長手方向の広さ(d)に対して中央から外れ、長手方向の中心軸に沿ったマイクロ波のエネルギーレベルが、最大のエネルギーレベルの30から60%、有利には40から50%となる位置が望ましい。両端の壁の間における現実の位置は、当然ながらdとλの関係に依存するだろう。そして、dがλにほぼ等しい場合、好適な位置は、原理的に、上流側の端の壁から下流側の端の壁にdの10〜15%、30〜35%、55〜60%および75〜80%のいずれかであれば良い。しかし、最も好ましくは、マイクロ波照射の導入口は、dの75〜80%である。
【0013】
流体の流れる方向にある第2の端の壁(下流側)にマイクロ波導入口の位置を近づけるほど、処理を受けるためにパイプラインを介して流れる流体の処理および加熱が緩やかになり、流体は、最大のマイクロ波エネルギーが供給されるパイプラインに沿った位置に到達する前に部分的に処理されるだろう。
【0014】
流体がパイプラインの中に存在する時は、一般的に、マイクロ波放射源を保護する必要はなく、製造コストおよび装置の複雑さの大幅な低減に寄与する。とは言っても、望むならば、放射源へ戻るマイクロ波エネルギーの大きな反射に対する保護を施すことができる。そのような場合には、放射源がダメージを受けるリスクのない他の位置にマイクロ波の導入口を設けることもできる。好適な保護装置は公知であり、典型的には、マグネトロンから延在する導波路におけるマイクロ波の逆止弁として機能するように構成されたフェライト部品を備える。
【0015】
例えば、パイプラインを水平に配置した装置、および、パイプラインを垂直に配置した装置を含む、多様な異なる向きの装置を利用することができる。後者は、一般に、チャンバー内にトラップされマイクロ波放射源にダメージを与える可能性のある気泡のリスクを実質的に最小にする場合に好まれる。また、例えば、傾いたパイプラインなど、他の配置も用いることができる。水平に配置のパイプラインを用いる場合には、好適な気泡のトラップ手段が設けられるだろう。その様々な例は、流体を取り扱う技術分野で良く知られている。例えば、パイプラインの下流側の端を、装置よりも高い位置に出口を有するパイプに連通させることができる。チャンバーの側壁および端壁の参考文献は、装置の向きに関わらず、チャンバー内部のパイプラインの配置に関係する。
【0016】
好適なマグネトロン型マイクロ波放射源は、一般的に、マグネトロン本体から外側に延在しマイクロ波を放射する円柱状のロッドアンテナを有する。チャンバー容器は、マイクロ波放射源と結合し、実質的なマイクロ波放射の漏れ防止の接続を形成するように形成され、そして、配置される。マイクロ波放射源の筐体は、λ/4の長さを有するアンテナがマイクロ波放射源からチャンバー容器の内部に向けて延在するように、チャンバーの壁から後退して設けられる。装置の性能は、チャンバーの側壁およびパイプラインとの関係におけるアンテナの遠端および近端の位置に比較的敏感である。
【0017】
アンテナの遠端(開放端)は、チャンバーの側壁から3λ/16以上、λ/4以下の予め決まられた突出間隔dを持って配置されるだろう。d:λの比が好適な比から外れるにつれて、マイクロ波の反射波の戻りによるマグネトロンへの熱の移送が増え、マグネトロンにダメージを与えるだろう。このエネルギーの望ましくない移送は、流体の処理効率も悪化させる。望ましいdは、λ/5の±10%以内である。
【0018】
装置の性能は、チャンバーの長さdに沿ったチャンバーの端壁からのアンテナ位置に敏感であることが実験的に分かっている。これらの間隔はdおよびdとして言及され、dは1つの端の壁からアンテナまでの間隔であり、dは他の端の壁からアンテナまでの間隔であり、dおよびdの和は、dに等しい。
【0019】
好ましい一態様において、本発明は、前記マイクロ波放射の導入口に結合されたマイクロ波放射源を備えた発明に係る流体を取り扱う装置を含む流体処理装置を提供する。
【0020】
装置は、処理される流体の温度を検出するための温度検出手段および温度監視手段を備える。好適な温度検出器は、抵抗温度計、熱電対などを含むが、これに限定される訳ではない。そのような温度検出器は、供給されるマイクロ波の強度を変えることが可能なマイクロ波放射源のコントローラに接続されるだろう。また、より便利には、可変流量ポンプ、流量制御バルブなどのような、流体の過熱を防ぐ流量コントローラに接続される。これは、生体液、血液、血漿、ミルクなどのような温度に敏感な流体が処理されている場合に重要であり、例えば、流体の成分の凝固および凝析を防ぐために、流体の過熱を避けることが必要である。そのような流量制御は、ある用途に対し、例えば、調理、低温殺菌、滅菌、成分分離、または、化学反応の制御など、温度および曝露時間が決定的である状況において、これらのパラメータの詳細な制御を可能とするためにも重要である。
【0021】
本発明の1つの利点は、マイクロ波照射による加熱の非接触性が、一般に、流体の局部的な加熱のリスクを大きく低減することであり、特に、パイプラインの内壁におけるリスクを低減する。
【0022】
パイプラインは、かなりの程度のマイクロ波放射まで、そのエネルギーを吸収せず実質的に透明な材料であることが好ましい。好ましくは、そのような材料は、2〜4の範囲の誘電率を有する。好適な材料は、石英、ポリエチレン、そして、好ましくは、PTFE(polytetrafluorethene)を含む。
【0023】
パイプラインの壁は、適当な厚さで良いが、パイプラインを通して送り込まれる流体によりもたらされる圧力に耐える十分な強度を有すべきである。一般に、パイプラインの壁は、3〜10mmの範囲、典型的には5〜8mmの厚さを有する。そのようなパイプラインは、それ自身が誘電体アンテナとして動作し、マイクロ波がその内部において流体により吸収されるまで、パイプラインの材料を介して伝播させることが可能である。
【0024】
マイクロ波の照射エネルギーは、パイプラインを通して流れる流体の温度を上昇させるので、流体の誘電率が小さくなり、マイクロ波放射の侵入度が高くなる。この結果、パイプラインの中央における(すなわち、長手方向の中心軸に沿った)流体は、より強い処理に曝される。有利なことに、パイプラインの半径方向の内側領域および外側領域の間における流体の流れの処理の均一性を高めるために、静的または動的な混合器がパイプラインの内部に設けられる。
【0025】
流れる流体によるマイクロ波放射の吸収がさらに増加するように、装置は、予備加熱器を有する。そのような予備加熱器は、流体との接触に基づく電気抵抗型加熱要素、熱交換器など、熱交換要素を通過する熱交換流体からの熱伝導により熱を供給するもの、輻射または対流型ヒータのような他の種類の放射型熱源など、多様な形態が可能である。一般に、予備加熱は、流体温度を運搬するように実施することが望ましい。これは、流体内部へのマイクロ波エネルギーの侵入度を高める利点を有し、これにより、処理プロセスの効率を高める。予備加熱器が用いられた場合、凝析などを避けるために、流体の局部的な過熱を回避することに留意すべきである。例えば、血液を加熱する場合、40Cの温度を越えないようにすべきである。マグネトロン、あるいは、可能であれば他の部品の冷却に用いられる冷却媒体を、流体を予備過熱するための熱源として用いても良い。
【0026】
パイプラインを通して加熱されるように流体を送り出すポンプを設けても良い。歯車ポンプ、ピストンおよびシリンダ式レシプロポンプ、羽根式ポンプ、斜板式ポンプ、ぜん動ポンプ、および、ポンプとして動作する場合の容積式器機、一軸ねじポンプ(progressive cavity pump)等を含む多様な異なるポンプが適合するが、これに限定される訳ではない。
【0027】
装置は、発明に係る複数の装置の個々を直列に相互接続したモジュールの形態に設け、流体が、連続したモジュールのそれぞれのマイクロ波放射源からのマイクロ波放射にさらされるようにしても良い。これは、高い流速、または、個々のマイクロ波処理装置モジュールの最適な構成、もしくは、その両方を維持しながら、与えられた流速において、より長い処理ための滞留時間が得られることを可能とする利点を有する。この接続において、連続したモジュールにおけるパイプラインの下流側の端および上流側の端は、それを介した流体の実質的に遮断されない流れを可能とするように相互接続することができる。さらなる選択肢として、複数のモジュールを並列に接続することができる。
【0028】
好ましくは、パイプラインの外形dは、λ/πに等しいか、λ/πよりも大きい。例えば、λが13cmにほぼ等しいマイクロ波を用いる場合、相互に接続されたモジュールのマイクロ波放射源の干渉を制限するために、dは、41mm〜65mmの範囲にあることが好ましく、45mm〜50mmが最も好ましい。チャンバー容器を相互に接続することにより、パイプライン通して流れる流体は、パイプラインを通して流れる時に複数のチャンバー容器において逐次的に処理されるだろう。接続されたチャンバー容器の数を増やすことにより、流体の流速を増やすことができる。これにより、流体のより大きな量の処理を促進できる。処理モジュールの数がいくつであっても、パイプラインの長さを増やすために個々のモジュールの間にスペーサを導入しても良い。処理モジュールの数を変化させることにより、どの温度に対しても流体の保持時間を変えることができる。
【0029】
圧力制御システムは、デバイス内の圧力を変化させるためにデバイスの出口側に設けられる。これは、パイプラインの材料および構造の物理的性質により制限される処理パラメータの範囲を拡張するのに役立つであろう。
【0030】
ある数のチャンバー容器が相互に接続された場合、隣接するチャンバー容器にマイクロ波が侵入する可能性がある。パイプラインの好ましい外径dがλ/2よりも小さく、チャンバーの端壁がパイプラインを囲んだダイアフラム状である場合、チャンバー容器間におけるマイクロ波の侵入の発生が抑制されるごとが分かっている。典型的には、ダイアフラムは、金、銅または真鍮のような金属である。効果が劣るが、代わりにステンレス綱を用いても良い。網状の金属も適合する。しかしながら、これは、一般的にシート状の金属よりも高価である。
【0031】
チャンバー容器の内側と、パイプラインの外側と、の間における環状の空間の厚さ(d)(すなわち、d−d)は、好ましくは、λ/2±1%に等しい。
【0032】
パイプラインの内径dは、処理されるべき流体、および、流体へのマイクロ波の侵入度に依存して好適な寸法となるように選択される。マイクロ波の侵入度が大きい程、パイプラインの中心における流体の効率的な処理を確保しながらdを大きくできる。例えば、マイクロ波は、水の10〜12mm程度の深さまで侵入することが知られているが、血液中ではさらに侵入することができ、血液の温度が高くなれば、侵入度は高くなる。加熱された血液の浸入度の上限は、約15mmにである。血液を処理するための装置において、30mm〜32mmの内径dを有するパイプラインが好適であることが分かっている。
【0033】
発明者は、装置の部品の寸法d〜dの値を、典型的には、次のプロセスにしたがって決定できることを見出している。チャンバーの内径dは、すぐに利用できる標準のパイプに基づいて決定される。それは、実用的なサイズの装置を提供するために適したサイズであり、0.6λ以上、2λ以下の好適な範囲を充足する。次に、パイプを選択する。これは、上記のように、処理される流体に適合する内径dと、λ/π≧d<λ/2の好適な範囲にある外径と、を有さねばならない。
【0034】
の値は、一般的に、選択されたλ/2の倍数にしたがって予め決定され、残るdおよびd(したがって、d)の寸法は、実験によりすぐに決めることができる。これは、典型的には、dおよびdの異なる増分に対して、処理された流体の温度、および、マグネトロンの温度における1分間の増加を計測することにより行われ、望ましい値は流体の最高温度およびマグネトロンの最低温度を与える。このような配置は、反射によりマグネトロンに戻された、したがって、流体に吸収されなかったマイクロ波のエネルギーの量を最小としたとき、流体の加熱の最も効率的な条件を与える。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、本発明に係る流体処理装置を準備するステップと、前記装置のマイクロ波放射源からのマイクロ波放射に前記流体を曝しながら、前記流体の流れが前記装置のパイプラインを通過するステップと、を備えるマイクロ波放射を用いた流体処理方法を提供する。
【0036】
装置を流れる流体の流速は、パイプラインの容量、受け入れ可能な流体の背圧、求められる処理の強度、保持時間、処理温度、供給されるマイクロ波放射のエネルギー、供給される流体の温度、含有された固形成分のような流体の特性、誘電率、導電率のレベル、マイクロ波の侵入度、混合の程度など、など、様々な要素に依存した要請に応じて変化させることができる。一般的に、好適な流速は、簡単な試行によりすぐに決定できる。少なくともいくつかのケースでは、(単一のチャンバーを有する装置、または、多重のチャンバーを有するモジュール装置に関わらず)装置の下流端における予め定められた温度レベルが得られるように、流速を単純に調整し、好適な流速を適宜得ることができる。そして、例えば、血液のような生体の廃棄流体の滅菌を目的として、大気圧において少なくとも98Cの流体温度が得られるように、流速は好適に制御される。
【0037】
装置を流れる流体を撹拌するための攪拌器を備えても良い。これにより、パイプライン内の残留物の蓄積または残渣の凝固に起因するパイプラインの詰まりの可能性を低減し、システムの浄化に求められる時間を削減することにより、装置のメンテナンスを促進できる。撹拌器は、装置の稼働に付随して蓄積されるホットスポットの発生を低減する。特に簡便な撹拌器は、例えば、パイプラインの長手方向に沿って中央に延在する3〜4mmのステンレス綱の棒である細長いロッド、または、らせん形のワイヤもしくは金属ロッドを備え、1つの端が回転駆動器、手近なものでは電動モータに駆動可能に接続される。好ましくは、ワイヤまたはロッドは、適当な内径のPTFEチューブによって覆われ、または、保護されるか、その両方である。
【0038】
血液のような濃い流体では、撹拌器は、パイプラインの壁から0.5mm離れるように、ハブの1つのサイドに最適に取り付けられる。流体の性質に依存して、ハブの反対側にいくつかの撹拌器を対に配置することができる。回転のスピードは重要で有り、処理される流体および処理の目的に依存する。血液のような高タンパク性の流体の場合、2800rpmのスピードが最適である。他の流体および用途に対しては、最適なスピードは、試行により決定することができる。
【0039】
流体が回転器の上を流れる方向は重要である。一般に、粘性のある流体の場合、流速が比較的速い(17リットル/分)場合、または、大きな固形物が含まれている場合には、回転器側から流体が流れることが最良である。これは、回転ユニットを処理チャンバーの下流端に位置させることにより実現できる。流速が遅く(17 1/分より遅く)、且つ、流体が粘性を有し大きな固形物を含まない場合、流体を回転ユニットに向かって流すことが最良である。これは、回転ユニットを処理チャンバーの上流端に位置させることにより実現できる。
【0040】
ある環境では、特に、流体の粘性が大きく、固形物の含有されるレベルが高い場合、回転器の上に固形物の蓄積がないことを確実にするために、回転の方向を規則的な間隔で変えることが有利である。血液の場合、そのような間隔は10分である。
【0041】
処理される流体のタイプおよび処理温度に依存して、流体またはその成分による付着を避けることに適した材料を用いて撹拌器をコートする必要がある。そのような好適な材料は、PTFEおよびPEEKであるが、これらに限定される訳ではない。そのような環境では、好適な材料で作られたチューブの中に撹拌器を挿入することが最良である。そのようなチューブは、撹拌器の外径と同じ内径を有するだろう。そのような方法が用いられる場合、回転方法に撹拌器を接続するハブは、撹拌器とそのカバーの両方を回転器に接続するためのクランプとして使用できるように、2つに分割されるべきである。ある用途では、撹拌器のスピードは遅く、ステンレス鋼のロッドまたはワイヤを置き換える利益のために代替材料を用いることができる。そのような材料は、実質的にマイクロ波照射に透明であり、いかなる大きさの程度であってもマイクロ波のエネルギーを吸収すべきではない。好ましくは、そのような材料は、2〜4の範囲の誘電率を有する。そのような材料は、PTFEおよびPEEK(Polyetheretherketone)含むが、これらに限られる訳ではない。これらの材料から作られるロッドの径は、一般に、ステンレス鋼から作られるそれらの同等物よりも大きい。
【0042】
広い種類の流体、乳液、懸濁液、半固体および液体で運搬される固形物は、様々な目的のために本発明を用いて処理されるであろう。そして、ミルク、血液、フルーツジュース、醸造物および脂肪のような、食品産業において使用され処理された多くの流体が滅菌され、低温殺菌され、調理され、または、溶解されるだろう。米や内蔵、機械的に除かれた肉のように流体で運ばれることが可能な多くの固形物は、滅菌され、低温殺菌され、または、調理されるであろう。多くの高タンパク流体、特に、血液、血清、リンパ液のうちの1以上を含む体液のような生体の流体物は、食品および飲料産業の廃棄物と同じように、公共の下水道または他の簡易な手段への廃棄が受け入れられるように、凝析により分別され、または、殺菌され、もしくはその両方が行われるであろう。いくつかの反応物を含む流体は、反応の回数および収率を高めるために処理することができる。
【0043】
本発明のさらなる好ましい態様および利点が、以下の例、および、添付の図面を参照して表された詳細な説明に現出されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】流体処理装置の模式断面図である。
【図2】別の多重モジュール流体処理装置の模式図である。
【図3】血液廃棄物処理システムの模式図である。
【図4】血液廃棄物処理システムのより詳細な模式図である。
【図5】さらにもう1つの多重モジュール流体処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、間隔dを隔てて向き合う上流側の第1の端壁3および下流側の第2の端壁4と、内径dの実質的に円柱状のチャンバー6を画する側壁5と、を有する容器2を備える流体処理装置1を示している。その容器の壁は、比較的安価で実用的なステンレス鋼であるが、マイクロ波エネルギーの損失を低減する金、銅または真鍮のような他の材料を使用することもできる。
【0046】
マグネトロン7は、側壁5のチューブ状の導入口8を介してマグネトロン7のアンテナ9がチャンバー6の内部に延在するように連結される。側壁の導入口8は、マグネトロン7の筐体11における実質的に平坦な正面10に溶接により連結され、容器2と、マグネトロン7と、の間にマイクロ波の漏れを防止するシールが形成される。
【0047】
マグネトロン7は、容器の端壁3、4に実質的に平行に延在するアンテナ9が、容器2の第1の端壁3から間隔d=10.5cmの位置、第2の端壁4からd=2.5cmの位置となるように、端壁の離間した間隔dに対して中心からずらした位置において容器2に連結される。間隔dは、容器の長手方向に沿った定在波における電界の最低位置と最大位置との間のおおよそ中間にアンテナ9が位置するように、実験的に容易に決定できる。マグネトロン7は、マイクロ波出力の周波数、およそ2.45GHz、および、出力1400Wを有し、チャンバー内における波長(λ)=約13cmのマイクロ波を生成する。マクロ波は、アンテナ9からチャンバー6へ放射される。アンテナ9の先端13は、チャンバー6の側壁5から間隔dだけ突出する。装置の様々な寸法は多かれ少なかれ臨界的であり、それぞれは波長に対して次の関係にある。

≒λ;d≒1.3λ;d≒λ/5
【0048】
容器2は、その第1の端壁3から第2の端壁にむけて、チャンバー6を貫通して延在するパイプライン14を有する。パイプライン14は、実質的に同軸であり円柱状のチャンバー6と同心である。容器の端壁3、4は、銅または真鍮などの金属で形成される。パイプラインの壁15は、(マイクロ波放射に対して実質的に透明な)PTFEである。マイクロ波放射は、パイプラインの壁15を通してパイプラインの内部に入る。パイプライン14は、外径d≧λ/π(約48mm)を有し、約30mmの内径dを有する。
【0049】
装置1により処理される流体17は、容器2の第1の端壁3から容器2の第2の端壁に向かって、矢印で示される方向にパイプライン14を通して流れ、パイプラインの内部16を通ってチャンバー6を通過する時にマイクロ波放射に曝される。
【0050】
チャンバー容器におけるマイクロ波放射に共振は、チャンバー容器の第1の端壁と第2の端壁との間のパイプラインの長手方向の軸に沿って供給される放射の入力パワーレベルを変化させる。チャンバー容器の長さdに対する径dの比が1〜2の範囲である時、実質的に角度的に均一なエネルギー値を得ることができる。そのような条件の下、チャンバー容器の第1の端壁と第2の端壁との間のパイプラインの長手軸に沿った好ましい位置において、マイクロ波放射がチャンバー容器に入れば、共振したマイクロ波放射は、(dがいくつのλ/2単位に対応するかに依存して)チャンバー器の第1の端壁と第2の端壁との間の1以上の位置において最大強度を有し、容器の端壁(および、2以上の最大値がある場合のその間)において最小のマイクロ波強度を有する。
【0051】
図1の装置に対して、共振したマイクロ波放射は、一般的にパイプライン14の長手方向の中心軸に沿って、容器2の第1の端壁3における最小値から、容器2の第1の端壁3から端壁間の間隔の約25%だけ離れた位置における最大値まで正弦波的に徐々に増加する。そして、エネルギーは、75%の位置における別の最大値まで増加する前に、ゼロまで減少し、最後に、容器の第2の端壁4に近づくにつれ、再びゼロへ減少する。
【0052】
チャンバー内の詳細なエネルギー分布は複雑であるが、一般に、dがλ/2の倍数の場合、マイクロ波放射のエネルギーの最大値は、長さdに沿って、dの25%と75%とに等しい位置にあり、エネルギーの最小値は、長さに沿ったdの0%、50%および100%にあることが分かっている。パイプラインの内部では、分布は流体の性質にも依存する。例えば、高いレベルの電気伝導率を有する血液のような流体がパイプラインを通して流れる場合、マイクロ波は、水道水のような比較的伝導率の低い流体が処理される場合よりも、パイプラインの半径方向にさらに深く侵入することができる。したがって、処理される流体の導電率もまたパイプラインの半径を選択する決定要因である。
【0053】
図2は、図1に示す装置と同じような複数の個別のモジュール19が直列に接続された、流体処理装置18のモジュール化された形態を示している。モジュール19の容器2における上流側の第1の端壁3は、連続した(下流側の)モジュール19の下流側の端壁4に連結されている。その容器壁3、4は、ナットおよびボルトのような、分離可能な留め具を適宜用いて相互に分離可能に固定される。容器壁3、4は、銅または真鍮で形成されたダイアフラムの形状であり、隣接するモジュール19の間におけるマイクロ波放射の伝播を最小にする。ダイアフラムおよびパイプライン20は、相互にフィットし比較的密接している。
【0054】
単一の共通したパイプライン20が個別のモジュールの容器2を貫通し、それぞれのモジュール19にパイプラインセグメント21を提供している。パイプライン20を通して矢印で示された方向に流れる流体17は、逐次、図1と同じようにそれぞれがマグネトロン7を備えた連続したモジュール19に入る。それぞれのモジュール19のマグネトロン7は、モジュール19におけるパイプライン20のそれぞれのセグメント21に存在する流体17を処理するためのマイクロ波を放射する。流体17は、パイプライン20に沿って流れる間に、連続したモジュール19において逐次マイクロ波放射処理に曝される。パイプライン20は、1つのモジュール19のチャンバーから別の19へのマイクロ波放射の伝達が制限され、相互接続されたモジュール19、19におけるマグネトロンの相互作用を最小化するように、λ/πの程度の外径dに制限される。
【0055】
容器2の上流側のポンプPおよび2つのバルブ22は、パイプライン14を通る流体の流速を制御する。温度センサ23は、容器2のパイプライン内で処理される流体の温度を検出するために設けられる。制御ユニット24は、温度を監視する。制御ユニット24は、ポンプPとマグネトロン7とに接続される。制御ユニット24は、流体17の過熱を回避し、適切な処理を行うための十分な加熱を確保するために、ポンプPがパイプラインを通して流体を流す速度(および、選択的にマグネトロン7の出力)を流体17の温度に基づいて制御する。パイプラインの内壁15の上で処理された流体の析出物の堆積を防ぐために、一般的な硬質のらせん状ワイヤ27を含む回転流ユニット26が設けられ、回転流ユニット26は、電動モータMの形態である回転駆動器29に駆動可能に接続28される。
【0056】
図3は、液体の血液廃棄物を保持する貯蔵容器31を備えた血液廃棄物処理システム30を示している。そして、液体の血液廃棄物は、貯蔵容器31からポンプ32により移送される。凝析が生じるおそれのあるレベルに液体の血液の温度を上げるリスクを避けながら、マイクロ波照射処理の効率を上げるために、液体の血液廃棄物をおおよそ35〜37℃まで加熱する予熱ヒータ33が設けられる。マイクロ波処理装置34が設けられる。これは、ある数、例えば、10個の(図2に示すように)直列に接続された個別のモジュールを(図1を参照して説明されたように)有する。マイクロ波処理装置34は、装置を通して流体が流れる場合に動作する回転流ユニットの形態で撹拌器35を含む。
【0057】
撹拌器は、一般的に図2に示すものに類似するが、2つのステンレス鋼のらせんワイヤを含む。それぞれ約4mmの(ワイヤそのものの)直径を有し、2つのワイヤは、より剛性のある、より効果的な撹拌子を形成するために一体に捩られる。回転流ユニットは、流体を回転させるために動作し、パイプラインの詰まりを防ぎ、システムを清浄化するための時間を減らす。マイクロ波処理装置34の出口36における処理された血液廃棄物の温度は、典型的には、80〜100℃の範囲の温度に達する。結果として、処理された血液廃棄物は、スラッジと、濃縮された液体と、に分離されるのが一般的である。液体部分は、沈殿槽37に導入され、好適な沈殿時間(典型的には30分)の後、公共の下水道38に排出される。
【0058】
さらなる滅菌処理が求められる場合、例えば、WO99/47230に記載されたような、液体に直接適用される高電圧パルス放電を適宜用いる処理装置39に、マイクロ波処理された血液廃棄物の液体部分を通すことができる。WO99/47230の内容は、参考文献として包含される。スラッジは、直接、または、最初に遠心分離機40を用いて脱水した後、有機肥料として直接利用することができる。
【0059】
最適な動作を維持するために、システム30は、マイクロ波処理装置34の出口36において、血液廃棄物の温度を測る温度センサ41を含む。制御ユニット42も、血液廃棄物の流速を監視し制御するために設けられる。制御ユニット42は、流体の流出温度を適切なレベルに維持するために流速を好適に制御するように、選択的に温度センサに接続できる。エネルギーの入力ユニット43は、マイクロ波放射装置34のマイクロ波放射源であるマグネトロンを制御する。
【0060】
図4は、図3に示す血液廃棄物処理システムに類似したシステムをより詳細に示す。ここでは、矢印が流体の流れる方向を示している。処理される液体廃棄物は、3mmの目開きのフィルタバッグの上に8mmの目開きのフィルタバッグを配置した粗いフィルタを通して第1の貯蔵容器50に供給され、実質的に最初のフィルタと同じ2番目のフィルタ56を介してポンプ54により第2の貯蔵容器58に送り出される。液体廃棄物は、ボールバルブ62およびダイアフラムバルブ64を介して、第2のポンプ60により送り出される。ボールバルブ62は、単純で堅牢な部品であるが、マグネトロンを動作させる前に流れを制御する必要のある流体の流速を精密に調整できる訳ではない。ダイアフラムバルブ64が、これを調整する。
【0061】
装置を清浄化する際には、水導入口66を介してボールバルブ67の制御の下に装置に水を供給し、パイプを洗い流すことができる。処理される液体廃棄物は、流体の流速を監視、制御するフローメータ68を通過し、直列の2つの電気的な予熱ヒータ69に流れ込む。そして、図3の説明のように、回転流ユニット、および、第1のマイクロ波処理装置72に流れ込む。それぞれの反応装置72は、図2の説明のように、直列に接続された10個のモジュールを含む。液体廃棄物は、接続パイプ73を介して直列に接続され、それぞれが回転流ユニット70を備える4つのさらなる処理反応装置72に流れる。処理に続いて、処理済みの液体は沈殿槽74に集められ、液相部は、水出口78を介して(ポンプ76により)公共の下水道に送り出される。また、固体および液体部分のさらなる分離のために遠心分離器79に送り出され、液相部および固相部が液相出口80およびスラッジケーキ出口82に放出される。
【0062】
食肉処理場からの血液は、外径dが48mm、内径dが30mmであるパイプラインを介して、図4の装置と類似する50個のモジュールを備える装置を通過する。それぞれのモジュールは、それぞれ13cmおよび17cmであるチャンバー長さdおよび径dを有し、チャンバー内における波長が12.24cmのマイクロ波放射を供給する1400Wのマグネトロンマイクロ波源を有する。血液は、毎時2000リットルの流速で装置を通して送り出される。これにより、それぞれの装置のチャンバー内における滞留時間は15秒となり、マイクロ波放射処理に曝されるトータルの時間は、12.5分である。装置の上流端における血液の温度が35〜37℃となるように、血液は予め加熱され、装置の下流端において、おおよそ90℃〜98℃に上昇する。
【0063】
食肉処理場から生じる新鮮な血液廃棄物を処理する利益は、凝析による血液の分別から生じる固体と液体との比率を測り、それぞれの成分を解析することにより確認できる。生物学的酸素要求量(BOD)が大きく減少し大半が水で構成される液体(40〜50%)を残し、血液に含まれるタンパク質の事実上の全ては、処理された全量の50〜60%を占める固体部分に残されることが分かる。この液体のBODは、通常の下水道において単純に処理するのに十分な低さである。血液のBODは、American Public Health Associationによる「水および廃液の標準解析法(Standard Methods of Water and Waste Water Analysis)」に記載された標準的な手順で評価される。処理された液体の酸素要求量の指標であるBOD(biological oxygen demand)もしくはCOD(chemical oxygen demand)は、未処理の血液に比べて、典型的に20〜25分の1に減少する。あらゆるケースにおいて生じるBODおよびCODの実際の減少の程度は、時期および希釈の程度など、血液のタイプに依存する。例えば、羊の血液廃棄物が処理される場合、BODは、72,000mg/mlから4,000mg/mlに減少し、鶏の血液を処理する場合は、BODは、23,000mg/mlから918mg/mlに減少した。
【0064】
廃棄されるべき材料の減量と同じように、凝縮された高タンパクは、滅菌され、いかなる病原菌も無い状態になる。これは、無菌状態で無菌容器に満たした固形材料の長期間保存を可能にする。この安定性は、産業のあらゆる場所で、これらの固形物を高品質のタンパク源として用いることを可能にする。
【0065】
図5は、食肉処理場で用いる廃棄物処理システム84の例を示している。このシステムは、プロセスの全ての面を制御するPLCにより全てコンピュータ化されている。この例では、血液原料をプロセスに導入するオン/オフ弁86と、レベルセンサ90を有する原料貯蔵タンク88と、流れをオンまたはオフに切り替えるバルブ92と、粉砕器(macerator)94と、ポンプ96と、レベルセンサ100を有する中間貯蔵タンク98と、ウォータパージ104のための接続点を含む2方弁102と、流量計106(流量の制御と記録を行う)と、熱交換ユニット108と、水平に直列に配置された本発明に係る3つの処理チャンバー110と、レベルセンサ114を有する密封されたバッファタンク112と、らせん供給口を有する容積移送式真空ポンプ(auger fed positive displacement pump)116と、熱回収ユニット、処理された血液を部分的に貯蔵タンク88に戻す2方弁118と、脱水システム120と、が配置されている。
【0066】
食肉処理場からの血液は、原料タンクに供給され、要求に応じて、粉砕器94を介してステンレス鋼製の中間貯蔵タンク98に送られる。原料タンク88および中間貯蔵タンク98には、高−高、高、低および低−低のレベル表示が設けられたレベルセンサ90および100がそれぞれ設置されている。貯蔵タンク内の血液が高ポイント/レベルに達すると、PLCシステムは、自動的に粉砕器94およびポンプ96のスイッチをオフにする。貯蔵タンクおよび外部の水の供給源が、2方弁およびポンプを介して処理システムに接続されている。電気的な流量計は、血液の投入量を制御し記録するために、この段階に設けられる。
【0067】
立ち上げの間、2方弁を介して処理チャンバー110に水が導入される。そして、マグネトロンの水冷システムが、マグネトロンを冷却するためにスイッチオンされる。流量計がシステム内の水の存在を示している場合、処理チャンバー110における全てのマグネトロンのフィラメントがスイッチオンされ、2分後に、全てのマグネトロンの高電圧源が順次スイッチオンされる。水は、食肉処理場の主たる水の供給源、または、分離されたポンプと逆止弁とを有する独立したタンクから供給されるだろう。水は、最初に予め設定された速度(この例では、時間当たり1200L)で送られる。これにより、オーバーヒートを避けながら迅速な水の温度の上昇を確保する。最後の処理装置から出る水の温度が所望の温度(65℃)に達した時、血液がスイッチオンされ、2方弁により水がスイッチがオフされる。そして、血液は、3つの処理チャンバーに送られる前におおよそ39〜40℃に加熱する第1の熱交換器108を介して送られる。これらは、全ていつでも使用できる状態に接続されているが、それぞれ、動作に影響を与えることなくクリーニングおよび詰まりを除くためにバイパスすることができる。血液の圧力および流れは、それぞれの処理チャンバーの入口および出口の温度と同様に、PLCにより監視される。このため、PLCは、ポンプの速度を調整することにより、最終生成物の温度を望ましいレベル(95〜100℃)に制御することができる。
【0068】
処理ユニットの最後のチャンバーは、ステンレス鋼のパイプを介して、密封された断熱バッファタンクに接続されている。これは、処理された残留物の温度を100℃から雰囲気温度に下げる第2の密封された水冷熱交換器ユニットにポンプを介して接続される。処理された材料の温度を用いることにより、省エネのスキームの一部として食肉処理場に熱水を戻すことができる。
【0069】
室温まで冷却された後、処理された粘度の高い液体は、底部に濾過水の出口または脱水スクリューを備えた単純なタンクである脱水システム120に供給される。また、脱水システム120は、必要であれば、処理された材料を完全に乾燥させる遠心分離器であっても良い。次に、水を除いた後、固形のケーキを分離し、売却することができる。
【0070】
材料の滅菌が必要な場合は、最終のバッファタンク、ポンプおよび脱水システムは、保存期間を維持する無菌のコンテナーに無菌処理された材料を満たす高温ラインに置き換えられる。
【0071】
柔らかい半固形の有機材料が処理チャンバーの壁にくっつき、徐々に蓄積され、流れを制限するような場合に、緊急/パージモードが設けられる。プロセス圧力の増加を監視することにより、そのような過程を早期に検出することができる。このシステムは、2バールの圧力まで動作するように設計されるが、一般的におおよそ0.4バールで動作する。共通ではないが、小さな圧力の増加(0.2バール)は、血液を止めて、水で数分間洗い流すことにより、迅速に取り除けるわずかな蓄積を示す。処理温度は、水の流量を調整することにより維持される。これは、ポンプの速度により実施できる。
【0072】
実用的には、最も脆弱な部分は、第3の処理チャンバー110である。この段階では、液体は、半固形の含有物を有し、粘度が高く、粘着性が高い。半固形の粒子は、処理チャンバーの内壁にへばりつき、半固形物の蓄積の中心となる。水の導入と同時に、回転器の方向を変えることにより、どのような固形物の蓄積であっても、その迅速な除去を補助することができる。
【0073】
図5のシステムは、大気圧で、少なくとも98Cの出口側の温度において、滅菌された材料を作り出すことができる。98C以上の温度(試験の最高は105C)における任意の製品の大規模な培養は、図5のシステムから出力された食肉処理場の血液からの材料において、(グラム陽性または陰性である芽胞生成性の)任意の属に分類されるどのバクテリアの生き残りも実証できなかった。試験は、大腸菌(Escherichia coli)NCTC10418、ネズミチフス菌(Salmonella enterica sv typhimurium)NCTC74(ATCC13311)、Salmonella enterica sv senftenberg NCTC9959、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)NCTC3181または同等物、および、Enterococcus faecalis NCTC12697について実施した。これらのバクテリアのいくつかは、およそ80〜85Cの加熱により簡単に殺すことができる。したがって、サルモネラ菌(Salmonella enterica)や大腸菌(Escherichia coli)NCTC10418のようなグラム陰性のバクテリアの場合、マイクロ波衝撃と熱衝撃とを分離することは難しい。しかしながら、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)NCTC3181の場合、熱的な手段だけにより全滅させるには、上記よりも高い温度、圧力および長い保持時間が求められる。したがって、本発明が、通常のシステムよりも病原菌を殺す上でより効果的であり、求められるよりもはるかに低い温度で液体を低温殺菌および滅菌するために使用できることの立証には、熱だけが用いられた。
【0074】
血液廃棄物または他の高タンパク液のマイクロ波処理は、熱伝導面を用いた伝統的な熱処理法を凌駕する大きな利点を有する。パイプラインを通して流れる液状の血液廃棄物の中に直接マイクロ波エネルギーを移送することは、壁および加熱要素、もしくはそのいずれかと、処理される液体の異なる部分と、の間に生じる不可避で実質的な温度差に関わる特定の問題を避けることを可能にする。この差は、局部的な過熱につながり、血液の凝固や固体膜の堆積、または、加熱面のコーティングを生じさせる。そのような堆積物は、熱伝導が非常に低く、熱源から加熱される液体への熱の移送を実質的に減少させ、処理効率を劇的に下げ、加熱要素のオーバーヒート、および、その起こりうるダメージを生じさせる。まれに、温度差による液体の局部的な焼成が起こり、風味の変化を生じさせる。
【0075】
本発明は、知られているシステムよりもエネルギー効率が良い。電気部品からの完全な熱回収が可能であり、回収されら熱が投入された液体の予熱に用いられる状態において、消費された電気エネルギーの85%〜90%が、血液のような高い吸収性の液体に供給される。個々の処理チャンバー内で生じる熱と、強い電磁場と、マイクロ波放射と、の結合は、熱のみの場合よりも流体の成分に大きな影響を及ぼす。これは、いくつかの形で現れる。この効果の最も注目すべき証拠は、完全な滅菌を得るための温度、圧力および保持時間の減少、大きく低下した温度と圧力におけるタンパク質の破砕、ある化学反応の収率および頻度の増加である。滅菌に求められる温度および圧力の減少は、潜在的なダメージを減少させ、いくつかの製品では、組織を保持することができる。食材では、例えば、ミルクや搾りたてのオレンジジュースなどの液体食品の風味を保持させることもできる。他の利点は、装置全体の占めるスペースが小さいこと、および、立ち上げ、立下げの時間が非常に低く、待機運転のコストが低いことである。
【0076】
当業者であれば、発明から逸脱することなく開示された配置の変形が可能であることを認識するであろう。コンピュータ制御システムは、PLCとして説明されているが、いかなる好適なコンピュータまたはコントロールシステムに基づくプロセッサも使用することができる。したがって、具体的な実施形態の上記の説明は、例示の目的のみに行われ、これに限定するものではない。説明された動作の有意な変更なしに、小さな変更が可能であることは、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波放射を用いた流体処理装置であって、
実質的に円柱状のチャンバーを画する側壁と、対向する第1および第2の端壁と、を有する容器であって、前記第1の端壁は、前記第2の端壁から予め決められた間隔dを持って配置された容器と、
流体を流すためのパイプラインであって、前記容器の前記第2の端壁に向かって前記第1の端壁を貫通し、前記チャンバーと実質的に同軸であり、マクロ波放射に対して実質的に透明であるパイプラインと、
前記チャンバー内に波長λのマイクロ波を放射させるための前記容器の側壁に設けられたマイクロ波放射の導入口と、
を備え、
前記チャンバーがマイクロ波共振器となるように、前記間隔dがλ/2の整数倍に実質的に等しい流体処理装置。
【請求項2】
は、λ/2の1〜3倍の範囲である請求項1記載の流体処理装置。
【請求項3】
は、λ/2の1または2倍である請求項2記載の流体処理装置。
【請求項4】
は、実質的にλに等しい請求項3記載の流体処理装置。
【請求項5】
は、0.6λおよび2λの範囲にある請求項1〜4のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項6】
は、1λ〜2λの範囲にある請求項5記載の流体処理装置。
【請求項7】
前記チャンバー容器の壁は、導電材を用いて作られたか、あるいは、導電材がコーティングされた請求項1〜6のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項8】
マイクロ波放射源を備えた請求項1〜7のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項9】
前記マイクロ波放射源は、2.3〜2.7GHzの範囲の周波数を持つ出力を有する請求項8記載の流体処理装置。
【請求項10】
前記マイクロ波放射の導入口は、前記チャンバーの長手方向の広さ(d)に対して中心から外れた位置にある1〜9のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項11】
前記マイクロ波放射の導入口は、前記長手方向の中心軸に沿ったマイクロ波のエネルギーレベルが、最大のエネルギーレベルの30〜60%、好適には、40〜50%となる位置に設けられる請求項10記載の流体処理装置。
【請求項12】
が近似的にλに等しければ、前記マイクロ波放射の導入口の位置は、前記上流側の端壁から前記下流側の端壁に向かって、dの10〜15%、30〜35%、55〜60%、または、75〜80%から選択される請求項10または11に記載の流体処理装置。
【請求項13】
マイクロ波エネルギーが前記放射源へ反射されること防ぐための手段を備える1〜12のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項14】
前記パイプラインは、実質的に水平である請求項1〜13のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項15】
前記パイプラインは、実質的に垂直である請求項1〜13のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項16】
前記パイプラインは、傾斜している請求項1〜13のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項17】
前記マイクロ波放射源の筐体からチャンバー容器の内部へ前記アンテナが延在するように、前記マイクロ波放射源の前記筐体は、前記チャンバーの側壁から後退している請求項1〜16のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項18】
前記アンテナの先端は、前記チャンバーの側壁から3λ/16以上、λ/4以下の予め決められた突き出し量dを持って配置されている請求項17記載の流体処理装置。
【請求項19】
処理される前記流体の温度を検出するための温度検出手段および温度監視手段を備えた請求項1〜18のいずいれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項20】
前記温度センサは、検出された前記温度の関数として与えられるマイクロ波放射の強度を変えるために、マイクロ波放射源のコントローラに接続された請求項19記載の流体処理装置。
【請求項21】
前記パイプラインは、マイクロ波放射に対し実質的に透明な材料である請求項1〜20のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項22】
前記パイプラインの壁は、3〜10mm、典型的には5〜8mmの範囲の厚さを有する請求項1〜21のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項23】
前記パイプラインの内部に静的または動的なミキサーもしくは撹拌器を備える請求項1〜22のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項24】
前記パイプラインに入る前に流体を加熱する予備加熱器を備えた請求項1〜23のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項25】
前記パイプラインに前記流体を送り込むポンプを備えた請求項1〜24のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項26】
流体の流れが連続したモジュールのそれぞれのマイクロ波放射源からのマイクロ波照射に曝されることが可能なように、直列または並列に接続された複数のモジュールを備える請求項1〜25のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項27】
前記パイプラインの外径dは、λ/πに等しいか、λ/πよりも大きい請求項1〜26のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項28】
前記デバイスの内部の圧力を変えるための圧力制御システムを備えた請求項1〜27のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項29】
前記チャンバー容器の内側と、前記パイプラインの外側と、の間の環状の空間の厚さは、実質的にλ/2に等しい請求項1〜28のいずれか1つに記載の流体処理装置。
【請求項30】
前記本発明の流体処理装置を準備するステップと、
前記装置のマイクロ波放射源からのマイクロ波放射に曝しながら、前記流体を前記装置の前記パイプラインを通過させるステップと、
を備えたマイクロ波放射を用いた流体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−508136(P2013−508136A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534756(P2012−534756)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002549
【国際公開番号】WO2011/048349
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512106687)アドヴァンスト マイクロウェイブ テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】