説明

流体動圧軸受機構、モータおよび記録ディスク駆動装置

【課題】流体動圧軸受機構内の潤滑油を安定して循環させる。
【解決手段】軸受機構2では内部の流路および間隙に潤滑油が充填されており、潤滑油は、スリーブ21の外周に設けられた第1テーパシール部271、および、スリーブ21の上部に取り付けられた上キャップ25とシャフト22との間に設けられた第2テーパシール部272にて保持される。上キャップ25の内側面の溝状の凹部および上部下面の凸部により、上キャップ25とスリーブ21との間において第1テーパシール部271と第2テーパシール部272とを連絡する流路266,267の流路断面積が拡大される。これにより、流路266,267の流路抵抗はスラスト間隙262と第1テーパシール部271を連絡する流路265よりも小さくされ、第1テーパシール部271にて潤滑油が漏出することが防止され、第2テーパシール部272にて界面が下降し、気泡が混入することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ディスク駆動装置等に用いられる小型のスピンドルモータでは、多くの場合、流体動圧軸受機構が利用され、このような軸受機構では潤滑油を介してシャフトがスリーブに支持されることにより低騒音が実現される。特許文献1では、流体動圧軸受機構に用いられる潤滑油を、スリーブの内側面、下面、外側面および上面に沿って順に循環させつつ、スリーブの上部に取り付けられたカバー部材とシャフトの外側面との間に設けられた内側テーパシール部、および、スリーブの外側面を覆うスリーブハウジングとカバー部材の外側面との間に設けられた外側テーパシール部にて保持する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−155912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の軸受機構では、2カ所のテーパシール部で潤滑油を保持するため、これらのテーパシール部の間で流路抵抗が大きくなると外側テーパシール部の界面が上昇して潤滑油が溢れたり、内側テーパシール部の界面が下降して潤滑油が枯渇する恐れがある。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、流体動圧軸受機構内の潤滑油を安定して循環させることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構であって、円筒状のスリーブと、前記スリーブに挿入されて上端が前記スリーブから突出し、回転時に前記スリーブの内側面との間のラジアル間隙にて発生する潤滑油の流体動圧を利用して前記スリーブに支持されるシャフトと、前記スリーブの外周に形成されたテーパ状の間隙にて潤滑油を保持する第1毛細管シール部と、前記ラジアル間隙の上方において前記シャフトの周囲の間隙にて潤滑油を保持する第2毛細管シール部と、前記回転時に流体動圧の発生に伴って前記ラジアル間隙の下部または前記下部に連絡する動圧間隙から潤滑油が流入し、前記ラジアル間隙の前記下部または前記動圧間隙と前記第1毛細管シール部とを連絡する第1流路と、前記第1流路から潤滑油が流入し、前記第1毛細管シール部と前記第2毛細管シール部とを実質的に連絡するとともに前記第1流路よりも流路断面積が大きい第2流路とを備える。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流体動圧軸受機構であって、前記第2毛細管シール部の前記間隙もテーパ状であり、前記第2毛細管シール部の前記間隙のテーパ角が前記第1毛細管シール部の前記間隙のテーパ角よりも大きい。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の流体動圧軸受機構であって、前記シャフトの下端に取り付けられて前記スリーブの下面に対向し、回転時に前記スリーブの前記下面との間のスラスト間隙にて潤滑油の流体動圧を発生するスラストプレートをさらに備え、前記第1流路に前記スラスト間隙から潤滑油が流入する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の流体動圧軸受機構であって、前記スラストプレートの下面および前記スリーブの外側面の少なくとも下部を覆い、前記外側面との間に前記第1流路を形成するスリーブハウジングをさらに備える。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、前記シャフトの前記上端が挿入される開口を有し、前記スリーブの上面および外側面の上部を覆い、前記上面および前記外側面との間に前記第2流路を形成する上キャップをさらに備え、前記第2毛細管シール部が、前記シャフトと前記上キャップとの間に設けられる。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の流体動圧軸受機構であって、前記上キャップの上部下面に、前記スリーブの前記上面に当接するとともに周方向に並ぶ複数の突起または前記上面に対向するとともに内周から外周へと伸びる複数の溝が形成されている。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の流体動圧軸受機構であって、前記スリーブの前記上面に内周から外周へと伸びる複数の上面溝が形成されており、前記上キャップの前記複数の突起または前記複数の溝の間の部位の周方向の幅が、前記スリーブの前記複数の上面溝の幅よりも大きい。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、前記スリーブの前記外側面に軸方向に伸びる複数の外側面溝が形成されており、前記上キャップの内側面に、前記スリーブの前記外側面に当接する複数の突起または前記外側面に対向するとともに軸方向に伸びる複数の溝が形成されており、前記上キャップの前記内側面の前記複数の突起または前記複数の溝の間の部位の周方向の幅が、前記スリーブの前記複数の外側面溝の幅よりも大きい。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項6または7に記載の流体動圧軸受機構であって、前記上キャップの内側面に、前記スリーブの前記外側面に当接する複数の突起または前記外側面に対向するとともに軸方向に伸びる複数の溝が形成されており、前記上キャップの前記上部下面の前記複数の突起の間の部位または前記複数の溝の周方向の位置が、前記上キャップの前記内側面の前記複数の突起の間の部位または前記複数の溝の位置と一致する。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項4に記載の流体動圧軸受機構であって、前記シャフトの前記上端が挿入される開口を有し、前記スリーブの上面および前記外側面の上部を覆い、前記上面および前記外側面との間に前記第2流路を形成する上キャップをさらに備え、前記第2毛細管シール部が、前記シャフトと前記上キャップとの間に設けられ、前記スリーブハウジングの上部が上方に向かって漸次径が増大し、前記上キャップの下部が前記スリーブハウジングの前記上部の内側に位置することにより、前記上キャップの前記下部と前記スリーブハウジングの前記上部との間に前記第1毛細管シール部が形成され、前記上キャップの前記下部の外側面が、板材のプレスおよび打ち抜きにて前記上キャップが形成される際の切断面を有し、前記切断面の径が前記切断面の上側の部位の径よりも大きい。
【0015】
請求項11に記載の発明は、電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構であって、円筒状のスリーブと、前記スリーブに挿入されて上端が前記スリーブから突出し、回転時に前記スリーブの内側面との間のラジアル間隙にて生じる潤滑油の流体動圧を利用して前記スリーブに支持されるシャフトと、前記スリーブの外周に形成されたテーパ状の間隙にて潤滑油を保持する第1毛細管シール部と、前記ラジアル間隙の上方において前記シャフトの周囲の間隙にて潤滑油を保持する第2毛細管シール部と、前記回転時に流体動圧の発生に伴って前記ラジアル間隙の下部または前記下部に連絡する動圧間隙から潤滑油が流入し、前記ラジアル間隙の前記下部または前記動圧間隙と前記第1毛細管シール部とを連絡する第1流路と、前記第1流路から潤滑油が流入し、前記第1毛細管シール部と前記第2毛細管シール部とを実質的に連絡するとともに前記第1流路よりも流路抵抗が小さい第2流路とを備える。
【0016】
請求項12に記載の発明は、電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構であって、円筒状のスリーブと、前記スリーブに挿入されて上端が前記スリーブから突出し、回転時に前記スリーブの内側面との間のラジアル間隙にて発生する潤滑油の流体動圧を利用して前記スリーブに支持されるシャフトと、前記シャフトの前記上端が挿入される開口を有し、少なくとも前記スリーブの上面および外側面の上部を覆うハウジング部材とを備え、前記シャフトと前記ハウジング部材の環状の上部との間の間隙にて潤滑油を保持する毛細管シール部が形成され、潤滑油が、前記回転時に流体動圧の発生に伴って前記ラジアル間隙の下部または前記下部に連絡する動圧間隙から前記スリーブの外側面へと流れ、さらに前記外側面の上端から前記ハウジング部材の前記上部と前記スリーブの上面との間に設けられた流路を経由して前記ラジアル間隙の上部へと流れ、前記ハウジング部材の上部下面に、前記スリーブの前記上面に当接するとともに周方向に並ぶ複数の突起または前記上面に対向するとともに内周から外周へと伸びる複数の溝が形成されている。
【0017】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の流体動圧軸受機構であって、前記スリーブの前記上面に内周から外周へと伸びる複数の上面溝が形成されており、前記ハウジング部材の前記複数の突起または前記複数の溝の間の部位の周方向の幅が、前記スリーブの前記複数の上面溝の幅よりも大きい。
【0018】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の流体動圧軸受機構であって、前記複数の上面溝が、径方向外方に向かって前記シャフトの回転方向とは反対方向に傾斜している。
【0019】
請求項15に記載の発明は、請求項13または14に記載の流体動圧軸受機構であって、前記複数の上面溝が直線状である。
【0020】
請求項16に記載の発明は、請求項12ないし15のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、前記ハウジング部材の前記上部下面が前記複数の溝を有し、前記複数の溝が、径方向外方に向かって前記シャフトの回転方向とは反対方向に傾斜している。
【0021】
請求項17に記載の発明は、請求項13に記載の流体動圧軸受機構であって、前記ハウジング部材の前記上部下面が前記複数の溝を有し、前記スリーブの前記複数の上面溝および前記ハウジング部材の前記複数の溝が、径方向外方に向かって前記シャフトの回転方向とは反対方向に傾斜している。
【0022】
請求項18に記載の発明は、請求項16または17に記載の流体動圧軸受機構であって、前記ハウジング部材の前記上部下面が有する前記複数の溝が、直線状である。
【0023】
請求項19に記載の発明は、請求項12ないし18のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、前記ハウジング部材が、前記スリーブの前記上面および前記外側面の上部を覆い、前記シャフトの前記上端が挿入される前記開口を有する上キャップと、前記スリーブの下面および前記外側面の少なくとも下部を覆うスリーブハウジングとを備える。
【0024】
請求項20に記載の発明は、電動式のモータであって、請求項1ないし19のいずれかに記載の流体動圧軸受機構と、前記シャフトの前記上端に取り付けられたロータ部と、前記流体動圧軸受機構が固定されるステータ部とを備える。
【0025】
請求項21に記載の発明は、記録ディスク駆動装置であって、記録ディスクを回転する請求項20に記載のモータと、前記記録ディスクに対する情報の読み出しまたは書き込みを行うアクセス部と、前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングとを備える。
【発明の効果】
【0026】
請求項1ないし11の発明では、第2流路の流路断面積を第1流路よりも大きくすることにより、第1毛細管シール部および第2毛細管シール部にて潤滑油を安定して保持することができる。また、請求項2の発明では、第1毛細管シール部が潤滑油に与える保持圧を第2毛細管シール部よりも高くすることにより、第1毛細管シール部および第2毛細管シール部にて潤滑油をさらに安定して保持することができる。
【0027】
請求項4の発明では、第1流路を容易に設けることができ、請求項5の発明では、第2流路を容易に設けることができる。また、請求項6の発明では、上側流路の抵抗を容易に低減することができ、請求項7の発明では、上キャップの上部下面の突起または溝の間の部位がスリーブの上面溝に嵌り込むことを防止することができ、請求項8の発明では、上キャップの内側面の突起または溝の間の部位がスリーブの外側面溝に嵌り込むことを防止することができる。請求項9の発明では、第2流路の抵抗をさらに低減することができる。
【0028】
また、請求項10の発明では、第1テーパシール部の内部において切断面を利用して間隙が小さくされることにより潤滑油を安定して保持することができる。
【0029】
請求項12ないし19の発明では、スリーブの上面とハウジング部材との間に容易に流路を確保することができる。請求項13の発明では、ハウジング部材の突起等がスリーブの上面溝の嵌り込んでしまうことが防止される。請求項14、16および17の発明では、ラジアル間隙へと潤滑油が流入する際の抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は本発明の一の実施の形態に係るアウタロータ型の電動式モータ1(以下「モータ1」という。)を示す縦断面図である。モータ1は回転組立体であるロータ部11、固定組立体であるステータ部12、および、ロータ部11をステータ部12に対して回転可能に支持する流体動圧軸受機構2(以下、「軸受機構2」という。)を備える。以下の説明では、便宜上、中心軸J1に沿ってロータ部11側を上側、ステータ部12側を下側として説明するが、中心軸J1は必ずしも重力方向と一致する必要はない。
【0031】
ロータ部11は、記録ディスク13が固定される略有蓋円筒状のロータハブ111、および、ロータハブ111に取り付けられて中心軸J1の周囲に配置される界磁用磁石112を備える。ステータ部12は、中央に穴部が形成されたベース部であるベースブラケット121、および、穴部の周囲にてベースブラケット121に取り付けられた電機子122を備え、電機子122は多極着磁された円環状の界磁用磁石112との間で中心軸J1を中心とする回転力(トルク)を発生する。軸受機構2は、ベースブラケット121の穴部に熱硬化性の接着剤により固定される。
【0032】
図2は、モータ1の流体動圧を利用する軸受機構2を示す縦断面図である。軸受機構2は円筒状のスリーブ21、スリーブ21に挿入されるシャフト22、シャフト22の下端に取り付けられ、スリーブ21の下面に対向するスラストプレート23、スラストプレート23の下面およびスリーブ21の外側面を覆うスリーブハウジング24、並びに、スリーブ21の上面および外側面の上部を覆う上キャップ25を備える。
【0033】
スリーブハウジング24は、スリーブ21の外側面を覆う略円筒状のハウジング本体241の下部に有底円筒状の下キャップ242が嵌合されて接着により固定されたものとなっている。上キャップ25は、スリーブ21から突出するシャフト22の上端が挿入される開口部2511を有し、図1に示すようにシャフト22の上端がロータ部11に固定されることにより、ロータ部11がステータ部12に対して回転可能に支持される。
【0034】
図3、図4および図5はそれぞれスリーブ21の平面図、縦断面図および底面図である。スリーブ21は上面211に内周から外周へと径方向に伸びる複数の上面溝2111、外側面212に中心軸J1に平行な方向に伸びる複数の外側面溝2121、および、下面213にスパイラル形状のスラスト動圧溝2131(平行斜線を付して示す。)を有する。上面溝2111は周方向において等間隔に3カ所に位置しており、上面溝2111の位置と同じ周方向の位置に外側面溝2121が形成されている。上面溝2111の深さは上面211の外縁に設けられた面取部および上面211の内縁に設けられた面取部の軸方向の幅より小さく、外側面溝2121の深さは上面211の外縁の面取部の径方向の幅より小さい。なお、スリーブ21は多孔質の焼結金属体であり、プレス成形時に上面溝2111、外側面溝2121およびスラスト動圧溝2131が形成される。
【0035】
図6はシャフト22の正面図であり、シャフト22は、外側面に形成されたラジアル動圧溝221、ラジアル動圧溝221の上方に形成された中心軸J1を中心とする環状凹部222、および、下端面に中心軸J1に沿う雌ネジ223を有する。ラジアル動圧溝221は、軸方向において離れた2カ所に形成され、シャフト22の回転によりスリーブ21の内側面との間のラジアル間隙261(図2参照)に潤滑油のラジアル動圧を発生させ、これにより、シャフト22が潤滑油を介してスリーブ21により非接触にてラジアル方向に支持される。ラジアル動圧溝221の上側の溝(の集合)2211および下側の溝(の集合)2212はそれぞれヘリングボーン形状であり、溝2211の上側の直線部分は下側の直線部分より長く、ラジアル動圧と同時に潤滑油をラジアル間隙261内において下方に送る動圧を発生する。溝2212では上下の直線部分の長さが等しく、ラジアル動圧のみを発生する。環状凹部222は下側にテーパ面2221を有し、テーパ面2221は下方から上方へと向かってシャフト22の外径が小さくなるように傾斜している。
【0036】
図7および図8はスラストプレート23の正面図および底面図であり、スラストプレート23は図7に示すように円板状のプレート部231およびプレート部231の中心から上方に突出する雄ネジ232を有し、シャフト22の雌ネジ223(図6参照)との螺合によりシャフト22の下端部に固定される。また、図8に示すように、プレート部231は下面にスパイラル形状のスラスト動圧溝2311(平行斜線を付して示す。)を有する。
【0037】
図2に示すように、シャフト22およびスラストプレート23が回転すると、潤滑油はラジアル間隙261からスリーブ21の下面213とスラストプレート23の上面との間の第1スラスト間隙262へと流入する。一方、下面213のスラスト動圧溝2131(図5参照)により第1スラスト間隙262にスラスト動圧が発生する。スラストプレート23と下キャップ242との間の第2スラスト間隙263にも潤滑油が充填されており、スラストプレート23の下面のスラスト動圧溝2311(図8参照)により第2スラスト間隙263にてスラスト動圧が発生し、第1スラスト間隙262および第2スラスト間隙263のスラスト動圧によりシャフト22がスラスト方向に支持される。また、スラストプレート23の外側面とスリーブハウジング24の内側面および内底面との間には、第1スラスト間隙262と第2スラスト間隙263を連通する間隙264が設けられ、潤滑油が充填されている。
【0038】
図9はスリーブハウジング24の略円筒状のハウジング本体241の縦断面図である。ハウジング本体241は下部が円筒部2411とされ、上部が下方から上方に向かって漸次径が増大する環状テーパ部2412とされる。環状テーパ部2412の下端部における内径は円筒部2411の内径よりも大きく、円筒部2411と環状テーパ部2412との間は段差部2413となっている。
【0039】
図10はスリーブハウジング24の下キャップ242の平面図であり、図11は図10中の矢印Aにて示す位置での断面図である。下キャップ242は円板状の底部2421および円筒状の側部2422を有し、下キャップ242はハウジング本体241の円筒部2411(図9参照)に下から嵌合されて接着剤にて接着される。底部2421は中心軸J1を中心とする環状であって上方に僅かに突出する凸部2423を有し、図2に示すように凸部2423がスラストプレート23の下面との間の間隙を局所的に狭めることにより第2スラスト間隙263におけるスラスト動圧が高められる。
【0040】
図11に示すように側部2422の内側面には接着剤を保持するための周方向に伸びる細い溝2424が軸方向における2カ所に設けられ、側部2422の上端部には上方に突出する3つの爪部2425が周方向に等間隔に設けられる。図2に示すようにスリーブ21はハウジング本体241の円筒部2411の内側面に圧入されて固定され、スリーブ21の外側面溝2121(図3参照)により、スリーブ21の外側面と円筒部2411の内側面との間に、第1スラスト間隙262からの潤滑油を上方へと導く流路265(以下、「外側下部流路265」という。)が形成される。
【0041】
図12は略有蓋円筒状の上キャップ25の底面図であり、図13は図12中の矢印Bにて示す位置での断面図である。上キャップ25は環状かつ板状の上部251および上部251の外周から下方に伸びる円筒部252を有し、図2に示すように、中央の円形の開口部2511にシャフト22の上端が挿入され、円筒部252にスリーブ21の上部が圧入される。開口部2511の内径はシャフト22の外径よりも大きく、図13に示すように開口部2511の内側面2513は中心軸J1に平行な円筒面とされる。
【0042】
図14は軸受機構2の上部を拡大して示す図である。図12ないし図14に示すように、上キャップ25の上部251の下面には4つの円形の突起である凸部2512が周方向に等間隔に設けられ、図14に示すように凸部2512はスリーブ21の上面211に当接する。なお、凸部2512は上キャップ25をプレス加工にて製造する際に、半抜き加工により形成される。図12および図13に示すように、円筒部252の内側面には下端部から上部251の下面まで中心軸J1に平行に伸びる4つの凹部2521が周方向に等間隔に設けられ、各凹部2521は周方向において2つの凸部2512の中間に位置する(すなわち、凸部2512の間の部位の周方向の位置は凹部2521の位置と一致する。)。上部251の凸部2512の周方向の幅は図3に示すスリーブ21の上面溝2111の周方向の幅よりも大きくされ、これにより、凸部2512が上面溝2111に嵌りこむことが防止される。凹部2521はスリーブ21の外側面212に対向する溝となっており、隣り合う凹部2521の間の部位の周方向の幅は図3に示すスリーブ21の外側面溝2121の幅よりも大きくされ、凹部2521間の部位が外側面溝2121に嵌りこむことが防止される。
【0043】
図14に示すように、スリーブ21の外側面212と上キャップ25の円筒部252の内側面との間には、スリーブ21の外側面溝2121および上キャップ25の内側面の凹部2521により外側上部流路266が形成され、スリーブ21の上面211と上キャップ25の上部251の下面との間には、上キャップ25の凸部2512がスリーブ21の上面211に当接することにより設けられる間隙2514と、スリーブ21の上面溝2111とにより上側流路267が形成される。潤滑油は外側下部流路265から外側上部流路266に流入し、上方へと流れて上側流路267へと流入し、中央のラジアル間隙261へと戻る。
【0044】
図13に示すように、円筒部252の下端部の外側面は、板材のプレスおよび打ち抜きにて上キャップ25を形成する際に形成された切断面2522となっており、中心軸J1に平行な円筒面状の切断面2522の径は、切断面2522よりも上部における円筒部252の外径よりも僅かに大きい。
【0045】
図2に示すように、モータ1の回転時には、軸受機構2内ではラジアル間隙261、第1スラスト間隙262、外側下部流路265、外側上部流路266および上側流路267により循環路26が形成される。潤滑油は循環路26内に連続して充填されてシャフト22の回転による流体動圧の発生に伴って、ラジアル間隙261の下部に連絡する第1スラスト間隙262からスリーブ21の外側面212上の外側下部流路265および外側上部流路266へと流れ、さらに外側面212の上端から上側流路267を経由して中央のラジアル間隙261の上部へ流れる。一方、上キャップ25の外周には毛細管シール部である第1テーパシール部271が設けられ、上キャップ25の内周にも毛細管シール部である第2テーパシール部272が設けられ、これらのテーパシール部271,272により潤滑油が保持される。
【0046】
図15は第1テーパシール部271および第2テーパシール部272を拡大して示す図である。第1テーパシール部271は、ハウジング本体241の環状テーパ部2412の内側面2414および環状テーパ部2412の内側に位置する上キャップ25の円筒部252(の下部)の外側面によるテーパ状の間隙2712(以下、「第1テーパ間隙2712」という。)に形成される。第1テーパ間隙2712は上方に向かって漸次拡大し、図15では第1テーパ間隙2712のテーパ角に符号θ1を付している。第1テーパシール部271では第1テーパ間隙2712により下方に向かう毛細管力が発生し、内部の圧力と釣り合う位置に第1界面2711が形成されて潤滑油が保持される。第1テーパ間隙2712の上部には撥油剤が塗布され、潤滑油の漏出が防止される。また、上キャップ25の円筒部252の下端に設けられる切断面2522により第1テーパシール部271の下部と循環路26との間の間隙が小さくされることにより、潤滑油がより安定して保持される。また、切断面2522の表面は粗面であることによっても潤滑油の安定保持が実現される。その結果、潤滑油が減少した寿命末期の軸受機構2においても切断面を利用したオイルシールによる延命効果を得ることができる。
【0047】
第2テーパシール部272は、ラジアル間隙261の上方においてシャフト22のテーパ面2221と上キャップ25の上部251の開口部2511(図13参照)の内側面2513との間のテーパ状の間隙2722(以下、「第2テーパ間隙2722」という。)に形成される。第2テーパ間隙2722は上方に向かって漸次拡大し、図15では第2テーパ間隙2722のテーパ角に符号θ2を付している。第2テーパシール部272では第2テーパ間隙2722により下方へ向かう毛細管力が発生し、内部の圧力と釣り合う位置に第2界面2721が形成されて潤滑油が保持される。シャフト22のテーパ面2221の上側および上キャップ25の上面には撥油剤が塗布され、潤滑油の漏出が防止される。
【0048】
図16は循環路26における潤滑油の流動回路を電気回路に模して表した図であり、動圧発生部、流路抵抗およびテーパシール部をそれぞれ電源、電気抵抗、並びに、接地と電源との組み合わせにて示しており、図16の流動回路では矢印91にて示すように、ラジアル間隙261の溝2211が発生する動圧の向きに潤滑油が循環する。流路抵抗はラジアル間隙261、第1スラスト間隙262、第2スラスト間隙263、外側下部流路265、外側上部流路266、および、上側流路267に区分して示しており、ラジアル間隙261はさらに溝2211近傍の上側ラジアル間隙2611および溝2212近傍(図6参照)の下側ラジアル間隙2612にて構成されている。溝2211と上側ラジアル間隙2611とは構造的には軸方向に同じ位置に存在しているが、図16では直列に接続して示している。
【0049】
循環路26では、スリーブ21の下面213に設けられたスラスト動圧溝2131およびスラストプレート23の下面に設けられたスラスト動圧溝2311も動圧を発生する。スラスト動圧溝2131が発生するスラスト動圧の向きは溝2211が発生する動圧に対して逆向きであるが、溝2211が発生する圧の方が大きいため、潤滑油は矢印91にて示す向きに流れる。スラスト動圧溝2311が発生する動圧は実際には中心軸の両側にて釣り合っているため、潤滑油の流れは発生しない。
【0050】
次に、外側下部流路265、外側上部流路266および上側流路267の流路抵抗の関係について説明する。仮に、外側上部流路266および上側流路267の抵抗が外側下部流路265の流路抵抗より大きい場合、外側下部流路265から流入する潤滑油を外側上部流路266および上側流路267が受け入れることができなくなり、潤滑油が第1テーパシール部271へと流入する。その結果、第1テーパシール部271の第1界面2711(図15参照)が上昇して潤滑油が漏出し、第2テーパシール部272では潤滑油が供給不足となり、第2界面2721(図15参照)が下降して気泡が混入する恐れが生じる。
【0051】
ここで、シャフト22の回転時に流体動圧の発生に伴って第1スラスト間隙262から潤滑油が流入するとともに第1スラスト間隙262と第1テーパシール部271とを連絡する流路を第1流路26aと捉え、第1流路26aから潤滑油が流入するとともに第1テーパシール部271と第2テーパシール部272とを連絡する流路を第2流路26bと捉えた場合、第1流路26aには、スリーブハウジング24の内側面とスリーブ21の外側面とで形成される外側下部流路265が対応し、第2流路26bには、上キャップ25の上部下面および内側面とスリーブ21の上面211および外側面212(図3および図4参照)とにより形成される外側上部流路266および上側流路267で構成される流路が対応する。そして、上記流路抵抗の関係において第1および第2テーパシール部271,272による潤滑油の保持を安定させつつ潤滑油の循環を実現するためには、第2流路26bの流路抵抗が第1流路26aの流路抵抗より低いことが必要となる。
【0052】
既述のように外側下部流路265はスリーブ21の外側面溝2121(図3参照)により形成されており、外側上部流路266はスリーブ21の外側面溝2121および上キャップ25の凹部2521(図12参照)により形成されており、凹部2521により、外側上部流路266の流路断面積(潤滑油の流れに対して垂直な方向における断面積であり、中心軸に垂直な面による流路断面の総面積)は外側下部流路265の流路断面積(中心軸に垂直な面による流路断面の総面積)よりも十分に大きくされる。これにより、外側上部流路266の抵抗が容易に低減される。また、上側流路267はスリーブ21の上面溝2111(図3参照)およびスリーブ21の上面211と上キャップ25の上部251の下面との間の間隙2514(図14参照)により形成され、凸部2512の軸方向高さに応じて上側流路267の流路断面積(潤滑油の流れに対して垂直な方向における断面積であり、中心軸を中心とする円筒面による流路断面の総面積)が外側下部流路265の流路断面積よりも十分に大きくされる。これにより、上側流路267の抵抗が容易に低減される。
【0053】
その結果、第2流路26b(外側上部流路266および上側流路267)全体の流路抵抗を第1流路26a(外側下部流路265)の流路抵抗よりも低くすることが容易に実現され、第1テーパシール部271において内部の圧力が上昇して第1界面2711が上昇したり、第2テーパシール部272の第2界面2721が下がって軸受機構2内に気泡が混入したりすることが防止され、安定して潤滑油が循環路26内を循環することが実現される。さらに、既述のように上キャップ25の上部251の下面の凸部2512が円筒部252の凹部2521の間に位置することにより、スリーブ21の外側面212およびスリーブ21の上面211における第2流路26bの周方向の位置を一致させて第2流路26bの流路抵抗を一層低減することが実現される。
【0054】
なお、流路断面積のみならず流路の長さも流路抵抗に影響を与えるが、小型モータの場合、第1流路26aの流路断面積は非常に小さく、流路断面積の増加により流路抵抗が大きく低下するため、一般的に、第2流路26bの流路断面積を第1流路26aの流路断面積よりも大きくすることにより第2流路26bの流路抵抗を第1流路26aよりも低くすることができる。
【0055】
また、軸受機構2では、図15に示す第1テーパシール部271のテーパ角θ1は5度、第2テーパシール部272のテーパ角θ2は34度とされ、θ2はθ1よりも大きくされる。これにより、第1テーパシール部271において潤滑油に与えられる圧力が第2テーパシール部272において潤滑油に与えられる圧力よりも常に高くなり、第2流路26bの抵抗が第1テーパシール部271の界面に与える影響を低減することが実現される。
【0056】
以上に説明したように、軸受機構2では第2流路26bの流路断面積を第1流路26aよりも大きくして第2流路26bの流路抵抗を低くすることにより、第1テーパシール部271および第2テーパシール部272にて潤滑油を安定して保持することができる。また、第1テーパシール部271が潤滑油に与える保持圧を第2テーパシール部272よりも高くすることにより、第1テーパシール部271および第2テーパシール部272にて潤滑油を一層安定して保持することができる。さらに、スリーブハウジング24により、容易に第1流路26aを設けることができ、上キャップ25の凸部2512および凹部2521により第2流路26bを容易に設けることができる。
【0057】
図17は図1に示すモータ1に用いられる軸受機構の他の例を示す縦断面図である。図17に示す軸受機構2aは図2に示す軸受機構2と比べてシャフト22から環状凹部222が省略され、さらに、上キャップ25の形状が異なっており、その他の構成は軸受機構2と同様である。
【0058】
図18は軸受機構2aの上キャップ25aの底面図であり、図19は図18中の矢印Cにて示す位置での断面図である。図19に示すように、上キャップ25aでは、上部251に設けられた開口部2511の内側面2513aが、下方から上方へと向かって漸次径が広がるテーパ面となっている。図17に示すように、軸受機構2aの第2テーパシール部272の第2テーパ間隙は、傾斜した内側面2513aと中心軸J1に平行な円筒面であるシャフト22の外側面とにより形成される。
【0059】
図18および図19に示すように、上キャップ25aは上部251の下面に内周から外周へと径方向に伸びる4本の幅の広い溝2515を有し、円筒部252の内側面に中心軸J1方向に伸びる突起である4本のリブ2523を有する。なお、上部251の下面が溝2515を有すると捉えられても溝2515の間の部位が突起になっていると捉えられてもよく、上部251の下面において主要な領域に対して直線状の凹部となっている場合は「溝」と表現し、凸状となっている場合は「突起」と表現することができる。上キャップ25aの円筒部252の内側面についても同様である。溝2515はそれぞれ周方向において等間隔に位置し、リブ2523は周方向においてそれぞれ隣り合う2つの溝2515の間に位置する(すなわち、溝2515の周方向の位置は、リブ2523の間の部位の位置と一致する。)。図17に示すように上キャップ25aがスリーブ21に圧入されると、スリーブ21の上面211に対向する溝2515により上側流路267の流路断面積を容易に拡大することが実現される。リブ2523は圧入によりスリーブ21の外側面212と当接し、これにより上キャップ25aの内側面とスリーブ21の外側面212との間に間隙が設けられ、外側上部流路266の流路断面積を容易に拡大することが実現される。
【0060】
溝2515およびリブ2523により、上側流路267と外側上部流路266とで形成される第2流路26bの流路断面積を外側下部流路265である第1流路26aよりも大きくすることにより、第2流路26bの流路抵抗を第1流路26aの流路抵抗より低くすることができ、さらに、図18に示すように溝2515が周方向において隣り合うリブ2523の間に位置することにより、外側上部流路266から上側流路267への流れが円滑になり、流路抵抗がさらに低減される。
【0061】
なお、溝2515の間の部位の周方向の幅はスリーブ21の上面溝2111の幅よりも大きくされ、リブ2523の周方向の幅もスリーブ21の外側面溝2121の幅よりも大きくされ、これらの部位が上面溝2111や外側面溝2121に嵌り込むことが防止される。
【0062】
以上に説明したように、軸受機構2aにおいても、第1テーパシール部271および第2テーパシール部272の間を連通する第2流路26bの流路抵抗を小さくすることにより、潤滑油を安定して循環させることができ、また、図15の第1および第2テーパシール部271,272と同様に、第1テーパシール部271のテーパ角を第2テーパシール部272のテーパ角よりも小さく設定することにより、第1テーパシール部271において潤滑油に与えられる圧力を第2テーパシール部272において潤滑油に与えられる圧力よりも高くして第2流路26bの抵抗が第1テーパシール部271の第1界面2711に与える影響を低減することが実現される。
【0063】
図20は軸受機構2のスリーブの他の例を示す平面図であり、図21は軸受機構2の上キャップの他の例を示す底面図である。図20に示すスリーブ21aは、上面211に内周から外周へと直線状に伸びるとともに径方向に対して傾斜する(中心軸J1に対し、いわゆる、オフセットされた)上面溝2112を有し、上面溝2112は外側面212上の外側面溝2121に接続される。図21に示す上キャップ25bは、上部251の下面に内周から外周へと直線状に伸びるとともに径方向に対して傾斜する溝2516を有し、溝2516は円筒部252の内側面の中心軸J1に平行に伸びる凹部2524に接続される。なお、スリーブ21aおよび上キャップ25bでは、上面溝2112および溝2516の形状を直線状とすることにより溝の成形を容易とすることができる。
【0064】
図20に示すように、スリーブ21aの上面溝2112の間の部位(溝と溝との間の丘となっている部位)の周方向の幅は径方向内方に向かって漸次減少し、当該部位の最も狭い幅は図21に示す上キャップ25bの溝2516の周方向の幅よりも大きくされ、スリーブ21aの上面211の一部が上キャップ25bの溝2516に嵌り込むことが防止される。また、上キャップ25bの溝2516の間の部位(溝と溝との間の丘となっている部位)の周方向の幅は径方向内方に向かって漸次減少し、当該部位の最も狭い幅はスリーブ21aの上面溝2112の周方向の幅よりも大きくされ、上キャップ25bの上部251の下面の一部がスリーブ21aの上面溝2112に嵌り込むことが防止される。その結果、軸受機構2を組み立てた際にスリーブ21aおよび上キャップ25bにより構成される組立体の中心軸J1方向の高さを確実に所定の高さとすることができる。
【0065】
軸受機構2では、スリーブ21aの上面溝2112および上キャップ25bの溝2516がそれぞれ上キャップ25bの溝2516の間の部位、および、スリーブ21aの上面溝2112の間の部位に当接して容易に上側流路267(図2参照)が確保される。スリーブ21aおよび上キャップ25bの他の構造はそれぞれスリーブ21および上キャップ25と同様となっている。
【0066】
図22は軸受機構2の平面図であり、スリーブ21a、上キャップ25bおよびシャフト22の配置を示している。なお、ハウジング本体241(図2参照)の図示は省略している。図22では、細い二点鎖線にてスリーブ21aの上面211の形状を示し、太い破線にて上キャップ25bの上部251の下面の形状を示している。スリーブ21aの上面溝2112および上キャップ25bの溝2516の傾斜方向はそれぞれ径方向外方に向かってシャフト22の回転方向(図22中に矢印92にて示す方向)とは反対の方向となっている。
【0067】
モータ1の駆動時には、スリーブ21aの外側面溝2121および上キャップ25bの凹部2524から上側流路267(すなわち、スリーブ21aの上面溝2112および上キャップ25bの溝2516)へと流れる潤滑油は、径方向内方に向かうとともにシャフト22の回転方向に向かうため、潤滑油はラジアル間隙261(図2参照)へと滑らかに流入する。これにより、モータ1では上側流路267の中心軸J1側の端部(すなわち、ラジアル間隙261との境界)における潤滑油に対する流路抵抗が低減される(または、円滑な流れが実現される。)。
【0068】
軸受機構2では、スリーブ21aの上面溝2112の一部と上キャップ25bの溝2516の一部とが中心軸J1方向に重なるようにスリーブ21aと上キャップ25bとが固定されてもよく、スリーブ21aの上面溝2112と上キャップ25bの溝2516との配置は考慮される必要はない。また、スリーブ21aの上面溝2112および上キャップ25bの溝2516は互いに傾斜方向が異なるように形成されてもよい。
【0069】
図23は軸受機構2の上キャップのさらに他の例を示す底面図であり、図24は図23に示す上キャップ25cの矢印Dの位置における断面の一部を示す図である。上キャップ25cは図21に示す上キャップ25bの上部251に設けられる溝2516に代えて周方向に並ぶ直線状の4つのリブ状の突起2517を備え、突起2517は径方向外方に向かってシャフト22が回転する方向(平面図である図22中の符号92参照)とは反対の方向に傾斜するように形成される。
【0070】
突起2517の周方向の幅はスリーブ21aの上面溝2112(図20参照)の周方向の幅よりも大きくされており、上キャップ25cがスリーブ21aに取り付けられる際に突起2517がスリーブ21aの上面溝2112に嵌り込んでしまうことが防止される。これにより、上キャップ25cの上部251の下面とスリーブ21aの上面211との間に上側流路267(図2参照)が容易に確保される。モータ1の駆動時には、上側流路267に流入する潤滑油は上キャップ25cの突起2517の伸びる方向に沿って径方向内方に向かうとともにシャフト22の回転方向へと向かうため、上側流路267の中心軸J1側の端部における流路抵抗が低減される(または、円滑な流れが実現される。)。
【0071】
図25はモータ1に用いられる軸受機構のさらに他の例を示す縦断面図である。図25の軸受機構2bは略円筒状のスリーブ30、環状テーパ部2412a、円板状の下キャップ242aを備え、図17の軸受機構2aと同様のシャフト22、スラストプレート23および上キャップ25aをさらに備える。スリーブ30は上部において外径が小さくなっており、下面の外周縁では下方に突出する環状凸部31が設けられる。スリーブ30にはスラストプレート23を下端部に取り付けたシャフト22が下方から挿入され、スラストプレート23が環状凸部31内に配置される。環状凸部31の内側面には下キャップ242aが固定され、スラストプレート23の下面側が閉塞される。スリーブ30の上部には上キャップ25aが圧入され、スリーブ30の外側面の段差部には上方に向かうとともに径が増大する環状テーパ部2412aが固定される。これにより、スリーブ30の外周に図17と同様の第1テーパシール部271の第1テーパ間隙2712が形成され、シャフト22の周囲に第2テーパシール部272の第2テーパ間隙2722が形成される。
【0072】
スリーブ30内には下面から段差部に向かって中心軸J1方向に平行に伸びる連通路が設けられ、これにより、スリーブ30の下面とスラストプレート23の上面との間のスラスト間隙から第1テーパシール部271の下部まで潤滑油が導かれる。すなわち、図25の軸受機構2bでは、スラスト間隙と第1テーパシール部271とを連絡する第1流路26aがスリーブ30内に形成される。第1テーパシール部271と第2テーパシール部272とを連絡する第2流路26bは図17の軸受機構2aの外側上部流路266および上側流路267と同様に形成される。また、軸受機構2aと同様に、第2流路26bの流路断面積は第1流路26aの流路断面積よりも大きくされ、第2流路26bの流路抵抗が第1流路26aの流路抵抗よりも低くされることにより、第1テーパシール部271および第2テーパシール部272にて潤滑油が安定して保持される。また、第2テーパ間隙2722のテーパ角は第1テーパ間隙2712のテーパ角よりも大きくされる(図26ないし図28において同様)。
【0073】
図26はモータ1に用いられる軸受機構のさらに他の例を示す縦断面図である。図26の軸受機構2cは、図25の軸受機構2bと比べて上キャップ25aが省略されて第1および第2テーパシール部271,272の構造が変更され、第2流路26bがスリーブの内部に設けられた連通路により形成されている点で異なり、その他の構成は軸受機構2bと同様となっている。軸受機構2cのスリーブ30aは略円筒状であり、外側面の段差部上に図25の軸受機構2bと同様の環状テーパ部2412aが取り付けられ、環状テーパ部2412aはスリーブ30aの外側面に直接対向する。また、スリーブ30aの内側面の上部には下方から上方へと漸次径が増大するテーパ面が設けられる。これにより、スリーブ30aの外周に第1テーパシール部271の第1テーパ間隙2712が形成され、シャフト22の周囲に第2テーパシール部272の第2テーパ間隙2722が形成される。
【0074】
スリーブ30aは、図25のスリーブ30と同様に下面のスラスト間隙から第1テーパシール部271までを連絡する連通路を第1流路26aとして内部に有し、さらに、第1テーパシール部271の下端部近傍から第2テーパシール部272までを連絡して潤滑油を導く連通路を第2流路26bとして内部に有する。第2流路26bの流路断面積は第1流路26aの流路断面積よりも大きくされ、第2流路26bの流路抵抗は第1流路26aの流路抵抗よりも低くされ、第1テーパシール部271および第2テーパシール部272にて潤滑油が安定して保持される。
【0075】
図27はモータ1に用いられる軸受機構のさらに他の例を示す縦断面図である。図27に示す軸受機構2dは図17の軸受機構2aと比べて、スラストプレートが省かれ、シャフト22の下端がスリーブハウジング24aの内底面に取り付けられたプレート28に当接し、スリーブハウジング24aは図2のハウジング本体241と下キャップ242とを一体としたものとなっている点で相異する。他の構成は図17の軸受機構2aと同様である。シャフト22の下端部は球面状となっており、下端部が耐摩耗性の材料で形成されたプレート28の上面に点接触することにより、シャフト22をスラスト方向に支持するピボット軸受が構成される。なお、スリーブ21の下面には動圧溝は形成されない。
【0076】
軸受機構2dでは、ラジアル間隙の下部からスリーブ21の下面とプレート28の上面との間の間隙269を経由してスリーブ21の外側面に潤滑油が流入し、スリーブ21の外側面溝で形成される外側下部流路と間隙269とがラジアル間隙261と第1テーパシール部271とを連絡する第1流路26aとなる。また、第1テーパシール部271と第2テーパシール部272とを連絡する第2流路26bは図17の軸受機構2aと同様に上キャップ25とスリーブ21との間に設けられる。そして、第2流路26bの流路断面積は第1流路26aの流路断面積よりも大きくされ、第2流路26bの流路抵抗は第1流路26aの流路抵抗よりも低くされ、第1テーパシール部271および第2テーパシール部272にて潤滑油が安定して保持される。
【0077】
図28はモータ1に用いられる軸受機構のさらに他の例における上部の拡大図である。図28に示す軸受機構2eは図17の軸受機構2aと比べて、上キャップ25aの上部251の内側面の形状が変更される点で異なり、その他の構成は図17と同様である。軸受機構2eの上キャップ25aの内側面2513bは下部が円筒面状であり、上部が下方から上方に向かって内径が漸次拡大するテーパ面となっている。これにより、内側面2513bの円筒面状の下部とシャフト22の外側面との間に環状の間隙2723が設けられ、間隙2723は上側流路267のシャフト22側の端部と第2テーパシール部272の下部とを連絡する。このように、軸受機構2eでは、第2流路26bが間隙2723を介して第1テーパシール部271と第2テーパシール部272を実質的に連絡する構造とされる。また、第2テーパシール部272の下部に狭い円筒面状の間隙2723を設けることにより、潤滑油が上方へと移動する流れに対する抵抗を高くして界面が上昇して潤滑油が漏出することが防止される。
【0078】
図29は、モータ1が搭載される記録ディスク駆動装置3の断面図である。記録ディスク駆動装置3はいわゆるハードディスク駆動装置であり、記録ディスク駆動装置3ではネジ311およびクランパ312によりモータ1上に情報を記録する円板状の記録ディスク13が固定され、アクセス部32が記録ディスク13に対する情報の書き込みおよび読み出しを行い、ハウジング33の内部空間に記録ディスク13、モータ1およびアクセス部32が収容される。
【0079】
ハウジング33は、上部に開口を有するとともにモータ1およびアクセス部32が内側の底面に取り付けられる無蓋箱状の第1ハウジング部材331、並びに、第1ハウジング部材331の開口を覆うことにより内部空間を形成する板状の第2ハウジング部材332を備える。記録ディスク駆動装置3では、第1ハウジング部材331に第2ハウジング部材332が接合されてハウジング33が形成され、内部空間は塵や埃が極度に少ない清浄な空間とされる。
【0080】
アクセス部32は、記録ディスク13に近接して情報の読み出しおよび書き込みを磁気的に行うヘッド321、ヘッド321を支持するアーム322、並びに、アーム322を移動することによりヘッド321を記録ディスク13およびモータ1に対して相対的に移動するヘッド移動機構323を有する。これらの構成により、ヘッド321はモータ1により回転される記録ディスク13に近接した状態で記録ディスク13の所要の位置にアクセスし、情報の書き込みおよび読み出しを行う。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0082】
図15に示す第1テーパシール部271は上方に向かって開口する形状に限らず、例えば、下方に向かって開口してもよい。テーパ角θ1およびθ2は5度および34度には限定されず、θ1<θ2であれば異なる角度が採用されてもよい。
【0083】
図2に示すラジアル間隙261において、シャフト22に形成されたラジアル動圧溝221(図6参照)に代えて、スリーブ21の内側面にラジアル動圧溝が形成されてもよい。また、第1スラスト間隙262において、スリーブ21の下面213のスラスト動圧溝2131(図5参照)に代えてスラストプレート23の上面にスラスト動圧溝が形成されてもよく、第2スラスト間隙263において、スラストプレート23の下面のスラスト動圧溝2311(図8参照)に代えてスリーブハウジング24の底面にスラスト動圧溝が形成されてもよい。
【0084】
図9ないし図11に示すスリーブハウジング24は下キャップ242を別部材とするものではなく、一体的に形成された有底円筒状のスリーブハウジングとされてもよい。さらに、上キャップにてスリーブ21の上面211および外側面212の上部が覆われ、スリーブハウジングにてスリーブ21の下面213および外側面212の少なくとも下部が覆われるのであれば、上キャップおよびスリーブハウジングの形状は他の様々なものとされてよい。図12に示す上キャップ25の上部251が有する凸部2512および円筒部252が有する凹部2521の数は4には限定されず、2以上であればいくつあってもよい。また、図18および図19に示す上キャップ25aが有する溝2515およびリブ2523の数も4には限定されず、2以上の溝2515、3以上のリブ2523であれば他の数が採用されてもよい。図21および図23に示す溝2516および突起2517の数も2以上であればいくつあってもよく、さらに、スリーブの上面溝の数も2以上であれば上記実施の形態に示した数には限定されない。
【0085】
図28の軸受機構2eにおいて、上キャップ25aの上部251の内側面が上面から下面まで円筒面状とされてもよく、この場合、シャフト22の外周に同心円筒状の微小間隙が形成され、この間隙に毛細管現象を利用して潤滑油を保持することにより毛細管シール部が設けられ、第2流路26bが第1テーパシール部271(第1毛細管シール部)と毛細管シール部(第2毛細管シール部)とを連絡する。なお、毛細管シール部の間隙幅は第1テーパシール部271の第1テーパ間隙の最も狭い間隙幅よりも小さいことが好ましい。
【0086】
図30は、図22に示す軸受機構2の変形例を示す図であり、上キャップ25bの上部251に径方向外方に向かってシャフト22の回転方向92とは反対方向に傾斜する溝2516が設けられ、スリーブ21の上面211に径方向外方に向かってシャフト22の回転方向に傾斜する上面溝2113が設けられる。この場合においても、上側流路267内の潤滑油(の一部)は上キャップ25bの溝2516に沿って径方向内方に向かうとともにシャフト22の回転方向に向かうため、潤滑油はラジアル間隙261(図2参照)へと滑らかに流入し、流路抵抗が低減される(または、円滑な流れが実現される。)。また、スリーブ21には上面溝2113に代えて図3に示す径方向に伸びる上面溝2111が設けられてもよい。
【0087】
同様に、図20に示すようにスリーブ21aの上面211に径方向外方に向かってシャフト22の回転方向とは反対方向に傾斜する上面溝2112が設けられる場合、上キャップの上部の下面に径方向外方に向かってシャフト22の回転方向に傾斜する、または、径方向に伸びる溝や突起が設けられてもよい。
【0088】
スリーブに上面溝を設ける手法、および、上キャップの上部の下面に溝または突起を設ける手法は、シャフト22の上端が挿入される開口を有し、スリーブ21の少なくとも上面211および外側面212の上部を覆う部材(以下、「ハウジング部材」という。)を有する軸受機構であれば様々なものに採用されてよい。例えば、図31に示すスリーブ21の上面211および外側面212全体を覆う略円筒状のハウジング部材4を有する軸受機構2に利用することができる。ハウジング部材4は図2に示す上キャップ25およびハウジング本体241を1つの部材としたものに相当し、ハウジング部材4では図2に示す第1テーパシール部271は設けられない。軸受機構2の他の構造は図2に示す軸受機構と同様である。
【0089】
ハウジング部材4では、板状かつ円環状の上部41の下面に内周から外周へと伸びる複数の上部溝411(破線にて示す。)が設けられ、側部42に上部溝411に接続される側部溝421(破線にて示す。)が設けられる。軸受機構2では、上部溝411およびスリーブ21の上面溝2111にて上側流路267が形成され、側部溝421およびスリーブ21の外側面溝2121にて外側流路268が形成される。上側流路267および外側流路268はそれぞれラジアル間隙261および第1スラスト間隙262に連絡することにより、スリーブ21の周囲を循環する潤滑油の循環路が確保される。
【0090】
図1のモータ1はアウタロータ型のモータに限らず、インナロータ型のモータであってもよい。モータ1は記録ディスク駆動装置以外の用途に用いられてもよい。記録ディスク駆動装置3は記録ディスク13に対する情報の読み出しおよび書き込みの一方または両方(すなわち、読み出しまたは書き込み)を行うものであれば上記実施の形態に示したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】モータの縦断面図である。
【図2】軸受機構の縦断面図である。
【図3】スリーブの平面図である。
【図4】スリーブの縦断面図である。
【図5】スリーブの底面図である。
【図6】シャフトの正面図である。
【図7】スラストプレートの正面図である。
【図8】スラストプレートの底面図である。
【図9】ハウジング本体の縦断面図である。
【図10】下キャップの平面図である。
【図11】下キャップの縦断面図である。
【図12】上キャップの底面図である。
【図13】上キャップの縦断面図である。
【図14】軸受機構の上部の拡大図である。
【図15】テーパシール部の構成を示す図である。
【図16】流動回路の概要を示す図である。
【図17】軸受機構の他の例の縦断面図である。
【図18】上キャップの他の例の底面図である。
【図19】上キャップの他の例の縦断面図である。
【図20】スリーブの他の例の平面図である。
【図21】上キャップの他の例の底面図である。
【図22】軸受機構の平面図である。
【図23】上キャップの他の例の底面図である。
【図24】上キャップの部分断面図である。
【図25】軸受機構のさらに他の例の縦断面図である。
【図26】軸受機構のさらに他の例の縦断面図である。
【図27】軸受機構のさらに他の例の縦断面図である。
【図28】軸受機構のさらに他の例の上部の拡大図である。
【図29】記録ディスク駆動装置を示す図である。
【図30】軸受機構のさらに他の例の平面図である。
【図31】軸受機構のさらに他の例の縦断面である。
【符号の説明】
【0092】
1 モータ
2,2a〜2e 軸受機構
3 記録ディスク駆動装置
4 ハウジング部材
11 ロータ部
12 ステータ部
13 記録ディスク
21,21a,30,30a スリーブ
22 シャフト
23 スラストプレート
24 スリーブハウジング
25,25a〜25c 上キャップ
26a 第1流路
26b 第2流路
32 アクセス部
41 上部溝
42 側部溝
92 (シャフトの)回転方向
211 (スリーブの)上面
212 (スリーブの)外側面
213 (スリーブの)下面
251 (上キャップの)上部
252 (上キャップの)円筒部
261 ラジアル間隙
262 第1スラスト間隙
267 上側流路
271 第1テーパシール部
272 第2テーパシール部
331 第1ハウジング部材
332 第2ハウジング部材
2111〜2113 上面溝
2121 外側面溝
2511 開口部
2512 (上キャップの上部の)凸部
2515,2516 (上キャップの上部の)溝
2517 (上キャップの上部の)突起
2521 (上キャップの円筒部の)凹部
2522 切断面
2523 (上キャップの円筒部の)リブ
2712 第1テーパ間隙
2722 第2テーパ間隙
θ1,θ2 テーパ角
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構であって、
円筒状のスリーブと、
前記スリーブに挿入されて上端が前記スリーブから突出し、回転時に前記スリーブの内側面との間のラジアル間隙にて発生する潤滑油の流体動圧を利用して前記スリーブに支持されるシャフトと、
前記スリーブの外周に形成されたテーパ状の間隙にて潤滑油を保持する第1毛細管シール部と、
前記ラジアル間隙の上方において前記シャフトの周囲の間隙にて潤滑油を保持する第2毛細管シール部と、
前記回転時に流体動圧の発生に伴って前記ラジアル間隙の下部または前記下部に連絡する動圧間隙から潤滑油が流入し、前記ラジアル間隙の前記下部または前記動圧間隙と前記第1毛細管シール部とを連絡する第1流路と、
前記第1流路から潤滑油が流入し、前記第1毛細管シール部と前記第2毛細管シール部とを実質的に連絡するとともに前記第1流路よりも流路断面積が大きい第2流路と、
を備えることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項2】
請求項1に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記第2毛細管シール部の前記間隙もテーパ状であり、前記第2毛細管シール部の前記間隙のテーパ角が前記第1毛細管シール部の前記間隙のテーパ角よりも大きいことを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記シャフトの下端に取り付けられて前記スリーブの下面に対向し、回転時に前記スリーブの前記下面との間のスラスト間隙にて潤滑油の流体動圧を発生するスラストプレートをさらに備え、
前記第1流路に前記スラスト間隙から潤滑油が流入することを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項4】
請求項3に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記スラストプレートの下面および前記スリーブの外側面の少なくとも下部を覆い、前記外側面との間に前記第1流路を形成するスリーブハウジングをさらに備えることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、
前記シャフトの前記上端が挿入される開口を有し、前記スリーブの上面および外側面の上部を覆い、前記上面および前記外側面との間に前記第2流路を形成する上キャップをさらに備え、
前記第2毛細管シール部が、前記シャフトと前記上キャップとの間に設けられることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項6】
請求項5に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記上キャップの上部下面に、前記スリーブの前記上面に当接するとともに周方向に並ぶ複数の突起または前記上面に対向するとともに内周から外周へと伸びる複数の溝が形成されていることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項7】
請求項6に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記スリーブの前記上面に内周から外周へと伸びる複数の上面溝が形成されており、
前記上キャップの前記複数の突起または前記複数の溝の間の部位の周方向の幅が、前記スリーブの前記複数の上面溝の幅よりも大きいことを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、
前記スリーブの前記外側面に軸方向に伸びる複数の外側面溝が形成されており、
前記上キャップの内側面に、前記スリーブの前記外側面に当接する複数の突起または前記外側面に対向するとともに軸方向に伸びる複数の溝が形成されており、
前記上キャップの前記内側面の前記複数の突起または前記複数の溝の間の部位の周方向の幅が、前記スリーブの前記複数の外側面溝の幅よりも大きいことを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項9】
請求項6または7に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記上キャップの内側面に、前記スリーブの前記外側面に当接する複数の突起または前記外側面に対向するとともに軸方向に伸びる複数の溝が形成されており、
前記上キャップの前記上部下面の前記複数の突起の間の部位または前記複数の溝の周方向の位置が、前記上キャップの前記内側面の前記複数の突起の間の部位または前記複数の溝の位置と一致することを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項10】
請求項4に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記シャフトの前記上端が挿入される開口を有し、前記スリーブの上面および前記外側面の上部を覆い、前記上面および前記外側面との間に前記第2流路を形成する上キャップをさらに備え、
前記第2毛細管シール部が、前記シャフトと前記上キャップとの間に設けられ、
前記スリーブハウジングの上部が上方に向かって漸次径が増大し、前記上キャップの下部が前記スリーブハウジングの前記上部の内側に位置することにより、前記上キャップの前記下部と前記スリーブハウジングの前記上部との間に前記第1毛細管シール部が形成され、
前記上キャップの前記下部の外側面が、板材のプレスおよび打ち抜きにて前記上キャップが形成される際の切断面を有し、前記切断面の径が前記切断面の上側の部位の径よりも大きいことを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項11】
電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構であって、
円筒状のスリーブと、
前記スリーブに挿入されて上端が前記スリーブから突出し、回転時に前記スリーブの内側面との間のラジアル間隙にて生じる潤滑油の流体動圧を利用して前記スリーブに支持されるシャフトと、
前記スリーブの外周に形成されたテーパ状の間隙にて潤滑油を保持する第1毛細管シール部と、
前記ラジアル間隙の上方において前記シャフトの周囲の間隙にて潤滑油を保持する第2毛細管シール部と、
前記回転時に流体動圧の発生に伴って前記ラジアル間隙の下部または前記下部に連絡する動圧間隙から潤滑油が流入し、前記ラジアル間隙の前記下部または前記動圧間隙と前記第1毛細管シール部とを連絡する第1流路と、
前記第1流路から潤滑油が流入し、前記第1毛細管シール部と前記第2毛細管シール部とを実質的に連絡するとともに前記第1流路よりも流路抵抗が小さい第2流路と、
を備えることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項12】
電動式のモータに用いられる流体動圧軸受機構であって、
円筒状のスリーブと、
前記スリーブに挿入されて上端が前記スリーブから突出し、回転時に前記スリーブの内側面との間のラジアル間隙にて発生する潤滑油の流体動圧を利用して前記スリーブに支持されるシャフトと、
前記シャフトの前記上端が挿入される開口を有し、少なくとも前記スリーブの上面および外側面の上部を覆うハウジング部材と、
を備え、
前記シャフトと前記ハウジング部材の環状の上部との間の間隙にて潤滑油を保持する毛細管シール部が形成され、
潤滑油が、前記回転時に流体動圧の発生に伴って前記ラジアル間隙の下部または前記下部に連絡する動圧間隙から前記スリーブの外側面へと流れ、さらに前記外側面の上端から前記ハウジング部材の前記上部と前記スリーブの上面との間に設けられた流路を経由して前記ラジアル間隙の上部へと流れ、
前記ハウジング部材の上部下面に、前記スリーブの前記上面に当接するとともに周方向に並ぶ複数の突起または前記上面に対向するとともに内周から外周へと伸びる複数の溝が形成されていることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項13】
請求項12に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記スリーブの前記上面に内周から外周へと伸びる複数の上面溝が形成されており、
前記ハウジング部材の前記複数の突起または前記複数の溝の間の部位の周方向の幅が、前記スリーブの前記複数の上面溝の幅よりも大きいことを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項14】
請求項13に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記複数の上面溝が、径方向外方に向かって前記シャフトの回転方向とは反対方向に傾斜していることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項15】
請求項13または14に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記複数の上面溝が直線状であることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項16】
請求項12ないし15のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、
前記ハウジング部材の前記上部下面が前記複数の溝を有し、
前記複数の溝が、径方向外方に向かって前記シャフトの回転方向とは反対方向に傾斜していることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項17】
請求項13に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記ハウジング部材の前記上部下面が前記複数の溝を有し、
前記スリーブの前記複数の上面溝および前記ハウジング部材の前記複数の溝が、径方向外方に向かって前記シャフトの回転方向とは反対方向に傾斜していることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項18】
請求項16または17に記載の流体動圧軸受機構であって、
前記ハウジング部材の前記上部下面が有する前記複数の溝が、直線状であることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項19】
請求項12ないし18のいずれかに記載の流体動圧軸受機構であって、
前記ハウジング部材が、
前記スリーブの前記上面および前記外側面の上部を覆い、前記シャフトの前記上端が挿入される前記開口を有する上キャップと、
前記スリーブの下面および前記外側面の少なくとも下部を覆うスリーブハウジングと、
を備えることを特徴とする流体動圧軸受機構。
【請求項20】
電動式のモータであって、
請求項1ないし19のいずれかに記載の流体動圧軸受機構と、
前記シャフトの前記上端に取り付けられたロータ部と、
前記流体動圧軸受機構が固定されるステータ部と、
を備えることを特徴とするモータ。
【請求項21】
記録ディスク駆動装置であって、
記録ディスクを回転する請求項20に記載のモータと、
前記記録ディスクに対する情報の読み出しまたは書き込みを行うアクセス部と、
前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備えることを特徴とする記録ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−306916(P2008−306916A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335962(P2007−335962)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】