説明

流体圧アクチュエータ

【課題】流体圧アクチュエータにおいて、直進駆動と回転駆動を精度よく行うことである。
【解決手段】流体圧アクチュエータ10は、スプール部16と出力軸18を含むロッド部14と、スプール部16を軸方向に摺動可能に保持するスリーブ部20と、出力軸18に同軸に設けられ、図示されていない回転駆動機構に接続される回転部50と、一方端32が出力軸18に固定され他方端34が回転部50に固定される捩じりバネ体30と、スプール部16の軸方向駆動のための直進駆動部40と、出力軸18の軸方向の変位を検出する変位センサ60を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータに係り、スプールから延伸する出力軸が直進と回転とを行うことが可能な流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧アクチュエータは、流体圧を制御することで、スプールを直進駆動することが出来る。スプールを出力軸とすることで、出力軸について、直進方向の位置決め制御、荷重制御等を行うことが出来る。例えば、チップボンディング装置では、チップを保持する出力軸をボンディング対象に向かって所定の高さ位置まで直進移動させる高さ方向の位置決め制御と、位置決めされた所定の高さ位置で、所定の荷重で押し付ける荷重制御が行われる。
【0003】
ここで、出力軸が軸周りに回転可能とできれば、位置決め制御の自由度が増す。チップボンディング装置では、出力軸の回転制御を行うことで、ボンディング対象に対するチップの位置決めが高さ方向のみならず、平面配置についても可能となる。
【0004】
例えば、特許文献1,2には、直線運動および回転運動可能なアクチュエータとして、ピストン・シリンダ機構において、ガイドフランジによってピストンロッドを軸方向スライド可能な状態で支持していると共に、ピストンロッドをピストンヘッドと共に回転させる回転駆動機構を有する構成が開示されている。
【0005】
ここで、ガイドフランジは、断面が多角形状の貫通穴を有し、その外周がシリンダ側に軸受を介して回転可能に支持されている。そして、ピストンロッドは、ガイドフランジの多角形状の貫通穴と同じ断面形状を有している。この構造で、ガイドフランジをシリンダ側に対し回転駆動させることでピストンヘッドは回転し、ピストンロッドを軸方向に移動駆動させることでピストンヘッドが軸方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4171666号明細書
【特許文献2】特許第4268431号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2の構成では、ガイドフランジの貫通穴を多角形貫通穴とし、ピストンロッドのガイドフランジに対応する部分を多角形状とするので、複雑な加工を要する。また、多形状の穴の中を多角形状の軸が軸方向に移動することで、摩擦やバックラッシュ等により、直進精度も回転精度も制限を受ける。
【0008】
本発明の目的は、精度よく直進駆動と回転駆動を行うことが出来る流体圧アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る直進と回転とが可能な流体圧アクチュエータは、少なくとも1つの受圧面を有するスプール部と、スプール部に接続され、スプール部の軸方向に延伸する出力軸と、スプール部を軸方向に移動可能に支持する内周壁を有し、スプール部の受圧面と協働して圧力室を形成するスリーブ部と、圧力室に所定の圧力の流体を供給することで、出力軸を軸方向に直進駆動する直進駆動部と、出力軸と同軸に配置され、出力軸の軸周りに回転可能な回転部と、出力軸と同軸に配置され、軸方向に伸縮可能な捩じりバネ体であって、出力軸に固定される一方端と、回転部に固定される他方端とを有し、他方端の回転部が回転駆動されることで一方端の出力軸が回転駆動される捩じりバネ体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る流体圧アクチュエータにおいて、捩じりバネ体は、捩じり剛性に対し、軸方向の伸縮剛性が低いことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る流体圧アクチュエータにおいて、捩じりバネ体は、一方端の内周側が出力軸の外周側と固定され、他方端の外周側が回転部に固定され、出力軸の外径よりも大きい内径を有し、出力軸が捩じりバネ体の内径側の空間を直進することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る流体圧アクチュエータにおいて、出力軸の軸方向変位を検出する変位センサであって、検出した軸方向変位に応じた捩じりバネ体の軸方向力が、出力軸の先端における荷重の大きさを制御することに用いられる変位センサを備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る流体圧アクチュエータにおいて、圧力室に供給される流体圧力を検出する圧力センサであって、出力軸の先端における荷重の大きさを制御することに用いられる圧力センサを備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る流体圧アクチュエータにおいて、スプール部は、第1受圧面と第2受圧面とを有し、スリーブ部はスプール部と協働して第1受圧面に対応する第1圧力室と第2受圧面に対応する第2圧力室とを形成し、第1圧力室には第1圧力の流体が供給され、第2圧力室には第1圧力よりも高い第2圧力の流体が供給され、第1受圧面の受圧面積が、第2受圧面の受圧面積よりも広いことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成により、流体圧アクチュエータは、スプール部と出力軸がスリーブ部に移動可能に支持され、スプール部とスリーブ部の協働で形成される圧力室に所定の圧力の流体を供給することで、出力軸を軸方向に直進駆動する。また、出力軸と同軸に配置される回転部に他方端が固定され、出力軸に一方端が固定されて軸方向に伸縮可能な捩じりバネ体を用いることで、他方端の回転部を回転駆動すると一方端の出力軸を回転駆動することが出来る。捩じりバネ体の運動は、摩擦がないので、精度よく直進駆動と回転駆動を行うことが出来る。
【0016】
また、流体圧アクチュエータにおいて、捩じりバネ体は、捩じり剛性に対し、軸方向の伸縮剛性が低いので、回転駆動によって直進駆動の精度が低くなることがない。
【0017】
また、流体圧アクチュエータにおいて、捩じりバネ体は、出力軸の外径よりも大きい内径を有し、出力軸が捩じりバネ体の内径側の空間を直進する。これによって出力軸の直進駆動が乱されることがない。
【0018】
また、流体圧アクチュエータにおいて、捩じりバネ体は、一方端の内周側が出力軸の外周側と固定され、他方端の外周側が回転部に固定される。これによって、回転部と出力部との同軸度が維持しやすく、精度よく直進駆動と回転駆動を行うことが出来る。
【0019】
また、流体圧アクチュエータにおいて、出力軸の軸方向変位を検出する変位センサを備える。この変位センサは、直進駆動のフィードバックを行う機能のみならず、検出した軸方向変位に応じた捩じりバネ体の軸方向力が、出力軸の先端における荷重の大きさを制御することに用いられる。また、圧力センサによって検出された流体圧力に基づいて、出力軸の先端における荷重の大きさを制御することに用いられる。
【0020】
また、流体圧アクチュエータにおいて、スプール部の第1受圧面と第2受圧面について、高い圧力を受ける第2受圧面の受圧面積よりも、低い圧力を受ける第1受圧面の受圧面積が広い。これによって、例えば、第2受圧面に一定の高圧力の流体を供給し、第1受圧面に制御圧力を有する流体を供給するときでも、制御圧力を変更することで、出力軸の先端における荷重の大きさを精度よく変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施の形態の流体圧アクチュエータの構成を示す図である。
【図2】図1において、捩じりバネ体の周辺の部分拡大図である。
【図3】図2において、出力軸が軸方向に変位したときの捩じりバネ体の様子を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、別のスプール部の例を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、スプール部の支持の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、流体圧アクチュエータとして、気体を用いる気体圧アクチュエータを述べるが、気体以外の液体を用いる油圧アクチュエータ、水圧アクチュエータであってもよい。また、流体として用いる気体としては、一般的な空気、乾燥空気の他、窒素、アルゴン等の不活性ガス、その他のガスであってもよい。
【0023】
また、以下では、捩じりバネ体として、コイルバネを述べるが、捩じり剛性と軸方向の伸縮剛性を有している弾性体であればよい。ベローズ体のように周方向に連続体であってもよい。材質も金属に限らず、プラスチックでもよく、ゴム、プラスチックゴム等であってもよい。
【0024】
以下で用いる形状、寸法等は、説明のための例示であって、流体圧アクチュエータの仕様に合わせ、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0025】
図1は、流体圧アクチュエータ10の構成を示す図である。この流体圧アクチュエータ10は、サーボ弁42を備え、サーボ弁42からの制御圧力Pcを有する気体と、サーボ弁42に元圧として供給される供給圧力Psを有する気体を用いて、コレット12が先端に取り付けられる出力軸18を軸方向に移動駆動させ、また、図示されていない回転駆動機構によって出力軸18を軸周りに回転駆動させることができる。図1では、出力軸18の軸方向をX方向とし、軸周りの回転方向をθとして図示した。なお、出力軸18が流体圧アクチュエータ10から突き出る方向を+X方向とした。
【0026】
流体圧アクチュエータ10は、スプール部16と出力軸18を含むロッド部14と、スプール部16を軸方向に摺動可能に保持するスリーブ部20と、出力軸18に同軸に設けられ、図示されていない回転駆動機構に接続される回転部50と、一方端が出力軸18に固定され他方端が回転部50に固定される捩じりバネ体30と、スプール部16の軸方向駆動のための直進駆動部40と、出力軸18の軸方向の変位を検出する変位センサ60を含んで構成される。
【0027】
コレット12は、半導体チップ等の電子部品チップを保持する保持具である。コレット12を出力軸18の先端に取り付けることで、例えば、半導体チップを軸方向に移動させて対象物に接触させ、押付荷重を与えることができる。また、対象物に接触する手前で半導体チップを適当に軸周りに回転させて、対象物に対し平面的な位置合わせを行うことができる。このように、コレット12を備えることで、流体圧アクチュエータ10をボンディング装置に用いることができる。
【0028】
ロッド部14は、外径の大きなスプール部16と、スプール部16よりは細い外径を有し、スプール部16に接続され、軸方向に延伸する出力軸18を含んで構成される。スプール部16は、断面形状が円形の円柱形状を有し、外径は精度よく仕上げられる。出力軸18も断面形状が円形の円柱形状を有し、その外径も精度よく仕上げられる。スプール部16の出力軸18と接続される+X側と反対側の−X側の面は、制御圧力Pcを受ける第1受圧面24である。スプール部16が出力軸18と接続される箇所の段差部に対応する面は、供給圧力Psを受ける第2受圧面28である。
【0029】
スリーブ部20は、スプール部16の外周部を軸方向に摺動可能に支持する内周壁を有する。スリーブ部20の内周壁は、断面が円形の円筒状形状を有し、その内径は、スプール部16の外径よりやや大きくなるように、精度よく仕上げられる。スリーブ部20の−X側には、円筒状形状を閉じて塞ぐように、蓋部23が設けられる。これによって、蓋部23とスプール部16の第1受圧面とスリーブ部20の協働によって第1圧力室22が形成される。
【0030】
スリーブ部20の一部である張出スリーブ部21は、出力軸18を覆うように配置される内径が円筒状の部材である。張出スリーブ部21は、軸受52を介して回転部50を支持する。したがって、張出スリーブ部21は、出力軸18と接触せず、出力軸18と摺動もしない。張出スリーブ部21の−X側の端部に設けられる遮蔽部材25は、内径が出力軸18の外径よりやや大きい環状部材である。遮蔽部材25の−X側の出力軸18の外周側にカラー27が設けられる。このカラー27とスプール部16の第2受圧面28とスリーブ部20の協働によって第2圧力室26が形成される。
【0031】
直進駆動部40は、第1圧力室22に制御圧力Pcを有する気体を供給し、第2圧力室26に供給圧力Psを有する気体を供給する気体圧供給回路である。直進駆動部40は、図示されていない気体供給源から元圧として供給される供給圧力Psを有する気体から制御圧力Pcを有する気体を生成するサーボ弁42と、サーボ弁42から第1圧力室22に制御圧力Pcを有する気体を供給する第1気体流路44と、サーボ弁42への供給とは別に供給圧力Psを有する気体を供給する供給ポート46と、供給ポート46から第2圧力室26に供給圧力Psを有する気体を供給する第2気体流路48とを含んで構成される。供給ポート46から分流してサーボ弁42と第2気体流路48に供給圧力Psを有する気体を供給するものとしてもよい。
【0032】
制御圧力Pcは供給圧力Psよりも小さいが、図1で示されるように、第1受圧面24の受圧面積Acは、第2受圧面28の受圧面積Asよりも小さい。ここで、F(P)=(Pc×Ac−Ps×As)は、圧力による出力軸18の軸方向駆動力となる。供給圧力Psを一定の圧力とすれば、サーボ弁42からの制御圧力PcによってF(P)の大きさを制御できる。これによって、出力軸18を軸方向に移動させる直進駆動を制御でき、また、出力軸18に与える軸方向の荷重の中で、圧力による成分の大きさを制御することができる。
【0033】
第1気体流路44には、制御圧力Pcを検出するための圧力センサ45が設けられ、第2気体流路48には、供給圧力Psを検出するための圧力センサ49が設けられる。これらによって検出された気体圧は、図示されていない制御装置に伝送され、出力軸18の先端のコレット12の荷重制御に用いられる。
【0034】
変位センサ60は、出力軸18の軸方向変位を検出する検出器である。変位センサ60
には、軟磁性体のプローブ62とトランス巻線64とを含む差動変圧器方式のものを用いることができる。すなわち、出力軸18と一体であるスプール部16の−X側の先端から軟磁性体のプローブ62を軸方向に沿って−X側に延ばし、これと協働するトランス巻線64を蓋部23に設ける。軟磁性体のプローブ62は、ロッド部14の中心軸と軸芯を合わせることがよい。または、ロッド部14の重心軸と軸芯を合わせることがよい。
【0035】
プローブ62は、出力軸18に固定される非磁性体とその先端に設けられる軟磁性体で構成される軸状の部材である。プローブ62は、出力軸18と一体として軸方向に移動し、トランス巻線64の空洞部への挿入長さに応じた信号が出力軸18の変位信号として、トランス巻線64から出力される。出力された変位信号は、図示されていない制御装置に転送され、流体圧アクチュエータ10の出力軸18の先端のコレット12のX方向の位置制御に利用される。
【0036】
変位センサ60としては、差動変圧器方式の他に、光学検出式または容量検出式または磁気を利用したディジタル式の位置検出センサを用いてもよい。また、検出された変位を微分等の演算を施すことで、位置制御の他、速度制御、加速度制御に用いるものとしてもよい。
【0037】
ここで、出力軸18には、捩じりバネ体30が接続されるので、出力軸18が軸方向に変位すると、出力軸18は、捩じりバネ体30からバネ定数に応じた軸方向力F(S)を受ける。この捩じりバネ体30による軸方向力F(S)は、上記の気体圧による軸方向力F(P)とともに、出力軸18の先端のコレット12における軸方向力Fとしての荷重となる。荷重としての軸方向力Fは、F=F(P)+F(S)で示される。F(S)は、捩じりバネ体30の軸方向のバネ定数をkとし、捩じりバネ体30が自由長のときを基準とした出力軸18の軸方向変位をΔX1とすると、F(S)=k×(ΔX1)である。このように、変位センサ60の出力は、出力軸18の先端のコレット12の位置制御に用いられると共に、出力軸18の先端のコレット12に与えられる荷重の大きさを圧力センサ45,49と協働して制御することにも用いられる。
【0038】
回転部50は、出力軸18と同軸に配置され、出力軸18の軸周りに回転可能な円筒部材で、図示されていない回転駆動機構に接続され、捩じりバネ体30を介して出力軸18を軸周りに回転する機能を有する。
【0039】
捩じりバネ体30は、出力軸18と同軸に配置され、捩じり剛性に対し、軸方向の伸縮剛性が低く、軸方向に伸縮可能なコイルバネである。捩じりバネ体30は、−X軸方向の一方端32の内周側で出力軸18に固定され、+X軸方向の他方端34の外周側で回転部50に固定される。
【0040】
図2、図3に、捩じりバネ体30と回転部50の周辺の拡大詳細図を示す。図2は、出力軸18が+X方向の右端位置にある状態であり、図3は、出力軸18が右端位置から−X方向に(−ΔX)だけ変位した状態を示す図である。いずれの場合でも、捩じりバネ体30がその自由長からΔX1だけ変位していたとすると、捩じりバネ体30による軸方向力F(S)は、F(S)=k×ΔX1で与えられる。
【0041】
図2、図3で示されるように、回転部50は、円環状の外周部で軸受52によって張出スリーブ部21に取り付けられる。軸受52は、転がり軸受を用い、軸方向に沿って並列に2列設けられる。2列以上の複数列設けるものとしてもよい。転がり軸受に代えて、すべり軸受、静圧軸受としてもよい。回転部50の円環状の内周側は、捩じりバネ体30の外周と隙間を開けて軸方向に延びる。−X側の端部は、捩じりバネ体30の一方端32の外周側の+X側の端部に向かい合い、捩じりバネ体30が自由長のときには、回転部50の−X側の端部は、捩じりバネ体30の一方端32の+X側の端部に突き当てられる。回転部50の内周側は、捩じりバネ体30の外周と隙間を開けて軸方向に延びる。回転部50の+X側の端部は、捩じりバネ体30の他方端34の外周側の+X側の端部に向かい合い、固定ネジ54を介して接続される。
【0042】
捩じりバネ体30は、出力軸18の外周側にカシメ部19で固定される一方端32と、回転部50の内周側に固定ネジ54を介して固定される他方端34と、一方端32と他方端34の間のコイルバネ部36とを含んで構成される。一方端32と出力軸18との間の固定手段としては、カシメ部19の他に、接着、あるいはネジ等を用いることができる。
【0043】
コイルバネ部36は、断面が直方体形状の扁平バネ材を螺旋状に予め定められた巻数で巻回し、螺旋の進む方向をバネの軸方向として、これを出力軸18の軸方向に合わせて、出力軸18の外周側に配置したものである。コイルバネ部36の−X方向の端部は捩じりバネ体30の一方端32に接続され、+X方向の端部は捩じりバネ体30の他方端34に接続される。コイルバネ部36の内径は、出力軸18の外径よりも大きい寸法に設定される。これによって、出力軸18は、コイルバネ部36の内周側に接触することなく、コイルバネ部36の内径側の空間を軸方向に沿って直進移動することができる。
【0044】
コイルバネ部36の断面の直方体形状の短辺がバネの軸方向に沿った辺で、長辺がバネの径方向に沿った辺である。このように、扁平バネ材の薄い板厚方向をコイルバネ部36の軸方向とすることで、コイルバネ部36は、捩じり剛性に対し、軸方向の伸縮剛性が低い特性を有することができる。これによって、出力軸18が軸方向に変位したときに、余計な捩じりが発生することがない。また、回転部50の回転によって捩じりバネ体30を介して出力軸18を回転させるときに、余計な軸方向の伸縮を発生させることがない。
【0045】
上記のように、出力軸18の外周側に接触しないようにコイルバネ部36が配置され、コイルバネ部36の外周側に接触しないように回転部50が配置される。つまり、内径側から、出力軸18、コイルバネ部36、回転部50が同軸に同心状に、三重構造で重畳して配置される。このように配置されることで、回転部50を図示されていない回転駆動部によって軸周りに回転されるとき、出力軸18が軸周りに摩擦なしで回転する。すなわち、回転部50が軸周りに回転すると、捩じりバネ体30の他方端34が回転部50と一体となって回転し、コイルバネ部36は軸方向に伸縮することなく、その回転を捩じりバネ体30の一方端32に伝達し、捩じりバネ体30の一方端32と一体となって出力軸18が軸周りに回転する。
【0046】
図3は、直進駆動部40によって出力軸18が軸方向に−ΔXだけ変位したときの様子を示す図である。この−ΔXの変位に応じて、捩じりバネ体30は図2の右端位置から+ΔXだけ伸長する。このときに、捻じりバネ体30が、自由長を基準としてΔX1=(ΔX−Δx)変形していたとすると、出力軸18にF(S)=k×(ΔX1)=k×(ΔX−Δx)の軸方向力の変化F(S)を与える。Δxは、−ΔXの変位の前に、捻じりバネ体30が自由長から既に変位していた大きさである。したがって、出力軸18の先端のコレット12には、F=F(P)−F(S)の範囲内で荷重が与えられることになる。なお、この状態でも、回転部50を軸周りに回転すれば、出力軸18は軸周りに回転する。すなわち、出力軸18は、直進と回転とを独立的に駆動されることができる。
【0047】
上記では、スプール部16が第1受圧面24と第2受圧面28とを有し、第1受圧面24にサーボ弁42からの制御圧力Pcを与え、第2受圧面28に供給圧力Psを与えるものとして説明した。図4は、第2受圧面28を省略し、第1受圧面24にサーボ弁42からの制御圧力Pcを与えるのみとする流体圧アクチュエータ11を示す図である。ここでは、直進駆動部41がサーボ弁42とサーボ弁42から第1圧力室22に供給圧力Psを有する気体を供給する第1気体流路44とで構成される。また、ロッド部15は、軸径のほとんど変わらないスプール部17と出力軸18とで構成される。このようにすることで、直進駆動部41およびロッド部15の構成を簡単なものとできる。
【0048】
この流体圧アクチュエータ11では、出力軸18の先端のコレット12に与えられる荷重は、F=F(P)−F(S)=(Pc×Ac)−F(S)となる。Acは第1受圧面24の受圧面積であり、F(S)は捩じりバネ体30によって出力軸18に与えられる軸方向力である。
【0049】
上記では、スプール部16がスリーブ部20の内壁面によって軸方向に摺動可能に保持されるものとしたが、静圧軸受機構を用いて非接触式とし、摩擦を低減することができる。図5は、図4の流体圧アクチュエータ11を例として、静圧軸受機構を介して、スプール部17をスリーブ部20によって軸方向移動可能に支持する構成を示す図である。
【0050】
ここでは、供給圧力Psを有する気体を供給する供給ポート70が蓋部23に設けられ、図示されていない真空ポンプ等の減圧装置に接続される減圧ポート72と、図示されていない排気装置に接続される排気ポート74がスリーブ部20に設けられる。そして、スプール部17の外周部に、軸方向に沿って−X方向から+X方向に向かって、順に、静圧軸受くぼみ90、排気くぼみ94、減圧くぼみ92、排気くぼみ95、静圧軸受くぼみ91が配置される。これらのくぼみのそれぞれは、スプール部17の周方向に沿って一周する環状溝として設けられる。
【0051】
スリーブ部20には、供給ポート70からスプール部17の静圧軸受くぼみ90に向けて静圧軸受用流路80が設けられる。同様に、スリーブ部20には、減圧ポート72からスプール部17の減圧くぼみ92に向かって減圧用流路が設けられ、排気ポート74からスプール部17の排気くぼみ94に向かって排気用流路が設けられる。
【0052】
スプール部17には、2つの静圧軸受くぼみ90,91を連通する静圧連通路81が設けられ、2つの排気くぼみ94,95を連通する排気連通路84が設けられる。また、スプール部17および出力軸及びコレット12の内部に、軸方向に沿って、減圧くぼみ92からコレット12に向けて真空連通路82が設けられる。この真空連通路82は、コレット12の端面で開口し、チップ吸引孔76となる。
【0053】
ここで、供給ポート70から供給される供給圧力Psの圧力を有する気体を静圧軸受用の気体として用い、スリーブ部20の内壁面とスプール部17の静圧軸受くぼみ94,95の間の隙間に供給する。これによって、スリーブ部20に対し、スプール部17は、静圧軸受の作用によって浮上する。この浮上によって、スプール部17をスリーブ部20によって、非接触式で、軸方向移動可能に支持することができる。勿論、スプール部17は、非接触式で、軸周りに回転することができる。静圧軸受として用いられた気体は、排気ポート74、減圧ポート72によって外部に排出される。
【0054】
図5は、図4の流体圧アクチュエータ11に静圧軸受機構を設ける例であるが、同様にして、図1の流体圧アクチュエータ10に対しても、スプール部16とスリーブ部20の間、および減圧連通路81、真空連通路82に静圧軸受機構を設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る流体圧アクチュエータは、ボンディング装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
10,11 流体圧アクチュエータ、12 コレット、14,15 ロッド部、16,17 スプール部、18 出力軸、19 カシメ部、20 スリーブ部、21 張出スリーブ部、22 第1圧力室、23 蓋部、24 第1受圧面、25 遮蔽部材、26 第2圧力室、27 カラー、28 第2受圧面、30 捩じりバネ体、32 一方端、34 他方端、36 コイルバネ部、40,41 直進駆動部、42 サーボ弁、44 第1気体流路、45,49 圧力センサ、46 供給ポート、48 第2気体流路、50 回転部、52 軸受、54 固定ネジ、60 変位センサ、62 プローブ、64 トランス巻線、70 供給ポート、72 減圧ポート、74 排気ポート、76 チップ吸引孔、80 静圧軸受用流路、81 静圧連通路、82 真空連通路、84 排気連通路、90,91 静圧軸受くぼみ、92 減圧くぼみ、94,95 排気くぼみ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの受圧面を有するスプール部と、
スプール部に接続され、スプール部の軸方向に延伸する出力軸と、
スプール部を軸方向に移動可能に支持する内周壁を有し、スプール部の受圧面と協働して圧力室を形成するスリーブ部と、
圧力室に所定の圧力の流体を供給することで、出力軸を軸方向に直進駆動する直進駆動部と、
出力軸と同軸に配置され、出力軸の軸周りに回転可能な回転部と、
出力軸と同軸に配置され、軸方向に伸縮可能な捩じりバネ体であって、出力軸に固定される一方端と、回転部に固定される他方端とを有し、他方端の回転部が回転駆動されることで一方端の出力軸が回転駆動される捩じりバネ体と、
を備えることを特徴とする直進と回転とが可能な流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧アクチュエータにおいて、
捩じりバネ体は、捩じり剛性に対し、軸方向の伸縮剛性が低いことを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の流体圧アクチュエータにおいて、
捩じりバネ体は、
一方端の内周側が出力軸の外周側と固定され、他方端の外周側が回転部に固定され、
出力軸の外径よりも大きい内径を有し、出力軸が捩じりバネ体の内径側の空間を直進することを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1に記載の流体圧アクチュエータにおいて、
出力軸の軸方向変位を検出する変位センサであって、検出した軸方向変位に応じた捩じりバネ体の軸方向力が、出力軸の先端における荷重の大きさを制御することに用いられる変位センサを備えることを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1に記載の流体圧アクチュエータにおいて、
圧力室に供給される流体圧力を検出する圧力センサであって、出力軸の先端における荷重の大きさを制御することに用いられる圧力センサを備えることを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1に記載の流体圧アクチュエータにおいて、
スプール部は、第1受圧面と第2受圧面とを有し、スリーブ部はスプール部と協働して第1受圧面に対応する第1圧力室と第2受圧面に対応する第2圧力室とを形成し、第1圧力室には第1圧力の流体が供給され、第2圧力室には第1圧力よりも高い第2圧力の流体が供給され、第1受圧面の受圧面積が、第2受圧面の受圧面積よりも広いことを特徴とする流体圧アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113397(P2013−113397A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261266(P2011−261266)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(503094070)ピー・エス・シー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】