説明

流体用制御弁

【課題】流体用制御弁において、弁体が回転することを抑制すること。
【解決手段】流体用制御弁100であって、筒状で、かつ一端部に流体噴射孔137を有し、流体を流通させるための流体流通空間151を形成するバルブボディ101と、内部に流体が通過する中空部129dと、中空部129dを通る流体を、流体流通空間151に導出させることで回転力を発生させる回転発生孔129hとを備え、バルブボディ101内で移動して流体噴射孔137を開閉する弁体129と、弁体129に止着され、流体噴射孔137を閉じる方向に弁体129を付勢するスプリング141と、弁体129とスプリング141との止着部分に設けられ、回転力が生じる回転方向に対向し、スプリング141の端部と当接する平面部と、スプリングピン147とスプリング141の端部に当接する平面部を有する一対のノッチと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、例えば水素ガスを供給する流体供給系に用いられる流体用制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体用制御弁は、筒状のバルブボディ内に配置された弁体と、弁体に支持され、流体噴射孔を閉じる方向に弁体を付勢するスプリングと、を備えている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平−182377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記流体用制御弁において、スプリングの伸縮による回転力またはバルブ横孔のばらつきにより回転するおそれがあった。その結果、弁体とスプリングとの接触面で摩耗または、プレートゴムの磨耗といった現象が発生し、流体用制御弁が劣化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、流体用制御弁において、弁体が回転することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
流体用制御弁であって、筒状で、かつ一端部に流体噴射孔を有し、流体を流通させるための流体流通空間を形成するバルブボディと、内部に前記流体が通過する中空部と、前記中空部を通る前記流体を、前記流体流通空間に導出させることで回転力を発生させる回転発生孔とを備え、前記バルブボディ内で移動して前記流体噴射孔を開閉する弁体と、前記弁体に止着され、前記流体噴射孔を閉じる方向に前記弁体を付勢するスプリングと、前記弁体と前記スプリングとの止着部分に設けられ、前記回転力が生じる回転方向に対向し、前記スプリングの端部と当接する平面部を有するノッチと、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成の流体用制御弁によれば、流体用制御弁において、弁体が回転することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】流体用制御弁100の中央付近の断面図である。
【図2】バルブ部129cの図1におけるA−A断面を示す図である。
【図3】図1におけるx領域の拡大図である。
【図4】支持プレート127の平面図である。
【図5】第2の実施例におけるバルブ部129cの図1におけるA−A断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例:
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ、詳細に説明する。本実施の形態に係る流体用制御弁は、燃料電池自動車に搭載されている燃料電池に水素ガスを供給する流体供給系に備えられる流体用制御弁として用いている。
【0011】
図1は流体用制御弁100の中央付近の断面図である。図示するように、流体用制御弁100は、円筒状のバルブボディ101を有する。バルブボディ101は、互いに嵌め合い接合された筒状部材からなるアッパボディ103とロアボディ105とから構成される。アッパボディ103内の中央部には、ほぼ円筒状のコア107が挿入配置されている。コア107は磁性材からなり、ロアボディ105との間に非磁性材からなる鍔付リング109が配置されている。またロアボディ105の下端部には、バルブシート131が配置されている。
【0012】
アッパボディ103とコア107の間には、ほぼ円筒状のボビン111が配置されている。ボビン111は合成樹脂等の電気絶縁材からなり、ソレノイドコイル113が多層状に巻かれている。ソレノイドコイル113は、通電によって電磁力を生じ、弁体129をシート135の座面135aから離間させる。言い換えれば、ソレノイドコイル113は、電磁力によって、弁体129を、ガス噴射孔137から離間する方向に移動させる。
【0013】
ロアボディ105の円形断面の筒孔105c内には、ストッパ121、カラー123、支持プレート127、リング125およびバルブシート131が配置されている。
【0014】
ストッパ121は、リング状に形成され、ロアボディ105の筒孔105cに嵌め込まれ、ロアボディ105の筒孔105cの内径方向に突出された内側フランジ部105aに当接される。カラー123は、例えばリング状に形成されており、ロアボディ105の筒孔105cに嵌め込まれ、一端がストッパ121の外周部の側面と当接され、他端が支持プレート127に当接される。リング125は、例えばリング状に形成され、ロアボディ105の筒孔105cに嵌め込まれ、支持プレート127の外周部の側面と当接される。
【0015】
バルブシート131は、シートボディ133と、軸中心部にガス噴射孔137を有するシート135とから構成されている。シート135の上面に上記座面135aが形成される。
【0016】
シートボディ133がロアボディ105の筒孔105c内に圧入嵌合される際、リング125が押圧される。これにより、リング125、カラー123、支持プレート127の外周側およびストッパ121は、順次押圧され、ロアボディ105の筒孔105cの内径方向に突出する内側フランジ部105aに加圧される。すなわち、ロアボディ105の筒孔105cに配置されるリング125、カラー123、支持プレート127およびストッパ121は、ロアボディ105の筒孔105c内に圧入されたシートボディ133によってロアボディ105に固定される構成とされる。
【0017】
弁体129は、磁性材からなり、コア107とほぼ同様の断面形状をなす円筒形状の主部129aと、その主部129aの下流の外周に弁体129の移動方向と直交方向に突出するフランジ部129bと、主部129aの先端に突出する円柱形状のバルブ部129cとを有する。弁体129は、ソレノイドコイル113による電磁力によってガス噴射孔137から離間する方向へと移動されたとき、ストッパ121がフランジ部129bの背面と当接することで、それ以上の移動が規制される。ガス噴射孔137は本発明における「流体噴射孔」に対応する。
【0018】
弁体129は、コア107内に配置されたスプリング141によってガス噴射孔137を閉じる方向に付勢され、ソレノイドコイル113の通電が解除されているときには、スプリング141による付勢力によって、バルブ部129cがシート135の座面135aに押し付けられた閉弁状態となる。なお、スプリング141についての詳細は、後述する。
【0019】
バルブ部129cとシート135の座面135aとが接触する接触面には、弾性を有する環状のシール部材140を有する。
【0020】
図2は、バルブ部129cの図1におけるA−A断面を示す図である。バルブ部129cは、主部129aの中空部129dと連通するとともに径方向に放射状に延びる貫通孔129hが形成されている。貫通孔129hは、図2に示すように、バルブ部129cにおいて、4つ形成されており、それぞれが周方向に90度の等間隔で形成されている。また、各貫通孔129hは、バルブ部129cの中心軸Ttを通る中心線より平行移動して配置される。すなわち、各貫通孔129hにおいて各貫通孔129hの中心を通り側壁に平行な軸線htが、互いに重ならないように、各貫通孔129hは、配置される。これにより、バルブ部129c(弁体129)には、周方向に回転力が生じる(図2参照)。この回転力の方向を以下では、回転方向kとも呼ぶ。
【0021】
流体(水素ガス)は、コア107の中空部107aを経て弁体129の中空部129dへと導かれる。弁体129が閉弁状態に置かれているとき、水素ガスは、弁体129の中空部129dから貫通孔129hを通り、弁体129の外周領域とロアボディ105の内周面との間の空間部151に導入される。上記の各中空部107a,129d、貫通孔129hおよび空間部151によって水素ガスの流路が構成される。空間部151に導入された水素ガスは、弁体129が開弁状態となると、ガス噴射孔137を介して、流体用制御弁100外部に噴射される。空間部151は、本発明における「流体流通空間」に対応する。また、貫通孔129hは、本発明における「回転発生孔」に対応する。
【0022】
図3は、図1におけるx部分の拡大図である。図3は、具体的には、スプリング141と弁体129との止着部(接続部)を模式的に示した拡大図である。スプリング141は、一端がコア107の中空部107aに圧入されるスプリングピン147に、他端が弁体129に止着(接続)される。スプリング141と弁体129との止着部には、図3に示すように、ノッチ149が設けられている。具体的には、ノッチ149は、平面Qを有し、その平面Qが回転方向kに対向するように配置される。平面Qは、スプリング141の端面と当接する。言い換えれば、スプリング141は、弁体129に生じる回転方向kにおける回転力で平面Qに押圧されるようにして、止着される。スプリング141とスプリングピン147との止着部においても、同様に、ノッチ149が設けられている。ノッチ149が本発明における「止着部分」に対応する。
【0023】
図4は、支持プレート127の平面図である。支持プレート127は、円板状のプレート本体201と、プレート本体201の内周部に嵌着されたプレートゴム203とを備える。プレート本体201は、例えば析出硬化系ステンレスからなり、中央部に設けられる円形の貫通孔201aと、複数の流体用貫通孔201bを有する。流体用貫通孔201bは、空間部151内において水素ガスの圧力分布が生じることを抑制するための貫通孔である。
【0024】
支持プレート127は、上述したように、その外周部の側面がカラー123とリング125に挟持されてロアボディ105側に止着されている。すなわち、支持プレート127の外周部がバルブボディ101の内壁に止着される構成となっている。そして、支持プレート127のプレートゴム203は、弁体129の下面に当接される。プレートゴム203は、弁体129がバルブシート131のガス噴射孔137を開閉するべく軸方向に移動されるとき、同方向に支持プレート本体201が弾性変形することで弁体129をガイドしつつ、弁体129の開閉動作を許容する。
【0025】
弁体129がスプリング141によって閉弁状態に置かれる場合において、支持プレート127には、弁体129の移動方向(開弁方向)に付勢力が作用する。これにより弁体129と支持プレート127とは接触状態が維持される。支持プレート127の付勢力は、スプリング141の付勢力に比べてはるかに小さく、スプリング141による弁体129の閉弁動作を損なうものではない。
【0026】
以上のように、本実施例の流体用制御弁100によれば、弁体129の各貫通孔129hを、バルブ部129cの中心軸Ttを通る線から、周方向にずらして配置することで、弁体129に回転方向kの回転力を生じさせると共に、スプリング141と弁体129との止着部において、スプリング141の端部と当接し、回転方向kに対向した平面Qを有するノッチ149を設けるようにしている。このようにすれば、ノッチ149で、スプリング141を止着することができると共に、弁体129が回転方向kに回転することを抑制することができる。その結果、弁体129とスプリング141との接触面で摩耗が生じたり、支持プレート127のプレートゴム203が摩耗したりして、流体用制御弁100が劣化することを抑制することができる。
【0027】
次に、第2の実施形態について、説明する。図5に示すように、バルブ部129cに設けた貫通孔129iの中心線は中心軸Ttと交差し所定角度をもって配置されている。その結果、第1の実施形態と同様の作用・効果を発揮する。
【0028】
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
100…流体用制御弁
101…バルブボディ
103…アッパボディ
105…ロアボディ
105a…内側フランジ部
105c…筒孔
105側…ロアボディ
107…コア
107a…中空部
109…鍔付リング
111…ボビン
113…ソレノイドコイル
121…ストッパ
123…カラー
125…リング
127…支持プレート
129…弁体
129a…主部
129b…フランジ部
129c…バルブ部
129d…中空部
129h…貫通孔
131…バルブシート
133…シートボディ
135…シート
135a…座面
137…ガス噴射孔
140…シール部材
141…スプリング
147…スプリングピン
149…ノッチ
151…空間部
201…プレート本体
201a…貫通孔
201b…流体用貫通孔
203…プレートゴム
k…回転方向
Q…平面
Tt…中心軸
ht…軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用制御弁であって、
筒状で、かつ一端部に流体噴射孔を有し、流体を流通させるための流体流通空間を形成するバルブボディと、
内部に前記流体が通過する中空部と、前記中空部を通る前記流体を、前記流体流通空間に導出させることで回転力を発生させる回転発生孔とを備え、前記バルブボディ内で移動して前記流体噴射孔を開閉する弁体と、
前記弁体に止着され、前記流体噴射孔を閉じる方向に前記弁体を付勢するスプリングと、
前記弁体と前記スプリングとの止着部分に設けられ、前記回転力が生じる回転方向に対向し、前記スプリングの端部と当接する平面部を有する止着部と、
を備えることを特徴とする流体用制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−261494(P2010−261494A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111955(P2009−111955)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】