説明

流体軸受装置

【課題】 軸方向当接面に接着剤を確実に充填させ、軸方向当接面への潤滑流体を防ぎ、軸受寿命の長いモータを提供することである。
【解決手段】 スラストプレート30の外周部に凹部34を設け、スリーブ10の外側下端面15と周壁16とに当接するように固定する。そしてスラストプレート30の面取り部32とスリーブ10の周壁16との間に形成された接着剤溜め部90に接着剤を充填する。この凹部34により、間隙80の空気の逃げ道が形成されるので、接着剤はスムーズに浸透してスラストプレート30とスリーブ10の外側下端面15との当接面に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受装置、その流体軸受装置を用いたスピンドルモータ、およびそのスピンドルモータを用いた記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録ディスク駆動装置は携帯機器に使用されるようになり、記録ディスク駆動装置の高精度化、小型化および耐衝撃性の向上が要求されるようになってきている。それに伴い記録ディスク駆動装置に使用されるスピンドルモータも高精度化、小型化および耐衝撃性の向上が望まれている。これらの要求を満たすためにスピンドルモータの軸受を従来のボールベアリングより流体動圧軸受に移行することが大勢となっている。
【0003】
図11は流体動圧軸受の軸方向断面図である。また図12は図11のE部の拡大図である。
【0004】
図11を参照して、スリーブAは略中空円筒状であり、中空部にシャフトBが半径方向に微少間隙を介して挿入され回転自在に支持されている。シャフトBは円柱状であり、軸方向下側にてスラストプレートCと軸方向に微少間隙を介して対向している。またスリーブAの外周面には、ハウジングDが固定されており、軸方向下側にはスラストプレートCが収容されている。そしてこれら微少間隙には、潤滑流体が充填されている。またこのスラストプレートCとハウジングDとの間の潤滑流体の封止には接着剤を使用する(上述のような従来の流体動圧軸受の例として特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−61641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラストプレートCとハウジングDとの間の潤滑流体の封止には、スラストプレートCとハウジングDとの軸方向当接面を接着剤にて封止することが不可欠である。しかしながら図12を参照して、スラストプレートCとハウジングDとの軸方向当接面は密着しており、軸方向当接面と半径方向当接面との交差部に形成される間隙Fに存在する空気の逃げ場がない。但し一般的には部材の表面粗さに起因するわずかな隙間を通して空気が逃げていくが、カシメや重りによる荷重など軸方向当接面に荷重がかかって当接する場合、空気の逃げ場が無くなる可能性がある。そのため、その間隙Fに接着剤を充填しようとしても、間隙Fに存在する空気が接着剤を押戻すので接着剤が間隙Fに入らない可能性がある。また当接面の接着シールが不十分な場合、間隙Fの空気が密着面を通過して潤滑流体と置換して軸受内に空気が移動してしまい、モータ回転動作に重大な影響を与える可能性がある。その結果、記録ディスクへのリード/ライトに影響を与える可能性がある。したがって本発明は、軸方向当接面に接着剤を確実に充填させ、軸方向当接面への潤滑流体浸透を防ぎ、軸受寿命の信頼性の高いモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1によれば、回転部材と、静止部材と、前記静止部材に形成され、前記回転部材が回転自在に挿入された軸受空洞と、前記静止部材の一端側において、該軸受空洞が半径方向外側に屈曲して形成される、環状面と、該環状面の外縁部において一端方向に立ち上がって形成され、前記環状面を半径方向外側より取り囲む、周壁面と、前記静止部材の一端側に配置され、前記環状面および前記周壁面に当接されて軸受空洞を塞ぐ、円板状部材と、前記回転部材の外周面と前記軸受空洞の内周面とに形成された、微少間隙と、前記微少間隙を満たす、潤滑流体と、前記回転部材の外周面と前記軸受空洞の内周面と潤滑流体とで構成される動圧軸受部と、前記周壁面と前記円板状部材間に介在し、少なくとも前記周壁面と前記円板状部材の外周面との間を封止する、接着剤とを具備する動圧軸受装置において、前記静止部材の前記環状面と前記円板状部材との当接面の少なくともどちらか一方に形成され、半径方向に広がる、凹部を少なくとも1つ有することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2によれば、請求項1に係り、前記凹部は前記周壁面と前記軸受空洞を連通することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3によれば、請求項1および請求項2のいずれかに係り、前記凹部は、半径方向に微少間隙をもって連続して形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係り、前記回転部材の一端側は、回転半径方向に膨大部が形成されており、前記静止部材の前記軸受空洞は前記回転部材の前記膨大部を収容する回転半径方向の拡大部を有し、前記膨大部の軸方向表面とこれに微少間隙を介して対向する前記静止部材の前記拡大部の軸方向表面とを軸受面とするスラスト動圧軸受部を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5によれば、請求項4に係り、前記円板状部材の軸方向表面には動圧溝が設けられており、これと軸方向に微少間隙を介して対向する前記軸体の前記膨大部の軸方向表面とを軸受面とするスラスト動圧軸受部を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6によれば、請求項5に係り、前記凹部は、前記円板状部材の軸方向表面に動圧溝が形成されると同時に形成されることを特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項7によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかに係り、前記回転部材を挿入し、前記静止部材に前記円板状部材を隙間なく固定し、ユニットを作製する工程と、前記静止部材の前記周壁面と前記円板状部材の外周面との当接部全周に接着剤を塗布する工程と、前記ユニットを加熱する工程とにて作製することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8によれば、請求項7に係り、前記固定工程に静止部材を塑性変形させて円板状部材と固定させる塑性加工を用いることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9によれば、請求項7に係り、前記固定工程に圧入を用いることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項10によれば、請求項1乃至請求項9のいずれかに係り、前記接着剤に熱硬化型接着剤を使用することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項11によれば、スピンドルモータは請求項1乃至請求項10のいずれかに係る軸受装置を搭載することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項12によれば、記録ディスク駆動装置は請求項11のスピンドルモータを搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1によれば、円板状部材と静止部材との当接面の少なくとも一方に凹部が設けられることにより、静止部材の環状面および周壁面の交差部分と円板状部材との間に形成される間隙と凹部が連通することにより、間隙内に存在する空気の逃げ道を形成することができ、接着剤をスムーズに浸透させることができる。
【0020】
本発明の請求項2および請求項3によれば、凹部は連通することもしくは微少間隙の当接部を有する凹部を形成することにより、静止部材の環状面および周壁面の交差部分と円板状部材との間に形成される間隙に存在する空気が凹部に逃げることができるので接着剤をスムーズに浸透させることができる。
【0021】
本発明の請求項4および請求項5によれば、回転部材の一端に膨大部が形成され、この膨大部と静止部材および円板状部材との間にスラスト軸受部が形成されることにより、回転部材が軸方向に安定して支持されることができる。
【0022】
本発明の請求項6によれば、円板状部材に形成される動圧溝と同時に凹部を形成することにより、凹部形成の工程を省くことができる。
【0023】
本発明の請求項7によれば、静止部材と円板状部材との固定工程後に接着剤を充填することにより、静止部材と円板状部材との接着状態を安定して充填することができる。また固定部分に塗布することができるので、この固定工程によって発生するコンタミネーションを防ぐことができる。
【0024】
本発明の請求項8および請求項9によれば、固定方法に塑性加工もしくは圧入を用いることにより、より強固に静止部材と円板状部材とを固定することができる。
【0025】
本発明の請求項10によれば、接着剤に熱硬化型接着剤を使用することにより、接着剤が静止部材と円板状部材との当接面に浸透し、且つその当接面にて確実に接着剤を硬化させることができる。
【0026】
本発明の請求項11および請求項12によれば、この請求項1乃至請求項10のいずれかに記載した軸受装置を搭載することにより、より信頼性の高いスピンドルモータおよびこのスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る記録ディスク駆動装置1の実施例の一形態に関して図1を参照して説明する。図1は記録ディスク駆動装置1の断面図である。
【0028】
記録ディスク駆動装置1は、矩形状をしたハウジング2からなり、ハウジング2の内部は、塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部には、情報を記録する円板状のハードディスク3が装着されたスピンドルモータ4が配設されている。
【0029】
また、ハウジング2の内部には、ハードディスク3に対して情報を読み書きするヘッド移動機構5が配置され、このヘッド移動機構5は、ハードディスク3上の情報を読み書きする磁気ヘッド5a、この磁気ヘッド5aを支えるアーム5bおよび磁気ヘッド5aおよびアーム5bをハードディスク3上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部5cにより構成される。
【0030】
このような記録ディスク駆動装置1のスピンドルモータ4として、本願発明のスピンドルモータを適用することで、十分な機能を確保した上で記録ディスク駆動装置1の小型且つ薄型化を実現できると共に、信頼性並びに耐久性の高い記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【0031】
次に本発明のスピンドルモータ4に係る実施例の一形態の全体構成について図2を参照して説明する。図2はスピンドルモータ4の軸方向断面図である。
【0032】
スリーブ10は、中空円筒状であり、その円筒部11の内周面に軸方向上下側にそれぞれラジアル軸受部12、13を形成している。そしてスリーブ10の下部には、内側下端面14と内側下端面14よりも軸方向下側に有する外側下端面15とが形成されている。またスリーブ10の円筒部11の外周面には、ハウジング20が固定される。このハウジング20は、記録ディスク装置1のハウジング2と同等である。スリーブ10の外側下端面15には、スリーブ10を蓋するようにスラストプレート30が固定されている。
【0033】
スリーブ10の内周面には、円柱状のシャフト40がスリーブ10のラジアル軸受面12、13と半径方向に微少間隙を介して対向して挿通され、回転自在に支持されている。シャフト40の上部41には、略有底円筒状であるハブ50が固定されている。またシャフト40の下部には、半径方向に外径が拡大する拡大部42が形成される。この拡大部42の上面部42aはスリーブ10の内側下端面14と軸方向に微少間隙を介して対向する。そして拡大部42の下面部42bはスラストプレート30と軸方向に微少間隙を介して対向する。そしてこれら各々がアキシャル軸受面を形成してシャフト40を回転自在に支持している。これらスリーブ10、スラストプレート30、シャフト40にて軸受装置を形成している。そしてスリーブ10の各ラジアル軸受面12、13と各スラスト軸受面42a、42bとの間を隙間なく満たすように潤滑流体が充填されている。またラジアル軸受面12より軸方向上側には、気液界面Hが形成されている。
【0034】
シャフト40の上部に固定されたハブ50は、中心にシャフト40を固定する貫通孔51、円筒部52、およびこれらを繋ぐ底面部53を有し、底面部53が軸方向上側となるように配置される。円筒部52は、スリーブ10の外周面と微少間隙を介して対向する。そして円筒部52の内周面には、ロータマグネット60が固定される。ロータマグネット60は、ハウジング20の円筒部21の外周面に固定されたステータ70と半径方向に微少間隙を介して対向する。
【0035】
次に本発明に係るスピンドルモータ4の軸受装置のスリーブ10とスラストプレート30との固定について図3乃至図5を参照して説明する。図3乃至図5は図2のG部分の拡大図であり、図3は接着塗布直後の図であり、図4は接着剤が間隙80に浸透する図であり、図5は接着剤がスリーブ10の外側下端面15とスラストプレート30との当接面全体に浸透した図を示す。また図3乃至図5のスラストプレート30にある点線は凹部を示す。そして図3の点線矢印は間隙に存在する空気の移動方向を示す。
【0036】
図3を参照して、スリーブ10の軸方向下側に有する外側下端面15の外側には、軸方向下側に出っ張る周壁16が設けられている。この周壁16と外側下端面15との交差部には、接着剤の溜まり部分となる凹部17が設けられている。また周壁16にも接着剤の溜まり部分の一部となる凹部16aが設けられている。
【0037】
またスラストプレート30の外周面と上面および下面との交差部にはそれぞれ面取部31と32とが形成されている。スリーブ10にスラストプレート30を固定することにより、スリーブ10の凹部18と面取部31とは対向して間隙80が形成される。そしてスリーブ10の凹部16aとスラストプレート30の面取部32とは結合して接着剤溜め部90を形成される。この接着剤溜め部90に熱硬化型接着剤(以下、接着剤とする)を充填する。
【0038】
図4を参照して、接着剤はスリーブ10の周壁16とスラストプレート30の外周面との接合部を浸透して間隙80に充填しようとする。その際、間隙80に存在した空気は、凹部34を通り外部に逃げることができる。その結果、間隙80に接着剤が充填する。
【0039】
図5を参照して、間隙80に充填された接着剤は、表面張力にてスリーブ10の外側下端面15とスラストプレート30との当接面(以下、単に当接面とする)に浸透していくが、接着剤が浸透する当接面における間隔は微少であるために表面張力が強く、そのため間隔の軸方向を埋めるように接着剤が充填される、いわゆるブリッジを生じる。このブリッジを通して間隙80の表面張力と当接面の内径側の表面張力とが釣り合う位置まで接着剤が浸透する。それにより当接面の内径側および外径側に界面を形成し、間隙80には空気が残留する。以上の作用によって接着剤溜め部90に充填した接着剤の量がある程度ばらついたとしても、間隙80の表面張力による調整作用により当接面の接着シールは安定して形成される。これはスリーブ10とスラストプレート30とを固定する作業性に関しても有利となる。すなわち接着剤溜め部90に塗布する接着剤量のばらつきの許容量を大きくできるので接着剤量の調節が容易となり、また外部より目視にて接着剤の塗布具合を容易に確認できるためである。よって前記当接面には接着剤により充填され界面を形成して当接面を埋めているので潤滑流体のこの当接面への侵入を防ぐことができる。したがって、潤滑流体が前記当接面に侵入してしまうと、その侵入分だけ気液界面Hの位置が低下してしまい、モータ寿命に影響を与えてしまうが、本願発明は潤滑流体が前記当接面に侵入することを防ぐので潤滑流体が前記当接面に侵入する分の気液界面Hの位置の低下を防ぐことができ、寿命の長い軸受装置を実現することができる。また、間隙80に存在する空気の軸受内部への侵入も防ぐことができるので、軸受部に影響を与えない信頼性の高い軸受装置を提供することができる。
【0040】
次にスラストプレート30について本発明の特徴となる部分について図6を参照して説明する。
【0041】
スラストプレート30の上面には、シャフト40の拡大部42と軸方向に対向する部分には、動圧溝33が形成されている。またスリーブ10の外側下端面15と当接する部分には、外側下端面15の半径方向長さと同等以上の半径方向長さを有する凹部34が形成されている。この凹部34は動圧溝33を形成すると同時に形成してもよい。この凹部34を動圧溝33と同時に形成することにより、独立して凹部34を形成する工程を省くことができ、加工コストを減少させることができる。このスラストプレート30に形成された凹部34は、図3乃至図5を参照して間隙80とスリーブ10の内側下端面14および円筒部11の内周面とを連通することができる。その結果、間隙80の部分に接着剤が侵入してきても、この間隙80に存在する空気は、この凹部34を通ることにより、間隙80の外部に移動することができる。それにより、接着剤はスムーズに間隙80に充填することができる。
【0042】
次に凹部34の他の実施例を図7および図8を参照して説明する。図7および図8は図2のF部の拡大図である。
【0043】
まず図7を参照して、図3乃至図5では、凹部34は間隙80とスリーブ10の内側下端面14および円筒部11の内周面とを連通していたが、図7の凹部34aでは一部において連通していない。これは、一部であれば空気はスリーブ10の内側下端面14とスラストプレート30の上面との当接面35aを透過することができる。したがって、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また図8は凹部34bが半径方向に微少間隙を介して連続して形成されており、その微少間隙部は当接面35bとなっている。これは当接面35bが微少間隙であるため、空気がこの当接面を透過することができる。したがって、上記と同様の効果を得ることができる。またこれは加工レス程度の面粗度の場合においても同様に、このスリーブ10の内側下端面14とスラストプレート30の上面の対応部との少なくともどちらか一方の面粗度が大きい場合、当接面には図8のような凹部34bが形成されることとなる。
【0045】
次に軸受装置を作製する工程について図9を参照して説明する。
【0046】
スリーブ10の軸方向下側より、シャフト40をスリーブ10の内側下端面14にシャフト40の拡大部42が当接するように挿入する。そしてスリーブ10の外側下端面15と周壁16とに当接するようにスラストプレート30を固定する。この際、スリーブ10の周壁16はスラストプレート30の外周面よりも軸方向下側に突出する突出部16bを有する(図3乃至図5参照)。そしてこの突出部16bを塑性変形(カシメもしくは圧入)によってスリーブ10とスラストプレート30とを固定する(ステップS1)。
【0047】
次にスリーブ10とスラストプレート30とで形成された接着剤溜め部90(固定工程がカシメの場合はそのカシメ部分、圧入の場合はその圧入部分)に接着剤を充填する。ここで、スリーブ10の外側下端面15とスラストプレート30との当接部に凹部34を有することにより、間隙70における空気は接着剤の侵入によりスリーブ10の内周面側に移動することができる(ステップS2)。ここでカシメ部分および圧入部分にも接着剤を充填させることにより、カシメ作業の際にカシメ部分の破断が生じた場合、およびカシメ歯の歯こぼれがカシメ部分に混入した場合、および圧入作業の際に僅かなズレによる偏荷重によって圧入部分がかじってカスが発生した場合等の接合部に発生するコンタミネーションを封止することができる。
【0048】
次に充填した接着剤を硬化させるために軸受装置を約90℃にて約1時間程度加熱する(ステップS3)。本願発明の接着部分は、間隙80と接している部分では空気と常に接しており、そして浸透部分には間隙がほとんどなく、且つ外部から不可視の部分にも接着剤が侵入しているので、接着剤を硬化させるためには熱硬化型接着剤が最も適している。
【0049】
潤滑流体を軸受内に充填する(ステップS4)。接着剤をスリーブ10の外側下端面15とスラストプレート30との当接面に充填し、硬化後に潤滑流体を軸受内に充填することにより、前記当接面および間隙70への潤滑流体の侵入を防ぐことができるので、間隙70に存在する空気と潤滑流体との置換を防ぐことができ、軸受内に空気が侵入することがなくなる。
【0050】
以上、本発明の軸受部、動圧軸受装置、およびスピンドルモータを備えた記録ディスク駆動装置について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0051】
例えば、スピンドルモータ4では、スリーブ10は一部材にて形成されているが、図10のようにスリーブ10を異なる2つの部材10aおよび10bにて形成してもよい。またシャフト40の軸方向下側に位置する膨張部42に関しても、スピンドルモータ4では、一部材にて形成されているが、本発明はこれに限定されることなく、膨張部42を有していればよいので、図10のようにシャフト40の下端部に凹部を設け、その凹部と嵌合する凸部を有する円板形状のキャップ40aのような別部材でもよい。
【0052】
また例えば、凹部34は、スリーブ10の外側下端面15とスラストプレート30との当接面に形成され、間隙80と連通して空気の逃げ場を確保できればよく、スラストプレート30に形成された凹部34はスラストプレート30のみではなくスリーブ10の外側下端面15側に形成してもよい。また凹部34は、スリーブ10とスラストプレート30との少なくともどちらか一方に形成されていればよい。また本発明の実施例では凹部34の数が1つであったがこれに限定されることなく、複数個でも同様の効果を得ることができる。また図8のような微少間隙を介して連続している凹部34bの場合には、全周において凹部34bを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る記録ディスク装置の一形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係るスピンドルモータの一形態を示す軸方向断面図である。
【図3】本発明に係る軸受装置のスリーブとスラストプレートとの接合部の接着剤を充填した図である(図2のG部拡大図である)。
【図4】本発明に係る軸受装置のスリーブとスラストプレートとの接合部の接着剤が間隙に浸透した図である。
【図5】本発明に係る軸受装置のスリーブとスラストプレートとの接合部の接着剤が当接面に浸透した図である。
【図6】本発明に係るスラストプレートの一形態を示す図である。
【図7】本発明に係る凹部の他の実施例を示したスリーブとスラストプレートの接合部の接着剤を充填した図である(図2のG部拡大図である)。
【図8】本発明に係る凹部の他の実施例を示したスリーブとスラストプレートの接合部の接着剤を充填した図である。
【図9】本発明に係る軸受装置の作製工程を示す図である。
【図10】本発明に係る軸受装置の他の実施例を示す断面図である。
【図11】従来例に係る軸受装置を示す断面図である。
【図12】従来例に係る軸受装置のスリーブとスラストプレートとの接合部を示す図である(図11のE部拡大図である)。
【符号の説明】
【0054】
1 記録ディスク装置
4 スピンドルモータ
10 スリーブ
12、13 ラジアル軸受面
14 内側下端面
15 外側下端面
16 周壁
16a 凹部
16b 突出部
17 凹部
20 ハウジング
30 スラストプレート
31、32 面取部
33 動圧溝
34、34a、34b 凹部
35 当接面
40 シャフト
42 膨大部
42a、42b スラスト軸受面
50 ハブ
60 ロータマグネット
70 ステータ
80 間隙
90 接着剤溜め部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
静止部材と、
前記静止部材に形成され、前記回転部材が回転自在に挿入された軸受空洞と、
前記静止部材の一端側において、該軸受空洞が半径方向外側に屈曲して形成される、環状面と、
該環状面の外縁部において一端方向に立ち上がって形成され、前記環状面を半径方向外側より取り囲む、周壁面と、
前記静止部材の一端側に配置され、前記環状面および前記周壁面に当接されて軸受空洞を塞ぐ、円板状部材と、
前記回転部材の外周面と前記軸受空洞の内周面とに形成された、微少間隙と、
前記微少間隙を満たす、潤滑流体と、
前記回転部材の外周面と前記軸受空洞の内周面と潤滑流体とで構成される動圧軸受部と、
前記周壁面と前記円板状部材間に介在し、少なくとも前記周壁面と前記円板状部材の外周面との間を封止する、接着剤と、
を具備する動圧軸受装置において、
前記静止部材の前記環状面と前記円板状部材との当接面の少なくともどちらか一方に形成され、半径方向に広がる、凹部を少なくとも1つ有することを特徴とする動圧軸受装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記周壁面と前記軸受空洞を連通することを特徴とする請求項1の動圧軸受装置。
【請求項3】
前記凹部は、半径方向に微少間隙をもって連続して形成されることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項4】
前記回転部材の一端側は、回転半径方向に膨大部が形成されており、前記静止部材の前記軸受空洞は前記回転部材の前記膨大部を収容する回転半径方向の拡大部を有し、前記膨大部の軸方向表面とこれに微少間隙を介して対向する前記静止部材の前記拡大部の軸方向表面とを軸受面とするスラスト動圧軸受部を有していることを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受装置。
【請求項5】
前記円板状部材の軸方向表面には動圧溝が設けられており、これと軸方向に微少間隙を介して対向する前記軸体の前記膨大部の軸方向表面とを軸受面とするスラスト動圧軸受部を有していることを特徴とする請求項4に記載の動圧軸受装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記円板状部材の軸方向表面に動圧溝が形成されると同時に形成されることを特徴とする請求項5に記載の動圧軸受装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の動圧軸受装置は、
前記回転部材を挿入し、前記静止部材に前記円板状部材を隙間なく固定し、ユニットを作製する工程と、
前記静止部材の前記周壁面と前記円板状部材の外周面との当接部全周に接着剤を塗布する工程と、
前記ユニットを加熱する工程と、
にて作製することを特徴とする。
【請求項8】
前記固定工程に静止部材を塑性変形させて円板状部材と固定させる塑性加工を用いることを特徴とする請求項7に記載の動圧軸受装置。
【請求項9】
前記固定工程に圧入を用いることを特徴とする請求項7に記載の動圧軸受装置。
【請求項10】
前記接着剤に熱硬化型接着剤を使用することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の動圧軸受装置を搭載したことを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項12】
請求項11のスピンドルモータを搭載したことを特徴とする記録ディスク駆動装置。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−200573(P2006−200573A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10424(P2005−10424)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】