説明

流体輸送用管および流体漏洩検知システム

【課題】 LNG等の極低温流体の輸送を可能とし、また、内部での流体の漏洩および位置を早急に、かつ確実に検知することが可能な、流体輸送用管および流体漏洩検知システムを提供する。
【解決手段】 可撓管1aの全長にわたり、光ファイバ17が連続的に巻きつけられる。光ファイバ温度センサ21により検出された漏洩情報は、端子25aを介して、外部に設けられた温度計測器へ伝達される。一方、連結部3近傍で同様の漏洩が生じた場合には、波付き管11内のLNGの内圧や、LNGが気化する際の圧力により、断熱層13a等内部のガス圧力が増加する。断熱層13a内の圧力が増加すると、中空管27を介して、端子25bまでガスの圧力変化情報が伝達される。端子25bに外部からチューブ等を接続して、圧力計等に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば極低温である液化天然ガス等の流体を輸送する際に用いられる流体輸送用管および流体輸送用管からの流体の漏洩を検知するための流体漏洩検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海底の油田等から算出した石油等を貯蔵する海上の浮体施設(基地)等から、輸送用のタンカへ石油等を積み込み、または、地上のタンク等へ積みおろす際には、タンカに浮遊式の可撓管を接続し、石油等の輸送が行われている。石油等の常温の流体を輸送するための可撓管としては、通常樹脂製のものが使用される。このような流体輸送用の樹脂製の可撓管としては、樹脂製の内管の外周部に補強層、断熱層および防水層等を有する可撓性流体輸送管がある(特許文献1)。
【0003】
一方、地上または近海のガス田等から算出した天然ガス等は、基地で液化され貯蔵される。液化天然ガス(以下「LNG」)を輸送用のタンカに積み込む際には、沿岸基地に設けられた多関節型のローディングアーム等が用いられる。LNG受け入れ基地としては、例えばローディングアーム方式を採用した特許文献1記載のLNG受け入れ基地およびLNG出荷基地システムがある(特許文献2)。
【0004】
また、LNGタンクに接続された機器からのLNGの漏洩を、導液管および集液ますに沿って敷設された光ファイバによって監視するLNG漏洩監視装置がある(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−180375号公報
【特許文献2】特開平5−65718号公報
【特許文献3】特開平10−206240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の石油の輸送方法のように、特許文献1のような樹脂製の浮遊式の可撓管を用いて、流体をタンカで輸送する方式では、LNG等の極低温流体への対応が困難であるという問題がある。これは、LNGは約−160℃と極低温であるため、従来の樹脂製の浮遊式の可撓管は、このような極低温ではもろくなり、十分な可撓性が得られず、脆化によりLNGを圧送する圧力により可撓管が破壊するためである。したがって、極低温でも使用できる耐久性と断熱性を併せ持つ可撓管が要求されるが、従来、LNG等の極低温流体を海上での輸送に使用可能な、浮遊式の可撓管は存在しないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2のようなローディングアーム方式は、地上基地からタンカへの積み込みは可能であるが、外海のガス田に設置されたLNGを生産貯蔵するような浮体施設から、タンカへLNGを積み込む際には、波、風等によって相互に大きく揺れる施設とタンカ間の動きにローディングアームが追従することができず、また、設備の大型化を招くという問題がある。
【0008】
また、特許文献3のような漏洩監視装置では、LNGタンクに接続された機器からの漏洩を、光ファイバ敷設位置の温度変化によりLNGの漏洩を検知することが可能であるが、LNGの輸送用管の連結部(接続部)近傍は、断熱が十分行なうことができず、このため通常時から低温であるため、漏洩による温度変化を検出することができないという問題がある。
【0009】
また、光ファイバ温度センサを使用する場合、ある程度の測定距離(皮下路パルスの入射位置からの距離)がないと、測定感度が落ちるため、流体輸送用管の漏洩を光ファイバの設置により検知しようとすると、流体輸送用管の端部近傍である連結部の漏洩の検出感度が低くなるという問題がある。
【0010】
また、LNG配管内の圧力低下をもって、LNGの漏洩を検知する方法も記載されているが、この方法では、LNG配管内の圧力が低下するほどの大規模な漏洩は検知できるが、ピンホールからの少量の漏洩については検出ができないという問題がある。
【0011】
特に、前述の通り、LNGの海上での輸送用管として可撓管を使用した場合には、連結部近傍は無理な力がかかりやすく、漏洩に関する重要監視箇所となるが、LNG等輸送用配管の接続部の漏洩を確実に検知する方法はないという問題がある。また、海上での輸送用管として使用する場合には、特許文献3に記載のような地上での固定配管の場合と比較して、漏洩位置の特定が困難であり、離れた場所から、漏洩の有無と位置を迅速かつ確実に特定する必要があるが、このような方法はないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、LNG等の極低温流体の輸送を可能とし、また、内部での流体の漏洩および位置を早急に、かつ確実に検知することが可能な、流体輸送用管および流体漏洩検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、管体と、前記管体の外周部に設けられた断熱層と、前記断熱層に連続的に巻き付けられた光ファイバと、前記管体の端部に設けられた連結部と、前記連結部の近傍に設けられ、前記管体の流体の漏洩情報を前記連結部外部へ伝達可能な漏洩情報伝達手段と、を具備することを特徴とする流体輸送用管である。
【0014】
ここで、漏洩情報とは、輸送管中を流れる流体の漏洩に関する情報であり、具体的には、ガス圧力やガス濃度等の測定データである。前記漏洩情報伝達手段は、前記連結部近傍のガス圧力またはガス濃度を、前記連結部近傍に設けられた端子により、前記連結部外部へ伝達してもよく、この場合、前記漏洩情報伝達手段は、前記断熱層と連通する中空管により、前記連結部近傍のガス圧力またはガス濃度を検出することが望ましい。また、前記管体は、波付き金属管であり、可撓性を有してもよい。
【0015】
第1の発明によれば、断熱層により、管体内の流体と輸送用管外部とを断熱するため、流体が外温の影響を受けることがない。また、断熱層に光ファイバが連続的に巻きつけられるため、管体から流体が漏洩した場合には、光ファイバ温度センサが断熱層内に浸透する流体の温度を検知することができ、流体の漏洩部の存否及び漏洩箇所を検知することができる。
【0016】
また、連結部近傍に設けられた漏洩情報伝達手段は、断熱層におけるガス圧力またはガス濃度等を検出可能であるため、光ファイバでは検出が困難な連結部近傍の漏洩情報を検知することができる。特に、断熱層に中空管が設けられ、中空管が連結部外部に端子を介して伝達可能であれば、連結部近傍における流体の漏洩を、断熱層におけるガス圧力の変化または断熱層におけるガス濃度変化から漏洩を検知することができ、このため、連結部近傍におけるわずかな漏洩であっても確実に流体の漏洩情報を検知することができる。
【0017】
また、管体が波付き金属管である場合には、流体輸送用管は海上での輸送にも使用することができ、この場合には、特に連結部近傍の漏洩が問題となるが、離れた位置からも確実に漏洩の存否と位置を検知することができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明にかかる流体輸送用管を用い、前記光ファイバは温度計測器と接続され、光ファイバ温度センサとして機能し、前記光ファイバ温度センサにより計測された温度分布から、前記管体からの流体の漏洩を検出するとともに、前記漏洩情報伝達手段による漏洩情報から、前記連結部近傍での前記管体からの流体の漏洩を検出することが可能な流体漏洩検知システムである。
【0019】
前記漏洩情報伝達手段に接続された光式圧力センサと、前記光式圧力センサによる情報を圧力情報に変換する光式圧力センサ変換機と、を更に具備し、流体輸送用管には、前記光ファイバが複数本設けられ、前記複数本の光ファイバの一部は、前記温度計測器と接続され、光ファイバ温度センサとして機能するとともに、前記複数本の光ファイバの他の一部は、前記光式圧力センサ変換機と接続され、前記光式圧力センサの情報伝達媒体として機能すてもよい。
【0020】
前記光ファイバと接続された光スイッチを更に具備し、前記光ファイバは、前記光スイッチにより前記温度計測器および前記光式圧力センサ変換機のいずれかに接続切り替えが可能であり、前記温度計測器と接続された場合には、光ファイバ温度センサとして機能し、前記光式圧力センサ変換機と接続された場合には、前記光式圧力センサの情報伝達媒体として機能することが可能であってもよい。
【0021】
第2の発明によれば、流体輸送用管の漏洩を検知するため、光ファイバ温度センサを用いるとともに、流体輸送用管の連結部近傍の漏洩を、漏洩情報伝達手段により検知することができる流体漏洩検知システムを得ることができる。
【0022】
ここで、漏洩情報とは、管体からの流体の漏洩に伴う、流体輸送用管内部のガス圧力やガス濃度等の状況の変化を指し、漏洩情報伝達手段とは、漏洩情報を流体輸送用管外部に導出・伝達して、流体輸送用管外部で漏洩の存否等を検出可能にするための手段を指す。
【0023】
また、漏洩情報としての断熱層内のガス圧力変化を、流体輸送用管外部に設けられた光式圧力センサへ導出して、圧力変化から漏洩の存否を検出するとともに、光式圧力センサからの情報を光ファイバにより情報伝達を行うことで、流体輸送用管全長および連結部近傍の漏洩を光ファイバによって得ることができ、また、光スイッチを使用して、光式圧力センサと光ファイバ温度センサとを切り替えれば、1本の光ファイバでも複数の情報を得ることができ、更に、複数の光ファイバを用いれば、光ファイバの断線時においても、流体輸送用管の漏洩を確実に感知することが可能な流体漏洩検知システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、LNG等の極低温流体の輸送を可能とし、また、内部での流体の漏洩および位置を早急に、かつ確実に検知することが可能な、流体輸送用管および流体漏洩検知システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態にかかる可撓管1について説明する。図1は、可撓管1aの使用状況を示す図である。タンカ7が運搬したLNG等の流体は、タンク5へ可撓管1aにより輸送される。可撓管1aは、ドラム等に巻きつけられて保管され、使用時にはドラム等により海上へ送り出される。海上では、小型船等で可撓管1aの端部(連結部3b)がタンカ7へ誘導される。
【0026】
タンカ7は連結部3bで可撓管1aと連結される。すなわち、タンカ7は可撓管1aを介して、タンク5と接続される。可撓管1aの両端には連結部3a、3bが設けられており、夫々は図示を省略したタンカ7およびタンク5の設けられた連結部と連結される。可撓管1aは海面9に浮遊しており、波や風等により揺動するが、可撓管1aは可撓性を有するため、海面9の変動等に追従することができる。したがって、連結部3a、3bは、可撓管1aの揺動等により常に力を受けるため、劣化しやすく、漏洩の危険度が高い部位である。
【0027】
次に、可撓管1aについて説明する。図2は、可撓管1aの構成を示す斜視図であり、図3は、可撓管1aの部分断面図である。可撓管1aは、主に波付き管11、断熱層13a、13b、防水層15、および光ファイバ17等から構成される。
【0028】
通常、流体の輸送効率を考慮して、海上での流体輸送に使用されるタンカ7としては、10万から15万トンクラスのタンカ7が利用される。また、海上は天候の変動も激しいため、タンカ等からの流体の輸送作業は、通常24時間以内に終了することが望まれる。したがって、輸送効率を考慮すると、流体の速度を5m/secとすると、可撓管1aの径は400mm〜500mm程度のものが数本同時に用いられるものである。但し、可撓管1aの径は、流体の輸送効率を高めるためには大きい方が望ましいが、可撓管1aの許容曲げ半径が大きくなり、可撓管1aの敷設装置が大型化するため、可撓管1aの径は使用条件等に応じて適宜決定される。
【0029】
可撓管1aの最内層には管体である波付き管11が設けられる。可撓管1aの使用時には、流体(以下、LNGが流れるものとして説明する)は波付き管11内を流される。波付き管11は、可撓性を有する管体であり、ある程度の強度を有し、低温耐性が優れる。すなわち、内部にLNG等の極低温流体が流れても可撓性を維持でき、割れやクラック等の発生しにくい材質が好ましい。
【0030】
波付き管11は、例えば金属製の波付き管であり、望ましくはステンレス製のベロー管である。なお、波付き管11に代えて、同様の可撓性を有し、低温耐性に優れる管体であれば、他の態様の管体を使用することも可能である。
【0031】
波付き管11の外周には断熱層13a、13bが設けられる。断熱層13a、13bは、波付き管11内を流れるLNGと可撓管1aの外部とを断熱するとともに、波付き管11の可撓性に追従して変形可能である。すなわち、LNGの熱は、可撓管1aの外面へはほとんど伝達されない。このため、後述する最外層である防水層15が、LNGの温度の影響を受けることがない。同様に可撓管1aの外温はLNGへは伝達されず、LNGが可撓管1a内で気化することが防止される。
【0032】
断熱層13a、13bは、断熱性を有し、通気性が優れる材質が望ましい。断熱層13a、13bとしては、例えば不織布が使用でき、ポリエステル繊維不織布であることが望ましい。また、断熱層13a、13bの厚さは、5mm以上であることが望ましい。
【0033】
また、断熱層13bとして、繊維系不織布にエアロジェルを含有させたものが使用できる。エアロジェルとしては、例えばシリカ系エアロジェルが使用でき、エアロジェルを不織布へ含有(含浸)させる。エアロジェルは極めて高い断熱性を有し、また、高い耐荷重特性を有する。さらに、エアロジェルが含有された不織布は、きわめて液浸透性が悪い。このため、LNGが断熱層13bに達しても、断熱層13bに対しては、LNGはほとんど浸透しない。また、エアロジェルを含有させた不織布はつぶれにくいため、後述する防水層15が緩むことがない。
【0034】
ここで、エアロジェルとは、水分をガスに置換してゲル状に生成した物質のことであり、体積のおよそ9割以上の空気を含んでおり、極めて軽く、また高い断熱性を有する物質をいう。エアロジェルは、例えばシリカ、アルミナ等を主成分として生成され、触媒や吸着剤として使用される場合が多い。
【0035】
なお、波付き管11と断熱層13aとの間には必要に応じて図示を省略した座床層を設けてもよい。座床層は、波付き管11の外周における凹凸(波付き形状による凹凸)を略平らにならすための層である。座床層としては、例えば不織布等が使用できる。内管の外周面に波付き等による大きな凹凸がない場合や、凹凸を有している場合であっても、外周部に設けられる断熱層13a、13b等に悪影響を与えない場合には、座床層は不要である。
【0036】
また、断熱層13aの内周には、必要に応じて図示を省略した補強層を設けてもよい。補強層は、主に波付き管11が可撓管1aの軸方向へ変形する(伸びる)ことを抑える。例えば、波付き管11内へLNGを流す際には、波付き管11内部には1MPa程度の内圧が生じる。波付き管11は、波付き管11の内周面への圧力には耐えうるが、可撓性を得るために設けられる波付き形状によって、波付き管11の軸方向へは内圧により容易に変形する(伸びる)。このため、波付き管11の軸方向の変形を抑制するために補強層が設けられる。
【0037】
補強層としては、繊維テープや金属テープ等の補強テープが使用できる。繊維テープとしては、たとえば、ポリエステル繊維織物テープ、アラミド繊維織物テープ、アリレート繊維織物テープ、超高分子ポリエチレン繊維織物テープ、炭素繊維織物テープなどが使用できる。また、金属テープとしては、例えばステンレステープ等が使用できる。
【0038】
更に、補強層の外周部には、必要に応じて、図示を省略した補強テープの押さえ巻き層を設けても良い。押さえ巻き層としては、例えば不織布テープが使用でき、不織布テープを交互巻きされた補強テープの外面や各巻き層の外面に巻きつけても良い。
【0039】
断熱層13bの外周には、防水層15が設けられる。防水層15は、外部からの水の浸入を防ぐとともに、波付き管11の可撓性に追従して変形可能である。すなわち、可撓管1aが海上に浮かべられて、LNGの輸送を行う際にも、海水等が可撓管1a内へ浸入することはない。なお、防水層15は、例えば樹脂製であり、ポリエチレン製が望ましい。前述したように、断熱層13a、13bにより、極低温であるLNGの温度の影響は防水層15へはほとんど及ばない。このため、防水層15が低温になることで脆化して、波付き管11の可撓性に追従できなくなることはない。
【0040】
可撓管1aは更に、光ファイバ17を有する。光ファイバ17は、断熱層13a、13bの間に設けられ、連続的に防水層9の外周へ螺旋状に巻きつけられる。光ファイバ17は、防水層13aの外周部に等ピッチで巻きつけられることが望ましい。光ファイバ17の巻き付けピッチは、例えば200mm程度が好ましく、更に好ましくは100mm程度である。なお、光ファイバ17は後述する金属管19に挿入されて、可撓管1aに巻き付けられる。
【0041】
図4は光ファイバ温度センサ21の構成を示す断面図である。光ファイバ温度センサ21は金属管19と光ファイバ17等から構成される。光ファイバ17は、金属管19内に挿入される。金属管19は、例えば直径1〜2mm程度のステンレス管が使用できる。なお、光ファイバ17は、可撓管1aが変形した際に、可撓管1aの変形に追従可能なように、余長率(金属管19の長さに対する光ファイバ17の長さの増分率)は1%以上であることが望ましい。
【0042】
光ファイバ温度センサ21は、ラマン散乱光の強度が温度に依存する性質と、光パルスが光ファイバ17を往復する時間でラマン散乱光の発生場所が分かるという性質によって、温度分布が測定される。光ファイバ17に光パルスを一定周期で入射させると、後方散乱光としてラマン散乱光が発生する。ラマン散乱光のうち、アンチストークス光とストークス光の強度比は、光ファイバ17の温度に依存する。
【0043】
すなわち、散乱光の強度(アンチストークス光Iaとストークス光Isの強度比)は、温度が上昇すると大きくなり、温度が低下すると小さくなる。従って、入射した光パルスに対するアンチストークス光とストークス光との強度比を時間軸上で観察することにより、測定位置ごとの温度を知ることができる。すなわち、光ファイバ温度センサ21は可撓管1aの温度分布を計測することができる。
【0044】
図5は、光ファイバ温度センサ21の一部に温度低下部23が生じた際のラマン散乱光(アンチストークス光Iaとストークス光Isの強度比)計測値の変化を示す模式図である。光ファイバ温度センサ21は、断熱層13aの外部にあるため、通常時には波付き管11内を流れるLNGの温度の影響は少ない。したがって、光ファイバ温度センサ21は、可撓管1aの全長(光ファイバ温度センサ21の全長)にわたり、ほぼ常温の一定の温度分布を示す。この場合には、光パルスLに対して、計測されるアンチストークス光Iaとストークス光Isの強度比は光ファイバ温度センサ21の全長にわたり略一定となる。
【0045】
一方、波付き管11が破損して、波付き管11の一部からLNG等が流出すると、LNGは断熱層13a内に浸透し、該当する部位の光ファイバ温度センサ21の温度が急激に低下する。すなわち、光ファイバ温度センサ21の一部に温度低下部23が生じる。
【0046】
光ファイバ温度センサ21の一部に急激な温度低下部23が生じた場合には、温度低下部23におけるラマン散乱光の強度(アンチストークス光Iaとストークス光Isの強度比)が低下する。したがって、光ファイバ温度センサ21は、温度低下部23のおおよその位置と、その位置での温度低下を検出することができる。したがって、可撓管1a内部の一部で波付き管11からLNGが漏洩した場合には、漏洩部近傍の光ファイバ温度センサ21が、直ちに急激な温度低下を検知し、可撓管1aの内部におけるLNGの漏洩を知ることができる。
【0047】
次に、可撓管1aの連結部3について説明する。図6は、連結部3の断面図である。連結部3は、可撓管1aを他の部位、例えばタンク5やタンカ7等に設けられた連結部(接続部)と連結される部位である。
【0048】
連結部3は可撓管1aの端部に設けられ、可撓管1aの端部全周にわたり外周方向に突出しフランジ状の形状を有している。連結部3は一方の端部が波付き管11の端部と接合されている。また、連結部3の他方の端部は防水層15の外周面と接合される。連結部3内部には光ファイバ17が挿入された金属管19と中空管27が設けられる。中空管27は、端部が断熱層13a、13bの間に挿入されている。
【0049】
連結部3には、端子25a、25bが設けられる。端子25a、25bは連結部3内部と外部とを連通する。可撓管1aに巻き付けられた光ファイバ17の端部は、端子25aに接続され連結部3の外部と接続が可能である。また中空管27は、断熱層13a、13bから端子25bまで設けられる。なお、端子25a、25bは単なる孔でも良く、または、光コネクタ、チューブ継手などを具備しても良く、接続される部材に応じて変更することができる。
【0050】
波付き管11端部と連結部3との接合は、例えば溶接でよい。また、連結部3と防水層15外周面との接合は、図示を省略したパッキンおよびリング状の押さえ具等により固定される。また、連結部3の内部には、エポキシ樹脂29が充填される。すなわち、連結部3は、防水層15表面と波付き管11端部との間に気密を保った状態で接合され、可撓管1a外部から液体や気体が断熱層13a、13bへ流入することがない。したがって、断熱層13a、13bは外周を防水層15、内周を波付き管11、端部を連結部3(エポキシ樹脂29)で覆われている。
【0051】
前述の通り、可撓管1aの全長にわたり、光ファイバ17(光ファイバ温度センサ21)が連続的に巻きつけられているため、波付き管11の一部から内部のLNGが漏洩した場合には、LNGが断熱層13aに浸透し、即座にLNGの漏洩を検出することができる。すなわち、光ファイバ温度センサ21により検出された漏洩情報(温度変化情報)は、端子25aを介して、外部に設けられた温度計測器へ伝達される。
【0052】
一方、連結部3近傍で同様の漏洩が生じた場合には、光ファイバ温度センサ21では検出が困難である。連結部3近傍は断熱材13a、13bを設けられず、常に低温であるため、漏洩した際の温度変化が少ないためである。また、連結部3の近傍に温度計測器等を設けた場合、連結部3近傍は、光の入射位置と測定位置が近すぎるため、感度の良い測定が困難である。
【0053】
しかし、連結部3近傍でLNGが漏洩すると、前述の通り、LNGは断熱層13a、13bの部位にのみしか行き場がないため、断熱層13a、13b内にLNGが浸透する。この際、波付き管11内のLNGの内圧や、LNGが気化する際の圧力により、断熱層13a、13b内部のガス圧力が増加する。断熱層13a、13b内の圧力が増加すると、中空管27を介して、端子25bまでガスの圧力変化情報が伝達される。端子25bの外部から中空管やチューブ等を接続して、圧力計等に接続すれば、連結部3内の圧力変化情報を知ることができる。すなわち、LNG漏洩に伴うガス圧力変化という漏洩情報が、中空管27により連結部3外部へ伝達され、漏洩を検知することができる。なお、連結部内部がエポキシ樹脂で充填された形態で、連結部近傍にLNGが漏洩したときのメカニズムを説明したが、連結部内部はエポキシ樹脂で充填されていなくてもよい。その場合には、中空管は無くてもよく漏洩情報が端子に直接伝達される。または、波付き管端部と連結部との溶接接合部の近傍(連結部内部)に空隙を設けて、その空隙内の漏洩情報が中空管を介して端子に伝達される形態でもよい。この場合、溶接接合部の効率よい漏洩検知が可能となる。
【0054】
次に、可撓管1を使用した、漏洩検知システム30について説明する。図7は、漏洩検知システム30の構成を示す図である。漏洩検知システム30は、主に、可撓管1a、圧力計33a、33b、温度計測器31等から構成される。可撓管1aの一方の端部には連結部3bが設けられ、連結部3bには端子25cが設けられる。また、可撓管1aの他方の端部には連結部3aが設けられ、端子25a、25bが設けられる。端子25aの内部には、可撓管1aの内部に連続的に巻き付けられた光ファイバ温度センサ21が接続されている。
【0055】
また、端子25b、25cには、それぞれ連結部3a、3b内部に設けられ、断熱層13a、13bに端部が挿入された中空管27がそれぞれ接続されている。端子25aは例えば光コネクタであり、内部に接続された光ファイバ17と連結部3外部に設けられた光ファイバ18とが光学的に接続される。また、端子25b、25cはガスカプラであり、内部に接続された中空管27と連結部3の外部に設けられた中空管28a、28bとがそれぞれ連通する。
【0056】
光ファイバ18は、温度計測器31に接続される。温度計測器31は光ファイバ18を介して光ファイバ17への光パルスの入射を行うことができる。また、温度計測器31は、光ファイバ18を介して光ファイバ17から伝達された反射光強度情報を温度情報に変換し、可撓管1aの全長にわたり、温度変化部が生じていないかどうかを監視可能である。すなわち、光ファイバ17は、光ファイバ温度センサ21として機能し、可撓管1aの全長にわたるLNG漏洩の検出が可能である。
【0057】
一方、中空管28a、28bはそれぞれ圧力計33a、33bに接続される。圧力計33a、33bは、中空管28a、28bから伝達されたガス圧力から、可撓管1aの特に連結部3近傍に圧力変化が生じていないかどうかを監視可能である。すなわち、連結部3近傍の断熱層13a、13b内のガス圧力変化から、連結部3近傍の漏洩を検出可能である。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態にかかる漏洩検知システム30によれば、可撓管1aの漏洩を検知するため、光ファイバ温度センサ21を用いるとともに、連結部3近傍の漏洩を、中空管27および圧力計33a、33bにより検知することができるため、連結部3近傍の漏洩も検知可能な流体漏洩検知システムを得ることができる。
【0059】
特に、断熱層13a、13bは周囲を防水層15で覆われており、連結部3に設けられた中空管27は、断熱層13a、13bにおけるガス圧力の変化を端子25b、25cに伝達可能である。このため、ピンホールなどの微量の漏洩であっても、確実に漏洩を検出することができる。また、端子25a、25b、25cが連結部3外部と接続可能であるため、内部での漏洩情報を可撓管1a外部に伝達可能であり、連結部3近傍におけるLNGの漏洩を容易に検知することができる。
【0060】
なお、圧力計33a、33bに代えて、ガス濃度計を取り付けることもできる。この場合には、断熱層13a、13b内に充満したLNGが中空管27、28a等を介してガス濃度計に送られ、ガス濃度変化によって、連結部3近傍のLNGの漏洩を知ることができる。
【0061】
次に、第2の実施の形態にかかる可撓管1bおよびこれを用いた漏洩検知システム40について説明する。以下の実施の形態において、図1〜図7に示す可撓管1aおよび漏洩検知システム30と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図7と同一番号を付し、重複した説明を避ける。第2の実施の形態にかかる可撓管1bは可撓管1aとほぼ同様の構成であるが、次の点で異なる。すなわち、可撓管1bは可撓管1aに対して、さらに光式圧力センサが設けられ、光ファイバ17の一方の先端が光式圧力センサと接続されている点で異なる。
【0062】
図8は、可撓管1bの断面図で、図8(a)は連結部3a近傍、図8(b)は連結部3b近傍を示す図である。可撓管1bでは、中空管27aが端子25bを介して連結部3a外部まで延伸され、先端に光式圧力センサ41aが接続される。光式圧力センサ41aは、さらに光ファイバ43aが接続される。光ファイバ17も同様に端子25aを介して外部まで延伸される。
【0063】
一方、連結部3bにも同様に中空管27bが設けられ、端子25cを介して連結部3b外部まで延伸され、先端に光式圧力センサ41bが接続される。光ファイバ17は、端子25dを介して連結部3b外部に導出され、光ファイバ17の先端が光式圧力センサ41bに接続される。
【0064】
図9は、光式圧力センサ41を示す図である。光式圧力センサ41は、主に壁体45a、45b、支持体55a、55b、ダイアフラム49、光ファイバ変位センサ53等から構成される。
【0065】
一対の壁体45a、45bは間に空隙47を設けて互いに固定される。壁体45aの一部にはガス導入部51が設けられる。ガス導入部51はガスが外部から導入される部位である。壁体45aの内面にはダイアフラム49が設けられる。ダイアフラム49はガス導入部51からのガス圧力に応じて、空隙47内で上下方向に移動可能である。壁体45bの内面にはスペーサ57が設けられる。
【0066】
空隙47には光ファイバ変位センサ53が設けられる。光ファイバ変位センサ53の上方は、支持体55aを介してダイアフラムと接合される。一方、光ファイバ変位センサ53の下方は、支持体55bを介してスペーサ57と接合される。
【0067】
光ファイバ変位センサ53は、シングルモードの光ファイバがループ状に形成されたもので、支持体55a、55bの相対変位により、楕円形状に変化する。楕円形に変形した光ファイバ変位センサ53は、この変形によって支持体55a、55b設置位置と90°ずれた位置での曲げ半径が変化する。光ファイバ変位センサ53に対する入射光は、光ファイバ変位センサ53の曲げ半径の変化に伴い光の伝達損失が変化する。伝達損失を計測することで、光ファイバ変位センサ53の変位量を知ることができる。
【0068】
図9に示すように、ガス導入部51から矢印A方向にガスの圧力が加わると、ダイアフラム49、支持体55aを介して、光ファイバ変位センサ53が矢印B方向に変形し、楕円形状となる(図中点線)。この状態における伝達損失を計測し、光ファイバ変位センサ53の変位量をガス圧力へ変換することで、ガス圧力を知ることができる。
【0069】
なお、このような光式圧力センサとしては、例えば特開平10−82621に記載の圧力センサ等が使用できる。また、この他、光ファイバからの入射光を石英小型ロッドレンズにより収束させて、反射ミラーで反射させ、反射光の強度を測定することで、反射ミラーに対する石英小型ロッドレンズの変位を測定して、圧力に変換するセンサも使用することができる。
【0070】
また、シングルモードの通信用光ファイバに光を照射し、ブラッグ格子によって周期的に屈折率を変化させた光ファイバを用い、ブラッグ格子におけるひずみと光の反射波長が比例する現象を利用し、反射光の波長を計測することで力により生じる変位を測定する、光ファイバグレーティングセンサ(FBGセンサ)なども使用できる。すなわち、光を利用した圧力センサであればいずれの方法のセンサも利用することができる。
【0071】
図10は、可撓管1bを使用した漏洩検知システム40を示す図である。漏洩検知システム40は、主に、可撓管1b、圧力センサ変換機42a、42b、光式圧力センサ41a、41b、光スイッチ59、温度計測器31等から構成される。
【0072】
可撓管1bの一方の端部に設けられた連結部3aには、端子25bを介して光式圧力センサ41aが接続される。光式圧力センサ41aは光ファイバ43aを介して圧力センサ変換機42aと接続される。圧力センサ変換機42aは、光ファイバ43aを介して光式圧力センサ41aに入射光を入射させることができる。また、圧力センサ変換機42aは、光ファイバ43aを介して、光式圧力センサ41aで計測された変位情報を受け取り、連結部3a近傍のガスの圧力に変換することができる。
【0073】
すなわち、可撓管1b内部の断熱層13a、13bの圧力は、中空管27aを通じて、光式圧力センサ41aへ伝達される。光式圧力センサ41aで計測された光ファイバ変位センサ53による変位量は、圧力センサ変換機42aで圧力情報に変換され、連結部3a近傍の断熱層13a、13bのガス圧力として計測することができる。
【0074】
光ファイバ17は、一方の端部が光スイッチ59に接続される。光ファイバ17は、端子25aから可撓管1b内に導入され、可撓管1b内に連続的に巻きつけられ、他方の端部が連結部3bに設けられた端子25dから外部へ導出されて光式圧力センサ41bと接続される。光式圧力センサ41bは中空管27bを介して連結部3bと接続される。
【0075】
光スイッチ59は、光ファイバ17からの情報を、光ファイバ58b、58cそれぞれを介して、圧力センサ変換機42bと温度計測器31のいずれかに切り替えて伝達することができる。したがって、光スイッチ59を切り替えて、光ファイバ17の情報を、圧力センサ変換機42bへ伝達するように選択すれば、光式圧力センサ41bからの情報を得ることができる。
【0076】
すなわち、可撓管1b内部の連結部3b近傍の断熱層13a、13bの圧力は、中空管27bを通じて、光式圧力センサ41bへ伝達され、光式圧力センサ41bで計測された光ファイバ変位センサ53による変位量は、光ファイバ17を経由して圧力センサ変換機42bで圧力情報に変換される。このため、連結部3b近傍の断熱層13a、13bのガス圧力を計測することができる。
【0077】
一方、光スイッチ59を切り替えて、光ファイバ17の情報を、温度計測器31へ伝達するように選択すると、光ファイバ17からの情報は光ファイバ温度センサ21として利用でき、可撓管1b全長にわたるLNGの漏洩情報を得ることができる。
【0078】
第2の実施の形態にかかる漏洩検知システム40によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、圧力計として光式圧力センサ41a、41bを用いるため、圧力情報を光ファイバで伝達することが可能である。また、光ファイバ17は一方の端部が光式圧力センサ41bと接続され、他方の端部が圧力スイッチ59に接続され、更に、圧力スイッチ59によって温度計測器31と圧力センサ変換機42bとの接続を切り替えることができるため、光ファイバ17は、光圧力センサ41bの情報伝達媒体としての機能と、光ファイバ温度センサ21としての機能の両方を有し、任意に切り替えることができる。このため、連結部3a側から可撓管1bの反対側の端部である連結部3b近傍の漏洩情報を得ることができる。
【0079】
次に、第3の実施の形態にかかる可撓管1cおよびこれを用いた漏洩検知システム60について説明する。第3の実施の形態にかかる可撓管1cは可撓管1bとほぼ同様の構成であるが、次の点で異なる。すなわち、可撓管1cは可撓管1bに対してさらに光ファイバ17が複数設けられる点で異なる。
【0080】
図11は、可撓管1cの断面図で、図11(a)は連結部3a近傍、図11(b)は連結部3b近傍を示す図である。可撓管1cでは、中空管27aが端子25bを介して連結部3a外部まで延伸され、先端に光式圧力センサ41aが接続される。光式圧力センサ41aは、さらに光ファイバ43aが接続される。
【0081】
可撓管1cには、複数の光ファイバ17a、17bが金属管19に挿入されて巻きつけられる。光ファイバ17a、17bは、それぞれ連結部3aに設けられた端子25a、25eを介して外部まで延伸される。
【0082】
一方、連結部3bにも同様に中空管27bが設けられ、端子25cを介して連結部3b外部まで延伸され、先端に光式圧力センサ41bが接続される。光式圧力センサ41bには、光ファイバ17aの先端が接続される。
【0083】
図12は、可撓管1cを使用した漏洩検知システム60を示す図である。漏洩検知システム60は主に、可撓管1c、圧力センサ変換機42a、42b、光式圧力センサ41a、41b、光スイッチ59、温度計測器31等から構成される。
【0084】
可撓管1cの一方の端部に設けられた連結部3aには、端子25bを介して光式圧力センサ41aが接続される。光式圧力センサ41aは光ファイバ58aを介して圧力計変換機42aと接続される。したがって、可撓管1cの連結部3a近傍の断熱層13a、13bの圧力は、中空管27aを通じて、光式圧力センサ41aへ伝達される。光式圧力センサ41aで計測された光ファイバ変位センサ53による変位量は、圧力センサ変換機42aで圧力情報に変換され、連結部3a近傍の断熱層13a、13bのガス圧力を計測することができる。
【0085】
光ファイバ17aは、一方の端部を光スイッチ59に接続される。光ファイバ17aは、端子25aから可撓管1c内に導入され、可撓管1c内に連続的に巻きつけられ、他方の端部が連結部3bに設けられた端子25dから外部へ導出されて光式圧力センサ41bと接続される。光式圧力センサ41bは中空管27bを介して連結部3bと接続される。
【0086】
光ファイバ17bは、一方の端部が温度計測器31に接続されており、連結部3aの端子25eから可撓管1c内に導入され、可撓管1c内の全長にわたり連続的に巻きつけられる。光ファイバ17bは光ファイバ温度センサ21として機能し、可撓管1cの全長にわたる温度分布を計測可能である。
【0087】
光スイッチ59は、光ファイバ17aからの情報を、圧力センサ変換機42bと温度計測器31のいずれかに切り替えて伝達可能である。したがって、光スイッチ59を切り替えて、光ファイバ17aの情報を、圧力センサ変換機42bへ伝達するように選択すれば、光式圧力センサ41bからの情報を得ることができる。すなわち、可撓管1c内部の連結部3b近傍の断熱層13a、13bの圧力は、中空管27bを通じて、光式圧力センサ41bへ伝達され、光式圧力センサ41bで計測された光ファイバ変位センサ53による変位量は、光ファイバ17aを経由して圧力センサ変換機42bで圧力情報に変換される。このため、連結部3b近傍の断熱層13a、13bのガス圧力を計測することができる。
【0088】
一方、光スイッチ59を切り替えて、光ファイバ17aの情報を、温度計測器31へ伝達するように選択すると、光ファイバ17aは光ファイバ温度センサ21として利用でき、可撓管1c全長にわたるLNGの漏洩情報を得ることができる。
【0089】
第3の実施の形態にかかる漏洩検知システム60によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、複数の光ファイバ17a、17bが可撓管1cに設けられ、一方の光ファイバ17bは常に可撓管1cの漏洩を検知するとともに、光ファイバ17aは光スイッチ59によって、温度計測器31および圧力センサ変換機42bとの接続を切り替えることができる。このため、光ファイバ17a、17bのいずれかが断線した場合であっても、可撓管1c全長にわたる漏洩検知が可能である。
【0090】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0091】
例えば、漏洩検知システム60において、2本の光ファイバ17a、17bを設けたが、光ファイバの本数はこれに限られず、更に多くの光ファイバ17を設け、光スイッチ59を利用することで、光ファイバの断線等による漏洩検知不能状態を回避することができ、より信頼性の高い漏洩検知システムを得ることができる。
【0092】
また、本実施の形態における可撓管1a等はLNG輸送用管に限られない。この他種々の流体の輸送用に使用することができる。特に、常温以外の流体に対しては、光ファイバ温度センサ21が利用でき、更に中空管27および圧力計等によって連結部近傍の漏洩検知機能を発揮することもできる。
【0093】
また、本実施の形態においては、海上において使用される可撓管を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、可撓管に変えて、地上におけるLNG等の流体輸送用の固定配管などにも本漏洩検知システムを使用することができる。この場合でも、流体輸送用配管の全長にわたる漏洩を検知することができるとともに、連結部近傍の漏洩をも検知することができ、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】可撓管1aの使用状態を示す図。
【図2】可撓管1aの構成を示す斜視図。
【図3】可撓管1aの構成を示す部分断面図。
【図4】光ファイバ温度センサ21を示す断面図。
【図5】光ファイバ温度センサ21により温度低下部23を検知した状態を示す模式図。
【図6】可撓管1aの連結部3a近傍の断面図。
【図7】漏洩検知システム30の構成を示す図。
【図8】(a)は可撓管1bの連結部3a近傍の断面図、(b)は可撓管1bの連結部3b近傍の断面図。
【図9】光式圧力センサ41の構成を示す図。
【図10】漏洩検知システム40の構成を示す図。
【図11】(a)は可撓管1cの連結部3a近傍の断面図、(b)は可撓管1cの連結部3b近傍の断面図。
【図12】漏洩検知システム60の構成を示す図。
【符号の説明】
【0095】
1a、1b、1c………可撓管
3a、3b………連結部
5………タンク
7………タンカ
9………海面
11………波付き管
13a、13b………断熱層
15……防水層
17、18………光ファイバ
19………金属管
21………光ファイバ温度センサ
23………温度低下部
25a、25b………端子
27、28a、28b………中空管
29………エポキシ樹脂
30、40、60………漏洩検知システム
31………温度計測器
33a、33b………圧力計
41………光式圧力センサ
42a、42b………圧力センサ変換機
43………光ファイバ
45a、45b………壁体
47………空隙
49………ダイアフラム
51………ガス導入部
53………光ファイバ変位センサ
55a、55b………支持体
57………スペーサ
58a、58b、58c………光ファイバ
59………光スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体と、
前記管体の外周部に設けられた断熱層と、
前記断熱層に連続的に巻き付けられた光ファイバと、
前記管体の端部に設けられた連結部と、
前記連結部の近傍に設けられ、前記管体の流体の漏洩情報を前記連結部外部へ伝達可能な漏洩情報伝達手段と、
を具備することを特徴とする流体輸送用管。
【請求項2】
前記漏洩情報は、ガス圧力またはガス濃度であり、
前記漏洩情報伝達手段は、
前記連結部近傍のガス圧力またはガス濃度を、前記連結部近傍に設けられた端子により、前記連結部外部へ伝達することを特徴とする請求項1記載の流体輸送用管。
【請求項3】
前記漏洩情報伝達手段は、前記断熱層と連通する中空管により、前記連結部近傍のガス圧力またはガス濃度を検出することを特徴とする請求項2記載の流体輸送用管。
【請求項4】
前記管体は、波付き金属管であり、可撓性を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体輸送用管。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の流体輸送用管を用い、
前記光ファイバは温度計測器と接続され、光ファイバ温度センサとして機能し、前記光ファイバ温度センサにより計測された温度分布から、前記管体からの流体の漏洩を検出するとともに、
前記漏洩情報伝達手段による漏洩情報から、前記連結部近傍での前記管体からの流体の漏洩を検出することが可能な流体漏洩検知システム。
【請求項6】
前記漏洩情報伝達手段に接続された光式圧力センサと、
前記光式圧力センサによる情報を圧力情報に変換する光式圧力センサ変換機と、
を更に具備し、
流体輸送用管には、前記光ファイバが複数本設けられ、
前記複数本の光ファイバの一部は、前記温度計測器と接続され、光ファイバ温度センサとして機能するとともに、前記複数本の光ファイバの他の一部は、前記光式圧力センサ変換機と接続され、前記光式圧力センサの情報伝達媒体として機能することを特徴とする請求項5記載の流体漏洩検知システム。
【請求項7】
前記光ファイバと接続された光スイッチを更に具備し、
前記光ファイバは、
前記光スイッチにより前記温度計測器および前記光式圧力センサ変換機のいずれかに接続切り替えが可能であり、前記温度計測器と接続された場合には、光ファイバ温度センサとして機能し、前記光式圧力センサ変換機と接続された場合には、前記光式圧力センサの情報伝達媒体として機能することが可能であることを特徴とする請求項5記載の流体漏洩検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−243529(P2009−243529A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88719(P2008−88719)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【Fターム(参考)】