説明

流量制御弁の制御装置

【課題】流量制御弁の制御装置に関し、簡素な構成で、流量制御弁の中立位置を正確に学習する。
【解決手段】アクチュエータ12と、作動流体供給源11と、ストロークセンサ14と、弁体19を有するとともに作動流体供給源11に連絡する供給部17aと作動流体を排出する排出部18aとアクチュエータ12に連通する連通部16aとを備えた流量制御弁15と、ストロークセンサ14の検出値に応じて弁体19を制御する制御部20とを備え、制御部20は、ストロークセンサ14の検出値により弁体19が排出部18a側から移動して連通部16aを遮断する中立位置と判断されたときの弁体19の移動量と、弁体19が供給部17a側から移動して連通部16aを遮断する中立位置と判断されたときの弁体19の移動量とから、弁体19の中立位置としての移動量を学習する中立位置学習部22を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁の制御装置において、特に流量制御弁の中立位置を学習する流量制御弁の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エンジンのトルクを機械式自動変速機に伝達するクラッチ装置の係合をクラッチアクチュエータによって制御する車両が開発・実用化されている。このような車両においては、エンジンと機械式自動変速機との間にクラッチ装置を設けている。クラッチ装置は、空気圧又は油圧で作動するクラッチアクチュエータのピストンの移動によって断接されるようになっている。また、クラッチアクチュエータの作動は、電磁ソレノイドを備えた流量制御弁により、クラッチアクチュエータ内の作動流体を供給又は排出することで行われる。
【0003】
この流量制御弁には、クラッチアクチュエータに連通する給気通路と、エアタンク等の作動流体圧力源に連通する圧力源通路と、クラッチアクチュエータから作動流体を排出する排気通路とが接続され、それぞれの通路に開口する給気ポート,圧力源ポート,排気ポートの三個のポートが所定の間隔で形成されている。また、流量制御弁の中空部には弁体が遊嵌されており、この弁体が移動することによって、前述の給気ポート,圧力源ポート,排気ポートがそれぞれ連通・遮断されるように構成されている。
【0004】
具体的には、クラッチ装置の係合を切断する場合は、給気ポートと圧力源ポートとを連通し、かつ、排気ポートを遮断する給気位置に弁体を移動させ、作動流体をクラッチアクチュエータ内へと供給する。また、クラッチ機構を接続する場合は、給気ポートと排気ポートとを連通し、かつ、圧力源ポートを遮断する排気位置に弁体を移動させて、作動流体をクラッチアクチュエータ内から排出する。また、クラッチ装置の係合を断位置で保持する場合は、給気ポートを遮断する中立位置に弁体を移動させ、作動流体をクラッチアクチュエータ内に保持するようになっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、この種の流量制御弁を適用したクラッチの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3417823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の変速時には、迅速かつ変速ショックの少ないクラッチ装置の断接を実行することが好ましい。そのため、エンジンのトルクが変速機に伝達されない無効領域を速やかに通過させるべく、クラッチアクチュエータのピストンを接続方向に急速に移動させるとともに、トルクの伝達が開始されるいわゆる半クラッチ領域では、変速ショックを避けるべく徐々に接続量を増加させる必要がある。このような制御を迅速に実現するため、流量制御弁をコントロールするECUに、電磁ソレノイドのコイルへの通電量と作動流体の流量との関係を示す流量特性等を予め記憶させておき、この流量特性等に応じて流量制御弁を制御することが行われている。また、正確な流量制御弁の制御を実現すべく、この流量特性等を、流量制御弁の中立位置に応じて補正することも行われている。
【0008】
しかしながら、流量制御弁は、弁体が給気位置から中立位置へと移動した場合の給気側中立位置と、排気位置から中立位置へと移動した場合の排気側中立位置とに差異が生じる場合があり、流量制御弁を正確に制御することが困難であるといった課題がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、流量制御弁の中立位置を正確に学習することができる流量制御弁の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の流量制御弁の制御装置は、作動流体によって作動するアクチュエータと、前記作動流体を供給する作動流体供給源と、前記アクチュエータのストローク量を検出するストロークセンサと、中空部を移動可能な弁体を有するとともに、前記作動流体供給源に連絡する供給部と前記アクチュエータから前記作動流体を排出する排出部と前記アクチュエータに連通する連通部とを有する流量制御弁と、前記ストロークセンサの検出値に応じて、前記弁体の移動量を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ストロークセンサの検出値により前記弁体が前記排出部側から移動して前記連通部を遮断する中立位置と判断されたときの前記弁体の移動量と、前記弁体が前記供給部側から移動して前記連通部を遮断する中立位置と判断されたときの前記弁体の移動量とから、前記弁体の中立位置としての移動量を学習する中立位置学習部を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記制御部は、前記ストロークセンサの検出値の変化量が所定値以下となったときに、前記弁体が中立位置と判断するようにしてもよい。
【0012】
また、前記制御部は、前記ストロークセンサの検出値の変化量が一定時間継続して前記所定値以下となったときに、前記弁体が中立位置と判断するようにしてもよい。
【0013】
また、前記制御部は、前記弁体の移動量を比例制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流量制御弁の制御装置によれば、簡素な構成で、流量制御弁の中立位置を正確に学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置と、車両の駆動系とを示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る流量制御弁の詳細を示す断面図である。
【図3】図2の流量制御弁が作動した状態を示す断面図である。
【図4】図2の流量制御弁の中立位置を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る流量制御弁の流量特性を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置によるストローク制御の態様を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置による制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により、本発明に係る一実施形態について説明する。
【0017】
図1〜7は、本発明の一実施形態を説明するものである。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置10が適用される車両1の駆動系を説明する。本実施形態に係る車両1の駆動系は、図1に示すように、エンジン100と、クラッチ装置200と、機械式自動変速機300とを有する。
【0019】
エンジン100は、図示しないエンジンECUによって、車両1の運転状態に応じたトルクを発生させるように燃焼制御される。また、エンジン100の出力軸110は、後述するクラッチ装置200によって、機械式自動変速機300の変速機入力軸310と断接可能に構成されている。
【0020】
クラッチ装置200は、図1に示すように、乾式単板クラッチ装置であって、フライホイール210と、クラッチディスク220と、リターンスプリング230とを有する。
【0021】
フライホイール210は、図示しないボルトとナットとによって、エンジン100の出力軸110に固定されている。クラッチディスク220は、その周辺部に図示しない摩耗板が設けられており、後述する機械式自動変速機300の変速機入力軸310に摺動可能にスプライン嵌合されている。また、クラッチディスク220には、後述するレリーズフォーク13の一端部が取り付けられている。リターンスプリング230は、クラッチディスク220の一端部と機械式自動変速機300との間に設けられ、クラッチディスク220をエンジン100の方向(図1の矢印X方向)に付勢するように取り付けられている。
【0022】
機械式自動変速機300は、フライホイール210とクラッチディスク220とが係合すことにより、このフライホイール210,クラッチディスク220を介して伝達されるエンジン100のトルクを、所望の回転速度に変速調整した後に、図示しないプロペラシャフト等へと伝達するように構成されている。
【0023】
以下、図1〜7を用いて、本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置10について説明する。
【0024】
本実施形態に係る流量制御弁の制御装置10は、図1,2に示すとおり、圧力供給源(作動流体供給源)11と、クラッチアクチュエータ(アクチュエータ)12と、レリーズフォーク13と、ストロークセンサ14と、流量制御弁15と、給気通路16と、圧力源通路17と、排気通路18と、制御ECU(制御部)20とを有する。
【0025】
圧力供給源11は、空圧タンク等であって、図1に示すように、作動流体を流量制御弁15へと供給する。また、圧力供給源11には、後述する流量制御弁15の圧力源ポート17aと連通する圧力源通路17が接続されている。
【0026】
クラッチアクチュエータ12は、図1に示すように、シリンダ室を備えたシリンダ本体12aと、このシリンダ室に摺動自在に嵌挿されたピストン12bとを有する。シリンダ本体12aの側面には、流量制御弁15の排気ポート18aと連通する排気通路18が接続されており、シリンダ室内の作動流体を流量制御弁15を介して排出するように構成されている。また、シリンダ本体12aの側面には、流量制御弁15の給気ポート16aと連通する給気通路16が接続されており、圧力供給源11から流量制御弁15を介して送り込まれる作動流体の流体圧よって、ピストン12bが図1の矢印X方向へと移動されるように構成されている。
【0027】
レリーズフォーク13は、図1に示すように、一端部をクラッチアクチュエータ12のピストン12bの先端に支持され、他端部をクラッチディスク220に取り付けられている。また、レリーズフォーク13は、その中心部を支軸13aによって回動可能に軸支されている。すなわち、クラッチアクチュエータ12のシリンダ室内に作動流体が供給されてピストン12bが車両1の前方(図1の矢印X方向)へと移動すると、このレリーズフォーク13は、車両1の前方(図1の矢印X方向)へと付勢される。そして、レリーズフォーク13が、支軸13aを中心に図1中の左回りに回動することで、クラッチ装置200の係合が切断されるように構成されている。また、レリーズフォーク13は、クラッチアクチュエータ12のシリンダ室内の作動流体が排出されると、リターンスプリング230の付勢力によって、図1の矢印Y方向へと回動し、クラッチ装置200の係合を接続するように構成されている。
【0028】
ストロークセンサ14は、図1に示すように、クラッチアクチュエータ12のストローク量を検出するもので、その検出値Sは、後述する制御ECU20の作動制御部21に出力される。
【0029】
給気通路16は、図1,2に示すように、一端をクラッチアクチュエータ12のシリンダ室に接続され、他端を後述する流量制御弁15の給気ポート16aに接続されている。
【0030】
圧力源通路17は、図1,2に示すように、一端を圧力供給源11に接続され、他端を後述する流量制御弁15の圧力源ポート17aに接続されている。
【0031】
排出通路18は、図1,2に示すように、一端をクラッチアクチュエータ12のシリンダ室に、他端を後述する流量制御弁15の排気ポート18aに接続されている。
【0032】
流量制御弁15は、図2に示すように、内部に中空部を備えた比例弁本体15aと、この中空部に摺動可能に嵌挿される弁体19と、電磁ソレノイド15bと、スプリング15cとを有する。また、比例弁本体15aの側部には、前述の給気通路16,圧力源通路17,排出通路18と接続される、給気ポート(連通部)16a,圧力源ポート(供給部)17a,排気ポート(排出部)18aが所定の間隔で形成されている。本実施形態において、給気ポート16aは、圧力源ポート17aと排気ポート18aとの間に位置するように配置されている。
【0033】
弁体19には、所定の移動位置で前述の給気ポート16a,圧力源ポート17a,排気ポート18aをそれぞれ遮断すべく、三個のランド、すなわち給気遮断部19a,圧力源遮断部19b,排出遮断部19cが所定の間隔で設けられている。また、弁体19は、一端を電磁ソレノイド15bの可動ヨークに連結され、他端をスプリング15cによって図2の矢印X方向に付勢されている。
【0034】
すなわち、弁体19は、電磁ソレノイド15bの可動ヨークに作用する磁力とスプリング15cの付勢力とのバランスによってその位置が決定されるように構成されている。例えば、電磁ソレノイド15bのコイルへの通電を停止(通電量0%)したときは、弁体19は、スプリング15cに付勢されて図3(a)の位置(排気位置)となる。これにより、給気ポート16aと排気ポート18aとが連通して、クラッチアクチュエータ12のシリンダ室内の作動流体が排出されることで、クラッチ装置200の係合を接続する。ソレノイド15bのコイルへの通電量を最大値(100%)とすると、弁体19は、スプリング15cを圧縮して図3(b)の位置(給気位置)となり、給気ポート16aと圧力源ポート17aとが連通する。これにより、圧力供給源11の作動流体が給気ポート16aからクラッチアクチュエータ12のシリンダ室内に送り込まれ、クラッチ装置200の係合を切断する。電磁ソレノイド15bのコイルへの通電量を50%とすると、弁体19が図3(c)の位置(中立位置)となり、給気ポート16aが圧力源ポート17a及び排気ポート18aと遮断されて、クラッチ装置200の接続量を所定量に保持する。
【0035】
制御ECU(制御部)20は、公知のCPUやROM等から構成されており、作動制御部21と、中立位置学習部22とを機能要素として備えている。
【0036】
なお、これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである制御ECU20に設けられているが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0037】
作動制御部21は、流量制御弁15を通過する作動流体の流量を制御するもので、電磁ソレノイド15bのコイルへの通電量と作動流体の流量との関係を表す流量特性(図5の実線)が予め記憶されている。また、作動制御部21は、この流量特性に基づいて、目標とする流量に応じた通電量を電磁ソレノイド15bのコイルに出力するように構成されている。本実施形態では、車両の変速時に、図6(a)の実線に示すクラッチストロークを実現すべく、図6(a)の破線に示す目標波形が予め定められている。すなわち、クラッチストロークを図6(a)に示すように、完接位置から断位置1へと急速に変化させ、その後、変速時の変速ショックを防ぐように、断位置2を介して完接位置へと戻すように構成されている。また、この図6(a)の目標波形を実現すべく、電磁ソレノイド15bのコイルへの通電量は、図6(b)のグラフに示すようなP制御(比例制御)で行われる。すなわち、車両1の変速時には、クラッチ装置200の係合を接続〜切断〜接続と変化させるように、流量制御弁15の弁体19の位置を排気位置〜給気位置〜中立位置と制御し、次いで、中立位置〜排気位置〜中立位置〜排気位置と制御する。
【0038】
中立位置学習部22は、流量制御弁15を通過する作動流体が遮断される中立位置における電磁ソレノイド15bのコイルへの通電量Eを学習する。具体的には、ストロークセンサ14から出力される検出値Sに基づいて、ストロークの変化速度が実質的にゼロである場合に流量制御弁15が中立位置にあると判定し、その中立位置に対応する通電量Eを学習するようになっている。
【0039】
本実施形態において、このストロークの変化速度の判定は、ストローク量の微分値に基づいて行われる。具体的には、ストロークS1と、このストロークS1が検出された時から一定時間tが経過した後のストロークS2を検出し、この一定時間tの経過時におけるストロークの変化速度である微分値D(D=(S1−S2)/t)が所定値以下であれば、ストロークの変化速度は実質的にゼロであると判定する。なお、よりストロークの変化速度が安定した状態を判定すべく、微分値Dの演算周期を、所定時間tの間に継続して複数設け、その全ての微分値Dが所定値以下である場合にのみ、ストロークの変化速度が実質的にゼロであると判定するようにしてもよい。
【0040】
また、中立位置学習部22は、車両1の変速操作時に、流量制御弁15の弁体19が排気位置〜給気位置〜中立位置(クラッチ装置200は接続〜切断〜切断保持)と移動する際の給気側中立位置(図4(a)参照)に対応する通電量(以下、給気側学習値という)E1と、流量制御弁15の弁体19が排気位置〜中立位置と移動する際の排気側中立位置(図4(b)参照)に対応する通電量(以下、排気側学習値という)E2とを読み込む。ここで、中立位置学習部22が、給気側学習値E1と排気側学習値E2との双方を読み込むのは、図4(a),(b)に示すように、給気側中立位置と排気側中立位置とに差異Lが生じるためである。この差異Lは、流量制御弁15の中立位置で給気ポート16aが完全に遮断されるように、弁体19の給気遮断部19aの径L1を、給気ポート16a開口径L2よりも大径(L1>L2)に形成していることによる。
【0041】
また、中立位置学習部22は、この給気側学習値E1と排気側学習値E2との平均値EAveを流量制御弁15の中立位置に対応する通電量すなわち、学習値として記憶する。
【0042】
その後、車両1の変速操作が終了すると、この記憶された平均値EAveに基づいて、例えば、作動制御部21に予め記憶されている図5の流量特性等を、破線に示すような流量特性へと補正する。
【0043】
本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置10は、以上のように構成されているので、車両1の変速操作時には、例えば図7に示すフローチャートに従って以下のような制御が行われる。
【0044】
操作者によって、車両1の変速操作がなされると、まず、ステップ1では、制御ECU20の作動制御部21が、流量制御弁15の弁体19を排気位置〜給気位置〜中立位置(クラッチ装置200は、接続〜切断〜切断保持)と移動するように制御する。
【0045】
ステップ2では、中立位置学習部22が、ストロークセンサ14から出力される検出値Sに基づいて、ストロークの変化速度である微分値Dが所定値以下(ストロークの変化速度は実質的にゼロ)であるか否を判定する。微分値Dが一定時間継続して所定値以下であれば、流量制御弁15は給気側中立位置にあると判定し、ステップ3へと進む。一方、微分値Dが一定時間継続して所定値以下でない場合は、流量制御弁15は給気側中立位置にないと判定し、制御はリターンされる。
【0046】
ステップ3では、中立位置学習部22によって、前述のステップ2で給気側中立位置にあると判定した際の通電量、すなわち、給気側学習値E1が読み込まれる。
【0047】
ステップ4では、作動制御部21が、流量制御弁15の弁体19を中立位置〜排気位置〜中立位置と移動するように制御する。
【0048】
ステップ5では、中立位置学習部22が、ストロークセンサ14から出力される検出値Sに基づいて、ストロークの変化速度である微分値Dが所定値以下(ストロークの変化速度は実質的にゼロ)であるか否を判定する。微分値Dが一定時間継続して所定値以下であれば、流量制御弁15は排気側中立位置にあると判定し、ステップ6へと進む。一方、排気側中立位置にないと判定した場合は、制御はリターンされる。
【0049】
ステップ6では、中立位置学習部22によって、前述のステップ5で排気側中立位置にあると判定した際の通電量、すなわち、排気側学習値E2が読み込まれる。
【0050】
ステップ7では、中立位置学習部22によって、前述のステップ3で読み込まれた給気側学習値E1と、ステップ6で取り込まれた排気側学習値E2との平均値EAveを、流量制御弁15の中立位置学習値として記憶する。
【0051】
ステップ8では、中立位置学習部22によって、作動制御部21に予め記憶さている図5の流量特性の中立位置に対応する通電量と、ステップ7で記憶された学習値(平均値EAve)とを比較し、差異がある場合には、この流量特性を、例えば図5の破線に示すような流量特性に補正して、本制御はリターンされる。
【0052】
上述のような制御により、本発明の一実施形態に係る流量制御弁の制御装置10によれば以下のような作用・効果を奏する。
【0053】
すなわち、中立位置学習部22による流量制御弁15の中立位置の学習は、ストロークセンサ14から出力される検出値Sに基づいて、ストロークの変化速度が実質的にゼロであると判定された場合に行われる。
【0054】
したがって、ストロークが変化せず、クラッチ装置200の挙動が安定した状態で、流量制御弁15の中立位置を学習するので、学習値のばらつきを低減することができる。学習後は、この学習値に応じて補正された流量特性等に基づいてクラッチ制御がなされるので、当然ながら、変速時の変速ショックの発生を効果的に抑制することができる。
【0055】
また、中立位置学習部22は、流量制御弁15の弁体19が給気位置〜中立位置と移動する際の給気側学習値E1と、流量制御弁15の弁体19が排気位置〜中立位置と移動する際の排気側学習値E2とを読み込み、この給気側学習値E1と排気側学習値E2との平均値EAveを流量制御弁15の中立位置に対応する学習値として記憶する。
【0056】
したがって、排気側中立位置と給気側中立位置とに差異Lが生ずる場合でも、流量制御弁15の中立位置を正確に学習することができ、当然ながら、この学習値に応じて補正した流量特性等に基づいてクラッチ制御を実行することで、変速時の変速ショックの発生を効果的に抑制することができる。
【0057】
また、作動制御部21による流量制御弁15の弁体19の移動量(コイルへの通電量)、すなわち、流量制御弁15を流れる作動流体の流量制御はP制御(比例制御)で行われる。
【0058】
したがって、流量制御弁15の急激な出力変化が抑制されるので、PD制御やPID制御を適用する場合に比べ、ストロークの変化速度が安定し、流量制御弁15の中立位置をより正確に学習することができる。
【0059】
また、一定時間継続してストロークの変化速度が実質的にゼロであるか否かを判定し、ストロークの変化速度が安定した状態で、中立位置の学習を行っている。 したがって、クラッチ装置200を切断した直後など、ストロークが急激に変化している状態で学習を行う場合と比べ、より精度の高い中立位置学習値を得ることができる。
【0060】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0061】
例えば、上述の実施形態において、本発明の流量制御弁の制御装置10はクラッチ装置200に適用されるものとして説明したが、定量比例弁で制御される制御系全般に適用することが可能である。
【0062】
また、本実施形態において、流量制御弁15には、給気ポート16a,圧力源ポート17a,排気ポート18aが設けられ、ぞれぞれのポートに給気通路16,圧力源通路17,排気通路18が接続されるものとして説明したが、例えば、流量制御弁15と作動流体供給源11とクラッチアクチュエータ12とを隣接して設け、これら給気通路16や圧力源通路17、排気通路18を省略して構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態において、給気ポート16aは、圧力源ポート17aと排気ポート18aとの間に配置されるものとして説明したが、各ポートの位置関係はこれに限定されるものではなく、例えば、圧力源ポート17aを給気ポート16aと排気ポート18aとの間に位置するように配置してもよい。
【0064】
また、クラッチアクチュエータ12を作動させる作動流体の流体圧は、空気圧であるか油圧であるかを問わず、本発明の流量制御弁の制御装置10に適用することができる。
【0065】
また、本実施形態において、流量制御弁15は電磁ソレノイドのコイルへの通電量によって制御されるものとして説明したが、例えば、パルスモータを使用し、パルス数を変更することで制御されるものを適用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
10 流量制御弁の制御装置
11 圧力供給源(作動流体供給源)
12 クラッチアクチュエータ(アクチュエータ)
14 ストロークセンサ
15 流量制御弁
16a 給気ポート(連通部)
17a 圧力源ポート(供給部)
18a 排気ポート(排出部)
19 弁体
20 制御ECU(制御部)
21 作動制御部
22 中立位置学習部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体によって作動するアクチュエータと、
前記作動流体を供給する作動流体供給源と、
前記アクチュエータのストローク量を検出するストロークセンサと、
中空部を移動可能な弁体を有するとともに、前記作動流体供給源に連絡する供給部と前記アクチュエータから前記作動流体を排出する排出部と前記アクチュエータに連通する連通部とを有する流量制御弁と、
前記ストロークセンサの検出値に応じて、前記弁体の移動量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ストロークセンサの検出値により前記弁体が前記排出部側から移動して前記連通部を遮断する中立位置と判断されたときの前記弁体の移動量と、前記弁体が前記供給部側から移動して前記連通部を遮断する中立位置と判断されたときの前記弁体の移動量とから、前記弁体の中立位置としての移動量を学習する中立位置学習部を有する
ことを特徴とする流量制御弁の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ストロークセンサの検出値の変化量が所定値以下となったときに、前記弁体が中立位置と判断する
ことを特徴とする請求項1記載の流量制御弁の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ストロークセンサの検出値の変化量が一定時間継続して前記所定値以下となったときに、前記弁体が中立位置と判断する
ことを特徴とする請求項2記載の流量制御弁の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記弁体の移動量を比例制御する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流量制御弁の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−2235(P2012−2235A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119859(P2010−119859)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名:自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2010」 主催者名:社団法人自動車技術会 開催日:平成22年5月19日
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】