説明

流量制御装置および流体混合器

【課題】 混合比を一定に保ちながら各流体の流量を可変制御可能な流体混合器と、この流体混合器に用いるに好適な流体制御装置を提供する。
【解決手段】 流量制御装置に、デジタル指令値(流量設定値)をアナログ電圧値またはアナログ電流値に変換して出力するアナログ出力回路、入力されたアナログ電圧またはアナログ電流値をデジタル指令値に変換して取り込むアナログ入力回路、通信インターフェースを介して与えられたデジタル指令値、またはアナログ入力回路を介してアナログ電圧またはアナログ電流値を変換して入力したデジタル指令値に応じて流量制御弁の弁開度を比例制御する制御弁駆動回路、およびデジタル指令値とアナログ入出力電圧値との対応関係を可変設定するアナログスケーリング手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔制御性に優れた流量制御装置および流体混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工業プロセスにおいては、所定の流体(例えばプロセスガス)を所定の設定流量で供給しながらプロセス処理を進めることが多い。このような流体の供給量(流量)制御には、専ら、比例ソレノイドを用いた弁機構が用いられる。この種の弁機構は、比例ソレノイドの通電電流に応じて弁開度を可変し、これによって所定の流路を通流する流体の流量を調整するもので、比例ソレノイドバルブとも称される。ちなみに上記弁機構(比例ソレノイドバルブ)を用いた流量制御装置は、流路に設けた流量センサ(例えばマイクロフローセンサ)にて該流路を通流する流体の流量を検出しながら、その検出流量と設定流量との差に応じて前記弁機構の弁開度をフィードバック制御するように構成される(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また最近では、RS−485等の通信インターフェースを介して上記設定流量(流量設定値)をパーソナルコンピュータ等の外部機器からデジタル的に与えて流量制御することで、その遠隔制御を容易化することも提唱されている(例えば特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平06−341880号公報
【特許文献2】特開2005−207523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで複数のガスを精度良く混ぜ合わせて混合ガスを生成する場合、流体混合器は、例えば図5に示すように混合対象とする3種類のガスに対応させて3台の流量制御装置1a,1b,1cを並列に設け、これらの各流量制御装置1a,1b,1cをそれぞれ介して流量制御された3種類のガスを混合器2a,2bにて順に混合することで、その混合ガスを得るように構成される。また上記各流量制御装置1a,1b,1cに対しては、パーソナルコンピュータ3から通信インターフェース4を介してそれぞれ流量設定値(デジタル指令値)を与え、これによって上記各流量制御装置1a,1b,1cの作動をそれぞれ制御するものとなっている。
【0005】
このように構成された流体混合器によれば、パーソナルコンピュータ3からの指令の下で各流量制御装置1a,1b,1cにおける弁機構の作動を、即ち、その弁開度をそれぞれ制御することで、所望とする混合比での混合ガスを得ることができる。またその混合比を一定に保ったまま、所望とする流量で混合ガスを生成することが可能となる。特に通信インターフェース4を介して流量設定値(デジタル指令値)を与えるので、容易にその遠隔制御を行うことが可能となる等の効果が奏せられる。
【0006】
しかしながら混合比を一定に保ったまま混合ガスの生成流量を調整する場合、各流量制御装置にそれぞれ設定する流量(流量設定値)を前述した通信インターフェースを介して順次個別に指示する必要がある。この為、複数の流量制御装置の全ての作動を制御するまでに時間が掛かることが否めない。即ち、最初の流量制御装置に指令(流量設定値)を与えた時点から、最後の流量制御装置に指令(流量設定値)を与えるまでにタイムラグが生じることになる。
【0007】
特に2線式または3線式のRS−485通信のように同一通信線上に複数の流量制御装置が接続され、また送信線と受信線とが共通の通信方式である場合、パーソナルコンピュータ3から各流量制御装置への指令は順次個別に行われ、しかも半二重通信で実行されるのでそのタイムラグは更に大きくなる。するとその間、生成された混合ガスの混合比が乱れ、例えばバーナ燃焼用混合ガス流量制御の場合には、不完全燃焼やバックファイヤ(逆火)や失火が生じる要因となる等の不具合が生じる。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、通信インターフェースを介して遠隔制御可能であり、しかも複数台まとめて用いられる場合であっても上記通信インターフェースに起因する制御遅れ等の不具合を招来することのない、遣い勝手に優れた流量制御装置を提供することにある。
また本発明は複数の流量制御装置を並列に用いて複数種の流体をそれぞれ流量制御して混合する場合であっても、その混合比を一定に保ちながら各流体の流量を、ひいてはその混合流量を可変制御可能な流体混合器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するべく本発明に係る流量制御装置は、流量センサにより計測される流体の流量が流量設定値となるように流量制御弁の開度を比例制御して該流量制御弁を介して通流する上記流体の流量を制御する制御ユニットを備えたものであって、特に上記制御ユニットを
通信インターフェースを介して与えられるデジタル流量設定値をアナログ値に変換して出力するアナログ出力回路と、
入力されたアナログ値をデジタル流量設定値に変換して取り込むアナログ入力回路と、
前記通信インターフェースを介して与えられたデジタル流量設定値、または前記アナログ入力回路にてアナログ値を変換して入力したデジタル流量設定値に応じて前記流量制御弁の弁開度を比例制御する弁開度制御値を出力する制御弁駆動回路と、
上記デジタル流量設定値と上記アナログ値との対応関係を予め設定するアナログスケーリング手段と
を備えたものとして構成したことを特徴としている。
【0010】
ちなみに前記アナログスケーリング手段については、前記アナログ出力回路がnビットのデジタル設定値を0〜5Vまたは1〜5Vの直流電圧信号または4〜20mAの直流電流信号に変換して出力するように設定すると共に、前記アナログ入力回路が前記0〜5Vまたは1〜5Vの直流電圧信号または4〜20mAの直流電流信号をnビットのデジタル流量設定値に変換して取り込むように設定する機能を備えたものとして構成することが好ましい。
【0011】
また本発明に係る流体混合器は、上述した構成の流量制御装置を複数並列に備え、これらの各流量制御装置をそれぞれ介して導かれた複数種類の流体を混合するものであって、
流体の混合を制御する外部機器(例えばマイクロコンピュータ)と、主たる1個の流量制御装置とを前記デジタル流量設定値を伝送する通信インターフェースを介して接続すると共に、上記主たる流量制御装置と他の流量制御装置とを前記アナログ電圧値またはアナログ電流値を伝送するアナログ信号線を介して接続して構成される。
【0012】
そして上記主たる流量制御装置は、外部機器から前記通信インターフェースを介して与えられたデジタル流量設定値を取り込んで前記制御弁駆動回路から弁開度制御値を出力し流体の流量を制御すると共に、このデジタル指令値に相当するアナログ電圧値またはアナログ電流値を前記アナログ出力回路を介して出力して他の流量制御装置に与え、一方、他の流量制御装置は、前記アナログ入力回路に与えられたアナログ電圧値またはアナログ電流値を取り込んで前記制御弁駆動回路から弁開度制御値を出力し流体の流量を制御するものとする。
【0013】
好ましくは前記他の流量制御装置においては、前記アナログ入力回路に与えられたアナログ電圧値またはアナログ電流値をデジタル流量設定値に変換して取り込むと同時に、取り込んだデジタル流量設定値に相当するアナログ電圧値またはアナログ電流値を前記アナログ出力回路を介して出力し、更に他の流量制御装置の与えるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の流量制御装置は、流量制御弁の弁開度を比例制御する基本的な制御機能として、通信インターフェースを介して与えられるデジタル流量設定値、または前記アナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)を変換したデジタル流量設定値に応じて弁開度制御値を出力する制御弁駆動回路を備えており、更には上記デジタル流量設定値をアナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)に変換して出力する機能、およびデジタル流量設定値と上記アナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)との対応関係を予め設定するアナログスケーリング手段を備えている。
【0015】
従って通信インターフェースを介して与えられるデジタル流量設定値を取り込む流量制御装置は、上記デジタル流量設定値をアナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)に変換して他の流量制御装置に出力する中継器としての役割を備えることになる。またアナログスケーリング手段を備えるので、流量制御の仕様に合わせてその流量設定値とアナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)との対応関係を設定するだけで、上記流量制御の仕様の範囲で流量制御弁を比例制御することが可能となる。この結果、パーソナルコンピュータ等の外部機器からの流量制御装置の制御の容易化を図ることができ、また流量制御装置の取り扱い自体の容易化を図ることが可能となる。
【0016】
また上述した流量制御装置を複数並列に用いて流体混合器を構築した場合、主たる流量制御装置に対してだけ通信インターフェースを介してデジタル流量設定値を与え、他の流量制御装置に対しては上記主たる流量制御装置がデジタル流量設定値に対応させて出力するアナログ電圧値またはアナログ電流値を与えるようにすることで、これらの各流量制御装置に対して一括して流量設定値を与えることが可能となる。換言すれば複数の流量制御装置のそれぞれに対して前記通信インターフェースを介して順次デジタル流量設定値を与えることなく、これらの各流量制御装置における流体の流量を一括して制御することができる。特に個々の流量制御装置は、予めデジタル流量設定値とアナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)との対応関係がそれぞれ個別に設定されているので、同じアナログ値(アナログ電圧値またはアナログ電流値)が与えられた場合であっても、それぞれ個別の流量設定値で流体の流量を制御することになる。
【0017】
この結果、各流量制御装置を介して流量制御される流体の流量を、時間遅れを生じることなく一括して変更制御することができるので、その混合比を一定に保ちながら混合流体の流量制御することが可能となる。故に、例えばバーナ燃焼用混合ガス流量制御を行う場合であっても、混合比の変動に伴う不完全燃焼やバックファイヤ(逆火)や失火等の不具合の発生を確実に回避することが可能となる等の効果が奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る流量制御装置と、この流量制御装置を複数台並列に用いて構成される流体混合器について説明する。
図1は流量制御装置の概略構成を示す図で、概略的には流路ボディ10に組み込まれた流量制御弁20と、この流量制御弁20の弁開度を比例制御して流体の通流量を制御する制御ユニット40とを備えて構成される。流路ボディ10は、概略的にはその一端側から所定の深さまで穿いた丸穴状の上流側流路11を備える共に、他端側から穿いた丸穴状の下流側流路12を備え、これらの各流路11,12の底部にそれぞれ連通する連通孔13,14を該流路ボディ10の側部(図における上側)に開口したブロック体からなる。
【0019】
この流路ボディ10の上記連通孔13,14に連結してソレノイド型の流量制御弁20が取り付けられる。このソレノイド型流量制御弁20は、ソレノイド21により進退駆動されるスラスト軸22の先端に弁体23を備え、この弁体23に対峙する弁座24と上記弁体23との隙間(弁開度)を可変する機能を備える。特にこの流量制御弁20は、弁座24に対する弁体23が平坦化された形状を有しており、弁体23にて弁座24を閉塞することでその流路を遮断する遮断弁としての機能を有している。そしてソレノイド21を通電駆動して上記弁体23を弁座24から引き離すことで、その弁開度(弁体23と弁座24との隙間)を可変し、流体の通流量(流量)を比例制御する機能を持たせたものとなっている。
【0020】
またここでは流量制御弁20における弁体23の外側を前記連通孔13を介して上流側流路11に連結し、また弁体23の内側(弁座24側)を前記連通孔14を介して下流側流路12に連結することで、弁の外側から内側へと通流する流体の流量を制御する、いわゆるフロー・トゥー・クローズ[flow to close]方式のバルブを実現している。前述した流路ボディ10の上流側流路11に導入された流体(ガス)は、このような構造の流量制御弁20を介して下流側流路12に流量制御されて導かれることになる。
【0021】
尚、上記流路ボディ10における上記上流側流路11の入口部には、複数枚の整流用金網(整流体)15が互いに重ね合わせた状態で嵌め込まれている。これらの整流用金網15は、該上流側流路11内に導入された流体(ガス)がその流路に沿って滑らかに通流するべく整流する役割を担う。また上流側流路11における上記整流用金網15の下流側の壁面には、流量センサ30が設けられており、この流量センサ30によって該上流側流路11を、ひいては流路ボディ10を介して通流する流体の流量が検出されるようになっている。ちなみにこの流量センサ30は、流体の通流方向に発熱体を挟んで一対の温度センサを設けた構造を有し、流体の流速(流量)による温度分布の変化を上記一対の温度センサにより検出してその質量流量を検出する熱式流量センサ(マイクロフローセンサ)からなる。
【0022】
さて上述したように所定の流路を形成した流路ブロック10にソレノイド型の弁機構20を取り付けると共に、流量センサ(マイクロフローセンサ)30を組み込んだ流量制御装置の本体部は、マイクロプロセッサ(CPU)41を主体とする制御ユニット40により動作制御される。このマイクロプロセッサ41は、マン・マシン・インターフェースとしての設定・表示部42から指示されるスイッチ情報をスイッチ入力回路43を介して入力して、流量設定値やその他の動作条件等が設定される。そしてマイクロプロセッサ41は、基本的にはセンサ信号処理回路44を介して前記流量センサ30の出力(流量信号)を入力し、この流量に応じて比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45の作動を制御することで前記ソレノイド21を通電電流を可変し、これによって前記弁機構20の作動を、具体的にはその弁開度を制御する。
【0023】
尚、マイクロプロセッサ41には、外部接点入力回路46を介して、例えば弁機構20を強制的に全閉にしたり、或いは全開にする等の動作切換要求が入力されるようになっており、またアナログ設定入力回路47を介して上述した流量制御のための流量設定値を前述した設定・表示部42を介することなく電圧情報(アナログ電圧値)として入力できるようになっている。更にマイクロプロセッサ41は、通信インターフェース48を介して図示しない外部機器(例えばパーソナルコンピュータ)等との間で情報通信する機能や、EEPROM等のメモリ49を用いて所定の情報を記憶する機能を備えている。
【0024】
特にマイクロプロセッサ41は、外部機器から通信インターフェース48を介して与えられるnビットのデジタル指令値(流量設定値)を入力して前記比例バルブ駆動回路45を駆動する機能を備えている。更にマイクロプロセッサ41は、その作動によって前記流量センサ30から得られた流量等の情報を適宜表示出力回路50を介して前記設定・表示部42に表示出力する機能や、上述したデジタル指令値(流量設定値)をアナログ電圧値に変換して外部出力するアナログ出力回路51、更には異常警報等の情報を出力するイベント・アラーム出力回路52を備えている。
【0025】
即ち、この制御ユニット40は、マイクロプロセッサ41による制御の下で、前記通信インターフェース48を介して外部機器から与えられるnビットのデジタル流量設定値、または前記アナログ設定入力回路47を介して与えられるアナログ電圧値を後述するアナログスケーリング設定値に従って変換したデジタル流量設定値に応じて比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45の作動を制御し、前記流量制御弁20の弁開度を比例制御する弁開度制御値を出力する機能を備えている。更には後述するアナログスケーリング設定値に従って、該デジタル流量設定値に対応するアナログ電圧値を、前記アナログ出力回路51から出力する機能を備えている。ちなみにこのアナログ出力回路51は、nビットのデジタル流量設定値に対応して、この種の流量制御装置に対する制御電圧として標準的な0〜5Vまたは1〜5Vのアナログ電圧を出力する。
【0026】
また更にマイクロプロセッサ41は、例えば前述した設定・表示部42からの設定指示の下で、前記デジタル流量設定値とアナログ入出力電圧との対応関係を設定するアナログスケーリング手段53を備えている。このアナログスケーリング手段53は、具体的には0〜5Vまたは1〜5Vのアナログ直流電圧の上限(つまり5V)に相当する前記デジタル流量設定値をアナログスケーリング設定値として可変設定するように構成される。
【0027】
尚、アナログ入出力電圧の上限(5V)を規定するアナログスケーリング設定値は、1分間当たりの流体通流量(xリットル/分)として、或いは流量制御装置の定格最大流量の何%等として与えられる。この結果、スケーリング手段53は、0〜5Vまたは1〜5Vのアナログ電圧値に対して、例えば図2に示すようにそのデジタル流量設定値の設定範囲を規定することになる。図2においては0〜5Vのアナログ電圧値によって0〜1リットル/分、0〜2リットル/分、0〜7リットル/分の各デジタル流量設定値の設定範囲との関係を示している。
【0028】
さて上述した如く構成された流量制御装置を複数個用いた流体混合器は、例えば図3または図4に示すように構築される。図3および図4にそれぞれ示す流体混合器は、3種類の流体(ガス)GAS1,GAS2,GAS3を所定の混合比で混合するようにしたものである。この流体混合器は、基本的には図5に示した従来の流体混合器と同様に、3台の流量制御装置1a,1b,1cを並列に設け、これらの各流量制御装置1a,1b,1cをそれぞれ介して流量制御された3種類のガスを混合器2a,2bにて順に混合することで、その混合ガスを得るように構成される。そして外部機器であるパーソナルコンピュータ3からRS−232c、更にはRS−485からなる通信インターフェース4を介して上記各流量制御装置1a,1b,1cに流量設定値をそれぞれ与え、これによって上記各流量制御装置1a,1b,1cの作動をそれぞれ遠隔制御するように構成される。
【0029】
ここでこの実施形態に係る流体混合器が、前述した図5に示す流体混合器と異なるところは、前述した流量制御装置が備える機能を活かして、前記パーソナルコンピュータ3からは主たる1個の流量制御装置1aに対してだけ通信インターフェース4を介して流量設定値をデジタル指令値として与え、他の流量制御装置2b,2cに対しては上記主たる流量制御装置1aからアナログ電圧値としてその流量設定値を与えるように構成している点にある。特に図3に示す流体混合器においては、主たる流量制御装置1aから他の流量制御装置1b,1cに対してアナログ電圧値(流量設定値)を並列に与え、また図4に示す流体混合器においては、主たる流量制御装置1aから他の流量制御装置1b,1cに対してアナログ電圧値(流量設定値)をカスケードに与えるように構成している。
【0030】
即ち、図3に示す流体混合器は、流体の混合を制御する外部機器(パーソナルコンピュータ)3と主たる1個の流量制御装置1aとを、前記デジタル指令値(流量設定値)を伝送する通信インターフェース4を介して接続し、一方、上記主たる流量制御装置1aと他の流量制御装置1b,1cとを前記アナログ電圧値を伝送するアナログ信号線を介して接続して構成される。そして主たる流量制御装置1aにおいては、パーソナルコンピュータ3から通信インターフェース4を介して与えられたデジタル指令値(流量設定値)を取り込んで前述した比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45から流量制御弁20に対して弁開度制御値を出力し流量を制御すると共に、上記デジタル指令値(流量設定値)に相当するアナログ電圧値を前記アナログ出力回路51を介して他の流量制御装置1b,1cに出力する。そして他の流量制御装置1b,1cにおいては、上記主たる流量制御装置1aからアナログ信号線を介してそのアナログ設定入力回路47に与えられたアナログ電圧値(流量設定値)を取り込み、比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45からその流量制御弁20に対してそれぞれ弁開度制御値を出力して流量を制御するものとなっている。
【0031】
尚、図4に示す流体混合器は、図3に示す流体混合器と同様に主たる第1の流量制御装置1aは、パーソナルコンピュータ3から通信インターフェース4を介して与えられたデジタル指令値(流量設定値)を取り込み、前述した比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45から流量制御弁20に対して弁開度制御値を出力して流量を制御する。そして第2の流量制御装置1bは、上記主たる流量制御装置1aからアナログ信号線を介してそのアナログ設定入力回路47に与えられたアナログ電圧値(流量設定値)を取り込み、比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45からその流量制御弁20に対して弁開度制御値を出力して流量を制御する。更に第3の流量制御装置1cは、上記第2の流量制御装置1bからアナログ信号線を介してそのアナログ設定入力回路47に与えられたアナログ電圧値(流量設定値)を取り込み、同様にして比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)45からその流量制御弁20に対して弁開度制御値を出力して流量を制御するように構成される。
【0032】
かくしてこのように構成された流体混合器によれば、パーソナルコンピュータ3は通信インターフェース4を介して主たる流量制御装置1aに対してデジタル指令値(流量設定値)を与えるだけで、該流量制御装置1aが他の流量制御装置1b,1cに対して上記デジタル指令値に相当するアナログ電圧値(流量設定値)をそれぞれ与えることになる。従ってこれらの3個の流量制御装置1a,1b,1cに対して一括して流量設定値を与えることが可能となる。この場合、パーソナルコンピュータ3は流量制御装置1aに対して通信インターフェース4を介してデジタル指令値(流量設定値)を与えるのでその接続間距離が問題となることがなく、従って3個の流量制御装置1a,1b,1cの設置現場から遠く離れてパーソナルコンピュータ3が設置されている場合であっても、少なくとも主たる流量制御装置1aに対して確実に制御指令を与えることができる。
【0033】
また3個の流量制御装置1a,1b,1cは、通常、混合器2a,2bと共に互いに近接した位置にまとめて配置されるので、これらの流量制御装置1a,1b,1c間を前述したアナログ信号線を介して接続するだけでアナログ電圧値(流量設定値)を安定に、しかも確実に伝送することができる。従って主たる流量制御装置1aに対して確実に流量設定値(デジタル指令値)を与えると同時に、この流量制御装置1aの近くに配置された他の流量制御装置1b,1cに対して流量設定値(アナログ電圧値)を確実に与えることができる。この結果、流体混合器を構築する全ての流量制御装置1a,1b,1cに一括して流量設定値を与えることが可能となる。
【0034】
尚、この場合、流量制御装置1aから流量制御装置1b,1cには同じアナログ電圧値が与えられることになる。しかしながら各流量制御装置1a,1b,1cは、前述したようにアナログスケーリング手段53を備えているので、予め流体の混合比に応じて各流量制御装置1a,1b,1cに流量設定値とアナログ入出力電圧の関係を設定しておけば、上記混合比を一定に保ったまま、その流量を可変制御することが可能である。
【0035】
具体的には前述した3種類の流体(ガス)GAS1,GAS2,GAS3を[70%:20%:10%]なる混合比で混合し、最大10リットル/分の流量で混合ガスを生成する場合には、第1流量制御装置1a,の流量制御範囲を0〜7リットル/分として設定する。そして第1の流量制御装置1aにおいては、デジタル設定流量値0〜7リットル/分に対応して0〜5Vのアナログ電圧値を出力するようにアナログスケーリングを設定する。同様に第2の流量制御装置1bにおいては、アナログ入力電圧値0〜5Vに対応してデジタル流量設定値0〜2リットル/分となるようにアナログスケーリングを設定する。更に第3の流量制御装置1cにおいては、アナログ入力電圧値0〜5Vに対応してデジタル流量設定値0〜1リットル/分となるようにアナログスケーリングを設定しておけば良い。
【0036】
このようにして各流量制御装置1a,1b,1cのアナログ入出力スケーリングをそれぞれ設定しておくことで、パーソナルコンピュータ3から与える1つの制御指令だけで、その混合比を一定に保ったまま3つの流量制御装置1a,1b,1cの弁開度を同時に変更し、その流量を可変設定することが可能となる。従って従来のように、パーソナルコンピュータ3から各流量制御装置1a,1b,1cに対して個々に、しかも順次に制御指令を与える必要がないので前述した時間遅れの問題を解消することができる。故に、例えばバーナ燃焼用混合ガス流量制御を行う場合であっても、その混合比が乱れることがないので、不完全燃焼やバックファイヤ(逆火)や失火等の不具合が生じる虞がなくなり、その防曝安全性を十分に確保することが可能となる等の実用上、多大なる効果が奏せられる。
【0037】
尚、上記主たる流量制御装置1aはパーソナルコンピュータ3から直接指令値(流量設定値)を受けられるため、流量制御装置1aのアナログ回路や他の流量制御装置のアナログ回路に万一故障等の問題が発生しても、その影響を受けることなく制御動作を継続することができる。これ故、上記主たる流量制御装置1aは複数種類の流体の中で最も重要な流体の制御に用いることが望ましい。例えばバーナ燃焼用混合ガス流量制御を行う場合であって混合するガスの種類が燃料ガス、空気、酸素の3種類のときには、主たる流量制御装置1aにて燃料ガス(天然ガス、プロパン、ブタン等)の流量を制御することが望ましい。これにより万一、空気または酸素が停止するような事態になったとしても、燃料ガスの制御を正常に行うことで、バックファイヤ(逆火)または失火を起こすことだけは避けることができる。
【0038】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば流体混合器を構築するに際して並列に用いる流体制御装置の数は、混合する流体の種別数に応じて設定すれば良いものであり、各流体制御装置の最大制御流量についても互いに異なっていても良い。また流体制御装置が入出力するアナログ電圧の範囲についても1〜5Vとして設定することも可能であり、その他の電圧幅として設定することも勿論可能である。また前記アナログ電圧の代わりに、例えば4〜20mAのアナログ電流を用いるようにしても良い。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る流量制御装置の概略構成図。
【図2】流量制御装置に設定する流量設定値と弁開度との対応関係を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る流体混合器の概略構成図。
【図4】本発明の別の実施形態に係る流体混合器の概略構成図。
【図5】従来の流体混合器の概略構成図。
【符号の説明】
【0040】
1a,1b,1c 流量制御装置
2a,2b 混合器
3 パーソナルコンピュータ(外部機器)
4 通信インターフェース
20 流量制御弁
30 流量センサ(マイクロフローセンサ)
40 制御ユニット
41 マイクロプロセッサ
45 比例バルブ駆動回路(制御弁駆動回路)
47 アナログ設定入力回路(アナログ入力回路)
48 通信インターフェース
51 アナログ出力回路
53 アナログスケーリング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量センサにより計測される流体の流量が流量設定値となるように流量制御弁の開度を比例制御し該流量制御弁を介して通流する上記流体の流量を制御する制御ユニットを備えた流量制御装置であって
前記制御ユニットは、
通信インターフェースを介して与えられるデジタル流量設定値をアナログ値に変換して出力するアナログ出力回路と、
入力されたアナログ値をデジタル流量設定値に変換して取り込むアナログ入力回路と、
前記通信インターフェースを介して与えられたデジタル流量設定値、または前記アナログ入力回路を介してアナログ値を変換して入力されたデジタル流量設定値に応じて前記流量制御弁の弁開度を比例制御する弁開度制御値を出力する制御弁駆動回路と、
前記デジタル流量設定値とアナログ値との対応関係を予め設定するアナログスケーリング手段と
を具備したことを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記アナログスケーリング手段は、前記アナログ出力回路がnビットのデジタル流量設定値を0〜5Vまたは1〜5Vの直流電圧信号または4〜20mAの直流電流信号に変換して出力するように設定し、前記アナログ入力回路が0〜5Vまたは1〜5Vの直流電圧信号または4〜20mAの直流電流信号をnビットのデジタル流量設定値に変換して取り込むように設定するものである請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流量制御装置を複数並列に備え、これらの各流量制御装置をそれぞれ介して導かれた複数種類の流体を混合する流体混合器であって、
流体の混合を制御する外部機器と主たる1個の流量制御装置とを前記デジタル流量設定値を伝送する通信インターフェースを介して接続すると共に、上記主たる流量制御装置と他の流量制御装置とを前記アナログ電圧値またはアナログ電流値を伝送するアナログ信号線を介して接続し、
前記主たる流量制御装置は、外部機器から前記通信インターフェースを介して与えられたデジタル流量設定値を取り込んで前記制御弁駆動回路から弁開度制御値を出力して流体の流量を制御すると共に、このデジタル流量設定値に相当するアナログ電圧値またはアナログ電流値を前記アナログ出力回路を介して他の流量制御装置に出力し、
他の流量制御装置は、前記アナログ信号線を介してアナログ入力回路に与えられたアナログ電圧値またはアナログ電流値をデジタル流量設定値に変換して取り込み、前記制御弁駆動回路から弁開度制御値を出力して流体の流量を制御することを特徴とする流体混合器。
【請求項4】
前記他の流量制御装置は、前記アナログ入力回路に与えられたアナログ電圧値またはアナログ電流値をデジタル流量設定値に変換して取り込むと同時に、取り込んだデジタル流量設定値に相当するアナログ電圧値またはアナログ電流値を前記アナログ出力回路を介して出力することで前記アナログ電圧値またはアナログ電流値の中継器としての機能を備えるものである請求項3に記載の流体混合器。
【請求項5】
前記複数種類の混合流体は少なくとも燃料ガスを含む燃焼用の混合ガスであり、前記主たる流量制御装置には燃料ガスの流量を制御させることを特徴とする請求項3または4に記載の流体混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−87029(P2007−87029A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274078(P2005−274078)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】