説明

浮遊粒子状物質測定装置

【課題】 一連の装置を用いて浮遊粒子状物の質量濃度とそれに含まれる成分分析とを連続的かつリアルタイムに測定して浮遊粒子状物の解析能並びに解析精度の向上を実現できるようにする。
【解決手段】 大気から吸引されたサンプルガスSG中のSPMを捕集する捕集スポット9に捕集されたSPMにβ線を照射してそのβ線の透過量を検出することでSPMの質量濃度を測定するβ線吸収方式のSPM質量濃度測定装置5と、質量濃度測定後の捕集スポット9を加熱チャンバー7に自動的に移行させ、ここでの加熱により遊離され、かつ、濃縮されたSPM中の揮発ガス成分を分析する分析装置21とが連続作用状態に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の排気管や工場の煙突等からの排煙、飛散粉塵などのように、大気中に存在して人の健康、特に呼吸器官に悪影響を及ぼす浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter:以下、SPMと略称するものを含む)の質量濃度の測定及びそのSPM中に含まれている、例えば炭化水素系化合物や各種イオンなどの成分分析を同時に行うための浮遊粒子状物質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中のSPMの質量濃度を測定する装置として、従来、大気からSPMを含むサンプルガスを連続的に吸引し、この吸引したサンプルガス中のSPMをフィルタなどの捕集手段を用いて捕集し、その捕集によって形成された測定スポットにβ線を照射してそのβ線の透過量を検出することにより、SPMの質量濃度を測定するようにしたβ線吸収方式の浮遊粒子状物質の質量濃度測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上述したと同様な捕集手段を用いて捕集したSPMを加熱炉内に導いて加熱することによりSPM中に含まれる揮発性ガス成分を遊離させ、その遊離された揮発性ガス成分を例えば非分散型赤外線ガス分析計(NDIR)に導入して成分分析するようにしたSPM分析装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−343319号公報
【特許文献2】特開平4−331352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大気中に存在するSPMを適確に解析するにあたっては、SPMの質量濃度測定だけでなく、そのSPM中に含まれている炭化水素系化合物や各種イオン等の成分分析も行い、両者の関連性を解明することが非常に重要である。
【0006】
しかしながら、従来のSPM質量濃度測定装置は、SPMの質量濃度の測定のみに、また、従来の成分分析装置は、SPMを含むその面の成分分析に用いられる各々専用装置であるから、SPMの質量濃度測定と成分分析とは装置的にも時間的あるいは場所的にも別々に行う必要があり、装置全体としてのコストアップが避けられないばかりでなく、SPMの総合的な解析能及び解析精度を高めるためには、両装置間に亘る測定データの転送なども当然必要となり、高い解析精度を実現するには多大な手数及び時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、一連の装置を用いて浮遊粒子状物の質量濃度とそれに含まれる成分分析とを連続的かつリアルタイムに測定して浮遊粒子状物の解析能並びに解析精度の向上を実現することができる浮遊粒子状物測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る浮遊粒子状物測定装置は、大気から吸引されたサンプルガス中に含まれている浮遊粒子状物を捕集する捕集手段と、この捕集手段に捕集された浮遊粒子状物にβ線を照射してそのβ線の透過量を検出することにより浮遊粒子状物の質量濃度を測定するβ線吸収方式の浮遊粒子状物質量濃度測定装置と、質量濃度測定後の前記捕集手段を加熱チャンバーに移行させる手段と、この加熱チャンバーに移行された前記捕集手段を加熱して前記浮遊粒子状物質中の揮発性ガス成分を遊離させる手段と、遊離された揮発性ガス成分を導入して成分分析を行う分析装置と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記のような特徴構成を有する本発明によれば、大気から吸引されたSPMを含むサンプルガス中に含まれ捕集手段に捕集されたSPMは、まずβ線吸収方式のSPM質量濃度測定装置に導入されてその質量濃度が測定された後、移行手段を介して加熱チャンバーに移行され、この加熱チャンバーでの加熱によりSPM中から遊離された揮発性ガス成分が分析装置に導入されてその成分が分析されるといったように、単一かつ一連の装置を用いて、同一箇所から吸引したサンプルガス中のSPMの質量濃度とその中に含まれる成分分析を連続的かつリアルタイムに行うことができる。したがって、SPMの質量濃度測定と成分分析とを各別の専用装置で時間的、場所的に別々に行う必要がなく、装置全体のコストダウンが図れるとともに、測定データの転送なども不要であり、SPMの質量濃度及び成分分析並びに両者の関連情報から総合的にSPMの解析能及び解析精度を高めることができ、また、そのような高精度なSPM解析を非常に効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0010】
本発明に係る浮遊粒子状物質測定装置において、請求項2に記載のように、前記加熱チャンバーと分析装置との間に、加熱チャンバーで遊離された揮発性ガス成分を加熱開始から所定時間経過するまで濃縮し、かつ、一定温度に保温する成分濃縮・保温手段と、その濃縮・保温させた成分を加熱昇温しキャリアガスを用いて前記分析装置に導入する濃縮成分導入手段とを設ける構成とすることが望ましい。この場合は、遊離された揮発性ガス成分を濃縮し保温した後、その高濃度成分を分析に適した温度に昇温して分析装置に一気に導入することが可能であるため、低濃度の成分であっても、非常に高感度、高精度に分析することができる。
【0011】
また、本発明に係る浮遊粒子状物質測定装置において、請求項3に記載のように、前記浮遊粒子状物質の捕集手段が、前記浮遊粒子状物質の質量濃度測定装置及び前記加熱チヤンバーを横断する一定経路に沿って移動可能なテープ状フィルタの移動方向に所定間隔を隔てた箇所に位置決め用のマークを有することが好ましく、さらには、請求項4に記載のように、前記浮遊粒子状物質の捕集手段が、前記浮遊粒子状物質の質量濃度測定装置及び前記加熱チヤンバーを横断する一定経路に沿って移動可能なテープ状フィルタの移動方向に所定間隔を隔てた箇所でフィルタ幅の中心から一側寄りに変位させて形成された浮遊粒子状物質捕集スポットからなり、これら捕集スポットの変位側とは反対側のテープ状フィルタの空白部分に、前記捕集スポットのフィルタ移動方向間隔と同一の間隔を隔てて位置決め用マークを付設した構成とすることが好ましい。
【0012】
これらの場合は、質量重量測定後にSPM捕集手段である捕集スポットをテープ状フィルタの移動により加熱チャンバーに移行させて揮発性ガス成分を加熱遊離させる際、前記位置決め用マークを光学センサなどで検出することによって、捕集スポットを所定の位置に確実、正確にセットすることが可能で、SPM中の揮発性ガス成分を残すことなく全て確実に遊離させることができ、これによって、成分分析精度を一層高めることができる。また、前記位置決め用マークは、成分分析後に捕集スポットの残滓元素を分析するなど捕集スポットを他の測定部に移動させて所定の測定や分析を行うときの正確な位置決めにも有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る浮遊粒子状物質(SPM)測定装置全体の概略縦断面図、図2は同SPM測定装置のブロック構成図であり、このSPM測定装置1は、大気からSPMを含むサンプルガスSGをサンプリングポンプ2を介して吸引するサンプルガスライン3の入口部に、例えば、サンプルガスSGの渦流による遠心分離を利用してSPMを分粒するサイクロン式や、サンプルガスSGの衝突によって小粒径の粒子状物質を選択的にサンプリングするインパクト式(一般にインパクタと呼ばれている)の分粒器4が設けられている。
【0014】
この分粒器4の下流側のサンプルガスライン3には、後述するβ線吸収方式のSPM質量濃度測定装置5と、このサンプルガスライン3中のサンプルガスSGの流量を差圧制御するためのマスフローコントローラ6が設けられているとともに、前記SPM質量濃度測定装置5の側部隣接位置には後述するフィルタ加熱チャンバー7が配置されている。
【0015】
前記SPM質量濃度測定装置5は、図1に示すように、サンプルガスSG中のSPM8を捕集する捕集手段9と、捕集されたSPM8の質量を測定する質量測定手段10とを備えている。前記捕集手段9は、供給リール11と巻取りリール12及び二つの緊張力付与リール13により、前記SPM質量濃度測定装置5及び加熱チャンバー7を横断する水平一定経路に沿って一定時間毎(例えば1時間毎)に所定長さ単位に移動可能に張設されたテープ状フィルタ14にその移動方向に所定の間隔を隔てて形成される捕集スポット(測定スポット)からなり、この捕集スポット9にサンプルガスSGを通過させることにより、サンプルガスSG中のSPM8を捕集させるサンプルガス供給機構15が設けられている。
【0016】
テープ状フィルタ14は、図3に拡大して明示するように、多孔質層14aと補強層14bとを積層した構造であり、多孔質層14aは、フッ素系樹脂、例えば四フッ化エチレン樹脂によって形成された多孔質フィルムよりなり、補強層14bは、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリアミドなどの吸湿性の低い不織布により形成されており、これら多孔質層14aと補強層14bとは、貼付けや縫い付け等の適宜手段により積層一体化されてなり、このテープ状フィルタ14と前記各リール11,12,13とにより前記捕集スポット9をSPM質量濃度測定装置5から加熱チャンバー7へ自動的に移行させる手段を構成している。
【0017】
前記サンプルガス供給機構15は、内部にテープ状フィルタ14を走行させるように構成されたチャンバー15aと、このチャンバー15aに対して一定流量のサンプルガスSGを供給するサンプルガス導入管15bと、前記チャンバー15a内に導入されたサンプルガスSGを外部に導出するサンプルガス導出管15cとを備え、これらサンプルガス導入管15b及びサンプルガス導出管15cが、前述したサンプルガスライン3に接続されている。
【0018】
前記質量測定手段10は、β線吸収方式を用いてテープ状フィルタ14の捕集スポット9に捕集されたSPM8の質量及び濃度を測定するように構成されており、図1に示すように、前記テープ状フィルタ14に形成された捕集スポット9に対してその一方側からβ線を照射するβ線源10aと、捕集スポット9の他方側に配置されて該捕集スポット9を透過したβ線を検出してその強度に応じた信号を出力する、例えば比例計数管よりなるβ線検出器10bとを備えている。この質量測定手段10は、β線検出器10bの検出出力を適宜演算処理することにより、SPM8の質量を算出するとともに、その質量とサンプルガス供給機構15によりチャンバー15aに供給されるサンプルガスSGの流量とによってSPM8の濃度を算出するように構成されている。
【0019】
また、前記フィルタ加熱チャンバー7は、前記テープ状フィルタ14の移動を許容して捕集スポット9を位置決めするチャンバー本体7a内に、N2 ガスボンベ16からN2 ガス供給配管17を経て送給されるキャリアガスとしてのN2 ガスを前記捕集スポット9に対して通過流動させるガス流路7bが形成されているとともに、このガス流路7bの外周全域を取り囲む状態で電熱ヒーターなどの加熱源7cが設けられており、前記SPM質量濃度測定装置5で質量濃度が測定された後、テープ状フィルタ14の移動によりチャンバー本体7a内に移行され位置決めされた捕集スポット9をN2ガス雰囲気中で加熱源7cを介して加熱することにより、前記SPM8中に含まれている揮発性ガス成分を蒸発・遊離させて外部に送り出すように構成されている。なお、加熱源7cは、テープ状フィルタ14の種類によって加熱温度の設定を変更できるように加熱温度の設定をテープ状フィルタ14の種類に応じて選択可能となっている。
【0020】
前記フィルタ加熱チャンバー7のガス流路7bの出口に接続された揮発性ガス取出し配管18の外周も電熱ヒーター等の加熱源18aで取り囲まれて加熱配管に構成されているとともに、この加熱配管18の端部に電磁式三方弁19を介して接続された二つの揮発性ガス配管20a,20bのうち、一方の揮発性ガス配管20aの端部に分析装置21が接続されているとともに、他方の揮発性ガス配管20bの途中には揮発性ガス中の一つの成分である炭化水素系化合物等を吸着し濃縮する吸着剤を封入した濃縮管部24が介在され、かつ、端部には電磁式三方弁22を介してシリンジ23が接続されている。なお、分析装置21としては、赤外スペクトラムから成分を定性分析するFT−IR、水素炎イオン化法(FIA)、ガスクロマトグラフ光イオン化検出法(GC−PID)など各種の分析装置を選択使用することが可能である。
【0021】
前記濃縮管部24の周囲には、該濃縮管部24を常時、約50℃に加温して濃縮成分を一定温度に保温し、かつ、濃縮・保温された成分を前記分析装置21に送給するとき、約250〜300℃に加熱昇温することが可能な加熱源28が設けられている。また、前記N2 ガス供給配管17の途中には電磁式三方弁25を介して分岐N2ガス供給配管26が接続されており、この分岐N2 ガス供給配管26の端部が前記電磁式三方弁22を介して前記揮発性ガス配管20bに接続されている。なお、図中、29は前記分岐N2ガス供給配管26中に介在させた圧力調整器である。
【0022】
次に、上記のように構成されたSPM測定装置1によるSPMの質量濃度及び成分分析の動作について説明する。
【0023】
サンプリングポンプ2の作動に伴い大気から吸引されたSPM8を含むサンプルガスSGは分粒器4内に導入され、この分粒器4によって測定対象外のSPMが排除される。測定対象外のSPMが排除されてサンプルガスライン3に吸引されたサンプルガスSGは、SPM質量濃度測定装置5におけるサンプルガス供給機構15のサンプルガス導入管15bを経てチャンバー15a内に入り、このチャンバー15a内で送り停止されているテープ状フィルタ14の上面側から下面側へと通過した後、サンプルガス導出管15cからチャンバー15aの外部へ導出される。このサンプルガスSGが前記テープ状フィルタ14内を通過する状態を規定時間、例えば1時間〜24時間保つことにより、テープ状フィルタ14に捕集スポット(測定スポット)9が形成される。
【0024】
この捕集スポット9の形成と並行して、そこに捕集されたSPM8の質量及び濃度の測定が行われる。すなわち、SPM質量濃度測定装置5における質量測定手段10のβ線源10aから捕集スポット9に対してβ線を照射して、その捕集スポット9を透過したβ線の強度をβ線検出器10bで検出し、その検出したβ線強度と所定の演算式とを用いて演算を行うことにより、測定対象とするSPM9の質量を算出することが可能であるとともに、その質量とサンプルガス供給機構15によりチャンバー15aに供給されるサンプルガスSGの流量とによってSPM9の濃度を算出することが可能である。
【0025】
上記のようにしてSPM9の質量及び濃度が測定された後は、テープ状フィルタ14の移動により前記捕集スポット9が加熱チャンバー7におけるガス流路7bを横断する位置に位置決めされて停止する。この状態で加熱源7cを作動させて、前記テープ状フィルタ14が本実施例のようにフッ素系樹脂製の場合は100℃程度に、また、ガラス系製の場合は、300〜400℃程度まで捕集スポット9を加熱して該捕集スポット9に捕集されたSPM8中の揮発性ガス成分を蒸発させ遊離させる。以下、前記した規定時間が1時間である場合を例にとって具体的に説明する。
【0026】
加熱初期の5分間は、前記ガス流路7bにキャリアガスであるN2 ガスを供給しないで揮発性ガス成分をSPM8から十分に遊離させる。
【0027】
その後、N2 ガスボンベ16から三方弁25、N2 ガス供給配管17を経てN2ガスを前記加熱チャンバー7のガス流路7bに送給するとともに、シリンジ23を動作させて15分間に60cc程度の揮発性ガス成分を加熱配管18、三方弁19及び揮発性ガス配管20bを通して濃縮管部24内に封入の吸着剤に吸着させて成分濃縮する。このとき、加熱源28も動作させて濃縮成分を約50℃に保温しておく。
【0028】
そして、濃縮・保温後は、前記加熱源28による加熱温度を250〜300℃に一気に上昇させるとともに、前記三方弁25,19及び22を切り換えてN2 ガスボンベ16から分岐N2 ガス供給配管26を経て前記揮発性ガス配管20bの端近くに0.2cc程度のN2ガスを圧送することにより、前記濃縮管部24内に濃縮されていた揮発性ガス成分を揮発性ガス配管20aを通して分析装置21に導入してその成分分析が行われる。
【0029】
なお、上述の成分濃縮時間は、揮発性ガス成分の濃度及び分析装置21の種類によって異なる濃縮度合いに応じて適宜に変更可能であり、特に、低濃度の場合は、濃縮時間を長く設定することが好ましい。
【0030】
また、上記実施の形態では、加熱チャンバー7での加熱によりSPM8から遊離した有機性ガス成分である炭化水素系化合物を分析するために、その揮発性ガス成分を濃縮管部24で濃縮し保温した後、分析装置21に導入するようにしたが、揮発性ガス成分中のイオン、例えばSO4-,NO3- ,Fe+ 等を測定する場合も可能であり、その場合は、加熱チャンバー7で遊離された揮発性ガス成分を濃縮しないで直接に、例えばレーザーTOF−MS等のイオン分析装置に導入してもよい。
【0031】
以上のように、単一かつ一連の測定装置1を用いて、同一箇所から吸引したサンプルガスSG中のSPM8の質量濃度とその中に含まれる成分分析を連続的かつリアルタイムに行うことができるので、SPM8の質量濃度測定と成分分析とを各別の専用装置で時間的、場所的に別々に行う必要がなく、装置全体のコストダウンが図れるとともに、測定データの転送なども不要であり、SPMの質量濃度及び成分分析並びに両者の関連情報から総合的にSPMの解析能及び解析精度を高めることができ、また、そのような高精度なSPM解析を非常に効率よく行うことができる。
【0032】
特に、上記実施の形態で示したように、遊離された揮発性ガス成分を濃縮し保温した後、その高濃度成分を分析に適した温度に昇温して分析装置21に一気に導入するように構成することによって、低濃度の成分であっても、非常に高感度、高精度な成分分析を行うことができる。
【0033】
図4は、本発明に係るSPM測定装置1の他の実施の形態を示す要部の拡大平面図である。この実施の形態では、テープ状フィルタ14の移動方向に所定間隔を隔てて形成される捕集スポット(測定スポット)9をフィルタ14の幅Wの中心CLから一側寄りに変位させた箇所に設定するとともに、この捕集スポット9が変位された側とは中心CLを挟んで反対側の幅広い空白部14aに前記捕集スポット9のフィルタ移動方向間隔Pと同一の間隔P1を隔てて位置決め用マーク30を付設したものである。この位置決め用マーク30は、貫通孔であっても、凹部であっても、インクなどで記したものであってもよい。
【0034】
上記のような位置決め用マーク30を付設したテープ状フィルタ14を用いる場合は、質量重量測定後に捕集スポット9をテープ状フィルタ14の移動により加熱チャンバー7に移行させて揮発性ガス成分を加熱遊離させる際、前記位置決め用マーク30を図1に仮想線で示すように加熱チャンバー7側に設けた光学センサ31で検出することによって、捕集スポット9を所定の位置に確実、正確に位置決め停止(セット)することが可能となり、これによって、SPM8中の揮発性ガス成分を残すことなく全て確実に遊離させることができ、成分分析精度の一層の向上を図ることができる。
【0035】
また、前記位置決め用マーク30は、成分分析後に捕集スポット9のSPM残滓元素を分析するなど捕集スポット9を含むフィルム部分を単位毎に切り離して手で把持し他の測定部に移行させて所定の測定や分析を行うときの位置決めにも有効に利用することができる。特に、捕集スポット9の大きさ(直径)を通常一般に用いられているものよりも少し小さくする場合は、前記空白部14aの面積がそれだけ大きくなるために、捕集スポット9を含むフィルム部分を単位毎に切り離し把持して他の測定部等へ移行するとき、捕集スポット9の一部に手指などを接触させるなどの不都合を招くことなく、その切り離しフィルム部分を容易に移行させることができる。
【0036】
なお、上記実施の形態では、捕集スポット9をテープ状フィルム14に形成し、このテープ状フィルム14の移動により捕集スポット9をSPM質量濃度測定装置5から加熱チャンバー7に連続的かつ直線的に移動可能としたもので説明したが、捕集スポットを有するフィルタをカセット式に構成し、そのフィルタカセットを回転自在なターンテーブルの周方向複数個所に着脱自在に取り付けて各捕集スポットを回転経路に沿って一定中心角度毎に移動可能とし、その回転経路の一部に加熱チャンバーを設けて一連のSPM測定装置1を構成してもよい。
【0037】
また、図4に示す実施の形態では、位置決め用マーク30と捕集スポット9の中心をテープ幅方向に対して一致させた例を示したが、両者の中心をフィルタ移動方向に所定間隔ずらしたものでもよい。
【0038】
さらに、加熱チャンバー7の後段に、SPM残滓元素を測定する装置を配置して、SPMの質量濃度測定と揮発性ガス成分の分析並びに残滓元素の測定を連続的に行えるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る浮遊粒子状物質(SPM)測定装置全体の概略縦断面図である。
【図2】同上SPM測定装置のブロック構成図である。
【図3】図1に一点鎖線で囲んだA部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す要部の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0040】
3 サンプルガスライン
5 SPM質量濃度測定装置
7 加熱チャンバー
8 浮遊粒子状物質(SPM)
9 捕集スポット(測定スポット)
10 SPM質量測定手段
10a β線源
10b β線検出器
14 テープ状フィルタ
14a 空白部分
12a β線源
12b β線検出器
21 分析装置
23 シリンジ
24 濃縮管部
30 位置決め用マーク
SG サンプルガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気から吸引されたサンプルガス中に含まれている浮遊粒子状物質を捕集する捕集手段と、この捕集手段に捕集された浮遊粒子状物質にβ線を照射してそのβ線の透過量を検出することにより浮遊粒子状物質の質量濃度を測定するβ線吸収方式の浮遊粒子状物質質量濃度測定装置と、質量濃度測定後の前記捕集手段を加熱チャンバーに移行させる手段と、この加熱チャンバーに移行された前記捕集手段を加熱して前記浮遊粒子状物質中の揮発性ガス成分を遊離させる手段と、遊離された揮発性ガス成分を導入して成分分析を行う分析装置と、を備えていることを特徴とする浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項2】
前記加熱チャンバーと分析装置との間には、加熱チャンバーで遊離された揮発性ガス成分を加熱開始から所定時間経過するまで濃縮し、かつ、一定温度に保温する成分濃縮・保温手段と、その濃縮・保温させた成分を加熱昇温しキャリアガスを用いて前記分析装置に導入する濃縮成分導入手段とが設けられている請求項1に記載の浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項3】
前記浮遊粒子状物質の捕集手段が、前記浮遊粒子状物質の質量濃度測定装置及び前記加熱チヤンバーを横断する一定経路に沿って移動可能なテープ状フィルタの移動方向に所定間隔を隔てた箇所に位置決め用のークを有する請求項1または2に記載の浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項4】
前記浮遊粒子状物質の捕集手段が、前記浮遊粒子状物質の質量濃度測定装置及び前記加熱チヤンバーを横断する一定経路に沿って移動可能なテープ状フィルタの移動方向に所定間隔を隔てた箇所でフィルタ幅の中心から一側寄りに変位させて形成された浮遊粒子状物質捕集スポットからなり、これら捕集スポットの変位側とは反対側のテープ状フィルタの空白部分には、前記捕集スポットのフィルタ移動方向間隔と同一の間隔を隔てて位置決め用マークが付設されている請求項1または2に記載の浮遊粒子状物質測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−255914(P2007−255914A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77064(P2006−77064)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】