説明

液体吐出ヘッド及びこれを備える液体吐出装置

【課題】配線基板をアクチュエータに安定して接合、コンパクトに取り回せるようにし、アクチュエータから剥がれ難くする。
【解決手段】複数の圧力室及び圧力室に連通する複数のノズルを有する流路ユニットと、その表面に複数の圧力室に対応する複数の電極65が複数配列して設けられたアクチュエータと、アクチュエータの表面を覆い、各電極に対応して設けられた導電性バンプ66を介して接続される配線基板23とを備え、一の列をなす複数の電極70が、当該一の列と隣接する列をなす複数の電極70と千鳥状に配列されており、列方向の末端位置に配置された電極65に対応する前記導電性バンプ66が、圧力室の中心線に対し、該列方向の中央寄りに偏位して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ等のように、液体を吐出する複数のノズルを有した液体吐出ヘッド、及びこれを備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、例えばインクジェットプリンタは、走査方向に往復移動可能なインクジェットヘッドを備え、このインクジェットヘッドのノズルより下方へインクを吐出可能になっている。このインクジェットヘッドの下方では、搬送装置によって用紙等の媒体が走査方向に直交する搬送方向に搬送されるようになっており、インクをこの媒体に着弾させることによって媒体に画像が記録される。
【0003】
インクジェットヘッドは、一方向に配列されたノズル列とこれに対応する圧力室列とを有した流路ユニットに、圧電式のアクチュエータを上側から重ねて接着されて構成されている。アクチュエータ内には各圧力室に対応する電極が設けられており、この電極に選択的に電圧を印加すると対応する圧力室内のインクに吐出圧力が付与され、このインクが対応するノズルより外部に吐出される。アクチュエータの上面には各電極と導通した表面電極が設けられており、アクチュエータには、上側から可撓性を有した配線基板が重ねて配置される。このとき、表面電極は、導電性バンプを介して配線基板の下面に露出する端子と導通される。これにより配線基板を介してアクチュエータの電極に電圧を印加可能となる。また、配線基板はアクチュエータに機械的にも接続される。この接合時には、例えば、表面電極上または配線基板の端子に設けた導電性バンプを加熱溶融して再固化させる工法や、所謂カバーコート工法(特許文献1参照)や、接着剤等を用いる工法等が利用されるが、何れにせよ配線基板の上側から面ヒータ等で加熱する工程が行われる。このようにして配線基板の下面はアクチュエータの上面から離れて配置され、配線基板とアクチュエータとは各導電性バンプの設置箇所を接合ポイントとして互いに接合されている。
【0004】
近年、単一のインクについて、複数の圧力室列及び複数のノズル列を並べて配置したインクジェットヘッドが提案されている(特許文献2参照)。このインクジェットヘッドによれば、各ノズル列をなすノズル群が千鳥状に配列され、各圧力室列をなす圧力室群も同様にして千鳥状に配列される。これにより各ノズル列をなすノズル群全体の解像度を向上させることができる。
【0005】
図8は従来のインクジェットヘッド501の一例としての部分平面図である。図8に示すように、アクチュエータ502の表面上には複数の表面電極503が複数列配列されている。表面電極503は、ノズルの高密度化にともない、圧力室(図示せず)の略直上に配置されて圧力室と同様に千鳥状に配列されている。つまり、各列をなす表面電極503は配列方向に少しずつずれて整列され、配列方向と直交方向には同じ位置に整列されていない。このため、図示例では、左端の列内で配列方向一方側の末端位置にある電極503aが、全ての電極のうちで最もアクチュエータ502の一方側の外周端に近接して配置され、右端の列内で配列方向他方側の末端位置にある電極503bが、全ての電極のうちでアクチュエータ502の他方側の外周端に最も近接して配置されている。
【0006】
各表面電極503は、圧力室と同程度の大きさの矩形状に形成されたベース部504と、ベース部504から電極の配列方向と直交方向に細く突出する端子部505とを有している。配線基板507は図示しない複数の端子を有し、この端子と端子部505とが導電性バンプ506を介して接合される。そして、配線基板508には、アクチュエータ502に対して外側に引き出されて外部機器と接続される引出部508が形成され、図8に示す例ではその引出方向が表面電極503の配列方向に向けられている。
【特許文献1】特開2005−305847号公報
【特許文献2】特開2008−37099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示す表面電極503の端子部505は、ベース部504の配列方向に関する中心線上(つまり、対応する圧力室の配列方向に関する中心線上)に形成され、千鳥状に隣接する2列の表面電極503の端子部505は、互いに向き合うように内側に突出し、その端子部505の端部に導電性バンプ506が配され、導電性バンプ506もノズルや圧力室と同様に千鳥状に配列されている。
【0008】
このような表面電極503を有するアクチュエータ502と接合する配線基板507は、左端列内の一方側末端位置にある表面電極503aに対応する導電性バンプ506aと、右端列内の他方側末端位置にある表面電極503bに対応する導電性バンプ506bとの間の距離L′だけ引出方向の寸法を確保する必要が生じる。この距離L′は、ある一つの列の表面電極列をなすために必要な寸法Lに比べて長い。この距離L′が長くなると、接合時に利用する面ヒータが配列方向に大型でなければならない。面ヒータによる加熱は、配線基板に対して必ずしも均一に加熱できない場合があり、その接合領域が増えると温度ムラが顕著になりやすい。例えば、面ヒータの加熱面内では、内側領域よりも外側領域が空間に熱が放熱されやすく、必ずしも均一な温度分布にはならず、配線基板を均一に加熱することが難しくなり、安定してアクチュエータに接合することが困難となるおそれがある。そのため、接合を安定に行うために、面ヒータの放熱領域を考慮してヒータ面がさらに大きくなってしまったり、ヒータの加熱時間や加熱温度を上げるなどして熱を多く与えるようにすることで、逆にアクチュエータや配線基板に熱影響が及んだりするなどしてしまう。
【0009】
また、引出部508は、外部機器との取り回しのために上側に折り曲げられることがある。このとき、引出方向のうち引出部508が形成されている側の末端位置に配置される電極に対応した導電性バンプ(図8ではバンプ506a)が、アクチュエータ502に対して最も外周端にあるため、この折り曲げの起点となる。上記のように端子部505が形成されることにより、アクチュエータ502の外周端からこの導電性バンプ506aまでの距離が小さくなっているため、引出部508を折り曲げたときに、アクチュエータ502に対して外側にはみ出す長さが大きくなるおそれがある。つまり、配線基板507をコンパクトに取り回すことが困難となるおそれがある。
【0010】
更に、引出部508は、配線基板507とアクチュエータ502との接合後に次の組立工程へ搬送する際に掴み上げることがあり、また、この引出部508に対して次の組立工程で作業がなされることがある。この掴み上げ時や作業時には、各列の表面電極503のうち引出方向のうち引出部508が形成されている側の末端位置に配置された電極に対応した導電性バンプ506に、重力や応力等の荷重が負荷される。しかしながら、上記末端位置に配置された各列表面電極503の導電性バンプ506が千鳥状に配列されて引出方向と直交方向には同じ位置に整列されていないため、引出方向に関しアクチュエータ502に対して最も外周端にある単一の導電性バンプ506aに荷重が集中的に負荷される。このため、配線基板507がアクチュエータ502から剥がれやすくなる可能性があり、組み立てられたインクジェットヘッドに電気的な不具合が生じるおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、配線基板をアクチュエータに安定して接合可能にすることを目的としており、更には、配線基板をコンパクトに取り回せるようにすること、及び配線基板をアクチュエータから剥がれ難くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る液体吐出ヘッドは、複数の圧力室及び前記圧力室に連通する複数のノズルを有する流路ユニットと、その表面に前記複数の圧力室に対応する複数の電極が複数配列して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータの表面を覆い、前記各電極に対応して設けられた導電性バンプを介して接続される配線基板と、を備える液体吐出ヘッドであって、前記電極の前記複数の配列は、その一の列をなす複数の電極が、当該一の列と隣接する列をなす複数の電極と千鳥状に配列され、列方向の末端位置に配置された前記電極に対応する前記導電性バンプが、前記圧力室の中心線に対し、該列方向の中央寄りに偏位して設けられていることを特徴としている。
【0013】
このような構成とすることにより、少なくともアクチュエータの外周端に最も近接する電極が中央寄りに偏位しているので、外周端から導電性バンプが設置されている部分までの距離を大きくすることができ、配線基板のうち導電性バンプと接触する部分の面積を、配列方向に小型化することができる。これにより、ヒータにより均一に加熱しやすくなり、配線基板をアクチュエータに安定して接合させることができるようになる。また、ヒータの大型化や熱を過剰にかける必要がなくなる。
【0014】
前記配線基板は可撓性を有し、前記アクチュエータの表面に対して前記列方向の少なくとも一方側に引き出されていてもよい。このような構成とすることにより、配線基板の引き出し部分を折り曲げる際に、その起点がアクチュエータの中央寄りに偏位する。従って、配線基板がアクチュエータの外周端よりも外側に撓んで折り曲げることを抑制できるためコンパクトに取り回すことができる。このとき、前記配線基板が、前記アクチュエータの表面に対して前記列方向の両側に引き出されていてもよい。このような構成とすることにより、配線基板の配線数が増えたり配線ピッチが高密度化するなど、配線の引き回しの都合で配線基板が両側に引き出されているような場合でも、両側に引き出された引出部を折り曲げる際に両方ともコンパクトに取りまわすことができる。
【0015】
前記複数の列のうち、相互に千鳥配列をなす2列における列方向の末端位置に配置された電極の夫々に対応して設けられた複数の前記導電性バンプのうち少なくとも2つが、前記列方向に関して同じ位置に設けられていてもよい。このような構成とすることにより、配線基板の引き出されている部分が折り曲げられたとき、折り曲げの起点部分に作用する荷重が、配列方向に関して同じ位置に設けられた2つ以上の導電性バンプによって支持されることとなる。このため、配線基板がアクチュエータから剥がれ難くなる。
【0016】
前記末端位置に配置された電極の夫々に対応して設けられた複数の前記導電性バンプが前記列方向に関してすべて同じ位置に設けられていてもよい。このような構成とすることにより、アクチュエータの外周端から導電性バンプまでの距離を最も短くすることができ、配線基板においてアクチュエータと接合するために確保すべき領域の面積を小さくすることができ、配線基板とアクチュエータとの接合を安定して行わせることができる。また、引き出されている部分が折り曲げられたときも、導電性バンプが同じ位置にすべて設けられているため荷重が均一に加わり、配線基板がアクチュエータから剥がれにくくなる。
【0017】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上記液体吐出ヘッドを備えることを特徴としており、これにより上記同様の作用効果を生じる液体吐出装置を提供することができる。このとき、前記液体吐出ヘッドを所定の走査方向に走査する走査装置と、前記液体吐出ヘッドより吐出される液体を着弾させるための媒体を前記走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送装置とを備え、前記列方向が前記搬送方向と平行であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、配線基板をアクチュエータに安定して接合することができ、配線基板をコンパクトに取り回すことができ、配線基板をアクチュエータから剥がれ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る液体吐出装置の実施形態としてインクジェットプリンタを例示し、本発明に係る液体吐出ヘッドの実施形態として例示しており、これら本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概要構成を平面視で示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、略水平の走査方向に延在する一対のガイドレール2,3を備え、これらガイドレール2,3にキャリッジ4が支持されている。
【0021】
インクジェットプリンタ1は、キャリッジ4を走査方向に往復移動させるための走査装置5を備えている。走査装置5はガイドレール3の各端部に設けられたプーリ6,7と、これらプーリ6,7の間に巻き掛けられたベルト8とを備えており、ベルト8がキャリッジ4と固定されている。一方のプーリ6には、走査用のモータ9の回転駆動力が入力されるようになっている。この走査装置5によれば、モータ9が駆動されるとプーリ6が回転してベルト8が周回し、キャリッジ4がガイドレール2,3に沿って走査方向にスライドする。
【0022】
インクジェットプリンタ1にはカートリッジ装着部10が設けられており、このカートリッジ装着部10には例えば4つのインクカートリッジCが着脱交換自在に装着される。各インクカートリッジCには互いに異なる色(例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクが貯留されている。インクカートリッジCがカートリッジ装着部10に装着されると、インクカートリッジC内のインクがインク供給チューブ11を介してキャリッジ4に搭載されたインクジェットヘッド20に供給される。インクジェットヘッド20は、インクカートリッジCから供給されたインクを下向きに吐出可能に配設されている。
【0023】
キャリッジ4の下方では、被記録媒体である用紙Mが搬送機構12によって走査方向と直交する略水平の搬送方向に搬送されるようになっている。搬送機構12は、ガイドレール2,3に対して搬送方向上流側と下流側とに夫々配置されている。
【0024】
インクジェットプリンタ1は、キャリッジ4を移動させながらインクをインクジェットヘッド20よりインクを下向きに吐出し、吐出したインクを搬送機構12によって搬送されている用紙Mに着弾させることにより、用紙Mにフルカラー画像又はモノクロ画像を記録する。ここでは、インクカートリッジCからインクジェットヘッド20にインクを供給する方式として所謂チューブ供給方式を採用したインクジェットプリンタ1を例示したが、本発明に係るインクジェットヘッド20はその他の方式を採用したインクジェットプリンタにも好適に適用することができる。
【0025】
図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1に搭載された本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド20の分解斜視図である。なお、以下のインクジェットヘッド20の説明においても、自身からのインク吐出方向を「鉛直下方」、その反対側を「鉛直上方」としている。水平面内の方向については、便宜的にインクジェットプリンタのキャリッジに搭載された状態を基準にし、電極やノズルの配列方向に対応する水平面内の一方向を「搬送方向」、この一方向に直交する方向を「走査方向」として説明している。搬送方向に関して図2右上側を「上流側」、図2左下側を「下流側」とし、走査方向に関して図2右下側を「一方側」、図2左上側を「他方側」としている。
【0026】
図2に示すように、インクジェットヘッド20は、複数枚のプレートが積層された流路ユニット21と、流路ユニット21に対して上側から重ねて接着される圧電式のアクチュエータ22とを備えている。アクチュエータ22の上面には表面電極24が形成され、外部機器と電気的接続を行うための配線基板23が上側から重ねて接合される。この配線基板23の下面側には図示しない端子が露出しており、接合時にこの端子がアクチュエータ22の表面電極24に電気的に導通される。アクチュエータ22は、流路ユニット21よりも外形状が小さく、流路ユニット21の後述するインク流入口26を露出させた状態で流路ユニット21に対して接着されている。
【0027】
配線基板23は帯状の樹脂フィルムから形成されて可撓性を有しており、その搬送方向下流側の領域には上記の図示しない端子が設けられている。この搬送方向下流側の領域がアクチュエータ22の電極と接合されており、配線基板23はアクチュエータ22に対して搬送方向上流側に引き出されている。この引出部23aにはアクチュエータ22に印加される電圧を出力するドライバ25が実装されており、配線基板23及びドライバ25は所謂チップオンフィルム(COF)の形態をなしている。なお、配線基板23には図示しない配線が配設され、ドライバ25と上記の端子とはこの配線で接続されている。
【0028】
流路ユニット21の上面には4個のインク流入口26が形成されている。各インク流入口26は、流路ユニット21の搬送方向下流側に配置され、走査方向に互いに間隔をおいて並んでいる。各インク流入口26はインクカートリッジC(図1参照)に接続され、各インクカートリッジC内のインクが対応するインク流入口26に供給されるようになっている。流路ユニット21の上面には各インク流入口26を覆うフィルタ27が設けられており、このフィルタ27で濾過されたインクが各インク流入口26を通過する。
【0029】
各インク流入口26は、インク流路40(図3及び図4参照)を介し、流路ユニット21の下面に開口するノズル41(図3及び図4参照)に連通している。このため、流路ユニット21には、互いに独立した4系統のインク流路40が形成されることとなる。
【0030】
また、流路ユニット21の上面には多数の圧力室孔28が形成されている。各圧力室孔28は、走査方向が長手方向となる矩形状に形成され、アクチュエータ22の下面で塞がれることによりインク流路40(図3及び図4参照)の一部である圧力室45(図3及び図4参照)を構成する。
【0031】
これら多数の圧力室孔28は、搬送方向に配列された複数の圧力室孔群29を形成している。これら圧力室孔群29はインク流路40(図3及び図4参照)の各系統に対応して設けられており、本実施形態では4つの圧力室孔群29が設けられている。
【0032】
より詳しくは、走査方向一方側の端部に配置される圧力室孔群29は、第1乃至第6圧力室孔列30a,30b,30c,30d,30e,30fを有している。各圧力室孔列30a〜30fは、複数の圧力室孔28が搬送方向に等間隔をおいて配列されて構成され、走査方向に並んで配置されている。
【0033】
各圧力室孔列30a〜30fをなす圧力室孔28は千鳥状に配列されている。つまり、第1圧力室列30aをなす圧力室孔28に対して搬送方向上流側に所定間隔B(図5参照)をおいて第3圧力室孔列30cをなす圧力室孔28が配置され、この第3圧力室孔列30cをなす圧力室孔28に対して搬送方向上流側に同じ間隔をおいて第5圧力室孔列30eをなす圧力室孔28が配置され、この第5圧力室孔列30eをなす圧力室孔28に対して搬送方向上流側に同じ間隔をおいて第2圧力室孔列30bをなす圧力室孔28が配置され、この第2圧力室孔列30bをなす圧力室孔28に対して同じ間隔をおいて第4圧力室孔列30dをなす圧力室孔28が配置され、この第4圧力室孔列30dをなす圧力室孔28に対して同じ間隔をおいて第6圧力室孔列30fをなす圧力室孔28が配置されている。更にこの第6圧力室孔列30fをなす圧力室孔28に対して同じ間隔をおいて、第1圧力室孔列30aをなす圧力室孔のうち上述の圧力室孔と隣接する圧力室孔28が配置されている。この配置関係が搬送方向に関して連続し、これにより6列をなす複数の圧力室孔28の千鳥配列が実現される。
【0034】
また、これ以外の各圧力室孔群29は、第1乃至第4圧力室孔列31a,31b,31c、31dを有している。各圧力室孔列31a〜31dは、複数の圧力室孔28が搬送方向に等間隔をおいて配列されて構成され、走査方向に並んで配置されている。
【0035】
各圧力室孔列31a〜31dをなす圧力室孔28は千鳥状に配列されている。つまり、第1圧力室孔列31aをなす圧力室孔28に対して搬送方向上流側に所定間隔F(図5参照)をおいて第3圧力室孔列31cをなす圧力室孔28が配置され、この第3圧力室孔列31cをなす圧力室孔28に対して搬送方向上流側に同じ間隔をおいて第2圧力室孔列31bをなす圧力室孔28が配置され、この第2圧力室孔列31bをなす圧力室孔28に対して搬送方向上流側に同じ間隔をおいて第4圧力室孔列31dをなす圧力室孔28が配置されている。さらに、この第4圧力室孔列31dをなす圧力室孔28に対し、第1圧力室孔列31aをなす圧力室孔28のうち上述の圧力室孔と隣接する圧力室孔28が、搬送方向上流側に同じ間隔をおいて配置されている。この配置関係が搬送方向に関して連続し、これにより4列をなす複数の圧力室孔28の千鳥配列が実現される。
【0036】
図3は図2に示すインクジェットヘッド20を組み立てた状態として図2のIII−III線に沿って切断して示すインクジェットヘッド20の部分断面図、図4は図3に示すIV−IV線に沿って示すインクジェットヘッド20の底面図であって、流路ユニット21に形成されるインク流路40を底面側から投影して示す図である。
【0037】
図3に示すように、流路ユニット21は、上から順に、圧力室プレート32、第1接続流路プレート33、第2接続流路プレート34、第1マニホールドプレート35、第2マニホールドプレート36、ダンパープレート37、カバープレート38、及びノズルプレート39が積層接着された構成となっている。ノズルプレート39はポリイミド等の樹脂シートであり、それ以外の各プレート32〜38は42%ニッケル合金(42合金)やステンレス等から形成された金属板であり、各々50〜150μm程度の肉厚を有している。圧力室プレート32により本発明に係る圧力室層が構成され、第1及び第2接続流路プレート33,34により接続流路層が構成され、第1及び第2マニホールドプレート35,36により本発明に係るマニホールド層が構成されている。各層を構成するプレートの枚数は1枚でも2枚でもよく、それ以上の枚数のプレートから各層から構成されていてもよい。
【0038】
各プレート32〜39には、電解エッチング、レーザ加工、プラズマジェット加工等によって開口や凹部が形成されている。各プレート32〜39が積層されるとこれら開口や凹部が互いに連通し、流路ユニット21には上面に形成されるインク流入口26(図2参照)と下面に開口するノズル41とを連通するインク流路40が形成される。インク流入口26は最上層の圧力室プレート32に形成され(図2参照)、ノズル41は最下層のノズルプレート39に形成されている(図3及び図4参照)。
【0039】
図3及び図4に示すインク流路40は、上流側から順にインク導入流路42、共通インク室43、接続流路44、圧力室45、及びディセンダ46を有している。
【0040】
インク導入流路42は、図4に示すように、平面視でインク流入口26に重なるように形成される。図3ではこの流路の図示を省略するが、第1及び第2接続流路プレート34,35を貫通して形成されてインク流入口26の直下に配置される貫通孔(図示せず)によってインク導入流路42が構成されている。
【0041】
図3に示すように、圧力室45は、圧力室プレート32に貫通形成された圧力室孔28の上下開口がアクチュエータ22の下面と第1接続流路プレート33の上面とで閉鎖されることによって構成されている。このため、図4に示すように、圧力室45は、圧力室孔28(図1参照)と同様にして千鳥状に配列されている。つまり、走査方向一方側において、第1乃至第6圧力室孔列30a〜30fが構成する圧力室45により第1乃至第6圧力室列52a,52b,52c,52d,52e,52fが形成され、その他の部位において、第1乃至第4圧力室孔列31a〜31dが構成する圧力室45により第1乃至第4圧力室列53a,53b,53c,53dが形成されている。
【0042】
図3に示すように、共通インク室43は、第1及び第2マニホールドプレート35,36にそれぞれ貫通形成されて互いに上下に連通する第1及び第2マニホールド孔35a,36aの上下開口が第2接続流路プレート34の下面とダンパープレート37の上面とで閉鎖されることによって構成され、共通インク室43の底壁はダンパープレート37によって構成されている。このダンパープレート37の下面側はマニホールド孔36aの下側開口と上下に対応する箇所においてハーフエッチング加工され、これによりダンパープレート37には下面に開口する凹部37aが形成されている。この凹部36aの下側開口がカバープレート37の上面で閉鎖されることにより、共通インク室43の底壁は上下に弾性変形可能なダンパー壁37bとして機能する。
【0043】
図4に示すように、共通インク室43は、圧力室45が配列される搬送方向に延在している。共通インク室43の搬送方向下流側の端部はインク導入流路42を構成する貫通孔が形成されている位置まで達しており、共通インク室43の端部はインク導入流路42の下流端と連通している。
【0044】
また、単一のインク流入口26に対して複数の共通インク室43が設けられている。より具体的には、6列の圧力室45が形成された走査方向一方側に配置されたインク流入口26には3本の共通インク室43が走査方向に並んで配置され、それ以外の各インク流入口26には2本の共通インク室43が走査方向に並んで配置されている。各共通インク室43は、隣り合う2列の圧力室45にインクを分配するため、対応する2列の圧力室45に平面視で跨るよう配置されている。
【0045】
図3に示すように、接続流路44は各圧力室45に個別に設けられ、図4ではこの流路の図示を省略するが、複数の接続流路44が共通インク室43の延在方向であり圧力室45の配列方向である搬送方向に並んで形成されている。接続流路44は、第2接続流路プレート34に貫通形成された貫通孔34aと、第1接続流路プレート33の下面に開口する凹溝33aと、第1接続流路プレート35に貫通形成された貫通孔33bとによって構成されている。貫通孔34aの下側開口は第1マニホールド孔35aの上側開口と連通し、貫通孔34a上側開口は凹溝33aの下側開口に連通している。貫通孔33bは下側において凹溝33aに連通し、貫通孔33bの上側開口は圧力室孔28の下側開口に連通している。このようにして共通インク室43と圧力室45との間を連通させる接続流路44が形成されている。
【0046】
図3に示すように、ディセンダ46は各圧力室45に個別に設けられ、第1接続流路プレート33に形成された貫通孔33c、第2接続流路プレート34に形成された貫通孔34b、第1マニホールドプレート35に形成された貫通孔35b、第2マニホールドプレート36に形成された貫通孔36b、ダンパープレート37に形成された貫通孔37c、及びカバープレート38に形成された貫通孔38aが互いに上下に連通することによって構成されている。第1接続流路プレート33に形成された貫通孔33cは、圧力室45の下側開口に連通し、カバープレート38の貫通孔38aはノズルプレート39に貫通形成されたノズル41の上側開口に連通している。
【0047】
図4に示すように、ノズル41は圧力室45に個別に対応して設けられ、これら複数のノズル41は圧力室45と同様にして千鳥状に配列されている。つまり、複数のノズル41は、走査方向一方側において、第1乃至第6圧力室列52a〜52fに夫々対応する第1乃至第6ノズル列48a,48b,48c,48d,48e,48fを形成し、その他の部位において、第1乃至第4圧力室列53a〜53dに夫々対応する第1乃至第4ノズル列49a,49b,49c,49dを形成している。
【0048】
図5は図4の部分拡大図である。図5に示すように、各圧力室45の搬送方向に関する中心線と、対応するノズル41の搬送方向に関する中心線とは一致するように配置されている。
【0049】
走査方向一方側に配置された第1乃至第6ノズル列48a〜48fをなす複数のノズル41(49a,49b,49c,49d,49e,49f)に着目する。第1ノズル列47aをなすノズル49aの中心線A1(すなわち第1圧力室列52aをなす圧力室50aの中心線)と、第3ノズル列47cをなすノズル49cの中心線A3(すなわち第3圧力室列52cをなす圧力室50cの中心線)との間の距離Bは、第1乃至第6ノズル列47a〜47fをなすノズル群の解像度を規定する。同様に、中心線A3と中心線A5との間の距離、中心線A5と中心線A2との間の距離、中心線A2と中心線A4との間の距離、中心線A4と中心線A6との間の距離、中心線A6と中心線A1との間の距離もBとなっている。つまり、同一の共通インク室43からインクが分配供給される隣接する2つのノズル列をなすノズルの各中心線の相互間距離Cは、解像度を規定する距離Bの3倍となっており、同じ列内の隣接するノズル41の各中心線の相互間距離Dはこの距離Bの6倍となっている。
【0050】
第1乃至第4ノズル列49a〜49dをなす複数のノズル41(51a,51b,51c,51d,51e,51f)に着目する。第1ノズル列49aをなすノズル51aの中心線E1(すなわち第1圧力室列53aをなす圧力室52aの中心線)と、第3ノズル列49cをなすノズル51cの中心線E3(すなわち第3圧力室列53cをなす圧力室51cの中心線)との間の距離Fは、第1乃至第6ノズル列49a〜49fをなすノズル群の解像度を規定する。同様に、中心線A3と中心線A2との間の距離、中心線A2と中心線A4との間の距離、中心線A4と中心線A1との間の距離もFとなっている。つまり、同一の共通インク室43からインクが分配供給される隣接する2つのノズル列をなすノズルの各中心線の相互間距離Gは、解像度を規定する距離Fの2倍となっており、同じ列内の隣接するノズルの各中心線の相互間距離Hはこの距離Fの4倍となっている。
【0051】
このように単一のインクに対し、複数の圧力室列及びノズル列を設け、このように設けられる複数の圧力室及びノズルを千鳥状に配列することにより、同じ列内の圧力室同士やノズル同士の間隔を所望の解像度に対して大きく確保することができ、結果としてインクジェットヘッドの解像度を向上させることができる。また、隣接する列をなす圧力室同士やノズル同士の間隔も所望の解像度に対して大きく確保することができ、解像度の低下を抑えつつ接続流路を無理なくレイアウトすることができる。
【0052】
この流路ユニット21によると、インク流入口26を通過したインクは、インク導入流路42を通って各共通インク室43に流入し、各共通インク室43内のインクは、接続流路44を介して該共通インク室43に対応する2列の圧力室45に分配供給される。各圧力室45内のインクは、ディセンダ46を介して対応するノズル41に供給される。
【0053】
図3に戻り、アクチュエータ22は、1枚の厚さが略30μm程度のチタン酸ジルコン酸鉛(PXT)のセラミックス材料からなる多数枚の圧電シート55〜60と、絶縁性を有するトップシート61とが上下に積層接着された構成となっている。各圧電シート55〜60のうち下から数えて奇数番目の圧電シート55,57,59の上面には、圧力室45の全てに対応して連続配置された共通電極62が印刷形成され、各圧電シート55〜60の下から数えて偶数番目の圧電シート56,58の上面には各圧力室45に個別に対応して配置された複数の個別電極63が印刷形成されている。共通電極62は、圧電シート55〜60及びトップシート61に設けられた中継配線(図示せず)を介してトップシート61の上面に印刷形成された表面電極24のうちの共通用表面電極64(図1及び図6参照)に導通されている。各個別電極63も同様の中継配線(図示せず)を介して表面電極24のうち個別用表面電極65(図1,図6及び図7も併せて参照)に導通されている。これら表面電極24の配置については後述する。
【0054】
図3には個別用表面電極65に関する構成のみ示されているが、共通用表面電極64(図1及び図7参照)及び個別用表面電極65の上面には、導電性バンプ66が設置される。上述した配線基板23の下面に形成された図示しない端子をこの導電性バンプ66に接触させることにより、配線基板23上の配線と各表面電極24とが電気的に導通する。配線基板23をアクチュエータ22に対して接合するための手法は特に限定されず、導電性バンプ66を溶融させる手法を用いてもよいし、所謂カバーコート工法を利用してもよい。この工法については、特開2005−305847号公報に開示されており、ここでの詳細な説明を省略する。また、導電性バンプ66は表面電極24上に設けてもよいし、配線基板23の端子上に設けてもよい。いずれの手法を利用するにせよ、配線基板23の下面はアクチュエータ22の上面と離間するよう配置され、配線基板23とアクチュエータ22とは、導電性バンプ66の設置箇所において互いに上下に接合された状態となっている。
【0055】
上記構成のインクジェットヘッド20は、流路ユニット21の圧力室とアクチュエータ22の個別電極とが位置合わせされた状態で接合され、さらに配線基板23と接合されてなる。このインクジェットヘッド20において、配線基板23を介してアクチュエータ22の個別電極63に選択的に電圧が印加されると、この個別電極63と共通電極62との間には電位差が生じ、これら電極62,63間に位置する圧電シート55〜60の活性部が略積層方向に歪み変形する。この活性部の変形により、電圧が印加された個別電極63に対応する圧力室45に圧力波が作用し、圧力が付与されたインクがディセンダ46を通ってノズル41より下方に噴射される。このとき圧力室45に作用した圧力波には、ノズル41へ向かう前進成分だけでなく接続流路44を介して共通インク室43へ向かう後退成分も含んでいる。共通インク室43へ伝播した圧力波の後退成分は、ダンパー壁37bの弾性変形により吸収され、圧力室45で発生した圧力波の後退成分が共通インク室43を介して他の圧力室45に伝播する所謂クロストーク現象が防止される。
【0056】
図6は図2のVI−VI線に沿って示すインクジェットヘッド20の平面図である。図6に示すようにアクチュエータ22の上面には上記表面電極24が印刷形成されている。共通用表面電極64は、アクチュエータ22の上面の走査方向各辺縁に沿って搬送方向に延在している。複数の個別用表面電極65は、圧力室孔28(図1参照)や圧力室45(図4参照)やノズル41(図4参照)と同様にして千鳥状に配列されている。つまり、複数の個別用表面電極65は、それぞれ搬送方向に配列された複数の電極列を形成している。走査方向一方側においては、第1乃至第6圧力室孔列30a〜30fに対応する第1乃至第6電極列67a,67b,67c,67d,67e,67fが形成され、各電極列67a〜67fをなす複数の個別用表面電極65は千鳥状に配列されている。また、その他の部位においては、第1乃至第4圧力室孔列31a〜31dに対応する第1乃至第4電極列68a,68b,68c,68dが形成され、各電極列68a〜68dをなす複数の個別用表面電極65は千鳥状に配列されている。
【0057】
図7は図6の部分拡大図であり、第1乃至第6電極列67a〜67fに関し、配列方向両側の各末端位置の近傍に配置された個別用表面電極65を示している。
【0058】
各個別用表面電極65は、圧力室45(図4参照)の直上に配置されて圧力室孔45と同様にして長手方向を走査方向に向けた矩形状のベース部65aと、ベース部65aから細く延びて形成された端子部65bとを有している。つまり、ベース部65aの配列方向に関する中心線は、直下に配置されている圧力室45の配列方向に関する中心線であってノズル41の配列方向に関する中心線と平面視でほぼ重なっている。
【0059】
ベース部65aには上述の図示しない中継配線が接続されている。端子部65bには、配線基板23の図示しない端子と導通するためであって配線基板23をアクチュエータ22に接合するための導電性バンプ66が設置される。端子部65bは、隣接する第1及び第2電極列67f,67eの内側に互いに向き合って延びて配置され、その他の部位においても同様にして配置されており、これにより個別用表面電極65がコンパクトに配置されている。
【0060】
ここで、図6及び図7において、第1電極列67aにおける配列方向の一方側(ここでは搬送方向上流側)の末端位置に配置された個別用表面電極に符号69aを付し、第2乃至第6電極列67b〜67fにおいて同様位置に配置された各個別用表面電極に符号69b,69c,69d,69e,69fを付しており、第1電極列67aにおける配列方向の他方側(ここでは搬送方向下流側)の末端位置に配置された個別用表面電極に符号70aを付し、第2乃至第6電極列67b〜67fにおいて同様位置に配置された各個別用表面電極に符号70b,70c,70d,70e,70fを付しており、以下ではこれら符号も適宜参照して説明する。また、個別用表面電極65の配列方向は搬送方向に平行であるが、配線基板23の引出方向はこの搬送方向に向けられている。配線基板23の引出部23aは搬送方向上流側であって配列方向一方側に引き出されている。
【0061】
第1乃至第6電極列67a〜67fの各々において配列方向一方側の末端位置に配置された6つの個別用表面電極69a〜69fに着目する。アクチュエータ22の配列方向一方側(搬送方向上流側)の外周端から各電極69a〜69fのベース部65aまでの距離を比較すると、第6電極列67fの電極69fが最も近く、第4電極列67dの電極69d、第2電極列67bの電極69b、第5電極列67eの電極69e、第3電極列67cの電極69c、第1電極列67aの電極69aの順で遠くなる。
【0062】
この第6電極列67fの一方側末端位置に配置された個別用表面電極69fは、端子部65bの配列方向に関する中心線Mがベース部65aの配列方向に関する中心線N3に対してアクチュエータ22の中央寄りに偏位している。したがって、アクチュエータ22の配列方向一方側の外周縁から、この外周縁に対して最も近接した位置に設置される導電性バンプ66までの距離Kが、図8に示す従来構造のようにベース部の中心線と端子部の中心線とを一致させた場合と比べて大きくなる。
【0063】
また、第6電極列67fに次いでアクチュエータ22の外周縁に近接している第4電極列67dの個別用表面電極69dと、この第4電極列67dに次いでアクチュエータ22の外周縁に近接している第2電極列67bの個別用表面電極69bにおいては、各端子部65bの中心線が自身のベース部65aの中心線N2,N1と一致しておらず、第6電極列67fの一方側末端位置の個別用表面電極69fの端子部65bの中心線Mと一致している。このように中心線Mを揃えるため、第2及び第4電極列67b,67dの一方側末端位置の個別用表面電極69b,69dの端子部65bの中心線Mは、自身のベース部65aの中心線N1,N2に対してアクチュエータ22の外側寄りに偏位して配置されている。
【0064】
次に、第1乃至第6電極列67a〜67fの各々において配列方向の他方側の末端位置に配置された6つの個別用表面電極70a〜70fに着目する。アクチュエータ22の配列方向他方側(搬送方向下流側)の外周端から各電極70a〜70fまでの距離を比較すると、第1電極列67aの電極70aが最も近く、第3電極列67cの電極70c、第5電極列67eの電極70e、第2電極列67bの電極70b、第4電極列67dの電極70d、第6電極列67fの電極70fの順で遠くなる。この第1電極列67aの他方側末端位置に配置された個別用表面電極70aは、端子部65bの配列方向の中心線Pが、ベース部65aの配列方向に関する中心線Q1に対し、アクチュエータ22の中央寄りに偏位している。したがって、アクチュエータ22の配列方向他方側の外周縁から、この外周縁に対して最も近接した位置に設置される導電性バンプ66までの距離Kが、図8に示す従来構造のようにベース部の中心線と端子部の中心線とを一致させた場合と比べて大きくなる。
【0065】
また、第1電極列67aに次いでアクチュエータ22の外周縁に近接している第3電極列67cの個別用表面電極70cと、この第3電極列67cに次いでアクチュエータ22の外周縁に近接している第5電極列67eの個別用表面電極70eにおいては、各端子部65bの中心線が自身のベース部65aの中心線Q2,Q3と一致しておらず、第1電極列67aの他方側末端位置の個別用表面電極70aの端子部65bの中心線Pと一致している。このように中心線Pを揃えるため、第3及び第5電極列67c,67eの他方側末端位置の個別用表面電極70c,70eの端子部65bの中心線Pは、自身のベース部65aの中心線Q2,Q3に対してアクチュエータ22の外側寄りに偏位して配置されている。
【0066】
なお、同じ電極列をなす複数の個別用表面電極は、端子部の中心線がベース部の中心線に対して同じようにして偏位している。このため、同じ列をなす個別用表面電極に対応する各導電性バンプ66は等間隔をおいて設置されることとなり、この間隔は図5に示す距離Dと略等しくなる。また、偶数列目の電極列67b,67d,67fにおいては、一方側末端位置に限られず、各行の導電性バンプ66が配列方向と直交方向(つまり走査方向)に関して同位置に設置される。同様に、奇数列目の電極列67a,67c,67eにおいては、他方側末端位置に限られず、各行の導電性バンプ66が配列方向と直交方向(つまり走査方向)に関して同位置に設置される。
【0067】
なお、図7では図示省略しているが、第1乃至第4電極列68a〜68dについては、アクチュエータ22の配列方向一方側の外周縁から配列方向の一方側末端位置に配置された電極までの距離は、第4電極列68dの電極が最も近く、次いで第2電極列68bの電極が近い。このため、第4電極列68dの一方側末端位置の電極は、端子部65bの中心線がベース部65aの中心線に対してアクチュエータ22の中央寄りに偏位している。第2電極列68bの一方側末端位置の電極は、端子部65bの中心線がベース部65aの中心線と一致しておらず、第4電極列68dの一方側末端位置の電極の端子部65bの中心線と一致しており、これら端子部65bの中心線は、図7に示す中心線Mと一致している。また、アクチュエータ22の配列方向他方側の外周縁から配列方向の他方側末端位置にある電極までの距離については、第1電極列68aの電極が最も近く、次いで第3電極列68cの電極が近い。このため、第1電極列68aの他方側末端位置の電極は、端子部65bの中心線がベース部65aの中心線に対してアクチュエータ22の中央寄りに偏位している。第3電極列68cの他方側末端位置に配置される電極は、端子部65bの中心線がベース部65aの中心線と一致しておらず、第1電極列68aの端子部65bの中心線と一致しており、更に、これら端子部65bの中心線は、図7に示す中心線Pと一致している。結果、合計18列の電極列は、末端位置に配置されている端子部の各中心線が互いに一致している。
【0068】
配線基板23は、このように形成された端子部65b上に設置された導電性バンプ66を介して接合されている。
【0069】
上記構成により、アクチュエータ22の外周端に最も近接する電極が中央寄りに偏位しているので、外周端から導電性バンプ66が設置される位置までの距離Kを大きくすることができ、配線基板23のうち導電性バンプ66と接触する部分の配列方向の寸法Lを短くすることができる。よって、配線基板のうち導電性バンプと接触する部分の面積を、配列方向に小型化することができ、これにより、面ヒータにより均一に加熱しやすくなり、配線基板23をアクチュエータ33に安定して接合させることができるようになる。また、接合面積を小型化することができるため、ヒータ面を大型化しなくてもよい。さらに、加熱ムラを解消するために、熱を過剰にかけることを抑制できるため、この過剰な熱が配線基板を介してドライバ25に伝わることによってドライバ25が破壊されたり、アクチュエータに熱歪みが生じてインクの吐出特性に影響を及ぼすなど、周辺部品への悪影響を少なくすることができる。
【0070】
また、引出部23aを折り曲げる場合に、その折り曲げの起点が従来よりもアクチュエータ22の中央寄りに設定される。つまり、距離Kの増加によりアクチュエータ22の引出方向の端部に形成される余白部を大きくすることができる。従って、配線基板23がアクチュエータ22からはみ出す長さを小さくすることができるため、配線基板23をコンパクトに取り回すことができるようになる。
【0071】
また、末端位置に配置されている電極の端子部の中心位置が揃っているため、この端子部上に設置される導電性バンプも配列方向と直交方向(すなわち走査方向)に同位置に設けられる。このため、引出部23aを折り曲げたときに、折り曲げの起点部分に作用する荷重が、これら同位置に設けられた複数の導電性バンプによって支持されるようになる。このため、配線基板がアクチュエータから剥がれ難くなる。また、次工程において、配線基板を掴み上げたり、組み立て作業を行うことにより導電性バンプに作用する重力や応力等も、同位置に設けられた複数の導電性バンプによって支持される。
【0072】
これまで、本発明に係る実施の形態を説明したが、上記構成に限られず、本発明の範囲を逸脱しない限り適宜変更可能である。例えば、配線基板の引出部は搬送方向の下流側に引き出されていてもよい。配線数が増えたり配線ピッチが高密度化するなどの理由から引出部が搬送方向両側に引き出されていてもよく、その場合、両側に引き出された配線基板をコンパクトに折り曲げることができる。また、配線基板の引き出し方向は搬送方向に限らず走査方向であってもよい。
【0073】
また、単一のインクに対して6つのノズル列、圧力室列及び電極列を設けた場合と、4つのノズル列、圧力室列及び電極列を設けた場合とを例示したが、これら列の数は特に限定されるものではなく、全体として複数の列が設けられていれば本発明を実施することができる。
【0074】
また、本実施形態では、電極がベース部65aとそこから延びた端子部65bとからなり、端子部65bの配列方向の中心線が、ベース部65aの配列方向に関する中心線に対し、アクチュエータ22の中央寄りに偏位し、端子部65bに導電性バンプが配置されているが、電極にこのような端子部が設けられていない場合であっても、導電性バンプを上述の実施形態のように配置することによって本発明を適用することができる。
【0075】
また、本実施形態は本発明をインクジェットヘッド及びこれを備えるインクジェットプリンタに適用したものであるが、インク以外の液体、例えば着色液を吐出して液晶表示装置のカラーフィルタを製造する装置、導電液を吐出して電気配線を形成する装置などに使用する液滴吐出装置のヘッドにも好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明に係る液体吐出ヘッドは、配線基板をアクチュエータに安定して接合することができるという優れた効果を有し、インクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッド等に適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概要構成を平面視で示す模式図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタに搭載された本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェットヘッドを組み立てた状態にして図2に示すIII−III線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿って示すインクジェットヘッドの底面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図3に示すVI−VI線に沿って示すインクジェットヘッドの平面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】従来のインクジェットヘッドの部分平面図である。
【符号の説明】
【0078】
M 用紙(媒体)
C インクカートリッジ
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
5 走査装置
12 搬送装置
20 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
21 流路ユニット
22 アクチュエータ
23 配線基板
23a 引出部
24 表面電極
41 ノズル
45 圧力室
47a〜47f,48a〜47d ノズル列
52a〜52f,53a〜53d 圧力室列
64 共通用表面電極
65 個別用表面電極
65a ベース部
65b 端子部
66 導電性バンプ
67a〜67f,68a〜68d 電極列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力室及び前記圧力室に連通する複数のノズルを有する流路ユニットと、
その表面に前記複数の圧力室に対応する複数の電極が複数配列して設けられたアクチュエータと、
前記アクチュエータの表面を覆い、前記各電極に対応して設けられた導電性バンプを介して接続される配線基板と、を備える液体吐出ヘッドであって、
前記電極の前記複数の配列は、その一の列をなす複数の電極が、当該一の列と隣接する列をなす複数の電極と千鳥状に配列され、列方向の末端位置に配置された前記電極に対応する前記導電性バンプが、前記圧力室の中心線に対し、該列方向の中央寄りに偏位して設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記配線基板は可撓性を有し、前記アクチュエータの表面に対して前記列方向の少なくとも一方側に引き出されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記配線基板が、前記アクチュエータの表面に対して前記列方向の両側に引き出されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の列のうち、相互に千鳥配列をなす2列における列方向の末端位置に配置された電極の夫々に対応して設けられた複数の前記導電性バンプのうち少なくとも2つが、前記列方向に関して同じ位置に設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記末端位置に配置された電極の夫々に対応して設けられた複数の前記導電性バンプが前記列方向に関してすべて同じ位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドを所定の走査方向に走査する走査装置と、
前記液体吐出ヘッドより吐出される液体を着弾させるための媒体を前記走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送装置とを備え、
前記列方向が前記搬送方向と平行であることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−36472(P2010−36472A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202583(P2008−202583)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】