説明

液体吐出方法及び液体吐出装置

【課題】従来では不可能であった高粘度の液体でも定量的に安定に吐出が可能で、微小吐出から大量吐出まで制御性の良い吐出を可能とする液滴吐出方法を提供すること。
【解決手段】液滴を吐出する際、液滴が液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面を開くことを特徴とする。又、液滴保持面が円筒ノズルであり、液滴が円筒ノズルから離れると同時に、円筒ノズルが分割して開くことを特徴とする。吐出する前の液滴が円筒ノズル内で保持されていれば、従来のインクジェットノズルと同様の液体体積の定量性を重視することができる。即ち、ノズル径と高さから、予め所望の吐出すべき液体体積を設計することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微少量の試薬、薬液等の液体を吐出する方法及び吐出装置に関する。又、工業用液体塗布分野における微細な液体パターン塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能材料の微細なパターン膜を形成する方法として、その膜材料の溶液又は分散液を直接的にパターン塗布することが可能であるインクジェット技術が利用されるケースが増加しつつある。
【0003】
しかしながら、従来のインクジェット技術では、液体タンク、液体流路、吐出ノズルが連結されていて、液体がその連結された通路を通って、連続的に流れて吐出口より吐出される方式であった。即ち、吐出液滴は、1滴毎に押し出すと同時に吐出口より飛び出した液体柱を、自然現象的或は成り行き的に引きちぎって吐出される方式であった。このため、吐出口から液滴が離れ難いために、吐出され得る液体の粘度は常に低粘度でなければならず、通常は15mPa・s程度の上限があって、それより高粘度の液体を吐出することは不可能であった。この事象は、工業用インクジェット技術として、機能材料から成る液体を微細パターン塗布するというニーズに対して大きな問題となっていた。
【0004】
又、液体の吐出口が円筒形状であるため、吐出口付近の液体が乾燥した際に、液体中に含まれる固形分等が吐出口内部および周辺部に残存し、吐出口が目詰まりし易かった。更に、目詰まりした吐出口は径が小さいために、ブラシ洗浄等の物理的な洗浄が困難であった。従って、目詰まりしたインクジェットヘッドは、廃棄せざるを得なかった。
【0005】
そこで、上記を解決するために、従来の円筒形状の吐出口全体を吐出方向に前進後退させて慣性力を利用して液滴を吐出させる技術があった。
【0006】
即ち、特許文献1では、吐出口を外部大気に面する開口部と、該開口部よりも断面積の小さい微小孔を持って構成し、しかも液体保持部材を吐出方向に沿って進退移動させる例があった。この技術によると、大気に面する径が大きいために吐出口が目詰まりし難いというメリットがあった。
【0007】
又、特許文献2では、従来のピエゾ駆動によるインクジェット方式に加えて、吐出口全体を前進後退させて慣性力を利用して吐出体積を大きくする提案があった。
【特許文献1】特開2002−116205号公報
【特許文献2】特開平8−309976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、一旦、目詰まりが発生すると、吐出口が円筒形状であるため、洗浄が困難であった。又、慣性力のみの、液体ちぎり方式だけでは、吐出できる液体の粘度や吐出量の制御性には限界があった。
【0009】
又、特許文献2では、確かに慣性力の補助的作用により、通常のインクジェット方式に比べて吐出量を多少増大することは可能であったが、この範囲には限界があり、更に増大させるには、吐出口形状が大きな別のインクジェットヘッドを用意しなければならないという問題があった。
【0010】
又、吐出口付近の液体が乾燥した際に、液体中に含まれる固形分等が吐出口内部及び周辺部に残存し、吐出口が目詰まりし易かった。又、吐出口が円筒形状であるため、目詰まりした吐出口を清浄に洗浄することが困難であった。又、この方法でも液体ちぎり方式であるが故に、吐出できる液体の粘度には限界があった。
【0011】
本発明の目的は、従来では不可能であった高粘度の液体でも定量的に安定に吐出が可能で、微小吐出から大量吐出まで制御性の良い吐出を可能とする液滴吐出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、液滴を吐出する際、液滴が液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面を開くことを特徴とする。
【0013】
上記方法において、液滴が吐出する際、先ず液滴保持面(吐出口)から液滴の一部が半円形状に飛び出し、次に半円形状の液滴の頭を先に、吐出口内部の液体を円柱状に引っ張り出される。このとき、液滴の重心が液滴保持面より離れるに従って液滴後半部の液体は吐出する勢いを失って、液滴保持面材の表面張力の作用によって液滴保持面側に戻ろうとする。しかし、同時に保持面を瞬時に開くことにより、液体保持面(吐出口面)を液滴から遠ざけることができるので、液滴が吐出口側に表面張力によって引っ張られる力を排除することができる。即ち、飛び出した液滴は、戻ることができずにその殆どの液滴量が吐出することになる。
【0014】
液滴保持面を開くタイミングは、液滴の先端部が保持面から飛び出した直後から、液滴の尾(液滴後端部)がちぎれる手前の時間域が好ましい。
【0015】
又、液滴保持面を開く速度は、液滴が飛び出す速度より、大きい目であることが好ましい。速度がゆっくりであると液滴保持面材の表面張力の作用によって液滴を横方向(保持面側)に戻す力が発生し兼ねないからである。
【0016】
又、液滴保持面を開く距離は、当初の保持面間距離(又はノズル径)の2倍以上が好ましい。
【0017】
請求項2記載の発明は、液滴保持面が円筒ノズルであり、液滴が円筒ノズルから離れると同時に、円筒ノズルが分割して開くことを特徴とする。
【0018】
吐出する前の液滴が円筒ノズル内で保持されていれば、従来のインクジェットノズルと同様の液体体積の定量性を重視することができる。即ち、ノズル径と高さから、予め所望の吐出すべき液体体積を設計することができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、液滴保持面が2つ以上の接近した液滴保持面から成り、保持面間に保持された液滴が液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面を開くことを特徴とする。
【0020】
この場合には、従来のインクジェットノズルの吐出口の周長に相当する部分が、分割されていて、しかも、短くなっているので、吐出開始直後の液体を吐出面側に戻す作用の表面張力は元々小さいので、より小さい力で液滴を吐出できるのが特徴である。
【0021】
請求項1〜3記載の発明まで、液体保持面が開く機構を有しているまで、部品として分割できるため、吐出口である液体保持面を分解洗浄することができる。
【0022】
請求項4記載の発明は、2つ以上の接近した液滴保持面を有する液滴保持部先端に液体を接触させ、毛管現象により、該保持面間に液滴を保持した後、該保持部を液滴吐出方向に前進させ、急停止又は急後退させることにより、液滴に慣性力を持たせて液滴を吐出する方法において、液滴が液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面を開くことを特徴とする。
【0023】
上記構成において、例えば液体保持面が2つである場合、保持面間距離は、予め液体の毛管現象が成り立つ距離範囲に設定しておく。次に、液滴保持部先端を液体に接触させたとき、毛管現象により、保持面間に液滴が保持される。保持面の表面エネルギーと保持面間距離が決まると、自ずと保持される液適量が一定に決まる。次に、保持部全体を吐出方向に前進させ、急停止又は急後退させると、慣性力により、保持された液体が、保持面間から吐出方向に飛び出し吐出する。更に、飛び出し直後に液体保持面を開くことにより、よりスムースに液滴が保持面を離れて飛翔する。
【0024】
このときの液滴の吐出速度は、液滴保持部先端の前進速度が大きく、前進距離が或る程度長ければ、大きくなる。又、液滴の吐出速度は、保持面表面エネルギー、保持面積、保持面の開く速度等によっても変動を受ける。そのため、所望の液適量、吐出速度を得るために、適宜、前進速度、前進距離、保持面表面エネルギー、保持面積、保持面間距離、保持面の開く速度を決めておく必要がある。例えば、2つの保持面が30×30μmで保持面間距離30μmの場合には、保持液適量は約27plとなる。又、2つの保持面が10×10μmで保持面間距離10μmの場合には、保持液適量は約1plとなる。
【0025】
例えば、液体保持部材を高度の高い鋼材等で作製しておくことにより、先端部が液体の残渣で汚染された場合には、保持部材を分解して、ブラシ洗浄や超音波洗浄することが可能である。又、液体保持部材の材質は、金属、プラスチック、セラミックス等、如何なるものでも良いが、先端の形状精度が良くなるような加工性に優れ、且つ、液体に対して化学的耐性があるものが好ましい。例えば、ステンレス材、エンジニアリングプラスチック、易加工性セラミックス等が挙げられる。
【0026】
請求項5記載の発明は、液体の溶媒雰囲気中で液滴を吐出することを特徴とする。前述の吐出動作を液体の溶媒雰囲気中で行えば、液体が乾燥しにくいため、動作中に液体の量の変動がなくなり、吐出量が安定する。同時に乾燥による保持部材の液体残渣汚染もなくなる。
【0027】
具体的に溶媒雰囲気中にするためには、例えば吐出装置全体を覆う囲いを設けて、その中に液体蒸気を噴霧する。或は上面が開放された液体容器を設置しておく等の手段を用いれば良い。
【0028】
請求項6記載の発明は、2つ以上の液滴保持部から成る該保持面の間隔を、調節機構により所望の間隔に設定することにより、所望の吐出液滴量を吐出することが可能なことを特徴とする。
【0029】
液体保持部先端が2つで構成されている場合、片側の液体保持先端部をマイクロメーター等で、保持面方向に可動できるように設置しておく。次に、保持面を顕微鏡で観察しながらマイクロメータを動かして、保持面間距離を顕微鏡モニターで測定しながら、保持面の位置を決めると良い。
【0030】
この手段により、毛管現象で入る液体体積が自由に設定できる。即ち、1つの吐出部材で広範囲な吐出量制御が可能となる。 請求項7記載の発明は、2つ以上の液滴保持部と、該保持部を上下駆動する上下駆動手段と、液体保持部先端を開閉駆動する開閉駆動手段と、液体タンクと、液体タンクと連結した液体供給容器とからなることを特徴とする。
【0031】
予め保持面間距離を所望の液滴量を保持できるように設定した保持部材を上下駆動手段に取り付けておき、駆動手段により下降させ、液体タンクに連結した液体供給容器に満たされた液体面に接触させる。一定時間後、液体保持部先端に液体が保持された後、次に保持部材を上昇させる。次に、水平移動して、液滴を着弾すべき基板上まで、保持部材を平行移動させる。次に、保持部材を基板方向に高速度で下降させ、保持部材を基板面手前で急停止させる。液滴は慣性により、保持部材より吐出される。液滴が保持部材から飛び出した直後、即ち、急停止から、およそ数マイクロ秒から数ミリ秒後に、開閉駆動手段により液体保持部先端を開く。液滴はスムースに保持部先端から離れて基板に着弾する。
【発明の効果】
【0032】
請求項1記載の発明によれば、従来では不可能であった高粘度の液体でも、僅かな力で定量的に安定な吐出を可能とする。又、微小吐出から大量吐出まで制御性の良い吐出を可能とする。更に、吐出口の分解洗浄が容易な吐出口であるため、常に清浄で長寿命な安定吐出を可能とする。
【0033】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に加えて、より液体の定量的に優れた吐出を可能とする。
【0034】
請求項3記載の発明によれば、より吐出口の分解洗浄が容易な液切れ性の良い液体吐出を可能とする。又、簡単な構造の液体吐出機構を可能とする。
【0035】
請求項4記載の発明によれば、液体の供給方法と吐出動作方法によって、より具体的なプロセスとしての液体吐出を可能とする。
【0036】
請求項5記載の発明によれば、吐出動作中における液滴の乾燥を防止できるため、より安定な液体吐出を可能とする。
【0037】
請求項6記載の発明によれば、1つの吐出口により広範囲な液滴量を吐出することを可能とする。
【0038】
請求項7記載の発明によれば、液体吐出を自動連続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0040】
<実施の形態1>
2mm角のステンレス棒の1つの側面を切削加工法により先端部のみを残して、図1(a)の1のような液体保持先端部1の素材を作製した。次に、その先端部を更に精密な切削加工法により、断面が図1(c)に示すような形状で液体保持面2の面形状が50μm角である本発明の液体保持先端部1を2個作製した。
【0041】
別に駆動及び調節装置を製作し、この2個の液体保持先端部1を、液体保持面2を対向させるようにして、駆動及び調節装置に取り付けて、液体保持面2の間隔を50μmになるように精度良く設定した。
【0042】
尚、この駆動及び調節装置は、一対の液体保持面2の面間距離を精度良く調節するための、マイクロメータ機構により調節が可能な、図7に示す調節手段10が具備されている。
【0043】
又、この駆動及び調節装置は、高速微動ステージから成る液体保持先端部1を上下移動するための図5に示す上下駆動手段8と、電磁開閉弁機構を適用した液体保持先端部1を開閉するための図6に示す開閉駆動手段9を備えている。更に、各々の駆動手段を制御するための制御ボードとコンピュータを備え、それらによって液体保持先端部1の上下速度、移動開始位置、移動停止位置、保持先端部1を開閉タイミング等は予め設定することができるようになっている。
【0044】
液体3として、アルコール溶解性銀コロイドペースト(日本ペイント製)15部、ポリアクリル酸2部、エチレングリコール5部、水35部より成る表面張力が51dyne/cm、粘度60mPa・sの銀ペースト・インクを用意した。
【0045】
次に、図1(a)に示す液体供給容器4としてφ50mmのシャーレを用意し、これに上記の液体3を満たした。このシャーレの上方に液体保持先端部1を設置した。次に、不図示の上下移動機構により、図1(b)に示すように液体保持先端部1を、液体3に僅かに接触させた。このとき、液体保持面2の間に毛細管現象により、液体3が入った。直ちに図1(c)のように、液体保持先端部1を上方に引上げた。このとき、図のように保持液体5が液体保持面2の間に入っていることを確認した。すぐに液体保持先端部1を水平移動させて、図1(d)の基板7として厚さ1.1mmの青板ガラス基板上に移動した。次に、図1(e)のように、液体保持先端部1を上下移動機構により、300mm/秒の速度で、下方に5mm移動させ急停止させると同時に、液体保持先端部1を不図示の開閉駆動手段9により、面間距離150μmに開いた。
【0046】
吐出液滴6が慣性力により吐出され、且つ、液体保持先端部1から強制的に切り離されて、図1(f)のように基板7の表面に着弾した。粘度が60mPa・sの銀ペースト・インクが、良好に吐出し基板に着弾した。このときの環境雰囲気の湿度は55%であり、又、液体接触から着弾まで約5秒間の時間を要した。
【0047】
高速シャッターカメラを装備した顕微鏡観察撮影により、吐出液滴6の形状を写真より計測したところ、吐出後(液滴が液体保持面を離れてから)500μ秒後の形状は球形であり、その直径を計測することにより、吐出量(体積)を換算したところ120pl(ピコリットル)であることを確認した。
【0048】
この液体吐出動作を20回行い、各吐出液量を計測したところ、そのばらつきは±10. 3%であった。
【0049】
<実施の形態2>
実施の形態1の液体保持先端部1を3個作製し、図2(a)に示すような3つの液体保持面2が120度の角度で対向させるようにして、不図示の駆動及び調節装置に取り付けた。更に、液体保持面2の中心間を結ぶ線から成る正三角形の1辺が50μmになるように精度良く設定した。
【0050】
実施の形態1と同様な条件で、液体保持面2の間に保持液体5を保持させ、下方に移動させ急停止させると同時に液体保持先端部1を図2(b)に示すように不図示の開閉駆動手段9により開いた。
【0051】
実施の形態1と同様な方法で吐出量を換算したところ、吐出液滴6の体積は175pl(ピコリットル)であることを確認した。この液体吐出動作を20回行い、各吐出液量を計測したところ、そのばらつきは±9. 1%であった。
【0052】
保持面を増やすことにより、液滴の定量精度が向上した。
【0053】
<実施の形態3>
実施の形態1の図1(a)の1のような液体保持先端部1の素材を作製し、その先端部にニッケルを電鋳加工により、約100μm積層した。更に、精密切削加工法により、断面が図3(a)に示すような台形形状で先端部にRが20μmの半円形状で長さ方向が50μmの溝を持った保持面2から成る本発明の液体保持先端部1を2個作製した。
【0054】
液体保持先端部1を2個作製し、液体保持面2を対向させるようにして、不図示の機械的固定制御機構に取り付けた。更に、液体保持面2を図3(a)に示すように密着させて、直径40μm、長さ50μmの円筒ノズル形状になるように設定した。
【0055】
実施の形態1と同様な方法で、実施の形態1と同様な液体を液体保持面2の間に液体5を、図3(b)のように保持させ、下方に移動させ急停止させると同時に液体保持先端部1を図3(c)に示すように不図示の開閉駆動手段9により開いて液滴吐出を行った。
【0056】
実施の形態1と同様な方法で吐出量を換算したところ、吐出液滴6の体積は70pl(ピコリットル)であることを確認した。この液体吐出動作を20回行い、各吐出液量を計測したところ、そのばらつきは±8. 5%であった。
【0057】
実施の形態2と同様に保持面を円筒形状にすることにより、液滴の定量精度が向上した。
【0058】
<実施の形態4>
液体保持先端部1の形状の側面図形状は図4(a)のようなものには限らない。例えば、図4(b)の形状にすれば、加工がし易い。機械的な切削加工ではなく、フォトリソ加工を用いれば、単純な(b)のような形状になり、液体保持面2を5〜20μm程度に精度良く形成にすることも可能である。この方法を利用すれば、液適量を数plの微小液滴の吐出が可能となる。
【0059】
又、図4(c)のような形状にすれば、保持液体5が落下し難くなり、多量の液体を保持するときに都合が良い。
【0060】
又、図4(d)のような形状にすれば、図1(b)の工程で、液体保持先端部1が液体3に僅かに接触させたとき、保持面のみが液体に接触するため、液体保持先端部1の底面に余分な液体が付着するケースが少ない。液体保持不良を減少させることができる。
【0061】
液体保持先端部1の形状の断面図形状は図4(e)のようなものには限らない。
【0062】
例えば、ば図4(f)の形状にすれば、加工がし易い。機械的な切削加工ではなく、フォトリソ加工を用いれば、単純な(b)のような形状になり、液体保持面2を5〜20μm程度に精度良く形成にすることも可能である。
【0063】
又、図4(g)のような形状にすれば、凹部に液体が入り込み易くなり、図3と同様な効果で、保持液体5の定量性が向上する。
【0064】
<実施の形態5>
実施の形態1と全く同じ吐出動作を、実施の形態1の装置を恒湿容器に入れて湿度95%の環境下で行った。
【0065】
高速シャッターカメラを装備した顕微鏡撮影により、吐出液滴6の形状を計測したところ、吐出後500μ秒後の形状は球形であり、その直径を計測することにより吐出量を換算したところ、吐出液滴6の体積は128pl(ピコリットル)であることを確認した。
【0066】
この液体吐出動作を20回行い、各吐出液量を計測したところ、そのばらつきは±7. 6%であった。恒湿度環境下で吐出を行うことにより、保持液体5の乾燥が防止でき、吐出量のばらつきが低減できた。
【0067】
<実施の形態6>
実施の形態1の液体保持先端部1を2個作製し、図7(a)に示すようなマイクロメーターにより、液体保持面2の距離を調節できるようにしたを調節手段10を備えた駆動及び調節装置に取り付けた。液体保持面2の間の距離を、図5(a),(b)のように90μm、70μm、50μm、30μm、15μmとそれぞれ設定した後、それぞれの距離において実施の形態1と同様な方法で、液滴吐出を行った。
【0068】
実施の形態1と同様な方法でそれぞれの吐出量を換算したところ、保持面間距離90μmのときは吐出液滴6の体積は222plの吐出量、70μmのときは166pl、50μmのときは120pl、30μmのときは75pl、15μmのときは40plであることを確認した。この方法により、1つの液体吐出ヘッドで、40〜222plまでの吐出量を変化させることが可能であった。
【0069】
<実施の形態7>
実施の形態1の液体保持先端部1を2個作製し、液体保持面2を対向させるようにして、上下駆動手段8と開閉手段9を備えた駆動及び調節装置に、図8(a)のように取り付けた。
【0070】
実施の形態1と同様なの銀ペースト・インクを用意し、液体タンク11に注入した。液体タンク11から液体供給路12を経て、不図示の液量調節機構を備えた液体供給容器4に液体である銀インクが常に一定量流れるようにした。又、図8(a)に示すように隔壁13を装置の周辺に設けて、液体供給容器4からの液体溶媒の揮発により、隔壁内の雰囲気が溶媒蒸気の雰囲気になるように設定した。
【0071】
装置の下面の開放部にガラス基板7を不図示の移動ステージ上に設置した。次に、液体保持先端部1を図8(a)の位置から、液体供給容器の液体に接触させ、液体保持面2に液体を保持させ、直ちに液体保持先端部1を上昇させてから、図8(b)の位置に水平移動させた。次に、液体保持先端部1を下方に200mm/秒の速度で3mm移動させ急停止と同時に液体保持面2を開いた。図8(c)に示すように吐出液滴6が慣性力により吐出されて、基板7の表面に着弾した。次に、図8(a)の位置に液体保持先端部1を戻し、1サイクルを約3秒で完了した。
【0072】
移動ステージ上の基板を移動しながら、前記の1サイクルの液体吐出を繰り返し行うことにより、連続的な液体吐出が可能であった。又、従来のインクジェットでは、不可能であった粘度が60mPa・sの銀ペースト・インクでも液体吐出が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の液体吐出方法の1例を示す図である。
【図2】本発明の液体吐出方法の液体保持先端部の別の形状例を示す図である。
【図3】本発明の液体吐出方法の液体保持先端部の別の形状例を示す図である。
【図4】本発明の液体吐出方法の液体保持先端部の別の形状例を示す図である。
【図5】本発明の液体吐出方法の液体保持先端の上下駆動手段を示す図である。
【図6】本発明の液体吐出方法の液体保持先端の開閉駆動手段を示す図である。
【図7】本発明の液体吐出方法の液体保持先端間の調節方法の例を示す図である。
【図8】本発明の液体吐出装置の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 液体保持先端部
2 液体保持面
3 液体
4 液体供給容器
5 保持液体
6 吐出液滴
7 基板
8 上下駆動手段
9 開閉駆動手段
10 調節手段
11 液体タンク
12 液体供給路
13 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する際、液滴が液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面が開くことを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
液滴保持面が円筒ノズルであり、液滴が円筒ノズルから離れると同時に、円筒ノズルが分割して開くことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出方法。
【請求項3】
液滴保持面が2つ以上の接近した液滴保持面から成り、保持面間に保持された液滴が、液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面を開くことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出方法。
【請求項4】
2つ以上の接近した液滴保持面を有する液滴保持部先端に液体を接触させ、毛管現象により該保持面間に液滴を保持した後、該保持部を液滴吐出方向に前進させ、急停止又は急後退させることにより、液滴に慣性力を持たせて液滴を吐出する方法において、液滴が液滴保持面から離れると同時に、液滴保持面を開くことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出方法。
【請求項5】
液体の溶媒雰囲気中で液滴を吐出することを特徴とする請求項1記載の液滴吐出方法。
【請求項6】
2つ以上の液滴保持部から成る該保持面の間隔を調節機構により所望の間隔に設定することにより、所望の吐出液滴量を吐出することが可能なことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出方法。
【請求項7】
2つ以上の液滴保持部と、該保持部を上下駆動する上下駆動手段と、液体保持部先端を開閉駆動する開閉駆動手段と、液体タンクと、液体タンクと連結した液体供給容器とから成ることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−832(P2007−832A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186460(P2005−186460)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】