説明

液体吐出装置及びレジストパターン形成方法

【課題】レジスト液を積み重ねて所定の膜厚を有するレジストパターンを形成することができる液体吐出装置及びレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】配線基板2にレジスト液を吐出するヘッド12は主走査方向に複数のノズルが並べられるとともに、副走査方向に配線基板の幅に対応する長さにわたって複数のノズルが並べられ、配線基板とヘッドとを主走査方向に1回だけ走査させて配線基板の全面にレジストパターンを形成する。主走査方向に並べられたノズルのうち1列目のノズルから吐出されたレジスト液100の着弾位置には所定の時間間隔をおいてレジスト液100が配線基板2に定着した後に2列目のノズルから吐出されたレジスト液102が積層される。更に、主走査方向に並べられた異なるノズルから吐出されたレジスト液104、…が所定の時間間隔で積層されて、所望の厚みを有するレジストパターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及びレジストパターン形成に係り、特にプリント配線基板に配線パターンを形成する際に用いられるレジストのパターンニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板製造方法としてフォトリソ法が用いられている。フォトリソ法は、絶縁層と銅箔からなる銅張積層板の上にドライフィルムレジスト又は液レジストによりレジスト層を形成し、フォトマスクを介して該レジスト層を紫外線照射してパターン露光し、現像することによりレジストパターンのパターンニングを行っている。次いで、レジストで被覆されていない銅箔をエッチングにより除去し、所望の導体パターンが得られる。上記はフォトリソ法の中のサブトラクティブ法について説明したが、同様にセミアディティブ法、アディティブ法においても、メッキのマスクとしてフォトレジストパターンのパターニングが用いられている。
【0003】
サブトラクティブ法によって微細回路を形成する場合、金属導電層のサイドエッチングによる画線の細り等があるため、微細回路に対して不利とされている。一方、アディティブ法は、微細回路に対しては有利であるが、無電解めっきで全ての金属導電層を形成するため、製造コストが高いという問題がある。セミアディティブ法は、多工程であるが、高速作業が可能な電解めっきを使用することができるために、微細回路製造方法として、優位に用いることができる。上述したフォトリソ法では、フォトマスクの作製に時間を費やしたり、レジストパターニング工程において現像工程が必要であったり、時間、コストともに課題となっていた。また、現像工程における廃液の問題もあった。
【0004】
これに対して、インクジェット方式を用いてレジスト材料を直接パターンニングする方法が提案されている。即ち、絶縁層と銅箔からなる銅張積層板の上にインクジェットヘッドからレジスト液を用いて所望のレジストパターンを直接描画し、パターンニングされたレジスト液を硬化させて所望のパターンを有するレジスト層が形成される。
【0005】
特許文献1に記載された発明では、レジスト膜の膜厚を指定し、この膜厚を予測するとともに当該膜厚が所望値となるようにノズルを制御するノズル制御データを作成し、このノズル制御データにより回路基板別にレジストを塗布するようにレジスト塗布工程を管理するインクジェット方式によるプリント回路板の製造において、レジスト膜厚の予測は、ノズル形状と膜厚との関係データを格納し、この格納された関係データから指定されたレジストパターン形状の1回当たりの噴射による膜厚を計算し、1回当たりの膜厚から指定された膜厚を形成するのに必要な塗布回数を計算し、レジスト膜厚が所望の膜厚になるように構成されている。
【特許文献1】特許第3744967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レジスト層は所定の厚さが必要となるが、一般にインクジェットでは厚膜形成が難しいことから重ね打ち(積層パターニング)をする必要がある。重ね打ちによって所定の膜厚を得る方法では、積層回数分の処理時間がかかり生産性を上げられないという問題がある。また、メカスキャンによる重ねあわせ精度に限界があり、積層の重ね合わせ精度が得られないといった問題があった。
【0007】
特許文献1に記載された発明では、レジストインクを積層する際にインク吐出制御やインクの定着について具体的な開示がなく、隣接ドット間で着弾干渉が生じたり、レジストインクを積層する際に位置ズレが発生したりするので、精度の高いレジスト膜が得られるとは言い難い。また、特許文献1に記載された発明には、積層回数分の処理に時間がかかり生産性を上げられないという課題が存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レジスト液を積み重ねて所定の膜厚を有するレジストパターンを形成することができる液体吐出装置及びレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明に係る液体吐出装置は、配線基板にレジスト液を吐出する複数のノズルを第1の方向に所定の配置間隔で並べたノズル群を有するヘッドと、前記配線基板と前記ヘッドとを前記第1の方向に相対的に走査させる走査手段と、前記ヘッドのレジスト液の吐出を制御する吐出制御手段と、前記配線基板と前記走査手段の前記第1の方向への1回の走査で走査可能な前記配線基板の領域に対して、前記ヘッドと前記配線基板とを前記第1の方向に1回だけ相対的に走査させるように前記走査手段を制御する走査制御手段とを備え、前記吐出制御手段は、前記配線基板の同一位置に対して前記ノズル群の異なるノズルから同一のレジスト液を所定の時間間隔で順番に吐出させて、前記配線基板の同一位置に異なるノズルから吐出されたすべてのレジスト液を積層させて、前記配線基板に所定の厚みを有し所定パターンを有するレジストパターンを形成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、配線基板とヘッドとの第1の方向の1回の走査で走査可能な配線基板の領域に対して1回だけ配線基板とヘッドとを相対的に走査する(即ち、同じ領域を2回以上走査しない)シングルパススキャン方式によりレジストパターンが積層形成されるので、生産性を落とすことなくレジスト液の積層によるレジストパターンを形成可能である。
【0011】
配線基板のヘッドに対する相対搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向の全幅に対応する長さにわたって、前記副走査方向に所定の間隔で並べた2以上のノズルを有する複数のノズル群が、前記主走査方向に沿ってレジストパターンのドット解像度に対応する配置ピッチで配置されたライン型ヘッドを備える態様では、配線基板とヘッドとを副走査方向に1回だけ相対的に走査させるシングルパススキャン方式により、配線基板の全面にわたってレジストパターンを形成可能である。ライン型ヘッドを備える態様では、配線基板とヘッドとの主走査方向の1回の走査で走査可能な配線基板の領域は配線基板の全面となる。前記ライン型ヘッドを備える態様では、前記第1の方向は副走査方向となる。
【0012】
また、配線基板のヘッドに対する相対搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向の全幅よりも短い長さにわたって、前記主走査方向に所定の間隔で並べた2以上のノズルを有する複数のノズル群が、前記副走査方向に沿って画像解像度に対応する配置ピッチで配置された短尺ヘッドを備える態様では、ヘッドと配線基板とを主走査方向に相対的に走査させながら主走査方向のレジストパターンを形成し、ヘッドと配線基板とを主走査方向と直交する副走査方向に移動させる移動手段によって配線基板とヘッドとを副走査方向に所定の距離だけ相対的に移動させ、再度ヘッドと配線基板とを主走査方向に相対的に走査させながら主走査方向のレジストパターンを形成し、この動作を繰り返して配線基板の全面にわたってレジストパターンを形成可能である。前記短尺ヘッドを備えるシリアル方式では、第1の方向は主走査方向となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の液体吐出装置の一態様に係り、前前記ヘッドは、前記第1の方向にレジスト液の最大積層数以上の数のノズルを並べたノズル群を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、レジスト液の最大積層数以上の数のノズルを第1の方向に並べるので、シングルパススキャン方式により生産性を落とすことなく必要な膜厚分の積層ができる。第1の方向のノズル数はレジスト液の最大積層数と同数でもよいが、吐出量の誤差を見込んで第1の方向のノズル数をレジスト液の最大積層数を超える数とする態様が好ましい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記ヘッドは、前記第1の方向に所定の間隔で複数のノズルを並べたノズル群が、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記レジストパターンの前記第2の方向の最小ドット間ピッチと同一の配置間隔で配置された構造を有し、前記第1の方向に並べられた複数のノズルから配線基板の同一位置に最初に吐出されるレジスト液のドットの直径は、前記第2の方向の隣接ドットの中心間距離未満であることを特徴とする。
【0016】
第1の方向に複数のノズルを並べたノズル群を第2の方向に複数備える態様では、第2の方向に並べられたノズルからは略同一タイミングでレジスト液が吐出され、略同一タイミングで吐出された複数のレジスト液は略同一タイミングで配線基板に到達するので、これらのレジスト液が配線基板上で接触すると合一などの着弾干渉が起こり得る。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、配線基板の同一位置に最初に吐出されるレジスト液のうち、第2の方向に隣り合うレジスト液同士は配線基板上で接触しないので、配線基板上でレジスト液同士の合一などの着弾干渉が起こらず、最初に吐出されるレジスト液の副走査方向の位置ズレが防止される。
【0018】
例えば、このようなドットをドット積層体の1層目に形成し、2層目以降のi層目のドットの直径が第2の方向の隣接ドットの中心間距離以上となる場合には、最初に吐出された1層目のレジスト液は第2の方向の位置ズレが防止され、2層目以降のi層目のドットは1層目(i−1層目)のドットとの親和性との関係で、第2の方向の位置ズレが抑制される。したがって、レジストパターンの欠陥に起因する配線パターンの断線やバルジの発生が防止される。
【0019】
なお、ライン型ヘッドを備える態様では、第2の方向は主走査方向となり、シリアル型ヘッドを備える態様では第2の方向は副走査方向となる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記第1の方向に並べられたノズルから配線基板の同一位置に最初に吐出されるレジスト液のドット直径は、前記第1の方向の隣接ドットの中心間距離未満であることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、配線基板の同一位置に最初に吐出されるレジスト液のうち、第1の方向に隣り合うレジスト液同士は配線基板上で接触しないので、配線基板上でレジスト液同士の合一などの着弾干渉が起こらず、最初に吐出されるレジスト液の第1の方向の位置ズレが防止される。
【0022】
例えば、配線基板の同一位置に吐出されるレジスト液のうち、最初に吐出されるレジスト液(即ち、1層目となるレジスト液)に請求項4に係る発明を適用すると、1層目のレジスト液は第1の方向の位置ズレが防止される。2層目以降のドットの直径は、1層目のドットとの親和性の関係で、第1の方向の隣接ドットの中心間距離以上となる場合にも第1の方向の位置ズレが抑制される。したがって、レジストパターンの欠陥に起因する配線パターンの断線やバルジの発生が防止される。
【0023】
請求項3及び請求項4に記載の発明では、第1の方向に並んだノズルのうち最初のレジスト液を吐出するノズル(1層目のドットを形成するノズル、即ち、配線基板とのヘッドとを相対的に走査させる走査方向の最上流側のノズル)の直径を他のノズルの直径未満とし、1層目のドットを形成するノズルから最小直径のドットを形成する量(最小吐出量)のレジスト液を吐出する態様がある。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記配線基板上のレジスト液を硬化させる硬化手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、配線基板上のレジスト液を硬化させることで、配線基板への着弾時及び積層時におけるレジスト液の濡れ広がりが防止され、好ましいレジストパターンが形成される。
【0026】
レジスト液を配線基板上で硬化させる態様には、レジスト液が配線基板上で移動せず、他のレジスト液が積層されたときに濡れ広がらない程度の半硬化状態(高粘度化状態)とする態様が含まれていてもよい。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記ヘッドと前記配線基板との間に電界を発生させる電界形成手段を備えるとともに、前記レジスト液は絶縁性溶媒に重合性化合物、分散剤及び荷電調整剤を含む成分を分散させて粒子化した荷電粒子を含有する組成を有し、前記電界形成手段によって発生させた電界をレジスト液に作用させて、前記配線基板に前記荷電粒子を付着させることを特徴とする。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、レジスト液の吐出方式に静電濃縮方式を適用することで、高精細であるとともに位置精度が高いレジストパターンが形成される。また、レジストパターンのにじみや着弾干渉が防止される。
【0029】
また、本発明は上記目的を達成するための方法発明を提供する。即ち、請求項7に記載のレジストパターン形成方法は、複数のノズルを第1の方向に所定の配置間隔で並べたヘッドから配線基板にレジスト液を吐出させて前記配線基板にレジストパターンを形成するレジストパターン形成方法であって、前記配線基板と前記ヘッドとの前記第1の方向の1回の走査で走査可能な前記配線基板の領域に対して、前記ヘッドと前記配線基板とを前記第1の方向に1回だけ相対的に走査させながら、前記配線基板に同一位置に対して前記第1の方向に並べられた複数のノズルからレジスト液を所定の時間間隔で順番に吐出させて、前記配線基板の同一位置に異なるノズルから吐出された複数のレジスト液を積層させて、前記配線基板に所定の厚みを有し所定のパターンを有するレジストパターンを形成することを特徴とする。
【0030】
配線基板上でレジスト液を硬化状態或いは半硬化状態にしてレジスト液を配線基板上に定着させる硬化工程を備える態様が好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、配線基板の同一位置に対して第1の方向に並べられた複数のノズルから所定の時間間隔で順番にレジスト液を吐出させて、異なるノズルから吐出されたレジスト液が積層され、配線基板とヘッドとの第1の方向の1回の走査で走査可能な配線基板の領域に対して1回だけ配線基板とヘッドとを相対的に走査するシングルパススキャン方式によりレジストパターンが形成されるので、生産性を落とすことなくレジスト液の積層によるレジストパターンを形成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0033】
〔プリント配線基板の製造方法〕
本発明が適用されるプリント配線基板(以下、単に配線基板や基板と記載することがある。)の製造方法の概略を説明する。図1(a)〜(g)には、サブトラクティブ法を用いたプリント配線基板の製造方法を工程順に示し、図1(h)〜(l)及び図1(m)〜(s)は、それぞれアディティブ法によるプリント配線基板2の製造方法、セミアディティブ法によるプリント配線基板2の製造方法を工程順に示す。なお、図1(a)〜(s)にはプリント配線基板の断面図を示している。
【0034】
先ず、図1(a)〜(g)を用いてサブトラクティブ法によるプリント配線基板の製造方法を説明する。図1(a)に示す絶縁層1と銅箔3からなる銅張積層板2に、図1(b)に示すよう、銅張積層板2にスルーホールとなる貫通穴4を形成した後に(図1(b)、穴開け工程)、電解メッキを用いて全面に配線層(銅箔層)3’を形成する(図1(c)、配線層形成工程)。
【0035】
次に、ドライフィルムレジストまたは液レジストによりレジスト層5を形成した後に、このレジスト層5に所定のパターンを有するマスク(不図示)を介して紫外線を照射してパターン露光し、現像することでレジスト層5のパターンニングを行う(図1(d)、レジスト層形成工程)。
【0036】
パターンニングされたレジスト層5をマスクとして、レジスト層5で被覆されていない銅箔3及び配線層3’をエッチングにより除去し(図1(f)、エッチング工程)、レジスト層5を除去すると(レジスト除去工程)、図1(g)に示す所定の配線パターンを有するプリント配線基板2が得られる。
【0037】
図1(h)〜(l)には、アディティブ法によるプリント配線基板2の製造方法を示し、図1(m)〜(s)には、セミアディティブ法によるプリント配線基板2の製造方法を示す。
【0038】
図1(h)〜(l)に示すアディティブ法では、図1(h)に示す絶縁基板(絶縁層)1にスルーホールとなる貫通穴4を形成し(図1(i)、穴開け工程)、レジスト層5をパターンニングする(図1(j)、レジスト層形成工程)。次いで、無電解メッキを用いてレジスト層5の非形成部分に配線パターンとなる銅箔3(3’)がパターンニングされ(図1(k)、配線層形成工程)、レジスト層5が剥離されて(レジスト層除去工程)、図1(l)に示す所定の配線パターンが形成された配線基板2が形成される。
【0039】
図1(m)〜(s)に示すセミアディティブ法では、図1(m)に示す絶縁基板1にスルーホールとなる貫通穴4が形成され(図1(n)、穴開け工程)、無電解メッキにより絶縁基板1の全面に銅箔3が形成される(図1(o)、メッキ下地形成工程)。
【0040】
次に、銅箔3の上にレジスト層5をパターンニングし(図1(p)、レジスト層形成工程)、電解メッキを用いて配線パターンとなる銅箔3’がパターンニングされ(図1(q)、配線層形成工程)、レジスト層5が剥離されて(図1(r)、レジスト層除去工程)、更にレジスト層5が剥離されて露出した余分な銅箔3が除去されて、図1(s)に示す所定の配線パターンを有するプリント配線基板が形成される。
【0041】
〔第1実施形態、ジェット記録装置(液体吐出装置)の全体構成〕
図2は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置10は、レジスト液を用いて、銅箔層3(3’)が形成された基板2(図1(a),(o)参照)や、絶縁基板1(図1(j)参照)に所定のパターンを有するとともに所定の厚みを有するレジスト層5を形成する。
【0042】
図2に示すインクジェット記録装置10は、レジスト液を吐出するヘッド12と、ヘッド12に供給するレジスト液を貯蔵しておくレジスト液貯蔵/装填部14と、基板2(銅箔層が形成された基板または銅箔層が形成されていない絶縁基板の何れでもよい)を供給する供給部18と、ヘッド12のノズル面(吐出面)に対向して配置され、基板2を保持しながらヘッド12の下部の吐出領域へ搬送する吸着ベルト搬送部22と、ヘッド12によってレジスト液を用いて形成されたレジスト層5を加熱して硬化(高粘度化)させる硬化処理部23と、レジスト層5のパターン(レジスト層5を形成するドット)を読み取る吐出検出部24と、レジスト層5が形成された基板2を外部に排出し、次の工程に送る排出部26と、を備えている。
【0043】
本発明に適用されるレジスト液に必要な機能は、図1(d)や図1(q)に示す配線層3’を形成する際の電解めっき液に対する耐久機能(電解めっき液に不溶な樹脂を含有する)と、図1(g),(l),(r)に示すレジスト層除去工程において剥離可能な機能(レジスト層除去液に可溶)であり、フォトリソ法などで一般的に用いられるレジスト液に含有されている感光性材料を含有しなくてもよい。即ち、本例に示すプリント配線基板の製造方法には、レジスト層5を感光する工程は含まれていないので、本例のレジスト液には樹脂材料を含有するいわゆる樹脂液を適用することができる。なお、サブトラクティブ法を適用したレジスト層のパターンニングに用いられるレジスト液には、エッチング液に対する耐性と、剥離性という機能が必要であることは言うまでもない。
【0044】
また、本例に適用されるレジスト液は硬化処理部23の構成に対応して硬化する機能を有している。本例では、加熱により硬化する熱硬化機能を有するレジスト液を例示する。
【0045】
また、本例の基板2には、ガラスエポキシや紙エポキシなどの絶縁層1の表面及び裏面に銅箔層3を形成した銅張積層板や、樹脂材料の絶縁層1の表面及び裏面に金や銅などの導電層(銅箔層3)が形成されたフレキシブル基板を適用してもよい。
【0046】
複数種類の基板を利用可能な構成にした場合、基板の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をストッカーに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される基板の種類を自動的に判別し、基板の種類に応じて適切なレジスト液の吐出を実現するように吐出制御を行うことが好ましい。なお、基板情報はユーザインターフェイスを用いてユーザが入力可能に構成してもよい。
【0047】
供給部18から送り出される基板2は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド12のノズル面及び吐出検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0048】
ベルト33は、基板2の幅よりも広い幅寸法を有しており、図示は省略するが、ベルト面には多数の吸引穴が形成されている。図2に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側においてヘッド12のノズル面及び吐出検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の基板2が吸着保持される。即ち、ベルト33の吸引口が形成されている領域は基板2の保持領域として機能する。なお、ベルト33上に基板2を保持する態様はエアー吸着に限定されず、静電気による吸着など他の方法を適宜適用可能である。
【0049】
ベルト33が巻かれているローラ31,32の少なくとも一方にモータ(図2中不図示、図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図2上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された基板2は図2の左から右へと搬送される。
【0050】
ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)には、ベルト33に付着したレジスト液を除去するベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0051】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上の最上流位置には、基板2の有無を検出する(基板2の先端部が吸着ベルト搬送部22へ達したか否かを判断する)供給側センサ(不図示)が設けられている。該供給側センサは、基板2をはさんで光源(例えば、LED)と受光素子が配置された構造を有し、受光素子に入射した光量に比例した検出信号が出力される。光源と受光素子との間に基板2が存在すると、基板2が存在しないときに比べて受光素子に入射する光量が減少するので、受光素子に入射する光量(即ち、検出信号の大小)で基板2の有無が判断される。なお、光源から出された光の基板2による反射光を受光するように光源と受光素子とを基板2に対して同じ側に配置してもよい。
【0052】
供給側センサの次段(基板搬送方向下流側)には、加熱ファン41が設けられている。加熱ファン41は、レジスト層5形成前の基板2に加熱空気を吹き付け、基板2を加熱する、いわゆる基板2のプリヒート処理手段として機能する。レジスト層5形成前に基板2を加熱(プリヒート)しておくことにより、基板2のレジスト液の着弾が安定するとともにレジスト液の着弾後のレジスト液の硬化を促進させる作用がある。なお、加熱ファン41及び硬化処理部23に代わりベルト33の内部のヘッド12にヒータ37(破線で図示)を備える態様も可能である。
【0053】
ベルト33の内部にヒータ37を備える態様では、ベルト33に基板2が保持されている間の基板2の温度を所定の温度に制御可能であり、基板2に着弾したレジスト液の硬化促進に寄与する。
【0054】
図2に示すヒータ37の配置例では、ベルト33の基板2が保持される領域の全幅に対応するとともに、基板搬送方向のヘッド12のレジスト液の吐出開始位置から吐出検出部24にわたる領域に(即ち、プリヒートからレジスト層5が基板2に定着するまでの間に対応して)、ヒータ37が設けられている。
【0055】
加熱ファン41の次段(基板搬送方向下流側)に設けられるヘッド12は、最大基板幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを基板搬送方向(本実施形態における主走査方向)と直交方向(本実施形態における副走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図3参照)。
【0056】
詳細な構造例は後述するが、ヘッド12は、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの基板2の少なくとも一辺を超える長さにわたって吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0057】
このように、基板2の幅の全域をカバーするフルライン型の記録ヘッド12によれば、主走査方向について基板2とヘッド12を相対的に移動させる動作を一回行うシングルパススキャンにより、基板2の全面に所定のパターンを有するレジスト層5が形成される。
【0058】
吐出検出部24の後段(即ち、吸着ベルト搬送部22の基板搬送方向下流側)には、基板2の有無を検出する(基板2の後端部が吸着ベルト搬送部22から抜け出したか否かを判断する)排出側センサ(不図示)が設けられている。該排出側センサの構成は上述した供給側センサと同一の構成が適用される。
【0059】
こうしてレジスト層5が形成された基板2は排出部26から排出される。また、図2には示さないが、排出部26には、種類ごと(例えば、サイズ別、レジストパターン別)に基板2を集積するソーターが設けられる。
【0060】
図2に示したように、レジスト液貯蔵/装填部14は、ヘッド12に供給されるレジスト液を貯蔵するタンクを有し、該タンクは不図示の管路を介してヘッド12と連通されている。また、レジスト液貯蔵/装填部14は、レジスト液残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えている。
【0061】
ヘッド12の後段に設けられる硬化処理部23は、基板2上に形成されたレジスト層5を加熱することで硬化させて基板2に定着させる。レジスト層5を加熱する加熱手段には、ヒータによって加熱した空気を吹き付ける態様や、赤外線やレーザにより加熱する態様が適用可能である。
【0062】
本例の吐出検出部24は、基板2に形成されたレジスト層5のパターンを読み取り、所定の信号処理などを行って印字状況(パターン欠損など)を検出し、制御系(例えば、図7の吐出制御部80)に提供する吐出検出手段として機能する。本例の吐出検出部24は、ベルト33の全幅(基板搬送方向と直交する副走査方向の長さ)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される(図3参照)。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0063】
〔ヘッドの構造の説明〕
次に、ヘッドの構造について説明する。図4(a) はヘッド12の構造例を示す平面透視図であり、図4(b)〜(d) はヘッド12の他の構造例(ヘッド12を複数のヘッドクロック(ノズルブロック)に分割した構造例)を示す平面透視図である。本例のヘッド12は、図4(a)〜(d)に示すように、レジスト液が出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数の吐出素子53を主走査方向(第2の方向)に沿って基板2の全幅に対応する長さにわたって並べた吐出素子列を、ヘッド12と基板2との相対搬送方向である副走査方向(第1の方向)に沿って等間隔に10列配置した構造を有している。
【0064】
即ち、ヘッド12は、基板2(図3参照)の同一位置にレジスト液を吐出可能な10個のノズル51を有する構造であり、シングルパススキャン方式において基板2の同一位置に1滴〜10滴のレジスト液を重ね打ちすることができる。
【0065】
一般に、配線基板のレジスト層は1μmから30μm程度の厚みが必要とされる。一方インクジェット方式による1回の吐出で得られるレジスト液(レジスト層5)の厚みは0.1μm〜1μm程度であり、インクジェット方式を用いて1μmから30μm程度の膜厚を得るためには、数回にわたって同一位置にレジスト液を重ね打ちするとともに、重ね打ちされたレジスト液を積層する必要がある。
【0066】
本例に示すインクジェット記録装置10は、副走査方向に沿って並べられた複数のノズルから成るノズル群を用いて、該ノズル群の中の異なる複数のノズルから基板2上の同一位置にレジスト液を重ね打ちすることでレジスト液を積層して所定の厚みを有するレジスト層5を形成する。
【0067】
例えば、1回のインク吐出で膜厚1μmのレジスト層5が形成されるとすると、10μmのレジスト層5を形成するには副走査方向に沿って所定の間隔で配置された10個のノズルすべてからレジスト液を吐出して、基板2上の同一位置に10個のレジスト液を積層する。なお、副走査方向のノズルの配置ピッチは等間隔(配置ピッチPns)としてもよいし、ノズルごとに適宜変えてもよい。
【0068】
先に着弾したレジスト液が硬化状態(または、完全に硬化していないが、先のレジスト液の上に次のレジスト液が着弾しても2つのレジスト液が濡れ広がらない半硬化状態)になった後に次のレジスト液が着弾すると、2つのレジスト液は濡れ広がることなく積層される。したがって、先に着弾したレジスト液が硬化状態(または、半硬化状態)になった後に次のレジスト液が着弾するように、副走査方向の隣接ノズルの配置間隔Pns及び基板2の搬送速度及び吐出タイミングが決められる。
【0069】
即ち、副走査方向のノズルの配置ピッチを等間隔(Pns)とした場合には、一定の搬送速度で基板2を搬送しながら、副走査方向に並べられたノズルから順次(基板搬送方向の上流側のノズルから順に)一定の吐出周期でレジスト液を吐出することで、基板2上の同一位置に一定の時間間隔で複数のレジスト液が順次着弾し、これらのレジスト液が積層される。
【0070】
レジスト層5の厚みはレジスト液の積層数(即ち、吐出を行うノズル数)を変えることで制御可能である。即ち、副走査方向に配置された10個のノズルを1つおきに使用して各ノズルから厚さ1μmのレジスト液を吐出させることで、5μmの厚さのレジスト層5を得ることができる。なお、上述した間引き駆動では、10個のノズル全てからレジスト液を吐出する場合と吐出周期を変えずに基板2の搬送速度を2倍にするか、或いは、基板2に搬送速度を変えずに吐出周期が2倍にされる。もちろん、吐出周期及び搬送速度とも変えずに10個のノズルのうち、連続する5個のノズルを選択してレジスト液を吐出させてもよい。
【0071】
本例では、副走査方向に10個のノズルを配置する態様を示したが、更に多くのノズルを副走査方向に配置してもよい。副走査方向のノズル数は、レジスト液の最大積層数に基づいて決められ、(レジスト層5の最大厚み)/(1回の吐出によるレジスト液の厚み)で求められる。即ち、厚さ30μmのレジスト層5を形成することを想定し、レジスト層1層あたりの誤差を考慮すると、副走査方向のノズル数は30個以上(好ましくは30個を超える数)とする態様がより好ましい。また、副走査方向に冗長にノズルを持ち、ノズル故障を検出して故障ノズルに対して冗長ノズルで代替吐出する構成とすることが好ましい。
【0072】
このように、フルライン型のヘッド12を用いたシングルパススキャン方式により、副走査方向に沿って並べられた異なるノズルから吐出されるレジスト液を積層してレジスト層5を形成すると、副走査方向に並んだ複数のノズルのそれぞれから吐出されるレジスト液の主走査方向の重ね合わせ精度は、シングルパススキャン内での走査精度と、副走査方向に並んだノズルの主走査方向の配置精度により決まるので、レジスト液の着弾位置の主走査方向のズレを小さくすることができる。
【0073】
一般に、基板2とヘッド12との相対走査の距離(総スキャン距離)が長くなると着弾精度が相対的に低下する傾向がある。例えば、副走査方向には1つのノズルしか持たないヘッドを基板に対して複数回にわたり往復走査させるマルチスキャン方式を用いて基板上にレジスト液を重ね合わせる従来技術では、(総スキャン距離)=(1回のスキャンにおけるスキャン距離)×(重ね合わせの回数)となる。本願発明では、副走査方向に重ね合わせ回数に対応する数のノズルを備え、シングルパススキャン方式を用いて基板上にレジスト液を重ね合わせるので、(総スキャン距離)=(1回のスキャンにおけるスキャン距離)となり、従来のマルチスキャン方式に比べて走査精度(シングルパススキャン内の走査精度)が向上する。
【0074】
また、本願発明では、上述したように基板2とヘッド12との総スキャン距離が従来に比べて短くなるので、基板2とヘッド12との移動時間もまた従来に比べて短くなる。このように処理時間が短縮されることで基板2の拡張及び収縮による位置ズレを従来に比べて抑えることが可能になるので、基板2の拡張及び収縮による精度の低下を低減可能である。
【0075】
また、図4(b) に示すように、主走査方向に基板2の全幅に対応する長さにわたって複数の吐出素子53を配置ピッチPnmで並べた吐出素子列を1列有するヘッドブロック12−1,12−2,…,を副走査方向に所定の配置ピッチ(各ヘッドブロックの配置ピッチが副走査方向のノズルの配置ピッチPnsとなる)で所定の数だけ(本例では10個)並べる態様も可能である。なお、図4(b)には、10個のヘッドブロック中3個だけを図示する。即ち、図4(b)に示すヘッドの構成例は、同一のレジスト液を吐出するヘッドブロックを副走査方向に沿って10個以上配置した構成といえる。なお、図4(b)に示す態様では、各ヘッドブロック間に図2に示す硬化処理部23を備えることが好ましい。更に、図4(c)に示すように、副走査方向のレジスト液の重ね合わせ数に対応する数のノズルを配置ピッチPnmで並べたノズル群を主走査方向に沿って複数配置した2つのヘッドブロック12−11,12−12を備え、一方のヘッドブロック12−11の主走査方向のノズル群の配置ピッチの中央に他方のヘッドブロック12−12のノズル群が配置される態様や、図4(d)に示すように、図4(b)に示す各ヘッドブロック12−1,12−2,…,のノズル配置に代わり副走査方向と直交しない斜め方向に沿ってレジスト液の重ね合わせ数に対応する数のノズルを並べたノズル群を副走査方向に複数並べたマトリクス配置が適用された10個のヘッドブロック12−101,12−102,…,12−110を備える態様も可能である。
【0076】
図4(d)に示す態様では、主走査方向のノズルの配置ピッチは、各ヘッドブロックのノズルを主走査方向に並ぶように投影した投影ノズル列の配置ピッチPnmとなる。また、副走査方向のノズルの配置ピッチPnsは、各ヘッドブロックの配置ピッチとなる。
【0077】
図4(a)〜(d)示すヘッド12及びヘッドブロック12−1〜12−10、ヘッドブロック12−11,12−12、ヘッドブロック12−101,12−102,(〜12−110)の各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。また、各圧力室52は供給口54を介して共通液室(図5に符号55で図示)と連通されている。
【0078】
図5は、ヘッド12(図4(a)〜(d)に示す吐出素子53)の立体構造を示す断面図(図4(a) 中のV−V線に沿う断面図)である。圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、加圧板56は圧電素子58の共通電極と兼用されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58にたわみ変形が生じて圧力室52が変形し、レジスト液がノズル51から吐出される。ノズルからレジスト液が吐出されると、共通液室55から供給口54を通って新しいレジスト液が圧力室52に供給される。
【0079】
本実施形態では、ピエゾ素子に代表される圧電素子58の変形によってレジスト液を加圧する方式が採用されている。本発明の実施に際して、圧電素子58にはピエゾ素子以外の他のアクチュエータを適用してもよい。
【0080】
〔レジスト液供給系の説明〕
次に、インクジェット記録装置10のレジスト液供給系の概略構成について説明する。図6はインクジェット記録装置10におけるレジスト液供給系の構成を示した概要図である。
【0081】
レジスト液供給タンク60はレジスト液を供給するための基タンクであり、図2で説明したレジスト液貯蔵/装填部14に設置される。レジスト液供給タンク60の形態には、レジスト液残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からレジスト液を補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてレジスト液の種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、レジスト液の種類情報をバーコード等で識別して、レジスト液の種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0082】
図6に示すように、レジスト液供給タンク60とヘッド12の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0083】
なお、ヘッド12の近傍又はヘッド12と一体にサブタンク(不図示)を設ける構成も好ましい。サブタンクは、圧力室52や共通液室55の内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0084】
サブタンクにより共通液室55内圧を制御する態様には、大気開放されたサブタンクとヘッド12内の圧力室52とのレジスト液の水位の差により圧力室52内の内圧を制御する態様や、密閉されたサブタンクに接続されたポンプによりサブタンク及び圧力室52の内圧を制御する態様などがあり、何れの態様を適用してもよい。
【0085】
〔ヘッドのメンテナンスの説明〕
図6に示すように、インクジェット記録装置10にはノズル51の乾燥防止又はノズル51近傍のレジスト液の粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられ、ノズル51が形成されるノズル形成面のクリーニング(ワイピング)を行うための手段としてブレード66が設けられている。
【0086】
キャップ64やブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド12に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド12下方の位置に移動される。
【0087】
図6に示すキャップ64は、ヘッド12のノズル形成面を全面にわたって覆うことができるサイズを有している。キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド12に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド12(ヘッド12のノズル形成面)に密着させることにより、ノズル形成面をキャップ64で覆う。
【0088】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上レジスト液が吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のレジスト液の溶媒が蒸発してレジスト液の粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58(図5参照)が動作してもノズル51からレジスト液を吐出できなくなってしまう。
【0089】
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲で)圧電素子58を動作させ、その劣化したレジスト液(粘度が上昇したノズル近傍のレジスト液)を排出すべく図6のキャップ64に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。
【0090】
この吸引動作は、初期のレジスト液のヘッド12への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度が上昇して固化したレジスト液の吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のレジスト液全体に対して行われるので、レジスト液の消費量が大きくなる。したがって、レジスト液の粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。なお、圧力室52(図5参照)に気泡が存在すると、圧電素子58を動作させたときに圧力損失が発生するので、圧力室52内の気泡を排除する目的でノズル吸引が実行される。
【0091】
図6のブレード66は、ノズル形成面に当接させながら移動してノズル形成面の汚れを除去する払拭手段として機能し、硬質ゴムなどの材料が好適に用いられる。即ち、ブレード66は所定の強度(剛性)及び所定の弾力性を有し、その表面はレジスト液をはじく所定の撥水性能を有している。ブレード66はノズル形成面に付着したレジスト液(固まってノズル形成面に固着したレジスト液)や紙粉、その他の異物を払拭除去可能な部材で構成される。
【0092】
また、図6には図示しないが、インクジェット記録装置10のヘッドメンテナンス機構(ヘッドメンテナンス手段)には、該ブレード66を上下方向に移動させてノズル形成面に接触させる/接触させない(非接触)を切り換えるブレード上下機構(不図示)や、ブレード66に付着した異物を除去するクリーニング手段が備えられている。
【0093】
〔制御系の説明〕
次に、本例に示すインクジェット記録装置10の制御系について説明する。図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、吐出制御部80、バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0094】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくるレジストパターンデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出されたレジストパターンデータは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力されたレジストパターンを一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0095】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0096】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがって搬送駆動系のモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。
【0097】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがってヒータ89を駆動するドライバーである。なお、図7に図示するヒータ89には、図2の硬化処理部23に用いられるヒータ、ベルト33に内蔵されるヒータ37、各ヘッド12の温度調節ヒータなどのヒータが含まれる。
【0098】
吐出制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内のレジストパターンデータから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号(吐出データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。吐出制御部80において所要の信号処理が施され、該レジストパターンデータに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド12のレジスト液の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のパターン幅やパターン形状を有するレジストパターンが実現される。
【0099】
即ち、レジストパターンデータを取得すると、レジストパターンの幅から1回に吐出されるレジスト液の液量が求められるとともに、レジスト層5の必要な厚みを得るための積層数が求められる。また、レジストパターンの形状に基づいてレジスト液の吐出位置が決められる。
【0100】
吐出制御部80にはバッファメモリ82が備えられており、吐出制御部80におけるレジストパターンデータ処理時にレジストパターンデータやパラメータなどのデータがバッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7においてバッファメモリ82は吐出制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、吐出制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0101】
ヘッドドライバ84は、吐出制御部80から与えられる吐出データに基づいてヘッド12の圧電素子58(図5参照)を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0102】
プログラム格納部90には、インクジェット記録装置10の制御プログラムが格納され、システムコントローラ72はプログラム格納部90に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
【0103】
吐出検出部24は、図2で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、基板2に形成されたレジストパターン(レジストパターンを形成するドット)を読み取り、所要の信号処理などを行ってレジスト液の吐出状況(吐出の有無、着弾位置及びドット径のばらつき、積層されるレジスト液の位置ズレ等)を検出し、その検出結果を吐出制御部80に提供する。吐出制御部80は、必要に応じて吐出検出部24から得られる情報に基づいてヘッド12に対する各種補正を行う。
【0104】
例えば、レジストパターンの欠陥を発見した場合には、該欠陥位置及び該欠陥位置に対応するノズルを特定し、次の基板へのレジスト層形成時には、特定されたノズルに対して他の近隣ノズルを用いて補正吐出を行うように制御する態様がある。
【0105】
上述した不図示の供給側センサ及び排出側センサから出力される検出信号は、システムコントローラ72に送出され、ベルト33の記録紙搬送路上に基板2があるか否かが判断される。
【0106】
なお、図7にはメモリ類を記憶される情報の内容によって分類して記載したが、これらのメモリ類は適宜共通化或いは分離することが可能である。また、システムコントローラ72や吐出制御部80に付随して設けられる態様に限らず、システムコントローラ72や吐出制御部80を構成するプロセッサの内蔵メモリを用いてもよい。
【0107】
〔レジスト層形成の詳細説明〕
図8(a)〜(c)は、ヘッド12から吐出されたレジスト液を積み重ねる様子を順に表した概念図である。本例に示すインクジェット記録装置10は、副走査方向に等間隔に配置された異なる複数のノズル(副走査方向のノズル間ピッチPns)から吐出された複数のレジスト液を基板2上の同一位置に積み重ねて、基板2上に所定の膜厚を有すレジスト層5(図1参照)が形成される。
【0108】
図8(a)は、1列目のノズル(図4(a),(b)に示す基板搬送方向の最上流側のノズル列に属するノズル)から1層目を形成するレジスト液100が基板2に着弾した状態を示す。基板2が副走査方向のノズル間ピッチPnsだけ基板搬送方向に搬送されると、1層目のレジスト液を吐出した1列目のノズルと副走査方向に隣り合う2列目のノズルから、1層目のレジスト液100の着弾位置と同一位置に2層目のレジスト液102が吐出され、1層目のレジスト液100に2層目のレジスト液102が積層される。
【0109】
図8(b)には、1層目のレジスト液100に2層目のレジスト液102が積層された状態を示す。2層目のレジスト液102が吐出されるまでに基板2上の1層目のレジスト液100は硬化(または、半硬化)しているので、1層目のレジスト液100に2層目のレジスト液102が積層される際に、2層目のレジスト液102が濡れ広がらずに積層される。なお、1層目のレジスト液100の副走査方向のドット間ピッチPdsは副走査方向のノズル間ピッチPns(図4(a)参照)と同じになる例を示したが、その限りではない。
【0110】
このようにして、基板2を副走査方向のノズル間ピッチPnsずつ基板搬送方向に搬送しながら、副走査方向に配置された基板搬送方向の最上流側のノズルから順にレジスト液を吐出させることで、副走査方向に配置された複数の異なるノズルから吐出されたレジスト液が所定の厚さまで積み重ねられる。
【0111】
図8(c)には、基板2の同一位置において、1層目のレジスト液100の上に2層目のレジスト液102を積層し、更に、3列目のノズルから吐出された3層目のレジスト液104及び4列目のノズルから吐出された4層目のレジスト液106、5列目のノズルから吐出された5列目のレジスト液108を積層した状態を示す。図8(c)には5層のレジスト液が積層された状態を模式的に示したが、実際にはレジスト層5が所定の厚みになるまでレジスト液が積層される。ここでは、積層されたドット群の副走査方向のドット間ピッチPdsは、副走査方向のノズル間ピッチPnsと同じとした例を示したが、その限りではない。
【0112】
このようにして、基板2とヘッド12とを相対的に搬送しながら基板2の全面にわたって所定厚みを有するレジストパターンが形成される。
【0113】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10は、基板2の相対搬送方向と平行方向である副走査方向に沿って複数のノズルが配置されるとともに、基板の相対搬送方向と直交する主走査方向の長さに対応する長さにわたってノズルが配置されたフルライン型のヘッド12を有し、基板2とヘッド12とを相対的に1回だけ副走査方向に走査させて基板2にレジスト液を吐出させて基板2に所定のパターンを有するレジスト層5を形成する際に、基板2の同一位置には副走査方向に沿って配置された異なるノズルから順に吐出されたレジスト液が積み重ねられるので、先に基板2に着弾したレジスト液が硬化状態または半硬化状態となった後に次のレジスト液が積層されて主走査方向のレジスト液の重ね合わせズレを防止することができ、所望の厚みを有する好ましいレジスト層5が形成される。
【0114】
また、レジスト液の最大積層数以上のノズルが副走査方向に並べられるので、所望の厚みを有するレジスト層5をシングルパススキャン方式によって形成可能であるとともに、複数のレジスト液を積層してレジスト層5を形成しても生産性を落とすことがない。
【0115】
特に、フレキシブル基板などの図1の絶縁層1に樹脂を用いた基板では、温度変化による膨張や収縮が大きいので、1層目のパターンニングと2層目のパターンニングとの時間間隔をシングルパススキャン方式(副走査方向に並んだノズル群による1回の副走査方向の走査ですべてのレジスト液の積層が完了する)により最短化できる本発明の構成が好ましい。
【0116】
本例では、固定されたヘッド12に対して基板2を副走査方向に移動させる態様を示したが、固定された基板2に対してヘッド12を副走査方向に移動させてもよいし、基板2及びヘッド12をともに副走査方向(反対方向)に移動させてもよい。
【0117】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9(a)は、本発明の第2実施形態に係るヘッド120のノズル配置を示す平面図である。なお、これから説明する第2実施形態中、先に説明した第1実施形態と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0118】
図9(a)に示すヘッド120は、図4(a)に配置例を示すヘッド12と同一のノズル配置を有し、基板2(図3参照)の幅方向である主走査方向に対応する長さにわたって複数のノズルが並べられたフルライン型ヘッドであり、基板2とヘッド120との相対移動方向である副走査方向に10個の(レジスト液の最大積層数に対応した数の)ノズルが配置ピッチPnsで等間隔に配置されている。
【0119】
ヘッド120の副走査方向に並べられた10個のノズルのうち、基板搬送方向の最上流側に配置されるとともに主走査方向の全幅にわたって配置された1列目のノズル51A(副走査方向に並べられたノズルのうち最初にレジスト液を吐出するノズル)は、2列目〜10列目のノズル51Bに比べて直径が小さくなっている。1列目ノズル51Aの直径Dn1と2列目〜10列目のノズル51Bの直径Dn2との関係は、Dn1<Dn2となっている。また、1列目のノズル51Aから吐出されたレジスト液によって形成されるドットの直径Dd1は、1列目のノズル51Aの主走査方向のノズル間ピッチPnmとの間に、Dd1<Pnmの関係を有している。
【0120】
ここで、1列目のノズル51Aの主走査方向のノズル間ピッチPnmは、1列目のノズル51Aにおける主走査方向に隣接するノズルの中心間距離である。
【0121】
なお、ドットの直径は、圧電素子58(図5参照)の駆動波形またはノズルの直径をかえることにより変更できる。一般に、ノズルの直径が小さいほど直径の小さいドットを形成することが可能になる。小さなドットを形成すると厚さも小さくなるため、所定の厚みのレジスト膜をえるためには適宜積層回数を増やすことが好ましい。
【0122】
図9(b)に示す副走査方向に複数のノズルを配置したノズル列を1列だけ備えるヘッドブロック120−1,120−2,…を副走査方向に10個並べた態様では、基板搬送方向の最上流側の1列目のヘッドブロック120−1のノズル51Aの直径Dn1は、2列目以降のヘッドブロック120−2,120−3,…のノズル51Bの直径Dn2よりも小さくなっている。また、1列目のヘッドブロック120−1のノズル51Aから吐出されるレジスト液によるドットの直径Dd1と1列目のヘッドブロック120−1の主走査方向のノズル間ピッチPnmは、Dd1<Pnmの関係を有している。
【0123】
即ち、1列目のノズル51から吐出された1層目のレジスト液は、基板2上で主走査方向の隣接位置に着弾したレジスト液同士が接触しない直径Dd1を有し、1列目のノズル51Aから吐出される主走査方向に隣り合う2つの1層目レジスト液の間には、基板2上において合一(着弾干渉)が発生しない。
【0124】
言い換えると、1列目のノズル51Aから吐出される1層目レジスト液によって形成される1層目ドット(図10(b)の符号140)は、主走査方向のドット間ピッチをPdm、ドットの直径をDd1とすると、Dd1<Pdmの関係を有しているので(図11(a)参照)、1列目のノズル51Aから吐出された1層目レジスト液は、基板2上で主走査方向に隣接するレジスト液間における合一が発生せずに定着するので、基板2上における主走査方向の移動が妨げられ、1層目のレジスト液には位置ズレが生じない。
【0125】
2列目のノズル51Bから吐出される2層目のレジスト液(図10(b)の符号142)は、1層目のレジスト液との親和性が高く、仮に2層目のレジスト液同士が接触して合一が発生しても1層目のレジスト液によって2層目のレジスト液(ドット)の主走査方向への移動が妨げられる。
【0126】
図10(a)〜(c)は、図9(a)に示すヘッド120、或いは図9(b)に示すヘッドブロック120−1,120−2,…,120−10からレジスト液を吐出して、基板2にレジスト層を形成する様子を示す図である。
【0127】
図10(a)に示す状態は、1列目のノズル51Aから吐出された1層目のレジスト液(ドット)140が基板2に定着した状態である。1列目のノズル51Aから吐出された1層目のレジスト液140は、主走査方向に隣接するレジスト液と接触しない直径を有し(図11(a)参照)、2層目のレジスト液(図10(b)の符号142)が1層目のレジスト液140に積層される前に基板2に定着する。1層目のレジスト液では、主走査方向に隣り合うレジスト液は互いに接触しないので、これらの間に合一は起こらず、1層目のレジスト液はそれぞれ単独で基板2に定着する。
【0128】
図10(b)には、2列目のノズル51Bから吐出された2層目のレジスト液142が先に基板に定着した1層目のレジスト液140の上に積層された状態を示す。図11(b)に示すように、2列目のノズル51Bから吐出された2層目のレジスト液142(実線で図示)は、基板2上で主走査方向に隣り合うレジスト液と接触する直径を有しているが(即ち、2層目のレジスト液の直径Dd2>2層目のレジスト液の主走査方向の打滴ピッチPdm)、2層目のレジスト液同士では合一が発生するが打滴位置の移動はなく、且つ、濡れ広がりも抑制され1層目のレジスト液140に積層される。なお、1層目のドットの主走査方向のドット間ピッチ(1列目のノズルのノズル間ピッチ)と2層目のドットの主走査方向のドット間ピッチ(2列目のノズルのノズル間ピッチ)は同一である。
【0129】
また、1層目のレジスト液140に着目すると、副走査方向のドット間ピッチPdsは、1層目のレジスト液140の直径Dd1を超える値(即ちPds>Dd1)となっている。
【0130】
図10(c)には、3列目以降のノズル51Bから吐出された3層目以降のレジスト液144,146が1層目のレジスト液140及び2層目のレジスト液142に積層された状態を示す。このようにして、所定の厚みになるまでレジスト液が積層される。
【0131】
図12(a)には、1層目のレジスト液140によって形成されるドットの一例を示し、図12(b)には、2層目以降のレジスト液(図10(c)の符号142,144,146等)によって形成されるドットの一例を示す。なお、図12(a)では1層目のドット140同士が接触しているように図示するが、実際の1層目のドット140同士は接触していない。
【0132】
レジストパターンの画像解像度が1200dpiの場合には、1層目のドット140の副走査方向のドット間ピッチPds(吐出タイミング(吐出インターバル)により決まる)と、主走査方向のドット間ピッチPdm(ノズルの主走査方向の配置ピッチにより決まる)が同一であるとすると、
dm=Pds=25.4×10−3(μm)/1200≒21(μm)
となる。即ち、1層目のドット140の直径Dd1は、
d1<21(μm)
となる。
【0133】
通常のインクジェット方式では、ドット形成位置(インク着弾位置)のばらつきが避けられず、ドット形成位置のばらつきを±2μmと想定して、より好ましくは、
d1<17(μm)
となる。他解像度の場合も同様に求めることができる。
【0134】
図12(b)には、2層目以降のレジスト液142,144,146,…によって形成されるドットの一例を示す。
【0135】
インクが基板(下地層)2を完全に被覆するための2層目のレジスト液によって形成されるドット142の直径Dd2の条件は、
d2>Pds且つ、Dd2>Pdm
となる。なお、2層目のドット142が、主走査方向及び副走査方向、斜め方向の何れの方向においても重なるときの2層目ドット142の直径Dd2の最小値は、21μm(=Pds=Pdm)×21/2≒30(μm)であり、
d2>30(μm)
となる。
【0136】
通常のインクジェット方式では、ドット形成位置(インク着弾位置)のばらつきが避けられず、ドット形成位置のばらつきを±2μmと想定して、ドット形成位置に位置ばらつきが生じた場合にも基板2をレジスト液で被覆させるためにより好ましくは、
d2>34(μm)
となる。
【0137】
なお、上述した1層目のドットの直径Dd1及び2層目のドットDd2を実現するための具体的な液滴量は、液物性、基板との接触角度、固形分濃度などに基づいて決められる。
【0138】
上述した第2実施形態によれば、副走査方向に隣り合う1層目のレジスト液140同士が合一しないように1層目のレジスト液140によって形成されるドットの直径Dd1が決められ、1層目のレジスト液140を硬化させて基板2に定着させた後に2層目のレジスト液142が1層目のレジスト液に積層されるので、1層目のレジスト液140には合一による位置ズレが発生せず、1層目のレジスト液140に積層される2層目以降のレジスト液にも位置ズレが発生せず、パターン欠陥が発生しない好ましいレジストパターンを得ることができる。
【0139】
なお、上記に説明した第2実施形態では、1列目のノズル51Aから吐出されるレジスト液によって形成されるドットの直径Dd1を1列目のノズル51Aから吐出されるレジスト液のドットの配置ピッチPds及びPdmよりも小さくするように、1列目のノズル51の直径Dn1を決める態様を例示したが、他の方法を適用することもできる。例えば、圧電素子58(図5参照)に印加される駆動信号を変更することで、レジスト液の吐出量(即ち、当該レジスト液により形成されるドットの直径)を可変することができる。駆動信号の変更には、電圧変調を適用してもよいし、パルス幅変調を用いてもよい。
【0140】
即ち、図9(a),(b)に示すような、1列目のノズル51Aの直径Dn1と2列目のノズルの直径Dn2との関係がDn1<Dn2となるヘッド120を用い、且つ、1列目のノズル51Aから吐出されるレジスト液によるドットの直径Dd1と、1列目のノズル51Aから吐出されるレジスト液によるドットの配置ピッチPdm、Pdsとの関係がDd1<Pdm、Dd1<Pdsとなるように、描画条件ごとに駆動信号(駆動波形)を選定することが好ましい。
【0141】
駆動信号を変更して1層目のドット140の直径Dd1を2層目のドット142の直径Dd2よりも小さくする場合、各種描画条件(液物性、基板種、描画解像度等)に応じて適宜ドットの直径を変更できるので(ノズルの直径を変える場合には、ヘッドが決まるとノズルの直径の変更はできない)、描画条件に合わせた調整に便利である。一方、駆動信号の変更によるドットサイズ変調では、変調範囲(特に、サイズを小さくする側)は限定的であり、ノズルの直径の変更によるドットのサイズ変調は、ドットの最小直径の変更に有利である。
【0142】
〔変形例1〕
次に、本発明の変形例について説明する。図13は、本変形例に係るインクジェット記録装置200の概略構成を示す全体構成図である。図13に示すインクジェット記録装置200は、上述したインクジェット記録装置10と同様に、基板2上に吐出したレジスト液を積層して、所望の厚みを有するレジスト層(図1参照)を基板2上に形成する。なお、本変形例では、基板2の幅方向(即ち、固定された基板2に対してヘッド202が移動する方向)を主走査方向とし、基板2がヘッド202に対して移動する方向を副走査方向としている。
【0143】
印字部204には、基板2の幅方向である主走査方向に延びる2本のガイドレール206に沿って往復移動可能なキャリッジ208が設けられている。キャリッジ208には、レジスト液を吐出するヘッド202及びスキャナユニット210が搭載されており、これらはキャッリッジ208に対して着脱自在に構成されており、キャリッジ208と一体的に主走査方向に走査可能となっている。
【0144】
なお、本応用例に適用されるレジスト液は上述した第1、第2実施形態に係るレジスト液と同一のものが適用されるので、ここでは説明を省略する。
【0145】
スキャナユニット210はレジストパターンを撮像するためのセンサ(不図示)を含み、基板2上に形成されるレジストパターンを読み取り、ヘッド202のインク吐出状態をチェックする手段として機能する。即ち、スキャナユニット210によってヘッド202に含まれる各ノズル(図4中符号51として記載)のばらつき検出が可能となっている。
【0146】
基板搬送量検出センサ212は、基板2の副走査方向における搬送量を計測する手段であり、副走査方向と略平行方向に沿って設けられる光電センサを含んで構成される。この搬送量検出センサ212から得られたセンサ信号に基づいて、基板2の搬送量が求められる。なお、基板2の搬送量を直接的に検出するセンサに代わり図2に示す吸着ベルト搬送部22を動作させるモータの軸に回転量センサ(ロータリーエンコーダ)を取り付け、該モータの回転量から基板2の搬送量を求めてもよい。
【0147】
なお、図示は省略するが、インクジェット記録装置200の基板搬送路上にはレジスト液吐出前の基板2をプリヒートするヒータや、基板2上のレジスト液を加熱して硬化させる硬化処理部23(図2参照)が備えられている。
【0148】
図14は、図13に示すヘッド202のノズル51の配置例を示す図である。ヘッド202は、主走査方向に沿って10個(レジスト液の最大積層数と同一)のノズル51が配置ピッチPで等間隔に並べられるとともに、副走査方向にはn個(但し、n=1,2,3,…)のノズル51が並べられたノズル配置を有している。
【0149】
即ち、ヘッド202を主走査方向に所定の速度で走査させて、主走査方向に並べられた10個のノズルから基板2の同一位置に対して、ヘッド202の走査方向の下流側のノズルから順にレジスト液を吐出すると、10個のレジスト液が積み重ねられて所定の厚みを有するレジスト層が形成される。主走査方向のノズル数は、レジスト液の最大積層数に基づいて決められ、(レジスト層5の最大厚み)/(1回の吐出によるインクの厚み)で求められる。
【0150】
本例では、基板2とヘッド202とを副走査方向に1回だけ走査させて基板2の全面にわたってレジスト層を形成するシングルパススキャンが適用される。言い換えると、主走査方向への1回の走査で走査可能な領域に対しては、ヘッド202の主走査方向への走査は1回だけ行われる。1回の主走査方向への走査が終わるとヘッド202と配線基板とを副走査方向に移動させて、主走査方向への走査が終了した領域と異なる領域に対して、ヘッド202の主走査方向への走査が行われる。
【0151】
副走査方向のノズル数nを大きくすると、1回の主走査方向への走査でより多くの領域にレジスト液を吐出させることが可能になる。なお、ヘッド202の主走査方向の走査は一方向の走査でもよいし、往復走査でもよい。ヘッド202を主走査方向に往復走査させる場合には、往路の走査が終了すると基板を所定量だけ搬送し、復路の走査では往路の走査領域と異なる領域を走査する。
【0152】
図15は、ヘッド202の内部構造を示した構成図であり、図15(a)はその一部を示した平面透視図、図15(b)は、図15(a)中XVb−XVb線に沿う断面図である。
【0153】
本例のヘッド202には、各ノズル51に対応して個別流路(圧力室)52’が設けられている。個別流路52’の一壁面にはレジスト液をノズル51から吐出するための吐出手段として発熱素子58’が設けられている。本例では、ノズル51に対向する壁面に発熱素子58’が配置されている。各個別流路52’はそれぞれ共通液室55に連通している。共通液室55には、図2のレジスト液貯蔵/装填部14から供給されるレジスト液が貯留されており、共通流路55から各個別液室52’にレジスト液が分配供給される。
【0154】
かかる構成により、発熱素子58’に所定の駆動信号が供給されると、発熱素子58’による発熱によって個別流路52’内に気泡が成長し、その気泡により生じる圧力によってノズル51からレジスト液が吐出される。レジスト液の吐出後、共通液室55から個別流路52’にインクが再供給される。
【0155】
なお、図15(a),(b)には、レジスト液の吐出方式としてサーマル方式を例示したが、もちろん上述した圧電素子の撓み変形によって圧力室の体積を変化させて、圧力室内のレジスト液に吐出力を与える吐出方式を適用してもよい。これ以外にも、レジスト液の吐出方式にはCIJ(コンティニューアスインクジェット)方式、静電吐出方式、静電吸引方式など様々な吐出方式を適用可能である。
【0156】
本例では、主走査方向には固定された基板に対してヘッド202を移動させ、副走査方向には固定されたヘッド202に対して基板2を移動させる態様を示したが、主走査方向及び副走査方向とも固定された基板に対してヘッド202を2次元的に移動させてもよい。
【0157】
〔変形例2〕
次に、本発明の他の変形例について説明する。以下に、基板2のレジスト液を硬化させて基板2に定着する硬化処理部23(図2参照)の構成例を示す。
【0158】
図16には、処理液を用いてレジスト液を硬化させる2液系のインクジェット記録装置200の全体構成を示す。
【0159】
図16に示すインクジェット記録装置220は、レジスト液と接触することでレジスト液を硬化させる処理液を基板2上に付与する処理液付与部222と、該処理液付与部222の基板搬送方向下流側に設けられ、処理液と反応して硬化するレジスト液を吐出するイレジスト液ヘッド224と、を備えている。また、処理液付与部222には処理液貯蔵/装填部14Sから不図示の供給路を介して処理液が供給される。なお、処理液貯蔵/装填部14Sは、レジスト液ヘッド224にレジスト液を供給するインク貯蔵/装填部14R(図2に示したレジスト液貯蔵/装填部14)と同一構成を有している。
【0160】
処理液が付与された基板2にレジスト液を吐出させると、処理液の作用によってレジスト液の樹脂粒子が凝集し、基板2にレジスト液(樹脂粒子)が定着する。なお、図示は省略するが、基板2上に残留するレジスト液の溶媒は溶媒除去部によって除去される。レジスト液の溶媒の除去には、吸収ローラなどの吸収部材によって接触除去する態様や、ヒータなどの加熱手段を用いて乾燥させる態様がある。
【0161】
処理液付与部222には、レジスト液ヘッド224と同一構造を有する吐出ヘッドを適用してもよいし、ローラなどの塗布部材により基板2へ処理液を塗布する態様を適用してもよい。即ち、処理液はレジスト液によるドット形成位置にのみ付与されてもよいし、レジスト液ドット形成位置よりも広い範囲に付与されてもよい。
【0162】
図16に示す2液系のインクジェット記録装置220では、図2に示す基板2をプリヒートするための加熱ファン41や、硬化処理部23の一例として挙げた加熱手段は不要である。
【0163】
処理液付与部222は、吐出制御部(図7参照)から送られる制御信号によって処理液付与制御部を介して制御される。例えば、吐出ヘッドを用いてレジスト液の吐出位置に処理液を付与する態様では、レジストパターンデータから生成されたレジスト液の吐出データと同一の処理液吐出データに基づいて処理液用の吐出ヘッドの吐出制御が行われる。
【0164】
図16には、処理液付与部222とレジスト液ヘッド224とを個別に備える態様を例示したが、処理液付与部222に吐出ヘッドを適用する態様では、処理液付与部222(処理液ヘッド)とレジスト液ヘッド224とを一体に形成することも可能である。
【0165】
2液の反応によりレジスト液を硬化させる態様では、図2に示すような硬化処理部23を備えることなく、レジスト液を硬化させて基板2に定着させることが可能である。
【0166】
図16に示す態様以外にも、輻射線硬化機能を有するレジスト液を用いて基板2にレジストパターンを形成し、該レジストパターンに輻射線を照射してレジスト液を硬化させる態様も可能である。即ち、レジスト液に重合開始剤及び輻射線硬化型モノマー(または、輻射線硬化型オリゴマー)などの輻射線硬化型重合性化合物を含有し、図6で説明した硬化処理部23には輻射線源が適用される。輻射線には紫外線や電子線などが適用可能であり、輻射線源には、照射する輻射線の照射源となる紫外線光源、赤外線光源、電子線照射機構などが適用される。
【0167】
なお、第2実施形態に対して輻射線照射によりレジスト液を硬化させる態様を適用する場合には、ヘッドの構成には図9(b)に示すような、副走査方向に1列のノズル列を有するヘッドブロックを主走査方向に複数配置する態様が好ましい。更に、各ヘッドブロックの後段に輻射線源を備え、各ヘッドブロックから吐出されたレジスト液に対して個別の輻射線を用いて輻射線を照射してレジスト液を硬化させた後に、次のヘッドブロックからのレジスト液吐出を行う態様が好ましい。
【0168】
また、図示は省略するが、吐出されたレジスト液を飛翔中に乾燥させて硬化させてもよい。即ち、レジスト液の飛翔雰囲気を乾燥雰囲気とする態様も適用可能である。更に、熱可塑性を有するレジスト液または相変化性能を有するレジスト液(例えば、ソリッドインクと同一性能を有するレジスト液)を用い、ヘッドを加熱するヘッド加熱手段を用いてレジスト液を相変化させて吐出し、基板2上に着弾したレジスト液を冷却手段によって冷却して硬化させる態様や、ER機能を有するレジスト液(電気粘性型レジスト液)を用いるとともに基板2上のレジスト液に電界を付与する電界付与手段を備え、電気粘性効果を用いて基板2上のレジスト液を硬化させる態様も可能である。
【0169】
〔応用例〕
次に、本発明の実施形態に係る応用例について説明する。図17は、静電式インクジェット記録装置の構成及びレジスト液の吐出方式を説明する概念図である。以下に説明する静電式インクジェット記録装置は、ヘッド300内でレジスト液316を濃縮して吐出するので、基板2に着弾したレジスト液316を予備硬化させる構成を備えることなく基板2上での着弾干渉を効果的に防止できるとともに、レジスト液316に帯電手段(電界付与手段)から電界を作用させてレジスト液316を吐出するので、高精細なドットを形成でき、且つ、安定した高い着弾精度を実現することができる。したがって、高精細及び高精度が要求されるプリント配線基板のレジストパターン形成にはより好適である。
【0170】
図17(a)に、本発明の応用例に係るヘッド300の概略構成の断面を模式的に示し、図17(b)に、図17(a)のXVIIb−XVIIb線に沿う断面図を示す。図17(a)に示すように、ヘッド300は、ヘッド基板302と、吐出ガイド304と、吐出口306が形成された吐出口基板308とを有する。吐出口基板308には、吐出口306を囲むように吐出電極320が配置されている。ヘッド300の吐出側の面(図中、上面)に対面する位置に、基板2を支持する対向電極310と、基板2の帯電ユニットが配置される。
【0171】
また、ヘッド基板302と吐出口基板308は、互いに対面した状態で所定間隔離間して配置される。ヘッド基板302と吐出口基板308の間に形成される空間によって各吐出口306にインクを供給するレジスト液流路314が形成される。
【0172】
ヘッド300は、より高密度な画像記録を高速に行うために、複数の吐出口(ノズル)306が2次元的に配列されたマルチチャンネル構造を有する。ヘッド300の吐出口基板308に複数の吐出口306は2次元的に配列されているが、図17(a)及び図17(b)においては、ヘッド300を分かりやすく示すために、複数の吐出口のうちの1つの吐出口だけを示している。
【0173】
ヘッド300においては、電荷を有する樹脂粒子を絶縁性の液体(キャリア液)に分散してなるレジスト液316を用いる。そして、吐出口基板308に設けられた吐出電極320に駆動電圧を印加して吐出口306に電界を発生させ、吐出口306のレジスト液を静電力により吐出させる。また、吐出電極320に印加する駆動電圧を、レジストパターンデータに応じてon/off(吐出on/off)することにより、レジストパターンデータに応じて吐出口306からレジスト液を吐出して、基板2上にレジストパターンを形成する。
【0174】
以下、図17(a)及び図17(b)に示した本発明のヘッド300の構造についてより詳細に説明する。
【0175】
図17(a)に示すように、ヘッド300の吐出口基板308は、絶縁基板322と、吐出電極320と、を有し、絶縁基板322の図中下側の面(ヘッド基板302に対面する側の面)には、レジスト液を吐出するための駆動電圧が印加される吐出電極320が形成されている。
【0176】
また、吐出口基板308には、レジスト液滴328を吐出するための吐出口306が絶縁基板322を貫通して形成されている。吐出口306は、図17(b)に示すように、長方形の両方の短辺側を半円形にした、レジスト液の流れ方向に細長い繭形の開口(スリット)であり、レジスト液の流れ方向の長さLとレジスト液の流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上となる形状を有する。
【0177】
本発明では、このように、吐出口306をレジスト液の流れ方向の長さLとレジスト液の流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上の開口とすることで、吐出口306にレジスト液が流れやすくなる。つまり吐出口306へのレジスト液の粒子供給性を高めることができ、周波数応答性を向上させ、更に目詰まりも防止することができる。この点については、レジスト液滴の吐出の作用とともに、後ほど詳細に説明する。
【0178】
また、本実施の形態では、吐出口306を繭形の開口として形成したが、これに限らず、吐出口306からレジスト液を吐出することができるのであれば、円形や略円形、楕円形、矩形、正方形、ひし形、平行四辺形など任意の形状で吐出口306を形成することができる。
【0179】
吐出口306の形状としてはレジスト液の流れ方向の長さとレジスト液の流れに垂直な方向の長さとのアスペクト比が1以上となるようなレジスト液の流れ方向に細長い形状であることが好ましい。これにより、吐出口へのレジスト液の供給性が高められ、目詰まりを防止することができ、連続した大ドットを安定して基板2に形成することができ、より高い周波数の描画数波数で高画質のレジストパターンを描画することができる。例えば、レジスト液の流れ方向を長辺とする矩形状、又は、レジスト液の流れ方向を長軸とする楕円形若しくはひし形で吐出口を形成することができる。また、レジスト液の流れの上流側を上底、下流側を下底とし、レジスト液の流れ方向の高さが下底よりも長い台形状で吐出口を形成してもよい。この場合、上流側の辺を長くしても下流側の辺を長くしてもよい。また、レジスト液の流れ方向を長辺とする長方形の両方の短辺側に、直径がその長方形の短辺よりも大きな円が接続されたような形状にしてもよい。このように吐出口306をレジスト液の流れ方向に細長い形状とすることにより、この吐出口306へのレジスト液の供給性を高めることができるとともに目詰まりも防止することができる。また、吐出口306は、その中心に対して、上流側と下流側で対称な形状であっても非対称な形状であっても良い。
【0180】
次に、図17(a)に示したヘッド300の吐出口基板308に形成されている吐出電極320について説明する。絶縁基板322の下面(ヘッド基板302と対向する面)には、図17(b)に示すような吐出電極320が形成されている。吐出電極320は、吐出口306の周囲を囲むように吐出口306の周縁に沿って配置されている。図17(b)においては、吐出電極320は吐出口306と相似形の形状で形成されているが、これに限定されず、吐出口306の周囲を囲む形状であれば種々の形状に変更することができる。例えば、円形、略円形、楕円形、略楕円形などの形状で吐出電極を形成することができる。また、吐出口306の形状に応じて種々の形状に変更することができ。吐出口306の周囲を完全に取り囲んでいなくてもよく、例えば、レジスト液の流れ方向の上流側又は下流側の吐出電極の一部が切りかかれたようなC字型、コ字型などの形状であってもよい。また、レジスト液の流れ方向に平行で吐出口を挟むように配置された平行電極や略平行電極としてもよい。
【0181】
前述のように、ヘッド300は、吐出口306が2次元的に配列された(図3参照)マルチチャンネル構造を有するので、吐出電極320もまた各吐出口306に対応して2次元的に配置されている。
【0182】
また、吐出電極320は、レジスト液流路314に露出し、レジスト液流路314を流れるレジスト液316と接触している。図17(a)に示すヘッド300は、このような構造としたことにより、レジスト液の吐出性を大幅に向上させることができる。この点については、後に、吐出の作用と共に詳述する。しかしながら、吐出電極320は、必ずしもレジスト液流路314に露出してレジスト液と接触している必要はなく、吐出電極320は吐出口基板308の内部に形成されていてもよいし、図17(a)に示した吐出電極320のレジスト液流路314に露出している面を絶縁層で被覆してもよい。
【0183】
また、吐出電極320は、図17(a)に示すように、駆動電圧制御部330に接続されている。駆動電圧制御部330は、レジスト液吐出時及び非吐出時に吐出電極に印加する駆動電圧を、描画信号(レジストパターンデータ)に応じて制御することができる。
【0184】
次に、図17(a)に示したヘッド300の吐出ガイド304について説明する。吐出ガイド304は、所定の厚みを有するセラミック製平板からなり、各吐出口306(吐出部)に対応してヘッド基板302の上に配置されている。吐出ガイド304は、吐出口306の長辺方向の長さに応じてわずかに幅広に形成されている。上述したように、吐出ガイド304は、吐出口306を通過し、その先端部分304Aが吐出口基板308の基板2側の表面(絶縁基板322の表面)よりも上方に突出している。
【0185】
吐出ガイド304の先端部分304Aは、レジスト液の流れ方向に平行な断面形状が、対向電極310側へ向かうに従って次第に細くなる略三角形(ないしは台形)になるように成形されている。吐出ガイド304は、先端部分304Aの傾斜面がレジスト液の流れ方向と交差するように配置される。これにより、吐出口306に流入するレジスト液が吐出ガイド304の先端部分304Aの傾斜面に沿って先端部分304Aの頂点に到達するので、吐出口306にレジスト液のメニスカスが安定して形成される。
【0186】
また、吐出ガイド304を吐出口306の長辺方向に幅広に形成することで、レジスト液の流れに直交する方向の幅を短くすることができ、レジスト液の流れに及ぼす影響を少なくすることができ、かつ後述するメニスカスを安定して形成させることができる。
【0187】
なお、吐出ガイド304の形状は、レジスト液316内の樹脂粒子を吐出口基板308の吐出口306を通って先端部分304Aに濃縮させることができれば、特に、制限的ではなく、例えば、先端部分304Aが対向電極310側に向かうに従って細くなるような形状でなくても良く、適宜変更することができる。例えば、吐出ガイド304の中央部分に、図中上下方向に毛細管現象によってレジスト液316を先端部分304Aに集める案内溝となる切り欠きが形成されていても良い。また、図17(b)では、吐出口の形状に応じて、レジスト液流方向に長い板状の形状としたが、これに限定されず、角柱にしてもよい。
【0188】
また、吐出ガイド304は、その最先端部に、金属が蒸着されていることが好ましく、吐出ガイド304の最先端部に金属を蒸着させることにより、吐出ガイド304の先端部分304Aの誘電率が実質的に大きくなる。これにより、吐出電極に駆動電圧が印加されたときに、吐出ガイド304に強電界を生じさせやすくなり、レジスト液の吐出性を向上することができる。
【0189】
本実施形態のヘッド300は、図17(a)に示すように、好ましい形態として、ヘッド基板302に吐出口306にレジスト液を誘導する誘導堰340が設けられている。誘導堰340は、ヘッド基板302のレジスト液流路314側の面、即ちレジスト液流路314の底面で、吐出ガイド304のレジスト液の流れ方向の上流側および下流側に設けられている。誘導堰340は、レジスト液の流れ方向に対して、吐出口306に対応する位置の近傍から吐出口306の中心に対応する位置に向かって、吐出口基板308に漸次近接するように傾斜した面を有している。即ち、誘導堰340は、レジスト液の流れ方向に沿って、吐出口306に向かって傾斜する形状を有している。
【0190】
また、誘導堰340は、レジスト液の流れに直交する方向には、吐出口306と略同一の幅を有し、底面から垂設する壁面を有する形状とされている。また、誘導堰340は、吐出口306を塞ぐことなく、レジスト液316の流路を確保するように、吐出口基板308のレジスト液流路314側の面、即ちレジスト液流路314の上面から所定の間隔を置いて設けられている。このような誘導堰340は、各々の吐出部にそれぞれ設けられている。
【0191】
このように、レジスト液流路314の底面に、レジスト液の流れ方向に沿って、吐出口306に向かって傾斜する誘導堰340を設けることによって、吐出口306へ向かうレジスト液の流れが形成され、レジスト液316が吐出口306のレジスト液流路314側の開口部に誘導される。そのため、レジスト液316を吐出口306内部へ好適に流入させることができ、レジスト液の樹脂粒子供給性をより向上させることができる。更に吐出口の目詰まりも、より確実に防止することができる。
【0192】
誘導堰340のインク流方向の長さlは、隣接する吐出口と干渉しない範囲で、レジスト液316を吐出口306へ好適に誘導できるように適宜設定されればよいが、誘導堰340の最高部の高さhに対し、3倍以上(l/h≧3)とするのが好ましく、8倍以上(l/h≧8)とするのがより好ましい。
【0193】
誘導堰340のレジスト液の流れと直交する方向の幅は、吐出口306と同等か、若干広いのが好ましい。また、誘導堰340の幅は、図示例のように均一なものには限定されず、幅が漸減するものや漸増するもの等であってもよい。また、その壁面も、垂直面には限定されず、傾斜面等であってもよい。
【0194】
誘導堰340の傾斜面(レジスト液の誘導面)は、レジスト液316を吐出口306に誘導するのに好適な形状とすればよく、一定の傾斜角を有する斜面であってもよいし、傾斜角が変化する面や、湾曲面であってもよい。また、その表面は、平滑面には限定されず、インク流方向に、或いは吐出口306の中心部に向かって放射状に、1条以上の畝や溝等が形成されていてもよい。
【0195】
また、誘導堰340の上部の吐出ガイド304との接部近傍は、図示例のように段差を有することなく、滑らかにつながる形状としてもよい。
【0196】
図示例では、誘導堰340が吐出ガイド304の上流側および下流側に配置された形態としているが、吐出口306の上流側および下流側に斜面を有する台形状の誘導堰340を設け、その上部に吐出ガイド304を立設する形態としてもよいし、吐出ガイド304および誘導堰340を一体的に形成してもよい。このように、誘導堰340は、吐出ガイド304と別々に、または、一体的に形成されて、ヘッド基板302に取り付けられてもよいし、あるいは、従来公知の掘削手段によりヘッド基板302を削り出して形成されてもよい。
【0197】
なお、誘導堰340は、吐出口306の上流側に設けられていれば良いが、図示例のように、吐出口306の下流側にも、レジスト液滴328の吐出方向の高さが吐出口306から遠ざかるにつれて低くなるように設けられているのが好ましい。これにより、上流側の誘導堰340によって吐出口306に向かって誘導されたレジスト液316が滑らかに下流側へ流れるので、レジスト液316が乱流になることなく、レジスト液の流れの安定を保つことができ、吐出安定性を保つことができる。
【0198】
次に、ヘッド300のレジスト液滴328の吐出面と対面して配置される対向電極310について説明する。対向電極310は、図17(a)に示すように、吐出ガイド304の先端部分304Aに対向する位置に配置され、接地される電極基板350と、電極基板350の図中下側の表面、即ちヘッド300側の表面に配置される絶縁シート352で構成される。
【0199】
この対向電極310の図中下側の表面、即ち絶縁シート352の表面に、基板2が例えば静電吸着によって保持される。対向電極310(絶縁シート352)は、基板2のプラテンとして機能する。
【0200】
対向電極310の絶縁シート352に保持された基板2は、少なくとも記録時には、帯電ユニット312によって、吐出電極320に印加される駆動電圧と逆極性の所定の負の高電圧に帯電される。その結果、基板2は負帯電して負の高電圧にバイアスされ、吐出電極320に対する実質的な対向電極として作用し、かつ、対向電極310の絶縁シート352に静電吸着される。
【0201】
帯電ユニット312は、基板2を負の高電圧に帯電させるためのスコロトロン帯電器354と、スコロトロン帯電器354に負の高電圧を供給するバイアス電圧源356とを有している。なお、本発明に用いられる帯電ユニット312の帯電手段としては、スコロトロン帯電器354に限定されず、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針などの種々の放電手段を用いることができる。
【0202】
また、図示例においては、対向電極310を電極基板350と絶縁シート352とで構成し、基板2を、帯電ユニット312によって負の高電圧に帯電させることにより、バイアス電圧を印加して対向電極として作用させ、かつ、絶縁シート352の表面に静電吸着させているが、本発明はこれに限定されず、対向電極310を電極基板350のみで構成し、対向電極310(電極基板350自体)を負の高電圧のバイアス電圧源に接続して、負の高電圧に常時バイアスしておき、対向電極310の表面に基板2を静電吸着させるようにしても良い。
【0203】
また、基板2の対向電極310への静電吸着と、基板2への負の高電圧への帯電または対向電極310への負のバイアス高電圧の印加とを別々の負の高電圧源によって行っても良いし、対向電極310による基板2の保持は、基板2の静電吸着に限られず、他の保持方法や保持手段を用いても良い。
【0204】
以上、本発明のヘッド300の構造について詳細に説明した。次に、このような構造を有するヘッドのレジスト液の吐出の動作について説明する。
【0205】
ヘッド300の記録動作時には、吐出電極320には、駆動電圧が印加される。即ち、描画信号(レジストパターンデータ)に同期して、レジスト液を吐出するための駆動電圧が印加される。レジスト液の吐出を指示する描画信号が吐出電極320に接続された駆動電圧制御部330に供給されると、その描画信号と同じタイミングで吐出電極320に駆動電圧が印加される。これにより、吐出電極320からインクの吐出に作用する電界が発生し、吐出口306からインクが吐出される。
【0206】
一方、レジスト液の非吐出を指示する描画信号が駆動電圧制御部に供給された場合には、吐出電極320には駆動電圧は印加されずに0[V]とされる。このため、吐出電極320からは吐出のための電界は発生しないので、吐出口306からインクは吐出されない。なお、描画信号の1周期が基板2に1ドットを形成するのに要する時間に相当する。また、吐出電極320に印加される駆動電圧は、例えば、600[V]に設定される。吐出電極320に駆動電圧を印加しない場合は、吐出電極320は、例えば、0[V]に設定される。駆動電圧の電圧値は、上記値に限定されず、吐出電極320に駆動電圧を印加したときに確実にインクを吐出させることができれば、任意の電圧値に設定することができる。
【0207】
次に、本応用例のヘッド300に用いられるインクについて説明する。
【0208】
レジスト液316は、樹脂粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109 Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、樹脂粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
【0209】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中の樹脂粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
【0210】
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ω・cm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのレジスト液の吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの滲みを生じたりするからである。
【0211】
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0212】
このようなキャリア液に分散される樹脂粒子は、樹脂粒子自身を樹脂粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。
【0213】
更に、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
【0214】
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。更に、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点の何れか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0215】
レジスト液316において、樹脂粒子の含有量(樹脂粒子あるいは更に分散樹脂粒子の合計含有量)は、レジスト液全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、更に好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。樹脂粒子の含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、レジスト液316と基板2表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均一な分散液が得られにくくなったり、ヘッド等でのレジスト液316の目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0216】
また、キャリア液に分散された樹脂粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0217】
樹脂粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより樹脂粒子を荷電して、荷電した樹脂粒子をキャリア液に分散してなるレジスト液316とする。なお、樹脂粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
【0218】
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
【0219】
なお、樹脂粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷の何れに荷電したものであってもよい。
【0220】
また、樹脂粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、更に好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0221】
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上とする。
【0222】
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、レジスト液316の電気伝導度、σ2は、レジスト液316を遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5[V]、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
【0223】
以上のようなレジスト液316を用いることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0224】
レジスト液316の電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、更に好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
【0225】
また、レジスト液316の表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、更に好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
【0226】
更に、レジスト液316の粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、更に好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
【0227】
このようなレジスト液316は、一例として、樹脂粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、樹脂粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
【0228】
(1)樹脂粒子あるいは更に分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
【0229】
(2)樹脂粒子、あるいは更に分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
【0230】
(3)樹脂粒子および荷電調整剤、あるいは更に分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
【0231】
上述したように、本応用例に係るヘッド300では、基板2に着弾するレジスト液の高粘度化手段を別途具備することなく、ヘッド内でレジスト液を濃縮して吐出することが可能であり、基板2上におけるレジスト液の着弾干渉を効果的に防止することができる。更に、高精細且つ、高い着弾精度といった特徴を有しているので、レジストパターンの形成には好適である。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明が適用されるプリント配線基板の製造方法を説明する図
【図2】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の基本構成図
【図3】図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図
【図4】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図5】ヘッドの立体構造を示す断面図
【図6】図1に示すインクジェット記録装置のインク供給系の構成を示す断面図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図8】図1に示すインクジェット記録装置のインク吐出を説明する図
【図9】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置に備えられたヘッドのノズル配置を示す平面図
【図10】図9に示すインクジェット記録装置のインク吐出を説明する概念図
【図11】図9に示すインクジェット記録装置により形成されたドットの配置を説明する概念図
【図12】図1に示すドットの詳細を説明する図
【図13】本発明の変形例に係るインクジェット記録装置の構成図
【図14】図13に示すインクジェット記録装置に備えられたヘッドのノズル配置を示す平面図
【図15】図13に示すインクジェット記録装置のヘッドの構造を説明する図
【図16】本発明の他の変形例に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図17】本発明の応用例に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【符号の説明】
【0233】
2…基板、5,140,142…レジスト層、10,200,220,300…インクジェット記録装置、12,120,202,222,224,300…ヘッド、22…吸着ベルト搬送部、23…硬化処理部、51,51A,51B,306…ノズル、310…対向電極、312…帯電ユニット、320…吐出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板にレジスト液を吐出する複数のノズルを第1の方向に所定の配置間隔で並べたノズル群を有するヘッドと、
前記配線基板と前記ヘッドとを前記第1の方向に相対的に走査させる走査手段と、
前記ヘッドのレジスト液の吐出を制御する吐出制御手段と、
前記配線基板と前記走査手段の前記第1の方向への1回の走査で走査可能な前記配線基板の領域に対して、前記ヘッドと前記配線基板とを前記第1の方向に1回だけ相対的に走査させるように前記走査手段を制御する走査制御手段と
を備え、
前記吐出制御手段は、前記配線基板の同一位置に対して前記ノズル群の異なるノズルから同一のレジスト液を所定の時間間隔で順番に吐出させて、前記配線基板の同一位置に異なるノズルから吐出されたすべてのレジスト液を積層させて、前記配線基板に所定の厚みを有し所定パターンを有するレジストパターンを形成することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記第1の方向にレジスト液の最大積層数以上の数のノズルを並べたノズル群を有することを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記第1の方向に所定の間隔で複数のノズルを並べたノズル群が、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記レジストパターンの前記第2の方向の最小ドット間ピッチと同一の配置間隔で配置された構造を有し、
前記第1の方向に並べられた複数のノズルから配線基板の同一位置に最初に吐出されるレジスト液のドットの直径は、前記第2の方向の隣接ドットの中心間距離未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1の方向に並べられたノズルから配線基板の同一位置に最初に吐出されるレジスト液のドット直径は、前記第1の方向の隣接ドットの中心間距離未満であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記配線基板上のレジスト液を硬化させる硬化手段を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ヘッドと前記配線基板との間に電界を発生させる電界形成手段を備えるとともに、前記レジスト液は絶縁性溶媒に重合性化合物、分散剤及び荷電調整剤を含む成分を分散させて粒子化した荷電粒子を含有する組成を有し、
前記電界形成手段によって発生させた電界をレジスト液に作用させて、前記配線基板に前記荷電粒子を付着させることを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
複数のノズルを第1の方向に所定の配置間隔で並べたヘッドから配線基板にレジスト液を吐出させて前記配線基板にレジストパターンを形成するレジストパターン形成方法であって、
前記配線基板と前記ヘッドとの前記第1の方向の1回の走査で走査可能な前記配線基板の領域に対して、前記ヘッドと前記配線基板とを前記第1の方向に1回だけ相対的に走査させながら、前記配線基板に同一位置に対して前記第1の方向に並べられた複数のノズルからレジスト液を所定の時間間隔で順番に吐出させて、前記配線基板の同一位置に異なるノズルから吐出された複数のレジスト液を積層させて、前記配線基板に所定の厚みを有し所定のパターンを有するレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターン形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−73647(P2008−73647A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257794(P2006−257794)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】