説明

液体封入式マウント装置

【課題】振幅の比較的大きい低周波振動が入力された場合の打音の発生を抑制しながら、振幅の比較的小さい高周波振動を効果的に減衰させることができ、エンジンの振動特性等の差異に応じて容易に設計及び製作できる液体封入式マウント装置を実現する。
【解決手段】液体封入式マウント装置1において、中間室Bに、中間室Bを介した受圧室Aと平衡室Cとの間の液体の流動に伴って中間室B内を移動可能な可動部材20と、中間室Bの受圧室A側の壁部と可動部材20との間に配設された第1防音部材30と、中間室Bの平衡室C側の壁部と可動部材20との間に配設された第2防音部材30とを備え、可動部材20の受圧面22の面積を、第1及び第2防音部材30,30の受圧面33の面積より広く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切部材に、受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路と、受圧室と平衡室を相互に連通する中間室とを設けて、受圧室、平衡室及び中間室に非圧縮性の液体を封入してある液体封入式マウント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、作動室(特許文献1の図1の8)と平衡室(特許文献1の図1の9)とを連通する空所内にディスク(特許文献1の図1の11)を配設し、このディスクの空所内における少量の変位によって作動室内の容積を可変にすることにより、作動室の液圧の上昇を吸収して、振幅の比較的小さい高周波振動を抑制し、車両等の乗り心地を向上できるように構成された弾性体緩衝支持体が知られている。
【0003】
特許文献1の弾性体緩衝支持体では、ディスクが穴(特許文献1の図1の12)を塞ぐことにより、ノズル(特許文献1の図1の6)によって振幅の比較的大きい低周波振動を抑制できるように構成されている。そのため、振幅の比較的大きい低周波振動が入力された場合には、ディスクが仕切壁の内面に当接して打音が生じ、エンジンの始動、発進及び停止時における騒音を悪化させる一因になるといった問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2の流体封入式マウント装置が提唱された。特許文献2の流体封入式マウント装置では、受圧室(特許文献2の図1の38)と平衡室(特許文献2の図1の40)とを連通する収容空間(特許文献2の図1の48)に仕切板(特許文献2の図1の54)を配設し、この仕切板に環状突起(特許文献2の図2の56)を設けて、仕切板及び環状突起の弾性変形によって振幅の比較的小さい高周波振動を抑制でき、かつ振幅の比較的大きい低周波振動が入力された場合の打音の発生を防止できるように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−9340号公報(図1参照)
【特許文献1】実開昭64−14941号公報(図1、図2、及び第4〜6頁参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の流体封入式マウント装置では、仕切板及び環状突起の弾性変形によって振幅の比較的小さい高周波振動を抑制するように構成されており、振幅の比較的大きい低周波振動が入力された場合の打音の発生を抑制できるといった利点を有する反面、仕切板及び環状突起の弾性変形による変位量が少なく、受圧室の液圧の上昇を十分に吸収することができず、振幅の比較的小さい高周波振動を効果的に減衰させることが困難であるといった問題があった。
【0007】
また、特許文献2の流体封入式マウント装置では、エンジンの振動特性等の差異に応じた流体封入式マウント装置を設計及び製作することが困難であるといった問題があった。具体的には、例えば流体封入式マウント装置に載置するエンジンの振動特性等が異なる場合に、比較的設計変更等が容易な仕切板や環状突起の形状や材質を変更することによって、異なるエンジンの振動特性等に合致させようとしても、環状突起を含む仕切板を収容する収容空間の広さは決まっており仕切板や環状突起の形状を大きく変更することができない。そのため、エンジンの振動特性等の差異に応じた流体封入式マウント装置を設計及び製作することが困難であった。
【0008】
本発明は、振幅の比較的大きい低周波振動が入力された場合の打音の発生を抑制しながら、振幅の比較的小さい高周波振動を効果的に減衰させることができ、エンジンの振動特性等の差異に応じて容易に設計及び製作できる液体封入式マウント装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、液体封入式マウント装置を、次のように構成することにある。
所定の間隔を隔てて配設された第1取付部材と第2取付部材とをゴム弾性体で連結し、壁部の一部が前記ゴム弾性体で構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とを仕切部材を間に挟んで形成し、前記仕切部材に、前記受圧室と前記平衡室とを相互に連通するオリフィス通路と、前記受圧室と前記平衡室とを相互に連通する中間室とを設けて、前記受圧室、平衡室及び中間室に非圧縮性の液体を封入し、
前記中間室に、前記中間室を介した前記受圧室と前記平衡室との間の液体の流動に伴って前記中間室内を移動可能な可動部材と、前記中間室の受圧室側の壁部と前記可動部材との間に配設された第1防音部材と、前記中間室の平衡室側の壁部と前記可動部材との間に配設された第2防音部材とを備え、
前記可動部材の受圧面の面積を、前記第1及び第2防音部材の受圧面の面積より広く設定する。
【0010】
(作用)
本発明の第1特徴によると、液体封入式マウント装置に振幅の比較的大きい低周波振動が入力されて受圧室(又は平衡室)から中間室を介して平衡室(又は受圧室)に液体が流動すると、受圧面の面積が大きく設定された可動部材が、受圧面の面積が小さく設定された第1及び第2防音部材より速く中間室内を移動し、可動部材が第2防音部材(又は第1防音部材)に追いついて当接し、可動部材の移動する速度が遅くなって、可動部材が第2防音部材(又は第1防音部材)とともに減速されて中間室の平衡室側(又は受圧室側)の壁部に当接する。その結果、可動部材が第1又は第2防音部材を介して中間室の壁部に当接することによる打音が発生し難くなる。
【0011】
本発明の第1特徴によると、液体封入式マウント装置に振幅の比較的小さい高周波振動が入力されると、可動部材が移動することによって受圧室の容積が比較的多く変化し、受圧室の液圧の上昇を比較的多く吸収して、振幅の比較的小さい高周波振動を効果的に減衰させることができる。
【0012】
本発明の第1特徴によると、例えば可動部材の受圧面の面積と、第1及び第2防音部材の受圧面の面積との面積比を変更することによって、第1及び第2防音部材に対する可動部材の移動速度を速く(又は遅く)設定することができる。その結果、エンジンの振動特性等が異なる場合であっても、可動部材の受圧面の面積と、第1及び第2防音部材の受圧面の面積との面積比を変更することによって、エンジンの振動特性等の差異に応じた液体封入式マウント装置を容易に設計及び製作することができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、振幅の比較的大きい低周波振動が入力された場合の打音の発生を抑制でき、エンジンの始動、発進及び停止時における騒音を低減できる。
【0014】
本発明の第1特徴によると、可動部材の移動によって振幅の比較的小さい高周波振動を効果的に抑制することができ、車両等の乗り心地を向上させることができる。
【0015】
本発明の第1特徴によると、液体封入式マウント装置の設計及び製作作業の作業性を向上させることができ、製造コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔エンジンマウントの全体構成〕
図1〜図3に基づいてエンジンマウント1(液体封入式マウント装置に相当)について説明する。図1及び図2は、エンジンマウント1の縦断側面図及び横断平面図をそれぞれ示し、図3は、中間室B付近の詳細縦断側面図を示す。なお、図2は、図1のX−Xの位置での横断平面図を示す。また、以下の説明において、図1の紙面上方及び紙面下方をそれぞれ上方及び下方と表示する(図3〜図6においても同様)。
【0017】
図1〜図3に示すように、第1取付金具2(第1取付部材に相当)と第2取付金具3(第2取付部材)が所定間隔を開けて配設されており、この第1取付金具2と第2取付金具3とが本体ゴム4(ゴム弾性体に相当)によって弾性的に連結されている。第1取付金具2には、ナット部2aが形成されており、第1取付金具2の上面側にエンジン(図示せず)を載置して、上方からボルト(図示せず)をナット部2aに締め付け固定することで、エンジンマウント1の一方側(上部)をエンジン側に連結できる。
【0018】
第2取付金具3は、円筒状の支持筒体3aと、この支持筒体3aの下端部から折り曲げ成形されたかしめ部3bとを備えて構成されており、この支持筒体3a又はかしめ部3bを、車体(図示せず)に連結するブラケット(図示せず)に内嵌することで、エンジンマウント1の他方側(下部)を車体側に連結できる。
【0019】
本体ゴム4には、その下部に、上方に凹入した凹入部4aが形成されており、この凹入部4aと仕切板5によって受圧室Aが形成されている。仕切板5(仕切部材に相当)は、円盤状に形成されており、その中央部に上下に連通する複数の連通口5aが形成され、その側部に上下向きのオリフィス穴5bが形成されている。
【0020】
オリフィス部材10(仕切部材に相当)は、アルミ製で円錐台形状に形成されており、このオリフィス部材10の上部に下方へ円柱状に凹入した第1凹入部11が形成され、この第1凹入部11と仕切板5によって中間室Bが形成されている。オリフィス部材10の側部上面側には上方へ突出した円柱状の位置決め部13が形成されており、この位置決め部13を仕切板5のオリフィス穴5bに係合させることで、仕切板5に対するオリフィス部材10の位置を位置決めができる。オリフィス部材10の下部には、上方へ円柱状に凹入した第2凹入部12が形成されており、この第2凹入部12とダイアフラム6によって平衡室Cが形成されている。
【0021】
オリフィス部材10の第1凹入部11と第2凹入部12との間には、仕切部14が形成され、この仕切部14に中間室Bと平衡室Cとに連通する連通口15が形成されている。オリフィス部材10の外周部には、断面形状が台形状のオリフィス通路16が形成されており、このオリフィス通路16が仕切板5のオリフィス穴5bから平衡室Cに連通されている。
【0022】
ダイアフラム6は、薄膜製のゴム材によって形成されており、その外周部に位置する取付部6aと、中央部に位置する半球状に上方へ凹入した変化部6bとを備えて構成されており、この変化部6bが上下に弾性変形することで、平衡室Cの容積が受圧室Aからの液体の流入及び流出に伴って変化する。ダイアフラム6の外周部には芯金部材7が埋め込まれており、この芯金部材7の上端部がダイアフラム6から突出した形状に成形され、全周に亘って外方側に折り曲げ成形されたフランジ部7aが形成されている。
【0023】
オリフィス部材10と仕切板5と間の中間室Bに後述する可動板20及び防音板30,30を装着した状態で、オリフィス部材10の位置決め部13を仕切板5のオリフィス穴5bに位置決めし、オリフィス部材10を仕切板5の下面側に当接させる。そして、ダイアフラム6の外周部の内面側をオリフィス部材10の外周面に当接させて、仕切板5の外周部と芯金部材7のフランジ部7aを第2取付金具3のかしめ部3bに上下に挟んでかしめ固定することで、仕切板5及び芯金部材7を第2取付部材3に固定でき、受圧室A、中間室B及び平衡室Cで囲まれた空間に非圧縮性の液体(例えばポリアルキレングリコールやシリコーン等)を封入することでエンジンマウント1が構成される。
【0024】
〔可動板及び防音板の詳細構造〕
図3及び図4に基づいて、中間室Bに配設された可動板20(可動部材に相当)及び防音板30,30(第1及び第2防音部材に相当)の詳細構造について説明する。図4は、可動板20及び防音板30,30の詳細構造を説明するための概略斜視図を示す。なお、図4においては、中間室Bの上下方向の寸法を実際の寸法より長く表示している。
【0025】
図3及び図4に示すように、オリフィス部材10と仕切板5によって形成された中間室Bに、2枚の防音板30,30が、可動板20を間に挟んだ形で配設されている。図3に示す受圧室A又は平衡室Cから中間室Bを経由して平衡室C又は受圧室Aに液体が流入していない状態では、仕切板5と防音板30との間、防音板30と可動板20との間、可動板20と防音板30との間、及び防音板30とオリフィス部材10の仕切部14との間に、所定の隙間が形成されており、可動板20及び防音板30,30の板厚の和が、オリフィス部材10の第1凹入部11の凹入する深さ(中間室Bの深さ)より小さい寸法になるように設定されている。
【0026】
可動板20は、材質がゴム製で円板状に形成されており、その中心部に上方及び下方に突出したゴム製の突片21が一体成形されている。突片21は、円錐状の先端が尖った形状に成形されており、防音板30の係入穴31の形状に合わせた形状に成形されている。この可動板20に一体成形した突片21によって、中間室B内を液体が移動していない状態で、可動板20と防音板30との間の隙間を確保することができ(可動板20と防音板30が一定の隙間を開けて離間した状態を維持することができ)、可動板20と防音板30が密着状態となって防音効果が低下することを防止できる。
【0027】
防音板30は、可動板20と同じ材質のゴム製で可動板20より外径の小さい円板状に形成されており、その中心部に可動板20の突片21が係入する円形の係入穴31が形成され、その外周部に上下向きの複数の円形の貫通穴32が等ピッチで形成されている。このように、防音板30を円板状に形成し、防音板30に等ピッチで貫通穴31を形成することにより、液体が中間室B内を移動する場合に、防音板30を略水平な状態で上下に移動させることができる。
【0028】
すなわち、中間室B内を液体が通過することにより、図3に示す状態から可動板20が上方(又は下方)に移動すると、まず可動板20の突片21が防音板30の係入穴31に入り込み、さらに可動板20が上方(又は下方)に移動すると、可動板20の突片21及び防音板30の係入穴31が共に弾性変形して可動板20の突片21が防音板30の係入穴31に更に入り込んで、可動板20の上面側(又は下面側)が防音板30の下面側(上面側)に当接するように構成されている。このように、可動板20の突片21及び防音板30の係入穴31を構成することにより、可動板20の突片21及び防音板30の係入穴31の弾性変形によって、可動板20を更に減速させることができる。
【0029】
可動板20の上面側及び下面側の受圧面22の面積は、防音板30の上面側及び下面側の受圧面33の面積(係入穴31及び複数の貫通穴32を除いた面積)より広く設定されており、中間室B内を通過する液体によって受圧する面積に差異が生じるように構成されている。すなわち、可動板20の液体から受ける受圧面22の面積を広く設定し、防音板30の液体から受ける受圧面33の面積を狭く設定することにより、中間室B内で移動する可動板20の速度と、防音板30の速度に差を生じさせることができる。なお、この可動板20及び防音板30の受圧面22,33の面積の比を、例えば大きくすると、可動板20と防音板30の移動する速度差を大きくすることができ、より効率的に可動板20を減速させることができる。
【0030】
〔可動板及び防音板の移動状況〕
図5に基づいて、中間室B内を液体が通過した場合の可動板20及び防音板30の移動状況について説明する。図5は、中間室B内の可動板20及び防音板30の移動状況を説明するための概略図を示し、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の順で変化していく状態を示す。なお、図5に示す矢印は、液体の移動する方向(流動する方向)を示す。
【0031】
図5に示すように、例えば図5(イ)に示す状態で、エンジン又は車体からエンジンマウント1へ振幅が比較的大きい低周波振動が入力されて、平衡室Cからの液体が中間室Bに移動し、中間室B内を下方から上方に液体が移動すると、可動板20と防音板30の受圧面22,33の面積の差異によって、可動板20に、防音板30に作用する液圧よりも大きな液圧が作用して、可動板20が防音板30よりも速い速度で上方に移動し、可動板20の突片及び上側の防音板30の係入穴31の弾性変形によって減速されながら、可動板20の上面側が上側の防音板30の下面側に当接する(図5(ロ)の状態)。
【0032】
可動板20が上側の防音板30に当接すると、可動板20の加速度が低く抑えられて、可動板20が上側の防音板30と共に遅い速度で上方に移動し、上側の防音板30の上面側が仕切板5の下面側に当接する(図5(ハ)の状態)。
【0033】
図5(ハ)に示す状態から、受圧室Aからの液体が中間室Bに移動し、中間室B内を上方から下方に液体が移動すると、可動板20と防音板30の受圧面22,33の面積の差異によって、可動板20に、防音板30に作用する液圧よりも大きな液圧が作用して(貫通穴31を介して作用する液圧の分、可動板20に大きな液圧が作用する)、可動板20の突片21の上側の防音板30の係入穴31への係合が外れて、可動板20が防音板30よりも速い速度で下方に移動する。そして、可動板20の突片21が下側の防音板30の係入穴31に入り込んで、可動板20の突片21及び下側の防音板30の係入穴31の弾性変形によって減速されながら、可動板20の上面側が下側の防音板30の下面側に当接する(図5(ニ)の状態)。
【0034】
可動板20が下側の防音板30に当接すると、可動板20の加速度が低く抑えられて、可動板20が防音板30と共に遅い速度で下方に移動し、下側の防音板30の下面側がオリフィス部材10の仕切部14の上面側に当接する(図5(ホ)の状態)。
【0035】
図5(ハ)又は図5(ホ)の状態になると、可動板20及び防音板30によって仕切板5の連通口5a又はオリフィス部材10の仕切部14の貫通口15が塞がれて、仕切板5のオリフィス穴5b及びオリフィス部材10のオリフィス通路16を介して受圧室A又は平衡室Cから平衡室C又は受圧室Aに液体が移動して、オリフィス通路5bによる振動の減衰効果が発揮される。
【0036】
一方、エンジン又は車体からエンジンマウント1への入力振動の振幅が比較的小さい高周波振動の場合には、受圧室A又は平衡室Cから中間室Bを介して平衡室C又は受圧室Aに液体が移動し、上述した可動板20及び防音板30が上下に移動することにより、可動板20及び防音板30の変位によって、受圧室A及び平衡室Cの容積が変更されて、振幅が比較的小さい高周波振動の減衰効果が発揮される。
【0037】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、可動板20に突片21を設けた例を示したが、突片21を備えていない可動板20を採用してもよい。
【0038】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、可動板20の突片21の形状を円錐状の先端が尖った形状に成形した例を示したが、図6に示すように、突片21の形状を角錐状の先端が尖った形状に成形してもよく、また、図示しないが突片21の形状を円柱状や円錐台形状に構成してもよく、突片21の先端部の形状を丸く湾曲させた形状に構成してもよい。
【0039】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、防音板30に複数の円形の貫通穴32を設けた例を示したが、単一の貫通穴32や異なる数の貫通穴32、さらには異なる形状の貫通穴32を採用してもよく、例えば図6に示すように、防音板30に、網目状に開口した形状の貫通穴32を設けてもよい。また、図示しないが可動板20の受圧面22の面積と防音板30の受圧面33の面積が異なるのであれば、防音板30に形成する貫通部の形状や構造は異なるものを採用してもよい。
【0040】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、円板状に形成した防音板30の外径を、円板状に形成した可動板20の外径より小さく設定した例を示したが、円板状に形成した防音板30と、円板状に形成した可動板の外径を同じ外径に設定してもよい。このように、防音板30の外径を大きく設定することにより、防音板30の左右方向のズレを防止でき、可動板20の突片21と防音板30の係入穴31を無理なく係合させることができる。また、図示しないが可動板20及び防音板30の形状として異なる形状、例えばリング状、楕円状又は四角形状の可動板20及び防音板30を採用してもよい。
【0041】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、仕切板5と防音板30との間、防音板30と可動板20との間、可動板20と防音板30との間、及び防音板30とオリフィス部材10の仕切部14との間の隙間を図1及び図3に示すような隙間に設定した例を示したが、異なる隙間に設定してもよく、オリフィス部材10の第1凹入部11の深さ、又は、可動板20及び防音板30の厚さを変更することにより、エンジン特性等の差異に応じて、容易にエンジンマウント1の特性を変更調節することができる。
【0042】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、可動板20及び防音板30の材質を同じ材質のゴムで構成した例を示したが、異なる材質を採用してもよく、例えば樹脂等の弾性を有する材質を採用してもよい。また、可動板20のゴムの硬度と防音板30のゴムの硬度を異なる硬度に設定してもよく、可動板20の材質と防音板30の材質を異なる材質に設定してもよい。具体的には、例えば防音板30の硬度を可動板20の硬度より小さく柔らかいものに設定することで、防音効果を更に向上させることができる。
【0043】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、可動板20と防音板30,30とを離間して配設した例を示したが、例えば図7に示すように、可動板20と防音板30,30を一体構成して、上述の効果が生じるように構成してもよい。
【0044】
図7(イ)に示すように、ゴムの硬度が比較的大きい円板状の可動板20の上面側及び下面側の中央に、円柱状の連結部材20aが一体成形されている。可動板20よりゴムの硬度が小さく厚さが薄く設定された円板状の防音板30,30の中央部に取付穴が形成され、この取付穴に可動板20の連結部材20aが内嵌された状態で接着されている。
【0045】
図7(ロ)に示すように、振幅が比較的大きい低周波振動が入力されて、例えば平衡室Cからの液体が中間室Bに移動し、中間室B内を下方から上方に液体が移動すると、硬度が小さく設定された上側の防音板30の外周部が下方へ撓んで変形し可動板20の上面側に接当する。この上側の防音板30が可動板20の上面側に接当した力が可動板20の上方への移動を妨げる力として作用して、可動板20の速度を減速させることができる。
【0046】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]において示したエンジン及び車体へのエンジンマウント1の取付構造は、一例として示したものであり、第1取付金具2、第2取付金具3、本体ゴム4、仕切部材としての仕切板5及びオリフィス部材10等の形状や構造等が異なるエンジンマウント1においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】エンジンマウントの全体縦断側面図
【図2】エンジンマウントの全体横断平面図
【図3】中間室付近の詳細縦断側面図
【図4】可動板及び防音板の構造を示す概略斜視図
【図5】可動板及び防音板の移動状況を示す概略図
【図6】発明の実施の第1別形態での可動板及び防音板の構造を示す概略斜視図
【図7】発明の実施の第3別形態での可動板及び防音板の構造を示す概略縦断面図
【符号の説明】
【0048】
1 エンジンマウント(液体封入式マウント装置)
2 第1取付金具(第1取付部材)
3 第2取付金具(第2取付部材)
4 本体ゴム(ゴム弾性体)
5 仕切板(仕切部材)
10 オリフィス部材(仕切部材)
16 オリフィス通路
20 可動板(可動部材)
22 受圧面
30 防音板(第1防音部材,第2防音部材)
33 受圧面
A 受圧室
B 中間室
C 平衡室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて配設された第1取付部材と第2取付部材とをゴム弾性体で連結し、壁部の一部が前記ゴム弾性体で構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とを仕切部材を間に挟んで形成し、前記仕切部材に、前記受圧室と前記平衡室とを相互に連通するオリフィス通路と、前記受圧室と前記平衡室とを相互に連通する中間室とを設けて、前記受圧室、平衡室及び中間室に非圧縮性の液体を封入し、
前記中間室に、前記中間室を介した前記受圧室と前記平衡室との間の液体の流動に伴って前記中間室内を移動可能な可動部材と、前記中間室の受圧室側の壁部と前記可動部材との間に配設された第1防音部材と、前記中間室の平衡室側の壁部と前記可動部材との間に配設された第2防音部材とを備え、
前記可動部材の受圧面の面積を、前記第1及び第2防音部材の受圧面の面積より広く設定してある液体封入式マウント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−196630(P2008−196630A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33551(P2007−33551)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】