説明

液体廃棄物の炭化装置及びこの炭化装置を用いた液体廃棄物の処理システム

【課題】 液体廃棄物を固体廃棄物と混在させることなく単一でも炭化することができる液体廃棄物の炭化装置を提供する。
【解決手段】 液体廃棄物の炭化装置は、液体廃棄物を貯留する廃液貯留槽8と、液体廃棄物を間接加熱して乾燥・炭化させる炭化室5と、廃液貯留槽8から炭化室5に液体廃棄物を供給し、二次燃焼室6内を通過する廃液加熱導入管9と、炭化室5内の液体廃棄物から生成される熱分解ガスを加熱・燃焼する二次燃焼室6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体廃棄物の炭化装置及び方法に関し、特に蒸留酒(黒糖、麦、芋などの焼酎類、リキュール類など)の製造過程で発生する蒸留廃液、又はその蒸留廃液を再蒸留することによって得られた濃縮液もしくは凝縮液に代表される液体廃棄物の炭化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミ、汚泥、使用済紙おむつ等の固体廃棄物を炭化する炭化装置が知られている。図6は従来の固体廃棄物を対象とした炭化装置を示す。この種の炭化装置は、固体廃棄物を炭化室1で炭化し、固体廃棄物を炭化する際に発生する可燃性ガスを二次燃焼室2で燃焼する。炭化処理して炭化物を回収すると、炭化物を資源として有効利用できるという利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
固体廃棄物を炭化する炭化装置は従来から存在するが、液体廃棄物専用の炭化装置は存在しない。液体廃棄物は性状が比較的均一であるものの、水分を例えば90%以上含むため、その炭化方法にはいくつかの制約がある。炭化方式で考えると、水分が多いことによる熱量不足で自燃が期待できないことから、直接加熱して部分燃焼させる方式の炭化装置は適さない。また処理方式で考えると、流体特有の流動性があることから連続的に処理せずにバッチ式に処理する方が滞留時間すなわち炭化時間を確保できるので、均一な炭化物を得ることができる。
【0004】
炭化装置を用いて液体廃棄物を処理する場合、液体廃棄物を単一ではなく固体廃棄物と混在させ、流体の特性を回避しながら使用しているのが現状である。
【0005】
そこで本発明は、液体廃棄物を固体廃棄物と混在させることなく単一でも炭化することができる液体廃棄物の炭化装置及び方法を提供することを目的とする。
【0006】
ところで、蒸留酒の製造過程で発生する蒸留廃液はかつて海洋投棄されていたものの、ロンドン条約により2001年4月から海洋投棄できなくなっている。今なお畑へ散布する農地還元も行われているが、地下水への窒素汚染等の問題や社会的な環境負荷低減の高まりによって禁止となる動きが出始めている。このような背景からプラントによる処理が必要とされており、一部で実施化されつつある。その内容としては、廃液固形分は飼料化/肥料化して再利用し、液体分はメタン発酵法でメタンガスを回収した後活性汚泥法で処理した廃液を再利用せずに放流する方法が主流である。廃液を放流する方法では、廃液がリサイクルされず最終的には捨てられていることになり、さらなる資源循環が求められている。
【0007】
本出願人は蒸留酒で発生する蒸留廃液のうち、プラント処理後にリサイクルされず最終的に捨てられていた蒸留酒廃液について、蒸留酒廃液を再蒸留することにより濃縮液と、透明度と酸性に富む凝縮液とに分離し、これらを回収する方法を提案している。
【0008】
本発明の他の目的は、蒸留酒の蒸留酒廃液を再蒸留することによって得られる濃縮液の新たな処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下本発明を説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、液体廃棄物の炭化装置であって、液体廃棄物を貯留する廃液貯留槽(8)と、液体廃棄物を間接加熱して乾燥・炭化させる炭化室(5)と、前記炭化室(5)内の液体廃棄物から生成される熱分解ガスを加熱・燃焼する二次燃焼室(6)と、前記廃液貯留槽(8)から前記炭化室(5)に液体廃棄物を供給する廃液加熱導入部(9)と、を備え、前記廃液加熱導入部(9)が、前記二次燃焼室(6)内を通過することを特徴とする液体廃棄物の炭化装置により、上述した課題を解決する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の液体廃棄物の炭化装置において、前記廃液加熱導入部(9)は螺旋形状の管からなることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の炭化装置において、前記炭化装置はさらに、前記炭化室(5)での液体廃棄物を乾燥中に、液体廃棄物の水分が蒸発した分だけ連続的にもしくは間欠的に液体廃棄物を前記廃液貯留槽(8)から前記廃液加熱導入部(9)に注入する廃液仕切装置(10)を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし3いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置において、前記炭化装置はさらに、前記液体廃棄物よりも含水率の高い液体廃棄物を貯留する高含水率廃液貯留槽(11)と、前記高含水率廃液貯留槽(11)から前記廃液加熱導入部(9)に高含水率液体廃棄物を注入する廃液切替装置(12)と、を備え、前記廃液切替装置(12)は、前記炭化室(5)での乾燥後の液体廃棄物を炭化中に、連続的にもしくは間欠的に高含水率液体廃棄物を前記廃液加熱導入部(9)に注入することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし4いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置において、前記炭化室(5)内には、液体廃棄物を撹拌する撹拌機(18)が設けられ、前記撹拌機(18)は、撹拌軸(25)と、撹拌軸(25)の側面に接合され、網目状の隙間を有する撹拌羽根(26)とを有することを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1ないし5いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置において、前記炭化装置はさらに、前記炭化室(5)内で炭化された炭化物を貯留する炭化物貯留槽(22)と、前記炭化室(5)内の炭化物を吸引し、前記炭化物貯留槽(22)へ排出する炭化物吸引装置(21)と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項4ないし6いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置(31)と、液体廃棄物として濃縮液及び凝縮液を発生する蒸留装置(32)とが組み合わされ、前記蒸留装置(32)で分離された濃縮液が、前記廃液貯留槽(8)に貯留され、前記蒸留装置(32)で分離される前の液体又は凝縮液が、前記高含水率廃液貯留槽(11)に貯留されることを特徴とする液体廃棄物の処理システム。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、廃液加熱導入部内を流れる液体廃棄物が二次燃焼排ガス雰囲気より廃液加熱導入部の壁を通じて熱を受けるので、液体廃棄物が熱ロスを少なくして有効に加熱される。炭化室に送られた二次燃焼排ガスで炭化室内の液体廃棄物を加熱する場合と比較すれば、例えば200℃の温度差分の熱量が有効に利用できることになる。
【0018】
請求項2の発明によれば、廃液加熱導入部の伝熱面積を大きくすることができるので、液体廃棄物を加熱し易くなる。
【0019】
請求項3の発明によれば、炭化室での液体廃棄物の乾燥中に、水分が蒸発した分だけ連続的にもしくは間欠的に液体廃棄物を廃液加熱導入部に容易に注入できるので、小さい炭化室容積でも処理量を確保できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、液体廃棄物が乾燥後に炭化へと移行し、二次燃焼室の温度が例えば1000℃以上に上昇した際に、高含水率液体廃棄物を廃液加熱導入部に注入するので、例えば1000℃以上の燃焼排ガス温度を廃液加熱導入部に注入した高含水率液体廃棄物で冷却し、例えば800〜900℃になるように制御でき、液体廃棄物の処理を有効に行える。さらに注入された高含水液体廃棄物が例えば800℃以上の過熱蒸気にまで昇温されるので、その過熱蒸気を温度降下させずに炭化室へ導入すれば、炭化物を賦活することもでき、したがって炭化物の比表面積を高め吸着性能を高めることもできる。
【0021】
請求項5の発明によれば、撹拌機の接触面積が増して炭化室の壁面に液体廃棄物を積極的に接触させることができ、効率的な熱の伝達による加熱が成し遂げられる。
【0022】
請求項6の発明によれば、液体廃棄物から生成される粒と粉末の混在した炭化物を、炭化物吸引装置で炭化物貯留槽へ吸引排出することで、飛散しない状態すなわち衛生上問題ない状態で炭化物を排出できる。
【0023】
請求項7の発明によれば、炭化装置と蒸留装置と組み合わせることで、蒸留酒廃液を連続処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下添付図面に基づいて、本発明の一実施形態における液体廃棄物の炭化装置を説明する。図1は炭化装置の正面模式図を示し、図2は側面模式図を示す。炭化装置は、液体廃棄物を間接加熱して乾燥・炭化させる炭化室5と、炭化室5内の液体廃棄物から生成される熱分解ガスを加熱・燃焼する二次燃焼室6と、を備える。炭化室5と二次燃焼室6とは二次燃焼室接続管7で接続される。
【0025】
液体廃棄物は廃液貯留槽8に貯留され、廃液貯留槽8から廃液加熱導入部としての廃液加熱導入管9を介して炭化室5に供給される。この廃液加熱導入管9は、その上端の廃液貯留槽8に接続される部分からその下端の炭化室5に接続される部分までに至る経路の途中が二次燃焼室6内を通過する。二次燃焼室6内での伝熱面積を大きくできるように、廃液加熱導入管9は螺旋状に形成される。
【0026】
廃液貯留槽8から二次燃焼室6内を通過する前の廃液加熱導入管9には、炭化室5に供給される液体廃棄物の量を調整するボールバルブ等からなる廃液仕切装置10が設けられる。この廃液仕切装置10は、炭化室5での液体廃棄物の乾燥中に、液体廃棄物の水分が蒸発した分だけ連続的にもしくは間欠的に廃液貯留槽8から廃液加熱導入管9に液体廃棄物を注入する。
【0027】
廃液貯留槽8の液体廃棄物よりも含水率の高い液体廃棄物は、高含水率廃液貯留槽11に貯えられる。廃液加熱導入管9は二次燃焼室6の上方で分岐し、分岐管9aが高含水率廃液貯留槽11に接続される。分岐管9aにはボールバルブ等からなる廃液切替装置12が設けられる。この廃液切替装置12は、炭化室5での乾燥後の液体廃棄物を炭化中に、連続的にもしくは間欠的に高含水率液体廃棄物を廃液加熱導入管9に注入する。
【0028】
炭化室5はその周囲が炭化室加熱室13で覆われる。なおこれとは逆に、炭化室加熱室13を炭化室5の内部に設けた形式のものでもよい。例えばロータリキルンの内部に加熱管を複数本装備し、キルン内に液体廃棄物を、加熱管内に加熱源を通す方式が考えられる。炭化室5の加熱は、炭化室加熱室13に備えられたバーナ等からなる炭化室加熱装置14と、二次燃焼室6から炭化室加熱室13に導かれた燃焼排ガスで行われる。炭化室5内部の液体廃棄物は、貧酸素状態で炭化室5の壁を通じて間接加熱される。炭化室5を加熱し終えた燃焼排ガスは、排気ガス排出装置16で吸引され、排気筒17を通過して大気へ放出される。炭化室5内には、液体廃棄物の乾燥を促進するためとそれに続く炭化工程での効率的な加熱のために、特徴のある形状の撹拌機18が設けられる。撹拌機18は回転させるための駆動装置19に接続されている。撹拌装置の構造については後述する。炭化室5の側面には炭化物を排出するためのボールバルブ等からなる仕切装置20が設けられる。炭化物は真空ポンプ又は掃除機からなる炭化物吸引装置21によって吸引され、炭化物貯留槽22へ移送される。
【0029】
二次燃焼室6には液体廃棄物から発生する水蒸気や熱分解ガスを800℃以上、滞留時間2秒以上で加熱・燃焼するために、二次燃焼室燃焼装置23と二次燃焼用送風機24が装備される。
【0030】
炭化装置は、以上のような設備構成および構造を有する。本発明の炭化装置の特徴を以下に説明する。
【0031】
特徴の一つ目は、多大な熱量を要する水分蒸発への熱的な工夫、に対して考慮されたものであり、二次燃焼室6内に廃液加熱導入管9を設置していることである。二次燃焼室6は、炭化室5内の液体廃棄物から発生した水蒸気や熱分解ガスを、二次燃焼室燃焼装置23により加熱・燃焼し無害化するための部屋であり、通常800℃以上で滞留時間2秒以上の条件で加熱もしくは燃焼されている。従来、この800℃以上の熱は炭化室加熱室13へ送られて炭化室5の加熱に利用されるか、もしくはそのまま大気へ廃棄されている。炭化室加熱室13へ送られて炭化室5の加熱に利用される場合でも、比較的経路の長い排ガス循環ダクト23を通過することになり、放熱等により排ガス温度が800℃よりも低い500〜600℃程度まで下回り、この温度ロスが十分に熱回収できていない要因となっている。
【0032】
しかし、二次燃焼室6内へ廃液加熱導入管9を設置する方法では、保温性のよい800℃以上の二次燃焼室6の中で常時廃液加熱導入管9が加熱されており、管の中を流れる廃液には常に800℃の排ガス雰囲気より管壁に熱が伝えられるため、熱ロスがひじように少なく有効に廃液が加熱されることになる。廃液はその90%以上が水分であるため、廃液を蒸発するためには顕熱と潜熱を必要とする。例えば廃液の温度が20℃であれば廃液中の水分1kgあたり、顕熱で(100-20)×1=80kcal、潜熱で539kcal、合計で80+539=619kcalを必要とする。もし灯油バーナだけでこの熱を補うとなれば、灯油1kgあたりの低位発熱量9000Kcalとすると廃液中の水分1kgあたり約0.07kg(=619÷9000)の灯油を必要とする。また炭化室加熱室13に送られた二次燃焼排ガスで補うとすれば、排ガス循環ダクト23を通過した後の600℃程度の排ガスが熱源となる。これに対して二次燃焼室6の中の廃液加熱導入管9で廃液が加熱される場合は、800℃の排ガスが熱源になり、炭化室加熱室13に送られた二次燃焼排ガスでの加熱と比較すれば、200℃の温度差分の熱量が有効に利用できることになる。
【0033】
炭化装置の運転方法としては、二次燃焼室燃焼装置23により二次燃焼室6を800℃に加熱した後、廃液貯留槽8に入れた液体廃棄物を廃液仕切装置10で廃液加熱導入管9に注入する。廃液加熱導入管9では液体廃棄物が予備的に加熱され、あわよくばその水分が蒸発される。廃液加熱導入管9で加熱された液体廃棄物は炭化室5に注入されて乾燥・炭化が進められる。
【0034】
廃液加熱導入管9は二次燃焼室6の二次燃焼排ガスで加熱されるため、その材料には熱の伝わり易くかつ耐熱性のある金属たとえばクロム・ニッケル・鉄系合金もしくはNi系合金あるいはコバルト系合金が望ましく、また できるだけ熱の伝わる表面積が大きいことが望ましい。そのため廃液加熱導入管9は例えば螺旋形状に形成される。なお、粘度の高い液体廃棄物を注入する場合、螺旋形状の管では圧力損失の影響で円滑に注入されないため、廃液貯留槽8と廃液仕切装置10の間に廃液注入用のポンプもしくは増圧機を設置し、廃液を押し込む方式をとってもよい。
【0035】
特徴の二つ目は、液体廃棄物の最適注入方法の考案である。液体廃棄物は廃液仕切装置10で廃液加熱導入管9に注入され加熱された後、炭化室5に注入されて乾燥し、それに引き続いて炭化される。液体廃棄物は90%以上が水分であるため、たとえ初期状態に炭化室が液体廃棄物で充満されていても、水分の蒸発で10%の残渣しか残らない。したがって、乾燥中は炭化室5内の液体廃棄物の水分の蒸発量を炭化室5の重量などで確認しながら、減った分だけ連続的もしくは間欠的に液体廃棄物を廃液仕切装置10にて廃液加熱導入管9へ注入する方法を採るのがよい。乾燥工程では液体廃棄物中の水分が蒸発するため、二次燃焼室6内の温度は比較的安定している。
【0036】
乾燥工程の完了後、熱分解ガスが発生する炭化工程へと移行すると、熱分解ガス中の一酸化炭素、水素、メタンなどの可燃ガスが二次燃焼室6で二次燃焼室燃焼装置23と二次燃焼用送風機24により燃焼するため、二次燃焼室6の温度が1000℃以上に上昇する。これを防ぐために通常、 二次燃焼用送風機24の風量を増して温度が800℃〜900℃になるように制御している。しかしながら、外から取り入れた空気によって二次燃焼室6の温度を下げるのでは効率が悪い。そこでこれを解決するために、最初に投入された液体廃棄物が乾燥後に炭化工程へと移行し二次燃焼室6の温度が1000℃以上に上昇した際に、高含水率廃液貯留槽11に入れた液体廃棄物もしくは汚水などの高含水率廃液を廃液切替装置12と廃液仕切装置10にて、廃液加熱導入管9へ連続的もしくは間欠的に注入することで、1000℃以上の燃焼排ガス温度を廃液加熱導入管9に注入した廃液で冷却し、800℃〜900℃になるように制御する。水分1kgあたりの潜熱539kcalを有効に使用することを考慮すると、高含水率廃液貯留槽11に入れる液体廃棄物もしくは汚水などの水分は100%に近い高含水率の廃液が望ましい。廃液切替装置12と廃液仕切装置10にて廃液加熱導入管9へ注入され加熱された廃液は、炭化室5に注入され、最初に投入された液体廃棄物と混在して炭化工程へと移行するので最終的に炭化物として回収される。また、廃液切替装置12と廃液仕切装置10にて1000℃以上の二次燃焼室6内の廃液加熱導入管9へ注入された廃液が、800℃以上の過熱蒸気にまで昇温され、その過熱蒸気を温度降下せずに炭化室5へ導入すれば、炭化物を賦活する役目も演じることができ、炭化物の比表面積を高め吸着性能を高める効果をもたらすことも可能である。
【0037】
特徴の三つ目は、炭化室5内の液体を撹拌する構造の改善である。従来のバッチ式の間接加熱型炭化装置に装備されている撹拌機は、生ゴミや使用済紙おむつ等の固体廃棄物をいち早く破砕し、かっ廃棄物の邪魔にならないように中心軸のないケージ型のもの、または中心軸があってもケージの隙聞がごみと干渉しないように広くとってあるものが主流である。しかしながら、液体廃棄物の場合はできるだけ撹拌機の接触面積を増やして炭化室5の壁面に液体廃棄物を積極的に接触させることが熱の伝達を促進し、効率的な加熱ができる。そこで、図3及び図4に示すような撹拌機18を工夫した。金属製の撹拌機18の軸25の円周の一側面に撹拌羽根26としてエキスパンドメタルを一直線上に接合させた構造である。エキスパンドメタルであるため、網目状の隙間があり撹拌抵抗を軽減できると共に、液体廃棄物との接触面積が大きくとれる利点がある。また市販のエキスパンドメタルが使えるため、安価で製作が可能である。撹拌羽根26は平板状に形成され、液体廃棄物を撹拌する機能を有するが、液体廃棄物を軸方向に移動させる機能を有さない。炭化物はあくまで炭化物吸引装置21によって軸方向に移動される。なお、金属製の撹拌機18の軸の円周に一直線上に接合させたエキスパンドメタルは、炭化室内の清掃のし易さより、図4(a)に示すように一列のみ、(b)に示すように180度間隔を開けた2列、または(c)に示されるように120度間隔を開けた3列が望ましい。
【0038】
特徴の四つ目は、炭化物の排出機構の改善である。炭化物は上記撹拌機18の形状から、粒と粉末の混在した状態になる。固体廃棄物から生成される炭化物を排出する場合には、撹拌機18に送り羽根のような送り機構を設けたり、あるいは掻き出し棒にて掻き出したりするのが主流である。しかしながら、上記のように液体廃棄物から生成される炭化物は粒と粉末の混在した状態であるため、撹拌機18に送り機構を設けたり、あるいは掻き出し棒にて掻き出したりすると、炭化物の飛散が回避できず衛生上好ましくない。そこで、炭化物吸引装置21で炭化物貯留槽22へ吸引排出する方法を考案した。この方法であれば、密閉した状態で炭化物を排出でき、衛生上問題はない。
【0039】
図5は、液体廃棄物の炭化装置31と、液体廃棄物として濃縮液及び凝縮液を発生する蒸留装置32とを組み合わせた液体廃棄物の処理システムを示す。蒸留装置32は炭化装置31の上流側に設置され、蒸留酒の製造過程で発生する蒸留酒廃液を再蒸留することによって、濃縮液及び凝縮液を生成する。ここでは、蒸留酒廃液として黒糖焼酎廃液を使用するので、濃縮液は透明ではなく色のついたドロドロとした有機物の多い液体である。上記炭化装置を用いて黒糖焼酎廃液を間接加熱して乾燥・炭化させることで、有機物が濃縮される濃縮液から炭化物を効率的に回収することができる。また濃縮液に色成分が濃縮されていても、当該色成分を炭化物として容易に回収することができるので、本発明の液体廃棄物として黒糖焼酎廃液の濃縮液は好適である。これと比較して、中和処理等の水処理では、濃縮液を中和することはできても、色成分を除去することは極めて困難である。
【0040】
蒸留装置32の構成について説明する。黒糖焼酎廃液は、蒸留廃液貯留槽33に貯留された後、蒸留廃液供給装置34によって蒸留装置本体35に供給される。蒸留装置本体35は、黒糖焼酎廃液を蒸留/凝縮処理し、凝縮液(水分99%以上)と濃縮液(水分60%)とに分離・回収する。凝縮液は透明度と酸性に富む性質を有し、アルカリ性廃棄物の中和剤として再利用の可能性があることから、凝縮液排出装置36によって排出され、凝縮液貯留槽37に貯留される。
【0041】
炭化処理の主体となる濃縮液は、濃縮液排出装置38によって炭化装置31の廃液貯留槽8に注入される。二次燃焼室の温度制御用に、濃縮液よりも水分の多い黒糖焼酎廃液(水分96%)が炭化装置の高含水率廃液貯留槽11に注入される。炭化装置31は上記実施形態の炭化装置と同一の構造であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。炭化装置31は濃縮液を炭化室5で間接加熱して乾燥・炭化し、二次燃焼室6で濃縮液から生成される熱分解ガスを加熱・燃焼する。二次燃焼室6が高温になったら、高含水率廃液貯留槽11から黒糖焼酎廃液を廃液加熱導入管9に供給し、二次燃焼室6の温度を低減する。蒸留装置本体35からは濃縮液が連続的に排出されるため、炭化装置31も炭化室5が充満されるまでの期間限定した連続処理が可能になる。
【実施例1】
【0042】
実施例として、廃液貯留槽8に黒糖焼酎廃液を再蒸留することで得られる濃縮液(水分60%)を入れ、高含水率廃液貯留槽11に黒糖焼酎廃液(水分96%)を入れ、廃液加熱導入管9をらせん状のステンレス鋼(SUS310S)とし、撹拌機18は図3に示すようなエキスパンドメタルを軸に取り付けて図4(C)で示すような3列の羽根配置とし、二次燃焼室燃焼装置23と炭化室加熱装置14は灯油バーナとし、廃液仕切装置10と廃液切替装置12はボールバルブとし、炭化物吸引装置21は真空ポンプとして、連続的に濃縮液の炭化処理を行った。比較のため、図6に示されるバッチ式間接加熱型炭化装置による上述の濃縮液の炭化処理を行った。またその炭化装置で 二次燃焼排ガスを炭化室の加熱に使用せずに炭化室バーナだけで、炭化室を加熱する上述の濃縮液の炭化処理をそれぞれ行った。その結果を表1に示す。本実施形態では、他の2つの炭化装置に比較して著しく灯油消費量が改善された。また、炭化物は真空ポンプにより飛散することなく98%以上回収された。
【0043】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態における炭化装置の正面模式図。
【図2】炭化装置の側面模式図。
【図3】撹拌機の一例を示す図。
【図4】軸線方向からみた撹拌羽根の配列を示す図(図中(a)は一列を示し、(b)は2列を示し、(c)は3列を示す)。
【図5】炭化装置と蒸留装置とが組み合わされた液体廃棄物の処理システムを示す図
【図6】従来の炭化装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0045】
5…炭化室
6…二次燃焼室
8…廃液貯留槽
9…廃液加熱導入管(廃液加熱導入部)
10…廃液仕切装置
11…高含水率廃液貯留槽
12…廃液切替装置
18…撹拌機
21…炭化物吸引装置
22…炭化物貯留槽
25…撹拌軸
26…撹拌羽根
31…炭化装置
32…蒸留装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体廃棄物の炭化装置であって、
液体廃棄物を貯留する廃液貯留槽と、
液体廃棄物を間接加熱して乾燥・炭化させる炭化室と、
前記炭化室内の液体廃棄物から生成される熱分解ガスを加熱・燃焼する二次燃焼室と、
前記廃液貯留槽から前記炭化室に液体廃棄物を供給する廃液加熱導入部と、を備え、
前記廃液加熱導入部が、前記二次燃焼室内を通過することを特徴とする液体廃棄物の炭化装置。
【請求項2】
前記廃液加熱導入部は、螺旋形状の管からなることを特徴とする請求項1に記載の液体廃棄物の炭化装置。
【請求項3】
前記炭化装置はさらに、
前記炭化室での液体廃棄物を乾燥中に、液体廃棄物の水分が蒸発した分だけ連続的にもしくは間欠的に、液体廃棄物を前記廃液貯留槽から前記廃液加熱導入部に注入する廃液仕切装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化装置。
【請求項4】
前記炭化装置はさらに、
前記液体廃棄物よりも含水率の高い液体廃棄物を貯留する高含水率廃液貯留槽と、
前記高含水率廃液貯留槽から前記廃液加熱導入部に高含水率液体廃棄物を注入する廃液切替装置と、を備え、
前記廃液切替装置は、前記炭化室での乾燥後の液体廃棄物を炭化中に、連続的にもしくは間欠的に高含水率液体廃棄物を前記廃液加熱導入部に注入することを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置。
【請求項5】
前記炭化室内には、液体廃棄物を撹拌する撹拌機が設けられ、
前記撹拌機は、撹拌軸と、撹拌軸の側面に接合され、網目状の隙間を有する撹拌羽根とを有することを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置。
【請求項6】
前記炭化装置はさらに、
前記炭化室内で炭化された炭化物を貯留する炭化物貯留槽と、
前記炭化室内の炭化物を吸引し、前記炭化物貯留槽へ排出する炭化物吸引装置と、を備えることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置。
【請求項7】
請求項4ないし6いずれかに記載の液体廃棄物の炭化装置と、液体廃棄物として濃縮液及び凝縮液を発生する蒸留装置とが組み合わされ、
前記蒸留装置で分離された濃縮液が、前記廃液貯留槽に貯留され、
前記蒸留装置で分離される前の液体又は凝縮液が、前記高含水率廃液貯留槽に貯留されることを特徴とする液体廃棄物の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−43544(P2006−43544A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226070(P2004−226070)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(593141481)JFEプラント&サービス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】