液体搬送デバイス及び分析システム
【課題】電気的に液体の位置を制御する液体搬送デバイスにおいては、液体周囲のオイルの位置を制御できないため、測定の再現性が悪くなっていた。
【解決手段】液体搬送デバイスの表面に周囲よりもオイルとの親和性の高い領域を設けることにより、測定部にオイルが多量に入り込むことや、オイルが制御電極上から液体とともに離れ、液体が制御できない位置に移動することを防ぐ。
【効果】測定部に於いてオイルが多量に入りこむことを防止し、測定の再現性が良くなる。
【解決手段】液体搬送デバイスの表面に周囲よりもオイルとの親和性の高い領域を設けることにより、測定部にオイルが多量に入り込むことや、オイルが制御電極上から液体とともに離れ、液体が制御できない位置に移動することを防ぐ。
【効果】測定部に於いてオイルが多量に入りこむことを防止し、測定の再現性が良くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上で液体を操作するシステムに関する。特に多数の液体を搬送する分析または反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として、ハロゲンランプ等からの白色光を試料と試薬との混合液である反応液に照射し、反応液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し、その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置が広く用いられている。あるいは、白色光を回折格子で分光した後、反応液に照射する場合もある。これらの分析装置においては、従来、プラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬とを分注し、これらを混合して反応液として光を照射し、成分量を測定していた。
【0003】
しかし近年、試薬コストの削減や、環境への負荷低減のため、分析に用いる反応液の微少量化が求められており、従来方式での反応液微少量化では液の取り扱いが困難になり、また分注、混合時に発生する気泡等により正確な測定ができなくなるという問題があった。このため、微少量の液体を的確に操作する技術が求められていた。
【0004】
微少量の液体を操作する一つの方法として、平面基板に形成された電極上の液体を電気的な制御により搬送する方法がある。この代表的な一つの方法は、複数の電極を形成した二つの対向する基板間に、搬送する液体を粒状の液体にして挟みこみ、二つの対向する基板間の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで、液体を搬送する(例えば非特許文献1、非特許文献2)。二つの対向する基板で構成されたものを液体搬送デバイスと称する。この方法では、通常、液体を搬送させる液体搬送路に沿って、片方の基板上に多数の電極が形成され、もう一方の基板上にグランドに接続された一つの電極を備える。粒状の液体下部の電極の一つに電圧を印加すると、エレクトロウェティング現象(例えば非特許文献3)により、電圧を印加した電極の上の濡れ性が良くなり、その電圧を印加した電極に載るようにその粒状の液体が移動する。これを繰り返すことで液体を搬送する。
【0005】
また、複数に分岐した電極列を用いて液体を分岐に振り分けたり、複数の溝が合流する位置で液体を融合させることも報告されている(例えば特許文献1)。また、一つの粒状の液体を分割することも報告されている(例えば特許文献2)。また試料を搬送し、液体搬送デバイス内部で計測を行うようなシステムも報告されている(非特許文献4)。このような、液体を搬送する液体搬送デバイスの利点は、周囲が壁に囲まれた容器に比べ、基板を利用するため気泡の影響を受けにくいことなどが挙げられる。
代表的な液体搬送デバイスの内部は、非特許文献1記載の通り、オイルで満たされているか、非特許文献2記載の通り、液体周囲のみオイルで取り囲まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−267801号公報
【0007】
【特許文献2】米国特許公報第6565727号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters、 Vol. 77、 No. 11、 pp. 1725-1726、 2000
【非特許文献2】Lab-on-a-Chip: Platforms、 Devices、 and Applications、 Conf. 5591、 SPIE Optics East、 Philadelphia、 Oct. 25-28、 2004.
【非特許文献3】Polymer 37 (1996) 2465-2470
【非特許文献4】Micro Total Analysis Systems 2003 p.1287-1290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体が搬送される際、液体が搬送されることによってオイルが流動するため、デバイス表面と液体との間に多量にオイルが入りこむことがある。液体搬送デバイスの一部に測定部を設け、測定部において透過光や、発光、及びインピーダンスなどの電気的な信号を計測する場合、測定する領域に多量のオイルが入りこむと、散乱により光量が減少することや、光が透過する試料の量が変化することで、測定の再現性への影響が生じる。また液体が搬送されている際にオイルが大きく流動すると、搬送する液体が、搬送を制御する電極上から離れ、搬送できなくなってしまうという問題がある。本発明はこれらの問題を解決する液体搬送デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
液体搬送デバイスの表面に、オイルに対して親和性の異なる二つの領域を設けることで、オイルの位置を制御し、液体と液体搬送デバイス表面との内にオイルが多量に入りこむことや、オイルが大きく流動することにより搬送する液体が制御できない位置に移動することを防止する。具体的には、例えば親油部と撥油部という2つの領域を設ける。これにより測定の再現性を向上させ、また確実に液体を搬送できる。
【0010】
液体搬送デバイスの一例としては、第1の基礎基板と、前記第1の基礎基板上に設けられた複数の第1電極と、第1の液体及び第2の液体を導入するための導入口と、前記第1の液体及び前記第2の液体を排出するための排出口と、前記第1の液体についての測定を行なうための測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段と、前記測定部に設けられた第1の領域と、前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有することを特徴とする。
【0011】
また、分析システムの一例としては、第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、前記第2のユニットは、前記測定部に設けられた第1の領域と、前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有し、前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体搬送路に沿って移動させるように、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のようにデバイス表面のオイルの親和性を制御することにより、測定部においてオイルが必要以上に入りこみ、測定を妨げるのを防止することができる。これにより測定の再現性がよくなる。また液体を搬送する際にオイルが流動することにより、液体が制御電極上から離れてしまうのを防止することができる。これにより確実に液体を搬送することができる。
【実施例1】
【0013】
本実施例では、液体搬送デバイス内に水溶性の試料をオイルとともに導入し、オイルで試料をとり囲みながら液体搬送デバイス内を搬送し、測定部において試料の吸光度を測定した後、試料とオイルを排出する分析システムを示す。
図1に分析システムの構成を示す。分析システムは液体搬送デバイス10と、試料1及びオイル2を液体搬送デバイス10に導入するための導入ユニット11と、試料1の内部の成分を測定するための検出ユニット12と、試料1及びオイル2を液体搬送デバイス10から排出するための排出ユニット13から構成される。導入ユニット11には試料1が試料槽に収容等されて、またオイル2がオイル槽に収容等されて各々配置され、それぞれ試料プローブ4、オイルプローブ5により導入口6から液体搬送デバイス10内に導入することができる。検出ユニット12は、液体搬送デバイス10に液体が導入され排出されるまでに通過する液体搬送路の少なくとも一部に設置された測定部に隣接して設置される。排出ユニット13にはシッパー7と廃液タンク9が配置され、排出口8に搬送された液体をシッパー7により液体搬送デバイス10内から廃液タンク9へ排出できる。
【0014】
図2に、液体搬送デバイス10内において、導入、搬送、測定、排出の各操作を行う各部の配置図を示す。液体搬送デバイス10は、導入口6を備えた導入部14、試料1の内部成分を測定するための測定部16、排出口8を備えた排出部17、各部を結ぶ液体搬送路15で構成される。導入部14、液体搬送路15、測定部16、排出部17の各々の少なくとも一部には液体を搬送するための制御電極が配置されており、制御電極への印加電圧の制御により、試料1が搬送される。
【0015】
図3に本実施例で用いた液体搬送路15の搬送方向における断面構成図を示す。液体搬送デバイス10は下側基板18及び上側基板19から構成されている。下側基板18では絶縁性の基礎基板20の上表面に試料1の搬送方向に沿って多数の制御電極21が配置され、さらにその表面は絶縁膜22で覆われている。上側基板19では絶縁性の基礎基板20’の下表面に1つの共通電極24が配置され、さらにその表面は絶縁膜22’で覆われている。さらにそれぞれの絶縁膜22、22’の表面には試料1が搬送しやすいよう、撥水性を付与するため撥水膜23、23'が塗布されている。これらの上下基板間に、搬送する試料1を配置し、その周囲をオイル2で取り囲む。すなわち、搬送する試料1の液滴がオイル2に内包され、試料1の液滴とオイル2の複合体となる。ここで内包とは、一のオイルが一の液体(液滴)の外表面を実質的に覆うように位置することをいう。オイル2の周囲には空気3が存在する。本実施例では絶縁性の基礎基板20、20’に石英を、制御電極21及び共通電極24にITO(Indium-Tin Oxide)を、絶縁膜23、23’にCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜したSiO2を用い、撥水膜としてデュポン社製TeflonAFを用いた。ITOの厚みは70nmとし、CVDで成膜した絶縁膜22、22’の厚みは200nmとした。また下側基板18と上側基板19の間の距離は0.5mmとした。また試料1として水溶液を、オイル2としてシリコーンオイルを用い、液量はそれぞれ5μLとした。下側基板18と上側基板19の間にオイル2で取り囲まれた試料1を設置することにより、オイルの蒸発防止効果が高まり、また、オイルが重力で引かれて液体から分離することを回避することができる。
【0016】
図4に本実施例で用いた液体搬送デバイスを上部から見た場合の、透視図を示す。略化してわかりやすくするため、試料1、オイル2、制御電極21のみを図示し、電圧を印加している制御電極21をハッチングで示す。また制御電極21上部に位置する共通電極24はアースに接続し、電圧は共通電極24と一部の制御電極21との間に印加する。また本願では電圧を印加していない制御電極21はどこにも接続されていないフロートの状態とし、印加電圧を切る場合は、電圧印加を停止してから制御電極21を一旦アースに接続した後、制御電極21をフロートの状態にする。上部からみて試料1と制御電極が重なりを持っているとき、試料1と重なる領域を持った制御電極21に電圧を印加すると、電圧を印加した制御電極21の上に載るように試料1が移動する。はじめに、図4(a)のように、液体搬送路に沿って制御電極21が複数配置され、制御電極21b近傍にオイル2に囲まれた試料1が存在するとき、制御電極21bに電圧を印加すると、図4(b)のように試料1が制御電極21bに載るように移動する。次に制御電極21cに電圧を印加し、制御電極21bの印加電圧を切ると、試料1は図4(c)のようにオイル2と空気3との気液界面と接した後、オイル2と空気3との気液界面を押しながら、図4(d)のようにオイル2と供に移動して、制御電極21cに載るように移動する。
【0017】
さらに制御電極21dに電圧を印加し、制御電極21cの印加電圧を切ると、試料1は図4(e)のようにオイル2と空気3との気液界面を押しながら、図4(f)のようにオイル2と供に移動して制御電極21dに載るように移動する。これを繰り返すことで試料1をオイル2に囲まれたまま搬送することが可能である。また、オイル2で囲まれた液体1は制御電極の配列に沿って移動することとなる。本実施例では試料1として水溶液を用いたが、純水、緩衝液などでもよい。また血液や、DNAが含まれる溶液でもよい。また試料1にラテックス粒子、細胞、磁性ビーズなどが含まれていてもよい。またオイル2としてシリコーンオイルを用いたが、搬送する液体に対して不混和性の液体であればよい。また絶縁性の基礎基板20、20’として石英を用いたが、Si等の導電性基板上に酸化膜等の絶縁膜を成膜した基板や、樹脂性の基板でもよい。また絶縁膜22、22’にはCVD(Chemical Vapor deposition)にて成膜したSiO2を用いたが、ポリシラザンや、SiN、Paryleneなどの絶縁膜でもよい。また本実施例では絶縁膜22、22’上に撥水膜23、23’を成膜したが、これらの絶縁膜や撥水膜といった層状部材は,1つでもよい。例えば,撥水膜23、23’の代わりに撥水性絶縁膜を成膜するか、もしくは、絶縁膜22、22’の代わりに絶縁性撥水膜を成膜してもよい。
【0018】
図5に液体搬送デバイス10内で液体1を操作するための電圧制御手段101の構成を示す。本制御手段は、図1に示した分析システムに設けられ、制御用コンピュータ102と、制御用コンピュータ102で制御された印加電圧を液体搬送デバイス10の所定の電極へ印加するための連絡部103とを有する。制御用コンピュータにはCRT、プリンタ、電源が接続される。制御用コンピュータには、分析対象や液体搬送方法について適宜条件を入力するための入力部、各種液体搬送方法に応じた電圧制御パターンを記憶する電圧制御パターン格納部、入力部から入力された情報に基づいて分析対象に応じた電圧制御パターンの組合せを定める電圧制御パターン調整部、電圧制御パターン調整部で定めた電圧制御パターンの組合せに応じて電圧を液体搬送デバイス10に印加する電圧印加制御部を備える。連絡部103は制御電極21に接続され、液体1を制御する際は入力部から入力された情報に従い、電圧印加制御部の制御を受けた電圧が連絡部103を介して所定の電極に印加される。
【0019】
図6に導入部14の断面構成図を示す。上側基板19に導入口6が配置され、容器に収容されたオイル2を導入するためのオイルプローブ5と容器に収容された試料1を導入するための試料プローブ4が導入口中をそれぞれ上下移動可能なように設置されている。始めにオイルプローブ5より5μLのオイル2を液体搬送デバイス内に導入した後、試料プローブ4より、オイル2の内部に試料1を5μL導入する。その後、試料プローブ4、オイルプローブ5は上方向に移動し、試料1とオイル2を液体搬送デバイス10内に脱離する。これにより、オイル2中に確実に試料1を配置することができる。このときオイルプローブよりも試料プローブが先に上方向に移動することで、試料プローブ4先端をオイル2と空気3との界面を通過させる。これにより、試料プローブ4先端に残ることなく確実にオイル中に試料を導入できる。導入後、制御電圧に電圧を印加することで、試料1をオイル2とともに搬送する。液体搬送デバイス10内で試料1をオイル2とともに搬送する。
【0020】
図7に排出部17の断面構成図を示す。排出部17では上側基板19に排出口8が配置されており、排出部17に搬送された試料1とオイル2は、排出口8より、排出ユニット13のシッパー7に吸引され、廃液タンク9に排出される。廃液タンク9内では集まったオイル2と試料1とが比重の違いにより分離するため、多数の試料及びそれを囲むオイルが排出されても、オイルや試料の処理が容易である。
【0021】
図8に測定部16を上部から見た場合の構成図を示す。簡単のため、制御電極の位置及び光が照射される領域、当該領域を含む第1の領域、及び、その周辺に設けられかつ第1の領域よりもオイルとの親和性の高い第2の領域を図に示す。測定部16では、図8(a)のように1つの測定部16に位置する制御電極21’中に光が照射される領域34と、領域34を含む領域として第1の領域32が設けられ、光は主として第1の領域32の中の領域34を透過する。本実施例では光が照射された領域は領域34と一致するが、光が照射された領域は第1の領域32と一致してもよい。また、本実施例では領域34は光を検出する領域と一致している。第1の領域32周囲には第1の領域32と比較してオイルとの親和性の高い第2の領域33が設けられる。第2の領域のさらに外側は第1の領域と同様の性質を有する領域32’が設けられる。領域34は制御電極の周辺部における光の散乱を避けるため,1つの制御電極に含まれるように位置する。
【0022】
ここで、第1の領域は溌油性を有するように構成してもよい。このとき、第1の領域に入り込んだオイルをより確実に第1の領域から第2の領域へ排除することができる。この溌油性は、液体搬送デバイス表面の撥水膜にフルオロカーボン系の撥水膜を用いることで実現できる。オイルとの親和性が高いとは、オイルの表面に対する接触角がより小さいということである。第1の領域と第2の領域にまたがって存在するオイルは、接触角が小さくなる表面を備えた領域の方に移動する。すなわちオイルは第1の領域よりも表面との接触角の小さい第2の領域の上に移動する。本実施例では光が透過する領域34を含む第1の領域32を取り囲むように第2の領域33を設けたが、図8(b)のように第2の領域は第1の領域32の近傍に位置すればよく、必ずしも周囲を囲まなくともよい。図8(b)のように、第2の領域を第1の領域を内包しない形状として構成することもできる。この場合には、第1の領域と第2の領域との設計がより簡便となる。
【0023】
その一方、図8(b)のように第1の領域の周囲を取り囲む様に第2の領域が設けられてない場合は、オイルが第2の領域上に多く移動する際に影響を受けることも考えられる。この点につき、図8(a)のように周囲を囲んだ場合は、オイルが第2の領域上に多く移動する際にも、オイル中の試料1は光が透過する第1の領域内の概略中心に合わせて位置を制御することができ、確実に試料に光を照射できる。また第2の領域は測定する試料1の周囲のオイルを確実に捉えるため、第1の領域近傍に位置する必要がある。そのため,第1の領域を含む1つの制御電極21’と第2の領域とが重なりを持つように配置されるのが望ましい。また第1の領域は、光が照射される領域を含むものとし、第2の領域は当該光が照射される領域を含まないもの、もしくは測定部を通過した光を検出する集光レンズの集光範囲が含まれないものとすることもできる。集光レンズの集光範囲が含まれない場合には、散乱などによりオイルを捕捉している第2の領域を通過した光が、検出ユニットで検出される光に含まれず、オイルが多く入り込まない領域である光が照射される領域(もしくは第1の領域)を通過した光のみを検出することができ、測定の再現性を高めることができる。このように、領域34を第1の領域32内に配置し、その周囲にオイルと親和性の高い第2の領域33を設けることで、オイルは第1の領域32よりも第2の領域33上に存在しやすくなり、第1の領域32にオイルが必要以上に入り込むのを防ぐことができる。
【0024】
次に、測定部16の搬送方向と垂直な方向(A-A')の断面構成図を図9に、検出ユニット12とともに示す。検出ユニット12ではハロゲンランプ25からの光28を照射光ファイバ26で導き、照射レンズ27により測定部16に照射し、透過光を集光レンズ29で集光光ファイバ30に集光し、分光検出器31で必要な波長に光を分光し検出する。本実施例では600nmの吸光度を測定することで、水溶液の濁度測定を行った。デバイス表面は、第1の領域32(及び適宜デバイス全体について)は撥水性かつ撥油性の撥水膜を用い、第2の領域では撥水性かつ親油性の撥水膜を用いる。本実施例ではオイルにシリコーンオイルを用いており、第1の領域32及び液体搬送デバイス全体の撥水膜23、23'の材料はフッ素系撥水膜を用いている。例えば、TeflonAF(登録商標)を用いることができる。そこで第2の領域33の撥水膜23、23'の材料はフッ素系撥水膜よりもシリコーンオイルに対して親和性の高いシリコーン系撥水膜を用いた。これによりオイルは第1の領域32よりも第2の領域33上に存在しやすくなり、第1の領域にオイルが必要以上に入り込むのを防ぐことができる。このとき第2の領域33を第1の領域32近傍に位置することで、オイルが必要以上に第1の領域32に入りこんで測定を阻害することがなくなり、測定の再現性の向上に寄与する。本発明の構成は、血清の濁度測定や、血清を液体搬送デバイス内で試薬と混合し、吸光度を測定することで血液内部の成分を測定することへの応用も可能である。また発光、蛍光発光の計測や、インピーダンスなどの電気的な信号を用いた計測においても、測定部にオイルが必要以上に入りこむと再現性が悪くなるが、本発明の構成により、再現性が向上する。
【0025】
また、本実施例では二枚の基板間に試料を挟み込み搬送したが、図10のように上側基板19を設けず、下側基板18のみの構成でも搬送可能である。この場合は下側基板18上に共通電極24を配置する。測定部の構成を図11に示す。この場合においても第2の領域33を第1の領域の周囲もしくは近傍に設けることにより、オイルが第1の領域に多量に入り込むことを防止し、測定の再現性が向上する。
【0026】
また本実施例では分画されたオイルを用いた液体搬送デバイスであるが、オイルで満たされた液体搬送デバイスにおいても適用ができる。この場合の測定部の構成を図12に示す。この場合には、特に試料の液滴の内部にオイルが偶発的に入り込んでしまった場合等においても、オイルは第1の領域よりも第2の領域に存在しやすく、光28が照射される領域にオイルが入りこまず、測定部においてオイルの位置を制御することができ、測定の再現性を高めることができる。
【実施例2】
【0027】
本実施例では、分析システム全体は実施例1と基本的に同じ構成であるが、第2の領域33において撥水膜23及び23'表面に物理的に凸凹の状態とすることにより、オイルとの親和性を高めた。撥水膜の材料はデバイス全体で同じであり、フッ素系撥水膜等を用いることができる。例えば、TeflonAF(登録商標)を用いることができる。図13に例として下側基板18における第1の領域32と第2の領域33の表面構造の違いを示す。第1の領域では表面は図13(a)に示すようにほぼ平らな面であるが、第2の領域では図13(b)に示すように、絶縁膜22をウェットエッチングまたは、ドライエッチング、CVD、機械加工などの種々の加工、成型法により凸凹形状とし、その上に成膜した撥水膜23、23'に凸凹形状を作り出す。これらの凸凹形状はその凸凹の高さ方向の長さが数ナノメートルから数百マイクロメートルのオーダーであり、搬送する試料全体の大きさに対して十分小さければよい。
【0028】
本実施例では,液体搬送デバイス内等で散乱して入射される光の影響を受けないように,表面の凸凹で光が散乱しないよう,これらの凸凹の高さ方向の長さを透過する光の波長よりも小さくした。このような凸凹の表面では撥水性のものはより撥水に、親水性のものはより親水になるため、図13(b)で表される第2の領域33は、図13(a)であらわされる第1の領域32に比べオイルとの親和性が高くなる。また凸凹形状は図13(c)のように、針状の突起形状でもよい。また図13(d)のように撥水膜材料のみで凸凹形状を設けてもよい。さらに図13(e)のように撥水膜の一部に孔が空いて絶縁膜を完全に覆っていないことにより、撥水膜表面が凸凹形状となっても良い。また図13(f)のように絶縁性の基礎基板20に凸凹形状があってもよい。
【0029】
本実施例の構成により、オイルが第1の領域の液体搬送デバイス表面と試料の間に必要以上に入りこみ、試料1を透過する光の光路長が変化することを防ぐことができる。これにより再現性のよい測定が可能となる。
【実施例3】
【0030】
本実施例では、分析システム全体は実施例1と基本的に同じ構成であるが、液体搬送路10の構成が異なる。ここで、液体搬送路10は、測定部を除く部分について、第2の領域32と同様の性質を持つ第3の領域とする。第3の領域の親油性および溌油性および撥水性に関する性質は上記の第2の領域と同様である。図14に本実施例の液体搬送路を上部から見た場合の構成図を示す。簡単のため、制御電極及び第3の領域のみ示す。また図15に、液体搬送路において搬送方向と垂直な(B-B')方向の断面図を示す。液体搬送路中の制御電極21付近に、搬送方向に沿ってオイルとの親和性の高い第3の領域33’を設ける。第3の領域の外側には第1の領域と同様の性質を有する領域32’が設けられる。オイルはシリコーンオイルを用い、第3の領域33’の液体搬送デバイス表面の撥水膜にはシリコーン系撥水膜を用いて、他の液体搬送デバイス表面はフッ素系撥水膜であるTeflonAF(登録商標)を用いた。これまでの液体搬送デバイスでは、オイルとの親和性の制御はしていないため、液体の搬送などによりオイルが大きく流動し、試料1が制御電極が重ならない位置に移動してしまい、液体が制御できなくなることが考えられるが、本実施例の構成によりオイルが制御電極上から離れにくくすることで,確実に試料1を搬送することが可能となる。また実施例2で示したように、第3の領域とその他の液体搬送デバイス表面の撥水膜の材質は同じであるが、第3の領域の表面に凸凹形状をつけることにより、オイルとの親和性を高めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1における分析システムの略図である。
【図2】本発明の実施形態1における液体搬送デバイス内における各部の配置図である。
【図3】本発明の実施形態1における液体搬送路の断面を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1における液体搬送路での操作の手順を説明する図である。
【図5】本発明の制御システムの略図である。
【図6】本発明の実施形態1における導入口の断面図である。
【図7】本発明の実施形態1における排出口の断面図である。
【図8】本発明の実施形態1における測定部を上部方向から見た場合の略図である。
【図9】本発明の実施形態1における測定部の略図である。
【図10】本発明の実施形態1における他の構成の液体搬送路の断面を示す図である。
【図11】本発明の実施形態1における他の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施形態1における他の構成を示す図である。
【図13−A】本発明の実施形態2を説明する略図である。
【図13−B】本発明の実施形態2を説明する略図である。
【図14】本発明の実施形態3を説明する略図である。
【図15】本発明の実施形態3を説明する略図である。
【符号の説明】
【0032】
1…試料、2…オイル、3…空気、4…試料プローブ、5…オイルプローブ、6…導入口、7…シッパー、8…排出口、9…廃液タンク、10…液体搬送デバイス、11…試料ユニット、12…検出ユニット、13…排出ユニット、14…導入部、15…液体搬送路、16…測定部、17…排出部、18…下側基板、19…上側基板、20…基礎基板、20'…基礎基板、21…制御電極、21a…制御電極、21b…制御電極、21c…制御電極、21d…制御電極、21e…制御電極、21’…制御電極、22…絶縁膜、22'…絶縁膜、23…撥水膜、23'…撥水膜、24…共通電極、25…ハロゲンランプ、26…照射光ファイバ、27…照射レンズ、28…光、29…集光レンズ、30…集光光ファイバ、31…分光検出器、32…第1の領域、32’…第1の領域と同様の性質を有する領域、33…第2の領域、33’…第3の領域、34…光が照射される領域、101…電圧制御手段、102…制御用コンピュータ、103…連絡部。
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上で液体を操作するシステムに関する。特に多数の液体を搬送する分析または反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として、ハロゲンランプ等からの白色光を試料と試薬との混合液である反応液に照射し、反応液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し、その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置が広く用いられている。あるいは、白色光を回折格子で分光した後、反応液に照射する場合もある。これらの分析装置においては、従来、プラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬とを分注し、これらを混合して反応液として光を照射し、成分量を測定していた。
【0003】
しかし近年、試薬コストの削減や、環境への負荷低減のため、分析に用いる反応液の微少量化が求められており、従来方式での反応液微少量化では液の取り扱いが困難になり、また分注、混合時に発生する気泡等により正確な測定ができなくなるという問題があった。このため、微少量の液体を的確に操作する技術が求められていた。
【0004】
微少量の液体を操作する一つの方法として、平面基板に形成された電極上の液体を電気的な制御により搬送する方法がある。この代表的な一つの方法は、複数の電極を形成した二つの対向する基板間に、搬送する液体を粒状の液体にして挟みこみ、二つの対向する基板間の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで、液体を搬送する(例えば非特許文献1、非特許文献2)。二つの対向する基板で構成されたものを液体搬送デバイスと称する。この方法では、通常、液体を搬送させる液体搬送路に沿って、片方の基板上に多数の電極が形成され、もう一方の基板上にグランドに接続された一つの電極を備える。粒状の液体下部の電極の一つに電圧を印加すると、エレクトロウェティング現象(例えば非特許文献3)により、電圧を印加した電極の上の濡れ性が良くなり、その電圧を印加した電極に載るようにその粒状の液体が移動する。これを繰り返すことで液体を搬送する。
【0005】
また、複数に分岐した電極列を用いて液体を分岐に振り分けたり、複数の溝が合流する位置で液体を融合させることも報告されている(例えば特許文献1)。また、一つの粒状の液体を分割することも報告されている(例えば特許文献2)。また試料を搬送し、液体搬送デバイス内部で計測を行うようなシステムも報告されている(非特許文献4)。このような、液体を搬送する液体搬送デバイスの利点は、周囲が壁に囲まれた容器に比べ、基板を利用するため気泡の影響を受けにくいことなどが挙げられる。
代表的な液体搬送デバイスの内部は、非特許文献1記載の通り、オイルで満たされているか、非特許文献2記載の通り、液体周囲のみオイルで取り囲まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−267801号公報
【0007】
【特許文献2】米国特許公報第6565727号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters、 Vol. 77、 No. 11、 pp. 1725-1726、 2000
【非特許文献2】Lab-on-a-Chip: Platforms、 Devices、 and Applications、 Conf. 5591、 SPIE Optics East、 Philadelphia、 Oct. 25-28、 2004.
【非特許文献3】Polymer 37 (1996) 2465-2470
【非特許文献4】Micro Total Analysis Systems 2003 p.1287-1290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体が搬送される際、液体が搬送されることによってオイルが流動するため、デバイス表面と液体との間に多量にオイルが入りこむことがある。液体搬送デバイスの一部に測定部を設け、測定部において透過光や、発光、及びインピーダンスなどの電気的な信号を計測する場合、測定する領域に多量のオイルが入りこむと、散乱により光量が減少することや、光が透過する試料の量が変化することで、測定の再現性への影響が生じる。また液体が搬送されている際にオイルが大きく流動すると、搬送する液体が、搬送を制御する電極上から離れ、搬送できなくなってしまうという問題がある。本発明はこれらの問題を解決する液体搬送デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
液体搬送デバイスの表面に、オイルに対して親和性の異なる二つの領域を設けることで、オイルの位置を制御し、液体と液体搬送デバイス表面との内にオイルが多量に入りこむことや、オイルが大きく流動することにより搬送する液体が制御できない位置に移動することを防止する。具体的には、例えば親油部と撥油部という2つの領域を設ける。これにより測定の再現性を向上させ、また確実に液体を搬送できる。
【0010】
液体搬送デバイスの一例としては、第1の基礎基板と、前記第1の基礎基板上に設けられた複数の第1電極と、第1の液体及び第2の液体を導入するための導入口と、前記第1の液体及び前記第2の液体を排出するための排出口と、前記第1の液体についての測定を行なうための測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段と、前記測定部に設けられた第1の領域と、前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有することを特徴とする。
【0011】
また、分析システムの一例としては、第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、前記第2のユニットは、前記測定部に設けられた第1の領域と、前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有し、前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体搬送路に沿って移動させるように、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のようにデバイス表面のオイルの親和性を制御することにより、測定部においてオイルが必要以上に入りこみ、測定を妨げるのを防止することができる。これにより測定の再現性がよくなる。また液体を搬送する際にオイルが流動することにより、液体が制御電極上から離れてしまうのを防止することができる。これにより確実に液体を搬送することができる。
【実施例1】
【0013】
本実施例では、液体搬送デバイス内に水溶性の試料をオイルとともに導入し、オイルで試料をとり囲みながら液体搬送デバイス内を搬送し、測定部において試料の吸光度を測定した後、試料とオイルを排出する分析システムを示す。
図1に分析システムの構成を示す。分析システムは液体搬送デバイス10と、試料1及びオイル2を液体搬送デバイス10に導入するための導入ユニット11と、試料1の内部の成分を測定するための検出ユニット12と、試料1及びオイル2を液体搬送デバイス10から排出するための排出ユニット13から構成される。導入ユニット11には試料1が試料槽に収容等されて、またオイル2がオイル槽に収容等されて各々配置され、それぞれ試料プローブ4、オイルプローブ5により導入口6から液体搬送デバイス10内に導入することができる。検出ユニット12は、液体搬送デバイス10に液体が導入され排出されるまでに通過する液体搬送路の少なくとも一部に設置された測定部に隣接して設置される。排出ユニット13にはシッパー7と廃液タンク9が配置され、排出口8に搬送された液体をシッパー7により液体搬送デバイス10内から廃液タンク9へ排出できる。
【0014】
図2に、液体搬送デバイス10内において、導入、搬送、測定、排出の各操作を行う各部の配置図を示す。液体搬送デバイス10は、導入口6を備えた導入部14、試料1の内部成分を測定するための測定部16、排出口8を備えた排出部17、各部を結ぶ液体搬送路15で構成される。導入部14、液体搬送路15、測定部16、排出部17の各々の少なくとも一部には液体を搬送するための制御電極が配置されており、制御電極への印加電圧の制御により、試料1が搬送される。
【0015】
図3に本実施例で用いた液体搬送路15の搬送方向における断面構成図を示す。液体搬送デバイス10は下側基板18及び上側基板19から構成されている。下側基板18では絶縁性の基礎基板20の上表面に試料1の搬送方向に沿って多数の制御電極21が配置され、さらにその表面は絶縁膜22で覆われている。上側基板19では絶縁性の基礎基板20’の下表面に1つの共通電極24が配置され、さらにその表面は絶縁膜22’で覆われている。さらにそれぞれの絶縁膜22、22’の表面には試料1が搬送しやすいよう、撥水性を付与するため撥水膜23、23'が塗布されている。これらの上下基板間に、搬送する試料1を配置し、その周囲をオイル2で取り囲む。すなわち、搬送する試料1の液滴がオイル2に内包され、試料1の液滴とオイル2の複合体となる。ここで内包とは、一のオイルが一の液体(液滴)の外表面を実質的に覆うように位置することをいう。オイル2の周囲には空気3が存在する。本実施例では絶縁性の基礎基板20、20’に石英を、制御電極21及び共通電極24にITO(Indium-Tin Oxide)を、絶縁膜23、23’にCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜したSiO2を用い、撥水膜としてデュポン社製TeflonAFを用いた。ITOの厚みは70nmとし、CVDで成膜した絶縁膜22、22’の厚みは200nmとした。また下側基板18と上側基板19の間の距離は0.5mmとした。また試料1として水溶液を、オイル2としてシリコーンオイルを用い、液量はそれぞれ5μLとした。下側基板18と上側基板19の間にオイル2で取り囲まれた試料1を設置することにより、オイルの蒸発防止効果が高まり、また、オイルが重力で引かれて液体から分離することを回避することができる。
【0016】
図4に本実施例で用いた液体搬送デバイスを上部から見た場合の、透視図を示す。略化してわかりやすくするため、試料1、オイル2、制御電極21のみを図示し、電圧を印加している制御電極21をハッチングで示す。また制御電極21上部に位置する共通電極24はアースに接続し、電圧は共通電極24と一部の制御電極21との間に印加する。また本願では電圧を印加していない制御電極21はどこにも接続されていないフロートの状態とし、印加電圧を切る場合は、電圧印加を停止してから制御電極21を一旦アースに接続した後、制御電極21をフロートの状態にする。上部からみて試料1と制御電極が重なりを持っているとき、試料1と重なる領域を持った制御電極21に電圧を印加すると、電圧を印加した制御電極21の上に載るように試料1が移動する。はじめに、図4(a)のように、液体搬送路に沿って制御電極21が複数配置され、制御電極21b近傍にオイル2に囲まれた試料1が存在するとき、制御電極21bに電圧を印加すると、図4(b)のように試料1が制御電極21bに載るように移動する。次に制御電極21cに電圧を印加し、制御電極21bの印加電圧を切ると、試料1は図4(c)のようにオイル2と空気3との気液界面と接した後、オイル2と空気3との気液界面を押しながら、図4(d)のようにオイル2と供に移動して、制御電極21cに載るように移動する。
【0017】
さらに制御電極21dに電圧を印加し、制御電極21cの印加電圧を切ると、試料1は図4(e)のようにオイル2と空気3との気液界面を押しながら、図4(f)のようにオイル2と供に移動して制御電極21dに載るように移動する。これを繰り返すことで試料1をオイル2に囲まれたまま搬送することが可能である。また、オイル2で囲まれた液体1は制御電極の配列に沿って移動することとなる。本実施例では試料1として水溶液を用いたが、純水、緩衝液などでもよい。また血液や、DNAが含まれる溶液でもよい。また試料1にラテックス粒子、細胞、磁性ビーズなどが含まれていてもよい。またオイル2としてシリコーンオイルを用いたが、搬送する液体に対して不混和性の液体であればよい。また絶縁性の基礎基板20、20’として石英を用いたが、Si等の導電性基板上に酸化膜等の絶縁膜を成膜した基板や、樹脂性の基板でもよい。また絶縁膜22、22’にはCVD(Chemical Vapor deposition)にて成膜したSiO2を用いたが、ポリシラザンや、SiN、Paryleneなどの絶縁膜でもよい。また本実施例では絶縁膜22、22’上に撥水膜23、23’を成膜したが、これらの絶縁膜や撥水膜といった層状部材は,1つでもよい。例えば,撥水膜23、23’の代わりに撥水性絶縁膜を成膜するか、もしくは、絶縁膜22、22’の代わりに絶縁性撥水膜を成膜してもよい。
【0018】
図5に液体搬送デバイス10内で液体1を操作するための電圧制御手段101の構成を示す。本制御手段は、図1に示した分析システムに設けられ、制御用コンピュータ102と、制御用コンピュータ102で制御された印加電圧を液体搬送デバイス10の所定の電極へ印加するための連絡部103とを有する。制御用コンピュータにはCRT、プリンタ、電源が接続される。制御用コンピュータには、分析対象や液体搬送方法について適宜条件を入力するための入力部、各種液体搬送方法に応じた電圧制御パターンを記憶する電圧制御パターン格納部、入力部から入力された情報に基づいて分析対象に応じた電圧制御パターンの組合せを定める電圧制御パターン調整部、電圧制御パターン調整部で定めた電圧制御パターンの組合せに応じて電圧を液体搬送デバイス10に印加する電圧印加制御部を備える。連絡部103は制御電極21に接続され、液体1を制御する際は入力部から入力された情報に従い、電圧印加制御部の制御を受けた電圧が連絡部103を介して所定の電極に印加される。
【0019】
図6に導入部14の断面構成図を示す。上側基板19に導入口6が配置され、容器に収容されたオイル2を導入するためのオイルプローブ5と容器に収容された試料1を導入するための試料プローブ4が導入口中をそれぞれ上下移動可能なように設置されている。始めにオイルプローブ5より5μLのオイル2を液体搬送デバイス内に導入した後、試料プローブ4より、オイル2の内部に試料1を5μL導入する。その後、試料プローブ4、オイルプローブ5は上方向に移動し、試料1とオイル2を液体搬送デバイス10内に脱離する。これにより、オイル2中に確実に試料1を配置することができる。このときオイルプローブよりも試料プローブが先に上方向に移動することで、試料プローブ4先端をオイル2と空気3との界面を通過させる。これにより、試料プローブ4先端に残ることなく確実にオイル中に試料を導入できる。導入後、制御電圧に電圧を印加することで、試料1をオイル2とともに搬送する。液体搬送デバイス10内で試料1をオイル2とともに搬送する。
【0020】
図7に排出部17の断面構成図を示す。排出部17では上側基板19に排出口8が配置されており、排出部17に搬送された試料1とオイル2は、排出口8より、排出ユニット13のシッパー7に吸引され、廃液タンク9に排出される。廃液タンク9内では集まったオイル2と試料1とが比重の違いにより分離するため、多数の試料及びそれを囲むオイルが排出されても、オイルや試料の処理が容易である。
【0021】
図8に測定部16を上部から見た場合の構成図を示す。簡単のため、制御電極の位置及び光が照射される領域、当該領域を含む第1の領域、及び、その周辺に設けられかつ第1の領域よりもオイルとの親和性の高い第2の領域を図に示す。測定部16では、図8(a)のように1つの測定部16に位置する制御電極21’中に光が照射される領域34と、領域34を含む領域として第1の領域32が設けられ、光は主として第1の領域32の中の領域34を透過する。本実施例では光が照射された領域は領域34と一致するが、光が照射された領域は第1の領域32と一致してもよい。また、本実施例では領域34は光を検出する領域と一致している。第1の領域32周囲には第1の領域32と比較してオイルとの親和性の高い第2の領域33が設けられる。第2の領域のさらに外側は第1の領域と同様の性質を有する領域32’が設けられる。領域34は制御電極の周辺部における光の散乱を避けるため,1つの制御電極に含まれるように位置する。
【0022】
ここで、第1の領域は溌油性を有するように構成してもよい。このとき、第1の領域に入り込んだオイルをより確実に第1の領域から第2の領域へ排除することができる。この溌油性は、液体搬送デバイス表面の撥水膜にフルオロカーボン系の撥水膜を用いることで実現できる。オイルとの親和性が高いとは、オイルの表面に対する接触角がより小さいということである。第1の領域と第2の領域にまたがって存在するオイルは、接触角が小さくなる表面を備えた領域の方に移動する。すなわちオイルは第1の領域よりも表面との接触角の小さい第2の領域の上に移動する。本実施例では光が透過する領域34を含む第1の領域32を取り囲むように第2の領域33を設けたが、図8(b)のように第2の領域は第1の領域32の近傍に位置すればよく、必ずしも周囲を囲まなくともよい。図8(b)のように、第2の領域を第1の領域を内包しない形状として構成することもできる。この場合には、第1の領域と第2の領域との設計がより簡便となる。
【0023】
その一方、図8(b)のように第1の領域の周囲を取り囲む様に第2の領域が設けられてない場合は、オイルが第2の領域上に多く移動する際に影響を受けることも考えられる。この点につき、図8(a)のように周囲を囲んだ場合は、オイルが第2の領域上に多く移動する際にも、オイル中の試料1は光が透過する第1の領域内の概略中心に合わせて位置を制御することができ、確実に試料に光を照射できる。また第2の領域は測定する試料1の周囲のオイルを確実に捉えるため、第1の領域近傍に位置する必要がある。そのため,第1の領域を含む1つの制御電極21’と第2の領域とが重なりを持つように配置されるのが望ましい。また第1の領域は、光が照射される領域を含むものとし、第2の領域は当該光が照射される領域を含まないもの、もしくは測定部を通過した光を検出する集光レンズの集光範囲が含まれないものとすることもできる。集光レンズの集光範囲が含まれない場合には、散乱などによりオイルを捕捉している第2の領域を通過した光が、検出ユニットで検出される光に含まれず、オイルが多く入り込まない領域である光が照射される領域(もしくは第1の領域)を通過した光のみを検出することができ、測定の再現性を高めることができる。このように、領域34を第1の領域32内に配置し、その周囲にオイルと親和性の高い第2の領域33を設けることで、オイルは第1の領域32よりも第2の領域33上に存在しやすくなり、第1の領域32にオイルが必要以上に入り込むのを防ぐことができる。
【0024】
次に、測定部16の搬送方向と垂直な方向(A-A')の断面構成図を図9に、検出ユニット12とともに示す。検出ユニット12ではハロゲンランプ25からの光28を照射光ファイバ26で導き、照射レンズ27により測定部16に照射し、透過光を集光レンズ29で集光光ファイバ30に集光し、分光検出器31で必要な波長に光を分光し検出する。本実施例では600nmの吸光度を測定することで、水溶液の濁度測定を行った。デバイス表面は、第1の領域32(及び適宜デバイス全体について)は撥水性かつ撥油性の撥水膜を用い、第2の領域では撥水性かつ親油性の撥水膜を用いる。本実施例ではオイルにシリコーンオイルを用いており、第1の領域32及び液体搬送デバイス全体の撥水膜23、23'の材料はフッ素系撥水膜を用いている。例えば、TeflonAF(登録商標)を用いることができる。そこで第2の領域33の撥水膜23、23'の材料はフッ素系撥水膜よりもシリコーンオイルに対して親和性の高いシリコーン系撥水膜を用いた。これによりオイルは第1の領域32よりも第2の領域33上に存在しやすくなり、第1の領域にオイルが必要以上に入り込むのを防ぐことができる。このとき第2の領域33を第1の領域32近傍に位置することで、オイルが必要以上に第1の領域32に入りこんで測定を阻害することがなくなり、測定の再現性の向上に寄与する。本発明の構成は、血清の濁度測定や、血清を液体搬送デバイス内で試薬と混合し、吸光度を測定することで血液内部の成分を測定することへの応用も可能である。また発光、蛍光発光の計測や、インピーダンスなどの電気的な信号を用いた計測においても、測定部にオイルが必要以上に入りこむと再現性が悪くなるが、本発明の構成により、再現性が向上する。
【0025】
また、本実施例では二枚の基板間に試料を挟み込み搬送したが、図10のように上側基板19を設けず、下側基板18のみの構成でも搬送可能である。この場合は下側基板18上に共通電極24を配置する。測定部の構成を図11に示す。この場合においても第2の領域33を第1の領域の周囲もしくは近傍に設けることにより、オイルが第1の領域に多量に入り込むことを防止し、測定の再現性が向上する。
【0026】
また本実施例では分画されたオイルを用いた液体搬送デバイスであるが、オイルで満たされた液体搬送デバイスにおいても適用ができる。この場合の測定部の構成を図12に示す。この場合には、特に試料の液滴の内部にオイルが偶発的に入り込んでしまった場合等においても、オイルは第1の領域よりも第2の領域に存在しやすく、光28が照射される領域にオイルが入りこまず、測定部においてオイルの位置を制御することができ、測定の再現性を高めることができる。
【実施例2】
【0027】
本実施例では、分析システム全体は実施例1と基本的に同じ構成であるが、第2の領域33において撥水膜23及び23'表面に物理的に凸凹の状態とすることにより、オイルとの親和性を高めた。撥水膜の材料はデバイス全体で同じであり、フッ素系撥水膜等を用いることができる。例えば、TeflonAF(登録商標)を用いることができる。図13に例として下側基板18における第1の領域32と第2の領域33の表面構造の違いを示す。第1の領域では表面は図13(a)に示すようにほぼ平らな面であるが、第2の領域では図13(b)に示すように、絶縁膜22をウェットエッチングまたは、ドライエッチング、CVD、機械加工などの種々の加工、成型法により凸凹形状とし、その上に成膜した撥水膜23、23'に凸凹形状を作り出す。これらの凸凹形状はその凸凹の高さ方向の長さが数ナノメートルから数百マイクロメートルのオーダーであり、搬送する試料全体の大きさに対して十分小さければよい。
【0028】
本実施例では,液体搬送デバイス内等で散乱して入射される光の影響を受けないように,表面の凸凹で光が散乱しないよう,これらの凸凹の高さ方向の長さを透過する光の波長よりも小さくした。このような凸凹の表面では撥水性のものはより撥水に、親水性のものはより親水になるため、図13(b)で表される第2の領域33は、図13(a)であらわされる第1の領域32に比べオイルとの親和性が高くなる。また凸凹形状は図13(c)のように、針状の突起形状でもよい。また図13(d)のように撥水膜材料のみで凸凹形状を設けてもよい。さらに図13(e)のように撥水膜の一部に孔が空いて絶縁膜を完全に覆っていないことにより、撥水膜表面が凸凹形状となっても良い。また図13(f)のように絶縁性の基礎基板20に凸凹形状があってもよい。
【0029】
本実施例の構成により、オイルが第1の領域の液体搬送デバイス表面と試料の間に必要以上に入りこみ、試料1を透過する光の光路長が変化することを防ぐことができる。これにより再現性のよい測定が可能となる。
【実施例3】
【0030】
本実施例では、分析システム全体は実施例1と基本的に同じ構成であるが、液体搬送路10の構成が異なる。ここで、液体搬送路10は、測定部を除く部分について、第2の領域32と同様の性質を持つ第3の領域とする。第3の領域の親油性および溌油性および撥水性に関する性質は上記の第2の領域と同様である。図14に本実施例の液体搬送路を上部から見た場合の構成図を示す。簡単のため、制御電極及び第3の領域のみ示す。また図15に、液体搬送路において搬送方向と垂直な(B-B')方向の断面図を示す。液体搬送路中の制御電極21付近に、搬送方向に沿ってオイルとの親和性の高い第3の領域33’を設ける。第3の領域の外側には第1の領域と同様の性質を有する領域32’が設けられる。オイルはシリコーンオイルを用い、第3の領域33’の液体搬送デバイス表面の撥水膜にはシリコーン系撥水膜を用いて、他の液体搬送デバイス表面はフッ素系撥水膜であるTeflonAF(登録商標)を用いた。これまでの液体搬送デバイスでは、オイルとの親和性の制御はしていないため、液体の搬送などによりオイルが大きく流動し、試料1が制御電極が重ならない位置に移動してしまい、液体が制御できなくなることが考えられるが、本実施例の構成によりオイルが制御電極上から離れにくくすることで,確実に試料1を搬送することが可能となる。また実施例2で示したように、第3の領域とその他の液体搬送デバイス表面の撥水膜の材質は同じであるが、第3の領域の表面に凸凹形状をつけることにより、オイルとの親和性を高めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1における分析システムの略図である。
【図2】本発明の実施形態1における液体搬送デバイス内における各部の配置図である。
【図3】本発明の実施形態1における液体搬送路の断面を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1における液体搬送路での操作の手順を説明する図である。
【図5】本発明の制御システムの略図である。
【図6】本発明の実施形態1における導入口の断面図である。
【図7】本発明の実施形態1における排出口の断面図である。
【図8】本発明の実施形態1における測定部を上部方向から見た場合の略図である。
【図9】本発明の実施形態1における測定部の略図である。
【図10】本発明の実施形態1における他の構成の液体搬送路の断面を示す図である。
【図11】本発明の実施形態1における他の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施形態1における他の構成を示す図である。
【図13−A】本発明の実施形態2を説明する略図である。
【図13−B】本発明の実施形態2を説明する略図である。
【図14】本発明の実施形態3を説明する略図である。
【図15】本発明の実施形態3を説明する略図である。
【符号の説明】
【0032】
1…試料、2…オイル、3…空気、4…試料プローブ、5…オイルプローブ、6…導入口、7…シッパー、8…排出口、9…廃液タンク、10…液体搬送デバイス、11…試料ユニット、12…検出ユニット、13…排出ユニット、14…導入部、15…液体搬送路、16…測定部、17…排出部、18…下側基板、19…上側基板、20…基礎基板、20'…基礎基板、21…制御電極、21a…制御電極、21b…制御電極、21c…制御電極、21d…制御電極、21e…制御電極、21’…制御電極、22…絶縁膜、22'…絶縁膜、23…撥水膜、23'…撥水膜、24…共通電極、25…ハロゲンランプ、26…照射光ファイバ、27…照射レンズ、28…光、29…集光レンズ、30…集光光ファイバ、31…分光検出器、32…第1の領域、32’…第1の領域と同様の性質を有する領域、33…第2の領域、33’…第3の領域、34…光が照射される領域、101…電圧制御手段、102…制御用コンピュータ、103…連絡部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基礎基板と、
前記第1の基礎基板上に設けられた複数の第1電極と、
第1の液体及び第2の液体を導入するための導入口と、
前記第1の液体及び前記第2の液体を排出するための排出口と、
前記第1の液体についての測定を行なうための測定部と、
前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段と、
前記測定部に設けられた第1の領域と、
前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有することを特徴とする液体搬送デバイス。
【請求項2】
前記第1の基礎基板と対向する第2の基礎基板と、
前記第2の基礎基板上に設けられた第2電極とをさらに有し、
前記導電手段は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極との間に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項3】
前記第1の液体と前記第2の液体とは、不混和性であることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項4】
前記第1の領域に内包され、かつ外部から光を照射される領域をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体搬送デバイス。
【請求項5】
1の前記測定部は1の前記第1電極に設置され、前記第1の領域と前記第2の領域との各々は、前記第1電極と重なりを有して配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体搬送デバイス。
【請求項6】
1の前記測定部には、1の前記第2の領域と1の前記第1電極とが配置されることを特徴とする請求項4に記載の液体搬送デバイス。
【請求項7】
1の前記測定部には、1の前記第1電極と1の前記光を照射される領域とが配置されることを特徴とする請求項4に記載の液体搬送デバイス。
【請求項8】
前記第2の領域は、前記第1の領域を囲んで設置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項9】
前記第2の領域は、第1の領域を内包しない形状として設置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項10】
前記第1の領域は溌油性を有し、前記第2の領域は親油性を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項11】
前記第1の領域は撥水性かつ撥油性の撥水膜を設置され、前記第2の領域は撥水性かつ親油性の撥水膜が設置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項12】
前記第2の液体はシリコーンオイルであり、前記第1の領域と前記第2の領域の各々はフッ素系撥水膜及びシリコーン系撥水膜であることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項13】
前記第1の基礎基板は、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材を具備し、前記第1の層状部材は、前記第1の領域では撥水性及び撥油性を有し、前記第2の領域では撥水性及び親油性を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項14】
前記第2の液体はシリコーンオイルであり、前記第1の層状部材は、前記第1の領域ではフッ素系撥水膜であり、前記第2の領域ではシリコーン系撥水膜であることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項15】
前記第2の領域は、表面に凸凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項16】
前記第2の領域は、表面に凸凹部を有し、前記凸凹部の凸凹の高さは、前記光を照射される領域に照射される光の波長よりも小さいことを特徴とする請求項4記載の液体搬送デバイス。
【請求項17】
前記複数の第1電極は、前記導入口と前記排出口とをつなぎ、かつ少なくとも一部に前記測定部を設けられた液体搬送路を形成するものであり、前記液体搬送路の前記測定部を除く部分は、前記第1の領域より親油性が高いことを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項18】
第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、
前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、
前記第2のユニットは、前記測定部に設けられた第1の領域と、前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有し、前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体搬送路に沿って移動させるように、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする分析システム。
【請求項19】
前記検出系は光源を有し、前記第1の領域は前記光源の光の照射領域を含むことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項20】
前記検出系は光源を有し、前記第2の領域は前記光源の光の照射領域に含まれないことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項21】
前記検出系は光源と集光レンズを具備する光検出器とを有し、前記第2の領域は前記集光レンズの集光範囲を含まないことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項22】
前記検出系は光源を有し、前記第2の領域は、表面に凸凹部を有し、前記凸凹の高さは、前記光源によって照射される光の波長よりも小さいことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項23】
前記液体搬送路の前記測定部を除く部分は、前記第1の領域より親油性が高いことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項1】
第1の基礎基板と、
前記第1の基礎基板上に設けられた複数の第1電極と、
第1の液体及び第2の液体を導入するための導入口と、
前記第1の液体及び前記第2の液体を排出するための排出口と、
前記第1の液体についての測定を行なうための測定部と、
前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段と、
前記測定部に設けられた第1の領域と、
前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有することを特徴とする液体搬送デバイス。
【請求項2】
前記第1の基礎基板と対向する第2の基礎基板と、
前記第2の基礎基板上に設けられた第2電極とをさらに有し、
前記導電手段は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極との間に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項3】
前記第1の液体と前記第2の液体とは、不混和性であることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項4】
前記第1の領域に内包され、かつ外部から光を照射される領域をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体搬送デバイス。
【請求項5】
1の前記測定部は1の前記第1電極に設置され、前記第1の領域と前記第2の領域との各々は、前記第1電極と重なりを有して配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体搬送デバイス。
【請求項6】
1の前記測定部には、1の前記第2の領域と1の前記第1電極とが配置されることを特徴とする請求項4に記載の液体搬送デバイス。
【請求項7】
1の前記測定部には、1の前記第1電極と1の前記光を照射される領域とが配置されることを特徴とする請求項4に記載の液体搬送デバイス。
【請求項8】
前記第2の領域は、前記第1の領域を囲んで設置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項9】
前記第2の領域は、第1の領域を内包しない形状として設置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項10】
前記第1の領域は溌油性を有し、前記第2の領域は親油性を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項11】
前記第1の領域は撥水性かつ撥油性の撥水膜を設置され、前記第2の領域は撥水性かつ親油性の撥水膜が設置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項12】
前記第2の液体はシリコーンオイルであり、前記第1の領域と前記第2の領域の各々はフッ素系撥水膜及びシリコーン系撥水膜であることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項13】
前記第1の基礎基板は、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材を具備し、前記第1の層状部材は、前記第1の領域では撥水性及び撥油性を有し、前記第2の領域では撥水性及び親油性を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項14】
前記第2の液体はシリコーンオイルであり、前記第1の層状部材は、前記第1の領域ではフッ素系撥水膜であり、前記第2の領域ではシリコーン系撥水膜であることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項15】
前記第2の領域は、表面に凸凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項16】
前記第2の領域は、表面に凸凹部を有し、前記凸凹部の凸凹の高さは、前記光を照射される領域に照射される光の波長よりも小さいことを特徴とする請求項4記載の液体搬送デバイス。
【請求項17】
前記複数の第1電極は、前記導入口と前記排出口とをつなぎ、かつ少なくとも一部に前記測定部を設けられた液体搬送路を形成するものであり、前記液体搬送路の前記測定部を除く部分は、前記第1の領域より親油性が高いことを特徴とする請求項1に記載の液体搬送デバイス。
【請求項18】
第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、
前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、
前記第2のユニットは、前記測定部に設けられた第1の領域と、前記第1の領域の近傍に設けられ、前記第1の領域よりも前記第2の液体に対する親和性の高い第2の領域とを有し、前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体搬送路に沿って移動させるように、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする分析システム。
【請求項19】
前記検出系は光源を有し、前記第1の領域は前記光源の光の照射領域を含むことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項20】
前記検出系は光源を有し、前記第2の領域は前記光源の光の照射領域に含まれないことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項21】
前記検出系は光源と集光レンズを具備する光検出器とを有し、前記第2の領域は前記集光レンズの集光範囲を含まないことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項22】
前記検出系は光源を有し、前記第2の領域は、表面に凸凹部を有し、前記凸凹の高さは、前記光源によって照射される光の波長よりも小さいことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【請求項23】
前記液体搬送路の前記測定部を除く部分は、前記第1の領域より親油性が高いことを特徴とする請求項18に記載の分析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−A】
【図13−B】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−A】
【図13−B】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−329904(P2006−329904A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156575(P2005−156575)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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