説明

液体量推定装置及び車両の運動支援装置

【課題】第1制動部材と第2制動部材との間に存在する液体の液体量を好適に推定できる液体量推定装置及び車両の運動支援装置を提供する。
【解決手段】車両には、車輪と共に回動するブレーキロータと、該ブレーキロータに摺接可能なブレーキパッドとが搭載されている。そして、ECUは、降水時に、車両の車体速度VSを演算し(ステップS13)、ワイパの作動速度Vwpを特定する(ステップS14)。続いて、ECUは、車体速度VS及び作動速度Vwpに応じて、ブレーキロータに付着する水分膜の所定周期での成長量ΔWを推定し(ステップS15)、所定周期毎の成長量ΔWを積算して水分膜厚Wを求める(ステップS16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪と共に回動するブレーキロータなどの第1制動部材と該第1制動部材に接触可能なブレーキパッドなどの第2制動部材との間に存在する液体の液体量を推定する液体量推定装置、及び該液体量推定装置を備える車両の運動支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、車輪と共に回動する第1制動部材としてのブレーキロータと、該回動するブレーキロータに摺接可能な第2制動部材としてのブレーキパッドとを有するディスクブレーキ装置が車輪毎に搭載されている。こうしたディスクブレーキ装置では、ブレーキロータにブレーキパッドを摺接させる際に、該ブレーキパッドがブレーキロータに付与する押圧力が大きいほど、車輪に対して大きな制動力が付与される。
【0003】
ところが、車両を雨天で走行させる場合には、路面からの雨水などの跳ね返りや前方を走行する車両が巻き上げるミスト状の水分がブレーキパッドやブレーキロータなどに付着してしまう。こうしたブレーキパッドやブレーキロータなどに付着する水分の水分量(液体量)が多くなるほど、ディスクブレーキ装置による車輪への制動力の付与効率が低下する問題があった。そこで、近年では、降水時であっても車輪に対して好適な制動力を付与させるための装置として、特許文献1に記載の運動支援装置が提案されている。
【0004】
この運動支援装置は、車両に搭載されるワイパが作動する場合には、降水中であると判断し、車輪に対して最後に制動力が付与されてからの経過時間を計測する。また、運動支援装置は、車両の車体速度やワイパの作動速度が速いほど小さな値となるように経過時間閾値を予め設定された所定周期毎(例えば「1秒」)に設定する。そして、上記運動支援装置は、計測する経過時間がその時点の経過時間閾値を経過した場合に、ブレーキパッドやブレーキロータに付着する水分の水分量が多くなったことに起因して制動力の付与効率が低下した可能性があると判断し、運転手が感じない程度の大きさの制動力を車輪に付与させる水分除去制御(液体除去制御)を実行するようになっている。その結果、ブレーキパッドやブレーキロータからは、該ブレーキパッドとブレーキロータとの間に発生した摩擦力などによって水分が除去される。したがって、その後に制動制御や運転手によるブレーキ操作が実行された場合には、車輪に対して好適な制動力が付与されるようになっていた。
【特許文献1】米国特許第5,570,937号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記経過時間閾値は、該経過時間閾値を設定するタイミングになった時点の車両の車体速度やワイパの作動速度に応じた値に設定される。そのため、車両の車体速度やワイパの作動速度がそれぞれ一定速度である場合には、ブレーキパッドやブレーキロータに付着する水分の単位時間あたりの増加量が一定であるため、適切なタイミングで上記制動制御が実行される。
【0006】
しかしながら、車両は、常に一定速度で走行するとは限らない。例えば、車両が加速中である場合、計測時間閾値は、該経過時間閾値を設定するタイミングになる毎に、その時点の車両の車体速度及びワイパの作動速度に応じた値に変更される。すなわち、計測時間閾値は、その時点での車体速度及びワイパの作動速度でもって車両が走行し続けることを仮定して設定される値である。そのため、車両の車体速度やワイパの作動速度が変化するような状況においては、制動力の付与効率が低下するほどの水分量の水分がブレーキパッドやブレーキロータに付着していない場合に上記水分除去制御が実行されたり、制動力の付与効率が悪化するほどの水分量の水分がブレーキパッドやブレーキロータに付着しても上記水分除去制御が実行されなかったりすることがある。したがって、ブレーキパッドとブレーキロータとの間に存在する水分の水分量を、より正確に推定する方法の提案が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1制動部材と第2制動部材との間に存在する液体の液体量を好適に推定できる液体量推定装置及び車両の運動支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、液体量推定装置にかかる請求項1に記載の発明は、車両に搭載される車輪(FR,FL,RR,RL)と共に回動する第1制動部材(50)と、該回動する第1制動部材(50)に接触することにより前記車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力を付与可能な第2制動部材(51,52)との間に存在する液体の液体量(W)を推定する液体量推定装置であって、降水時に、予め設定された所定周期(T)における前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の増加量(ΔW)を推定する単位増加量推定手段(16、S15)と、前記所定周期(T)毎に前記単位増加量推定手段(16、S15)によって推定された前記液体の増加量(ΔW)を積算し、該積算結果に基づき前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)を演算する液体量演算手段(16、S16)と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、降水によって路面が濡れている際に車両が走行する場合には、各制動部材の間に存在する液体の増加量が所定周期毎に推定され、該推定結果に基づき各制動部材の間に存在する液体の液体量が演算される。したがって、第1制動部材と第2制動部材との間に存在する液体の液体量を好適に推定できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体量推定装置において、車両の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(16、S12,S13)をさらに備え、前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を前記車体速度演算手段(16、S12,S13)によって演算された車体速度(VS)が速いほど多くなるように推定することを要旨とする。
【0011】
一般に、各制動部材の間に存在する液体の増加量は、所定周期での車両の走行距離が長いほど多くなる。そこで、本発明では、各制動部材の間に存在する液体の増加量は、車両の車体速度が速いほど多くなるように推定される。そのため、各制動部材の間に存在する液体の液体量を、所定周期での車両の走行距離の変化に対応し、より正確に推定することが可能になる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体量推定装置において、車両に搭載されたワイパ(18)の作動速度(Vwp)を特定する作動速度特定手段(16、S14)をさらに備え、前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を前記作動速度特定手段(16、S14)によって特定された作動速度(Vwp)が速いほど多くなるように推定することを要旨とする。
【0013】
一般に、降水量が多いほど各制動部材の間に存在する液体の増加量が多くなりやすい。また、車両の運転手は、降水量が多いほどワイパの作動速度を速くさせる傾向がある。そこで、本発明では、各制動部材の間に存在する液体の増加量は、ワイパの作動速度が速いほど多くなるように推定される。そのため、各制動部材の間に存在する液体の液体量を、降水量の変化に対応し、より正確に推定することが可能になる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液体量推定装置において、前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記車体速度演算手段(16、S12,S13)によって演算された車体速度(VS)及び前記作動速度特定手段(16、S14)によって特定された作動速度(Vwp)により、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を推定することを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、各制動部材の間に存在する液体の増加量は、ワイパの作動速度及び車両の車体速度に基づき推定される。そのため、ワイパの作動速度及び車両の車体速度を、ワイパの作動速度又は車両の車体速度に応じて推定する場合に比して、より正確に推定することが可能になる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の液体量推定装置において、車両に搭載されたワイパ(18)の作動速度(Vwp)を特定する作動速度特定手段(16、S14)をさらに備え、前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を前記作動速度特定手段(16、S14)によって特定された作動速度(Vwp)が速いほど多くなるように推定することを要旨とする。
【0017】
一般に、降水量が多いほど各制動部材の間に存在する液体の増加量が多くなりやすい。また、車両の運転手は、降水量が多いほどワイパの作動速度を速くさせる傾向がある。そこで、本発明では、各制動部材の間に存在する液体の増加量は、ワイパの作動速度が速いほど多くなるように推定される。そのため、各制動部材の間に存在する液体の液体量を、降水量の変化に対応し、より正確に推定することが可能になる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の液体量推定装置において、降水時に車両に対する降水量を取得する降水量取得手段(16、S14)と、降水時における車両の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(16,S12,S13)と、をさらに備え、前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を、前記降水量取得手段(16、S14)によって取得された降水量及び前記車体速度演算手段(16,S12,S13)によって演算された車体速度(VS)により推定することを要旨とする。
【0019】
一般に、車両に対する降水量が多いほど各制動部材の間に存在する液体の増加量が多くなりやすい。そこで、本発明では、各制動部材の間に存在する液体の増加量は、車両に対する降水量が多いほど多くなるように推定される。そのため、各制動部材の間に存在する液体の液体量を、降水量の変化に対応し、より正確に推定することが可能になる。
【0020】
一方、車両の運動支援装置にかかる請求項7に記載の発明は、車両に搭載される車輪(FR,FL,RR,RL)と共に回動する前記第1制動部材(50)に前記第2制動部材(51,52)を接触させることにより、前記車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力を付与させる車両の運動支援装置であって、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の液体量推定装置(16)と、該液体量推定装置(16)の前記液体量演算手段(16、S16)によって演算された前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)が予め設定された液体量閾値(KW)以上である場合に、前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体を除去させるために、前記第1制動部材(50)に前記第2制動部材(51,52)を接触させる液体除去制御を実行する制御手段(16、S18)と、を備えたことを要旨とする。
【0021】
一般に、各制動部材の間に存在する液体の液体量が多いと、運転手のブレーキ操作や制動制御などが実行されたとしても、車輪に対して適切な大きさの制動力が付与されない可能性がある。こうした場合、制動力の付与効率が低下したことに対する不快感を運転手に与えてしまうおそれがある。そこで、本発明では、各制動部材の間に存在する液体の液体量が液体量閾値以上になった場合、各制動部材の間に存在する液体を除去させるための液体除去制御が実行される。この液体除去制御が実行されると、各制動部材の間に存在する液体が除去されるため、その後のブレーキ操作や制動制御時には、車輪に対して適切な制動力が付与される。
【0022】
また、車両の運動支援装置にかかる請求項8に記載の発明は、車両の運転手がブレーキ操作を行う場合に、前記車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を調整するために前記第1制動部材(50)に対する前記第2制動部材(51,52)の接触態様を調整させる制動制御を実行可能な車両の運動支援装置であって、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の液体量推定装置(16)と、該液体量推定装置(16)の前記液体量演算手段(16、S16)によって演算された前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)が予め設定された液体量閾値(KW)以上である場合に、運転手にブレーキ操作を促すための報知処理を行う報知手段(16、S20)と、を備えたことを要旨とする。
【0023】
一般に、各制動部材の間に存在する液体の液体量が多いと、運転手のブレーキ操作や制動制御などが実行されたとしても、車輪に対して適切な大きさの制動力が付与されない可能性がある。こうした場合、制動力の付与効率が低下したことに対する不快感を運転手に与えてしまうおそれがある。そこで、本発明では、各制動部材の間に存在する液体の液体量が液体量閾値以上になった場合、各制動部材の間に存在する液体を除去させる目的のブレーキ操作を運転手に促すための報知処理が実行される。こうした報知処理が行われると、運転手は、車輪に対して適切な制動力が付与されにくい状態であると認識することになる。そのため、運転手がブレーキ操作を行った際に、該ブレーキ操作量に応じた大きさの制動力が車輪に付与されないことに対する不快感を運転手に与えてしまうことが回避される。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の車両の運動支援装置において、前記液体量演算手段(16、S16)は、第1制動部材(50)と前記第2制動部材(51,52)とが接触した場合には、前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)を「0(零)」にリセットすることを要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、車輪に制動力が付与された場合には、各制動部材の間に存在する液体が除去されたと判断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の車両は、右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RLを有する自動四輪車両であって、運転手による図示しないアクセルペダルの踏込み操作に基づいた駆動力が駆動輪(例えば後輪RR,RL)に伝達されることにより走行する。このような車両には、該車両のフロントガラス11に着弾した雨水や雪などの水分(液体)を払拭するためのワイパ装置12が設けられている。また、車両には、運転手によるブレーキペダル13の踏込み操作に基づいた液圧としてのブレーキ液圧を発生させる液圧発生装置14と、該液圧発生装置14に接続され、各車輪FL,FR,RL,RRに制動力を付与するための制動装置15とが設けられており、該制動装置15は、その駆動が運動支援装置としての電子制御装置(以下、「ECU」という。)16によって制御される。また、車両には、運転手によるブレーキペダル13の踏込み操作又は制動装置15の駆動に基づき車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するディスクブレーキ装置17が車輪FR,FL,RR,RL毎に設けられている。
【0028】
次に、ワイパ装置12について図1に基づき説明する。
ワイパ装置12には、フロントガラス11を払拭する複数本(本実施形態では2本)のワイパ18と、該各ワイパ18の作動速度(回動速度)を調整すべく運転手が操作するワイパ操作部19(「ワイパスイッチ」ともいう。)とが設けられている。ワイパ装置12では、運転手によるワイパ操作部19の操作によって、ワイパ18の作動速度が低速(図1では「L」)、中速(図1では「M」)、高速(図1では「H」)と複数段階に調整可能とされている。なお、ワイパ操作部19が図1に示す「OFF」となるように設定された場合、ワイパ18の作動が停止される。なお、本実施形態では、ワイパ操作部19からは、ワイパ18の作動速度に応じた検出信号がECU16に出力される。
【0029】
次に、液圧発生装置14について図1及び図2に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、液圧発生装置14は、マスタシリンダ20及びブースタ21を備えている。そして、液圧発生装置14では、運転手がブレーキペダル13を踏込み操作(以下、「ブレーキ操作」という。)する場合、マスタシリンダ20及びブースタ21が作動する。すると、マスタシリンダ20からは、車輪FR,FL,RR,RL毎に設けられた各ホイールシリンダ内にブレーキ液がそれぞれ供給される。その結果、各ホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧に対応した制動力が、車輪FR,FL,RR,RLにそれぞれ付与される。なお、液圧発生装置14には、ブレーキペダル13が踏込み操作されたことを検出するためのブレーキスイッチSW1が設けられ、該ブレーキスイッチSW1からは、運転手によるブレーキペダル13の操作態様に応じた検出信号がECU16に出力される。
【0030】
次に、制動装置15について図1及び図2に基づき説明する。なお、制動装置15は、略同一構成の2つの液圧回路22,23を有している。そのため、図2では、明細書の説明理解の便宜上、一方の液圧回路22のみを図示し、他方の液圧回路23の図示を省略するものとする。
【0031】
図1及び図2に示すように、本実施形態の制動装置15は、2つの液圧回路22,23を有している。各液圧回路22,23は、液圧発生装置14のマスタシリンダ20に接続され、第1液圧回路22は、左前輪FL及び右後輪RRに対応して設けられた各ホイールシリンダ24,25に接続されると共に、第2液圧回路23は、右前輪FR及び左後輪RLに対応して設けられた図示しない各ホイールシリンダに接続されている。
【0032】
第1液圧回路22には、マスタシリンダ20に連結される連結流路26が形成されており、該連結流路26には、マスタシリンダ20内のマスタシリンダ圧とホイールシリンダ24,25内のホイールシリンダ圧との間に圧力差を発生させるための比例差圧弁27が設けられている。この比例差圧弁27は、図示しない弁座及び弁体を備えており、該弁体は、ECU16から給電される電流の大きさに応じた位置に移動される。なお、本実施形態の比例差圧弁27は、ECU16から給電されていない場合であっても上記弁座と弁体との間に形成される通路は、比例差圧弁27のマスタシリンダ20側と該マスタシリンダ20の反対側となるホイールシリンダ24,25側との間で圧力差を発生させるために、連結流路26よりも幅狭となるオリフィスになっている。
【0033】
また、第1液圧回路22には、ホイールシリンダ24に接続される左前輪用経路28と、ホイールシリンダ25に接続される右後輪用経路29とが形成されている。そして、これら各経路28,29上には、ホイールシリンダ24,25内のホイールシリンダ圧の増圧を規制する際に作動する常開型の第1電磁弁30,31(「保持弁」ともいう。)と、ホイールシリンダ24,25内のホイールシリンダ圧を減圧させる際に作動する常閉型の第2電磁弁32,33(「減圧弁」ともいう。)とが設けられている。
【0034】
さらに、第1液圧回路22には、各ホイールシリンダ24,25内から第2電磁弁32,33を介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ34と、モータMの回転に基づき作動するポンプ35とが設けられている。このポンプ35は、吸入用流路36を介してリザーバ34に接続されると共に、供給用流路37を介して第1液圧回路22における第1電磁弁30,31と比例差圧弁27との間の接続部位38に接続されている。また、吸入用流路36には、マスタシリンダ20側に向けて分岐された分岐液圧路39が形成されている。そして、ポンプ35は、モータMが回転した場合に、リザーバ34及びマスタシリンダ20側から吸入用流路36及び分岐液圧路39を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路37内に吐出する。
【0035】
第2液圧回路23は、上記第1液圧回路22と同等の構成を有している。そのため、第2液圧回路23上に設けられた各種電磁弁やポンプなどが個別に作動することにより、右前輪FR及び左後輪RL用の各ホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧がそれぞれ調整される。
【0036】
次に、ディスクブレーキ装置17について図3(a)(b)に基づき説明する。なお、車輪FR,FL,RL,RR毎に設けられたディスクブレーキ装置17は、互いに略同一構成であるため、左前輪FL用のディスクブレーキ装置17についてのみ説明し、他の車輪FR.RR,RL用のディスクブレーキ装置17については、その説明を省略するものとする。
【0037】
図3(a)(b)に示すように、ディスクブレーキ装置17は、左前輪FLと一体に回動する第1制動部材としての円環状のブレーキロータ50を備えている。また、ディスクブレーキ装置17には、ブレーキロータ50の第1摺接面50a及び第2摺接面50bに個別に対向した状態で配置される第2制動部材としてのブレーキパッド51,52が設けられている。これら各ブレーキパッド51,52は、図示しない付勢機構によりブレーキロータ50から離間する方向への付勢力がそれぞれ付与されている。そのため、各ブレーキパッド51,52は、ホイールシリンダ24内に制動装置15側からブレーキ液が流入していない場合、それぞれが対向する摺接面50a,50bとの間に所定間隔のクリアランスCが介在した状態でそれぞれ配置されている。
【0038】
その一方、各ブレーキパッド51,52は、ホイールシリンダ24内に制動装置15側からブレーキ液が流入する場合、そのブレーキ液の流入量に対応した駆動力が付与されることにより、ブレーキロータ50に相対的に接近するようにそれぞれ構成されている。そして、各ブレーキパッド51,52がブレーキロータ50の各摺接面50a,50bに摺接した状態でブレーキ液がホイールシリンダ24内にさらに流入した場合、各ブレーキパッド51,52がブレーキロータ50を互いに押圧する。その結果、左前輪FLには、ホイールシリンダ24内のブレーキ液量、即ちブレーキ液圧に対応した大きさの制動力が付与される。
【0039】
なお、各ブレーキロータ50には、降水などによって路面が濡れている場合、路面からの雨水などの跳ね返りや前方を走行する車両が巻き上げるミスト状の水分が付着してしまうことがある。すなわち、各ブレーキロータ50の摺接面50a,50bには、水分膜がそれぞれ形成されてしまう。このように各ブレーキロータ50の摺接面50a,50bに形成される水分膜の成長量(即ち、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分の増加量)は、車両の走行距離が長くなったり、降水量が多くなったりするに連れて多くなる。しかし、こうした水分膜は、車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与させるべくブレーキロータ50の摺接面50a,50bにブレーキパッド51,52を摺接させると、この際に発生する摩擦力などによってブレーキロータ50から除去される。ちなみに、本実施形態において「降水」とは、車両の走行に伴いブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分が増加するような状態のことであって、自然に雨や雪が降ったり、人工的に雨を降らせたり、打ち水などを車両の走行する路面に散布したりすることを含んだブレーキロータ50やブレーキパッド51,52の部分にそれらの物質(水分など)が移動して該ブレーキロータ50やブレーキパッド51,52に付着するに至る原因となる現象である。
【0040】
次に、ECU16の構成について図1に基づき説明する。
図1に示すように、ECU16の図示しない入力側インターフェースには、ブレーキスイッチSW1、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を演算するための車輪速度センサSE1,SE2,SE3,SE4及びワイパ装置12のワイパ操作部19が電気的に接続されている。また、ECU16の図示しない出力側インターフェースには、比例差圧弁27、各第1電磁弁30,31、各第2電磁弁32,33及びモータMが電気的に接続されている。そして、ECU16は、ブレーキスイッチSW1、車輪速度センサSE1〜SE4及びワイパ操作部19からの検出信号に基づき、各比例差圧弁27、各第1電磁弁30,31、各第2電磁弁32,33及びモータMの駆動を個別に制御する。
【0041】
ECU16には、CPU55、ROM56及びRAM57が設けられている。ROM56には、各種制御処理(後述する降水対策処理等)、各種マップ(図4に示すマップ等)及び各種閾値(後述する膜厚閾値など)などが予め記憶されている。また、RAM57には、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、適宜書き換えられる各種情報(後述する各車輪の車輪速度、車両の車体速度、ワイパの作動速度、水分膜の成長量、水分膜厚など)が一時記憶される。
【0042】
次に、ROM56に記憶されるマップについて図4に基づき説明する。
図4に示すマップは、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜の単位時間あたりの成長量(以下、「単位成長量」という。)を推定するためのマップである。図4に示すように、水分膜の単位成長量は、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが速いほど多くなるように推定される。具体的には、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが「0(零)km/h」である場合、ワイパ18の作動速度Vwpの速度に関係なく、「0(零)μm/sec.」と推定される。
【0043】
水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第1車体速度VS1(例えば「50km/h」)であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが低速(図4における「L」)である場合、第1成長量ΔW11(例えば「0.05μm/sec.」)に推定される。また、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第1車体速度VS1であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが中速(図4における「M」)である場合、第1成長量ΔW11よりも多い第2成長量ΔW12(例えば「0.1μm/sec.」)に推定される。さらに、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第1車体速度VS1であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが高速(図4における「H」)である場合、第2成長量ΔW12よりも多い第3成長量ΔW13(例えば「0.2μm/sec.」)に推定される。
【0044】
水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第1車体速度VS1よりも速い第2車体速度VS2(例えば「100km/h」)であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが低速である場合、第1成長量ΔW11よりも多い第4成長量ΔW21(例えば「0.1μm/sec.」)に推定される。また、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第2車体速度VS2であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが中速である場合、第2成長量ΔW12及び第4成長量ΔW21よりも多い第5成長量ΔW22(例えば「0.2μm/sec.」)に推定される。さらに、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第2車体速度VS2であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが高速である場合、第3成長量ΔW13及び第5成長量ΔW22よりも多い第6成長量ΔW23(例えば「0.4μm/sec.」)に推定される。
【0045】
水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第2車体速度VS2よりも速い第3車体速度VS3(例えば「150km/h」)であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが低速である場合、第4成長量ΔW21よりも多い第7成長量ΔW31(例えば「0.15μm/sec.」)に推定される。また、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第3車体速度VS3であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが中速である場合、第5成長量ΔW22及び第7成長量ΔW31よりも多い第8成長量ΔW32(例えば「0.3μm/sec.」)に推定される。さらに、水分膜の単位成長量は、車体速度VSが第3車体速度VS3であって、且つワイパ18の作動速度Vwpが高速である場合、第6成長量ΔW23及び第8成長量ΔW32よりも多い第9成長量ΔW33(例えば「0.6μm/sec.」)に推定される。
【0046】
なお、本実施形態において、水分膜の単位成長量は、各車体速度VS1,VS2,VS3の間では線形補完される。例えば、ワイパ18の作動速度Vwpが低速であって、且つ車体速度VSが「75km/h」である場合、水分膜の単位成長量は、第1成長量ΔW11と第4成長量ΔW21との間の値(例えば「0.75μm/sec.」)と推定される。
【0047】
次に、本実施形態のECU16が実行する各種制御処理のうち車輪FR,FL,RR,RLに好適な制動力の付与を継続させるための降水対策処理ルーチンについて、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
【0048】
さて、ECU16は、予め設定された所定周期T(例えば「6msec. (ミリ秒)」)毎に降水対策処理ルーチンを実行する(図7参照)。この降水対策処理ルーチンにおいて、ECU16は、ワイパ操作部19からの検出信号に基づき、降水中であるか否かを判定する(ステップS10)。具体的には、ECU16は、ワイパ操作部19が「OFF」に設定されている場合には降水中ではないと判定する一方、ワイパ操作部19が「L」「M」「H」の何れかに設定されている場合には降水中であると判定する。ステップS10の判定結果が否定判定である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS19に移行する。一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、即ち降水中である場合、ECU16は、運転手によるブレーキ操作や制動制御(例えばトラクション制御)などによって、全ての車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与されているか否かを判定する(ステップS11)。この判定結果が肯定判定である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS19に移行する。
【0049】
すなわち、全ての車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与される状態とは、車輪FR,FL,RR,RL毎のディスクブレーキ装置17においてブレーキロータ50の摺接面50a,50bにブレーキパッド51,52がそれぞれ摺接する状態である。そのため、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bに水分が付着しているとしても、該水分は、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間で発生する摩擦などによってブレーキロータ50の摺接面50a,50bからそれぞれ除去される。
【0050】
一方、ステップS11の判定結果が否定判定である場合、ECU16は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも1つの車輪に対して制動力が付与されていないため、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度センサSE1〜SE4の各検出信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWをそれぞれ演算する(ステップS12)。続いて、ECU16は、ステップS12にて演算した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWのうち少なくとも1つの車輪の車輪速度VWを用いて車両の車体速度VSを演算する(ステップS13)。したがって、本実施形態では、ECU16が、車体速度演算手段としても機能する。続いて、ECU16は、ワイパ操作部19からの検出信号に基づきワイパ18の作動速度Vwpが低速、中速及び高速のうち何れの速度であるかを特定する(ステップS14)。したがって、本実施形態では、ECU16が、作動速度特定手段としても機能する。また、一般的には、車両の運転手は、車両に対する降水量が多いほどワイパ18の作動速度Vwpを速くする。すなわち、ステップS14では、ワイパ18の作動速度Vwpに基づき降水量が取得される。この点で、ECU16が、降水量取得手段としても機能する。なお、「車両に対する降水量」とは、車両の走行に伴いブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分が増加する際における降水量のことである。
【0051】
そして、ECU16は、ステップS13にて演算した車体速度VS及びステップS14にて特定した作動速度Vwpを図4に示すマップに代入し、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜の厚みの成長量ΔW(以下、「水分膜の成長量ΔW」という。)を推定する、即ちブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分の増加量を推定する(ステップS15)。例えば、車体速度VSが「50km/h」であると共に作動速度Vwpが低速である場合、ECU16は、図4に示すマップから単位成長量として第1成長量ΔW11を読み出す。そして、ECU16は、読み出した単位成長量(=ΔW11)を下記に示す関係式(式1)に代入し、水分膜の成長量ΔW(=「0.3nm」)を演算する。したがって、本実施形態では、ECU16が、所定周期Tにおける水分膜の成長量ΔWを推定する単位増加量推定手段としても機能する。
【0052】
【数1】

ただし、ΔW…水分膜の成長量、Wt…水分膜の単位成長量、T…所定周期に相当する時間
続いて、ECU16は、ステップS15にて推定した成長量ΔWに基づき、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bの水分膜の厚み(以下、「水分膜厚」という。)W、即ちブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する液体の液体量を更新する(ステップS16)。すなわち、ECU16は、更新前の水分膜厚Wに対してステップS15にて推定した成長量ΔWを加算し、該加算結果を現時点の水分膜厚Wとする。したがって、本実施形態では、所定周期T毎の成長量ΔWを積算して水分膜厚Wを推定するECU16が、液体量演算手段及び液体量推定装置としても機能する。なお、本実施形態では、各車輪FR,FL,RR,RLのブレーキロータ50のうち最も水分膜厚が厚いブレーキロータ50の水分膜厚Wが推定される。
【0053】
そして、ECU16は、ステップS16にて取得した水分膜厚Wが予め設定された液体量閾値としての膜厚閾値KW以上であるか否かを判定する(ステップS17)。上述したように、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分の量(水分量)が多すぎる場合、該水分の影響によって、運転手によるブレーキ操作に応じた適切な大きさの制動力が車輪FR,FL,RR,RLに付与されないおそれがある。すなわち、車両の制動距離が長くなるおそれがある。そのため、本実施形態では、水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になった場合には、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分の水分量が多すぎると判定される。そして、ステップS17の判定結果が否定判定(W<KW)である場合、ECU16は、ブレーキロータ50における水分膜厚Wが車両の制動距離に影響を及ぼすほどの膜厚まで成長していないため、降水対策処理ルーチンを一旦終了する。
【0054】
一方、ステップS17の判定結果が肯定判定(W≧KW)である場合、ECU16は、ブレーキロータ50における水分膜厚Wが車両の制動距離に影響を及ぼすほどの膜厚まで成長したため、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分を除去させるための水分除去制御(液体除去制御)を実行する(ステップS18)。すなわち、ECU16は、予め設定された制御時間(例えば1sec.)の間、ポンプ35を作動させる。すると、比例差圧弁27内には非作動状態であってもオリフィスが形成されているため、ホイールシリンダ24,25内には、ポンプ35の作動に基づきブレーキ液が流入する。そのため、マスタシリンダ20とホイールシリンダ24,25との間には圧力差が発生し、ブレーキパッド51,52は、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにそれぞれ相対的に接近する。その結果、ブレーキパッド51,52は、制動制御中であることを運転手に気付かれない程度の制動力が車輪FR,FL,RR,RLに付与されるように、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bに摺接する。したがって、本実施形態では、ECU16が、制御手段としても機能する。その後、ECU16は、その処理を次のステップS19に移行する。
【0055】
ステップS19において、ECU16は、水分膜厚Wを「0(零)」にリセットする。すなわち、ステップS19では、降水中ではない場合、又は、全ての車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与される場合には、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在した水分が全て除去されたと判断される。その後、ECU16は、降水対策処理ルーチンを一旦終了する。
【0056】
次に、本実施形態の降水対策処理ルーチンが実行される場合の作用と、従来技術の降水対策処理ルーチンが実行される場合の作用との比較を、図6及び図7に示すタイミングチャートに基づき説明する。なお、図6及び図7の各タイミングチャートにおいて、最初の第1期間T1では、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが一定速度であるものとし、次の第2期間T2では、ワイパ18の作動速度Vwpは一定である一方で車両の車体速度VSは徐々に速くなるものとする。また、図6及び図7では、明細書の説明理解の便宜上、所定周期Tの長さを誇張して図示している。
【0057】
さて、図6(a)(b)に示すように、従来技術では、経過時間閾値KTは、所定周期T毎に、その時点の車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが速いほど小さな値に設定される。第1期間T1では車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが変更されないため、経過時間閾値KTは、車体速度VS及び作動速度Vwpに応じて第1経過時間KT1に設定される。この際、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wは、経過時間に比例して徐々に厚くなる。そして、水分膜厚Wの推定が開始されてからの経過時間が経過時間閾値KT(=KT1)以上となった第1タイミングt11では、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になっており、このタイミングで水分除去制御が実行される。こうした水分除去制御の終了後、水分膜厚Wが「0(零)」にリセットされる。すなわち、従来技術では、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpがそれぞれ一定速度である場合には、適切なタイミング(即ち、水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になった直後)で水分除去制御が実行される。
【0058】
こうして水分除去制御が実行された第1タイミングt11から第2タイミングt12までの間では、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが引き続き一定であるため、経過時間閾値KTは、第1経過時間KT1に設定される。ところが、第2タイミングt12を経過した後は、車両の車体速度VSが徐々に速くなる。そのため、所定周期Tに相当する時間での車両の走行距離(以下、「単位走行距離」という。)は、車体速度VSが速くなるに連れて長くなる。その結果、ブレーキロータ50の水分膜の成長量ΔWは、単位走行距離が長くなるほど多くなる。
【0059】
このように車体速度VSが速くなると、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpに基づき設定される経過時間閾値KTは、車体速度VSが遅かった場合に比して小さい値(第2経過時間KT2)に設定される(第3タイミングt13)。この第3タイミングt13では、第1タイミングt11からの経過時間が第3タイミングt13で設定された経過時間閾値KT(=KT2)未満であるため、水分除去制御が実行されない。しかし、第3タイミングt13から所定周期Tに相当する時間が経過した第4タイミングt14では、ブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW未満であるにも関わらず、第1タイミングt11からの経過時間が第3タイミングt13で設定された経過時間閾値KT(=KT2)以上となるため、水分除去制御が実行される。すなわち、従来技術では、第2期間T2のように車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpのうち少なくとも一方が変化する場合には、適切なタイミングで水分除去制御を実行できない可能性がある。
【0060】
その一方で、本実施形態では、図7に示すように、第1期間T1では車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが一定であるため、ブレーキロータ50の水分膜厚Wは、経過時間に対して一次関数的に比例して厚くなる。そして、ブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になると、水分除去制御が実行される(第1タイミングt11)。すなわち、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが一定である場合には、従来技術と同様に、適切なタイミングで水分除去制御が実行される。
【0061】
こうして水分除去制御が実行された第1タイミングt11から第2タイミングt12までの間では、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが引き続き一定である。そのため、所定周期T毎に推定される水分膜の成長量ΔWは、毎回、同一値になる。すなわち、ブレーキロータ50の水分膜厚Wは、第1期間T1と同様に、経過時間に対して一次関数的に比例して厚くなる。ところが、第2タイミングt12を経過した後は、車両の車体速度VSが徐々に速くなるため、所定周期T毎に推定される成長量ΔWは、車体速度VSが速くなるに応じて多くなる。
【0062】
こうした場合、車両の車体速度VS及びワイパ18の作動速度Vwpが一定である場合に比して、ブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になるまでの経過時間は短くなる。すなわち、所定周期T毎に推定される成長量ΔWの積算結果である水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になる第5タイミングt15(>第4タイミングt14)で水分除去制御が実行される。その後、水分膜厚Wが「0(零)」にリセットされると共に、所定周期T毎の成長量ΔWの積算処理が実行される。すなわち、従来技術の場合のように、ブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW未満であっても、水分除去制御が実行されるようなことが回避される。
【0063】
一方、車両の車体速度VSやワイパ18の作動速度Vwpが遅くなる場合、所定周期T毎に推定される成長量ΔWは、徐々に少なくなる。そのため、車両の車体速度VSやワイパ18の作動速度Vwpが一定である場合に比して、所定周期T毎に推定される成長量ΔWの積算結果である水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になるまでの経過時間が長くなる。こうした場合であっても、所定周期T毎に推定される成長量ΔWは、車両の車体速度VSやワイパ18の作動速度Vwpに応じた値に推定されるため、適切なタイミングで水分除去制御が実行される。すなわち、従来技術の場合のように、ブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になっても、水分除去制御がなかなか実行されないようなことが回避される。
【0064】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)降水などによって路面が濡れている場合に車両が走行する場合には、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜の成長量ΔWが所定周期T毎に推定され、該推定結果を積算することにより、水分膜厚Wが演算される。したがって、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分の水分量を好適に推定できる。
【0065】
(2)一般に、水分膜の成長量ΔWは、所定周期Tでの車両の走行距離(単位走行距離)が長いほど多くなる。そこで、本実施形態では、水分膜の成長量ΔWは、車両の車体速度VSが速いほど多くなるように推定される。そのため、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wを、車両の単位走行距離の変化に対応し、より正確に推定できる。
【0066】
(3)一般に、水分膜の成長量ΔWは、降水量が多いほど多くなりやすい。また、車両の運転手は、降水量が多いほどワイパ18の作動速度Vwpを速くさせる傾向がある。そこで、本実施形態では、水分膜の成長量ΔWは、ワイパ18の作動速度Vwpが速いほど多くなるように推定される。そのため、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wを、降水量の変化に対応し、より正確に推定できる。
【0067】
(4)一般に、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wが厚いと、運転手のブレーキ操作や制動制御などが実行されたとしても、車輪FR,FL,RR,RLに対して適切な大きさの制動力が付与されない可能性がある。こうした場合、制動力の付与効率が低下したことに対する不快感を運転手に与えてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になった場合に、水分除去制御が実行される。この液体除去制御が実行されると、ブレーキロータ50とブレーキパッド51,52との間に存在する水分が除去されるため、その後のブレーキ操作や制動制御時には、車輪FR,FL,RR,RLに対して適切な制動力を付与できる。
【0068】
(5)本実施形態では、車輪FR,FL,RR,RL毎のブレーキロータ50のうち最も水分膜厚Wが厚いブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になった場合に、水分除去制御が実行される。そのため、車輪FR,FL,RR,RL毎の個別制御ではない分、ECU16の制御負荷の増大を抑制できる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、降水対策処理ルーチンの内容が第1の実施形態と多少異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0070】
図8に示すように、本実施形態の車両には、ブレーキロータ50における水分膜厚Wに関する情報を運転手に報知するための表示装置60が設けられている。この表示装置60は、ECU16からの制御指令に応じた表示を図示しない表示部に行うようになっている。
【0071】
次に、本実施形態のECU16が実行する降水対策処理ルーチンについて図9に示すフローチャートに基づき説明する。なお、ここでは、上記第1の実施形態における降水対策処理ルーチンと相違する部分を中心に説明する。
【0072】
さて、降水対策処理ルーチンにおいて、ステップS17の判定結果が肯定判定(W≧KW)である場合、ECU16は、ブレーキロータ50から水分を除去するためのブレーキ操作を運転手に促す旨を報知させるための制御指令を表示装置60に出力する(ステップS20)。すなわち、ECU16は、報知処理を実行する。すると、表示装置60の図示しない表示部には、運転手にブレーキ操作を促す旨が表示される。したがって、本実施形態では、ECU16が、報知手段としても機能する。その後、ECU16は、降水対策処理ルーチンを終了する。なお、ECU16は、全ての車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与されるような制動制御や運転手によるブレーキ操作が行われた場合には、ブレーキ操作を促す旨の表示を終了させる旨の制御指令を表示装置60に出力する。
【0073】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(6)一般に、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wが厚いと、運転手のブレーキ操作や制動制御などが実行されたとしても、車輪FR,FL,RR,RLに対して適切な大きさの制動力が付与されない可能性がある。こうした場合、制動力の付与効率が低下したことに対する不快感を運転手に与えてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、ブレーキロータ50の摺接面50a,50bにおける水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になった場合には、運転手にブレーキ操作を促す旨を報知させる報知処理が実行される。こうした報知処理が行われると、運転手は、車輪FR,FL,RR,RLに対して適切な制動力が付与されにくい状態であると認識することになる。そのため、運転手がブレーキ操作を行った際に、車輪FR,FL,RR,RLへの制動力の付与効率が低下していることに対する不快感を運転手に与えてしまうことを回避できる。
【0074】
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・第2の実施形態において、車両に搭載されるナビゲーション装置が表示装置60を兼ねてもよい。
【0075】
・第2の実施形態において、運転手にブレーキ操作を促すための報知処理は、音声による報知であってもよい。
・また、第2の実施形態において、運転手にブレーキ操作を促すための報知処理は、ブレーキロータ50における水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上である場合、水分膜厚Wが厚くなるほど、より緊急性を高めるような報知処理を行ってもよい。例えば、表示装置60の表示部には、水分膜厚Wが厚くなるほど、ブレーキ操作を促す旨の表示が大きくなるようにしてもよい。
【0076】
・第1の実施形態では、水分除去制御が実行される場合には、該制御の実行に伴う減速感を運転手が敏感に感じ取ってしまうことがある。そこで、水分除去制御の実行中には、該水分除去制御が実行されている旨を運転手に報知させるようにしてもよい。
【0077】
・第1の実施形態において、水分除去制御では、ポンプ35だけではなく比例差圧弁27も作動させてもよい。この場合、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧との圧力差が大きくなるため、各車輪FR,FL,RR,RLには、上記第1の実施形態の場合に比して大きな制動力がそれぞれ付与されることになる。そのため、各ブレーキロータ50の摺接面50a,50bからは、水分を確実に除去できる。
【0078】
・第1の実施形態では、各車輪FR,FL,RR,RLのブレーキロータ50のうち最も水分膜厚が厚いブレーキロータ50の水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になった場合に、水分除去制御が実行される。しかし、ブレーキロータ50毎に水分膜厚Wを推定し、水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上になったブレーキロータ50にブレーキパッド51,52を摺接させるように水分除去制御を行ってもよい。
【0079】
・第1の実施形態において、水分除去制御は、車両が旋回する最中には実行させなくてもよい。そして、車両の旋回が終了した時点で水分膜厚Wが膜厚閾値KW以上である場合には、水分除去制御を実行させることが望ましい。このように構成すると、車両旋回時に運転手の意志とは無関係に車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与されることを回避でき、結果として、旋回する車両の挙動安定を確保できる。
【0080】
・各実施形態において、所定周期T毎に推定される水分膜の成長量ΔWは、ワイパ18の作動速度Vwpに関係なく、車両の車体速度VSから推定するようにしてもよい。
・また、所定周期T毎に推定される水分膜の成長量ΔWは、車両の車体速度VSに関係なく、ワイパ18の作動速度Vwpから推定するようにしてもよい。
【0081】
・また、車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与しても(即ち、ブレーキロータ50にブレーキパッド51,52を摺接させても)、制動力の大きさや制動力を付与する時間の長さによっては、ブレーキロータ50に付着した水分を完全に除去できない可能性がある。そこで、車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与された場合には、該制動力が大きいほど、及び、制動力を付与する時間が長いほど、減算量を大きな値に設定し、該減算量をブレーキロータ50における水分膜厚Wから減算して該減算結果を現時点の水分膜厚Wとしてもよい。
【0082】
・各実施形態において、雨天を認識するためのレインセンサを車両に設けてもよい。この場合、ステップS10では、レインセンサからの検出信号に基づき降水中であるか否かを判定してもよい。
【0083】
また、レインセンサを車両に設ける場合は、降水量に応じて該レインセンサが出力する検出信号の種類に基づき降水量を取得してRAM56に記憶させたり、レインセンサからの検出信号の出力頻度をRAM56に記憶させたりし、該記憶結果に基づき降水量を取得する。そして、ECU16は、取得した降水量及び降水時における車両の車体速度VSにより、所定周期Tにおける水分膜の成長量ΔWを推定する。この場合、レインセンサから出力される検出信号に基づき降水量を取得するECU16が、降水量取得手段としても機能する。
【0084】
・各実施形態において、車両は、自動二輪車両であってもよい。すなわち、自動二輪車両では、ブレーキロータ50が車体外に晒されており、水滴がブレーキロータ50内に入り込みやすい。そのため、自動二輪車両では、自動四輪車両の場合に比して所定周期Tにおける水分膜の成長量ΔWが多く、車輪に対する制動力の付与効率の低下が著しい。そこで、上記各実施形態のように、水分膜厚Wが膜圧閾値KW以上になった場合に水分除去制御を実行することにより、車輪に対する制動力の付与効率の低下を効果的に抑制できる。
【0085】
また、自動二輪車両にレインセンサを設ける場合には、該レインセンサをヘッドライト内に設置してもよい。この場合、レインセンサをヘッドライト外に設置する場合に比して、自動二輪車両をコンパクトな構成にすることができると共に、レインセンサから出力される検出信号に基づき降水量を良好に取得できる。すなわち、水分膜厚Wを好適に推定できる。
【0086】
・各実施形態において、車両には、ディスクブレーキ装置17の代わりにドラムブレーキ装置を搭載してもよい。この場合、ECU16は、車輪FR,FL,RR,RLと共に回動する第1制動部材としてのブレーキドラムと、該ブレーキドラムに摺接可能な第2制動部材としてのシューとの間に存在する水分の水分量を推定する。そして、ECU16は、推定した水分量が予め設定された水分量閾値(液体量閾値)以上である場合に、水分除去制御又は報知処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1の実施形態における制動装置が搭載された車両のブロック図。
【図2】第1の実施形態における制動装置の一部を示すブロック図。
【図3】(a)(b)はディスクブレーキ装置を模式的に示す断面図。
【図4】車両の車体速度及びワイパの駆動速度に応じてブレーキロータの水分膜の成長量を推定するためのマップ。
【図5】第1の実施形態における降水対策処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】(a)(b)は従来技術の降水対策処理ルーチンが実行される場合のタイミングチャート。
【図7】第1の実施形態の降水対策処理ルーチンが実行される場合のタイミングチャート。
【図8】第2の実施形態における電気的構成を示すブロック図。
【図9】第2の実施形態における降水対策処理ルーチンの一部を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0088】
16…液体量推定装置、単位増加量推定手段、液体量演算手段、車体速度演算手段、作動速度特定手段、運動支援装置、制御手段、報知手段、降水量取得手段としてのECU、18…ワイパ、50…第1制動部材としてのブレーキロータ、51,52…第2制動部材としてのブレーキパッド、FR,FL,RR,RL…車輪、KW…液体量閾値としての膜厚閾値、T…所定周期、VS…車体速度、Vwp…作動速度、W…液体の液体量としての水分膜厚、ΔW…増加量としての成長量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車輪(FR,FL,RR,RL)と共に回動する第1制動部材(50)と、該回動する第1制動部材(50)に接触することにより前記車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力を付与可能な第2制動部材(51,52)との間に存在する液体の液体量(W)を推定する液体量推定装置であって、
降水時に、予め設定された所定周期(T)における前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の増加量(ΔW)を推定する単位増加量推定手段(16、S15)と、
前記所定周期(T)毎に前記単位増加量推定手段(16、S15)によって推定された前記液体の増加量(ΔW)を積算し、該積算結果に基づき前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)を演算する液体量演算手段(16、S16)と、を備えた液体量推定装置。
【請求項2】
車両の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(16、S12,S13)をさらに備え、
前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を前記車体速度演算手段(16、S12,S13)によって演算された車体速度(VS)が速いほど多くなるように推定する請求項1に記載の液体量推定装置。
【請求項3】
車両に搭載されたワイパ(18)の作動速度(Vwp)を特定する作動速度特定手段(16、S14)をさらに備え、
前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を前記作動速度特定手段(16、S14)によって特定された作動速度(Vwp)が速いほど多くなるように推定する請求項2に記載の液体量推定装置。
【請求項4】
前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記車体速度演算手段(16、S12,S13)によって演算された車体速度(VS)及び前記作動速度特定手段(16、S14)によって特定された作動速度(Vwp)により、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を推定する請求項3に記載の液体量推定装置。
【請求項5】
車両に搭載されたワイパ(18)の作動速度(Vwp)を特定する作動速度特定手段(16、S14)をさらに備え、
前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を前記作動速度特定手段(16、S14)によって特定された作動速度(Vwp)が速いほど多くなるように推定する請求項1に記載の液体量推定装置。
【請求項6】
降水時に車両に対する降水量を取得する降水量取得手段(16、S14)と、
降水時における車両の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(16,S12,S13)と、をさらに備え、
前記単位増加量推定手段(16、S15)は、前記所定周期(T)における前記液体の増加量(ΔW)を、前記降水量取得手段(16、S14)によって取得された降水量及び前記車体速度演算手段(16,S12,S13)によって演算された車体速度(VS)により推定する請求項1に記載の液体量推定装置。
【請求項7】
車両に搭載される車輪(FR,FL,RR,RL)と共に回動する前記第1制動部材(50)に前記第2制動部材(51,52)を接触させることにより、前記車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力を付与させる車両の運動支援装置であって、
請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の液体量推定装置(16)と、
該液体量推定装置(16)の前記液体量演算手段(16、S16)によって演算された前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)が予め設定された液体量閾値(KW)以上である場合に、前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体を除去させるために、前記第1制動部材(50)に前記第2制動部材(51,52)を接触させる液体除去制御を実行する制御手段(16、S18)と、を備えた車両の運動支援装置。
【請求項8】
車両の運転手がブレーキ操作を行う場合に、前記車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を調整するために前記第1制動部材(50)に対する前記第2制動部材(51,52)の接触態様を調整させる制動制御を実行可能な車両の運動支援装置であって、
請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の液体量推定装置(16)と、
該液体量推定装置(16)の前記液体量演算手段(16、S16)によって演算された前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)が予め設定された液体量閾値(KW)以上である場合に、運転手にブレーキ操作を促すための報知処理を行う報知手段(16、S20)と、を備えた車両の運動支援装置。
【請求項9】
前記液体量演算手段(16、S16)は、第1制動部材(50)と前記第2制動部材(51,52)とが接触した場合には、前記液体量演算手段(16、S16)によって演算された前記各制動部材(50,51,52)の間に存在する液体の液体量(W)を「0(零)」にリセットする請求項7又は請求項8に記載の車両の運動支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−47056(P2010−47056A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211005(P2008−211005)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】