説明

液処理装置、液処理装置の制御方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ可読記憶媒体

【課題】基板に液体を供給する供給部からの液体の液だれを防ぐことが可能な液処理装置を提供する。
【解決手段】液処理の対象となる基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部が保持する基板に対して前記所定の液体を供給する供給手段と、液体供給部から前記供給手段に液体を供給する供給管と、前記供給管に設けられ、前記液体の供給を開始し、又は停止する供給弁と、前記供給弁に対して設けられ、前記供給弁の開閉速度を制御する速度制御器と、前記供給弁よりも前記液体供給部側において前記供給管から分岐し、前記供給管を流れる前記液体を排液するドレイン管と、前記ドレイン管に設けられる第1の開閉弁とを備える液処理装置により上記の課題を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ用ガラス基板などの基板を液処理する液処理装置、液処理装置の制御方法、この制御方法を液処理装置に実行させるコンピュータプログラム、及びこれを記憶するコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ用ガラス基板などの基板を液処理する場合、基板を保持する基板保持部と、基板保持部に対して液体を供給する液体供給部とを備える液処理装置を使用する場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−60576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の液処理装置においては、液体供給部から液体の供給を停止した後、基板表面から液体を除去する。液体供給部から液体がウエハ上にたれ落ちると、基板表面を汚染してしまう。
【0005】
本発明は、基板に液体を供給する供給部からの液体の液だれを防ぐことが可能な液処理装置、液処理装置の制御方法、この制御方法を液処理装置に実行させるコンピュータプログラム、及びこれを記憶するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、液処理の対象となる基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部が保持する基板に対して前記所定の液体を供給する供給手段と、液体供給部から前記供給手段に液体を供給する供給管と、前記供給管に設けられ、前記液体の供給を開始し、又は停止する供給弁と、前記供給弁に対して設けられ、前記供給弁の開閉速度を制御する速度制御器と、前記供給弁よりも前記液体供給部側において前記供給管から分岐し、前記供給管を流れる前記液体を排液するドレイン管と、前記ドレイン管に設けられる第1の開閉弁とを備える液処理装置を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、所定の液体を供給する液体供給部と、基板保持部により保持される基板に対して前記所定の液体を供給する供給手段と、を接続する供給管に設けられる供給弁を開くことにより、前記基板に前記所定の液体を供給するステップと、前記供給弁よりも前記液体供給部側において前記供給管から分岐するドレイン管に設けられる第1の開閉弁を開くステップと、前記供給弁に対して設けられる速度制御器により低減された速度で前記供給弁を閉めるステップとを含む、液処理装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態は、基板に液体を供給する供給部からの液体の液だれを防ぐことが可能な液処理装置、液処理装置の制御方法、この制御方法を液処理装置に実行させるコンピュータプログラム、及びこれを記憶するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による液処理装置が組み込まれる基板処理装置を示す概略上面図である。
【図2】本発明の実施形態による液処理装置を示す概略側面図である。
【図3】図2に示す液処理装置の供給アームのヘッド部を説明する説明図である。
【図4】図2に示す液処理装置において実施する液処理装置の制御方法における弁の開閉を説明するタイムチャートである。
【図5】本発明の実施形態による液処理装置及び液処理装置の制御方法の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者が決定すべきである。
【0011】
始めに、図1を参照しながら、本発明の実施形態による液処理装置を含む基板処理装置について説明する。図1は、本発明の実施形態による基板処理装置を示す概略上面図である。図示のとおり、基板処理装置100は、複数のウエハWを収容する複数の(図示の例では4つの)ウエハキャリアCを載置するキャリアステーションS1と、キャリアステーションS1と後述の液処理ステーションS3との間でウエハWを受け渡す搬入出ステーションS2と、本発明の実施形態による液処理装置1を配置する液処理ステーションS3とを備える。
【0012】
搬入出ステーションS2は、ウエハキャリアCからウエハWを搬出してステージ13に載置し、また、ステージ13のウエハWを取り上げてウエハキャリアCへ搬入する搬送機構11を有している。搬送機構11は、ウエハWを保持する保持アーム部11aを有している。搬送機構11は、ウエハキャリアCの配列方向(図中のX方向)に延びるガイド12に沿って移動することができる。また、搬送機構11は、X方向に垂直な方向(図中のY方向)及び上下方向に保持アーム部11aを移動させることができ、水平面内で保持アーム部11aを回転させることができる。
【0013】
液処理ステーションS3は、Y方向に延びる搬送室16と、搬送室16の両側に設けられた複数の液処理装置1とを有している。搬送室16は搬送機構14を有し、搬送機構14は、ウエハWを保持する保持アーム部14aを有している。搬送機構14は、搬送室16に設けられY方向に延びるガイド15に沿って移動することができる。また、搬送機構14は、保持アーム部14aをX方向に移動することができ、水平面内で回転させることができる。搬送機構14は、搬入出ステーションS2の受け渡しステージ13と各基板処理ユニット1との間でウエハWを搬送する。
また、基板処理装置100は、各種の部品及び部材を制御する制御部17を有している。制御部17は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサと、記憶装置と(共に図示せず)を備えている。記憶装置は、基板処理装置100及び液処理装置1で実行する各種処理(例えば後述の液処理装置1の制御方法)を実現するための制御プログラム(ソフトウェア)を格納する。コンピュータで読み取り可能な記録媒体17aはプログラムを格納する。上記の記憶装置は、記録媒体17aからプログラムをインストールし、プロセッサがプログラムを実行する。記録媒体17aは、例えば、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等であって良い。
【0014】
以上の構成を有する基板処理装置100においては、搬送機構11が、キャリアステーションS1のウエハキャリアCからウエハWが取り出し、そのウエハWをステージ13に載置する。液処理ステーションS3内の搬送機構14が、ステージ13上のウエハWを液処理装置1に搬入する。また、液処理装置1は、搬入したウエハWに対して所定の洗浄液を供給して洗浄し、例えば純水で洗浄液を洗い流し、ウエハWの表面を乾燥する。ウエハWの表面を乾燥した後、搬送機構14及び搬送機構11が、搬入時と逆の経路(手順)によりウエハWをウエハキャリアCへ戻す。また、一のウエハWを洗浄する間に、搬送機構11及び搬送機構14が他のウエハWを他の液処理装置1へ順次搬送し、液処理装置1が、搬送したウエハWを洗浄する。
【0015】
次に、図2を参照しながら、液処理装置1について説明する。図示のとおり、液処理装置1は、ウエハWを支持するウエハ支持部材10と、ウエハ支持部材10を回転するモータMと、ウエハ支持部材10が支持するウエハWに対して液体を供給する2本の供給アーム20及び80とを備える。また、液処理装置1は、ウエハ支持部材10の周囲を取り囲み、供給アーム20及び80がウエハWに供給する液体を受け、排出口30dから外部へ排出するカップ部30を有している。
【0016】
ウエハ支持部材10は、中央部に開口を有する円環形状のプレート部材10aと、プレート部材10aの裏面側において中央部の開口の開口縁に取り付けられる中空の円筒形状のベース部10bと、プレート部材10aの外周から立ち上がる円筒形状の円周部10cとを有している。円周部10cは、ウエハWの外径よりもわずかに大きい内径を有している。また、円周部10cは、その上部において、円周部10cから内方に延びる爪部Sを有している。本実施形態においては、円周部10cは、所定の間隔で配置する例えば12個の爪部Sを有している。これらの爪部SはウエハWの裏面周縁部に接してウエハWを支持する。
【0017】
また、ベース部10bの内側には円筒形状を有するスリーブ34sを配置しており、スリーブ34sは、筐体11の底部中央に設けられた開口に取り付けられている。また、スリーブ34sの上端には、スリーブ34sとベース部10bとの隙間から、後述する供給アーム20からの液体が流れ落ちるのを防ぐため、外縁部が傾斜した円環状の形状を有するバッフル板34bが設けられている。また、ベース部10bの上端は、プレート部材10aの上面より高く延在しており、これにより、液体がバッフル板34bの下方へ流れ落ちることを抑えることができる。
【0018】
また、モータMは、ウエハ支持部材10のベース部10bを取り囲み、ベース部10bを回転可能に保持している。これによりウエハ支持部材10を回転することができ、よって、ウエハ支持部材10が支持するウエハWをも回転することができる。
【0019】
液処理装置1には、供給アーム20へ所定の液体を供給するため、液体供給部40が接続されている。液体供給部40は、本実施形態においては、例えば2本の配管41及び42を有し、洗浄液として、配管41からSC1を供給し、配管42から脱イオン水(DIW)を供給する。配管41及び42には、対応する液体を貯留する貯留槽(図示せず)を接続している。ただし、配管41及び42を例えばクリーンルームの用役設備に接続しても良い。
【0020】
また、配管41及び45に対して集合弁(又はマニホールド)46を設けている。集合弁46の入口には配管41及び42を接続しており、集合弁46の出口には供給管50を接続している。また、集合弁46においては、配管41及び42に対応して三方弁46a及び46bが設けられている。これらの三方弁46a及び46bは、図示しない高圧気体源からの高圧気体により択一的に開閉することができる。例えば三方弁46aが開くと、配管41を流れるSC1は、そのまま配管41を流れるとともに供給管50へも流れる。一方、閉まっている三方弁46bにおいては、DIWはそのまま配管42を流れる。このような構成により、供給アーム20へ所望の液体を択一的に供給することができる。なお、このような構成を有する集合弁46の代わりに複数の個別のバルブを配管41〜45に設けることにより、配管41及び42からの液体を択一的に供給管50へ供給するよう構成しても良い。
【0021】
流量制御器51及び供給弁52を介して供給管50を供給アーム20へ接続している。供給管50は、フッ素樹脂などの耐薬品性の高い材料で形成することが好ましい。また、供給弁52から供給アーム20までの間においては、供給管50は少なくとも一部分において上下方向に延びていることが好ましい。
本実施形態における流量制御器51は、差圧式センサを利用する流量制御器である。この流量制御器は、供給管50内を流れる流体の流量を測定する流量測定部51sと、流量測定部51sによる測定結果に基づき、供給管50内を流れる流体の流量を調整する流量調整部51nとを有している。例えば制御部17(図1)が流量制御器51に対して信号を供給することにより、供給管50内を流れる流体毎にその流量を制御することができる。
【0022】
また、供給管50には、集合弁46から供給アーム20へ向かう方向に沿って供給弁52よりも上流側の位置において、ドレイン管53が接続されている。ドレイン管53は開閉弁53Vを有している。ドレイン管53は、図示しないドレインに接続されており、開閉弁53Vが開くと、供給管50を流れる液体はドレインへと流れる。なお、開閉弁52の代わりに三方弁を用いても良い。
【0023】
さらに、供給管50には、供給管を流れる液体を集合弁46から供給アーム20へ向かう方向に沿って供給弁52よりも下流側の位置において、分岐管54を接続している。分岐管54には開閉弁54Vが設けられている。分岐管54を図示しない排液部に接続しており、開閉弁54Vを開くと、供給管50を流れる液体は排液部へと流れることができる。また、開閉弁54Vは、供給アーム20のヘッド部20h(後述)よりも低い位置に設けられており、供給弁52を閉めたまま開閉弁54Vを開くと、分岐管54と供給アーム20との間において供給管50内に残留する液体が、自重により分岐管54に向かって流れる。これに伴って、供給アーム20の先端部に残る液体も上流側へと移動する。これにより、供給アーム20のヘッド部20hの先端から液体がたれ落ちるのを防ぐことができる。
【0024】
供給弁52、開閉弁53V、及び開閉弁54Vは、本実施形態においては、エアオペバルブであり、所定の高圧気体配管により高圧気体源に接続し、高圧気体源からの高圧気体により開閉制御を行う。また、供給弁52には、高圧気体源と接続する配管に速度制御器52cを設けている。速度制御器52cは、エアオペバルブである供給弁52に印加する高圧気体の印加速度を調整することにより、供給弁52の開閉速度を調整することができる。このため、速度制御器52cは、速度制御器52cを用いないときの開閉速度よりも遅い速度で供給弁52を開閉することができる。
【0025】
また、開閉弁54Vに対して速度制御器54cが設けられている。これにより、開閉弁54Vもまた、速度制御器54cを用いないときの開閉速度よりも遅い速度で開閉することができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、速度制御器52c及び54cとして、例えばエアオペバルブへ接続する高圧気体配管に設けられるインラインタイプの速度制御器が用いられているが、他の実施形態においては、エアオペバルブの本体に取り付け可能な継ぎ手タイプの速度制御器を用いても良い。すなわち、エアオペバルブと速度制御器とは別体であっても良いし、互いに一体化しても良い。
【0027】
供給アーム20は、駆動部20dが支持する上下方向に延びるシャフト20sと、シャフト20sの上端に一端で固定され、水平方向に延びるアーム部20aと、アーム部20aの他端下面に取り付けられるヘッド部20hとを有している。駆動部20dは、シャフト20sの中心軸を回転中心として、シャフト20sを回転することができる。これにより、シャフト20sの中心軸を中心にアーム部20aが旋回し、ヘッド部20hは、ウエハ支持部材10が支持するウエハWの中央上方の液体供給位置(図2において破線で示す位置)と、カップ部30の外側のホーム位置(図2において実線で示す位置)とに位置することができる。
【0028】
図3(a)は、供給アーム20のヘッド部20hとアーム部20a(の一部)とを示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)中のA−A線に沿った断面図である。図示のとおり、ヘッド部20hには、ヘッド部20hの一側面に開口する開口2Aと、下面に開口する開口2Bと、所定の曲率で湾曲して開口2Aと開口2Bを連通する導管2Cとが設けられている。また、フレキシブルチューブ製の供給管50を開口2Aから挿入し、導管2Cを通して、開口2Bから僅かに突出させている。このように突出した供給管50の先端から、ウエハWの表面に対して液体を供給する。
【0029】
なお、供給アーム80(図2)は、供給アーム20と同様、アーム部80a、ヘッド部80h、シャフト(図示せず)、及び駆動部(図示せず)を有している。ヘッド部80hは、ヘッド部20hと同様の構成を有しており、供給管50から分岐した供給管81がヘッド部80hの下面から僅かに突出している。また、供給管81には開閉弁83が設けられており、開閉弁83の開閉により、供給管50から供給管81を通して供給アーム80への液体の供給と停止を制御する。
【0030】
再び図2を参照すると、供給管50からは、集合弁46と流量制御器51との間において裏面供給管60が分岐しており、スリーブ34s内の空間を通して延びる裏面供給管60は裏面ノズル70に接続している。裏面供給管60には、裏面ノズル70からウエハWの裏面に供給する液体の流量を調整する流量制御器61と、裏面ノズル70からウエハWの裏面への液体の供給を開始し、又は停止する供給弁62と、開閉弁64とを設けている。なお、流量制御器61は、流量制御器51と同様に差圧式センサを利用する流量制御器であり、供給管60内を流れる流体の流量を測定する流量測定部61sと、流量測定部61sによる測定結果に基づき、供給管60内を流れる流体の流量を調整する流量調整部61nとを有している。例えば制御部17(図1)が流量制御器61に対して信号を供給することにより、供給管60内を流れる流体毎にその流量を制御することができる。
【0031】
次に、図4を参照しながら、上記の基板処理装置100及び液処理装置1の制御方法の一例について説明する。
(ウエハWの搬入)
始めに、基板処理装置100の搬送機構14(図1)によりウエハWを液処理装置1内へ搬入し、ウエハ支持部材10の上方に維持する。図示しない昇降ピンにより、搬送機構14からウエハ支持部材10へウエハWを受け渡し、図2に示すようにウエハ支持部材10はウエハWを支持する。
【0032】
(液処理)
次に、ウエハ支持部材10によりウエハWが回転し、供給アーム20の駆動部20dによって、ホーム位置から液体供給位置にヘッド部20hが移動する。次いで、例えば集合弁46の三方弁46aを開くことにより配管41と供給管50とを連通させ、供給弁52を開くことにより、ヘッド部20hの先端からSC1がウエハWに供給するとともに、開閉弁62を開いてウエハWの裏面に対してSC1を供給する。これにより、ウエハWの表面及び裏面をSC1により洗浄する。
【0033】
所定の時間、ウエハWを洗浄した後、集合弁46の三方弁46aを閉めることによって配管41と供給管50との間の連通を遮断するとともに、三方弁46bを開くことにより配管42と供給管50との間を連通させる。配管42と連通することにより供給管50にはDIWが流れ、ウエハWの表面及び裏面に対して洗浄液としてのDIWを供給する。これにより、ウエハWの表面及び裏面に残留しているSC1をDIWにより洗い流す。
(DIWの停止)
図4は、供給弁52及び62等の開閉(ON/OFF)を示すタイムチャートであり、横軸に時間をとっている。図示のとおり、DIWを供給している間は、三方弁46b、開閉弁52、及び開閉弁62が開いている。
ウエハWの表面及び裏面に残留するSC1をDIWにより十分に洗い流した後、まず、時点t1においてドレイン管53の開閉弁53V(図2)が開く。これにより、集合弁46から供給管50へ流れたDIWを、開いている供給弁52を通して供給アーム20へ供給するとともに、ドレイン管53を通してドレインにも流す。
制御部17が開閉弁53Vを開いてから例えば1秒後(時点t2)に、供給弁52を閉め始める。このとき、供給弁52には速度制御器52cが設けられており、供給弁52の閉まる速度を低減する。したがって供給弁52はゆっくり閉まる。具体的には、図4に示すとおり、供給弁52を閉め始めてから完全に閉めるまでに例えば1秒かける。
【0034】
また、制御部17が供給弁52を完全に閉めた時点t3において、三方弁46b及び開閉弁62を閉める。これにより、供給管50へのDIWの供給を停止するとともに、裏面ノズル70へのDIWの供給を停止する。これにより、三方弁46b、供給弁52、及び供給弁62が閉まったことになる。ただし、このときにおいても、制御部17は、ドレイン管53の開閉弁53Vを開いたままにしている。これは、供給管50に残るDIWをドレイン管53を通して排出することにより、供給管50内のDIWの圧力を上昇させないためである。供給管50内のDIWの圧力が低下した後に、開閉弁53Vを閉めることによっても流量制御器51の流量測定部51sに対して大きな圧力衝撃が加わることが無く、流量測定部51sの損傷を防ぐことが可能となる。
【0035】
また、制御部17が供給弁52を完全に閉めた時点t3において、分岐管54に設けられた開閉弁54Vが開く。このとき、開閉弁54には速度制御器54cが設けられており、開閉弁54を完全に開くのに例えば約0.5秒かける。0.5秒かけて完全に開いた後、時点t4において開閉弁54を閉める。このときには速度制御器54cは動作せず、したがって開閉弁54Vを瞬時に閉める。また、制御部17が開閉弁54Vを開くことにより、分岐管54から供給アーム20までの間において供給管50内に残留しているDIWが、時点t3からt4の期間に自重によりドレイン管54へ流れ、僅かな量のDIWを開閉弁54Vを通して排出する。これに伴って、供給アーム20のヘッド部20hにおける供給管50内に残留するDIWの液面が上流側に後退し、供給管50の先端からの液だれを防止する。なお、供給管50内に残留するDIWの液面が上流側に後退した場合であっても、ヘッド部20hにおける供給管50内にはDIWが残っている。このため、カップ部30上方の雰囲気に存在し得る他の溶剤等によって、供給管50が汚染されるのを防止する。この後、駆動部20dにより供給アーム20が旋回し、ヘッド部20hが液体供給位置からホーム位置に戻る。
【0036】
また、時点t4において、制御部17は、供給弁64を閉めると同時に、裏面供給管60に設けられた開閉弁64Vを開き、約0.1秒後に閉める。これにより、裏面ノズル70の先端からのDIWの液面が上流側に(下方に)後退する。
【0037】
最後に、制御部17が、開いているドレイン管53の開閉弁53Vを時点t5において閉めることにより、DIWを供給する工程が終了する。
【0038】
(ウエハの乾燥)
ウエハWへのDIWの供給を停止した後には、ウエハWの回転によりウエハWの表面上のDIWが振り払われて、ウエハWの表面が乾燥することになる。このとき、ウエハWの回転速度を大きくすることによってウエハWの表面をより確実に乾燥することができる。
ウエハWが十分に乾燥した後、上述のウエハWの搬送手順と逆の手順によりウエハWを液処理装置1から搬出し、もとのウエハキャリアCに戻す。以上により、一枚のウエハWの洗浄が終了し、次いで他のウエハWを同様に洗浄する。
なお、集合弁46の開閉によってSC1からDIWに切り替える際には、供給弁52を閉める必要はないため、三方弁46aを閉め、三方弁46bを開く操作のみ行われる。
【0039】
次に、液処理装置1の制御方法の効果について説明する。比較例として速度制御器52cを用いずに供給弁52を瞬時に閉める場合には、供給弁52内の弁体の急激な動きで、液体Lに慣性力が働く。このことにより、ヘッド部20内の供給管50において液体Lから液滴LDが分離し、この液滴LDが供給管50の内面に残る場合がある。この液滴LDが、供給アーム20の移動時にウエハW上にたれ落ちると、ウエハW上に円弧状の筋模様が生じることとなる。
【0040】
しかし、本実施形態においては、供給弁52には速度制御器52cが設けられており、例えば約1秒かけて供給弁52をゆっくり閉める。そのため、図5(b)に示すように供給アーム20のヘッド部20hにおける供給管50内において液体がちぎれることを避けることができる。したがって、液がちぎれることにより生じ得るヘッド部20hからの液体の液だれを防止することができる。しかし、本実施形態においては、速度制御器52cにより供給弁52がゆっくり閉まるため、図5(b)に示すように、液体Lから分離した液滴が発生するのを低減することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態においては、集合弁46から供給アーム20へ至る供給管50に沿って、供給弁52よりも上流側から分岐するドレイン管53が設けられ、ドレイン管53に開閉弁53Vが設けられている。供給弁52がゆっくり閉まるときには、開閉弁53Vが開いているため、液体は、ドレイン管53を通してドレインに流れている。したがって、供給弁52を閉めても、供給管50内の圧力上昇を避けることができる。このため、供給管50に設けられた流量制御器51内の圧力上昇も避けられる。例えば差圧式センサを利用する流量制御器51を用いた場合には、内部の圧力上昇によって流量制御器51が損傷するおそれがある。しかし、ドレイン管53に液体が流れているため、供給弁53を閉めても流量制御器51内の圧力が上昇することは殆ど無く、よって流量制御器51の損傷を防ぐことが可能となる。
【0042】
また、仮にドレイン管53が無い(又はドレイン管53に液体が流れていない)とすると、供給弁52をゆっくり閉める際、供給弁52を閉めることに伴って供給弁52の入口側に印加する液体の圧力が上昇することとなる。その際、供給アーム20へ供給する液体の流量が減少し難くなる一方、供給弁52が完全に閉まる時に液体の供給が急激に停止してしまう可能性がある。この場合には、供給弁52をゆっくり閉める効果を低減してしまうことともなる。しかし、本実施形態においては、供給弁52をゆっくり閉める際にドレイン管53に液体が流れているため、供給弁52の入力側に印加する圧力をほぼ一定に維持し、供給弁52をゆっくり閉める効果を確実に奏する。
【0043】
さらに、本実施形態においては、開閉弁54Vに対して速度制御器54cが設けられている。供給アーム20からウエハWへの液体供給を供給弁52により停止すると同時に(又は僅かに遅れて)、開閉弁54Vをゆっくり開くことにより、供給アーム20のヘッド部20hにおける供給管50内に残留する液体を排出すると、ヘッド部20hにおける供給管50内においては液面がゆっくり後退する(上方へ移動する)こととなる。速度調整器54cが無い場合には、開閉弁54Vが瞬時に開くことにより、供給アーム20の先端部において液面が急激に後退し得る。その際、図5(c)に示すように、供給アーム20の先端部における供給管50内の液体から分離した液滴が、供給管50の内壁に残る場合がある。このような液滴がウエハWの表面にたれ落ちると、ウエハWの表面上に円弧状の筋模様が生じることとなる。しかし、本実施形態においては、速度制御器54cにより開閉弁54Vがゆっくり開くため、ヘッド部20hにおける供給管50内では液面がゆっくり後退することとなり、図5(d)に示すように、先端部の壁面に液滴が残ることは殆どない。したがって、供給弁52を閉めた後に、液だれを防ぐことができるので、ウエハWの表面を汚染することを防止できる。
【0044】
また、供給管50内に残留するDIWの液面が上流側に後退した場合であっても、ヘッド部20hにおける供給管50内にはDIWが残っている。このため、カップ部30上方の雰囲気に存在し得る他の溶剤等によって、供給管50が汚染されるのを防止する。
【0045】
また、図3を参照しながら説明したように、液処理装置1においては、液処理装置1における供給アーム20のヘッド部20hには湾曲した導管20Cが設けられている。導管2Cが湾曲しているため、供給管50もまたヘッド部20hにおいて湾曲している。仮に、導管2Cが、ほぼ直角に折れ曲がって開口2Aと開口2Bとを連通し、供給管50を開口2Aに挿入している場合には(すなわち、ウエハWに対して開口2Bから液体を供給する)、液体が流れる流路には屈曲部を形成していることとなる。このような屈曲部の場合には、角部にせん断力が働くため、液体が残留し易い。しかし、液処理装置1における供給アーム20のヘッド部20hの導管20Cは湾曲しているため、液体の残留を低減することが可能となる。
【0046】
以上、実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明はこれに限定することなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。
例えば上記の実施形態においては、供給弁52としてエアオペバルブを用い、これに供給する高圧気体の速度を調整する速度制御器52cを用いたが、これらの代わりに、閉止可能なニードル弁と、このニードル弁のニードルを回転する駆動部とを用いても良い。この場合であっても、ニードルの回転速度を駆動部により調整することにより、供給弁としてのニードル弁の開閉速度を調整することができる。したがって、上記の効果・利点を奏する。
【0047】
また、上記の実施形態においては集合弁46と供給弁52の間に設けられる流量制御器51、及び集合弁46と供給弁62の間に設けられる流量制御器61の代わりに、ニードル弁を用いても良い。
また、本発明の実施形態による液処理装置の制御方法を、本発明の実施形態による液処理装置1の供給アーム20を用いて実施する場合について説明したが、供給アーム80を用いることによっても、本発明の実施形態による液処理装置の制御方法を実施することができる。また、供給アーム20及び供給アーム80を例えば交互に用いることも可能である。この場合においては、供給アーム20及び供給アーム80を入れ換えるときに、各供給アームからの液だれを防止できる。
【0048】
また、上記の実施形態においては、集合弁46と流量制御器51との間において供給管50から裏面供給管60を分岐させ、裏面供給管60を裏面ノズル70に接続しているが、他の実施形態においては、裏面供給管60を用いずに、裏面ノズル70に対して、別系統の液体供給部を設けても良い。また、別の実施形態においては、裏面ノズル70を設けなくても良い。
また、上記の実施形態においては、開閉弁54Vを供給弁52と別個に設けたが、他の実施形態においては、供給弁52及び開閉弁54Vの代わりに、サックバック機能を有するエアオペバルブを用いても良い。
【0049】
また、使用する液体としてSC1及びDIWを例示したが、これらに限らず、実施する液処理に応じた液体、例えば、SC2及びDHFを用いて良いことは勿論である。
【0050】
また、図4を参照しながら説明した、例えば供給弁52が完全に閉まるまでに要する時間や、開閉弁54が開くまでに要する時間などは例示に過ぎず、使用する液体(の粘度)や、供給管50の内径などに応じて適宜決定して良い。
【0051】
また、上記の実施形態においては、DIWによりSC1を洗い流す場合を説明した。この場合、DIWの供給を終了した後には供給管50内にはDIWが残っている。ここで、次のウエハWをSC1で洗浄するときには、供給管50内のDIWをSC1で置換するようにしても良い。具体的には、供給アーム20がホーム位置に位置しているときに、集合弁46の三方弁46a及び供給弁52を開き、SC1によって供給管50に残留するDIWを押し流すことにより、供給管50内のDIWをSC1に置換する。このようにすれば、SC1による洗浄を開始するときからウエハWに対してSC1を供給することが可能となり、洗浄効率を高くすることができる。また、供給管50内をSC1で置換した後に、供給弁52を閉めるときには、図4を参照しながら説明した弁操作を行うことが好ましい。このようにすれば、ヘッド部20hにおける供給管50内において液滴が生じるのを避けることができ、したがって液体供給位置へ移動するときにSC1がウエハW上にたれ落ちるのを防ぐことが可能となる。
【0052】
また、図4を参照しながら説明した弁操作においては、制御部17が、ドレイン管53に設けられた開閉弁53Vを最後に閉めることとなっているが、例えば供給弁52が完全に閉まるのと同時に開閉弁53Vを閉めて、最後に開閉弁62を閉めても良い。この場合、供給管50内の液体は、供給管60を通って裏面ノズル70から流れ出るため、供給管50及び供給管60内の圧力を低減することが可能となる。
【0053】
なお、ウエハWとしては、シリコンウエハなどの半導体ウエハに限らず、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
1・・・液処理装置、10・・・ウエハ支持部材、M・・・モータ、20・・・供給アーム、30・・・カップ部、34s・・・スリーブ34s、40・・・液体供給部、41〜45・・・配管、46・・・集合弁(又はマニホールド)、46a,46b・・・三方弁、50・・・供給管、51・・・流量制御器、52・・・供給弁、52c・・・速度制御器、53・・・ドレイン管、開閉弁・・・53V、54・・・分岐管、54V・・・開閉弁、54c・・・速度制御器、60・・・裏面供給管、61・・・流量制御器、62・・・供給弁、70・・・裏面ノズル、80・・・供給アーム、100・・・基板処理装置、S1・・・キャリアステーション、S2・・・搬入出ステーション、S3・・・液処理ステーション、11・・・搬送機構、14・・・搬送機構、16・・・搬送室、W・・・ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液処理の対象となる基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部が保持する基板に対して前記所定の液体を供給する供給手段と、
液体供給部から前記供給手段に液体を供給する供給管と、
前記供給管に設けられ、前記液体の供給を開始し、又は停止する供給弁と、
前記供給弁に対して設けられ、前記供給弁の開閉速度を制御する速度制御器と、
前記供給弁よりも前記液体供給部側において前記供給管から分岐し、前記供給管を流れる前記液体を排液するドレイン管と、
前記ドレイン管に設けられる第1の開閉弁と
を備える液処理装置。
【請求項2】
前記液体供給部から前記供給手段に流れる前記液体を停止する際に、前記供給弁を開いた状態で、前記ドレイン管に設けられる前記第1の開閉弁を開き、前記速度制御器により減速した速度で前記供給弁を閉めるように制御する制御部を更に備える、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記供給管に対して設けられる第2の開閉弁であって、当該第2の開閉弁と前記供給手段との間において前記供給管内に残留する液体の少なくとも一部を前記供給管から流出させ得る当該第2の開閉弁を更に備える、請求項1又は2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記第2の開閉弁に対して設けられ、当該第2の開閉弁の開閉速度を制御する速度制御器を更に備える、請求項3に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記液体供給部が、
複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、
前記複数の排管に対応して設けられ、前記複数種類の液体を選択的に前記供給管へ提供する第3の開閉弁と
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記供給管における前記第3の開閉弁と前記供給弁との間に設けられる流量制御器を更に備える、請求項5に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記第3の開閉弁と前記流量制御器との間において前記供給管から分岐し、前記基板保持部が保持する前記基板の裏面に対して前記液体供給部からの液体を供給する裏面供給部に接続する裏面供給管を更に備える、請求項6に記載の液処理装置。
【請求項8】
所定の液体を供給する液体供給部と、基板保持部が保持する基板に対して前記所定の液体を供給する供給手段と、を接続する供給管に設けられる供給弁を開くことにより、前記基板に前記所定の液体を供給するステップと、
前記供給弁よりも前記液体供給部側において前記供給管から分岐するドレイン管に設けられる第1の開閉弁を開くステップと、
前記供給弁に対して設けられる速度制御器により低減した速度で前記供給弁を閉めるステップと
を含む、液処理装置の制御方法。
【請求項9】
前記供給管に対して設けられる第2の開閉弁であって、当該第2の開閉弁と前記供給手段との間において前記供給管内に残留する液体の少なくとも一部を前記供給管から流出させ得る当該第2の開閉弁を開くステップを更に含む、請求項8に記載の液処理装置の制御方法。
【請求項10】
前記第2の開閉弁を開くステップにおいて、前記第2の開閉弁に対して設けられる速度制御器により低減した速度で前記第2の開閉弁が開けられる、請求項9に記載の液処理装置の制御方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液処理装置に、請求項8から10のいずれか一項に記載の液処理装置の制御方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30559(P2013−30559A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164651(P2011−164651)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】