説明

液圧式ブレーキシステムおよび液圧式ブレーキシステムを作動させるための制御装置

本発明は車両のための液圧式ブレーキシステムに関する。この場合、液圧式ブレーキシステムは、少なくとも1つのホイールの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダと液圧接続している力・圧力変換素子を備える。さらに、液圧式ブレーキシステムは、少なくとも1つのホイールブレーキおよび力・圧力変換素子と液圧接続した容積調節素子ならびに力・圧力変換素子を操作するための操作ユニットを備える。操作ユニットはさらに入力要素を備える。少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力、すなわちブレーキ圧は、容積調節ユニットおよび/または操作ユニットの作動により調節される。このために、容積調節ユニットの作動時に本発明にしたがって操作ユニットを作動することにより、入力要素の操作状態が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積調節装置および操作ユニットによって液圧式ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力を調整する液圧式ブレーキシステムに関する。圧力調節は、特にホイール個別に、アンチロック制御の際、能動的な圧力生成を伴う段階および/または回生ブレーキ時に行うことができる。これで包括的に列挙したわけではない。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0292648号明細書は、実質的にペダルにより操作される液圧式のブレーキ圧発生器と、ブレーキ圧発生器とホイールブレーキとの間で圧力媒体通路に挿入されたブレーキ圧変更器とからなり、ブレーキ圧変更器により液圧媒体を含むスペースの容積変更を行うことによりブレーキ圧が可変であるアンチロック制御装置を有するブレーキ装置を開示している。ホイール回転特性からロック傾向が認識された場合、このような装置ではブレーキ圧発生器から当該ホイールブレーキへの圧力媒体通路が直ちに遮断され、補助力を利用して、ホイールブレーキに接続された、液圧媒体を含む閉じられたスペースの容積を拡大する。この明細書に記載のブレーキ装置では、アンチロック制御時に運転手は液圧式ブレーキシステムから分離されている。これにより、運転手はブレーキペダルが硬いと感じ、このことは運転手にとっては苛立たしいと感じられる場合がある。
【0003】
ドイツ国特許出願公開第3317629号明細書は、自動車、特に道路車両のために設けられたブレーキスリップ制御されたブレーキ装置を制御するための方法に関する。この方法では、補助力により支援されたペダル力をマスタシリンダに伝達し、さらにマスタシリンダから互いに無関係に遮断可能な複数の圧力媒体通路を介して個々のホイールブレーキシリンダに伝達する。この方法では、ホイール回転特性および車両速度または車両速度に相当する変数を測定し、信号を論理的に関連付け、処理し、制御信号を生成するために評価し、これらの制御信号によって、制御時、すなわち、ホイールにロック傾向が生じた場合にはホイール回転特性に関係してブレーキ圧がホイールで個々に、またはグループ毎に低減されるか、一定に保持されるか、または増大される。
【0004】
上記文献に記載のようなブレーキ装置は、上述のような圧力調整時に変化するペダル感覚を引き起こす場合があり、このことは運転手にとって苛立たしいと感じられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0292648号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第3317629号明細書
【発明の概要】
【0006】
独立請求項は、車両のための液圧式ブレーキシステムに関する。この液圧式ブレーキシステムは、力・圧力変換素子を備え、少なくとも1つのホイールの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダと液圧接続している。さらに、液圧式ブレーキシステムは、少なくとも1つのホイールブレーキおよび力・圧力変換素子と液圧接続した容積調節要素ならびに力・圧力変換素子を操作するための操作ユニットを備える。操作ユニットはさらに入力要素を備える。少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力、すなわち、ブレーキ圧は、容積調節ユニットおよび/または操作ユニットの作動により調節される。
【0007】
このために、容積調節ユニットの作動時に操作ユニットを本発明にしたがって作動することにより入力要素の操作状態が保持されるように構成されている。力・圧力変換素子要素は、例えば、液圧式ブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ、または操作ユニット、例えば入力要素、例えば入力ロッドを備えるブレーキブースタであってもよい。運転手および/またはブレーキブースタによって、ブレーキマスタシリンダが操作される。上記容積調節ユニットは、モータによって駆動されるプランジャであってもよい。プランジャによって、液圧式ブレーキシステムまたは液圧式ブレーキシステムの部分、特にホイールブレーキシリンダにおける圧力が調節され、これはブレーキブースタおよび容積調節ユニットの作動によって行われる。
【0008】
有利な形式では、圧力変更は液圧式ブレーキシステムの容積調節ユニットによって行うことができ、圧力変更時には入力ロッド、および入力ロッドに接続または連結されたブレーキペダルの操作状態が保持される。これにより、運転手は、このような圧力変更時にもペダルにかかる苛立たしい反作用を感じることはない。同様に、少なくとも1つのホイールにおけるホイール圧の変更もホイール個別に行われる。したがって、圧力変更は、現在の走行状態に基づいて圧力変更が必要とされる少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで行われる。
【0009】
本発明によるブレーキシステムの有利な構成では、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力の調節は、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダおよび容積調節ユニット、すなわち、プランジャならびにブレーキマスタシリンダの間に液圧接続が形成されている場合に容積調節ユニットおよび/または操作ユニットの作動により行われる。この場合、残りのホイールブレーキシリンダ、すなわち、圧力調節が行われないホイールブレーキシリンダ、プランジャおよびブレーキマスタシリンダの間の液圧接続は、遮断されている。したがって、有利には、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおけるブレーキ圧の調節が可能である。この場合、ブレーキマスタシリンダはホイールブレーキシリンダに接続されているので、有利には、ブレーキマスタシリンダを残りのブレーキシステムから分離する遮断弁はこのような圧力調節を行う場合には省略することができる。さらなる遮断弁の省略は、構成スペースおよび/またはコスト節約につながる。
【0010】
液圧式ブレーキシステムの別の有利な構成では、操作ユニットはブレーキブースタを備える。入力要素の操作状態の保持とは、入力要素を1つの位置に保持するために加える必要のある力を保持することである。有利には、入力要素を1つの位置に保持するために運転手によって加えられるべき力が、ブレーキシステムで形成された圧力とは無関係となるようにブレーキブースタが制御される。特に、加えられるべき力は、容積調節ユニットによって調節される圧力とは無関係である。本発明によれば、ブレーキブースタの操作位置が保持されるようにブレーキブースタが作動される。
【0011】
運転手は、ブレーキペダルを操作する場合、ひいては入力要素を位置決めする場合に力を加える必要がある。入力要素の1つの位置で加えられる力は、運転手にペダル感覚を伝える。ブレーキブースタの作動により、入力要素のこの位置に対応して加えられるべき力が、プランジャによる圧力調節とは無関係であり、すなわち、これにより変更されないことが確保された場合、運転手のペダル感覚が変更されずに保持されるという利点が得られる。したがって、運転手は、苛立たしい反作用を感じない。
【0012】
有利には、ホイールブレーキシリンダおよびブレーキマスタシリンダならびにプランジャの間の液圧接続を形成または中断するための遮断手段が設けられている。この場合、遮断手段は、液圧弁の形式で設けられていてもよい。液圧弁は、切換弁または調整弁である。液圧式ブレーキシステムに切換弁および/または調整弁を設けることは、制御装置によって弁の位置、ひいては液圧式ブレーキシステム内の圧力分布を制御することができるという利点を有する。ブレーキ媒体容積の搬送を液圧式ブレーキシステム内の弁によって行うこともでき、動力に関して影響を及ぼすことができる。調整弁を使用した場合、例えば、適宜な液圧ラインの貫流量を変化させることができる。本発明によるブレーキシステムでは、第1形式の弁は非通電状態で閉じられた弁であり、第2形式の弁は非通電状態で開かれた弁である。第1形式の弁は、プランジャと残りの液圧式ブレーキシステムとを連結/分離し、および/またはプランジャ内外へのブレーキ媒体の流量を調節する役割を果たす。第2形式の弁は個々のホイールブレーキに配属されている。したがって、第2形式の弁によって、有利には、圧力調節を個々のホイールに対応させるか、もしくは個々のホイールで行うことができる。ブレーキシステムに第1形式の非通電状態で閉じられた弁および第2形式の非通電状態で開かれた弁を設けることにより、電源故障時またはブレーキシステムの故障時にブレーキマスタシリンダからホイールブレーキへの接続部が開放されている場合に運転手のみによる制動が可能となり、運転手は、この場合に、必要に応じて人力のみによってホイールブレーキシリンダを直接に踏み込んで制動する。
【0013】
本発明によるブレーキシステムの有利な構成では、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダとブレーキマスタシリンダとの液圧接続は、まさに第2形式の弁を介して、すなわち、非通電状態で開かれた調整および/または切換弁を介して行われる。ホイールブレーキシリンダとの間の液圧経路には、さらなる弁は配置されていない。
【0014】
このようにして、それぞれ1つのホイールに配属されたそれぞれ1つの弁を有する液圧式ブレーキシステムを設計することが可能である。このようにわずかな数の弁、すなわち、ホイールにつき1つおよびプランジャにつき少なくとも1つの弁によりホイール個別の圧力調節を行う上記のような可能性、およびさらなる遮断弁が不要であるという事実は、著しい構成スペース節約およびコスト削減をもたらす。さらに、わずかな数の弁のみを操作すればよいのでエネルギー消費も低減される。
【0015】
液圧式ブレーキシステムの別の有利な構成では、プランジャの作動による少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける圧力調節は、容積調節ユニットと少なくとも1つのホイールブレーキシリンダとの少なくとも1つの直接的な液圧接続を介して、および/または力・圧力変換素子、ここではブレーキマスタシリンダによる間接的な液圧接続を介して行われるよう構成してもよい。1つのみのラインおよび1つのみの弁によりプランジャと残りの液圧式ブレーキシステムとが連結される設計では、必要に応じて、ブレーキシステムに接続されたホイールブレーキの一部のみを、ラインに提供された弁を介して直接にプランジャに接続することもできる。この場合、例えば、他のホイールブレーキをプランジャに直接に連結することはできない。なぜなら、他のホイールブレーキは、プランジャが接続されていないブレーキ回路に配属されているからである。しかしながら、圧力調節が本発明にしたがってブレーキマスタシリンダを介して行われる場合には、直接に接続されていないホイールにおける圧力調節が可能である。これにより、本発明によるブレーキシステムでは他の弁を省略することができ、これにより、さらにコスト効率が良くなる。
【0016】
さらに、本発明は、液圧式ブレーキシステムを作動するための方法に関する。液圧式ブレーキシステムは、少なくとも1つのホイールの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダと液圧接続した力・圧力変換素子と、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダおよび力・圧力変換素子と液圧接続した容積調節要素と、力・圧力変換素子を操作するための操作ユニットとを備える。操作ユニットは、さらに入力要素を備える。これらの構成素子は、既に述べたように、例えば、ブレーキマスタシリンダ、プランジャおよび運転手によるブレーキ操作を受け止めるための入力要素を配属したブレーキブースタの形態であってよい。本発明による方法では、第1作動モードでは少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力が容積調節ユニットおよび操作ユニットの作動によって調節されるように構成されている。第1作動モードとは、ここでは、例えば少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける圧力変更に対応する作動モード(ABS)または能動的な圧力形成(ESP)を行う作動モードである。同様に、この第1作動モードでは、回生ブレーキ装置で液圧式ブレーキシステムを作動することもできる。第1作動モードでは、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける圧力が容積調節ユニットおよび操作ユニットを作動することによって調節される。この場合、ブレーキブースタ、運転手および/または両者が共にブレーキシステム内の圧力を形成したと想定してもよい。個々のホイールブレーキシリンダにおける圧力調節は、この場合、容積調節ユニット、すなわちプランジャによって行われる。このようにして、容積調節ユニットおよび操作ユニットによる圧力調節が行われる。能動的な圧力生成時には、圧力がプランジャおよび/またはブレーキブースタによって形成されるように構成してもよい。同様に、ブレーキブースタによってブレーキマスタシリンダの吸込み孔のみが閉鎖され、これにより、圧力形成がプランジャのみによって可能となるように構成してもよい。したがって、能動的な圧力生成時にも容積調節ユニットおよび操作ユニットによって圧力が形成される。この場合、容積調節ユニットの作動時の操作ユニットの作動によって入力要素の操作状態が保持されるように構成されている。入力要素の操作状態の保持およびこれに伴う利点については既に述べた。
【0017】
本発明による方法では、有利には少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力と少なくとも1つの残りのホイールブレーキシリンダとが時系列で調節される。このような方式は、多重方式でブレーキシステムを作動する方法を示している。時系列とは、この場合、連続していること、または前後していることを意味する。個々のホイールの圧力調節の順序は可変であり、有利には、そのときの走行状況に適合させることもできる。したがって、例えば、制動時に現在ロックしているホイールで常にブレーキ圧を調節することができる。
【0018】
液圧式ブレーキシステムの第2作動モードでは、操作ユニットの操作のみによって圧力が調節されるようにしてもよい。これは、運転手および/またはブレーキブースタによってブレーキマスタシリンダが操作され、全てのホイールにおいて制動が行われる通常の制動の作動モードを示す。
【0019】
有利な構成では、本発明による方法にしたがった能動的な圧力形成が行われる。特に、例えば液圧式ブレーキシステムのESP機能で運転手とは無関係に能動的な圧力形成が行われる。運転手とは無関係とは、ブレーキ操作に関して運転手とは無関係であることを意味する。同様に、本発明による方法により、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける圧力変更時に圧力調節が行われる。さらに、回生ブレーキ時に圧力調節を行うことができる。この場合、圧力調節によって回生ブレーキモーメントのブレーキ作用に対して液圧式ブレーキ作用の適合を行うことができる。この場合、特に総ブレーキ作用が一定に保持される。
【0020】
本発明による方法にしたがった上記作動状況で圧力調節を行う利点は、本発明によるブレーキシステムによる作動状態について説明したように、わずかな数の弁で済ますことができ、運転手にとって不都合な/苛立たしい液圧式ブレーキシステムの反作用が防止されることである。
【0021】
本発明による液圧式ブレーキシステムならびに本発明による方法についての上記利点は、本発明による方法を実施する制御装置ならびに液圧式ブレーキシステムにもあてはめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】主に操作ユニット4、力・圧力変換素子2、液圧ユニット8および液圧ユニットに接続されたホイールブレーキ5a〜5d、制御ユニット7ならびに容積調節ユニット3を備える本発明による液圧式ブレーキシステムを示す概略図である。
【図2】液圧式ブレーキシステムを制御し、本発明による方法を実施する制御装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、車両のブレーキ装置に関する。このブレーキ装置は、特に液圧式ブレーキシステムを備える。
【0024】
ブレーキ装置は、液圧式ブレーキシステムの他に別のブレーキシステム、特に回生ブレーキシステムを備えていてもよい。
【0025】
図1に示す実施形態の液圧式ブレーキシステム1は、主に操作ユニット4、力・圧力変換素子2、液圧ユニット8ならびに液圧ユニットに接続されたホイールブレーキ5a〜5dを備える。さらに液圧式ブレーキシステム1は制御ユニット7を備える。この制御ユニット7は、単一の制御ユニットとして設けられているが、制御ユニット7は総ブレーキ装置または車両の制御ユニットの下位ユニットとして設けられていることも可能である。本出願明細書では、制御は調整としても理解されるものとする。
【0026】
さらに、液圧式ブレーキシステム1は、液圧ユニット8および力・圧力変換素子2に液圧的に接続された容量適合ユニット3を備える。
【0027】
以下に液圧式ブレーキシステムの個々の構成部分を詳細に説明する。
【0028】
操作ユニット4は、ここでは入力ロッド9として示された入力要素9を備える。入力ロッド9は、運転手によって加えられた力を受け止めるための役割を果たす。運転手は、ブレーキ装置、特に液圧式ブレーキシステムを操作し、車両の制動を誘起する力すなわち、運転手の操作力を加える。運転手は弾性素子、図示の実施形態では、ばね、特に圧縮ばね10に操作力を加える。この場合、ばね10は入力ロッド9の突出部11で支持され、第2の側を支持部12で支持される。突出部11は、入力ロッド9と一体的であってもよいし、圧着、接着または溶接されていてもよいし、その他の形式で固定されていてもよい。運転手は入力ロッド9に操作力を加えることにより、入力ロッド9を介してブレーキ要求を規定する。ブレーキ要求を測定するためには、支持部12に対する入力ロッド9の変位を測定するセンサ装置13が設けられている。センサ装置は、特に距離センサまたは差分距離センサである。センサユニット13はライン21、特にデータラインによって制御ユニット7に接続されている。センサユニット13の信号は、ブレーキシステムを制御するために制御ユニット7によって使用される。力・圧力変換素子2を操作するために、操作ユニット4は、この実施形態では電気機械式ブレーキブースタとして示されたブレーキブースタ14を備える。ブレーキースタ14は、運転手に関係して、および/または運転手とは無関係に作動することのできる調整可能/制御可能なブレーキブースタである。特にブレーキブースタ14の支援力は、運転手によって加えられた操作力に関係して、および/または無関係に調節することができる。しかしながら、本発明は、このような調整可能/制御可能なブレーキブースタの実施形態に限定されず、同様に空圧式または液圧式に制御可能なブレーキブースタが考慮可能である。図1に示した電気機械式のブレーキブースタ14は、ブレーキシステム1を操作するために操作ユニット4によって加えられた力を力・圧力変換素子に伝達する出力素子15を備える。出力素子15は、ブレーキブースタ14のブースタボディ18と一体的であるか、またはこれに結合されている。ブースタボディ18は、ギアロッド17を介してブレーキブースタ14のモータの回転をブースタボディ18の並進に変換するギア19を備える。他のギア形式、例えば、ボールねじ駆動装置またはウォームギア駆動装置も可能である。モータ16の回転方向に応じて、ブレーキブースタ14、特にブースタボディを前方および後方に移動することができる。モータは同様に制御装置7によって制御される。制御装置は、モータを制御することも、モータ16の調整を行うこともできる。このために、モータ16は、ライン、特にデータライン20によって制御ユニット7に接続されている。
【0029】
BFS(ブレーキ力センサ)の機能:
支持部12は、上述のように、ばね10のための当接部を備える。さらに支持部12は、支持部12、特に支持部の、入力ロッド9に向いていない方の側の当接部と、出力素子との間に位置する緩衝素子22を少なくとも部分的に包囲している。
【0030】
制動時には、運転手は操作力を加えることによって入力ロッド9を操作し、これにより、支持部12に対して入力ロッドを変位し、弾性素子10を圧縮する。
【0031】
ばね10ならびにセンサ装置13、および必要に応じて付加的に緩衝素子によって、運転手要求を次のようにして検出することができる。検出のためには、センサ装置13によって支持部12に対する入力ロッド9の変位が測定される。ばね10ならびに緩衝素子22については、ばね10もしくは緩衝素子22の変形が、これにより生じた復元力、または入力要素9に作用する反作用力と関係して、それぞれ特性線で示される。特にばね10は線形の特性線を示してもよい。第1作動領域では入力要素9は緩衝素子22に当接していない。この作動領域では、ばね10のばね特性線から、運転手によって加えられた力をセンサ装置13によって極めて正確に測定することができる。以下にさらに説明する第2作動領域では、入力要素9は緩衝素子22に当接し、したがって、この場合には緩衝素子22およびばね10の作用による複合的な特性線が考慮される。
【0032】
ブレーキ操作時の入力が大きく、および/または入力ロッド9と支持部12との間の変位が大きい場合、入力要素9、より正確にいえば、突出部11と支持部12とが当接し得る。このような状況で、出力素子15には少なくとも部分的に直接的に運転手の操作力も加えられる。同様に部分的に、運転手の操作力の一部はばね10の変形および緩衝素子22の変形をもたらす。緩衝素子22の変形時には、緩衝素子22の湾曲部が出力素子15の図示の凹部に突入するか、または凹部を充填さえする場合がある。これにより、ばね10および緩衝素子22を介して、入力要素9から出力素子15への少なくとも部分的な力の伝達が行われる。
【0033】
運転手によるブレーキ要求の規定に基づいて、特にセンサユニット13の少なくとも1つの信号に基づいて、制御ユニット7は、モータ16の駆動によってブースタボディ18が新たな位置をとるようにブレーキブースタのモータを制御する。ブースタボディ18に滑動式に支承された支持部12はブースタボディ18の位置変化に追従する。ブースタボディ18がとる位置は、センサユニット13によって調整することができる。運転手によってこのように制動のために加えられるペダル力、すなわち、ペダルをこの位置に保持するために制動時に加えられるべき力は、ばね10に関係しており、特に入力ロッドによるばね10の変形に関係している。入力ロッド9および支持部12の固定された相対変位は、固定したペダル力に対応する。
【0034】
ブレーキブースタが故障した場合、またはブレーキブースタの支援力が制動のためにもはや十分ではない場合には、運転手はばね10を超えて踏み込むことができ、この場合に入力ロッド9は緩衝素子22に当接する。上述のように、運転手は、支持部12を介して、またはばね10および緩衝素子22を介して出力素子15に自ら操作力を加えることができ、このようにして、ブレーキブースタが故障した場合にも依然として制動を行うことができ、あるいはブレーキブースタによる支援力がもはや制動のために十分ではない場合にもブレーキ圧を高めることができ、いずれの場合も増大した力が加えられる。
【0035】
図1に示すように、力・圧力変換素子は、ここではタンデム式ブレーキマスタシリンダとして示したブレーキマスタシリンダに相当する。ケーシング23は、既知の形式で2つのチャンバ24aおよび24bを備え、これら2つのチャンバはブレーキ液リザーバと液圧接続している。この場合、チャンバは第1ピストン25b、第2ピストン25aおよびケーシング23により形成されている。第1ピストン25bは、操作ユニットによって加えられる操作力を受け止める役割を果たす。さらにそれぞれのチャンバは予荷重をかけられたばねを備え、ばねは、ブレーキマスタシリンダ2を戻すための役割を果たす。それぞれのチャンバ24aおよび24bは出口を備え、出口には、それぞれ液圧ライン26aおよび26bが接続されている。
【0036】
既知の形式で、これらそれぞれのラインは、接続されたブレーキ回路に通じている。これらそれぞれのブレーキ回路には、少なくとも1つのホイール6a,6b,6c,6dに少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ5a,5b,5c,5dを有する少なくとも1つのホイールブレーキを配属してもよい。ホイールの配属およびホイールの数は、設けられたブレーキ回路分割に関係しており、車両毎に変更することができる。同様に、ホイールの数は、ブレーキマスタシリンダ2に接続されたブレーキ回路毎に変化させることができる。同様に、ブレーキマスタシリンダ2に接続されたブレーキ回路毎のホイールの数も変化させることができる。したがって、例えば、ブレーキ回路につきそれぞれ1つのみのホイールを接続することもでき、特に同じ車軸の1つのホイールを接続することもできる。
【0037】
ブレーキマスタシリンダの機能形式は、以下では既知であることを前提とする。
【0038】
液圧ユニット8は、上述のように、少なくとも1つの液圧ライン26a,26bを介してブレーキマスタシリンダ2に接続されており、したがって、ブレーキマスタシリンダ2に液圧接続されている。液圧装置8は、図1に示すように、2つのブレーキ回路を備える。液圧ライン26aは点27aで分岐している。分岐点27aには2つの弁28a,8bが接続されている。これらの弁は、それぞれ接続されたホイールブレーキに通じる液圧ラインを遮断するための役割を果たす。弁の構成に応じて、弁は、ブレーキ液の流入および/または流出、特に流量を制御するために用いることもできる。弁は、この場合、例えば調節弁または切換弁であってもよい。
【0039】
図示の実施形態は、弁28aおよび28bは、非通電状態で開かれた切換弁として設けられている。弁28aおよび弁28bは、ホイールブレーキ5aおよび5bに配属されている。
【0040】
同様に、液圧ユニット8は2つの弁28cおよび28dを備え、これらの弁は液圧ライン26bに接続されており、ホイールブレーキ5cおよび5dに配属されている。弁28cおよび28dは、同様に非通電状態で開かれた弁である。弁28a,28b,28cおよび28dを制御するためには、これらの弁は、特にデータライン29および/または調節信号を伝達するためのライン29を介して制御ユニット7に接続されている。図1には、ライン29は単一のラインとして示されているが、それぞれ1つの別個のラインが弁に通じていることも同様に考えられる。
【0041】
さらに、液圧式ブレーキシステム1は容積調節ユニット3を備える。容積調節ユニット3とは、液圧式ブレーキシステムの一部に供給されるブレーキ媒体の容積を増大および/または低減するユニットである。この場合、ブレーキ媒体の容積が取り出され、および/または追加される液圧式ブレーキシステムのこの部分は、容積調節ユニット3を除いた液圧式ブレーキシステムである。この場合、必要に応じて、特に以下にさらに議論する弁と容積調節ユニット3との間に液圧ラインにおける液圧的な流入または流出距離が位置する場合にはこれが考慮されるべきである。容積調節液圧式ブレーキシステムの上記部分からの容積取出しおよび/または上記部分への放出により、液圧式ブレーキシステムの上記部分内の圧力を適合させることができる。
【0042】
容積調節ユニット3は、ここではプランジャの形式で設けられている。図1に示すように、一実施形態では、プランジャはシリンダ30と、シリンダ内に滑動式に支承されたディスク31とを備える。ディスク31は、シリンダ30を第1部分と第2部分とに分割している。シリンダ30の第1部分にブレーキ液を取り込み、および/または第1部分からブレーキ液を放出することができる。シリンダ30の第2部分には戻しばね32およびピストンロッド33が位置している。ピストンロッド33は、シリンダ30の第2部分に突入しており、ディスク30を支持するか、またはディスク30に力を加えるために設けられている。ピストンロッドにおけるシリンダ30に向いていない方の部分には、ギアが配置されていてもよい。モータ34がこのギアを介してピストンロッド33をシリンダ30に対して変位することができる。特に、ピストンロッド33は、シリンダの軸線に対して平行に移動し、特にシリンダと同軸的に移動するように構成してもよい。モータは、制御装置7によって制御され、および/または調整される。
【0043】
シリンダの第1部分、特にチャンバ35は、ブレーキ液を取り込み、または放出するために働く。このために、チャンバ35は少なくとも1つのライン36a,36bを介して少なくとも1つのライン26aおよび26bに接続されている。少なくとも1つの液圧ライン36a,36bは、それぞれの分岐点27a,27bの上方または下方で液圧ライン26a,26bに開口している。ライン36aおよび36bは分岐点27aおよび27bに対して異なった形で、すなわち、一方では分岐点の上方で、他方では下方でライン26aおよび26bに開口していることも可能である。この状態が図1に示されている。
【0044】
少なくとも1つのライン36a,36bは、少なくともそれぞれ1つの弁37a,37bによって遮断することができる。特に、少なくとも1つの液圧ライン36b,36bが遮断されるだけではなく、弁37a,37bが可変に開放されるように調節可能にしてもよい。弁37a,37bによって、プランジャ3、特にチャンバ35からのブレーキ液の流入および/または流出を調整もしくは調節することができる。第1チャンバ35からのブレーキ液の取出しおよび/または第1チャンバ35へのブレーキ液の放出により、液圧式ブレーキシステムにおけるチャンバ35とまさに接続されている部分の圧力を変更/調節することができる。液圧式ブレーキシステムのいずれの部分がチャンバとまさに接続されているかは、弁28a〜dおよび37a,bの現在の位置に関係している。したがって、チャンバにまさに接続されているブレーキシステムの部分の選択は、制御ユニット7による弁の制御により可能である。
【0045】
弁37a,37bは、非通電状態で閉じられた弁である。特に、弁37a,37bは切換弁または調節弁である。特に、調節弁は常に調節可能な調節弁である。弁37a,37bは、データおよび/または信号接続部38を介して制御ユニット7に接続されている。この場合、データおよび/または信号接続部38は、モータ34を制御するための接続部と同じ接続部であってもよい。
【0046】
液圧式ブレーキシステムの少なくとも1つの箇所、特に少なくとも1つのブレーキライン27aまたは27bの箇所に圧力センサ39を設け、この圧力センサに接続されている液圧式ブレーキシステム部分の圧力を検出するようにしてもよい。少なくとも1つの圧力センサの信号は、ブレーキシステムを制御するために使用することができる。このために、圧力センサは、データラインおよび/または信号ラインを介して制御ユニット7に接続されている。
【0047】
液圧式ブレーキシステムの制御ユニット7は、信号および/またはデータを受信するための少なくとも1つの受信部分209ならびに信号および/またはデータを送信するための少なくとも1つの送信部分210を備える。
【0048】
この場合、受信部分209は、下位部分、特に距離センサ201および少なくとも1つの圧力センサ202の信号および/またはデータを受信するための下位部分である。さらに、車両の現在の車両状況を示す信号および/またはデータは、制御装置に供給することができる。したがって、例えば、信号および/またはデータ203は制御ユニットで受信することができ、制御ユニットは、ABSブレーキの必要性を発信し、特にまさにどのホイールが遮断されているかを知らせる。同様に、例えば、走行安定性プログラム、自動的な非常ブレーキまたは自動的な連続走行時に少なくとも1つのホイールブレーキにおける能動的な圧力形成の必要性を示す信号も考えられる。さらに車両の回生ブレーキシステムの状態、特に現在作用しているブレーキモーメントを示すデータおよび/または信号204を制御ユニット7で受信するようにしてもよい。さらに制御装置はブレーキシステムの特定の変数が保存されているデータ部分211を備える。したがって、データ部分211には制御可能なブレーキブースタ14を制御するために使用される特性線が保存されていてもよい。制御ユニット7の評価部分212では、入力部分および/またはデータ部分のデータおよび/または信号が少なくとも部分的に評価され、必要に応じて再びデータ部分211を介して、送信部分に伝送されるか、もしくは送信部分に提供される。次いで送信部分210を介して、制御変数、信号および/またはデータ、例えば、ブレーキブースタ14のモータ16を制御するための変数205、少なくとも1つの弁28a〜dを制御するための変数206、少なくとも1つの弁37a,bを制御するための変数207および/またはプランジャのモータ34を制御するための変数を送信することができる。制御変数206および207が出力変数として示されることは、関連した弁が同じ位置に切り換えられることを意味するのではなく、制御ユニット7、特に送信ユニット210を介した弁の選択的な制御が行われ、可能である。
【0049】
以下に、本発明による液圧式ブレーキシステムを作動するための方法を説明する。この場合、複数の作動モードを区別することができる。このために、図1に示した実施形態から出発する。
【0050】
一作動モードでは通常の制動が行われる。この作動モードでは、液圧ユニット8の全ての弁28a〜dは非通電状態であり、したがって開かれている。弁37aおよび37bは非通電状態であり、しがたって閉じられている。これにより、ブレーキマスタシリンダ2とホイール6a〜dのホイールブレーキ5a〜dとの開かれた液圧接続が生じる。運転手がブレーキペダルを操作し、これにより入力ロッド9を踏み込んだ場合、差分距離センサ13および制御ユニット7のばね10の特性線を用いて力を検出することができる。制御ユニットは、ブレーキブースタ14の調節すべき支援力を検出し、モータ16を適宜に制御する。全てのホイールブレーキを利用して車両の通常の制動が行われる。圧力減衰は、ペダルもしくは入力ロッド9を介した運転手の規定にしたがって行われる。この場合プランジャ3は作動されない。
【0051】
別の作動モードの構成では、少なくとも1つのホイール6a〜6dが遮断されているか、または遮断傾向のあるブレーキ状態が生じている。このような状態が生じた場合、関連ホイールのホイールブレーキのブレーキ圧を低減することが有利である。これは、本発明による方法では、第1ステップで液圧ユニット8の全ての弁28a〜28dが閉じられることにより行われる。これは、弁28a〜dの通電により行われる。弁28a〜dの閉鎖により、ホイールブレーキ、特にホイールブレーキシリンダ5a〜5dのブレーキ液が遮断される。弁28a〜dの間の供給ライン(図1には符号を付していない)も同様に遮断されたブレーキ液容積を含む。
【0052】
ホイールのいずれか1つのホイールブレーキシリンダ5a〜5dのブレーキ圧を低減するためには、弁28a〜dのうち、適宜なホイールに配属された弁が開放される。さらに、適宜な弁37aまたは37bの開放により、容積調節ユニット3の第1チャンバ35と適宜なホイールとの間の液圧接続が形成される。
【0053】
例えば、ホイール6aのホイールシリンダ5aの圧力が低減されることが望ましい場合、全ての弁28a〜dがまず閉じられる。次のステップで、弁28aならびに弁37aが開放される。これにより、チャンバ35はホイールブレーキシリンダ5aと接続する。ABSブレーキには一般に常用ブレーキが先行するので、ブレーキシステム、特に上記実施例のホイールブレーキ5aではチャンバ35よりも高い圧力が形成される。このため、ブレーキ液はホイールシリンダ5aからチャンバ35に還流する。このために、ディスク31を変位することができるように、必要に応じてピストンロッド33の位置を変更する必要がある。これにより、ホイールブレーキシリンダ5aの圧力が低減される。上記ステップを連続して実施することにより、ホイールブレーキの圧力をホイール個別に低減することができる。
【0054】
同様に、モータ34の操作によってディスク31を変位することが可能であり、これにより、チャンバ35に含まれるブレーキ液容積が液圧ライン36aおよび必要に応じて液圧ライン36bの方向に移動される。したがって、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ5a〜5dとの液圧接続部が開放されている場合には、圧力形成が可能である。
【0055】
上記ステップを連続して実施することにより、ホイールブレーキの圧力をホイール個別に高めることができる。それぞれのホイールブレーキシリンダ5a〜5dにおける連続したホイール個別の圧力調節は、多重方式と呼ばれる。この場合、チャンバ内で、現在調節すべきホイールブレーキシリンダで常に目標圧力を設定する必要がある。このことは、例えば連続したホイール毎の圧力形成時にチャンバの容積が連続的に拡大されることを意味する。極端な例では、全てのブレーキシリンダに極めて低い圧力を設定することが望ましい場合には、液圧式ブレーキシステムのほぼ全容積が取り込まれる。
【0056】
弁28a〜dが切換弁として構成されている場合には、圧力変更は、例えばABSの場合には、圧力適合ユニット3によって行うことができる。場合によっては、これは容積調節ユニットの動力学に高い要求を課す。ホイール6a〜6dの少なくとも2つのホイールブレーキシリンダにおいて調節すべき目標圧力が等しい場合には、これらのホイールブレーキシリンダの圧力が同時に調節されるように設定してもよい。
【0057】
弁28a〜dが調整弁(調節弁)として構成されている場合には、例えば、圧力形成時に圧力は複数のホイールブレーキシリンダにおいても同時に調節することができる。
【0058】
圧力形成時および圧力減衰時には、プランジャ3のモータ34を制御するためにも、関与した弁37a,bおよび28a〜dを制御するためにも、少なくとも1つの圧力センサ39の信号を使用することができる。特に、圧力センサ39により、関与した弁が開放保持されていた時間ならびにディスク31およびピストンロッド33がとった位置を規定することができる。このようにして、それぞれのホイールにおける適宜な目標圧力を調節することができる。必要に応じて、このような制御のためには、ブレーキシステム内に提供されたブレーキ液容積とこれにより生じる圧力とを結びつける制御のための関係性、例えば制御ユニット7に保存しておくことができるp−V特性線を用いる必要がある。場合によっては、ホイール個別のp−V特性線も必要である。
【0059】
図1の液圧回路図から明らかなように、圧力変化時、すなわち、圧力形成時および圧力減衰時には常にそれぞれまさに調節すべきホイールブレーキ5a〜5dのプランジャ3とブレーキマスタシリンダ2との間に液圧接続が生じる。説明した圧力変更時にはブレーキブースタ14のモータ16は同じ位置に保持される。これは、制御装置7を介した制御/調整によって行うことができる。モータがこの位置に保持された場合、支持部12および入力ロッド9の相対変位も変化しない。これにより、ばね10、必要に応じて緩衝素子22の一定の圧縮がもたらされ、したがって、運転手には変化しないペダル力がもたらされる。この場合、運転手が操作力および操作位置を一定に保持することを前提とする。したがって、運転手は、ペダルをこの操作位置に保持するために加えるべき不可欠な操作力の変化を感じない。
【0060】
上記方法によって、特にホイール個別に能動的に圧力を形成することも可能である。これは、別の作動モードの別の構成に相当する。このような能動的な圧力形成は、走行安定性プログラム、自動緊急ブレーキ、または自動的な後続走行時に使用することができる。能動的な圧力形成が必要な他の状況も考えられる。チャンバ35は、設定すべき圧力を達成するために必要な容積によってあらかじめ充填されている。圧力形成は、上記形式に類似して、それぞれの弁の適宜な調節およびプランジャ3の操作によって行われ、これにより、ブレーキ液がチャンバ35からライン36aおよび/または36bへ、ひいては、ライン36aおよび/または36bとまさに液圧接続されているホイールブレーキに移動される。このために、ブレーキブースタ14は、ブレーキマスタシリンダの第1および第2ピストン25a,bがケーシング23の開口、特に、ブレーキマスタシリンダのチャンバ24a,bをブレーキ液リザーバ40に接続する吸込孔を既知の方式で通り過ぎるまで操作されればよい。さもなければ、プランジャ3の操作による圧力形成は不可能である。運転手は、気付くとすれば、ブレーキペダルの極めてわずかな変位に気付くだけである。このようにして、能動的な圧力形成時にさらなる遮断弁は不要である。能動的な圧力形成をプランジャ3のみによって行わないことも可能であり、制御可能なブレーキブースタを能動的な圧力形成のためにプランジャ3と共に、または単独で作動することも可能である。
【0061】
圧力変更、特にプランジャ3を用いたホイール個別の圧力変更を行う方法によって、液圧式ブレーキシステムは、液圧式ブレーキシステムの他に少なくとも1つの別のブレーキシステム、特に回生ブレーキシステムを備えるブレーキ装置の一部として作動するためにも適している。このような回生ブレーキシステムでは、車両の消費装置を作動し、特にエネルギー蓄積器を充電する発電機が車軸に接続されていてもよい。発電機の作動は、同様に車両のためのブレーキ作用をもたらす。回生ブレーキ作用は、速度に大きく関係しており、制動時に変化する。特に、回生ブレーキ作用は走行状態に関係して部分的にさらに作動されるか、または停止される。適宜な形式でこのような変化する回生ブレーキ作用と液圧式ブレーキシステムのブレーキ作用とを車両のための総ブレーキ作用として組み合わせるためには、液圧ブレーキ作用を適合させる必要がある。この場合、回生ブレーキ作用も提供されている車軸に配属したブレーキでのみブレーキ作用を調節するようにしてもよい。しかしながら、液圧式に操作される全てのホイールブレーキシリンダを調節することもできる。
【0062】
上記作動方法によって、特にホイール個別に、したがって車軸個別に、圧力を変更することもできる。
【0063】
回生ブレーキ作用が減少した場合には所望のホイールブレーキシリンダに圧力を形成することができ、回生ブレーキ作用が増大した場合には圧力を減衰することができる。この場合、ブレーキブースタ14のモータ16は、モータ16が位置を保持するように再び制御される。したがって、プランジャ3の操作により圧力が変化したのにもかかわらず、運転手には液圧式ブレーキシステムの圧力の変化が感じられない。これにより、特に回生ブレーキの割合を変化させた回生ブレーキが、運転手がこのような変化に気付くことなしに、可能である。
【0064】
上記実施形態に対して代替的に、第1の別の実施形態では、プランジャ、特にチャンバ35からブレーキ回路へそれぞれのライン26aおよび26bに通じる2つのライン36aおよび36bの代わりに、単一の液圧ラインのみを設けてもよい。この場合、能動的な圧力形成および/または回生のために少なくとも1つのホイールにおけるブレーキ圧を変更するための上記方法を変更する必要がある。この実施形態で、例えば、ライン36aにのみ弁37aが設けられている場合、ホイールブレーキ5aおよび5bの圧力を既に説明した方法と同様に変更することができる。ホイールブレーキ5cおよび/または5dの圧力変更は別の形式で行う必要がある。ライン36bがないので、圧力変更はブレーキマスタシリンダ2を介して行う必要がある。例えば、弁28aおよび28bが閉じられており、ブレーキ液容積がチャンバ35に取り込まれた場合、ブレーキマスタシリンダ2の第2チャンバ24aから容積を取り出すことができる。ブレーキ液は、差圧に基づいてチャンバ24aからチャンバ35に流れる。これにより、ブレーキマスタシリンダの第2ピストンは対応して図1の左方に移動し、これにより、ブレーキ液は、接続されたホイールブレーキ5cおよび5dとの適宜に開かれた液圧接続部を介してホイールブレーキ5cおよび5dから第1チャンバ24bに流出することができる。ブレーキマスタシリンダ2は、このために浮動ピストンとして構成されている必要がある。
【0065】
この方法と同様に、ホイールブレーキシリンダ5cおよび5dにおける圧力形成を行うことができる。したがって、ライン36aに接続されていないホイールブレーキにおいてもブレーキマスタシリンダを介して圧力を変更することができる。しかしながら、この方法は上記方法に比べて圧力変更時にヒステリシスおよび/または摩擦損失を有する場合がある。
【0066】
液圧式ブレーキシステムの第2の別の実施形態では、ライン36aおよび36bに弁37aおよび37bが設けられていない。少なくとも1つのホイールブレーキ5a〜5dにおける圧力変更を行うためには、プランジャ3のモータ34にセルフロック式ギアが設けられている。プランジャが制動に貢献しないこと、すなわち圧力が変更されないことが望ましい場合には、プランジャ3は決して作動されない。それにもかかわらず、セルフロック式のギアに基づき、ライン26aからチャンバ35への液圧接続を保持することができ、これにより、ブレーキシステムの圧力は影響されない。
【0067】
セルフロック式のプランジャ、もしくはチャンバ35のライン36aまたは36bのみをホイールブレーキとの接続部として備える液圧式ブレーキシステムの上記さらなる実施形態は、同様に、ACCまたはESP状態で能動的な圧力形成を行うためにも使用可能である。同様に、他の2つの実施形態では、同様に圧力変更、特にABS機能を示すことができる。この場合、個々のホイールブレーキは同様に多重方式で制御される。回生ブレーキは、上記方式と同様に他の2つの実施形態でも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのホイール(6a〜6d)の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)と液圧接続した力・圧力変換素子(2)と、
少なくとも1つのホイールブレーキ(5a〜5d)および力・圧力変換素子(2)と液圧接続した容積調節素子(3)と、
力・圧力変換素子(2)を操作するための操作ユニット(4)と
を備え、該操作ユニットが入力要素(9)を備える、車両のための液圧式ブレーキシステム(1)において、
少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)内の圧力が、容積調節ユニット(3)および/または操作ユニット(4)の作動により調節され、容積調節ユニット(3)の作動時に操作ユニット(4)を作動することにより、入力要素(9)の操作状態が保持されることを特徴とする、車両のための液圧式ブレーキシステム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、前記少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)、前記容積調節ユニット(3)、および前記力・圧力変換素子(2)の間に少なくとも1つの液圧接続が形成されている場合に容積調節ユニット(3)および前記操作ユニット(4)を作動することにより少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)内の圧力の調節が行われ、残りのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)、すなわち、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)、容積調節ユニット(3)、および力・圧力変換素子(2)の間の液圧接続が遮断されている、液圧式ブレーキシステム(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、前記操作ユニットがブレーキブースタ(14)を備え、入力要素(9)の操作状態の保持が、入力要素を1つの位置に保持するために加えられるべき力の保持に相当し、入力要素(9)を1つの位置に保持するために運転手によって加えられるべき力がブレーキシステムで形成された圧力とは無関係であり、特に容積調節ユニット(3)によって調節される圧力とは無関係であるようにブレーキブースタが制御され、特に、ブレーキブースタの操作位置が保持されるようにブレーキブースタが作動される、液圧式ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項2に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、少なくとも1つの液圧接続の形成が、少なくとも1つの第一形式の遮断手段(37a,37b)および少なくとも1つの第2形式の遮断手段(28a〜28d)によって行われる、液圧式ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)が、まさに前記第2形式の遮断手段(28a〜28d)を介して前記力・圧力変換素子(2)と液圧接続されている、液圧式ブレーキシステム。
【請求項6】
請求項4に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、前記第1形式の遮断手段(37a,37b)が、非通電状態で閉じられた切換弁または非通電状態で閉じられた調整弁である、液圧式ブレーキシステム。
【請求項7】
請求項4に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、前記第2形式の遮断手段(28a〜28d)が、非通電状態で開かれた切換弁または非通電状態で開かれた調整弁である、液圧式ブレーキシステム。
【請求項8】
請求項8に記載の液圧式ブレーキシステムにおいて、前記容積調節ユニット(3)の作動による前記少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)における圧力調節が、容積調節ユニット(3)と少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)との少なくとも1つの直接的な液圧接続を介して、および/または前記力・圧力変換素子(2)による間接的な液圧接続を介して行われる、液圧式ブレーキシステム。
【請求項9】
少なくとも1つのホイール(6a〜6d)の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)と液圧接続した力・圧力変換素子(2)と、
少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)および力・圧力変換素子(2)と液圧接続した容積調節素子(3)と、
力・圧力変換素子(2)を操作するための操作ユニット(4)と
を備え、該操作ユニットが入力要素(9)を備える液圧式ブレーキシステムを作動するための方法において、
第1作動モードで、前記少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)内の圧力を前記容積調節ユニット(3)および前記操作ユニット(4)の作動によって調節し、容積調節ユニット(3)の作動時に操作素子(4)を作動することによって前記入力要素(9)の操作状態を保持することを特徴とする、液圧式ブレーキシステムを作動するための方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内の圧力と少なくとも1つの残りのホイールブレーキシリンダとを時系列で調節する、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、第2作動モードで、前記操作ユニット(4)の操作のみによって圧力を調節する、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、前記能動的な圧力形成、特に運転手とは無関係の圧力形成時に前記少なくとも1つのホイールブレーキシシリンダ(5a〜5d)で圧力調節を行う、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、前記少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)に配属された少なくとも1つのホイールのロックを防止するための圧力変更時に、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜d)における圧力調節を行う、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、液圧式ブレーキシステムが総ブレーキ装置の一部であり、総ブレーキ装置が液圧式ブレーキシステムの他に別の回生ブレーキシステムを備え、
液圧ブレーキ作用を回生ブレーキモーメントのブレーキ作用に適合させる際に少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(5a〜5d)における圧力調整を行う、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、液圧ブレーキ作用の適合によって、液圧ブレーキ作用と回生ブレーキ作用とを含む総ブレーキ作用を一定に保持する、方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法において、能動的な圧力形成時に、前記力・圧力変換素子(2)と、力・圧力変換素子(2)に配属されたブレーキ媒体リザーバ(40)との間のブレーキ媒体交換が抑制されるように、前記操作ユニット(4)を作動する、方法。
【請求項17】
請求項9から16までのいずれか一項に記載の方法を実施し、請求項1から8までのいずれか一項に記載の液圧式ブレーキシステムを少なくとも部分的に制御することを特徴とする、制御装置。
【請求項18】
請求項17に記載の制御装置において、方法を実施する場合および/または制御装置によって液圧式ブレーキシステムを制御する場合に、入力変数として、特に、
距離センサ201、および
圧力センサ202の信号および/またはデータ、ならびに
圧力適合のための要求に関する、
現在の運転状況に関する、および/または
回生ブレーキシステムの作動状態に関する信号および/またはデータが考慮され、出力変数として制御変数、信号および/またはデータが、特に
ブレーキブースタ(14)のモータ(16)を制御し、
少なくとも1つの弁(28a〜28d)を制御し、
少なくとも1つの弁(37a,37b)を制御し、および/または
容積調節ユニット(3)のモータ(23)を制御する
ために出力される、制御装置。
【請求項19】
請求項18に記載の制御装置および/または請求項1から8までのいずれか一項に記載の液圧式ブレーキシステムを備えることと特徴とする、車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−520344(P2013−520344A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553244(P2012−553244)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050973
【国際公開番号】WO2011/104056
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】