説明

液晶性有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイス

【課題】温度安定性が上昇し電荷の効率的な輸送が可能な新規有機半導体材料の提供。
【解決手段】剛直平板状の中心骨格周辺に置換基を有する液晶性化合物であって、例えば、下記式で示される化合物である有機半導体材料。


(Rは、C1〜24の直鎖または分岐のアルキル基等である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する分子が積層状に集積したカラムが六方晶状に配列していることを特徴とする液晶性有機半導体材料に関する
【背景技術】
【0002】
新しい剛直平板状の円盤型液晶(ディスコチック液晶)では、トリフェニレンを中心骨格に有する化合物において10−1cm/V・sという非常に大きな電荷移動度を与えることが報告され(D. Haarer et al, Nature, 371, 141(1994))、新しい有機半導体として興味が持たれている。
【0003】
ディスコチック液晶を有機半導体として用いる場合、カラムナー相、特にヘキサゴナルカラムナー相(Col相)は分子カラムが六方晶柱状に充填した配列をした液晶相であり、ディスコチック液晶を有機半導体に用いる場合好ましい液晶状態である。
【0004】
しかしながらたとえCol相を示す化合物であっても、ある特定の狭い温度範囲でしかCol相を示さず、またCol相は高次の液晶相であるが故、高い温度領域であると液晶状態から等方性液体(Iso)に状態が変化してしまい、高速な電荷輸送ができなくなっていた。
【0005】
一方棒状液晶に関する分野においては、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物は、フッ素原子の電気陰性度が大きく且つファンデルワールス半径が小さいという特徴から、液晶性を損なうことなく大きな誘電率異方性値を発現するといった数多い報告がされている。
【0006】
ディスコチック液晶においては特許文献1および非特許文献1において、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物が報告されている。
【特許文献1】国際公開94/29263号パンフレット
【非特許文献1】Mol.Cryst.Liq.Cryat.,1998,66,103−114 特許文献1での報告においては、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物がヘキサゴナルカラム相のみならず、カラムナー相を発現するとの記載は全く無く、またそれらを有機半導体材料として用いることを示唆する記述も全く無い。
【0007】
非特許文献1での報告においては、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物が示す液晶相はカラムナー相であるとの記載があるもののCol相であるとの記載は無く、その詳細なデータ(カラムナー相の種別、液晶相の温度範囲など)はほとんど示されていない。また、それらを有機半導体材料として用いることを示唆する記述は全くない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、温度安定性が上昇し、その温度範囲も広がることで電荷の効率的な輸送が可能となる新規な有機半導体材料を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、創意研究した結果、剛直平板状の中心骨格周辺に少なくとも1つの位置以上にフッ素で置き換えられたフェニレン環を導入させることにより積層状に集積したカラムが六方晶状に配列した構造、特にCol相を誘起し、その温度範囲が広がり、熱安定性が上昇し、幅広くかつ高い温度領域でも電荷の効率的な輸送が可能である事を見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記に示すとおり、含フッ素化フェニレン基を有する液晶性有機半導体材料を提供するものである。有機半導体材料(1)における末端基、環および結合基に関して好ましい例についても述べる。
[1]剛直平板状の中心骨格周辺に置換基を有する液晶性化合物からなる有機半導体材料において、該置換基がフッ素化されたフェニレン基を有し、その化合物が積層状に集積したカラムが六方晶状に配列していることを特徴とする有機半導体材料。
[2]中心骨格が共役π電子系からなることを特徴とする項[1]の有機半導体材料。
[3]共役π電子系がトリフェニレン、コロネン、ベンゾコロネン、フタロシアニン、ポリフィリン、トルキセン、ピラン、トリシクロキナゾリン、フェニルアセチレン、カリックスアレン、ピレン、ペリレン、オリゴチオフェン、デカサイクレンおよびルフィガロール骨格からなる群より選択される項[1]に記載の有機半導体材料。
[4]式(1)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる
項[1]に記載の有機半導体材料。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)においてRは独立して、水素、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキルであり;このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−または−SiH−で置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
「アルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−などで置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−などで置き換えられていてもよく」の句の意味を一例で示す。CH(CH−において任意の−CH−を−O−で、また任意の−(CH−を−CH=CH−で置き換えた基の例は、CH(CH)O−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、HC=CH−(CH−、CH−CH=CH−CH−、CH−CH=CH−O−などである。このように「任意の」語は、「区別なく選択された少なくとも一つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH−O−O−CH−よりも、酸素と酸素が隣接しないCH−O−CH−O−の方が好ましい。
【0012】
Rの例は、水素、フッ素、塩素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、アルキルチオアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ、シラアルキル、およびジシラアルキルである。少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたこれらの基も好ましい。好ましいハロゲンはフッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましいが、透明点を低下させたい場合は分岐である方が好ましい。また、Rが光学活性であるときは分岐である方が好ましい。
【0013】
好ましいRは、フッ素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキニル、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、ポリフルオロアルキル、およびポリフルオロアルコキシである。
さらに好ましいRは、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ポリフルオロアルキル、およびポリフルオロアルコキシである。
もっとも好ましいRはアルキル、アルコキシ、およびアルキルチオである。
【0014】
アルキルの具体的な例は、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1224、−C1327、−C1429、および−C1531である。アルコキシの具体的な例は、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13−OC19、−OCH(CH)C15、−OC1021、−OCH(CH)C17、−OC1123、−OCH(CH)C19、−OC1224、−OCH(CH)C1021、−OC1327、−OC1429、および−OC1531である。アルコキシアルキルの具体的な例は、−(CH−O−CH、−(CH−O−C、−(CH−O−CH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−C、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−C、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−C、および−(CH−O−CHである。
【0015】
アルケニルの具体的な例は、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、および−(CHCH=CHである。アルケニルオキシの具体的な例は、−OCHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−、−O(CHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、および−O(CHCH=CHである。アルキニルの具体的な例は、−C≡CC、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、および−C≡C(CHCHである。
【0016】
アルキルチオの具体的な例は、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SCH(CH)C15、−SC1021、−SCH(CH)C17、−SC1123、−SCH(CH)C19、−SC1224、−SCH(CH)C1021、−SC1327、−SC1429、および−SC1531である。アルキルチオアルキルの具体的な例は、−(CH−S−CH、−(CH−S−C、−(CH−S−CH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−C、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−C、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−C、および−(CH−S−CHである。
【0017】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの具体的な例は、−(CHCF、−(CHCHF、−(CH2)CFCF、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、および−CHCHF(CHCHである。少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHCF、−O(CHCHF、−O(CH2)CFCF、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、および−OCHCHF(CHCHである。少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられていてもよいアルケニルの具体的な例は、−CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−、−(CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、および−(CHCH=CFである。
【0018】
好ましいRの具体的な例は、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1224、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13−OC19、−OCH(CH)C15、−OC1021、−OCH(CH)C17、−OC1123、−OCH(CH)C19、−OC1224、−OCH(CH)C1021、−(CH−O−CH、−(CH−O−CH、−(CH−O−C、−(CH−O−C、−(CH−O−C、−(CH−O−CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SCH(CH)C15、−SC1021、−SCH(CH)C17、−SC1123、−SCH(CH)C19、−SC1224、−SCH(CH)C1021、−(CH−S−CH、−(CH−S−C、−(CH−S−CH、−(CH−S−C、−(CH−S−C、−(CH−S−C、−(CH−S−CH、−(CHCFCF、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−O(CHCFCF、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、および−OCHCHF(CHCHである。
【0019】
さらに好ましいRの具体的な例は、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13、−OC19、−OCH(CH)C15、−OC1021、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SCH(CH)C15、−SC1021、−SCH(CH)C17、−(CHCFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−O(CH2)CFCF、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、および−OCHCHF(CHCHである。
【0020】
最も好ましいRの具体的な例は、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13、−OC19、−OC1021、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SC1021、および−SCH(CH)C17である。
【0021】
Aは独立して、任意の水素がフッ素で置き換えられている1,4−フェニレンであり;
「任意の水素がフッ素で置き換えられている1,4−フェニレン」の例は、下記の環(5−1)〜(5−9)である。好ましい例は環(5−3)〜(5−9)である。より好ましい例は環(5−4)、(5−5)、(5−7)〜(5−9)である。最も好ましい例は環(5−9)である。
【0022】
【化2】

【0023】
Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CHCO−、−COCH−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、−(CHCH=CH−、−(CHCFO−、または−OCF(CH−である。−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0024】
好ましいZの例は、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、および−(CHCH=CH−である。
【0025】
さらに好ましいZの例は、単結合、−(CH−、−COO−、−CONH−、−CHO−、−CH=CH−、−C≡C−、−(CH−、−(CHO−、−(CHCOO−、および−(CHCONH−である。
【0026】
最も好ましいZの例は、単結合、−(CH−、−COO−、−CH=CH−、および−C≡C−である。
nは独立して1〜3の整数である。材料の物性に大きな差異はないので、材料(1)はH(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
[5]式(1)においてRが、水素、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜20の直鎖または分岐のチオアルケニルであり、そしてこれらの基において、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Aは独立して、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、または2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンであり;
Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である[4]の有機半導体材料。
【0027】
[6]式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる項[4]に記載の有機半導体用材料。
【0028】
【化3】

【0029】
式(2)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜23の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜23の直鎖または分岐のチオアルケニルであり、そしてこれらの基において、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−であり;
nは独立して1または2である。
[7]式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる項[4]に記載の有機半導体材料。
【0030】
【化4】

【0031】
式(3)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜23の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜23の直鎖または分岐のチオアルケニルであり、そしてこれらの基において、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−であり;
;Xは独立して水素またはフッ素であるが、Xがすべて水素またはフッ素であることはなく;nは独立して1または2である。
[8]式(4)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【0032】
【化5】

【0033】
式(4)においてRは独立して、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜20の直鎖または分岐のチオアルケニルであり;
Zは独立して単結合、−(CH−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−または−(CHCH=CH−である。
[9]式(5)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【0034】
【化6】

【0035】
式(5)においてRは独立して、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜20の直鎖または分岐のチオアルケニルであり;
Zは独立して、単結合、−(CH−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−であり;Xは独立して水素またはフッ素であるが、Xがすべて水素またはフッ素であることはない。
[10]式(6)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【0036】
【化7】

【0037】
式(6)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜7の直鎖のアルコキシ、炭素数9〜23の直鎖のアルコキシ、炭素数1〜23の分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐アルケニル、または炭素数1〜23の直鎖または分岐チオアルキルである。
[11]式(7)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【0038】
【化8】

【0039】
式(7)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜9の直鎖のアルコキシ、炭素数11〜23の直鎖のアルコキシ、炭素数1〜23の分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐アルケニル、または炭素数1〜23の直鎖または分岐チオアルキルであり;Xは独立して水素またはフッ素であるが、Xがすべて水素またはフッ素であることはない。
[12]項[1]〜[7]のいずれかに記載の有機半導体材料、または項[8]〜[11]のいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
[13]項[1]〜[7]のいずれかに記載の有機半導体材料、項[8]〜[11]のいずれかに記載の化合物、または項[12]に記載の組成物で構成される有機半導体薄膜。
[14]項[13]に記載の有機半導体薄膜および複数の電極で構成される有機半導体素子。
[15]ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極および半導体層を含むトランジスタであって、該半導体層が項[13]に記載の有機半導体膜で構成されるトランジスタ。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、剛直平板状の中心骨格周辺に置換基を有する液晶性化合物が積層状に集積したカラムが六方晶状に配列したカラムナー相の温度安定性が上昇し、その温度範囲も広がることで、より広い使用条件で電荷の効率的な輸送が可能となる有機半導体材料を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。式(1)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる有機半導体材料を「有機半導体材料(1)」または「材料(1)」と略すことがある。
【0042】
第一に本発明の有機半導体材料(1)をさらに説明する。材料(1)は、末端基、環構造および結合基を適切に選択することにより、液晶相の相転移温度、温度範囲を調整することが可能であり、故に有機半導体材料としての任意の電荷移動度、並びに電荷移動可能な温度範囲を適切に調整することが可能である。末端基R、環A、結合基Zの種類が材料(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0043】
Rが直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広い。Rが分岐鎖であるときは透明点が低下し、組成物にしたときに他の液晶有機半導体材料との相溶性が良い。またRが光学活性であるときはカラム内にらせん周期を発生させることができる。
【0044】
環Aが3,5−テトラフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンであるときはCol相の温度範囲は幅広くその透明点は高い。
【0045】
結合基Zが、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCO−、または−COCHである時はその透明点は高く、−CONH−、−NHCO−、−CH=CH−、−C≡C−、または−CF=CF−である時はさらに透明点が高い。結合基Zが、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、−(CHCH=CH−、−(CHCFO−、または−OCF(CH−である時は透明点を低く調整することができる。
【0046】
nの数が1から3と大きくなるにつれその透明点は高い。以上のように末端基、環および結合基の種類を適当に選択することによって目的の物性を有する材料を得ることが出来る。
【0047】
本発明の化合物が積層状に集積したカラムが六方晶状に配列した状態、特にCol相を発現することは、有機半導体材料として用いる場合極めて好ましい。しかし、実際有機半導体デバイスへの応用を考えた場合、広い温度範囲にわたって六方晶状に配列した状態を示す必要がある。以上の観点より、幅広い温度範囲でカラムが六方晶状に配列する本発明の有機半導体材料は優れている。
【0048】
なお、本明細書において、「積層状に集積したカラムが六方晶状に配列」するとは、剛直平板状の中心骨格周辺に置換基を有する液晶性化合物が積層状に集積したカラムが六方晶状に配列することを意味し、液晶だけでなくメソフェーズ、ガラス固体相、結晶固体相であってもよい、また、液晶は、ディスコティック液晶が好ましい。
【0049】
ディスコチック液晶とは平面上に広がりを持つ分子によって発現する液晶相であり、環状構造を有する母核に数本の側鎖が結合した構造を採るのが一般的である。母核としては、たとえばベンゼン、トリフェニレン、ポルフィリン、フタロシアニン、シクロヘキサン等の構造が挙げられる。本発明においては材料または化合物が使用される。これらの化合物は1種単独で使用することも、2種以上混合して使用することも可能である。
【0050】
さらに上記材料以外に必要に応じて各種添加剤として、たとえば酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、滑剤、溶媒、老化防止剤、濡れ性改良材等を必要に応じて配合することができる。
【0051】
有機半導体材料としては、Col相における高速な電荷移動がカラム軸に沿った方向、つまりディスク状分子の配向軸と平行であり且つディスク状分子の配向軸と電極が垂直方向であることが好ましい。ここで垂直方向とは垂直から±45度に範囲を指す。
【0052】
本発明の材料を加熱融解させ、融解液とすることによって材料または化合物を基板上に塗布または印刷することができる。また、この融解液を用いると毛細管現象を利用して狭間隔のセルに材料を封入することが出来、ノズルを使った滴下による印刷方法も利用することが出来る。他方、この融解液をペーストとして用いることにより、任意の厚さを持つ有機半導体厚膜を作成することが出来る。
【0053】
本発明の材料を溶かすことが出来る有機溶媒としては種々の有機溶媒が挙げられる。使用する有機溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、乳酸エチル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ブチルセルソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0054】
本発明の材料は前記有機溶媒に極めて良く溶解するので、高濃度溶液を得ることが出来る。従って、この溶液を基板上に塗布または印刷することにより、有機半導体薄膜を作成することが出来る。有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜の厚さは、通常10〜1000ナノメートルであり、溶液中の材料の濃度は、0.1〜10重量%である。1,000ナノメートルより厚い有機半導体薄膜を作成するときには、融解した材料をそのまま使用することが好ましい。
【0055】
本発明の材料およびその溶液を塗布または印刷できる基板としては種々の基板が挙げられる。使用する基板としては、例えば、ガラス基板、金や銅や銀等の金属基板、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板、トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエステル基板、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板などが挙げられる。
【0056】
本発明の材料およびそれらの溶液を塗布する方法としては種々の方法が挙げられ、例えばスピンコート法、ディップコート法、ブレード法などが挙げられる。
【0057】
本発明の材料およびそれらの溶液を印刷する方法としては種々の方法が挙げられ、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、平版印刷、凹版印刷、凸版印刷などが挙げられる。なかでも材料の溶液をそのままインクとして用いたプリンタにより行うインクジェット印刷は、簡易な方法であり好ましい。
【0058】
本発明の材料は適度に低い透明点と有機溶媒に対する高い溶解性を有するため、キャスト法または印刷法等の簡便な製膜工程を利用することが出来るので、材料が有する本来の電荷移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜または有機半導体素子を製造することが出来る。
【0059】
本発明の材料(1)の一般的な製造方法について説明する。材料(1)は、第4版、実験化学講座(丸善)、オーガニックシンセシス(Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニックリアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、またはその他の文献に記載されている方法を適宜選択し、組み合わせることにより合成できる。トリフェニレン環は文献(N. Herbert, et al, Synthesis, 1994, 5,477)に記載の方法により、コロネン環は文献(P. M. Donovan et al, Journal of the American Chemical Society, 2004, 126(10), 3108)記載の方法により、ベンゾコロネン環は文献(B, Alameddine et al, Chemistry of Materials, 2005, 17(19), 4798)記載の方法により、フタロシアニン環は文献(L. Pui-Chi et al, Synthesis, 2005, 7, 1141)記載の方法により、ポルフィリン環は文献(S. Neya et al, Journal of Heterocyclic Chemistry, 1993, 30(2), 549)記載の方法により、トルキセン環は文献(K. Jacob et al, Europian Journal of Organic Chemistry, 2000, 11, 2047)記載の方法により、ピラン環は文献(G, Mihai et al, Anorganische Chemie Organische Chemie, 1986,41B(4), 502)記載の方法にて、トリシクロキナゾリン環は文献(E, Keinan et al, DE4340408)記載の方法にて、フェニルアセチレン環は文献(K. Kobayashi et al, Journal of Organic Chemistry, 2004, 69(7), 2487)記載の方法にて、カリックスアレン環は文献(C. D. Gutsche et al, Jornal of Organic Chemistry, 1986, 51(5), 742)記載の方法により、ピレン環は文献(M. Tashiro et al, Journal of Organic Chemistry, 1987, 52(15), 3196)記載の方法にて、ペリレン環は文献(M. Philippe et al, Synthesis, 1988, 11, 894)記載の方法により、オリゴチオフェン環は文献(A. Tabet et al, Organic Letters, 2003, 5(11), 1817)記載の方法にて、デカサイクレン環は文献(B. Igrlesias et al, Synlett, 2002, 3, 486)記載の方法にて、ルフィガロール環は、文献(K. S. Raja et al, Chemistry Materials, 1997, 9, 1630)記載の方法にて合成できる。結合基Zの生成方法の例を項(I)〜項(X)で述べる。その前に生成方法のスキームを示す。このスキームにおいて、MSGおよびMSGは有機化学基である。これらのうちの一つはトリフェニレン環を含む有機化学基である。(1−1)から(1−10)は、本発明の材料に相当する。
【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸誘導体(7)と公知の方法で合成される(8)とを、炭酸塩水溶液と触媒、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4)の存在下で反応させることにより、材料(1−1)を合成する。この材料(1−1)は、公知の方法で合成される(9)にn−ブチルリチウム(n-BuLi)を作用させ、塩化亜鉛、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(PdCl2(PPh3)2)のような触媒、および(8)を順次作用させることにより合成することもできる。
(II)−COO−と−OCO−の生成
(9)にブチルリチウムを作用させてリチオ化物に誘導した後、二酸化炭素を作用させてカルボン酸(10)を得る。これと、公知の方法で合成されるアルコール(11)またはフェノール(12)とを脱水縮合させて−COO−を有する材料(1−2)を合成する。この方法によって−OCO−を有する材料も合成することができる。
(III)−CFO−と−OCF−の生成
材料(1−2)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して(12)に誘導する。この化合物をフッ化水素ピリジン錯体(M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827)またはジエチルアミノサルファトリフルオリド(William H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768)でフッ素化し、−CFO−を有する材料(1−3)を合成する。この方法によって−OCF−を有する化合物も合成することができる。
(IV)−CH=CH−の生成
公知の方法で合成される(13)にカリウムt−ブトキシド(t-BuOK)のような塩基を作用させてリンイリドを発生させる。一方、(9)にブチルリチウムを作用させてリチオ化物へ誘導した後、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミドを作用させてアルデヒド(14)を得る。これをリンイリドに反応させて材料(1−4)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、公知の方法によりトランス体に異性化する。
(V)−(CH−の生成
材料(1−4)を触媒、例えばパラジウムカーボン(Pd-C)の存在下、接触水素化することにより、材料(1−5)を合成する。
(VI)−(CH−の生成
(13)の代わりに(15)を用い、方法(IV)に従って−CH=CH−を生成させ、さらに接触水素化して材料(1−6)を合成する。
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、(9)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを作用させたのち、塩基性条件下で脱保護して(16)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、(16)を(8)と反応させることにより材料(1−7)を合成する。
(VIII)−CF=CF−の生成
(9)にブチルリチウムを作用させてリチオ化物へ誘導した後、テトラフルオロエチレンを作用させて(17)を得る。(8)にn−ブチルリチウムを作用させて誘導されるリチオ化物と(17)とを反応させることにより、材料(1−8)を合成する。
(IX)−CHO−または−OCH−の生成
(14)に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの還元剤を作用させて(18)を得る。これを臭化水素酸などのハロゲン化剤で(19)に誘導する。炭酸カリウムなどの存在下で、(19)を(11)と反応させて材料(1−9)を合成する。
(X)−CONH−または−NHCO−の生成
ニトロ化合物(20)を接触水素化など還元させることによってアミン(21)を得る。これと(10)とを脱水縮合させることによって材料(1−10)を合成する。
【0064】
本発明の材料を用いて製造できる有機半導体薄膜および有機半導体素子について説明する。
【0065】
有機半導体素子を製造する際、印刷によりパターニングを行うことが好ましく、さらに印刷には本発明の材料の高濃度溶液または融解液を用いるのが好ましい。高濃度溶液または融解液を用いると、インクジェット印刷、マスク印刷、スクリーン印刷およびオフセット印刷を活用でき、便利である。また、印刷による有機半導体素子の製造は、回路の単純化、製造効率の向上および素子の低廉化・軽量化に寄与する。前述の通り、加熱や真空プロセスの必要性がなく流れ作業によって製造できるので、低コスト化および工程変更への対応性を増すことに寄与する。こういった観点から、有機溶媒への極めて高い溶解性を示す材料(1)は優れている。
【0066】
本発明の材料は、合成有機高分子を組み合わせて、樹脂組成物(ブレンド樹脂)として使用することができる。ブレンド樹脂における本発明の化合物の含有量は、1重量%〜99重量%、好ましくは10重量%〜99重量%、より好ましくは50重量%〜99重量%である。
【0067】
上記合成有機高分子としては、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、エンジニアリングプラスチックス、導電性高分子が挙げられる。具体的にはポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリレンビニレンなどがある。
【0068】
本発明の有機半導体薄膜を構成要素の一つとし、整流機能または信号処理機能を有する素子として用い、他の半導体性を有する有機物または無機物と組み合わせることによって、整流素子または電流駆動型トランジスタ、スイッチング動作を行うサイクリスタ・トライアック・ダイアックなどの素子を構成することができる。また、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子が有用である。例えば液晶表示素子や電子ペーパーなどに使用することができる。具体的には可とう性を示す高分子体でできた絶縁基板の上に、本発明の有機半導体薄膜と、この薄膜を機能させる構成要素を含む1つ以上の層とを形成し、電子ペーパーやICカードタグなどのフレキシブルなシート状表示装置または固有識別符号応答装置を作成することができる。
フレキシブルなシート状表示素子は、本発明の有機半導体薄膜を可とう性のある高分子基板上に形成した表示素子を用いることで提供する。この可とう性の効果により、衣類のポケットや財布などに入れて携帯することができる表示素子が実現される。
【0069】
固有識別符号応答装置は、特定周波数または特定符号を持つ電磁波に反応し、固有識別符号を含む電磁波を返答するものである。固有識別符号応答装置は、例えば、再利用可能な乗車券または会員証、代金の決済手段、荷物または商品の識別用シール、荷札または切手の役割、会社または行政サービスなどにおいて、高い確率で書類または個人を識別する手段として用いられる。
【0070】
固有識別符号応答装置は、ガラス基板または可とう性のある高分子基板の上に、信号に同調して受信するための空中線と、受信電力で動作し識別信号を返信する半導体素子とによって構成される。
【0071】
本発明の有機半導体素子は電力増幅素子や信号制御素子として用いられるが、その具体的例として、断面構造を有する電界効果型トランジスタ(FET)がある。FETを作成するには、まずガラス基板やドレイン電極を形成する。必要に応じて絶縁層を積層してもよい。その上に、材料(1)の溶液または融解液を印刷、塗布または滴下することによって有機半導体薄膜を形成し、さらに必要に応じて絶縁膜を形成し、その上にゲート電極を形成すればよい。
【0072】
このFETは、液晶表示素子やEL素子としても用いることができる。また材料(1)の薄膜を含むFET測定用セルを作成し、ゲート電極を変化させながらソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線を測定すると、ドレイン電極/ゲート電極曲線から電界効果移動度を求めることができる。さらにゲート電極によるドレイン電極のon/off動作を観測することもできる。
【0073】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。
【0074】
[測定方法]
相転移点は、TA−Instrument社製、示差走査熱量計(DSC:2920 MDSC)を用い、5℃/分の速度で測定した。相の同定は温度制御装置(Mettler,FP80HT)付き偏光顕微鏡(Olympus、BH−2)に試料を置き、1℃/分の速度で加熱し、試料の相変化を光学組織観察にて決定した。1H−NMRは、日本電子(株)製の500MHz核磁気共鳴装置(JNM−ECA500)を用いて測定した。
【0075】
[測定方法]
結晶はCryと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれCryまたはCryと表した。ヘキサゴナルカラムナー相(六方晶柱状相)はColと表した。液体(アイソトロピック)はIsoと表した。レクタアンギュラーカラムナー相(短形柱状相)Dと表した。チルトカラムナー相はDと表した。ディスコチックネマチック相はNと表した。未同定相に関してはX、X、XまたはXと表記した。等方性液体となる前に分解し、等方性液体転移温度が確認出来ない場合はDec.と表記した。相転移温度の表記として、「Cry 133 Col 308 Iso」とは、結晶からヘキサゴナルカラムナー相への転移温度が133℃であり、ヘキサゴナルカラムナー相から液体への転移温度が308℃であることを示す。他の表記も同様である。
実施例1
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ブトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(A)の合成
【0076】
【化12】

【0077】
第1段
メチルエチルケトン(MEK)100mLに溶解させた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(1)20.0gへ炭酸カリウム18.3g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)4.26g、MEK50mLに溶解させたブロモブタン18.1gを加え、4時間加熱還流させた。冷却した後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し24.4g(110mmol)の4−ブトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(2)を得た。
第2段
テトラヒドロフラン(THF)250mLに溶解させた24.4gの化合物(2)をアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液82mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い14.6g(54.8mmol)の4−ブトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸(3)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(3)3.26g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたN,N−ジメチルカルボジイミド(DCC)2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ブトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(A)2.10g(1.15mmol)を白色固体として得た。
[相転移温度(℃)]
Cry 191 X 232 X 272 X 311 X 337 Iso
H−NMR(CDCl:δ ppm)7.87(S,6H)、4.33(t、12H)、1.82(m、12H)、1.57(m、12H)、1.04(t、18H).
実施例2
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ヘキシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(B)の合成
【0078】
【化13】

【0079】
第1段
MEK100mLに溶解させた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(1)20.0gへ炭酸カリウム18.3g、TBAB4.26g、MEK50mLに溶解させたブロモヘキサン21.9gを加え、4時間加熱還流させた。冷却した後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し27.5g(110mmol)の4−ヘキシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(4)を得た。
第2段
THF250mLに溶解させた化合物(4)27.5gをアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液82mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い25.9g(88mmol)の4−ヘキシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸(5)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(5)2.35g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ヘキシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(B)1.40g(0.71mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 130 Cry 157 Col 301 Iso
1H−NMR(CDCl:δ ppm)7.97(S,6H)、4.34(t、12H)、1.84(m、12H)、1.52(m、12H)、1.41−1.38(m、24H)、0.97(t、18H).
実施例3
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ヘプチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(C)の合成
【0080】
【化14】

【0081】
第1段
MEK100mLに溶解させた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(1)20.0gへ炭酸カリウム18.3g、TBAB4.26g、MEK50mLに溶解させたブロモヘプタン23.7gを加え、4時間加熱還流させた。冷却した後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し31.8g(120.4mmol)の4−ヘプチルルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(6)を得た。
第2段
THF250mLに溶解させた化合物(6)31.8gをアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液93mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い12.9g(41mmol)の4−ヘプチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸(7)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(7)7.76g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ヘプチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(C)2.02g(0.98mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 142 Col 307 Iso
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.01(S,6H)、4.34(t、12H)、1.85(m、12H)、1.51(m、12H)、1.44−1.36(m、36H)、0.94(t、18H).
実施例4
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(D)の合成
【0082】
【化15】

【0083】
第1段
MEK100mLに溶解させた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(1)20.0gへ炭酸カリウム18.3g、TBAB4.26g、MEK50mLに溶解させたブロモオクタン25.6gを加え、4時間加熱還流させた。冷却した後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し33.4g(120mmol)の4−オクチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(8)を得た。
第2段
THF250mLに溶解させた化合物(8)33.4gをアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液90mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い21.4g(66mmol)の4−オクチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸(9)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(9)3.94g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し
た後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(D)1.44g(0.67mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 133 Col 308 Iso
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.00(S,6H)、4.34(t、12H)、1.85(m、12H)、1.53(m、12H)、1.39−1.35(m、48H)、0.94(t、18H).
実施例5
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−デシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(E)の合成
【0084】
【化16】

【0085】
第1段
MEK100mLに溶解させた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(1)20.0gへ炭酸カリウム18.3g、TBAB4.26g、MEK50mLに溶解させたブロモデカン32.0gを加え、4時間加熱還流させた。冷却した後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し36.8g(120mmol)の4−デシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(10)を得た。
第2段
THF250mLに溶解させた化合物(10)36.8gをアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液100mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い26.5g(76mmol)の4−デシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸(11)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(11)4.29g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−デシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(E)1.00g(0.43mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 109 Col 302 Iso
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.07(S,6H)、4.34(t、12H)、1.84(m、12H)、1.51(m、12H)、1.40−1.31(m、72H)、0.91(t、18H).
実施例6
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ドデシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(F)の合成
【0086】
【化17】

【0087】
第1段
MEK100mLに溶解させた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(1)20.0gへ炭酸カリウム18.3g、TBAB4.26g、MEK50mLに溶解させたブロモドデカン33.0gを加え、4時間加熱還流させた。冷却後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し40.1g(120mmol)の4−ドデシルオキシオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(12)を得た。
第2段
THF250mLに溶解させた化合物(12)40.1gをアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液95mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い37.5g(99mmol)の4−ドデシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸(13)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(13)4.63g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−ドデシルオキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(F)1.63g(0.66mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 79 Col 288 Iso
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.06(S,6H)、4.34(t、12H)、1.84(m、12H)、1.51(m、12H)、1.40−1.30(m、96H)、0.90(t、18H).
実施例7
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−2−フルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(G)の合成
【0088】
【化18】

【0089】
第1段
MEK80mLに溶解させた4−ブロモ−2−フルオロフェノール(14)15.0gへ炭酸カリウム12.0g、TBAB2.79g、MEK40mLに溶解させたブロモオクタン16.7gを加え、4時間加熱還流させた。冷却後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し23.8g(78.6mmol)の4−ブロモ−2−フルオロオクチルオキシベンゼン(15)を得た。
第2段
アルゴン雰囲気下乾燥させたマグネシウム2.3gへTHF200mLに溶解させた化合物(15)23.8gを少量滴下し、還流が開始したことを確認した後ゆっくりと滴下し、滴下終了後1時間加熱還流を行った。その後アルゴン雰囲気下−20℃に冷却し、そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い16.4g(61.0mmol)の4−オクチルオキシ−2−フルオロ安息香酸(16)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(16)4.38g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−3−フルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(G)1.41g(0.77mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 56.4 M 196.9 M 210.2 M 235.5 M >350 Dec.
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.01(S,6H)、7.64(d,6H)、7.48(dd,6H)、6.65(t,6H)、3.96(t、12H)、1.81(m、12H)、1.45(m、12H)、1.34−1.30(m、48H)、0.89(t、18H).
実施例8
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−2、6−ジフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(H)の合成
【0090】
【化19】

【0091】
第1段
MEK100mLに溶解させた3,5−ジフルオロフェノール(17)15.0gへ炭酸カリウム17.5g、TBAB4.09g、MEK50mLに溶解させたブロモオクタン24.5gを加え、4時間加熱還流させた。冷却後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し27.9g(115mmol)の3,5−ジフルオロオクチルオキシベンゼン(18)を得た。
第2段
THF250mLに溶解させた化合物(18)27.9gをアルゴン雰囲気下−78℃に冷却し、そこへ1.6M/Ln−ブチルリチウムヘキサン溶液88mLを滴下し同温にて2時間撹拌した。そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い17.9g(62.4mmol)の4−オクチルオキシ−2,6−ジフルオロ安息香酸(19)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(19)4.67g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−2,6−ジフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(H)1.50g(0.78mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 53.2 Cry 115.5 Col 176.2 Iso
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.51(S,6H)、6.49(d,6H)、3.98(t、12H)、1.80(m、12H)、1.45(m、12H)、1.35−1.30(m、48H)、0.90(t、18H).
実施例9
2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−3,5−ジフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(I)の合成
【0092】
【化20】

【0093】
第1段
MEK80mLに溶解させた4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェノール(20)20.0gへ炭酸カリウム13.2g、TBAB3.09g、MEK40mLに溶解させたブロモオクタン18.5gを加え、4時間加熱還流させた。冷却後水を加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し25.3g(79.0mmol)の4−ブロモ−2,6−ジフルオロオクチルオキシベンゼン(21)を得た。
第2段
アルゴン雰囲気下乾燥させたマグネシウム2.3gへTHF200mLに溶解させた化合物(15)23.8gを少量滴下し、還流が開始したことを確認した後ゆっくりと滴下し、滴下終了後1時間加熱還流を行った。その後アルゴン雰囲気下−20℃に冷却し、そこへ砕いたドライアイスを適当量加えた後室温まで昇温し終夜撹拌した。氷冷下3N−塩酸200mLを加え有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後ヘキサンにて再結晶を行い8.98g(31.4mmol)の4−オクチルオキシ−3,5−ジフルオロ安息香酸(22)を得た。
第3段
ジクロロメタン60mLに溶解させた化合物(22)4.67g、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン0.44g、DMAP1.50gを室温にて1時間撹拌した後、氷冷下ジクロロメタン20mLに溶解させたDCC2.53gを加え氷冷下5分撹拌の後、室温にて終夜撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ別し、ろ液を3N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン/エタノールで再結晶を行い、2,3,4,6,7,10,11−ヘキサキス(4−オクチルオキシ−2,5−ジフルオロベンゾイルオキシ)トリフェニレン(I)1.75g(0.91mmol)を白色固体として得た。
相転移温度(℃):Cry 14.8 Cry 139.8 Col >350 Dec.
1H−NMR(CDCl:δ ppm)8.06(S,6H)、7.38(d,6H)、4.19(t、12H)、1.76(m、12H)、1.45(m、12H)、1.34−1.30(m、48H)、0.90(t、18H).
実施例10
実施例1〜実施例9の方法、さらに掲載した合成法を元に下記の化合物を合成する。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
実施例11
化合物(F)のキャリア移動度の測定
実施例6にて合成可能である化合物(F)の薄膜層を含むTOF法測定セルを作成した。まず、ITO電極付きガラス基板にスペーサーを散布した。その上にもう一枚のITO電極付きガラス基板を合わせて接着し、TOF法測定セルを作成した。セルを
288℃になるように加熱し、2枚の基板間の間隙に化合物(F)の結晶を接触させると溶解し、毛細管現象によってセル間に素早く拡散した。セルを室温に戻したところ化合物(F)はセル内で固化した。セルの模式概略図を図1に示す。
セルに導線を取り付け、温度可変可能なホットステージにセットした。測定セルに電圧を印可し、窒素レーザー(波長:337nm)のナノ秒パルスをサンプルに照射し、発生した電流の時間変化をオシロスコープにて計測した。
Harvey Scher and Elliott W. Montroll,Phys. Rev.B,12,2455(1975)の方法を用い、電流の時間変化波形を測定し、その波形から、キャリアがレーザーパルス光を照射した電極から対向電極に到達する時間(t)を求めた。キャリアが対向電極まで到達する時間(t)、印可電圧並びに電極間隔からキャリア移動度を算出した。
化合物(F)がCol相を示す180℃における正孔移動度は、電極間隔7.98μm、印可電圧40Vにおいて1.4×10−3 cm/V・Sであった。
比較例1
実施例2〜5にて合成した本発明の材料(B)〜(E)と文献(N. H. Tinh et al, Molecular Crystal Liquid Crystal, 1981, 68, 101)に報告されているフッ素化されたベンゼン環を有しない類似の構造である化合物との物性値の比較を行った。
【0097】
その結果、従来報告されているフッ素化されたベンゼン環を有しない化合物はCol相を発現せず、発現する液晶相の温度範囲は100℃以下である。それに比べ本発明の材料はCol相を発現し、Col相の温度範囲は幅広く(C13O:144℃、C15O:165℃、C17O:175℃、C1021O:193℃)、フッ素化したフェニレン環を導入したことによって、Col相の温度範囲が大きく広がったことが比較より確認された。
【0098】
フッ素化されたベンゼン環を有しない化合物は末端鎖が長くなるにつれ透明点は低下しているが(C13O:274℃、C15O:253℃、C17O:244℃、C1021O:212℃)、本発明の材料の透明点は末端鎖の鎖長に依存せずいずれも高く(C13O:301℃、C15O:307℃、C17O:308℃、C1021O:302℃)、フッ素化したフェニレン環を導入したことによって、Col相の熱的安定性が大きく向上したことが比較より確認された。
【0099】
以上の結果により、フッ素化したフェニレン環を導入したことによって、Col相の温度範囲が大きく広がり、且つ熱的安定性が大きく向上したことが比較より確認された。
【0100】
【化21】

【0101】
【化22】

【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】セルの模式概略図を図1に示す
【符号の説明】
【0103】
1. ガラス基板
2. ITO電極
3. 電荷輸送材料(液晶化合物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛直平板状の中心骨格周辺に置換基を有する液晶性化合物からなる有機半導体材料において、該置換基がフッ素化されたフェニレン基を有し、その化合物が積層状に集積したカラムが六方晶状に配列していることを特徴とする有機半導体材料。
【請求項2】
中心骨格が共役π電子系からなることを特徴とする請求項1の有機半導体材料。
【請求項3】
共役π電子系が、トリフェニレン、コロネン、ベンゾコロネン、フタロシアニン、ポリフィリン、トルキセン、ピラン、トリシクロキナゾリン、フェニルアセチレン、カリックスアレン、ピレン、ペリレン、オリゴチオフェン、デカサイクレンおよびルフィガロール骨格からなる群より選択される請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
式(1)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる請求項1に記載の有機半導体材料。
【化1】

式(1)においてRは独立して、水素、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキルであり;このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Aは独立して、任意の水素がフッ素で置き換えられている1,4−フェニレンであり;
Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CHCO−、−COCH−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、−(CHCH=CH−、−(CHCFO−、または−OCF(CH−であり;
nは独立して1〜3の整数である。
【請求項5】
式(1)においてRが、水素、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜20の直鎖または分岐のチオアルケニルであり、そしてこれらの基において、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Aは独立して、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、または2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンであり;
Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である請求項4の有機半導体材料。
【請求項6】
式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる請求項4に記載の有機半導体材料。
【化2】

式(2)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜23の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜23の直鎖または分岐のチオアルケニルであり、そしてこれらの基において、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−であり;
nは独立して1または2である。
【請求項7】
式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる請求項4に記載の有機半導体材料。
【化3】

式(3)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜23の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜24の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜23の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜23の直鎖または分岐のチオアルケニルであり、そしてこれらの基において、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−であり;
;Xは独立して水素またはフッ素であるが、Xがすべて水素またはフッ素であることはなく;nは独立して1または2である。
【請求項8】
式(4)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【化4】

式(4)においてRは独立して、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜20の直鎖または分岐のチオアルケニルであり;
Zは独立して、単結合、−(CH−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である。
【請求項9】
式(5)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【化5】

式(5)においてRは独立して、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルオキシ、炭素数1〜20の直鎖または分岐のチオアルキル、または炭素数2〜20の直鎖または分岐のチオアルケニルであり;
Zは独立して、単結合、−(CH−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−であり;Xは独立して水素またはフッ素であるが、Xがすべて水素またはフッ素であることはない。
【請求項10】
式(6)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【化6】

式(6)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜7の直鎖のアルコキシ、炭素数9〜23の直鎖のアルコキシ、炭素数1〜23の分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐アルケニル、または炭素数1〜23の直鎖または分岐チオアルキルである。
【請求項11】
式(7)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物。
【化7】

式(7)においてRは、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル、炭素数1〜9の直鎖のアルコキシ、炭素数11〜23の直鎖のアルコキシ、炭素数1〜23の分岐のアルコキシ、炭素数2〜24の直鎖または分岐アルケニル、または炭素数1〜23の直鎖または分岐チオアルキルであり;Xは独立して水素またはフッ素であるが、Xがすべて水素またはフッ素であることはない。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機半導体材料、または請求項8〜11のいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機半導体材料、請求項8〜11のいずれかに記載の化合物、または請求項12に記載の組成物で構成される有機半導体薄膜。
【請求項14】
請求項13に記載の有機半導体薄膜および複数の電極で構成される有機半導体素子。
【請求項15】
ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極、および半導体層を含むトランジスタであって、該半導体層が請求項13に記載の有機半導体膜で構成されるトランジスタ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−85289(P2008−85289A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58990(P2007−58990)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】