説明

液晶表示装置及び光制御素子

【課題】モアレなどの表示ムラを低減することができ、明るく、高解像度の画像を表示可能とする。
【解決手段】実施形態に係る液晶表示装置1は、発光素子9,10から出射された光が光制御素子11を介して液晶パネル2を通過する。光制御素子11は、複数の三角柱状プリズム14を、当該三角柱状プリズム14の長手方向が互いに平行となるように配列した第1の面と、複数の半円柱状レンズ14を、複数の三角柱状プリズム14と背中合わせとなり当該半円柱状レンズ14の長手方向が互いに平行となるように配列した第2の面とを備える一体樹脂シートである。複数の三角柱状プリズム14の長手方向と複数の半円柱状レンズ13の長手方向とは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、及び3次元画像表示用の光制御素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶表示装置の液晶セルは、例えばガラス基板などのような透明基板によって液晶層を挟持する構成を持つ。液晶表示装置は、この液晶セルの表及び裏に偏光板及び位相差板を貼り付けた液晶パネルを備える。第1の例における液晶表示装置は、観察者と反対側の液晶パネル裏面に、光源としてバックライトを備える。第2の例における液晶表示装置は、バックライトに加えて室内光など外部光源を利用する。3次元画像表示可能な液晶表示装置及び視角制御可能な液晶表示装置において、バックライト又は外部光源を利用する液晶パネルは、液晶パネル表面からの光の出射角をその表示目的に応じて制御する。
【0003】
3次元画像表示可能な液晶表示装置又はディスプレイとして、種々の方式が知られている。これらの方式は、眼鏡を利用する方式、眼鏡を使用しない方式を含む。眼鏡を利用する方式は、色の違いを利用したアナグリフ方式、又は偏光を利用した偏光眼鏡方式などを含む。眼鏡を利用する方式では、3次元視聴時に観察者が専用の眼鏡をかける必要があり、煩わしい。近年においては、眼鏡を必要としない方式の要望が強くなっている。
【0004】
液晶パネルから単数又は複数の観察者(以下、それぞれ「2眼式」、「多眼式」と表現する場合がある)に対して、光を角度調整して出射するために、液晶パネルの表面又は裏面に光制御素子を配設する技術が検討されている。
【0005】
眼鏡を必要としない3次元画像表示の液晶表示装置に用いられている光制御素子は、概ね3種の方式に分けられる。
【0006】
第1は、光学レンズを2次元配列し、規則的な屈折を利用するレンチキュラレンズ方式である。レンチキュラレンズは、透明樹脂などでシート状に加工され、液晶表示装置の表面又は裏面に貼付されて用いられる。特許文献1(特許第4010564号公報)、特許文献2(特許第4213226号公報)にレンチキュラレンズ(レンチキュラスクリーン)を用いた3次元画像表示技術が開示されている。凸状のレンズを具備したプリズムシートを備えた技術は、特許文献3〜9(特開2010−506214号公報,特開2010−524047号公報,特開2010−541019号公報,特開2010−541020号公報,特許第4655465号公報,特許第3930021号公報,特許第3585781号公報)に開示されている。
【0007】
第2は、視差バリアと称される遮光性のスリットを一方向に2次元配列し、この2次元配列を利用して、右目用と左目用の出射光を発するパララックスバリア方式である。特許文献10(特開2007−11254号公報)、特許文献11(特開2009−139947号公報)、特許文献12(特開2010−210982号公報)に、視差バリアを用いた3次元画像表示技術が開示されている。
【0008】
第3は、例えば電圧印加などによって屈折率又は位相軸が可変の光学素子(例えば液晶又は強誘電体圧電素子など)を用いて、3次元画像に関わる出射光を制御するフレキシブル・レンズアイ方式である。液晶レンズアイを用いた技術は、特許文献13(特開2000−102038号公報)、特許文献14(特許第3940725号公報)に開示されている。
【0009】
さらに、プリズムシートを1枚用いて3次元画像表示に適用する技術は、特許文献9に開示されている。なお、プリズム部を有する2枚の集光シートの一方を時計方向に5〜85°、他方を反時計方向に5〜85°の角度で重ね合わせる技術が、特許文献15(特許第2723414号公報)に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4010564号公報
【特許文献2】特許第4213226号公報
【特許文献3】特開2010−506214号公報
【特許文献4】特開2010−524047号公報
【特許文献5】特開2010−541019号公報
【特許文献6】特開2010−541020号公報
【特許文献7】特許第4655465号公報
【特許文献8】特許第3930021号公報
【特許文献9】特許第3585781号公報
【特許文献10】特開2007−11254号公報
【特許文献11】特開2009−139947号公報
【特許文献12】特開2010−210982号公報
【特許文献13】特開2000−102038号公報
【特許文献14】特許第3940725号公報
【特許文献15】特許第3585781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1〜9のようなレンチキュラレンズ方式において、特許文献1に開示される技術は、表示素子(画素)を平行四辺形又は三角形状に形成し、あるいは表示素子をオフセットで配置して、レンチキュラースクリーンに対して実質的に画素配列との角度を持たせる技術である。この特許文献1は、特許文献2と同様に、連続的な(滑らかな)水平視差を観察者に与える技術である。この特許文献1においては、実質的に斜めに配置した画素配列と、この画素配列と交差するレンチキュラースクリーンのエッジで、表示にギザツキが発生する場合がある。液晶分子の配向を3次元光制御素子との関係で最適化し、また、三角柱状プリズムに角度θを設けることで3次元画像表示でのモアレを軽減する技術は、特許文献1に開示されていない。
【0012】
特許文献2に開示される技術は、レンチキュラースクリーンの主軸とピクセル(画素)の配列にオフセット角を設ける技術である。特許文献2では、オフセット角を付与したレンチキュールによって、3次元画像表示の分解能の損失が減少され、観察者の頭が移動するときに滑らかな表示が提供される(画面がゆるやかに切り替わる)。しかしながら、特許文献2では、斜めに配置したレンチキュラースクリーンのエッジがピクセル配列と交差するため、表示にギザツキが発生する場合がある。液晶分子の配向を3次元画像表示用光制御素子との関係で最適化し、三角柱状プリズムに角度θを設けることで3次元画像表示でのモアレを軽減する技術は、特許文献2に開示されていない。
【0013】
特許文献3〜6では、光学的補償ベンドモード(Optically Compensated Bend:OCB)モードの液晶が、3次元画像表示に適用される。特許文献3〜6では、単に3次元画像表示に必要な液晶の応答時間の観点から、OCBが説明されている。しかしながら、特許文献3〜6は、液晶パネルに用いられる液晶分子そのものに関わる配光を最適化して、明るい3次元画像表示及び2次元画像表示を可能にする液晶表示装置を開示していない。例えば、特許文献3〜6は、右目用画像の光源の配光角と左目用画像の光源の配光角に対して、OCB液晶分子がどの方向に並ぶと、右目・左目用の3次元画像表示に最適となるか、開示していない。加えて、OCB液晶は、IPS(水平配光の液晶分子を用いた横電界の液晶パネル)又はVA(垂直配向の液晶分子を用いた縦電界の液晶パネル)より視野角特性が悪い。OCB液晶では、初期配向であるスプレイ配向から駆動時のベンド配向への転移操作が、パネル起動の度に必要である。このため、OCB液晶は、小型携帯機器用の液晶表示装置として好ましくない場合がある。
【0014】
特許文献3〜7は、いずれも特許文献8に開示されている断面形状を持つ両面プリズムシートについて開示している。特許文献3〜7では、バックライトの両側の光源を用いて3次元画像表示が行われる。しかしながら、特許文献3〜7は、特許文献8と同様に、3次元画像表示で発生しやすい、プリズムシートと液晶パネルとの干渉によるモアレの解消策を開示していない。さらに、液晶パネルに用いる液晶分子そのものに関わる配光を最適化して、明るい3次元画像表示と2次元画像表示とを可能にする液晶表示装置は、特許文献3〜7に開示されていない。
【0015】
特許文献8は、三角柱状プリズム列と平行な円筒状レンズ列を備え、円筒状レンズの焦点位置がプリズムの頂点に一致する両面プリズムシートを開示している。特許文献8の第1図又は第2図は、この両面プリズムシートと、バックライトの両側の光源とを用いて3次元画像表示を行う技術を表している。しかし、この特許文献8の技術では、3次元画像表示で発生しやすい、円筒状レンズ列と液晶パネルとの干渉によるモアレの解消が困難である。さらに、液晶パネルに用いられる液晶分子そのものに関わる配光を最適化して、明るい3次元画像表示と2次元画像表示とを可能にする液晶表示装置は、特許文献8に開示されていない。特許文献8は、カラー液晶表示装置に一般に用いられるカラーフィルタとのマッチングを考慮しておらず、両面プリズムシートは、カラー3次元画像表示用の光制御素子として十分ではない場合がある。さらに、特許文献8は、カラーフィルタを用いない液晶パネルについて、複数のサブピクセルを用いた3次元画像表示での最適な解を提供することが困難である。特許文献8は、液晶パネルに用いられる液晶分子の配向又は液晶動作の観点からの最適化を開示していない。
【0016】
上述した特許文献10〜12などのような視差バリア方式は、遮光性のスリットを用いるため、光の透過率が低くなる。また、視差バリア方式においては、観察者の位置が好ましくない場合に、遮光性スリットによる非表示領域が観察者の観察を妨害し、この結果立体映像を観察できない範囲が広くなる場合がある。
【0017】
上述した特許文献13,14のようなフレキシブル・レンズアレイ方式は、視差バリア方式よりも低透過率となることを軽減することができる。しかしながら、単数の観察者(2眼式)が小型の液晶パネルを用いる携帯電話又はゲーム機器に対して、視差バリア方式及びフレキシブル・レンズアレイ方式が適用されると、液晶パネルが厚くなる、重くなる傾向がある。
【0018】
特許文献15は、3次元画像表示技術の概念を持たず、3次元画像表示と2次元画像表示との切り替えの方式、及び液晶配向と3次元画像表示との最適化を開示していない。
【0019】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、3次元画像表示又は2次元画像表示を効果的に実現する液晶表示装置、及び光制御素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の態様において、液晶表示装置は、発光素子から出射された光が光制御素子を介して液晶パネルを通過する。光制御素子は、複数の三角柱状プリズムを、当該三角柱状プリズムの長手方向が互いに平行となるように配列した第1の面と、複数の半円柱状レンズを、複数の三角柱状プリズムと背中合わせとなり当該半円柱状レンズの長手方向が互いに平行となるように配列した第2の面とを備える一体樹脂シートである。複数の三角柱状プリズムの長手方向と複数の半円柱状レンズの長手方向とは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ。
【0021】
第2の態様において、光制御素子は、複数の三角柱状プリズムを、当該三角柱状プリズムの長手方向が互いに平行となるように配列した第1の面と、複数の半円柱状レンズを、複数の三角柱状プリズムと背中合わせとなり当該半円柱状レンズの長手方向が互いに平行となるように配列した第2の面とを備える一体樹脂シートである。複数の三角柱状プリズムの長手方向と複数の半円柱状レンズの長手方向とは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様においては、モアレなどの表示ムラを低減することができ、明るく、高解像度の画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係る光制御素子を備えた液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図2】第1の実施形態に係る光制御素子の一例を示す部分平面図。
【図3】第1の実施形態に係る画素配列と三角柱状プリズムとの関係の一例を示す平面図。
【図4】第1の実施形態に係る液晶パネルと光制御素子との関係の第1の例を示す部分断面図。
【図5】第1の実施形態に係る液晶パネルと光制御素子との関係の第2の例を示す部分断面図。
【図6】電圧が印加されていない状態における第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図7】右側の画素電極に液晶駆動電圧が印加された状態における第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図8】左側の画素電極に液晶駆動電圧が印加された状態における第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図9】誘電率異方性が負の液晶分子の初期垂直配向の状態の一例を示す部分断面図。
【図10】誘電率異方性が負の液晶分子の液晶電圧駆動状態の一例を示す部分断面図。
【図11】誘電率異方性が正の液晶分子の初期垂直配向の状態の一例を示す部分断面図。
【図12】誘電率異方性が正の液晶分子の液晶電圧駆動状態の一例を示す部分断面図。
【図13】第2の実施形態に係る液晶表示装置の液晶駆動電圧印加前の状態の一例を示す部分断面図。
【図14】第2の実施形態に係る液晶表示装置の液晶駆動電圧印加後の状態の一例を示す部分断面図。
【図15】第3の実施形態に係る光制御素子の一例を示す部分断面と部分平面との関係を示す図。
【図16】「<」状のサブピクセルの配置の一例を示す部分平面図。
【図17】平行四辺形のサブピクセルの配置の第1の例を示す部分平面図。
【図18】平行四辺形のサブピクセルの配置の第2の例を示す部分平面図。
【図19】長方形のサブピクセルによって構成される画素の一例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0025】
以下の実施形態においては、特徴的な部分についてのみ説明し、通常の液晶表示装置の構成要素と差異のない部分については説明を省略する。
【0026】
以下の実施形態において、液晶表示装置の単一色の表示単位は、1サブピクセル又は1画素であるとする。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る光制御素子を備えた液晶表示装置の一例を示す部分断面図である。
【0028】
液晶表示装置1は、基本的な構成要素として、液晶パネル2、偏光板3、バックライトユニット4などを備える。
【0029】
液晶パネル2は、対向基板5とアレイ基板6とを対向させ、対向基板5とアレイ基板6との間に液晶層7を備えた構成を持つ。液晶パネル2は、それぞれが赤サブピクセル、緑サブピクセル、青サブピクセルを含む複数の画素を配列している。
【0030】
偏光板3、図示しない位相差板などは、液晶パネル2の表面(一方の平面)側及び裏面(他方の平面)側に備えられる。
【0031】
対向基板5は、カラーフィルタ8を含む。カラーフィルタ8は、赤サブピクセルに対応する赤フィルタ、緑サブピクセルに対応する緑フィルタ、青サブピクセルに対応する青フィルタを含む。
【0032】
バックライトユニット4は、液晶パネル2の裏面に、偏光板3を介して備えられる。バックライトユニット4は、基本的な構成要素として、例えばLEDなどのような固体発光素子9,10と、光制御素子11と、反射板12などを備える。バックライトユニット4は、例えば、拡散板、導光板、偏光分離フィルム、再帰反射偏光素子などを備えるとしてもよいが、この図1では省略している。
【0033】
例えば、固体発光素子9,10がLED(発光ダイオード)の場合には、発光波長域に赤、緑、青の3波長を含む白色光を発する複数の白色LEDが適用されるとしてもよい。GaN系青色LEDとYAG系蛍光物質を組み合わせた擬似白色LEDが適用されてもよい。擬似白色LEDは、演色性を高めるために、赤色LEDなど1色以上の主要ピークを有するLEDが擬似白色LEDとともに用いられてもよい。例えば、青色LEDには、赤・緑色の蛍光体を組み合わせた光源を用いてもよい。固体発光素子9,10は、それぞれが赤色、緑色、青色を個別発光するLEDを含むとし、フィールドシーケンシャル(時分割)の発光を液晶駆動と同期させることで、カラーフィルタ8を用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0034】
固体発光素子9,10は、液晶パネル2の向かい合う2辺に対応する位置にそれぞれ備えられるとしてもよい。
【0035】
光制御素子11は、透明樹脂を用いて形成される。光制御素子11は、半円柱状(かまぼこ型:semicylindrical)レンズ13と三角柱状プリズム14とを、表裏に一体化した樹脂シートである。半円柱状レンズ13の半円状断面の円弧側は外を向き、三角柱状プリズム14の三角形状断面の第1の頂点は外を向く。すなわち、半円柱状レンズ13と三角柱状プリズム14とは、背中合わせとなるように光制御素子11に備えられる。
【0036】
固体発光素子9,10から出射された光は、光制御素子11を介して液晶パネル2を通過し、観察者に観察される。
【0037】
図2は、本実施形態に係る光制御素子11の一例を示す部分平面図である。
【0038】
半円柱状レンズ13は、複数の半円柱状のレンズ単位131〜133を、それぞれの光軸(長手方向)Aが互いに平行となるように並べている。
【0039】
三角柱状プリズム14は、複数の三角柱状のプリズム単位141〜143を、それぞれの光軸(長手方向)Bが互いに平行となるように並べている。
【0040】
本実施形態において、光軸A,Bとは、半円柱状レンズ13、三角柱状プリズム14それぞれの稜線方向とする。
【0041】
半円柱状レンズ13の光軸Aと、三角柱状プリズム14の光軸Bとは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ。この角度θを持つことは、光軸Aと光軸Bとが平行ではない(0°ではない)任意の角度を持つことを意味する。
【0042】
光制御素子11は、平面視で矩形状に成形されている。半円柱状レンズ13の光軸Aは、液晶パネル2の向かい合う2つの側辺と平行である、
固体発光素子9,10は、三角柱状プリズム14の光軸Bに対して垂直方向に光を発する。
【0043】
図3は、本実施形態に係る画素配列と三角柱状プリズム14との関係の一例を示す平面図である。
【0044】
例えば、液晶パネル2は、複数の画素又は複数のサブピクセルのマトリックス配列に基づいて構成される。複数の画素又は複数のサブピクセルの縦方向Cと、三角柱状プリズム14の長手方向Bとは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ。これにより、3次元画像表示時のモアレを目立たなくすることができる。
【0045】
モアレは、θを45度に近い大きな角度にすることで、より緩和効果を大きくすることができる。しかしながら、例えば、θを45度とすると、偏光板3及び図示しない位相差板の光軸と干渉することがあるため、θは、45度より若干小さい角度が上限となる。したがって、θは0°より大きく、45度より小さい範囲に属する。
【0046】
偏光板3と液晶パネル2とのアライメント誤差(±2°)を考慮すると、角度θの最大値は、43度以下とすることができる。逆に、3次元画像表示時のモアレは、θがゼロに近いと大きな低周波のモアレが目立ち、明暗又は色ムラとして視認されやすくなる。貼り合わせなどのアライメント誤差を考慮すると、その下限値は3°となる。上述のように、半円柱状レンズ13の光軸Aと三角柱状プリズム14の光軸Bとの間の角度θは、大きいほど3次元画像表示時にモアレが目立たなくなる。換言すれば、角度θが大きいほど、低周波のモアレが高周波で細かいピッチになるため、モアレを視認されにくくすることができる。
【0047】
本実施形態においては、角度θが小さい場合であっても、半円柱状レンズ13の配列の形成ピッチに対して、三角柱状プリズム14の配列の形成ピッチを細かくすることで効果的にモアレを軽減することができる。
【0048】
具体的には、半円柱レンズ13の配列のピッチを1とした時に、三角柱プリズム14の配列のピッチを、1/n(nは2から150の範囲にある整数)とすることができる。
【0049】
なお、半円柱状レンズ13の光軸Aと三角柱状プリズム14の光軸Bとの角度は、上記図2のθの値に90°、180°、270°などを加算した角度としても、上記図2のθと同様にモアレを解消することができる。さらに、半円柱状レンズ13の光軸Aと三角柱状プリズム14の光軸Bとの角度は、半円柱状レンズ13の光軸Aに対して上記図2のθと線対称としても、上記図2のθと同様にモアレを解消することができる。
【0050】
図4は、本実施形態に係る液晶パネル2と光制御素子11との関係の第1の例を示す部分断面図である。
【0051】
図5は、本実施形態に係る液晶パネル2と光制御素子11との関係の第2の例を示す部分断面図である。
【0052】
図4及び図5では、それぞれが赤フィルタR1、緑フィルタG1、青フィルタB1、赤フィルタR2、緑フィルタG2、青フィルタB2を含む6つのサブピクセルと、1つの半円柱状のレンズ単位131と、6つの三角柱状のプリズム単位141〜146とが、対応付けられている。この場合、1/nは「1/6」と表記される。例えば、カラーフィルタ8を備えない構成で右目・左目対応の3次元画像表示を行う場合、nは、2又は3を最小単位とする。1つの半円柱状のレンズ単位に対する三角柱状のプリズム単位の数を示すnを増やすほど、3次元画像表示に係わるモアレ改善効果が増長される。3色のフィルタを含むカラーフィルタ8が配設される構成では、nは、三角柱状のプリズム単位と各フィルタとを対応付けることにより、例えば、6、9、12、15、18など、3の倍数にすることができる。なお、液晶パネル2がカラーフィルタ8を備えない場合には、3色個別発光の固体発光素子によるフィールドシーケンシャル方式でカラー表示可能である。可視光の波長およびその光屈折の効率に基づいて、三角柱状プリズム14の高さHの最小値を規定することができる。三角柱状プリズム14は、小さいピッチで形成されるほど、3次元画像表示時のモアレの軽減効果を増長できるが、このモアレの軽減とトレードオフの関係に、液晶表示のコントラストがある。換言すれば、三角柱状プリズム14は、小さいピッチで形成するほど、光散乱効果が高くなり、正面輝度と逆相関の関係で液晶表示のコントラストが低下する。例えば、三角柱状プリズム14の高さHが2μmを下回ると、液晶表示装置としての正面輝度の大幅な低下とコントラスト低下が現れる場合がある。例えば、大型の液晶表示装置の最大の半円柱状レンズ13のピッチが約300μmであるとする。三角柱状プリズム14の高さHが下限の2μmで、半円柱状レンズ13のピッチ300μmを割り算すると、半円柱状レンズ13の一つに対して三角柱状プリズム14の最小ピッチが1/150と算出される。nの上限は150と設定される。
【0053】
本実施形態に係る光制御素子11を形成する樹脂材料の具体例としては、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、環状オレフィン樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの透明樹脂を用いた光制御素子11の製造方法は、特に制限されない。例えば、金型を用いた射出成型で半円柱状レンズ13と三角柱状プリズム14とを表裏に形成し、樹脂シート状の光制御素子11が形成されるとしてもよい。あるいは、三角柱状プリズム14を片面に形成した樹脂シートを押し出し成型で製造し、また、半円柱状レンズ13を片面に形成した樹脂シートを押し出し成型で製造し、これら2枚の樹脂シートを接着剤で貼り合わせて表裏をそれぞれ半円柱状レンズ13及び三角柱状プリズム14とした光制御素子11が形成されるとしてもよい。ここで使用される接着剤の屈折率は、光制御素子11の樹脂と同じ屈折率であることが好ましい。
【0054】
図4の例は、緑フィルタG1に対応する緑サブピクセルの画素電極と、緑フィルタG2に対応する緑サブピクセルの画素電極とに駆動電圧が印加された状態を示す。この図4において、液晶分子7a〜7dの長手方向は、斜めに傾斜し、「ON」状態である。図4の右側には白色発光(少なくとも赤、緑、青の波長を含む)の固体発光素子10が備えられている。緑フィルタG1に対応する緑サブピクセルの液晶駆動と、緑フィルタG2に対応する緑サブピクセルの液晶駆動とに同期した光線Lが、固体発光素子10から光制御素子11に入射している。光線Lは、光制御素子11の下部に位置する三角柱状プリズム14に入射し、半円柱状レンズ13を透過してさらに液晶パネル2の緑フィルタG1,G2を経て、配光角αの角度で出射される。
【0055】
図4の緑フィルタG1に対応する緑サブピクセルと、緑フィルタG2に対応する緑サブピクセルとは、例えば、後述する図7で示されるように、この2つのサブピクセルに対応する片側(右側)の画素電極に駆動電圧を印加することによって、配光角αを実現する液晶配向となる。
【0056】
図5と図4とは、基本的な構成は同様であるが、液晶分子7a〜7dの傾斜が逆である。図5は、緑フィルタG1に対応する緑サブピクセルの画素電極と、緑フィルタG2に対応する緑サブピクセルの画素電極とに駆動電圧が印加された状態を示す。図5の液晶分子7a〜7dは、図4の液晶分子7a〜7dと反対方向の斜めに傾斜し、「ON」状態になっている。図5の左側には白色発光(少なくとも赤、緑、青の波長を含む)の固体発行素子9が備えられている。緑フィルタG1に対応する緑サブピクセルの液晶駆動と、緑フィルタG2に対応する緑サブピクセルの液晶駆動とに同期した光線Lが、固体発光素子9から光制御素子11に入射している。光線Lは、光制御素子11の下部に位置する三角柱状プリズム14に入射し、半円柱状レンズ11を透過してさらに液晶パネル2の緑フィルタG1,G2を経て、配光角αの角度で出射される。
【0057】
図5の緑フィルタG1に対応する緑サブピクセルと、緑フィルタG2に対応する緑サブピクセルとは、例えば、後述する図8で示されるようにサブピクセルに対応する片側(左側)の画素電極に駆動電圧を印加することによって、配光角αを実現する液晶配向となる。
【0058】
図4及び図5に示すカラーフィルタ8においては、赤フィルタ→緑フィルタ→青フィルタの並び順が、繰り返されている。言い換えれば、図4及び図5では、各サブピクセルが赤サブピクセル→緑サブピクセル→青サブピクセルの並び順で繰り返し配置されている。
【0059】
液晶パネル2の1画素(表示単位)は、横方向に、赤フィルタと緑フィルタと青フィルタとを同じ順序で2組配置する。例えば、1つの画素は、第1の赤サブピクセル、第1の緑サブピクセル、第1の青サブピクセルを含む第1の組と、第2の赤サブピクセル、第2の緑サブピクセル、第2の青サブピクセルを含む第2の組とを含む。隣り合う第1の組と第2の組において、サブピクセルの並び順を同じにすることで、隣り合う第1の組と第2の組の出射光を均一化することができ、視野角の広い2次元画像表示を実現させることができる。なお、2次元画像表示は、左右の固体発光素子9,10を同じタイミングで発光させ、かつ、図4及び図5に示される隣り合う第1の組と第2の組を同じタイミングで「ON」状態にすることで実現される。1画素又は1サブピクセルに2個のアクティブ素子が備えられる場合においては、2個のアクティブ素子に同時に駆動信号を送ることで、さらに明るい2次元画像表示を実現することができる。
【0060】
以下においては、図6から図8を用いて、本実施形態に係る液晶表示装置1の液晶配向について説明する。この図6から図8において、配向膜、光源としての固体発光素子9,10、偏光板3、光制御素子11、位相差板、反射板12などは、省略されている。
【0061】
図6は、電圧が印加されていない状態における本実施形態に係る液晶表示装置1の構成の一例を示す部分断面図である。この図6は、液晶層7の液晶分子71〜78に電圧が印加されていない垂直配向の状態(ノーマリーブラック)を示している。
【0062】
この図6は、緑サブピクセルの断面を示している。この図6は、ブラックマトリックスの枠パターンの2辺の長手方向に垂直な断面である。
【0063】
対向基板5は、透明基板15と、ブラックマトリックスBMと、カラーフィルタ8と、透明樹脂層16と、複数の対向電極17a,17bとを備える。
【0064】
ブラックマトリックスBMは、透明基板15の一方の平面の上に形成される。ブラックマトリックスBMは、透明基板15の平面を画素単位又はサブピクセル単位に分割する。ブラックマトリックスBMは、透明基板15の平面上に、遮光部と光を通す複数の開口部とを形成する。
【0065】
カラーフィルタ8は、透明基板15の平面とブラックマトリックスBMとの上に形成される。例えば、各カラーフィルタR1,G1,B1は、ブラックマトリックスBMの開口部に形成される。
【0066】
透明樹脂層16は、カラーフィルタ8の上に形成される。
【0067】
複数の対向電極17a,17bは、透明基板15の上側であり、この図6の例では透明樹脂層16の上に形成される。複数の対向電極17a,17bは、線状、櫛歯状、帯状又はストライプ状の形状を持ち、画素単位又はサブピクセル単位に形成される。ここで、線状、櫛歯状、帯状又はストライプ状は、一定幅を持ち、長手方向に伸びるパターンである。例えば、帯状は線状よりも幅が広いとする。線状、櫛歯状、帯状、ストライプ状の画線幅は、液晶表示の画面サイズ、必要な開口率、配光角などの条件に基づいて適宜調整可能である。
【0068】
本実施形態において、ブラックマトリックスBMは、画素単位又はサブピクセル単位において、互いに平行に向かい合う2辺を含む枠パターンb1を含む。さらに、ブラックマトリックスBMは、枠パターンb1の2辺と平行であり、画素単位又はサブピクセル単位の中央部に形成される線状の中央パターンb2を含む。
【0069】
対向電極17a,17bのそれぞれは、枠パターンb1の2辺及び中央パターンb2と平行である。対向電極17a,17bは、枠パターンb1の2辺の長手方向に垂直な図6の断面において、中央パターンb2を通る垂直方向の中心軸Eに対して対称に配置される。
【0070】
この対向基板5は、液晶表示装置1に備えられた場合、透明基板15の他方の平面側が、観察者側(液晶表示装置1の表面側)を向き、対向電極17a,17b側が液晶層7側に配置される。
【0071】
図6の断面において、対向電極17a,17bの断面中心と枠パターンb1の断面中心との間の距離D1は、対向電極17a,17bの断面中心と中央パターンb2の断面中心との間の距離D2よりも大きい。この対向基板5においては、平面視において、複数の対向電極17a17bが中央パターンb2を挟み、垂直方向F1において、複数の対向電極17a,17bの一部と中央パターンb2の一部とは、カラーフィルタ8及び透明樹脂層16を介して向き合っている。すなわち、対向電極17a,17bは、図6の断面の水平方向F2において、中心軸E側に寄っている。
【0072】
なお、対向電極17a,17bは、透明基板15と、ブラックマトリックスBM及びカラーフィルタ8との間に形成されてもよく、カラーフィルタ8と透明樹脂層16との間に形成されてもよい。
【0073】
アレイ基板6は、透明基板18、絶縁層19a〜19c、遮光パターン20a,20b、共通電極21a,21b、画素電極22a,22bを含む。アレイ基板6の画素電極22a,22bの形成側が、液晶層7側を向き、アレイ基板6の透明基板18河が、バックライトユニット4側を向く。
【0074】
透明基板18の上には、絶縁層19aが形成される。
【0075】
絶縁層19aの上には、遮光パターン20a,20bが選択的に形成される。遮光パターン20aは、垂直方向F1において、ブラックマトリックスBMの枠パターンb1と向かい合う。遮光パターン20bは、垂直方向F1において、ブラックマトリックスBMの中央パターンb2と向かい合う。例えば、遮光パターン20a,20bは、光反射性の金属薄膜によって形成される。
【0076】
絶縁層19aと遮光パターン20a,20bとの上には、絶縁層19bが形成される。
【0077】
絶縁層19bの上には、共通電極21a,21bが形成される。共通電極21a,21bは、例えば、画素又はサブピクセルごとに、線状、櫛歯状、帯状又はストライプ状とすることができる。
【0078】
絶縁層19bと共通電極21a,21bとの上には、絶縁層19cが形成される。
【0079】
絶縁層19cの上には、画素電極22a,22bが形成される。
【0080】
画素電極22a,22bは、例えば、画素又はサブピクセルごとに、線状、櫛歯状、帯状又はストライプ状とすることができる。画素電極22a,22bは、それぞれアクティブ素子23a,23bと電気的に接続される。
【0081】
アクティブ素子23a,23bは、それぞれ画素電極22a,22bと接続されており、画素電極22a,22bを駆動可能である。アクティブ素子23a,23bは、例えば、チャネル材料として金属酸化物を用いた酸化物薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0082】
対向電極17a,17bと共通電極21a,21bとは、例えば、同じコモン電位とする。
【0083】
対向電極17a,17bのそれぞれは、ブラックマトリックスBMの枠パターンb1の2辺(側辺)及び中央パターンb2、画素電極22a,22b、共通電極21a,21bの長手方向と平行である。
【0084】
複数の対向電極17a,17b、複数の共通電極21a,21b、複数の画素電極22a,22bは、図6の断面において、中央パターンb2を通る中心軸Eに対して線対称に配置される。複数の対向電極17a,17b、複数の共通電極21a,21b、複数の画素電極22a,22bは、図6の断面の水平方向F2において、それぞれずれた位置となる。
【0085】
対向電極17a,17bの長手方向と画素電極22a,22bの長手方向とは平行である。対向電極17a,17bと画素電極22a,22bとは、透明基板15,18の平面に対する垂直方向F1において、液晶層7を介して一部が向かい合っている。画素電極22a,22bの一部は、図6の断面の水平方向F2において、中心軸Eとは逆の方向(サブピクセルの端側)に、対向電極17a,17bよりもはみ出している
画素電極22a,22bの長手方向と共通電極21a,21bの長手方向とは平行である。画素電極22a,22bと共通電極21a,21bとは、垂直方向F1において、絶縁層19cを介して一部が向かい合っている。共通電極21a,21bの一部は、図6の断面の水平方向F2において、中心軸Eとは逆の方向に、画素電極22a,22bよりもはみ出している。
【0086】
液晶パネル2は、画素電極22a,22bと共通電極20a,20bとを含むアレイ基板6と、対向電極17a,17bを含む対向基板5とを対向させ、アレイ基板6と対向基板5との間に液晶層7を備える。垂直方向F1において、共通電極21a,21bと対向電極17a,17bとは、画素電極22a,22bを挟む。上述したように、画素電極22a,22bと共通電極21a,21bと対向電極17a,17bとは、断面において、1画素又は1サブピクセルの中心軸Eを基準とする線対称である。画素電極22a,22bと対向電極17a,17bとは、1画素又は1サブピクセルの断面が中心軸Eで区切られる1/2断面において、液晶パネル2のパネル平面と水平な第1の方向にずれた第1の配置関係を持つ。画素電極22a,22bと共通電極21a,21bとは、1/2断面において、第1の方向と逆の第2の方向にずれた第2の配置関係を持つ。
【0087】
アクティブ素子23a,23bは、1画素又は1サブピクセルの断面が中心軸Eで区切られる一方の1/2断面及び他方の1/2断面のそれぞれに対応し、それぞれ画素電極22a,22bと接続される。アクティブ素子23a,23bは、それぞれ固体発光素子9,10と同期し、3次元表示を行う。
【0088】
例えば、液晶層7に含まれている液晶分子71〜78は、負の誘電率異方性を持ち、液晶分子71〜78の長手方向の初期配向は垂直とする。
【0089】
図7は、右側の画素電極22bに液晶駆動電圧が印加された状態における本実施形態に係る液晶表示装置1の構成の一例を示す部分断面図である。この図7において、左側の画素電極22aには電圧が印加されていない。
【0090】
画素電極22bに液晶駆動電圧が印加されると、画素電極22bから共通電極21b及び対向電極17a,17bへ向かう破線で示される電気力線が形成される。液晶分子72〜78は電気力線に垂直になる方向に倒れる。このとき、右側の共通電極21bと画素電極22bとの近傍にある液晶分子78は、実効的に強い電界に置かれ最初に倒れ始め、他の液晶分子72〜77が倒れるためのトリガとなる。液晶分子72〜78は同一方向に倒れ、緑サブピクセルから出射される光は、垂直方向に対して配光角αを持つ。
【0091】
図8は、左側の画素電極22aに液晶駆動電圧が印加された状態における本実施形態に係る液晶表示装置1の構成の一例を示す部分断面図である。この図8において、右側の画素電極22bには電圧が印加されていない。
【0092】
画素電極22aに液晶駆動電圧が印加されると、画素電極22aから共通電極21a及び対向電極17a,17bへ向かう破線で示される電気力線が形成される。液晶分子71〜77は電気力線に垂直になる方向に倒れる。このとき、左側の共通電極21aと画素電極22aとの近傍にある液晶71は、実効的に強い電界に置かれ最初に倒れ始め、他の液晶分子72〜77が倒れるためのトリガとなる。液晶分子71〜77は同一方向に倒れ、緑サブピクセルから出射される光は、垂直方向に対して配光角αを持つ。
【0093】
アクティブ素子23による液晶駆動は、右目用と左目用の信号に分けて、又は、飛び出る画像と奥行きのある背景画像との信号に分けて行われ、これにより3次元表示が実現される。
【0094】
以下に、本実施形態に係る液晶層7の種類について説明する。
【0095】
上記の説明においては、斜め電界方式を用いて液晶分子71〜78を駆動している。しかしながら、液晶配向方式は、IPS(水平配光の液晶を用いた横電界の液晶パネル)又はVA(垂直配向の液晶を用いた縦電界の液晶パネル)を適用してもよい。
【0096】
液晶表示装置1の黒表示時において、液晶分子71〜78は、液晶パネル2の平面に対して垂直配向とする。階調表示時又は白表示時(液晶分子71〜78に駆動電圧が印加された時)、液晶分子71〜78の長手方向は、垂直方向から水平方向に傾斜する。
【0097】
このように、本実施形態において、液晶分子71〜78は、初期垂直配向とし、かつ、負の誘電率異方性を持つとする。さらに、液晶分子71〜78の駆動において、液晶表示装置1における駆動電圧の電界方向は、液晶パネル2の厚み方向(垂直方向)に斜めの電界を含む。
【0098】
なお、液晶分子は、初期垂直配向とし、かつ、正の誘電率異方性を持つとしてもよい。この場合、液晶駆動において、駆動電圧の電界は、液晶パネルの水平方向の電界、又は、液晶パネルの厚み方向に斜めの電界を含むとしてもよい。
【0099】
図9は、誘電率異方性が負の液晶分子の初期垂直配向の状態の一例を示す部分断面図である。この図9は、サブピクセルの1/2断面のうちの中心軸Eの右側を表している。また、図9では、説明を簡略化するために、カラーフィルタ8、配向膜、画素電極を駆動するアクティブ素子23b、固体発光素子(例えばバックライト)10、光制御素子11、偏光板3、位相差板、反射板12などは省略されている。
【0100】
液晶分子7a〜7fは、初期垂直配向である。液晶分子7a〜7fを含む液晶層7は、互いに対向するアレイ基板6と対向基板5との間に備えられる。アレイ基板6は、透明基板18、遮光パターン20a,20b、絶縁層19、画素電極22bを備える。対向基板5は、透明基板15、ブラックマトリクスBMの枠パターンb1及び中央パターンb2、コモン電位にある対向電極17bを備える。
【0101】
図9では、画素電極22bに電圧が印加されておらず、液晶分子7a〜7fは、垂直配向のままで黒表示の状態となっている。
【0102】
なお、垂直配向液晶に代えて、初期水平配向でノーマリーブラックのECB(Electrically Controlled Birefringence)タイプの液晶を好適に用いることもできる。このECBタイプの液晶は、高価な楕円偏光板と水平配向の配向処理とが必要なため、上記の垂直配向液晶を採用した場合よりコスト面でやや不利となる。また、ノーマリホワイトのECBは、コントラストと消費電力の観点でノーマリーブラックのECBより劣る傾向がある。
【0103】
図10は、誘電率異方性が負の液晶分子の液晶電圧駆動状態の一例を示す部分断面図であり、上記図9と同様の条件で図示されている。
【0104】
画素電極22bと対向電極17bとの間に電圧が印加されると、電気力線24が斜め方向に発生する。液晶分子7b〜7eの長手(長軸)方向は、垂直方向から、発生した電気力線24に垂直となるように倒れる。固体発光素子10からの光は、光制御素子11による屈折と液晶分子7b〜7eによる透過とにより、矢印25方向に出射される。光の出射方向と垂直方向との角度である配光角αは、光制御素子11の条件を変えることで各種設定可能である。液晶分子7b〜7eの配向、ブラックマトリクスBMの枠パターンb1及び中央パターンb2、遮光パターン20a,20bは、出射光が配光角αを持つことをサポートし、3次元画像表示の品質を大きく向上させることができる。液晶分子7b〜7eが光を出射する方向へ均一に配向することは、出射光の減少、着色、コントラスト低下を避けるために重要である。
【0105】
図11は、誘電率異方性が正の液晶分子の初期垂直配向の状態の一例を示す部分断面図である。この図11は、サブピクセルの1/2断面のうちの中心軸Eの右側を表している。また、図11では、説明を簡略化するために、カラーフィルタ8、配向膜、画素電極を駆動するアクティブ素子23b、固体発光素子(例えばバックライト)10、光制御素子11、偏光板3、位相差板、反射板12などは省略されている。
【0106】
図11において、画素電極22bは、垂直方向F1において、絶縁層19を介して、サブピクセルの中心軸E側の遮光パターン20bと向かい合っている。共通電極21bは、絶縁層19を介して、サブピクセルの端側の遮光パターン20aと向かい合っている。対向電極17bは、垂直方向F1において、ブラックマトリックスBMの枠パターンb1と向かい合っている。
【0107】
誘電率異方性が正の液晶分子26a〜26fは、初期垂直配向である。液晶分子26a〜26fを含む液晶層26は、互いに対向するアレイ基板6と対向基板5との間に備えられる。アレイ基板6は、透明基板18、遮光パターン20a,20b、絶縁層19、画素電極22b、共通電極21bを備える。対向基板5は、透明基板15、ブラックマトリクスBM、コモン電位にある対向電極17bを備える。
【0108】
図11では、画素電極22bに電圧が印加されておらず、液晶分子26a〜26fは、垂直配向のままで黒表示の状態となっている。
【0109】
図12は、誘電率異方性が正の液晶分子の液晶電圧駆動状態の一例を示す部分断面図であり、上記図11と同様の条件で図示されている。
【0110】
画素電極22bと対向電極17bとの間に電圧が印加されると、電気力線27が斜め方向に発生する。さらに、画素電極22bと共通電極21bとの間に電圧が印加されると、電気力線27が水平方向に発生する。液晶分子26b〜26eの長手方向は、垂直方向から、発生した電気力線27,28と同じ方向になるように倒れる。固体発光素子10からの光は、光制御素子11による屈折と液晶分子26b〜26eによる透過とにより、矢印29の方向に出射される。配光角αは、光制御素子11の条件を変えることで各種設定可能である。液晶26b〜26eの配向、ブラックマトリクスBMの枠パターンb1及び中央パターンb2、遮光パターン20a,20bは、出射光が配光角αを持つことをサポートし、3次元画像表示の品質を大きく向上させることができる。
【0111】
上記の図11及び図12においては、対向電極17bと共通電極21bとのうちのいずれか一方を省略してもよい。
【0112】
上記のように、液晶は、誘電率異方性が負の液晶と正の液晶のどちらを使用してもよい。例えば、誘電率異方性が負の液晶として、室温付近で屈折率異方性が0.08から0.16の範囲のネマチック液晶を用いることができる。液晶応答を高速化するために、液晶厚みを3μm以下とする場合には、例えばΔnが0.1から0.16の範囲の液晶など、屈折率異方性の高い液晶を用いることができる。誘電率異方性が正の液晶を用いる場合、さらに広範囲の特性を持つ液晶材料を適用することができる。例えば、後述されるように、液晶材料として、分子構造内にフッ素原子を含む液晶材料(以下、フッ素系液晶と称する)を用いることができる。
【0113】
一般的に、誘電率異方性の小さな液晶材料は、その粘土が低い。低粘度の液晶材料を用いることにより、液晶駆動電圧をオフした場合の立ち下がり時間(τdecay)を短くすることができる。さらに、誘電率の低いフッ素系液晶においては、イオン性不燃物の取り込みが少なく、不純物による電圧保持率低下などの性能劣化及び表示の焼き付きが小さく、表示ムラが生じにくい。誘電率異方性の絶対値の大きい液晶材料を用いることによって、しきい値電圧及び立ち上がり時間(τrise)を短くすることができる。誘電率異方性の絶対値の大きい液晶材料が用いられる場合、液晶を低粘度化するために、例えばアルケニケル化合物のような減粘剤が液晶に少量添加されてもよい。液晶層7,26の厚みは、特に限定されない。例えば、液晶層7,26の厚さとして、超高速応答の液晶表示を実現するために、3.5μm以下、好ましくは1.5μmから3.4μmの範囲の薄い厚さが適用される。本実施形態においては、液晶粘度、液晶の比誘電率、液晶の複屈折率、液晶の弾性定数を最適化することにより、液晶表示装置1の消費電力を従来よりも低下させることができる。本実施形態で実効的に適用可能な液晶層7,26のΔndは、例えば、およそ200nmから500nmの範囲である。配向膜としては、例えば、ポリイミド系有機高分子膜、又はポリシロキサン構造を含む有機高分子膜を、加熱硬膜化して用いることができる。また、液晶パネル2の表裏には、例えば、1から3枚の位相差板を偏光板3に貼り合わせて用いてもよい。
【0114】
本実施形態において、液晶パネル2の対向基板5は、例えばブラックマトリクスBMとして、遮光層を備えるとしてもよい。遮光層とは、透明樹脂に遮光性の顔料を分散させた遮光性の塗膜である。遮光層には、一般的に感光性が付与される。遮光層は、露光・現像を含むフォトリソグラフィの手法によりパターン形成される。さらに、対向基板5は、赤フィルタR1,R2、緑フィルタG1,G2、青フィルタB1,B2などのカラーフィルタ8として、着色層を備えるとしてもよい。着色層とは、有機顔料を透明樹脂に分散させた塗膜である。着色層は、ブラックマトリクスBMの開口部への塗膜の形成、フォトリソグラフィ法によるパターン形成により、形成される。本実施形態において、着色層の比誘電率は、比較的重要な特性である。この着色層の比誘電率は、透明樹脂に対する着色剤として添加される有機顔料の比率に基づいてほぼ一義的に決定される。このため、比誘電率を大きく変化させることは困難である。換言すれば、着色層中の有機顔料の種類又は含有量は、液晶表示装置1として必要な色純度から設定され、これにより着色層の比誘電率もほぼ決まる。なお、有機顔料の比率を高くして着色層を薄膜化することにより、比誘電率を4以上とすることが可能である。また、透明樹脂として高屈折率材料を用いることにより、比誘電率を若干アップ可能である。有機顔料を用いた着色層の比誘電率は、概ね2.9から4.5の範囲に入る。
【0115】
なお、配光角αは、液晶パネル2と観察者の距離及び位置、観察者の数によって適宜調整されるとしてもよい。配光角αは、液晶パネル2の画面サイズによって調整されるとしてもよい。配光角αは、例えば、4°から30°の範囲から選択できる。液晶パネル2が、観察者が1人の小型モバイル機器向けパネルの場合、およそ5°から9°の範囲が好ましい。液晶表示装置1に観察者位置を感知するセンサーを取り付けて、配光角αを調整するとしてもよい。
【0116】
以上説明した本実施形態に係る液晶表示装置1においては、3次元表示及び2次元表示を効果的に実現することができ、3次元表示及び2次元表示を実現するために最適な液晶配向を実現させることができる。
【0117】
さらに、本実施形態に係る液晶表示装置1においては、3次元表示と2次元表示とを切り替えることができ、モアレなどの表示ムラを低減することができ、明るく、高解像度の画像表示を行うことができる。
【0118】
一般的な液晶表示においては、広い視野角表示を目的とするために、1画素からの出射光に対して、右目用及び左目用の配光角αを付与することが困難である。左目用の光が右目に入ること、及び、右目用の光が左目に入ることは、クロストークと呼ばれる。このクロストークは、3次元画像表示の効果を低減させる。本実施形態においては、垂直配向液晶を用いて3次元画像表示を行う。これにより、液晶分子の長手方向の傾きを利用して、出射光に対して配光角αをより適切に付与することができ、3次元画像表示においてクロストークが発生することを大幅に削減することができ、3次元画像表示の精度を改善することができる。
【0119】
[第2の実施形態]
本実施形態においては、上記第1の実施形態の変形例について説明する。
【0120】
図13は、本実施形態に係る液晶表示装置の液晶駆動電圧印加前の状態の一例を示す部分断面図である。この図13では、主に液晶パネル31を示しており、他の部分は省略されている。図13は、サブピクセル単位の断面を表している。
【0121】
本実施形態に係る液晶表示装置30に備えられる液晶パネル31の対向基板32は、透明基板15の一方の平面の上に対向電極17a,17bを備える。そして、対向基板32は、対向電極17a,17bの形成された透明基板15の上に、ブラックマトリックスBMと透明樹脂層16とを備える。
【0122】
この対向基板32においては、複数の対向電極17a,17bが中央パターンb2を挟み、中央パターンb2と接触している。水平方向F2の位置において、複数の対向電極17a,17bと中央パターンb2とは隣接する。対向基板32は、カラーフィルタ8を備えていない。対向基板32とアレイ基板6とは、液晶層7を挟んで対向している。液晶パネル31の裏面には、図示していないバックライトユニット4が備えられている。バックライトユニット4は、基本的な構成として、例えばLEDなどのような固体発光素子9,10、光制御素子11、反射板12などを備える。画素電極22a,22bと共通電極21a,21bは、窒化ケイ素又は酸化ケイ素などの絶縁層19cを介して形成される。遮光パターン20a,20bは、例えば、アルミニウム合金などの金属薄膜で形成される。液晶パネル31の表裏には、図示しない偏光板3、位相差板などが貼付される。
【0123】
図14は、本実施形態に係る液晶表示装置30の液晶駆動電圧印加後の状態の一例を示す部分断面図である。この図14は、2次元画像表示時の液晶動作とそのときの出射光の状態を示している。光は、図14に示すように配光角αで出射される。
【0124】
このように出射光に配光角αが付与されることにより、従来の液晶表示装置より広い視野角が得られる。
【0125】
水平方向F2において、共通電極21a,21bは、画素電極22a,22bよりも、サブピクセルの枠側にはみ出しており、このはみ出し部の幅はWaである。
【0126】
水平方向F2の位置において、画素電極22a,22bと共通電極21a,21bとが重なっている部分(垂直方向において、画素電極22a,22bと共通電極21a,21bとが向かい合う部分)の幅は、Wbである。
【0127】
水平方向F2において、枠パターンb1は、遮光パターン20aよりも、サブピクセルの中心軸E側にはみ出しており、このはみ出し部の幅はWcである。
【0128】
共通電極21a,21bのうちの幅Waに対応する部分(以下、はみ出し電極部という)の作用について説明する。なお、共通電極21a,21bと画素電極22a,22bとにおける幅Wbに対応する部分は、補助容量として用いることができる。幅Wbは、液晶セル(画素又はサブピクセル)の電気容量の大きさに基づいて調整される。
【0129】
図13は、画素電極22a,22bに液晶駆動電圧が印加されていない状態を示し、液晶分子71〜78は垂直配向のままで黒表示の状態である。図14に示すように、画素電極22a,22bに液晶駆動電圧が印加されると、電気力線33a〜33dが斜め電界方向に発生し、液晶分子72〜77は矢印方向に倒れる。はみ出し電極部の近傍の液晶分子71,78は、他の部位の液晶分子より強い電界に置かれるため、最初に高速で倒れる。この液晶分子71,78の倒れは、他の部位の液晶分子に伝播し、高速応答のトリガとなる。液晶分子71〜78の傾斜方向は、図14に示すようにサブピクセルの中心軸Eに対して対称となり、表示画像の視野を広げることができる。
【0130】
液晶分子71〜78の倒れる方向は、対向電極17a,17b及び共通電極21a,21bを、画素電極22a,22bに対してずらす方向によって設定可能である。
【0131】
例えば、画素電極22a,22bと共通電極21a,21bとの間の水平方向のはみ出し部分の幅Waは、液晶セルのディメンション又は液晶駆動電圧などとの関係で適宜調整される。例えば、画素幅又はサブピクセル幅が10μmから300μmの場合、はみ出し部分の幅Waは、0.5μmから6μm前後であればよい。はみ出し部分の幅Waは、液晶の応答性を向上させるために、液晶層7の厚みより小さくすることができる。
【0132】
本実施形態においては、例えば、画素又はサブピクセルごとの櫛歯状パターンである対向電極17a,17bの櫛歯の数は、画素電極22a,22bの櫛歯の数より多くしてもよい。画素又はサブピクセルごとの対向電極17a,17bの櫛歯の総面積は、画素電極22a,22bの櫛歯の総面積より大きくしてもよい。画素電極22a,22b、共通電極21a,21b、対向電極17a,17bは、可視域において、透明な導電膜とする。各電極の櫛歯の密度又はピッチは、画素又はサブピクセル内で、適宜調整することができる。画素又はサブピクセルの断面視において、それぞれの電極を画素又はサブピクセルの中心軸Eから対称となる位置に形成することは、液晶表示の広視野角確保の観点から重要である。それぞれの電極を画素又はサブピクセルの中心軸Eから対称となる位置に形成するためには、1つの画素又はサブピクセルについて、断面視でそれぞれの電極の櫛歯数が2以上かつ偶数であることが必要である。
【0133】
一般的に、垂直配向液晶には、例えば89度といった傾斜角(プレチルト角)が付与される。プレチルト角が付与された垂直配向液晶は、液晶駆動電圧印加時に液晶分子の長手方向の傾斜角が小さくなる方向に倒れる。一般的な垂直配向液晶では、初期の傾斜角によって液晶駆動電圧印加時の液晶分子の倒れる方向が設定される。このような一般的な垂直配向液晶を用いる場合には、1画素又は1サブピクセルに対して、図示しない配向膜の複数方向のラビング、及び複数方向での光配向が必要とされる。
【0134】
これに対し、本実施形態では、垂直配向液晶の初期配向に傾斜角を付与しなくても、斜め電界で発生される電気力線33a〜33dに基づいて液晶分子の倒れる方向が決められる。本実施形態においては、例えば、負の誘電率異方性の液晶分子71〜78の初期配向を、およそ90°の垂直配向としている。上述したように、本実施形態においては、液晶分子71〜78にプレチルト角を付与することは必要ない。しかしながら、液晶駆動において数msの超高速応答を実現するために、PSA法を用いて、液晶分子71〜78に例えば89.7°から88°前後のプレチルト角が付与されてもよい。このように液晶分子71〜78にわずかなプレチルト角を付与することにより、本実施形態に係る液晶表示装置30は、超高速応答又は従来よりも低い駆動電圧による液晶駆動を実現することができる。PSA法では、感光性の配向膜又は重合組成物を用いて液晶セル化が実行された後に、画素電極22a,22b等に液晶駆動電圧を印加しながら紫外線などの光が液晶に照射され、配向膜又は液晶セル内壁に、プレチルト角が付与される。そして、この配向膜又は液晶セル内壁のプレチルト角に応じて、液晶分子71〜78にプレチルト角が付与される。
【0135】
なお、IPS又はECBなどのような水平配向の液晶を用いる液晶表示装置では、ラビング又は光配向などの配向処理の工程が不可欠である。さらに水平配向の液晶を用いる液晶表示装置では、液晶分子の配向方向と偏光板との厳密な光軸合わせが必要である。偏光板との厳密な光軸合わせが不必要な垂直配向の液晶表示装置30は、IPS又はECBである液晶表示装置より黒表示の品質が高い。
【0136】
アクティブ素子23a,23bは、シリコン半導体によって形成されてもよく、酸化物半導体によって形成されてもよい。酸化物半導体によってアクティブ素子23a,23bが形成された場合には、画素又はサブピクセルの開口率を向上させることができる。酸化物半導体によって形成されるアクティブ素子23a,23bの代表的なチャネル材料としては、例えば、IGZOと呼ばれるインジウム、ガリウム、亜鉛の複合金属酸化物が用いられる。
【0137】
本実施形態に係る液晶表示装置30は、広視野角の2次元画像表示に適用可能であるが、図示していないバックライトユニット4の左右の固体発光素子9,10のそれぞれと液晶動作とを同期させることで、高品質の3次元画像表示を実現することがでいる。固体発光素子9,10を赤色、緑色、青色の個別発光LED素子とすることにより、フィールドシーケンシャル駆動で明るいカラーの3次元画像表示を行うことができる。
【0138】
[第3の実施形態]
本実施形態においては、上記第1及び第2の実施形態に係る液晶表示装置1,30に適用される光制御素子11について具体的に説明する。
【0139】
図15は、本実施形態に係る光制御素子11の一例を示す部分断面と部分平面との関係を示す図である。図15の上部が、光制御素子11の部分断面図であり、図15の下部が、光制御素子11の上面平面図である。
【0140】
光制御素子11の表面(第1の面)と裏面(第2の面)とにおいて、1つの半円柱状のレンズ単体に対して、n個の三角柱状のプリズム単体が対応する。
【0141】
半円柱状レンズ13は、例えばおよそ240μmのピッチP1で形成される。
【0142】
三角柱状プリズム14は、例えばおよそ11.6μmのピッチP2で形成される。三角柱状プリズム14の1単位(141〜14n)は、半円柱状レンズ13の1単位(131)に対して、18個備えられる。三角柱状プリズム14の高さHは、例えばおよそ9μmとする。三角柱状プリズム14の光軸(三角柱状プリズム14の1単位の稜線方向、又は、三角柱状プリズム14の1単位の長手方向)は、半円柱状レンズ13の光軸(半円柱状レンズ13の1単位の稜線方向、又は、半円柱状レンズ13の1単位の長手方向)に対して角度θを持つ。例えば、三角柱状プリズム14の光軸は、半円柱状レンズ13の光軸から、約5°オフセットする。
【0143】
この図15の固体発光素子9は、光制御素子11をバックライトユニット4に適用したときのLEDとしてのおよその配置を示している。固体発光素子9からの出射光は、図15の下部に示す平面視の状態で、三角柱状プリズム14の光軸に対して概ね直角に入射される。これにより、液晶表示装置1,30の液晶パネル2,31の下方向の明るさのムラを低減させることができる。
【0144】
半円柱状レンズ13の光軸に対して三角柱状プリズム14の光軸が角度θのオフセットを持つ場合、固体発光素子9からの出射光の方向は、半円柱状レンズ13の光軸に垂直な線Gに対して、角度θのオフセットを持つ。
【0145】
光制御素子11は、例えば、1画素のピッチが40μmであり、1画素が横方向に赤サブピクセル、緑サブピクセル、青サブピクセルを同じ順序で2組並べた計6個のサブピクセルを含む3次元画像表示の液晶表示装置1,39に適用される。複数のサブピクセルを1画素として3次元画像表示を行うことは、高品質の3次元画像表示を実現する上で重要である。
【0146】
なお、半円柱状レンズ13の配列方向とピッチP1は、光制御素子11を適用する液晶パネル2,31の画素配列に応じてほぼ一義的に決定される。しかしながら、三角柱状プリズム14のピッチP2及びその高さH、半円柱状レンズ13の曲率は、その液晶表示装置1,30が対象とする観察者数、観察者の位置、液晶パネル2,31の大きさ、必要とする視野角、必要とされる明るさなどに基づいて調整される。半円柱状レンズ13の光軸と三角柱状プリズム14の光軸との間の角度及び三角柱状プリズム14のピッチP2及び高さHは、液晶表示装置1,30の正面輝度及びそのコントラストと相関があり、光制御素子11を適用する液晶表示装置1,30の使用条件に基づいて最適化される。
【0147】
[第4の実施形態]
本実施形態においては、上記第1乃至第3の実施形態に係る液晶表示装置1,30における画素又はサブピクセルの平面形状について説明する。
【0148】
画素又はサブピクセルは、平面視で、向かい合う辺が平行な多角形とする。具体的には、画素又はサブピクセルの平面形状としては、正方形、長方形、平行四辺形、「<」状に折れ曲がった形状(くの字状、V字状、又はブーメラン形状)とすることができる。
【0149】
図16は、「<」状のサブピクセルの配置の一例を示す部分平面図である。この図16においては、水平方向に複数のサブピクセルが並べられて、1つの画素が形成される。
【0150】
図17は、平行四辺形のサブピクセルの配置の第1の例を示す部分平面図である。この図17においては、水平方向に異なる色のサブピクセル34r,34g,34bが並び、垂直方向に同じ色のサブピクセル34r,34g,34bが並ぶ。図17では、サブピクセルの中央に配置されているブラックマトリックスBMの中央パターンb2は省略されている。
【0151】
図18は、平行四辺形のサブピクセルの配置の第2の例を示す部分平面図である。この図18においては、水平方向に同じ色のサブピクセル34r,34g,34bが並び、垂直方向に異なる色のサブピクセル34r,34g,34bが並ぶ。垂直方向に並ぶ一組の34r,34g,34bと、水平方向に並ぶ複数のサブピクセル34r,34g,34bによって、画素34が構成される。
【0152】
図19は、長方形のサブピクセル34r,34g,34bによって構成される画素の一例を示す部分断面図である。この図19においては、水平方向に異なる色のサブピクセル34r,34g,34bが並び、垂直方向に同じ色のサブピクセル34r,34g,34bが並ぶ。水平方向に並ぶ一組の34r,34g,34bによって、画素34が構成される。
【0153】
上記の各実施形態は、発明の趣旨が変わらない範囲で様々に変更して適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
1,30…液晶表示装置、2,31…液晶パネル、3…偏光板、4…バックライトユニット、5,32…対向基板、6…アレイ基板、7,26…液晶層、8…カラーフィルタ、9,10…固体発光素子、11…光制御素子、12…反射板、13…半円柱状レンズ、14…三角柱状プリズム、15,18…透明基板、16…透明樹脂層、17a,17b…対向電極、19a〜19c…絶縁層、20a,20b…遮光パターン、21a,21b…共通電極、22a,22b…画素電極、23…アクティブ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射された光が光制御素子を介して液晶パネルを通過する液晶表示装置において、
前記光制御素子は、
複数の三角柱状プリズムを、当該三角柱状プリズムの長手方向が互いに平行となるように配列した第1の面と、複数の半円柱状レンズを、前記複数の三角柱状プリズムと背中合わせとなり当該半円柱状レンズの長手方向が互いに平行となるように配列した第2の面とを備える一体樹脂シートであり、
前記複数の三角柱状プリズムの長手方向と前記複数の半円柱状レンズの長手方向とは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルの前記第1の面と前記第2の面とにおいて、1つの前記半円柱状レンズに対して、n個の前記三角柱状プリズムが対応し、前記nは、2から150の範囲にある整数である、ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルは、画素電極を含むアレイ基板と、対向電極を含む対向基板とを対向させ、前記アレイ基板と前記対向基板との間に液晶層を備えた構成を持ち、
前記画素電極と前記対向電極とは、前記断面において、1画素又は1サブピクセルの垂直方向の中心軸を基準とする線対称であり、
前記画素電極と前記対向電極とは、前記1画素又は前記1サブピクセルの前記断面が前記中心軸で区切られる1/2断面において、前記液晶パネルのパネル平面と水平な方向にずれた配置関係を持つ、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルは、画素電極と共通電極とを含むアレイ基板と、対向電極を含む対向基板とを対向させ、前記アレイ基板と前記対向基板との間に液晶層を備えた構成を持ち、
前記液晶パネルの垂直断面において、前記共通電極と前記対向電極とは、前記画素電極を挟む位置にあり、
前記画素電極と前記共通電極と前記対向電極とは、前記断面において、1画素又は1サブピクセルの垂直方向の中心軸を基準とする線対称であり、
前記画素電極と前記対向電極とは、前記1画素又は前記1サブピクセルの前記断面が前記中心軸で区切られる1/2断面において、前記液晶パネルのパネル平面と水平な第1の方向にずれた第1の配置関係を持ち、
前記画素電極と前記共通電極とは、前記1/2断面において、前記第1の方向と逆の第2の方向にずれた第2の配置関係を持つ、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の液晶表示装置において、
前記1画素又は前記1サブピクセルの前記断面が前記中心軸で区切られる一方の1/2断面及び他方の1/2断面のそれぞれに対応し、前記画素電極と接続される2つのアクティブ素子をさらに具備し、
前記2つのアクティブ素子は、前記固体発光素子と同期し、3次元表示を行う、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記発光素子は、それぞれが赤色発光ダイオードと、緑色発光ダイオードと、青色発光ダイオードとを個別に備える2つの発光ユニットを備え、
前記2つの発光ユニットは、前記液晶パネルの向かい合う2つの辺に対応する位置にそれぞれ備えられており、前記複数の三角柱状プリズムの長手方向に対して垂直に前記光を発する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルは、赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタを含むカラーフィルタを備えており、
前記発光素子は、赤、緑、青の3波長を含む白色光を発する2つの発光ユニットを備え、
前記2つの発光ユニットは、前記液晶パネルの向かい合う2つの辺に対応する位置にそれぞれ備えられており、前記複数の三角柱状プリズムの長手方向に対して垂直に前記白色光を発する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルの1表示単位は、横方向に、前記赤フィルタと前記緑フィルタと前記青フィルタとを同じ順序で2組配置することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルの液晶層に含まれる液晶分子の長手方向は、黒表示時に、前記液晶パネルのパネル面に対して垂直方向であり、白表示又は階調表示時に、前記パネル面に対して前記垂直方向から水平方向に傾斜する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルの液晶層は、初期垂直配向であり、かつ、負の誘電率異方性を持ち、液晶駆動において前記液晶パネルの厚み方向に対して斜めの電界が発生する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルの液晶層は、初期垂直配向であり、かつ、正の誘電率異方性を持ち、液晶駆動において、前記液晶パネルの厚み方向に対して斜めの電界と前記液晶パネルのパネル平面と水平な方向に向かう電界とのうちの少なくとも一方が発生する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルは、複数の画素又は複数のサブピクセルのマトリックス配列に基づいて構成され、
前記複数の画素又は複数のサブピクセルの縦方向と、前記複数の三角柱状プリズムの長手方向とは、平面視で前記モアレ抑制角度θを持つ、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記モアレ抑制角度θは、3°から43°の範囲のいずれかの角度であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルにおける液晶駆動と前記固体発光素子の駆動とを同期させ、3次元表示時に、前記固体発光素子を時分割駆動させる、ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】
複数の三角柱状プリズムを、当該三角柱状プリズムの長手方向が互いに平行となるように配列した第1の面と、複数の半円柱状レンズを、前記複数の三角柱状プリズムと背中合わせとなり当該半円柱状レンズの長手方向が互いに平行となるように配列した第2の面とを備える一体樹脂シートであり、
前記複数の三角柱状プリズムの長手方向と前記複数の半円柱状レンズの長手方向とは、平面視でモアレ抑制角度θを持つ、ことを特徴とする光制御素子。
【請求項16】
前記第1の面と前記第2の面とにおいて、1つの前記半円柱状レンズに対して、n個の前記三角柱状プリズムが対応し、前記nは、2から150の範囲にある整数である、ことを特徴とする請求項15記載の光制御素子。
【請求項17】
前記一体樹脂シートは、矩形状に成形されており、
前記複数の半円柱状レンズの長手方向は、前記液晶パネルの向かい合う2つの側辺と平行である、
ことを特徴とする請求項15又は請求項16記載の光制御素子。
【請求項18】
前記モアレ抑制角度θは、3°から43°の範囲のいずれかの角度である、ことを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載の光制御素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−54321(P2013−54321A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194342(P2011−194342)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】