説明

液晶表示装置用カラーフィルター基板

【課題】従来では達成できなかった高い顔料濃度のカラーフィルター基板を良好な積層塗布性、現像性、パターン形成性を維持しつつ作成し、さらには表示品位の高い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ブラックマトリックスがパターン加工された透明基板上に赤、緑、青色の3原色からなる着色層を複数配列したカラーフィルター基板において、少なくとも一色の画素が熱硬化性樹脂層の上に感光性樹脂層が積層されており、熱硬化性樹脂においてポリマー/モノマー比(重量比)が60/40以上80/20以下であり、感光性樹脂が透明ネガ型材料であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルター基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター基板、およびカラーフィルター基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示装置は軽量、薄型、低消費電力等の特性を生かし、ノートPC、携帯情報端末、デジタルカメラ等様々な用途で使用されている。液晶表示装置の表示特性(輝度、色再現性、視野角特性など)がより向上したことにより、液晶表示装置の用途は、従来のノートPC用途に加え、デスクトップモニタ用途への展開が進んでいる。さらに、最近ではデスクトップモニタの色再現性をさらに向上させた大型の液晶テレビが開発されている。
【0003】
液晶表示装置をカラー化するために用いられるカラーフィルター基板は、一般に透明基板上に形成された赤、緑、青の3原色の着色層を一絵素として多数の絵素から構成されている。そして、各着色層間には、表示コントラストを高めるために遮光領域(画面上では、一般に黒色に見えることから、ブラックマトリックスと称されている)が設けられている。
【0004】
色再現範囲を広げた液晶表示装置を作製するには、カラーフィルター基板の画素を濃色化すればよい。濃色化する方法はカラーフィルター基板用ペーストの顔料/ポリマー成分の顔料濃度を上げる方法がある。しかしカラーフィルター基板用ペーストがネガ型感光性アクリル材料である場合は、顔料濃度を上げるとカラーフィルター基板製造のフォトリソ加工工程で、光硬化が進まないので加工できない問題がある。
【0005】
一方、カラーフィルター基板用ペーストが熱硬化性材料である場合には、ポジ型レジストなどの感光材料を使ってフォトリソ加工をするが、ポジ型レジストの剥離工程で、剥離溶剤により、パターンにクラックが入ったり、欠落したりする問題が発生する。
【0006】
また、顔料濃度を上げずに濃色化する方法は画素の膜厚を厚くする方法がある。しかしながら従来のデスクトップモニタ用途、あるいは液晶テレビ用途のカラーフィルター基板を厚膜化して、NTSC規格並に色再現範囲を広げると、単層で膜厚が大きい画素は均一なパターン形成が難しく、画素テーパーが大きくなるために解像度が落ちたりする場合があった。また、熱硬化性着色層の上に感光性着色層を積層し、画素を濃色化する方法が知られている(例えば特許文献1または2参照)。しかし、熱硬化性樹脂にポリイミドを使用していたため材料コストが高く、問題が残っていた。
【特許文献1】特開2003−121633公報
【特許文献2】特開2004−184664公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、かかる従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、従来では達成できなかった高い顔料濃度のカラーフィルター基板を、良好な積層塗布性、現像性、パターン形成性を維持しつつ作成し、さらには表示品位の高い液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のカラーフィルター基板およびカラーフィルター基板の製造方法を見いだした。
すなわち、
(1)ブラックマトリックスがパターン加工された透明基板上に赤、緑、青の各色の画素が複数配列された液晶表示装置用カラーフィルター基板において、該液晶表示装置用カラーフィルター基板の少なくとも一色の画素が、ポリマーと熱硬化性モノマーを含有する熱硬化性樹脂層上にネガ型感光性樹脂を積層してパターン形成されており、かつ熱硬化性樹脂中のポリマー/熱硬化性モノマー比(重量比)が60/40以上80/20以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(2)前記熱硬化性モノマーがアクリルモノマーであって、該アクリルモノマーの酸価が100mgKOH/g以上であることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(3)前記熱硬化性樹脂層がさらに顔料を含有し、顔料/ポリマー比(重量比)が50/50以上70/30以下であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(4)前記ネガ型感光性樹脂が透明であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(5)前記ネガ型感光性樹脂が下記一般式(1)で表されるフルオレン構造を有するモノマーを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは末端にアクリル基を有するアルキル基またはアリール基である。)
(6)(A)〜(E)のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法であって、少なくとも下記の工程をこの順に行うことを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法。
(A)ブラックマトリクスがパターン加工された透明基板上に熱硬化性樹脂組成物を塗布、セミキュアして熱硬化性樹脂層を形成する工程
(B)該熱硬化性樹脂層上にネガ型感光性樹脂組成物を塗布、セミキュアして感光性樹脂層を形成する工程
(C)フォトマスクを介してネガ型感光性樹脂層を露光する工程
(D)現像液により、未露光部のネガ型感光性樹脂層とその下側の熱硬化性樹脂層を同時に除去する工程
(E)透明基板上の熱硬化性樹脂層と露光済みのネガ型感光性樹脂層を加熱、硬化させる工程
【発明の効果】
【0011】
積層塗布性、現像性、パターン形成性が良好で、高い顔料濃度のカラーフィルター基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のカラーフィルター基板においては、顔料で着色した熱硬化性樹脂層の上にネガ型感光性樹脂層を積層することが重要である。さらに、熱硬化性樹脂層は感光機能を持たず着色機能のみを有するので顔料をより多く含むことができ、画素を濃色化することができる。
【0013】
熱硬化性樹脂におけるポリマー/モノマー比(重量比)は60/40以上80/20以下が好ましい。より好ましくは65/35以上75/25以下である。熱硬化性樹脂層と感光性樹脂層を積層塗布をする際、熱硬化性樹脂成分中のポリマー/モノマー比が60/40未満であると上層塗布時に下層が上層の溶剤に溶け、膜の膨潤が起こる。逆にポリマー/モノマー比が80/20より大きいと現像の際に現像液に塗膜が十分に溶解されず、パターン加工性に問題が生じる場合がある。
【0014】
熱硬化性樹脂材料としてはポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の材料が好ましく用いられる。顔料の分散性、アルカリ溶解性などを考慮して特にアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0015】
アクリル系樹脂としては少なくともアクリル系ポリマー、アクリル系多官能モノマーあるいはオリゴマーを含有させた構成を有するのが一般的である。使用できるアクリル系ポリマーとしては、特に限定はないが、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、あるいは酸無水物などがあげられる。これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nープロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
また、側鎖にエチレン性不飽和基を付加したアクリル系ポリマーを用いると、加工の際の感度がよくなるので好ましく用いることができる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のようなものがある。このような側鎖をアクリル系(共)重合体に付加させる方法としては、アクリル系(共)重合体のカルボキシル基や水酸基などを有する場合には、これらにグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸またはメタクリル酸クロライドを付加反応させる方法が一般的である。その他、イソシアネートを利用してエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させることもできる。ここでいうグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸またはメタクリル酸クロライドとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどがあげられる。
【0017】
熱硬化性の多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートのようなオリゴマー、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独または混合して用いることができる。また、次にあげるような単官能モノマーも併用することができ、例えば、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどがあり、これらの2種以上の混合物、あるいはその他の化合物との混合物などが用いられる。これらの多官能及び単官能モノマーやオリゴマーの選択と組み合わせにより、ペーストの加工性の特性をコントロールすることが可能である。特に、硬度を高くするにはアクリレート化合物よりメタクリレート化合物が好ましく、官能基が3以上ある化合物が好ましい。また、メラミン類、グアナミン類などもアクリル系モノマーの代わりに好ましく用いることができる。
【0018】
本発明においては、積層塗布の際に下層膜に膨潤等の不具合なく、均一に塗布することが重要である。例えば、積層塗布する際に下層膜の耐溶剤性が小さいと、後から塗布するペーストの溶剤に下層膜が溶け出し塗膜が膨潤したりしわが発生する場合がある。塗膜の耐溶剤性を向上させるには、より多くの極性官能基を有するポリマーもしくはモノマーを用いたりセミキュア温度を高くしてもよい。
【0019】
本発明においては、用いるアクリルモノマーに限定はしないが、熱硬化性樹脂層の上に感光性樹脂層を塗布する時に塗膜が膨潤しないことが好ましい。具体的には、酸価が100mgKOH/g以上のアクリルモノマーを用いることが好ましい。酸価が100mgKOH/gよりも小さいと、感光性樹脂層を塗布したときに熱硬化性樹脂層が感光性樹脂層に溶け出し、塗膜が膨潤するためである。さらに110mgKOH/g以上が好ましい。酸価が100mgKOH/g以上のモノマーの例としては、東亞合成化学(株)製のアロニックスシリーズM−5400、TO−756などが挙げられる。
【0020】
熱硬化性樹脂層を塗布した後のセミキュアの温度については、溶剤の揮発が不十分である場合、感光性樹脂層を塗布した際に、溶媒置換が起こり下地の熱硬化性樹脂層が膨潤する恐れがあるため、120℃以上が好ましい。より好ましくは150℃以上180℃以下である。
【0021】
熱硬化性樹脂を含む着色層における顔料/ポリマー比(重量比)としては、50/50以上70/30以下が好ましく、55/45以上60/40以下がさらに好ましい。顔料/ポリマー比(重量比)が70/30より大きいほど画素が濃色化され色再現範囲が広がるが、基板との接着性の低下によるパターン剥がれ、塗膜強度の低下によるクラック、あるいは現像液への溶解度が低下等が生じる場合があり、パターン形成が難しくなる。一方、顔料/ポリマー比(重量比)が50/50より小さいと、パターン形成は良好になるが、着色度の低下が生じ色再現範囲は小さくなる。
【0022】
また、熱硬化性樹脂層上に塗布する感光性樹脂組成物として、透明感光レジストを用いることで剥離工程が不要となりフォトレジスト剥離工程が短縮でき、且つ、剥離溶剤によって熱硬化性樹脂層にクラックが入ったり欠落したりする問題も無くなり従来以上に顔料濃度を上げることができる。また、上層に感光機能と下層に着色機能と分離していることから、色の感度調整が不要となる利点がある。ここでいう「透明」とは、具体的には製膜後に可視光領域の平均透過率が80%以上となることである。
【0023】
本発明のカラーフィルター基板は、少なくとも赤、緑、青の3色の色画素から構成され、非感光樹脂層において使用される着色材料は、有機顔料、無機顔料、染料問わず着色剤全般を使用することができる。代表的な顔料の例として、ピグメントレッド(PR−)、2、3、22、38、149,166、168、177,206、207、209、224、242,254、ピグメントオレンジ(PO−)5、13、17、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、ピグメントイエロー(PY−)12、13、14、17、20、24、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150,153、154、166、173、185、ピグメントグリーン(PG−)7、10、36、47、58、ピグメントブルー(PB−)15(15:1、15:2、15:3、15:4、15:6)、21、22、60、64、ピグメントバイオレット(PV−)19、23、29、32、33、36、37、38、40、50などが挙げられる。本発明ではこれらに限定されずに種々の顔料を使用することができる。
【0024】
ネガ型感光性樹脂材料については、熱硬化性樹脂材料で用いたものと同様のアクリル系ポリマーやモノマー、顔料を用いることができ、さらに感光機能を持たせるために光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、特に限定はなく、公知のものが使用でき、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体などがあげられる。また、その他のアセトフェノン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、リン系化合物、トリアジン系化合物、あるいはチタネート等の無機系光重合開始剤なども好ましく用いることができる。また、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどの増感助剤を添加すると、さらに感度を向上させることができ好ましい。また、これらの光重合開始剤は2種類以上を併用して用いることもできる。光重合開始剤の添加量としては、特に限定はないが、ペースト全固形分に対して、好ましくは1〜30wt%、より好ましくは5〜25wt%である。
【0025】
感光性樹脂層の膜厚については0.3〜2.5μmが好ましい。0.3μmよりも薄いと現像時に感光性樹脂が剥がれパターン形成ができなくなる問題、厚いと高精細なパターン加工ができなくなる問題がある。感光性樹脂層の膜厚マージンが広いと、品種によって着色熱硬化性樹脂層の膜厚が様々な厚さとなった場合でもトータルの膜厚を一定にすることができる。これによって非感光カラーペーストの品種ごとの膜厚調整が不要となり、ペースト品種削減、フォトマスク品種削減、品種切替時間の削減などのコストダウンができる。
【0026】
従来の感光性樹脂は膜厚0.5μmにおいて現像時に熱硬化性樹脂層から剥がれてしまい、膜厚マージンが狭かった。本発明においては感光性樹脂層の膜厚マージンを広げるには、フルオレン構造を有するモノマーを感光性樹脂層に添加することで現像液への溶解度を小さくし感光性樹脂層が熱硬化性樹脂層から剥がれにくくなることを見出した。また、フルオレン構造を有するモノマーとしてさらにアクリル基を有するものを用いることで、キュア後の塗膜の強度を高めることができる。フルオレン構造を有するモノマーの添加量は5〜20wt%が好ましく、10〜15wt%がさらに好ましい。
【0027】
また、フルオレン構造を有するモノマーだけでなく白色顔料を添加することでも、透明性を保ったまま現像時の溶解度を調節し、膜厚マージンを広げることができることを見出した。例えば白色顔料として硫酸バリウムをペースト全固形分に対して10〜20wt%添加することで感光性樹脂層が剥がれるのを防ぐことができる。
【0028】
本発明で用いるカラーペーストにおける溶媒としては、使用するポリアミック酸、あるいはアクリル系樹脂を溶解するものを使用することができる。ポリアミック酸を溶解する溶媒としては、例えばN―メチル―2―ピロリドン、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N―ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶媒、β―プロピオラクトン、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、ε―カプロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。また、アクリル系樹脂の場合には、これらに加え、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールあるいはプロピレングリコール誘導体、あるいは、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル―3―メトキシプロピオネート、3―メチル―3―メトキシブチルアセテートなどの脂肪族エステル類、あるいは、エタノール、3―メチル―3―メトキシブタノールなどの脂肪族アルコール類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類を用いることも可能である。 従って、本発明に用いるカラーペースト用溶媒としては使用樹脂を溶解する単独あるいは2種類以上の溶媒の混合溶媒を、適宜組み合わせて使用するのが好ましい。この場合は、副溶剤として、使用する樹脂に対する貧溶媒を用いることも可能である。好ましい溶媒としては、特に限定されるわけではないが、例えばN−メチルピロリドンとシクロペンタノンの混合溶媒などがあげられ、特にアクリル系樹脂の場合には、シクロペンタノン単独でも好ましく用いることができる。
【0029】
樹脂含有塗液、熱硬化性カラーペーストまたは感光性カラーレジストを塗布する方法としては、ディップ法、ロールコーター法、スピンコーティング法、ダイコーティング法、ダイコーティングとスピンコーティング併用法、ワイヤーバーコーティング法などが好適に用いられる。
【0030】
着色層を形成する方法としては、ブラックマトリックスが形成された透明基板上に、たとえば熱硬化性カラーペーストを塗布、ホットプレート、オーブン、真空乾燥を用いて加熱乾燥(セミキュア)する。このセミキュア膜上に感光性レジストを塗布し、加熱乾燥(プリベーク)する。プリベーク後にマスク露光、アルカリ現像し、加熱硬化させる。フォトリソ工程で熱硬化性カラーペースト層と感光性レジスト層とを同時にパターニングし、1回のフォトリソ加工でありながら積層構成の画素を形成することができる。
【0031】
本発明のカラーフィルター基板の製造工程に用いるアルカリ現像液は有機アルカリ現像液と無機アルカリ現像液のどちらも用いることができる。無機アルカリ現像液では炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液などが好適に用いられる。有機アルカリ現像液ではテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、メタノールアミンなどのアミン系水溶液が好適に用いられる。現像液には現像の均一性を上げるために界面活性剤を添加することが好ましい。アルカリ現像はディップ現像、シャワー現像、パドル現像などの方法が可能である。現像後はアルカリ現像液を除去するために純水洗浄を行う。シャワー現像では最適な画素形状になるようにシャワー圧力を調整することが好ましい。シャワー圧力が弱いと、画素の解像度が低下する。シャワー圧力が強いと画素が基板から剥がれることがある。シャワーの圧力は0.05〜5MPaが好ましい。
【0032】
現像工程を経て得られた熱硬化性樹脂層と感光性樹脂層を、その後、加熱処理させる。加熱は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中で、170〜300℃、好ましくは180〜260℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
【0033】
カラーフィルター基板の形成は、ガラス、高分子フィルム等の透明基板側に限定されず、駆動素子側基板にも行うことができる。また、必要に応じてカラーフィルター基板上に柱状の固定式スペーサーが配置されていてもよい。
【0034】
本発明のカラーフィルター基板は、液晶表示装置の駆動方法、表示方式にも限定されず、アクティブマトリクス方式、パッシブマトリクス方式、TNモード、STNモード、IPSモード、ECBモード、OCBモード、VAモードなど種々の液晶表示装置に適用される。
【実施例】
【0035】
実施例1
A.熱硬化性カラーペーストの作製
ピグメントグリーンPG36とピグメントイエローPY150が重量比70/30の混合物1重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEA)5重量部とともに仕込み、ホモジナイザーを用い、7000rpmで5時間分散後、ガラスビーズを濾過し、除去し、顔料分散液を得た。次にこの分散液100重量部に対して、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、およびトリシクロデカニルメタクリレートを合成した後、グリシジルメタクリレートを付加したアクリルポリマー(40質量%、以下ポリマーAとする)19.4重量部、反応性モノマーとして酸価100mgKOH/gのTO−756(東亞合成(株)製)3.3重量部、および溶剤としてPGMEA50重量部を加え、熱硬化性緑ペーストを作製した。このペーストの顔料/ポリマー比(重量比)は60/40、ポリマー/モノマー比(重量比)は70/30である。同様にして、ピグメントレッドPR177からなる熱硬化性赤ペースト、ピグメントブルーPB15:6からなる熱硬化性青ペーストを得た。
【0036】
B.ネガ型感光性透明レジストの作製
ポリマーA10重量部、反応性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート(以下DPHA)5重量部、フルオレンアクリルモノマーとしてBPEFA(ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート)(大阪ガス(株)製)1重量部、光重合開始剤として“イルガキュア”907 1重量部、溶剤としてPGMEA50重量部を混合してネガ型感光性透明レジストを作製した。このレジストのフルオレンアクリルモノマーは樹脂分の10%である。
【0037】
C.着色塗膜の作成と評価
ブラックマトリクスがパターン加工されたガラス基板上に熱硬化性緑ペーストを膜厚が2μmになるようにスピンナーで塗布した。該塗膜を、120℃のオーブンで10分乾燥してセミキュアを行った。この上にネガ型感光性透明レジストを膜厚が1.0μmになるように塗布し、120℃で10分オーブン乾燥してセミキュアを行った。キヤノン株式会社製紫外線露光機PLA−501Fを用い、フォトマスクパターンを介してブラックマトリックスの開口部に塗布した樹脂層が残るように300mJ/cm(365nmの紫外線強度)で露光した。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下TMAH)0.5%と界面活性剤(例えばエマルゲンA‐60(花王(株)製))1.0%の水溶液からなる現像液に浸漬し、フォトレジストの現像、熱硬化性塗膜のエッチングを同時に行った。その後、230℃で30分熱処理してガラス基板上の熱硬化性樹脂層と露光済みのネガ型感光性樹脂層を加熱、硬化させた。赤、青の画素についても同様にして作成した。
【0038】
得られた着色塗膜の評価方法は以下のとおりである。
【0039】
積層塗布性
熱硬化性樹脂層上にネガ型感光性樹脂層を塗布しセミキュアしたときの、しわやクラックの有無を評価した。
◎:しわ、クラックともに発生せず、良好な塗膜が得られた。
○:セミキュア温度を150℃に上げることによって、しわやクラックの無い塗膜が得られた。
△:セミキュア温度に関わらず、しわが発生し、良好な塗膜は得られなかった。
×:セミキュア温度に関わらず、クラックが発生し、良好な塗膜は得られなかった。
【0040】
現像性
現像工程において、残膜箇所の有無とパターン欠落の有無を評価した。
◎:残膜、パターン欠落なく現像できた。
○:現像液のTMAH濃度を1.0%に上げることによって、残膜せず現像できた。
△:現像液のTMAH濃度に関わらず、残膜し現像できなかった。
×:現像液のTMAH濃度に関わらず、パターンが欠落し現像できなかった。
【0041】
パターン形成性
加熱、硬化後のパターンにおいて、オーバーエッチングやバリの有無について評価した。
◎:オーバーエッチングもバリも無く良好なパターンが得られた。
○:わずかにオーバーエッチングがあるが、実用上問題無い程度のパターンが得られた。
△:わずかにバリがあるが、実用上問題無い程度のパターンが得られた。
×:バリ、またはオーバーエッチングが発生し実用不向きなパターンが得られた。
【0042】
実施例2
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0043】
実施例3
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、顔料/ポリマー比(重量比)が50/50であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0044】
実施例4
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、顔料/ポリマー比(重量比)が70/30であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0045】
実施例5
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、顔料/ポリマー比(重量比)が45/55であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0046】
実施例6
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、顔料/ポリマー比(重量比)が75/25であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0047】
実施例7
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、反応性モノマーとして、TO−756 7重量部とTO−1382(東亞合成(株)製)3重量部の混合物(酸価80mgKOH/g)を用い、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0048】
実施例8
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、反応性モノマーとして酸価30mgKOH/gのTO−1382を用い、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0049】
実施例9
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、顔料/ポリマー比(重量比)が60/40であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0050】
実施例10
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、顔料/ポリマー比(重量比)が80/20であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0051】
比較例1
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、ポリマー/モノマー比(重量比)が55/45であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0052】
比較例2
各色の熱硬化性カラーペーストにおいて、ポリマー/モノマー比(重量比)が85/15であり、BPEFAを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でカラーフィルター基板を作成した。
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造工程を表す図である。
【符号の説明】
【0055】
1:ガラス基板
2:ブラックマトリックス
3:熱硬化性樹脂層
4:感光性樹脂層
5:フォトマスク
a:熱硬化性樹脂組成物を形成したときの断面図
b:熱硬化性樹脂層の上に感光性樹脂層を形成したときの断面図
c:フォトマスクを介して感光性樹脂層を露光するときの断面図
d:現像液により、未露光部の感光性樹脂と熱硬化性樹脂を同時に除去し、加熱硬化したときの断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックマトリックスがパターン加工された透明基板上に赤、緑、青の各色の画素が複数配列された液晶表示装置用カラーフィルター基板において、該液晶表示装置用カラーフィルター基板の少なくとも一色の画素が、ポリマーと熱硬化性モノマーを含有する熱硬化性樹脂層上にネガ型感光性樹脂を積層してパターン形成されており、かつ熱硬化性樹脂中のポリマー/熱硬化性モノマー比(重量比)が60/40以上80/20以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項2】
前記熱硬化性モノマーがアクリルモノマーであって、該アクリルモノマーの酸価が100mgKOH/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂層がさらに顔料を含有し、顔料/ポリマー比(重量比)が50/50以上70/30以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項4】
前記ネガ型感光性樹脂が透明であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項5】
前記ネガ型感光性樹脂が下記一般式(1)で表されるフルオレン構造を有するモノマーを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【化1】

(式中、Rは末端にアクリル基を有するアルキル基またはアリール基である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法であって、少なくとも下記の工程をこの順に行うことを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法。
(A)ブラックマトリクスがパターン加工された透明基板上に熱硬化性樹脂組成物を塗布、セミキュアして熱硬化性樹脂層を形成する工程
(B)該熱硬化性樹脂層上にネガ型感光性樹脂組成物を塗布、セミキュアして感光性樹脂層を形成する工程
(C)フォトマスクを介してネガ型感光性樹脂層を露光する工程
(D)現像液により、未露光部のネガ型感光性樹脂層とその下側の熱硬化性樹脂層を同時に除去する工程
(E)透明基板上の熱硬化性樹脂層と露光済みのネガ型感光性樹脂層を加熱、硬化させる工程

【図1】
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【公開番号】特開2009−210973(P2009−210973A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55919(P2008−55919)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】