説明

液浸露光用感放射線性樹脂組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】波長193nmにおける液浸露光時に接触した水などの液浸露光用液体への溶出物の量が少ない。
【解決手段】波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する液浸露光を含むレジストパターン形成方法に用いられ、酸の作用によりアルカリ可溶性となる樹脂(A)と、感放射線性酸発生剤(B)とを含有し、該感放射線性酸発生剤(B)が下記式(1)で表される化合物を含有する。


各R1は相互に独立に炭素数1〜8のパーフルオロもしくは部分的にフッ素化された直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または互いのR1が結合したフッ素化アルキレン基を表し、3つのR2は少なくとも1つのR2が炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表し、残りのR2は水素原子を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液浸露光用感放射線性樹脂組成物に関し、特にレンズとフォトレジスト膜との間に、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する液浸露光を含むレジストパターンに適用される液浸露光用感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近では100nm以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。
従来のリソグラフィープロセスでは、一般に放射線としてi線等の近紫外線が用いられているが、この近紫外線では、サブクオーターミクロンレベルの微細加工が極めて困難であるといわれている。そこで、200nm以下のレベルでの微細加工を可能とするために、より波長の短い放射線の利用が検討されている。このような短波長の放射線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、X線、電子線等を挙げることができるが、これらのうち、特にKrFエキシマレーザ(波長248nm)あるいはArFエキシマレーザ(波長193nm)が注目されている。
このようなエキシマレーザによる照射に適したレジストとして、酸解離性官能基を有する成分と、放射線の照射(以下、「露光」ともいう。)により酸を発生する成分(以下、「酸発生剤」という。)とによる化学増幅効果を利用したレジスト(以下、「化学増幅型レジスト」という。)が数多く提案されている。化学増幅型レジストとしては、例えば、カルボン酸のt−ブチルエステル基またはフェノールのt−ブチルカーボナート基を有する樹脂と酸発生剤とを含有するレジストが提案されている。このレジストは、露光により発生した酸の作用により、樹脂中に存在するt−ブチルエステル基またはt−ブチルカーボナート基が解離して、該樹脂がカルボキシル基または フェノール性水酸基からなる酸性基を有するようになり、その結果、レジスト被膜の露光領域がアルカリ現像液に易溶性となる現象を利用したものである。
【0003】
このようなリソグラフィープロセスにおいては、今後はさらに微細なパターン形成(例えば、線幅が90nm程度の微細なレジストパターン)が要求される。このような90nmより微細なパターン形成を達成させるためには、上記のように露光装置の光源波長の短波長化や、レンズの開口数(NA)を増大させることが考えられる。しかしながら、光源波長の短波長化には新たな高額の露光装置が必要となる。また、レンズの高NA化では、解像度と焦点深度がトレードオフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度が低下するという問題がある。
【0004】
最近、このような問題を解決可能とするリソグラフィー技術として、液浸露光(リキッドイマージョンリソグラフィー)法が開発されている。この方法は、露光時に、レンズと基板上のレジスト被膜との間の少なくともレジスト被膜上に所定厚さの純水またはフッ素系不活性液体等の液状屈折率媒体(浸漬液)を介在させるというものである。この方法では、従来は空気や窒素等の不活性ガスであった露光光路空間を屈折率(n)のより大きい液体、例えば純水等で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いてもより短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様に、高解像性が達成されると同時に焦点深度の低下もない。このような液浸露光を用いれば、現存の装置に実装されているレンズを用いて、低コストで、より高解像性に優れ、かつ焦点深度にも優れるレジストパターンの形成を実現できるため注目されている。
【0005】
ところが、この液浸露光プロセスにおいては、露光時にレジスト被膜が直接、水等の高屈折率液体(浸漬液)に接触するため、レジスト被膜から酸発生剤等が溶出してしまう可能性がある。この溶出物の量が多いと、レンズにダメージを与えたり、所定のパターン形状が得られなかったり、十分な解像度が得られないという問題がある。
そこで、液浸露光装置に使用するレジスト用の樹脂として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の樹脂が提案されている。
しかしながら、これらの樹脂を用いたレジストでも、焦点深度は必ずしも十分ではなかった。
また、液浸露光装置に使用するレジストにおいて、酸発生剤等の水への溶出物量をさらに低減することが切望されている。
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2004/068242号公報
【特許文献2】特開2005−173474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、得られるパターン形状が良好であり、焦点深度に優れ、かつ波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する、液浸露光時に接触した水などの液浸露光用液体への溶出物の量が少ない液浸露光に用いられる感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液浸露光用感放射線性樹脂組成物(以下、「感放射線性樹脂組成物」ともいう)は、レンズとフォトレジスト膜との間に、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する液浸露光を含むレジストパターン形成方法に用いられ、酸の作用によりアルカリ可溶性となる樹脂(A)と、感放射線性酸発生剤(B)とを含有し、該感放射線性酸発生剤(B)が下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【化2】

式(1)において、各R1は相互に独立に炭素数1〜8のパーフルオロもしくは部分的にフッ素化された直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または互いのR1が結合したフッ素化アルキレン基を表し、3つのR2は少なくとも1つのR2が炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表し、残りのR2は水素原子を表す。
【0009】
本発明のレジストパターン形成方法は、レンズとフォトレジスト膜との間に、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する液浸露光を含むレジストパターン形成方法において、上記フォトレジスト膜が上記液浸露光用感放射線性樹脂組成物を用いて形成され、この形成されたフォトレジスト膜と上記液浸露光用液体とが相互に直接接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液浸露光用感放射線性樹脂組成物は、酸不安定な樹脂に、撥水性に優れた式(1)で表される感放射線性酸発生剤を用いるので、液浸露光時に接触する水への溶出物の量を低減することができる。また、液浸露光に起因するウォーターマーク欠陥等を低減することができる。そのため、今後さらに微細化が進む半導体デバイス製造に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
感放射線性酸発生剤(B)
本発明で使用できる光酸発生剤は、露光により酸を発生する感放射線性酸発生剤(以下、単に「酸発生剤」という。)からなる。酸発生剤は、露光により発生した酸の作用によって、共重合体中に存在する繰り返し単位中の酸解離性基を解離させ、すなわち保護基を脱離させ、その結果レジスト被膜の露光部がアルカリ現像液に易溶性となり、ポジ型のレジストパターンを形成する作用を有するものである。本実施形態における酸発生剤としては、下記式(1)で表される化合物(以下、総合して「酸発生剤B1」という。)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
【化3】

式(1)において、各R1は相互に独立に炭素数1〜8のパーフルオロもしくは部分的にフッ素化された直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または互いのR1が結合したフッ素化アルキレン基を表し、3つのR2は少なくとも1つのR2が炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表し、残りのR2は水素原子を表す。
【0013】
また、R1の炭素数1〜8のパーフルオロもしくは部分的にフッ素化された直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−ブチル基、ヘプタフルオロ−i−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ノナフルオロ−2−メチルプロピル基、ノナフルオロ−1−メチルプロピル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、パーフルオロネオペンチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロ−n−ヘプチル基、パーフルオロ−n−オクチル基等を挙げることができる。
【0014】
また、互いのR1が結合したアルキレン基としては、具体的にはパーフルオロもしくは部分的にフッ素化されたアルキレン基であり、例えば、テトラフルオロエチレン基、1,2−ヘキサフルオロプロピレン基、1,3−ヘキサフルオロプロピレン基、1,2−オクタフルオロブチレン基、1,3−オクタフルオロブチレン基、1,4−オクタフルオロブチレン基、2−トリフルオロメチル−1,3−ペンタフルオロプロピレン基、1,5−パーフルオロペンチレン基、1,6−パーフルオロへキシレン基、1,7−パーフルオロヘプチレン基、1,8−パーフルオロオクチレン基等を挙げることができる。
【0015】
また、R2の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチル−2−プロピル基、2−エチル−2−ブチル基、2−エチル−2−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0016】
式(1)で表される酸発生剤B1のアニオン部位の好ましいものとしては、下記化合物(2−1)〜(2−7)が挙げられる。
【化4】

【0017】
式(1)で表される酸発生剤B1のカチオン部位の好ましいものとしては、下記化合物(3−1)〜(3−4)が挙げられる。
【化5】

【0018】
式(1)で表される酸発生剤は、上記化合物(2−1)〜(2−7)で表されるアニオン部位と、上記化合物(3−1)〜(3−4)で表されるカチオン部位との全ての組合せが好ましく、さらに下記式で示されたスルホニウム塩が酸発生剤B1として特に好ましい。酸発生剤B1は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【化6】

【0019】
また、本発明における感放射線性酸発生剤として使用することのできる、上記酸発生剤B1以外のスルホニウム塩に由来する感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤B2」という。)としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2'−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
上記酸発生剤B2は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
また、上記酸発生剤B1およびB2以外の感放射線性酸発生剤(以下、「他の酸発生剤」という。)としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、
シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
上記他の酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
本発明において、酸発生剤(B)の合計使用量は、レジストとしての感度、現像性並びに組成物からの液浸液への溶出を抑制する観点から、後述する樹脂(A)100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。この場合、合計使用量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方20質量部をこえると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンを得られ難くなり、溶出抑制効果が見られなくなる傾向がある。また、酸発生剤B1の使用割合は、酸発生剤B1、酸発生剤B2と他の酸発生剤との合計に対して、通常、10質量%以上、好ましくは20質量%以上である。
【0022】
酸の作用によりアルカリ可溶性となる樹脂(A)
本発明における酸の作用によりアルカリ可溶性となる樹脂(A)(以下、「樹脂(A)」という。)は、特に限定されるものではないが、下記式(4)で表される基を含有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」とする)を含有する酸の作用によりアルカリ可溶性となるアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の樹脂である。ここでいう「アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性」とは、樹脂(A)を含有する感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、当該レジスト被膜の代わりに樹脂(A)のみを用いた被膜を現像した場合に、当該被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
【化7】

上記式(4)において、R3は相互に独立に炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、かつR3の少なくとも1つが上記脂環式炭化水素基もしくはその誘導体であるか、または何れか2つのR3が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体を形成し、残りのR3が炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体を表す。
【0023】
式(4)において、R3の炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基、および何れか2つのR3が相互に結合して形成された炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等を挙げることができる。これらの脂環式炭化水素基のうち、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンに由来する脂環族環からなる基や、これらの脂環族環からなる基を上記アルキル基で置換した基等が好ましい。
【0024】
また、上記脂環式炭化水素基の誘導体としては、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基(即ち、=O基);ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシル基;シアノ基;シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜5のシアノアルキル基等の置換基を1種以上或いは1個以上有する基を挙げることができる。これらの置換基のうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、シアノメチル基等が好ましい。
【0025】
また、R3の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が好ましい。
【0026】
好ましい式(4)としては、例えば、下記式(a)、式(b)、式(c)または式(d)で表される基が好ましい。
【化8】

式(a)、式(b)、式(c)および式(d)において、各R4は相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、mは0〜4の整数である。
【0027】
式(a)、式(b)、式(c)および式(d)において、R4の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が好ましい。
【0028】
上記式(a)で表される基としては、特に、2つのR4がともにメチル基である基が好ましい。また、上記式(b)で表される基としては、特に、R4がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基である基が好ましい。また、上記式(c)で表される基としては、特に、mが0でR4がメチル基である基、mが0でR4がエチル基である基、mが1でR4がメチル基である基、mが1でR4がエチル基である基が好ましい。上記式(d)で表される基としては、特に、2つのR4がともにメチル基である基が好ましい。
【0029】
また、繰り返し単位(1)が含有する上記以外の骨格としては、例えば、t−ブトキシカルボニル基や、下記式(e−1)〜(e−8)の基等を挙げることができる。
【化9】

【0030】
繰り返し単位(1)の主鎖骨格は特に限定されるものではないが、好ましくは、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルまたはαトリフルオロアクリル酸エステル構造を有する。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル」とはアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの双方を意味するものとする。
【0031】
上記繰り返し単位(1)を与える単量体の中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ヒドロキシアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−3−ヒドロキシアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−n−プロピルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸−8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メチルテトラシクロ[6.2.13,6.02,7]ドデカン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−エチルテトラシクロ[6.2.13,6.02,7]ドデカン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−(テトラシクロ[6.2.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1,1−ジシクロヘキシルエチルエステイル、(メタ)アクリル酸1,1−ジ(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)エチルエステル、(メタ)アクリル酸1,1−ジ(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)エチルエステル、(メタ)アクリル酸1,1−ジ(テトラシクロ[6.2.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチルエステル、(メタ)アクリル酸1,1−ジ(アダマンタン−1−イル)エチルエステル、(メタ)アクリル酸1−メチル−1−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシルエステル等が挙げられる。
特に好適な単量体としては、(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−メチル−1−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシルエステル等が挙げられる。
また、本発明における樹脂(A)は、繰り返し単位(1)の2種以上を含有してもよい。
【0032】
樹脂(A)は、更に、ラクトン基に由来する下記式(4−1)〜(4−6)で表される基を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」とする)を含有することが好ましい。
【化10】

式(4−1)〜(4−6)の各式において、R5は水素原子または炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基を表し、R6は水素原子またはメトキシ基を表す。Aは単結合またはメチレン基を表し、Bは酸素原子またはメチレン基を表す。lは1〜3の整数を示し、m’は0または1である。
なお、繰り返し単位(2)の主鎖骨格は特に限定されるものではないが、好ましくは、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルあるいはαトリフルオロアクリル酸エステル構造を有する。
【0033】
繰り返し単位(2)を与える単量体の中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.03,8]デカ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−10−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.03,8]デカ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−6−オキソ−7−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシカルボニル−6−オキソ−7−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−7−オキソ−8−オキサ−ビシクロ[3.3.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシカルボニル−7−オキソ−8−オキサ−ビシクロ[3.3.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メチル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−エチル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−プロピル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2,2−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5,5−ジメチル−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−3,3−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステルが挙げられる。
【0034】
樹脂(A)は、更に、繰り返し単位(1)および繰り返し単位(2)以外の繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」という。)を1種以上含有することができる。
この他の繰り返し単位としては、下記式(5)で表される繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位(3)」とする)、下記式(6)で表される繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位(4)」とする)、下記式(7)で表される繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位(5)」とする)から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有することが好ましい。
【化11】

式(5)において、R7は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、Zは炭素数7〜20の多環型脂環式炭化水素基であり、この炭素数7〜20の多環型脂環式炭化水素基は、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基で置換されていても、置換されていなくてもよい。
【化12】

式(6)において、R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基を表し、R9は2価の有機基を表す。
【化13】

式(7)において、R10は水素またはメチル基を表し、Xは単結合または炭素数1〜3の2価の有機基を表し、Yは相互に独立に単結合または炭素数1〜3の2価の有機基を表し、R11は相互に独立に水素原子、水酸基、シアノ基、またはCOOR12基を表す(ただし、R12は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数3〜20の脂環式のアルキル基を表す。なお、3つのR11のうち少なくとも1つは水素原子でなく、かつXが単結合のときは、3つのYのうち少なくとも1つは炭素数1〜3の2価の有機基であることが好ましい。
【0035】
式(5)で表される他の繰り返し単位(3)のZとしては、好ましくは、炭素数7〜20の多環型脂環式炭化水素基である。このような多環型脂環式炭化水素基としては、例えば、下記式に示すように、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(5a)、ビシクロ[2.2.2]オクタン(5b)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(5c)、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン(5d)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(5e)等のシクロアルカン類に由来する脂環族環からなる炭化水素基が挙げられる。
【化14】

これらのシクロアルカン由来の脂環族環は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換してもよい。これらは例えば、以下の様な具体例で表されるが、これらのアルキル基によって置換されたものに限定されるものではなく、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、酸素で置換されたものであってもよい。また、これらの他の繰り返し単位(3)は1種または2種以上を含有することができる。
【0036】
繰り返し単位(3)を与える単量体の中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等が挙げられる。
【0037】
式(6)で表される他の繰り返し単位(4)のR8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基が挙げられる。
また、R9の2価の有機基は、好ましくは2価の炭化水素基であり、2価の炭化水素基の中でも好ましくは鎖状または環状の炭化水素基が好ましく、アルキレングリコール基、アルキレンエステル基であってもよい。
好ましいR9としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基もしくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、または、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基もしくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2〜4環式炭素数4〜30の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。
特にR9として2価の脂肪族環状炭化水素基を含むときは、ビストリフルオロメチル−ヒドロキシ−メチル基と該脂肪族環状炭化水素基との間にスペーサーとして炭素数1〜4のアルキレン基を挿入することが好ましい。
また、R9としては、2,5−ノルボルニレン基を含む炭化水素基、1,2−エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0038】
他の繰り返し単位(4)を与える単量体の中で好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−3−プロピル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−5−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸2−{[5−(1',1',1'−トリフルオロ−2'−トリフルオロメチル−2'−ヒドロキシ)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル}エステル、(メタ)アクリル酸3−{[8−(1',1',1'−トリフルオロ−2'−トリフルオロメチル−2'−ヒドロキシ)プロピル]テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル}エステル等が挙げられる。
【0039】
式(7)で表される繰り返し単位(5)において、Xは単結合または炭素数1〜3の2価の有機基を表し、Yは相互に独立に単結合または炭素数1〜3の2価の有機基を表すが、XおよびYで表される炭素数1〜3の2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。
式(7)で表される繰り返し単位(5)におけるR11で表される−COOR12基のR12は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数3〜20の脂環式のアルキル基を表す。
12における、上記炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基を例示できる。また、上記炭素数3〜20の脂環式のアルキル基としては、−C2n−1(nは3〜20の整数)で表されるシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が、また、多環型脂環式アルキル基、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、テトラシクロ[6.2.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等、または、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上でシクロアルキル基または多環型脂環式アルキル基の一部を置換した基等が挙げられる。
【0040】
繰り返し単位(5)を与える単量体の中で好ましい単量体としては、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンタン−1−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシアダマンタン−1−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−5−メチルアダマンタン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−7−メチルアダマンタン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン−1−イルメチルエステル、等が挙げられる。
【0041】
上記繰り返し単位(1)〜(5)以外の繰り返し単位として、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルメチル等の有橋式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸カルボキシノルボルニル、(メタ)アクリル酸カルボキシトリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸カルボキシテトラシクロウンデカニル等の不飽和カルボン酸の有橋式炭化水素骨格を有するカルボキシル基含有エステル類;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メトキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−シクロペンチルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−シクロヘキシルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−(4−メトキシシクロヘキシル)オキシカルボニルエチル等の有橋式炭化水素骨格をもたない(メタ)アクリル酸エステル類;
α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−ブチル等のα−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル等の不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド等の不飽和アミド化合物;N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の他の含窒素ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸(無水物)類;(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2−カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−カルボキシブチル、(メタ)アクリル酸4−カルボキシシクロヘキシル等の不飽和カルボン酸の有橋式炭化水素骨格をもたないカルボキシル基含有エステル類;
【0042】
1,2−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジメチロールジ(メタ)アクリレート等の有橋式炭化水素骨格を有する多官能性単量体;
メチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンジ(メタ)アクリレート等の有橋式炭化水素骨格をもたない多官能性単量体等の多官能性単量体の重合性不飽和結合が開裂した単位を挙げることができる。
これらの上記繰り返し単位(1)〜(5)以外の他の繰り返し単位のうち、有橋式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル類の重合性不飽和結合が開裂した単位等が好ましい。
【0043】
樹脂(A)において、繰り返し単位(1)の含有率は、全繰り返し単位に対して、通常、10〜90モル%、好ましくは10〜80モル%、更に好ましくは20〜70モル%である。この場合、繰り返し単位(1)の含有率が10モル%未満では、レジストとしての解像性が劣化するおそれがあり、一方90モル%をこえると、レジストの現像性が劣化するおそれがある。
繰り返し単位(2)の含有率は、全繰り返し単位に対して、通常10〜70モル%、好ましくは15〜65モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。この場合、繰り返し単位(2)の含有率が10モル%未満では、レジストとして、アルカリ現像液に対する溶解性が低下して、現像欠陥の一因となったり、露光余裕が悪化するおそれがある。露光余裕とは、露光量の変化に対する線幅の変動を示す。一方70モル%をこえると、レジストの溶剤への溶解性が低くなり解像度が低下したりするおそれがある。
【0044】
繰り返し単位(3)の含有率は、全繰り返し単位に対して、通常、30モル%以下、好ましくは25モル%以下である。この場合、繰り返し単位(3)の含有率が30モル%をこえると、得られるレジスト被膜がアルカリ現像液により膨潤しやすくなったり、アルカリ現像液に対する溶解性が低下したりするおそれがある。
【0045】
繰り返し単位(4)の含有率は、全繰り返し単位に対して、通常、30モル%以下、好ましくは25モル%以下である。この場合、繰り返し単位(4)の含有率が30モル%をこえると、レジストパターンのトップロスが生じパターン形状が悪化するおそれがある。
【0046】
繰り返し単位(5)の含有率は、全繰り返し単位に対して、通常、30モル%以下、好ましくは25モル%以下である。この場合、繰り返し単位(5)の含有率が30モル%をこえると、得られるレジスト被膜がアルカリ現像液により膨潤しやすくなったり、アルカリ現像液に対する溶解性が低下したりするおそれがある。
【0047】
更に、他の繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位に対して、通常、50モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
【0048】
樹脂(A)は、例えば、その各繰り返し単位に対応する重合性不飽和単量体を、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤を使用し、必要に応じて連鎖移動剤の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。上記重合に使用される溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、上記重合における反応温度は、通常、40〜150℃、好ましくは50〜120℃であり、反応時間は、通常、1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0049】
樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算質量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、特に限定されないが、好ましくは1000〜100000、更に好ましくは1000〜30000、更に好ましくは1000〜20000である。この場合、樹脂(A)のMwが1000未満では、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向があり、一方100000をこえると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。また、樹脂(A)のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜5、好ましくは1〜3である。
【0050】
本発明における樹脂(A)においては、この樹脂(A)を調製する際に用いられる単量体由来の低分子量成分の含有量が固形分換算にて、この成分全量に対して0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.07質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。この含有量が0.1質量%以下である場合には、液浸露光時に接触した水への溶出物の量を少なくすることができる。更に、レジスト保管時にレジスト中に異物が発生することがなく、レジスト塗布時においても塗布ムラが発生することなく、レジストパターン形成時における欠陥の発生を十分に抑制することができる。上記単量体由来の低分子量成分としては、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマーが挙げられ、Mw500以下の成分とすることができる。このMw500以下の成分は、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等により除去することができる。また、樹脂の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析することができる。
なお、樹脂(A)は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないほど好ましく、それにより、レジストとしたときの感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等を更に改善することができる。本発明において、樹脂(A)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
窒素含有化合物(C)
さらに本発明の組成物は窒素含有化合物(C)を含むことが好ましい。
本発明で使用できる窒素含有化合物(C)は、露光により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する酸拡散制御剤として作用する。このような酸拡散制御剤を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度が更に向上するとともに、露光から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。
【0052】
その酸拡散制御剤としては、「3級アミン化合物」、「アミド基含有化合物」、「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」、「その他含窒素複素環化合物」等を挙げることができる。これら酸拡散制御剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
「3級アミン化合物」としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリンなどのアルカノールアミン類;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等を挙げることができる。
【0053】
「アミド基含有化合物」としては、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N'N'−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物等を挙げることができる。
【0054】
「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」としては、例えば、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。
「その他含窒素複素環化合物」としては、例えば、;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ [2.2.2] オクタン、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0055】
本発明において、窒素含有化合物(C)の合計使用量は、レジストとしての高い感度を確保する観点から、樹脂100質量部に対して、通常、10質量部未満、好ましくは5質量部未満である。この場合、合計使用量が10質量部をこえると、レジストとしての感度が著しく低下する傾向にある。なお、窒素含有化合物の使用量が0.001質量部未満では、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0056】
<添加剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、酸拡散制御剤、酸解離性基を有する脂環族添加剤、界面活性剤、増感剤等の各種の添加剤を配合することができる。
上記酸解離性基を有する脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を更に改善する作用を示す成分である。
このような脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸α−ブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類や、3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等を挙げることができる。これらの脂環族添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これら脂環族添加剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常、50質量部以下、好ましくは30質量部以下である。この場合、脂環族添加剤の配合量が50質量部をこえると、レジストとしての耐熱性が低下する傾向がある。
【0057】
上記界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。
このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下商品名で、KP341(信越化学工業株式会社製)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学株式会社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(トーケムプロダクツ株式会社製)、メガファックスF171、同F173(大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子株式会社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常、2質量部以下である。
【0058】
上記増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(B)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すもので、感放射線性樹脂組成物のみかけの感度を向上させる効果を有する。
このような増感剤としては、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。増感剤の配合量は、樹脂(A)100質量部当り、好ましくは50質量部以下である。
また、染料或いは顔料を配合することにより、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和でき、接着助剤を配合することにより、基板との接着性を改善することができる。更に、前記以外の添加剤としては、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0059】
<組成物溶液の調製>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、普通、その使用に際して、全固形分濃度が、通常、1〜50質量%、好ましくは1〜25質量%となるように、溶剤に溶解したのち、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって、組成物溶液として調製される。
【0060】
上記組成物溶液の調製に使用される溶剤(D)としては、例えば、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等の直鎖状もしくは分岐状のケトン類;シクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、イソホロン等の環状のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸sec−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸t−ブチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類のほか、
【0061】
n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トルエン、キシレン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等を挙げることができる。
【0062】
これらのなかでも、直鎖状もしくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
<レジストパターンの形成方法>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、特に化学増幅型レジストとして有用である。化学増幅型レジストにおいては、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、樹脂(A)中の酸解離性基が解離して、カルボキシル基を生じ、その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、該露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンが得られる。本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハ、アルミニウムで被覆されたウエハ等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め加熱処理(以下、「PB」という。)を行なったのち、所定のレジストパターンを形成するように該レジスト被膜に露光する。その際に使用される放射線としては、使用される酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を適宜選定して使用されるが、ArFエキシマレーザ(波長193nm)或いはKrFエキシマレーザ(波長248nm)で代表される遠紫外線が好ましく、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)が好ましい。また、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定され、液浸露光でも構わない。本発明においては、露光後に加熱処理(PEB)を行なうことが好ましい。このPEBにより、樹脂(A)中の酸解離性基の解離反応が円滑に進行する。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって変わるが、通常、30〜200℃、好ましくは50〜170℃である。
【0064】
本発明においては、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6−12452号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系或いは無機系の反射防止膜を形成しておくこともでき、また環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に保護膜を設けることもでき、或いはこれらの技術を併用することもできる。
次いで、露光されたレジスト被膜を現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。前記アルカリ性水溶液の濃度は、通常、10質量%以下である。この場合、アルカリ性水溶液の濃度が10質量%をこえると、非露光部も現像液に溶解するおそれがあり好ましくない。
【0065】
また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、例えば有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。有機溶媒の使用量は、アルカリ性水溶液に対して、100容量%以下が好ましい。この場合、有機溶媒の使用量が100容量%をこえると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。なおアルカリ性水溶液からなる現像液で現像したのちは、一般に、水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0066】
樹脂合成例
放射線照射時の液浸媒体、例えば水に安定な膜を形成でき、レジストパターン形成後の現像液に溶解する樹脂(A−1)を以下に示す方法により合成した。なお、樹脂(A−1)のMwは、東ソー株式会社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0067】
樹脂(A−1)
下記化合物(M−1)53.93g(50モル%)、化合物(M−2)35.38g(40モル%)、化合物(M−3)10.69g(10モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した500mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(74g、収率74%)。この重合体はMwが6900、Mw/Mn=1.70、13C-NMR分析の結果、化合物(M−1)、化合物(M−2)、化合物(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有率が53.0:37.2:9.8(モル%)の共重合体であった。この重合体を樹脂(A−1)とする。なおこの樹脂中の各単量体由来の低分子量成分の含有量は、この樹脂100質量%に対して、0.03質量%であった。
【化15】

【0068】
感放射線性樹脂組成物の評価
表1に示す成分からなる各組成物について各種評価を行なった。露光条件、溶出に関する評価結果および他の評価結果を表2に示す。なお表1に示す樹脂以外の成分は以下の通りであり、表中、「部」は、特記しない限り質量基準である。
酸発生剤(B)
(B−1):B1−3
(B−2):B1−4
(B−3):1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート
(B−4):トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
含窒素化合物(C)
(C−1):N−t−ブトキシカルボニルピロリジン
溶剤(D)
(D−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D−2):シクロヘキサノン
【0069】
評価方法
(1)溶出量(酸発生剤溶出量および酸拡散制御剤溶出量)
溶出量測定方法を説明する図を図1に示す。
予めCLEAN TRACK ACT8(東京エレクトロン株式会社製)にてHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理(100℃、60秒)を行なった処理層1aを有する8インチシリコンウエハ1上の中心部に、中央部が直径(D1)11.3cmの円形状にくり抜かれたシリコーンゴムシート2(クレハエラストマー社製、厚み;1.0mm、形状;1辺30cmの正方形)を載せた。次いで、シリコーンゴムシート2中央のくり抜き部に10mlホールピペットを用いて超純水3を10ml満たした。
その後、上記シリコーンゴムシート上に、予めCLEAN TRACK ACT8により、膜厚77nmの下層反射防止膜4a(「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)を形成し、次いで、表1のレジスト組成物を上記CLEAN TRACK ACT8にて、上記下層反射防止膜上にスピンコートし、ベーク(115℃、60秒)することにより膜厚205nmのレジスト被膜5を形成した8インチシリコンウエハ4(直径D2)を、レジスト塗膜面が上記超純水と接触するよう合わせ、かつ超純水がシリコーンゴムから漏れないように載せた。
そして、その状態のまま10秒間保った。その後、上記8インチシリコンウエハを取り除き、超純水をガラス注射器にて回収し、これを分析用サンプルとした。なお、実験終了後の超純水の回収率は95%以上であった。
次いで、上記で得られた超純水中の光酸発生剤のアニオン部のピーク強度を、LC−MS(液体クロマトグラフ質量分析計、LC部:AGILENT社製 SERIES1100、MS部:Perseptive Biosystems,Inc.社製 Mariner)を用いて下記の測定条件により測定した。その際、酸発生剤の1ppb、10ppb、100ppb水溶液の各ピーク強度を上記測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いて上記ピーク強度から溶出量を算出した。また、同様にして、酸拡散制御剤の1ppb、10ppb、100ppb水溶液の各ピーク強度を上記測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いて上記ピーク強度から酸拡散制御剤の溶出量を算出した。その溶出量が、5.0×10-12mol/cm2/sec以上であった場合は不良、以下であった場合は良好とした。
【0070】
(カラム条件)
使用カラム;「CAPCELL PAK MG」、資生堂株式会社製、1本
流量;0.2ml/分
流出溶剤:水/メタノール(3/7)に0.1質量%のギ酸を添加したもの
測定温度;35℃
【0071】
(2)感度
基板として、表面に膜厚77nmの下層反射防止膜(「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)を形成した12インチシリコンウエハを用いた。なおこの反射防止膜の形成には、「CLEAN TRACK ACT8」(東京エレクトロン株式会社製)を用いた。
次いで、表1のレジスト組成物を上記基板上に、上記CLEAN TRACK ACT8にて、スピンコートし、表2の条件でPBを行なうことにより、膜厚150nmのレジスト被膜を形成した。このレジスト被膜に、ArFエキシマレーザ露光装置(「NSR S306C」、ニコン社製、証明条件;NA0.78、シグマ0.93/0.69)により、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す条件でPEBを行なったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で30秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅90nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。なおこの測長には走査型電子顕微鏡(「S−9380」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0072】
(3)ウォーターマーク欠陥
基板として、表面に膜厚77nmの下層反射防止膜(「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)を形成した12インチシリコンウェハを用いた。なお、この反射防止膜の形成には、「CLEAN TRACK ACT12」(東京エレクトロン株式会社製)を用いた。
次いで、表1のレジスト組成物を上記基板上に、上記CLEAN TRACK ACT12にて、スピンコートし、表2の条件でベーク(PB)を行なうことにより、膜厚150nmのレジスト被膜を形成した。このレジスト被膜に、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(「ASML AT1250i」、ASML製)をNA=0.85、シグマ=0.96/0.76にて、マスクパターンを介して露光した。この際、レジスト上面と液浸露光機レンズの間には液浸溶媒として純水が用いられている。その後、表2に示す条件でPEBを行なったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅100nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。なお、この測長には走査型電子顕微鏡(「S−9380」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。その後、線幅100nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)上の欠陥数をKLA-Tencor社製KLA2351を用いて測定した。またKLA2351にて測定された欠陥を走査型電子顕微鏡(「S−9380」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、小ブリッジタイプ欠陥とArFエキシマレーザー液浸露光由来と予想されるウォーターマーク欠陥を区別した。その際、ウォーターマーク欠陥数が10以上の場合は不良とし、10以下の場合は良好とした。その結果は表2に示した。なお、小ブリッジタイプ欠陥はレジスト組成物上面レンズ間に純水を満たさない通常のArFエキシマレーザー露光でも観察される欠陥タイプである。
(4)パターンの断面形状:
90nmライン・アンド・スペースパターンの断面形状を株式会社日立ハイテクノロジーズ社製「S−4800」にて観察し、T‐TOP形状を示していた場合は「×」、矩形形状が得られた場合は「○」とした。
【0073】
【表1】

【表2】

表2から明らかなように、本発明の液浸露光用感放射線性樹脂組成物を用いた場合には、得られるパターン形状が良好であり、液浸露光時に接触した水への溶出物の量が少なく、ウォーターマーク欠陥が少ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の液浸露光用感放射線性樹脂組成物は、式(1)で表される感放射線性酸発生剤を用いるので、液浸露光時に接触する水への溶出物の量を低減することができ、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】溶出量測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
1 シリコンウエハ
2 シリコーンゴムシート
3 超純水
4 シリコンウエハ
5 レジスト被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズとフォトレジスト膜との間に、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する液浸露光を含むレジストパターン形成方法に用いられ、前記フォトレジスト膜を形成する感放射線性樹脂組成物が、酸の作用によりアルカリ可溶性となる樹脂(A)と、感放射線性酸発生剤(B)とを含有し、該感放射線性酸発生剤(B)が下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする液浸露光用感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)において、各R1は相互に独立に炭素数1〜8のパーフルオロもしくは部分的にフッ素化された直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または互いのR1が結合したフッ素化アルキレン基を表し、3つのR2は少なくとも1つのR2が炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表し、残りのR2は水素原子を表す。)
【請求項2】
レンズとフォトレジスト膜との間に、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光用液体を介して放射線照射する液浸露光を含むレジストパターン形成方法において、
前記フォトレジスト膜が請求項1記載の液浸露光用感放射線性樹脂組成物を用いて形成され、この形成されたフォトレジスト膜と前記液浸露光用液体とが相互に直接接触することを特徴とするレジストパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−52102(P2008−52102A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229094(P2006−229094)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】