説明

液滴吐出方法、重量測定方法、液滴吐出装置

【課題】各液滴吐出ヘッド、又は各液滴吐出ノズルからの液滴の吐出重量を均一にすることが可能な液滴吐出方法、重量測定方法、液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】まず液滴吐出ヘッドに駆動電圧V1を印加して液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、液滴吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量Iw1を測定する(測定工程)。次に、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、測定工程における前記重量の測定結果(プロットP)と、に基づいて修正駆動電圧V2を算出する(算出工程)。当該一次関数の傾きは、吐出する液状体の種類に応じて、α(R),α(G),α(B)から選択する。次に、液滴吐出ヘッドに修正駆動電圧V2を印加して、液滴吐出ヘッドから液状体を液滴として吐出する(吐出工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体の液滴吐出方法、重量測定方法、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット法(液滴吐出法)を用いて、機能性材料を含む液状体を基板上に液滴として吐出して、機能性材料からなる薄膜を形成する形成方法が提案されている。その薄膜の代表的な例としては、カラーフィルタや発光層、金属配線などが挙げられる。
【0003】
このような液滴吐出方法では、基板上に必要な量の液状体を安定的に塗布するため、吐出される液滴の重量を予め調整しておくことが重要である。そのための液状体の液滴の重量測定方法としては、ワーク(基板)に対して液滴を吐出する際に管理するのと同様の環境条件下で液滴吐出ヘッドから液滴を吐出し、このときに吐出された液滴の量を測定する方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
上記液滴の重量の調整に際しては、まず最初に液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して重量を測定し、その値が所定の範囲に入っているか否かを判断する。そして、測定値が所定の範囲内にない場合は、液滴吐出ヘッドの駆動電圧を修正して再度液滴を吐出し、重量を測定する。ここで、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の重量は、駆動電圧との間にほぼ線形の関係があるため、駆動電圧の修正に際しては、当該線形の関係を表す一次関数に基づいて所望の液滴重量が得られる修正駆動電圧を選択する。修正駆動電圧を用いた液滴の再吐出においても測定重量が所定の範囲内に入らない場合は、さらに上記一次関数に基づいて駆動電圧を修正して再吐出を行う。このように、吐出された液滴の重量の測定値が所定の範囲に収まるまで吐出と重量測定を繰り返すのが一般的である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−209429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、駆動電圧と液滴の吐出重量との線形関係は、吐出する液状体の特性によって異なる場合があり、さらには、液滴吐出ヘッドごと、又は液滴吐出ヘッドに含まれる液滴吐出ノズルごとに異なる場合がある。このため、単一の一次関数に基づいて全ての液滴吐出ヘッド(又は液滴吐出ノズル)の修正駆動電圧を決定すると、液滴吐出ヘッド(又は液滴吐出ノズル)ごとに吐出される液滴の重量にばらつきが生ずるという問題点がある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の奏する効果の一つにより、各液滴吐出ヘッド、又は各液滴吐出ノズルからの液滴の吐出重量を均一にすることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液滴吐出方法は、キャリッジに搭載された複数の液滴吐出ヘッドに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、複数の前記液滴吐出ヘッドに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として吐出する吐出工程と、を有し、前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、それぞれの液滴吐出ヘッドについて、傾きの異なる一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出することができるので、修正駆動電圧を、液滴吐出ヘッドごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ヘッドにおける吐出重量のばらつきを修正駆動電圧の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0010】
上記液滴吐出方法において、前記一次関数の傾きは、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれに対し、当該液滴吐出ヘッドの特性に応じた値が割り当てられていてもよい。このような方法によれば、各液滴吐出ヘッドの駆動電圧−吐出液滴重量特性に合った一次関数を用いることができる。そして、それぞれの液滴吐出ヘッドについて、当該一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出するので、各液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を所望の値とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0011】
上記液滴吐出方法において、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれは、少なくとも2種類の異なる色のいずれかに対応するとともに、前記測定工程及び前記吐出工程において当該色の色要素を含む前記液状体の液滴を吐出し、前記一次関数の傾きは、前記液滴吐出ヘッドが対応する前記色に応じて選択されるようにしてもよい。
【0012】
また、上記液滴吐出方法において、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれは、赤、緑、青のいずれかの色に対応するとともに、前記測定工程及び前記吐出工程において当該色の前記色要素を含む前記液状体の液滴を吐出するようにしてもよい。
【0013】
このような方法によれば、液状体に含まれる色要素の種類によって駆動電圧−吐出液滴重量特性が変動したとしても、色要素の色に応じた一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出するので、各液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を所望の値とすることができる。これにより、吐出工程において、異なる色に対応する液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0014】
本発明の液滴吐出方法は、液滴吐出ヘッドに含まれる複数の液滴吐出ノズルに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ノズルごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、前記液滴吐出ノズルのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、複数の前記液滴吐出ノズルに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として吐出する吐出工程と、を有し、前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする。
【0015】
このような方法によれば、それぞれの液滴吐出ノズルについて、傾きの異なる一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出することができるので、修正駆動電圧を、液滴吐出ノズルごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ノズルにおける吐出重量のばらつきを修正駆動電圧の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ノズルからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0016】
上記液滴吐出方法において、前記一次関数の傾きは、前記液滴吐出ノズルのそれぞれに対し、当該液滴吐出ノズルの特性に応じた値が割り当てられていてもよい。このような方法によれば、各液滴吐出ノズルの駆動電圧−吐出液滴重量特性に合った一次関数を用いることができる。そして、それぞれの液滴吐出ノズルについて、当該一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出するので、各液滴吐出ノズルにおける吐出重量を所望の値とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ノズルからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0017】
本発明の重量測定方法は、キャリッジに搭載された複数の液滴吐出ヘッドに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、複数の前記液滴吐出ヘッドに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を測定する再測定工程と、を有し、前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする。
【0018】
このような方法によれば、それぞれの液滴吐出ヘッドについて、傾きの異なる一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出することができるので、修正駆動電圧を、液滴吐出ヘッドごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ヘッドにおける吐出重量のばらつきを修正駆動電圧の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0019】
本発明の重量測定方法は、液滴吐出ヘッドに含まれる複数の液滴吐出ノズルに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ノズルごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、前記液滴吐出ノズルのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、複数の前記液滴吐出ノズルに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ノズルごとに吐出された前記液状体の重量を測定する再測定工程と、を有し、前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする。
【0020】
このような方法によれば、それぞれの液滴吐出ノズルについて、傾きの異なる一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出することができるので、修正駆動電圧を、液滴吐出ノズルごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ノズルにおける吐出重量のばらつきを修正駆動電圧の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。これにより、再測定工程における各液滴吐出ノズルからの液滴の吐出重量を均一にすることができ、液滴吐出ノズルを、均一な吐出が可能な状態に調整することができる。
【0021】
本発明の液滴吐出装置は、キャリッジと、前記キャリッジに搭載され、液状体の液滴を吐出する複数の液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドに駆動電圧を印加する駆動部と、前記液状体の液滴の重量を測定する重量測定機構と、前記液滴吐出ヘッド、前記駆動部、前記重量測定機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記駆動部に、前記駆動電圧を前記液滴吐出ヘッドに対して印加させて、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出させるステップと、前記重量測定機構に、吐出された前記液状体の重量を測定させるステップと、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出するステップと、前記駆動部に、前記修正駆動電圧を前記液滴吐出ヘッドに対して印加させて、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として吐出させるステップと、を実行し、前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、それぞれの液滴吐出ヘッドについて、傾きの異なる一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出することができるので、修正駆動電圧を、液滴吐出ヘッドごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ヘッドにおける吐出重量のばらつきを修正駆動電圧の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0023】
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドに含まれる複数の液滴吐出ノズルと、前記液滴吐出ノズルに駆動電圧を印加する駆動部と、前記液状体の液滴の重量を測定する重量測定機構と、前記液滴吐出ノズル、前記駆動部、前記重量測定機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記駆動部に、前記駆動電圧を前記液滴吐出ノズルに対して印加させて、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出させるステップと、前記重量測定機構に、吐出された前記液状体の重量を測定させるステップと、前記液滴吐出ノズルのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出するステップと、前記駆動部に、前記修正駆動電圧を前記液滴吐出ノズルに対して印加させて、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として吐出させるステップと、を実行し、前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、それぞれの液滴吐出ノズルについて、傾きの異なる一次関数に基づいて修正駆動電圧を算出することができるので、修正駆動電圧を、液滴吐出ノズルごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ノズルにおける吐出重量のばらつきを修正駆動電圧の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ノズルからの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態は、液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出装置を用い、着色領域に着色層形成材料を含む液状体を付与して着色層を吐出描画するカラーフィルタの製造方法を例に説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0026】
(第1の実施形態)
<A.液滴吐出装置>
まず、液滴吐出装置について図1から図7に基づいて説明する。図1は、液滴吐出装置の構造を示す概略平面図である。
【0027】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ワークとしての基板Wが載置される吸着テーブル41をX軸方向に移動させるX軸テーブル22と、キャリッジとしてのキャリッジユニット21を、X軸テーブル22の上方においてY軸方向に移動させるY軸テーブル23とを備えている。
【0028】
キャリッジユニット21は、液状体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッド62(図3参照)が搭載されたヘッドユニット61と、ヘッドユニット61を含むキャリッジ本体66を吊設するメインキャリッジ63とを備えている。
【0029】
X軸テーブル22からY軸方向に外れた位置には、液滴吐出ヘッド62から吐出された液状体の重量を測定する重量測定機構91と、液滴吐出ヘッド62のメンテナンスを行うメンテナンス機構12が設けられている。Y軸テーブル23は、X軸テーブル22に直交して延設されており、描画領域31に配列されたキャリッジユニット21を、メンテナンス機構12が設けられたメンテナンス領域32、または重量測定機構91が設けられた重量測定領域33に移動させる。
【0030】
メンテナンス機構12は、液滴吐出ヘッド62内で増粘した液状体を吸引除去する吸引ユニット111と、吸引除去等によって液滴吐出ヘッド62の表面(ノズル面)に付着した液状体や異物をワイピングシート112aにより拭き取るワイピングユニット112とを備えている。吸引ユニット111およびワイピングユニット112は、アングル架台118上に配設されている。
【0031】
メンテナンス機構12は、上記各吸引ユニット111とワイピングユニット112とにより、複数のヘッドユニット61に搭載された複数の液滴吐出ヘッド62のノズル目詰まり等、吐出機能を回復させる装置である。
【0032】
図2は、液滴吐出装置1の構造を示す概略側面図である。詳しくは、メンテナンス機構12側から見た側面図である。
【0033】
図1および図2に示すように、液滴吐出ヘッド62の吐出機能を安定化させるため、X軸テーブル22には、キャリッジユニット21に対応して設けられた定期フラッシングボックス114と、吸着テーブル41のX軸方向の両端部に設けられた2つの描画前フラッシングボックス115と、を備えている。
【0034】
液滴吐出ヘッド62のすべての液滴吐出ノズル85(図3参照)から液状体を上記定期フラッシングボックス114や描画前フラッシングボックス115に向けて、定期的あるいは描画前に吐出するフラッシングを行うことにより液滴吐出ノズル85の目詰まりや液滴吐出ノズル85内の液状体のメニスカスを安定化させる。
【0035】
X軸テーブル22は、基台40と、基台40上に配設された一対のX軸ガイドレール45と、一対のX軸ガイドレール45に並設された一対のX軸リニアモータ(図示省略)とを備えている。また、X軸テーブル22は、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされ、X軸リニアモータによってX軸方向にスライド自在に移動するX軸スライダ44と、X軸スライダ44により支持されたテーブル支持部43とを備えている。テーブル支持部43には、基板Wを吸着(エアー吸引)セットする吸着テーブル41と、吸着テーブル41を介して基板Wのθ位置を微調整するθ軸テーブル42とが配設されている。一対のX軸リニアモータを駆動すると、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされたX軸スライダ44がX軸方向に移動して、吸着テーブル41にセットされた基板WをX軸方向に移動させることができる。
【0036】
また、吸着テーブル41には、図示しないが、X軸方向に一対のX軸幅寄せ機構が、Y軸方向に一対のY軸幅寄せ機構が設けられており、セットした基板Wを位置決め(プリアライメント)できるようになっている。セットされた基板Wは、Y軸テーブル23等に設けられたワーク認識カメラ(図示省略)により画像認識されて最終的に位置決めされる。
【0037】
図2に示すように、上記定期フラッシングボックス114は、その上面が吸着テーブル41の上面とほぼ同じ高さとなるようにテーブル支持部43に配設されている。同様に上記描画前フラッシングボックス115もその上面が吸着テーブル41の上面とほぼ同じ高さとなるように吸着テーブル41に配設されている。
【0038】
一方、Y軸テーブル23は、基台40から立設した一対の支持スタンド56と、一対の支持スタンド56上に架け渡された一対の柱状支持部材55と、一対の柱状支持部材55に併設された一対のY軸リニアモータ54とを備えている。一対の柱状支持部材55上には、一対のY軸ガイドレール53と、一対のY軸ガイドレール53にガイドされ、Y軸リニアモータ54によってY軸方向に自在に移動するY軸スライダ52とが設けられている。
【0039】
Y軸スライダ52は、キャリッジユニット21に対応して設けられ、メインキャリッジ63が吊設されたブリッジプレート51を支持している。Y軸リニアモータ54を駆動すると、一対のY軸ガイドレール53によりガイドされたY軸スライダ52がY軸方向に移動して、ブリッジプレート51に吊設されたメインキャリッジ63をY軸方向に移動させることができる。
【0040】
メインキャリッジ63は、ヘッドユニット61を支持するキャリッジ本体66と、キャリッジ本体66を吊設すると共に、キャリッジ本体66の上部に連結され、キャリッジ本体66を介して、ヘッドユニット61のθ位置をモータ駆動で微調整可能なヘッドθ軸テーブル67と、ヘッドθ軸テーブル67の上部に連結され、ヘッドθ軸テーブル67およびキャリッジ本体66を介して、ヘッドユニット61のZ軸方向の位置をモータ駆動で微調整可能なヘッドZ軸テーブル68とを有している。
【0041】
このような液滴吐出装置1は、ヘッパユニット6を上部に備えたチャンバ5に収容され、その内部が所定のクリーン度、温度、湿度となるように空調された状態で用いられる。
【0042】
図3は、キャリッジユニット21のヘッドユニット61に搭載された液滴吐出ヘッド62を示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)はノズルプレート82を示す平面図である。
【0043】
図3(a)に示すように、液滴吐出ヘッド62は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針72を有する液導入部71と、液導入部71に連なるヘッド基板73と、液導入部71の上方に連なり、内部に液状体が満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体74とを備えている。接続針72は、圧力調整弁を介して液状体が貯留されたタンクに接続されている。液滴吐出ヘッド62のヘッド内流路には、接続針72を介して液状体が供給される。また、ヘッド本体74は、圧電素子等で構成されたキャビティ81と、ノズル面82aに複数の液滴吐出ノズル85からなる2本のノズル列84が形成されたノズルプレート82とを有している。また、ヘッド基板73には、2連のコネクタ75が設けられており、各コネクタ75は、フレキシブルフラットケーブルを介してヘッドドライバ131(図7参照)に接続されている。ヘッドドライバ131は、圧電素子に駆動電圧を与えてキャビティ81の体積を変化させる。これによりキャビティ81に充填された液状体を加圧し、液滴吐出ノズル85から液状体を液滴として吐出する。
【0044】
図3(b)に示すように、各ノズル列84の長さは、例えば1インチ(略25.4mm)であって、各ノズル列84は180個の液滴吐出ノズル85が等しいピッチP1(略140μm)で並べられて構成されている。この場合、一方のノズル列84は、他方のノズル列84に対して、ノズル列方向に半ピッチ(70μm)分ずれて設けられている。したがって、各ノズル列方向と直交する方向から見ると複数の液滴吐出ノズル85がノズルピッチP2で配列した状態となっている。よって、複数の液滴吐出ノズル85から吐出された液滴のドット密度(解像度)は360dpiである。
【0045】
このような液滴吐出ヘッド62は、圧電素子を備えたものに限らず、駆動電圧を印加することによって液状体を吐出可能な構成であればどのような構成であってもよい。例えば、液状体を加圧するエネルギー発生手段として、振動板を静電吸着することによって振動させる電気機械変換素子や、液状体を加熱する発熱素子を備えたものでもよい。
【0046】
図4は、ヘッドユニット61における液滴吐出ヘッド62の配置を示す概略平面図である。詳しくは、X軸テーブル22側から見た平面図である。
【0047】
図4に示すように、ヘッドユニット61には、合計12個の液滴吐出ヘッド62が搭載されている。これらの液滴吐出ヘッド62は、大きくヘッド群62L,62Rに分けられている。ヘッド群62L,62Rは、それぞれ階段状に配列された6つの液滴吐出ヘッド62から構成されている。この6つの液滴吐出ヘッド62のそれぞれは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの色に対応しているとともに、対応する色が、端からRGBRGBの順に並ぶように配列されている。R,G,Bに対応する液滴吐出ヘッド62には、それぞれ赤色、緑色、青色の着色層形成材料を含む液状体が充填されている。したがって、液滴吐出ヘッド62は、R,G,Bのいずれかの色に対応しており、当該色の着色層形成材料を含む液状体を吐出するようになっている。ここで、着色層形成材料は、本発明における色要素に対応する。
【0048】
そして、例えば、赤色(R)の液状体が充填された4つの液滴吐出ヘッド62(図4中においては、符号R1,R2,R3,R4が付されている)の有効なノズル列84が、X軸方向から見て1ノズルピッチP2の間隔をおいてY軸方向に並んでいる。緑色(G)、青色(B)に対応する液滴吐出ヘッド62についても同様である。また、異なる色の液状体が充填された隣接する液滴吐出ヘッド62(例えばヘッドR2とヘッドG2、ヘッドG2とヘッドB2)の間では、有効なノズル列84が、ノズル列84の全長の1/3の長さだけY軸方向に互いにずれた状態で配置されている。したがって、同色の液状体を吐出可能なY軸方向についてのいわゆる描画幅は、この場合、(P2×359×4)+(P2×3)=100730μm、およそ100mmである。
【0049】
次に、図5および図6に基づいて重量測定機構91について説明する。図5はキャリッジユニット21と重量測定機構91との配置を示す概略図である。図6(a)は重量測定機構91を示す概略側面図、同図(b)は概略平面図である。
【0050】
図5に示すように、重量測定機構91は、キャリッジユニット21が配列された描画領域31とメンテナンス領域32との間に設けられた架台99上に配設されている。重量測定機構91が配設された重量測定領域33には、Y軸テーブル23によってキャリッジユニット21を移動させて配置することができる。
【0051】
重量測定機構91は、架台99との間にモータ98を備えた移動機構を有し、重量測定機構91をX軸方向に移動させることができる。モータ98は、例えばサーボモータを用いて構成される。
【0052】
図6(a)に示すように、重量測定機構91は、支持プレート97上に配設された4つの重量測定装置としての電子天秤95と、各電子天秤95ごとに設けられた第1液滴受け部94と、第2液滴受け部92とを備えている。電子天秤95は第1液滴受け部94に吐出された液状体の重量を測定可能となっている。
【0053】
第1液滴受け部94は、受け皿状となっており、吐出された液状体を吸収する吸収体96が敷設されている。
【0054】
第2液滴受け部92は、支持プレート97の四隅から立設した支柱に支えられており、その形状は受け皿状となっている。また、図6(b)に示すように、第2液滴受け部92は、第1液滴受け部94を囲む開口部92aを有している。そして、各第1液滴受け部94を囲むように同じく吸収体93が敷設されている。吸収体93は、その上面が吸収体96の上面とほぼ同じ高さとなるように敷設されている。このような吸収体93,96としては、例えば、多孔質の発泡プラスチックが用いられる。
【0055】
このような第1液滴受け部94および第2液滴受け部92は、これらに対向する上記ヘッドユニット61に搭載された液滴吐出ヘッド62の配置に基づいて設計されている。すなわち、図6(b)に示す第1液滴受け部94の大きさ(平面積)は、液滴吐出ヘッド62のノズル面82a(図3参照)が十分に対向可能な大きさとなっている。また、第2液滴受け部92の大きさ(平面積)は、測定対象の液滴吐出ヘッド62と第1液滴受け部94とが対向するように2つのヘッドユニット61を配置させたときに、測定対象以外の液滴吐出ヘッド62と第2液滴受け部92とが必ず対向するように設計されている。
【0056】
次に、図7を参照して、液滴吐出装置1全体の制御系について説明する。図7は、液滴吐出装置1の制御系を示すブロック図である。図7に示すように、液滴吐出装置1の制御系は、基本的に、液滴吐出ヘッド62、X軸テーブル22、Y軸テーブル23、メンテナンス機構12、重量測定機構91等を駆動する各種ドライバを有する駆動部121と、駆動部121を含め液滴吐出装置1全体を統括制御する制御部122とを備えている。制御部122は、コントローラ13とコンピュータ2とを備えている。
【0057】
コンピュータ2は、コントローラ13に接続されたコンピュータ本体に、キーボードや、キーボードによる入力結果等を画像表示するディスプレイ等が接続されて構成されている。
【0058】
駆動部121は、液滴吐出ヘッド62を吐出駆動制御するヘッドドライバ131と、X軸テーブル22およびY軸テーブル23の各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ132と、メンテナンス機構12の吸引ユニット111、ワイピングユニット112およびユニット昇降機構を駆動制御するメンテナンス用ドライバ133と、重量測定機構91の電子天秤95やモータ98を制御する重量測定用ドライバ134とを備えている。
【0059】
コントローラ13は、CPU141と、ROM142と、RAM143と、P−CON144とを備え、これらは互いにバス145を介して接続されている。ROM142は、CPU141で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や重量測定を行うための制御データ、後述する複数の一次関数データ等を記憶する制御データ領域を有している。
【0060】
RAM143は、各種レジスタ群のほか、基板Wに液状体の吐出を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、基板Wおよびヘッドユニット61の設計位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。なお、ヘッドユニット61の設計位置データとは、描画処理の直前に記憶されている位置データのことであり、液滴吐出装置1の設計時(新設時)における位置データのほか、ヘッドユニット61の更新後の位置データをも含む概念である。
【0061】
P−CON144には、駆動部121の各種ドライバのほか、基板Wの位置を認識するカメラ等が接続されており、CPU141の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON144は、コンピュータ2からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス145に取り込むと共に、CPU141と連動して、CPU141等からバス145に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部121に出力する。
【0062】
そして、CPU141は、ROM142内の制御プログラムに従って、P−CON144を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM143内の各種データ等を処理した後、P−CON144を介して駆動部121等に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置1全体を制御している。
【0063】
CPU141は、例えば次のような動作を行う。すなわち、液滴吐出ヘッド62、X軸テーブル22およびY軸テーブル23を制御して、所定の液滴吐出条件および所定の移動条件で、液滴吐出ヘッド62から基板Wに液状体を液滴として吐出する描画を行う。また、Y軸テーブル23を制御してキャリッジユニット21を重量測定領域33に配置し、ヘッドユニット61に搭載された液滴吐出ヘッド62から第1液滴受け部94に液状体を液滴として吐出させる。あるいは、後に詳述するように、重量測定機構91によって測定された液状体の重量に基づいて、修正駆動電圧を算出する。
【0064】
(重量測定方法および液状体の吐出方法)
<B.液滴吐出方法>
次に、液滴吐出装置1を用いた液滴吐出方法について、図8、図9に基づいて説明する。図8は液滴吐出方法を示すフローチャートである。以下、図8のフローチャートに沿って説明する。
【0065】
ステップS1では、キャリッジとしてのキャリッジユニット21を移動させて重量測定領域33に配置する。例えば、制御部122による制御のもと、Y軸テーブル23を駆動して、キャリッジユニット21を重量測定領域33に移動させ、重量測定機構91に対向するように配置する。制御部122は、重量測定プログラムに基づいて、キャリッジユニット21のヘッド群62L,62Rのうち測定対象の液滴吐出ヘッド62を選択して、第1液滴受け部94に対向するように位置決めする。図4に示したように、ヘッドユニット61には、Y軸方向に同色の液状体が充填された液滴吐出ヘッド62が並んでいる。したがって、同色の液状体を吐出する2つの液滴吐出ヘッド62を、4つある第1液滴受け部94のうちの2つに対向配置することができる。また、このとき、吐出された液滴が第1液滴受け部94以外に飛散しないように、キャリッジユニット21のヘッドZ軸テーブル68を駆動してノズル面82aと吸収体96の上面との間隔がおよそ0.5mm〜1.0mmとなるように調整する。
【0066】
続くステップS2は、本発明における測定工程に対応する。ステップS2では、まず、液状体を受ける前の第1液滴受け部94の重量を測定する。この時点で、重量を「ゼロ」としてリセットしてもよい。次に、測定対象の液滴吐出ヘッド62から予め設定された吐出数の液状体の液滴を第1液滴受け部94に吐出する。より詳しくは、制御部122による制御のもと、駆動部121が、所定の駆動電圧V1(図9)を液滴吐出ヘッド62に対して印加して、液滴吐出ヘッド62から液状体を液滴として重量測定機構91の第1液滴受け部94に吐出させる。吐出数の設定は、電子天秤95の最小計量単位を考慮して重量測定プログラムに含める。この場合、電子天秤95の最小計量単位は1mgである。一方、吐出される液滴はngレベルであるため、測定可能な液状体の量となるように吐出数を2000〜3000に設定して液滴吐出ヘッド62を駆動し、各液滴吐出ノズル85から液状体を液滴として吐出する。なお、吐出数は、ノズル数180と吐出回数とを掛け合わせたものである。液滴の吐出が終了した場合には、制御部122による制御のもと、重量測定機構91により、吐出された液状体の重量を測定する。より詳しくは、まず吐出終了時における第1液滴受け部94の重量を測定し、当該測定値から、吐出前における第1液滴受け部94の重量の測定値を減算することにより、正味の吐出液滴重量を求めることができる。
【0067】
ここで、本実施形態のステップS2(測定工程)では、ノズル列84ごとに吐出された液状体の重量を測定する。その理由は、以下の通りである。すなわち、図3に示したように、液滴吐出ヘッド62は、2連のノズル列84とこれに対応する2連の接続針72を備え、ヘッド本体74の内部にノズル列84ごとに異なる液状体共通流路を有しているので、液状体共通流路の違いによるノズル列84ごとの液滴の吐出量の変動を考慮したためである。したがって、一方のノズル列84からの計量用吐出を行って、第1液滴受け部94の重量を測定し、測定結果を制御部122のRAM143に記憶させる。その後に、同様に他方のノズル列84から計量用吐出を行って重量を測定し、測定結果をRAM143に記憶させる。なお、この場合、吐出数は、有効ノズル数160と吐出回数とを掛け合わせたものとなる。
【0068】
さらに、このステップS2では、測定対象以外の液滴吐出ヘッド62からも第2液滴受け部92に向けて同時に液滴を吐出した。これにより、ほぼすべての液滴吐出ヘッド62が駆動される実際の吐出描画に近い条件で重量測定が行われる。この方法は、各液滴吐出ヘッド62の圧電素子に印加される駆動波形が、駆動負荷によって鈍ることにより吐出量が変動することを考慮した。
【0069】
なお、上記のように測定対象以外の液滴吐出ヘッド62からも液滴を吐出する方法に代えて、測定対象の液滴吐出ヘッド62のみから液滴を吐出するようにしてもよい。このような方法によれば、連続吐出に起因する液滴吐出ヘッド62および液状体の状態の変化(温度等)を最小限に抑えることができる。
【0070】
続くステップS3は、本発明における算出工程に対応する。このステップS3では、まず、ステップS2で得られた、液滴吐出ヘッド62ごと、且つノズル列84ごとに有効とした液状体の重量を、ノズル列ごとの吐出数で除する。これにより、1吐出あたりの液滴の吐出量Iw1(図9)を算出する。なお、このような演算は、CPU141がRAM143に記憶された測定結果を基に実行する。また、上記吐出量Iw1をさらにノズル列84に含まれる液滴吐出ノズル85の数で除し、各液滴吐出ノズル85における1吐出あたりの液滴の吐出量を算出してもよい。
【0071】
そして、制御部122は、液滴吐出ヘッド62のそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、ステップS2における重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧V2(図9)を算出する。以下、この動作について、図9を用いて説明する。図9(a)から(c)は、液滴吐出ヘッド62の液滴吐出動作における、駆動電圧(Vh)と吐出液滴重量(Iw)との関係を表す一次関数f1,f2,f3を示したものである。一次関数f1,f2,f3は、それぞれ赤色、緑色、青色に対応する液滴吐出ヘッド62についての一次関数である。このように、駆動電圧と吐出液滴重量との間には、実質的に使用する駆動電圧の範囲においてはほぼ線形の関係がある。また、図9中のプロットPは、ステップS2における吐出液滴重量の測定結果を表している。図9中の各一次関数f1,f2,f3は、このプロットPを通りかつ所定の傾きを有するという条件のもとで定められたものである。また、範囲dは、後述するステップS5(吐出工程)において吐出すべき吐出液滴重量の範囲を示したものである。本ステップS3は、制御部122が、一次関数f1,f2,f3のいずれかを用いて、吐出液滴重量が範囲dの中に収まるような修正駆動電圧V2を算出するステップである。
【0072】
各一次関数f1,f2,f3の傾きは、吐出する液状体に含まれる着色層形成材料(色要素)の色によって異なる。すなわち、赤に対応する一次関数f1の傾きα(R)は0.56ng/Vであり、同じく緑に対応する一次関数f1の傾きα(G)は0.57ng/Vであり、青に対応する一次関数f3の傾きα(B)は0.58ng/Vとなっている。このように傾きが異なるのは、着色層形成材料の特性(粘度、溶質粒子の大きさ等)が、色によって異なることに起因して、一定の駆動電圧で液滴を吐出しても吐出量が異なるためである。
【0073】
本実施形態では、この傾きの違いを加味して修正駆動電圧V2を算出する。すなわち、赤に対応する液滴吐出ヘッド62(図4において符号R1,R2,R3,R4が付されたもの)については、赤に対応する、傾きがα(R)である一次関数f1(図9(a))に基づいて修正駆動電圧V2(R)を算出する。より詳しくは、一次関数f1の値が吐出液滴重量の範囲dに入るような(より好ましくは、範囲dの中心値となるような)駆動電圧V2(R)を算出する。同様に、緑に対応する液滴吐出ヘッド62(図4において符号G1,G2,G3,G4が付されたもの)については、緑に対応する、傾きがα(G)である一次関数f2(図9(b))に基づいて修正駆動電圧V2(G)を算出する。また、青に対応する液滴吐出ヘッド62(図4において符号B1,B2,B3,B4が付されたもの)については、青に対応する、傾きがα(B)である一次関数f3(図9(c))に基づいて修正駆動電圧V2(B)を算出する。このように、修正駆動電圧V2(R),V2(G),V2(B)は、傾きの異なる一次関数f1,f2,f3に基づいて算出されるため、互いに異なる値となる。このような方法によれば、液状体に含まれる着色層形成材料(色要素)の種類によって駆動電圧−吐出液滴重量特性が異なる場合であっても、後述するステップS5(吐出工程)において、各液滴吐出ヘッド62における吐出重量を所望の値(範囲dの範囲内)とすることができる。
【0074】
上記の傾きα(R),α(G),α(B)の値は、予め各液滴吐出ヘッド62における駆動電圧−吐出液滴重量特性を測定しておくことで得ることができる。そして、上記のように制御部122が修正駆動電圧V2を算出するためには、例えばROM142に予め傾きα(R),α(G),α(B)および範囲dのデータを格納しておけばよい。そして、これらのデータと、ステップS2において得られた、RAM143に格納された重量データとから、CPU141によって修正駆動電圧V2を算出する。この他にも、コンピュータ2から傾きα(R),α(G),α(B)又は範囲dのデータをコントローラ13に入力し、そのデータを用いてCPU14によって修正駆動電圧V2を算出することもできる。あるいは、修正駆動電圧V2の算出処理をコンピュータ2によって行うこともできる。なお、本実施形態では、α(R),α(G),α(B)をすべて異なる値としているが、例えば、3色の液状体のうち、2つの液状体の特性が同一であるような場合には、α(R),α(G),α(B)のうちの2つの値を同一とし、残りの1つの値のみ異なるようにしてもよい。
【0075】
次に、ステップS4では、キャリッジとしてのキャリッジユニット21を移動させて描画領域31に配置する。例えば、制御部122による制御のもと、Y軸テーブル23を駆動し、測定が終了したキャリッジユニット21を重量測定領域33から描画領域31に移動させる。
【0076】
続くステップS5は、本発明における吐出工程に対応する。ステップS5では、制御部122による制御のもと、駆動部121に、修正駆動電圧V2を液滴吐出ヘッド62に対して印加させて、液滴吐出ヘッド62から基板Wの所望の領域に液状体を液滴として吐出描画する。より詳しくは、基板Wとキャリッジユニット21とを対向配置して相対移動させる間に、複数の液滴吐出ヘッド62から液状体を液滴として吐出する。このステップS5において各液滴吐出ヘッド62に印加される駆動電圧は、ステップS3において算出された修正駆動電圧V2(R),V2(G),V2(B)である。よって、各液滴吐出ヘッド62は、吐出する液状体の特性に応じた修正駆動電圧V2を印加されることにより、液状体の特性が赤色、緑色、青色で異なっていたとしても、吐出重量が範囲d(図9)に収まるような液滴を吐出することができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ヘッド62からの液滴の吐出重量を均一にすることができる。
【0077】
上記のように駆動電圧を調整する方法としては、液滴吐出ヘッド62の圧電素子に印加される駆動波形において、実効的な駆動電圧を変える方法が挙げられる。また、駆動波形としての台形波における急峻性を変える方法でも液滴の吐出量を変えることが可能である。
【0078】
<C.カラーフィルタの製造方法>
次に本実施形態の液状体の吐出方法を適用したカラーフィルタの製造方法について説明する。
【0079】
まず、カラーフィルタが用いられた電気光学装置の一つである液晶表示装置について説明する。図10は、液晶表示装置500の構造を示す概略分解斜視図である。
【0080】
図10に示すように、液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)素子511をスイッチング素子に用いた透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層としてのカラーフィルタ505を有する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501,508によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基板501,508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0081】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部504によってマトリクス状に区画された複数の着色領域に複数種の着色層としてRGB3色のカラーフィルタ505R,505G,505Bがストライプ状に形成されている。隔壁部504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また対向基板501は、隔壁部504と隔壁部504によって区画されたカラーフィルタ505R,505G,505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507とを備えている。カラーフィルタ505R,505G,505Bは後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されている。
【0082】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを有している。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0083】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0084】
尚、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を所定の方向に配列させるための配向膜がそれぞれ形成されているが、図示を省略した。また、上下偏光板514,515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0085】
図11は、カラーフィルタの製造方法を示す概略図である。本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、上記液滴吐出装置1を用いた液状体の吐出方法を適用した。なお、図11において、破線で示した各液滴吐出ヘッドのY軸方向の幅は、有効ノズルから液状体を吐出可能な領域の幅を示すものである。
【0086】
図11に示すように、上記液滴吐出装置1において、描画領域31に配列されたヘッドユニット61(キャリッジユニット21)に対して、RGB3色の着色領域Aのストライプ方向が平行となるように、基板Wを吸着テーブル41にセットして位置決めする。例えば、ヘッドユニット61のヘッドR1のY軸方向の端が、基板Wの赤色(R)の着色領域Aの端と一致するように位置決めする。
【0087】
そして、X軸テーブル22を駆動し、ヘッドユニット61に対して基板WをX軸方向に相対移動させる間に、ヘッドユニット61に搭載された各液滴吐出ヘッド62から着色領域Aに向けて着色層形成材料を含む液状体を液滴として吐出する。
【0088】
前述したように、ヘッドユニット61には、X軸方向から見て同色の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド62が、ノズルピッチP2を置いてY軸方向に4つ並んでいる。よって、同色の液状体をY軸方向に吐出可能な描画幅Eが連続するようにヘッドユニット61を移動させて(すなわち図中の一点鎖線で描かれた位置に順次ヘッドユニット61を移動させて)、上記吐出動作を繰り返せば、基板Wの幅に対応して同色の液状体を隙間を空けることなく付与することができる。当然のことながら着色領域Aの端付近では、赤色(R)以外の緑色(G)や青色(B)に対応する着色領域Aに液状体が付与されない領域が発生する。よって、ヘッドユニット61をY軸方向に移動させる副走査を行ってから、再び液滴を吐出する主走査を行うようにすれば、すべての着色領域Aに所望の色の液状体を付与することができる。
【0089】
本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、上記液滴吐出方法を用いているので、各液滴吐出ヘッド62から吐出される液状体の重量が、着色層形成材料の色に係らず均一となる。したがって、着色領域Aに必要な量の液滴が安定して付与される。付与された液状体を乾燥させて固化させれば、着色領域Aに所望の膜厚を有するRGB3色の着色層を形成することができる。このようにして製造されたカラーフィルタを備える液晶表示装置500は、所望の光学特性が実現された高い表示品質を有している。
【0090】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態で説明した液滴吐出装置1を用いて、液滴吐出ヘッド62から吐出された液状体の液滴の重量を測定する方法であり、本発明における重量測定方法に対応する。本実施形態の重量測定方法は、図12のフローチャートに示されており、ステップS3(算出工程)の後に、再度重量測定機構91を用いて液滴の重量測定を行う点で第1の実施形態と異なる。以下、図12のフローチャートに沿って説明する。
【0091】
ステップS1では、キャリッジとしてのキャリッジユニット21を移動させて重量測定領域33に配置する。続くステップS2、ステップS3は、それぞれ本発明における測定工程、算出工程に対応する。本実施形態のステップS1からステップS3までは、第1の実施形態におけるステップS1からステップS3(図8)までと同一の工程であるので、説明は省略する。
【0092】
ステップS3が終了した後は、ステップS6に進む。ステップS6は、本発明における再測定工程に対応し、ステップS2の測定工程と同様に、液滴吐出ヘッド62から吐出された液滴の重量を測定する工程である。すなわち、まず、液状体を受ける前の第1液滴受け部94の重量を測定し、次に、測定対象の液滴吐出ヘッド62から予め設定された吐出数の液状体の液滴を第1液滴受け部94に吐出する。より詳しくは、制御部122による制御のもと、駆動部121が、修正駆動電圧V2(図9)を液滴吐出ヘッド62に対して印加して、液滴吐出ヘッド62から液状体を液滴として重量測定機構91の第1液滴受け部94に吐出させる。液滴の吐出が終了した場合には、制御部122による制御のもと、重量測定機構91により、吐出された液状体の重量を測定する。より詳しくは、まず吐出終了時における第1液滴受け部94の重量を測定し、当該測定値から、吐出前における第1液滴受け部94の重量の測定値を減算することにより、正味の吐出液滴重量を求めることができる。
【0093】
このステップS6において各液滴吐出ヘッド62に印加される駆動電圧は、ステップS3(算出工程)において算出された修正駆動電圧V2(R),V2(G),V2(B)である。このため、各液滴吐出ヘッド62は、吐出する液状体の特性に応じた修正駆動電圧V2を印加されることにより、液状体の特性が赤色、緑色、青色で異なっていたとしても、吐出重量が範囲d(図9)に収まるような液滴を吐出することができる。これにより、吐出工程における各液滴吐出ヘッド62からの液滴の吐出重量を均一にすることができる。したがって、ステップS6において測定される重量は、各液滴吐出ヘッド62において基本的には均一となる。
【0094】
次に、ステップS7では、ステップS6において測定された液滴の重量が、所定の範囲d(図9)の中に入っているか否かを判断する。すべての液滴吐出ヘッド62からの吐出液滴重量が範囲dに入っている場合には、重量測定方法が終了する。したがって、本実施形態の重量測定方法の終了時においては、各液滴吐出ヘッド62は、均一な液滴を吐出可能な状態に調整されている。本実施形態の重量測定方法は、液滴吐出ヘッド62からの液滴の吐出量を調整する方法であるとも言える。
【0095】
一方、ステップS6において測定された液滴の重量が範囲dに入っていない場合には、ステップS3に進み、以降、ステップS6、ステップS7を再度行う。すなわち、ステップS3において、ステップS6における再測定結果と上述した一次関数f1,f2,f3とから、改めて修正駆動電圧V2を算出し、ステップS6において吐出液滴重量の再測定を行う。これらの工程を、すべての液滴吐出ヘッド62からの吐出液滴重量が範囲dに入るまで繰り返し、範囲dに入った時点で本実施形態の重量測定方法が終了する。
【0096】
本実施形態の重量測定方法によれば、それぞれの液滴吐出ヘッド62について、傾きの異なる一次関数f1,f2,f3に基づいて修正駆動電圧V2を算出することができるので、修正駆動電圧V2を、液滴吐出ヘッド62ごとに最適化することができる。よって、各液滴吐出ヘッド62における吐出重量のばらつきを修正駆動電圧V2の大きさによって調整し、所望の吐出重量とすることができる。
【0097】
なお、ステップS7の後は、第1の実施形態において説明したステップS4およびステップS5を実行し、基板Wに対して吐出描画を行うこともできる。このような方法によれば、液滴の吐出重量が範囲dの中に収まっていること、および当該吐出重量が全ての液滴吐出ヘッド62の間で均一であることを確認した後に基板Wに吐出描画を行うこととなるので、基板W上に、より確実に均一な重量の液滴を吐出描画することができる。
【0098】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態又は第2の実施形態に変形を加えたものであるため、第1、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0099】
上述した第1、第2の実施形態は、同一の色に対応する液滴吐出ヘッド62については同一の傾きを有する一次関数(一次関数f1,f2,f3のいずれか)を用いて修正駆動電圧V2を算出するものであるが、本実施形態は、これに代えて、液滴吐出ヘッド62のそれぞれに対し、対応する色に係らず当該液滴吐出ヘッド62の特性に応じた傾きを割り当てる構成としたものである。
【0100】
すなわち、図4に示すヘッドユニット61に含まれる12個の液滴吐出ヘッド62に対し、一対一に対応するように一次関数の傾きを設定しておく。これらの傾きの値は、予めそれぞれの液滴吐出ヘッド62における駆動電圧−吐出液滴重量特性を測定しておくことで得ることができ、そのデータは例えばROM142に格納しておくことができる。
【0101】
そして、図8又は図12中のステップS3(算出工程)においては、各液滴吐出ヘッド62に対して一対一に割り当てられた上述の傾きと、ステップS2(測定工程)における各液滴吐出ヘッド62の液滴重量の測定結果とを用いて、液滴吐出ヘッド62ごとに独立に駆動電圧V2を算出する。具体的には、ROM142に格納された12種類の傾きの値と、ステップS2で得られた、RAM143に格納された重量データとから、CPU141によって液滴吐出ヘッド62ごとに(すなわち12種類の)修正駆動電圧V2を算出する。
【0102】
このような方法によれば、算出工程の後に液滴吐出ヘッド62から液滴を吐出する際に、各液滴吐出ヘッド62の特性ばらつきを相殺して、均一な重量の液滴を吐出することができる。
【0103】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態又は第2の実施形態に変形を加えたものであるため、第1、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0104】
上述した第1、第2の実施形態は、液滴吐出ヘッド62を最小単位として修正駆動電圧V2を算出し、当該液滴吐出ヘッド62の全体をその修正駆動電圧V2で駆動して液滴を吐出するものであるが、本実施形態は、これに代えて、液滴吐出ヘッド62に含まれる液滴吐出ノズル85を最小単位として修正駆動電圧V2を算出し、液滴吐出ノズル85ごとに異なる修正駆動電圧V2を印加して液滴を吐出する構成としたものである。
【0105】
すなわち、図3(b)に示す液滴吐出ヘッド62に含まれる360個の液滴吐出ノズル85に対し、一対一に対応するように一次関数の傾きを設定しておく。これらの傾きの値は、予めそれぞれの液滴吐出ノズル85における駆動電圧−吐出液滴重量特性を測定しておくことで得ることができ、そのデータは例えばROM142に格納しておくことができる。
【0106】
その上で、図8又は図12中のステップS2(測定工程)においては、各液滴吐出ノズル85について、吐出液滴重量を測定する。そして、続くステップS3(算出工程)においては、各液滴吐出ノズル85に対して一対一に割り当てられた上述の傾きと、ステップS2における各液滴吐出ノズル85の液滴重量の測定結果とを用いて、液滴吐出ノズル85ごとに独立に駆動電圧V2を算出する。具体的には、ROM142に格納された、360(ノズル)×12(ヘッド)=4320種類の傾きの値と、ステップS2で得られた、RAM143に格納された重量データとから、CPU141によって液滴吐出ノズル85ごとに(すなわち4320種類の)修正駆動電圧V2を算出する。
【0107】
そして、算出工程の後に液滴吐出ノズル85から液滴を吐出する際、すなわち、図8におけるステップS5(吐出工程)または図12におけるステップS6(再測定工程)においては、各液滴吐出ノズル85の圧電素子に対して上述の修正駆動電圧V2を印加して液滴を吐出する。このような方法によれば、各液滴吐出ノズル85の特性ばらつきを相殺して、均一な重量の液滴を吐出することができる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0109】
(変形例1)
上記各実施形態における液滴吐出装置1は、単一のキャリッジユニット21を備える構成であるが、これに代えて、複数のキャリッジユニット21を備える構成とすることもできる。図13は、7つのキャリッジユニット21を備えた液滴吐出装置1Aの構造を示す概略平面図である。
【0110】
液滴吐出装置1Aでは、Y軸テーブル23は、描画領域31に配列された複数のキャリッジユニット21を、メンテナンス機構12が設けられたメンテナンス領域32、又は重量測定機構91が設けられた重量測定領域33に移動させる。また、図2において、Y軸ガイドレール53にガイドされてY軸方向に自在に移動するY軸スライダ52は、7つのキャリッジユニット21に対応して複数設けられ、メインキャリッジ63が吊設されたブリッジプレート51を支持している。すなわち、7つのブリッジプレート51がそれぞれ独立したY軸スライダ52に支持されている。また、メンテナンス領域32に設けられた吸引ユニット111は、複数(7つ)のキャリッジユニット21に対応してY軸方向に複数配列して設けられている。そして、重量測定機構91は、2つのキャリッジユニット21に対向できるようになっている(図13)。さらに、2つのキャリッジユニット21に含まれ、互いに異なるヘッド群62L,62Rに属する一列に並んだ4つの液滴吐出ヘッド62が、4つの第1液滴受け部94に同時に対向するようになっている(図6)。
【0111】
このような構成の液滴吐出装置1Aにおいても、液滴吐出ヘッド62が対応する色に応じて、又は液滴吐出ヘッド62ごとに、若しくは液滴吐出ノズル85ごとに傾きの異なる一次関数を用いて修正駆動電圧V2を算出することにより、均一な重量の液滴を吐出することができる。
【0112】
(変形例2)
上記各実施形態において、液滴吐出装置1(液滴吐出装置1Aを含む)のヘッドユニット61における液滴吐出ヘッド62の配置は、これに限定されない。例えば、1つのヘッドユニット61に含まれる液滴吐出ヘッド62の数を12個以外とすることもできるし、各液滴吐出ヘッド62の配置位置を変更することもできる。
【0113】
(変形例3)
上記実施形態の適用分野は、カラーフィルタの製造方法に限定されない。例えば、液晶表示装置500において、液晶を配向させる配向膜や液晶そのものの塗布にも適用することができる。さらには、隔壁部により区画形成された領域に発光材料を含む液状体を塗布して有機EL発光層を形成する方法にも適用できる。
【0114】
(変形例4)
上記各実施形態において、液滴吐出ヘッド62は、赤色、緑色、青色の3色のいずれかに対応する構成であるが、これに限定されない。例えば、赤色、緑色、青色に代えてイエロー、シアン、マゼンタの3色とすることができる。また、3色に限定されず、例えば、液滴吐出ヘッド62は少なくとも2種類の異なる色のいずれかに対応するとともに、測定工程及び吐出工程において当該色の色要素を含む液状体の液滴を吐出し、修正駆動電圧V2の算出に用いる一次関数の傾きは、液滴吐出ヘッド62が対応する色に応じて選択されるように構成してもよい。
【0115】
また、全ての液滴吐出ヘッド62が同一の種類の液状体を吐出する場合にも本発明を適用することができる。これは、例えば単一の色の着色層を形成する場合や、液晶を配向させる配向膜、あるいは有機発光層等を形成する場合に相当する。この場合には、修正駆動電圧V2の算出に用いる一次関数の傾きを、各液滴吐出ヘッド62又は各液滴吐出ノズル85の特性に応じた値とする。このようにすることで、全ての液滴吐出ヘッド62又は全ての液滴吐出ノズル85から吐出される液滴の重量を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】液滴吐出装置の構造を示す概略平面図。
【図2】液滴吐出装置の構造を示す概略側面図。
【図3】(a)は液滴吐出ヘッドを示す斜視図、(b)はノズルプレートを示す平面図。
【図4】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図5】キャリッジユニットと重量測定機構との配置を示す概略図。
【図6】(a)は重量測定機構を示す概略側面図、(b)は概略平面図。
【図7】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図8】液滴吐出方法を示すフローチャート。
【図9】(a)〜(c)は、液滴吐出ヘッドの液滴吐出動作における、駆動電圧(Vh)と吐出液滴重量(Iw)との関係を表す一次関数を示す図。
【図10】液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図11】カラーフィルタの製造方法を示す概略図。
【図12】重量測定方法を示すフローチャート。
【図13】液滴吐出装置の構造を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0117】
1,1A…液滴吐出装置、21…キャリッジとしてのキャリッジユニット、31…描画領域、33…重量測定領域、62…液滴吐出ヘッド、84…ノズル列、85…液滴吐出ノズル、91…重量測定機構、95…電子天秤、121…駆動部、122…制御部、f1,f2,f3…一次関数、α(R),α(G),α(B)…傾き、V1…駆動電圧、V2…修正駆動電圧、W…ワークとしての基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジに搭載された複数の液滴吐出ヘッドに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、
前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、
複数の前記液滴吐出ヘッドに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として吐出する吐出工程と、を有し、
前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出方法であって、
前記一次関数の傾きは、前記液滴吐出ヘッドのそれぞれに対し、当該液滴吐出ヘッドの特性に応じた値が割り当てられていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液滴吐出方法であって、
前記液滴吐出ヘッドのそれぞれは、少なくとも2種類の異なる色のいずれかに対応するとともに、前記測定工程及び前記吐出工程において当該色の色要素を含む前記液状体の液滴を吐出し、
前記一次関数の傾きは、前記液滴吐出ヘッドが対応する前記色に応じて選択されることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液滴吐出方法であって、
前記液滴吐出ヘッドのそれぞれは、赤、緑、青のいずれかの色に対応するとともに、前記測定工程及び前記吐出工程において当該色の前記色要素を含む前記液状体の液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項5】
液滴吐出ヘッドに含まれる複数の液滴吐出ノズルに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ノズルごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、
前記液滴吐出ノズルのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、
複数の前記液滴吐出ノズルに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として吐出する吐出工程と、を有し、
前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出方法であって、
前記一次関数の傾きは、前記液滴吐出ノズルのそれぞれに対し、当該液滴吐出ノズルの特性に応じた値が割り当てられていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項7】
キャリッジに搭載された複数の液滴吐出ヘッドに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、
前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、
複数の前記液滴吐出ヘッドに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を測定する再測定工程と、を有し、
前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする重量測定方法。
【請求項8】
液滴吐出ヘッドに含まれる複数の液滴吐出ノズルに駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから液状体を液滴として重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ノズルごとに吐出された前記液状体の重量を測定する測定工程と、
前記液滴吐出ノズルのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出する算出工程と、
複数の前記液滴吐出ノズルに前記修正駆動電圧を印加して、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出し、前記液滴吐出ノズルごとに吐出された前記液状体の重量を測定する再測定工程と、を有し、
前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする重量測定方法。
【請求項9】
キャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、液状体の液滴を吐出する複数の液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに駆動電圧を印加する駆動部と、
前記液状体の液滴の重量を測定する重量測定機構と、
前記液滴吐出ヘッド、前記駆動部、前記重量測定機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記駆動部に、前記駆動電圧を前記液滴吐出ヘッドに対して印加させて、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出させるステップと、
前記重量測定機構に、吐出された前記液状体の重量を測定させるステップと、
前記液滴吐出ヘッドのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出するステップと、
前記駆動部に、前記修正駆動電圧を前記液滴吐出ヘッドに対して印加させて、前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を液滴として吐出させるステップと、を実行し、
前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに含まれる複数の液滴吐出ノズルと、
前記液滴吐出ノズルに駆動電圧を印加する駆動部と、
前記液状体の液滴の重量を測定する重量測定機構と、
前記液滴吐出ノズル、前記駆動部、前記重量測定機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記駆動部に、前記駆動電圧を前記液滴吐出ノズルに対して印加させて、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として前記重量測定機構に吐出させるステップと、
前記重量測定機構に、吐出された前記液状体の重量を測定させるステップと、
前記液滴吐出ノズルのそれぞれについて、駆動電圧と吐出液滴重量との関係を表す一次関数と、前記測定工程における前記重量の測定結果と、に基づいて修正駆動電圧を算出するステップと、
前記駆動部に、前記修正駆動電圧を前記液滴吐出ノズルに対して印加させて、前記液滴吐出ノズルから前記液状体を液滴として吐出させるステップと、を実行し、
前記一次関数の傾きは、少なくとも2つの異なる値から選択されることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−149258(P2008−149258A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339504(P2006−339504)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】