説明

液滴吐出装置、電気・機械変換素子

【課題】不具合を有する記録ヘッドの回復コストを削減する。
【解決手段】画像データに基づいて、記録媒体に対して液滴を吐出する複数のノズルを含む記録ヘッド210と、不具合を有するノズルを検出するための仮吐出を前記記録ヘッドに行わせる仮吐出手段203と、前記仮吐出による前記液滴の着弾位置を確認する確認手段213と、前記確認手段213の確認結果に基づいて前記不具合を有するノズルを検出し、前記液滴の着弾位置が前記不具合がない状態での着弾位置になるように、前記画像データを修正する修正手段と、を有する液滴吐出装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出装置、該液滴吐出装置により形成される電気・機械変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する複数のノズルが備えられた記録ヘッドを有する液滴吐出装置がある。そして、記録ヘッド内の液滴の高粘度化などにより、液滴を吐出できないノズル(以下、「吐出不能ノズル」という。)が発生する場合がある。例えば、特許文献1には、吐出不能ノズルを検出する手法が記載されている。
【0003】
一般的には、吐出不能ノズルを回復させるためのクリーニング機構が備えられている。該クリーニング機構は、それぞれの記録ヘッドに対応して設けられている。吐出不能ノズルが検出されると、全ての記録ヘッドまたは、吐出不能ノズルが検出された記録ヘッド全体をクリーニング機構によりクリーニングしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のクリーニング機構では、吐出不能ノズルのみをクリーニングすることは非常に困難であり、記録ヘッド全体、つまり、全てのノズルに対してクリーニングしなければならない。従って、吐出不能ノズルの回復コストが非常に高いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題を鑑みて、吐出不能ノズルの回復コストを削減できる液滴吐出装置、該液滴吐出装置により形成される電気・機械変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、画像データに基づいて、記録媒体に対して液滴を吐出する複数のノズルを含む記録ヘッドと、不具合を有するノズルを検出するための仮吐出を前記記録ヘッドに行わせる仮吐出手段と、前記仮吐出による前記液滴の着弾位置を確認する確認手段と、前記確認手段の確認結果に基づいて前記不具合を有するノズルを検出し、前記液滴の着弾位置が前記不具合がない状態での着弾位置になるように、前記画像データを修正する修正手段と、を有する液滴吐出装置を提供する。また、液滴吐出装置により、前記記録媒体に対して前記液滴が塗布されることで形成された電気・機械変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液滴吐出装置によれば、吐出不能ノズルの回復コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例の液滴吐出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本実施例の液滴吐出装置の要部の機能構成例を示した斜視図である。
【図3】本実施例の液滴吐出装置の記録ヘッドの断面図である。
【図4】本実施例の制御部の機能構成例の一例を示すブロック図である。
【図5】本実施例の液滴吐出装置の処理フローを示した図である。
【図6】本実施例のビットマップデータの一例を示した図である。
【図7】本実施例の記録ヘッドの液滴の着弾位置を示した図である。
【図8】本実施例の修正後のビットマップデータを示した図である。
【図9】本実施例の吐出不良状態であるノズルの液滴の着弾位置を示した図である。
【図10】理想着弾位置を示した図である。
【図11】別の実施形態の修正後のビットマップデータを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例の説明の前に、用語の説明を行う。液滴吐出装置とは例えば、基板などに所望の材料を成膜するために用いる産業用液滴吐出装置、ユーザの所望の画像を形成するプリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などである。また、記録媒体は、例えば、基板、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどの媒体である。液滴とは、インク、記録液、定着処理液、液体、DNA試料、レジスト、パターン材料などである。以下では、記録媒体を基板とし、液滴をインクとして説明する。
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、同じ機能を持つ構成部や同じ処理を行う過程には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0011】
<ハードウェア構成>
図1は、本発明に係る液滴吐出装置300のハードウェア構成の一例を示す図である。図1に示すように、液滴吐出装置300は、制御部1311、主記憶部1312、補助記憶部1313、外部記憶装置I/F部1314、ネットワークI/F部1316、操作部1317、表示部1318、エンジン部1319を含む。
【0012】
制御部1311は、コンピュータの中で、各装置の制御やデータの演算、加工を行うCPUである。また、制御部1311は、主記憶部1312に記憶されたプログラムを実行する演算装置であり、入力装置や記憶装置からデータを受け取り、演算、加工した上で、出力装置や記憶装置に出力する。
【0013】
主記憶部1312は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであり、制御部1311が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムや画像データを記憶又は一時保存する記憶装置である。
【0014】
補助記憶部1313は、HDD(Hard Disk Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
【0015】
外部記憶装置I/F部1314は、USB(Universal Serial Bus)などのデータ伝送路を介して接続された記憶媒体1315(例えば、フラッシュメモリ、SDカードなど)と液滴吐出装置300とのインタフェースである。
【0016】
また、記憶媒体1315に、所定のプログラムを格納し、この記憶媒体1315に格納されたプログラムは外部記憶装置I/F部1314を介して液滴吐出装置300にインストールされ、インストールされた所定のプログラムは液滴吐出装置300により実行可能となる。
【0017】
ネットワークI/F部1316は、有線及び/又は無線回線などのデータ伝送路により構築されたLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などのネットワークを介して接続された通信機能を有する周辺機器と液滴吐出装置300とのインタフェースである。
【0018】
操作部1317や表示部1318は、キースイッチ(ハードキー)とタッチパネル機能(GUIのソフトウェアキーを含む:Graphical User Interface)を備えたLCD(Liquid Crystal Display)とから構成され、液滴吐出装置300が有する機能を利用する際のUI(User Interface)として機能する表示及び/又は入力装置である。
【0019】
エンジン部1319は、実際に液滴を吐出するために行われる処理を行う記録ヘッド、プロッタ、記録ヘッドおよび基板を駆動する駆動機構等の機構部分である。
<要部の機能構成例>
図2に本実施例の記録ヘッド210を含む液滴吐出装置300の要部の機能構成例を示す。以下の説明では、記録ヘッド210の主走査方向をX軸方向とし、基板の搬送方向である副走査方向をY軸方向とし、X軸方向、Y軸方向共に直交する方向をZ軸方向とする。
【0020】
図2に示す液滴吐出装置300は、架台200上に、第1ステージ205および第2ステージ206が設けられている。第1ステージ205には、ダミー基板203が載置されており、第2ステージ204には、本基板204が載置されている。ダミー基板203とは、インクが仮吐出される基板である。また、本基板204とは、インクが本吐出されるための基板であり、電気・機械変換素子を形成するための基板である。仮吐出、本吐出については後述する。第1ステージ205、第2ステージ206はそれぞれ吸着手段(図示せず)を有している。吸着手段は、真空、静電気などによって、ダミー基板203、本基板204を吸着する。該吸着により、ダミー基板203は、第1ステージ205に載置され、本基板204は、第2ステージ205に載置される。
【0021】
また、第1ステージ205の下部、第2ステージ206の下部には、それぞれ、第1Y軸駆動手段201、第2Y軸駆動手段202が設けられている。第1Y軸駆動手段201により、第1ステージ205はY軸方向にスライドして駆動され、第2Y軸駆動手段202により、第2ステージ206はY軸方向にスライドして駆動される。
【0022】
また、ヘッドベース209上に、記録ヘッド210および確認手段213が搭載されている。図2の例では、ヘッドベース209は、略L字状であり、搭載部材209aと背面部材209bとが略直角に接合されている。搭載部材209aの搭載面209c上には、記録ヘッド210および確認手段213が搭載される。また、記録ヘッド210には、インクタンク(図示せず)から供給パイプ211によりインクが供給される。供給パイプ211は、背面部材209bを貫通して、記録ヘッド210に取り付けられる。
【0023】
また、架台200上にはX軸支持部材207が設けられている。図2の例では、X軸支持部材207は略コ字状である。また、X軸支持部材207の中央部207aには、X軸駆動手段208が設けられている。そして、背面部材209bの、記録ヘッド210が存在する側とは反対側の面に、X軸駆動手段208およびZ軸駆動手段212が取り付けられている。ヘッドベース209およびZ軸駆動手段212は、X軸駆動手段208によりX軸方向にスライド移動される(走査される)。また、ヘッドベース209は、Z軸駆動手段212によりZ軸方向にスライド移動される。
【0024】
このように、第1テーブル205に載置されたダミー基板203、第2テーブル206に載置された本基板204は、第1Y軸駆動手段201、第2Y軸駆動手段202により、Y軸方向に移動される。また、ヘッドベース209に搭載された記録ヘッド210は、X軸方向、Z軸方向に移動される。従って、記録ヘッド210は、ダミー基板203または本基板204の所望の箇所に自在にインクを吐出できる。
【0025】
なお、第1Y軸駆動手段201を第1駆動手段とし、第2Y軸駆動手段202を第2駆動手段とし、X軸駆動手段208を第3駆動手段とし、Z軸駆動手段を第4駆動手段としてもよい。
<記録ヘッドの構成>
次に、記録ヘッド210の構成について説明する。図3は、本発明の記録ヘッド210のノズル列の配列方向(X軸方向)に沿って切断した断面図である。つまり、図3の例では、4つのノズルが1列のノズル列を構成している場合を示している。図3に示すように、記録ヘッド210は、複数の圧力室33を有する。該圧力室33は、インク経路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などとも呼ばれる。また、圧力室33は、該圧力室33の側壁となる圧力室基板32、圧力室33の底壁となるノズル板30、ノズル板30と対向する側の面に積層された振動板34とを有する。ノズル板30に設けられた貫通孔をノズル31とする。ノズル31は、各圧力室33に対応して設けられる。また、振動板34の上には密着層35が設けられている。また、密着層35上には、電気機械変換素子36を挟んでいる1組の電極層38が設けられている。電気機械変換素子36は、各圧力室33ごとに設けられている。
【0026】
1組の電極層38が、電気機械変換素子36に対して電気を供給すると、電気機械変換素子36は、伸縮して振動板34が圧力室33側に撓む。供給パイプ211により圧力室33に供給されたインクは、この撓みにより発生する圧力により、ノズル31から吐出される。電気機械変換素子36として、例えば、圧電素子などを用いればよい。
【0027】
また、電気機械変換素子36の代わりに、電気熱変換素子(例えばヒータ)を用いて、該電器熱変換素子により発生された熱エネルギーにより圧力室33内のインクを加圧して、ノズル31から、インクを吐出するようにしてもよい。また、「インク経路の壁面に形成された振動板と該指導板に対向する電極からなるエネルギー発生手段」により発生されたエネルギーにより圧力室33内のインクを加圧して、ノズル31から、インクを吐出するようにしてもよい。また、記録ヘッド210のノズル31が設けられた面を、ノズル面
37とする。
<液滴吐出装置の処理内容>
次に、本実施例の液滴吐出装置300の処理内容について説明する。図4に液滴吐出装置300の制御部1311の機能構成例を示す。制御部1311は、仮吐出手段120、確認手段122、修正手段124を含む。また、図5に、液滴吐出装置300の処理フローを示す。また、図5では、インクの吐出を太矢印で示し、情報の送信を細矢印で示す。
【0028】
まず、ユーザが操作部1317(図1参照)に対して、印刷開始指示を入力する(ステップS2)。吐出開始指示とは、例えば、操作部1317に表示されている印刷開始ボタン(図示せず)をユーザが押下すればよい。操作部1317に、印刷開始指示が入力されると、仮吐出手段120が、記録ヘッドに仮吐出を行わせる(ステップS6)。ここで、仮吐出とは、ノズルの不具合を検出するための仮の吐出である。換言すれば、本基板204へのインク吐出に寄与しないインクを吐出することであり、
仮吐出は、ダミー基板203(図2参照)に対して行われる。具体的には、制御部1311がエンジン部1319(図1参照)を動作させ、X軸駆動機構208(図2参照)によりヘッドベース209をダミー基板203上まで移動させる。そして、記録ヘッド210は、ダミー基板203に対して仮吐出を行う。
【0029】
ダミー基板203上に仮吐出が行われると、確認手段122が仮吐出されたインクの着弾位置を確認する(ステップS8)。ここで、確認手段122とは、例えば、対象物を撮像する撮像手段であり、撮像情報を出力できるものである。撮像手段とは例えば、カメラなどである。また、撮像情報とは、撮像した対象物の画像のデータを示す。以下では、確認手段122を撮像手段122として説明する。撮像手段122は、ダミー基板203上のインクの着弾位置を撮像し、該撮像された撮像情報を修正手段124に対して出力する(ステップS9)。
【0030】
修正手段124は、確認手段122の確認結果に基づいて、不具合を有するノズルを検出し、インクの着弾位置が該不具合がない状態での着弾位置になるように、画像データを修正する。ここで、確認手段122は撮像手段122であるので、確認手段122の確認結果とは、撮像手段122が撮像した撮像情報である。また、不具合を有するノズルとは、例えば、インクを吐出できないノズル(以下、「吐出不能ノズル」という。)や吐出不良状態であるノズル(以下、「吐出不良ノズル」という。)である。吐出不良状態については後述する。以下では、不具合がない状態でのインクの着弾位置を理想着弾位置という。
【0031】
また、元々は、適切にインクを吐出できていたノズルが、不具合要因により、不具合を有するようになる。この不具合要因の一例を説明する。産業用液体吐出装置で使用されるインクとして、乾燥性の高い溶剤系のインクが用いられる場合がある。この場合には、インクを吐出しない状態が長時間続くと、インクの乾燥が進み、インクが高粘度化することがある。この他に、産業用液体吐出装置で使用されるインクとして、微粒子や固形成分が含まれているインクが用いられる場合がある。この場合には、インクを吐出しない状態が長時間続くと、微粒子や固形成分がインクと混合すると、インクの高粘度化が進む。つまり、産業用液体吐出装置では、インクが高粘度化しやすくなる。この高粘度化が更に進行すると、インクが固化し、インクが吐出されなくなる。
<実施形態1>
まず、実施形態1として、不具合を有するノズルが吐出不能ノズルである場合の修正手段124の処理について説明する。本実施例の液滴吐出装置は、画像データに基づいて、基板に対して、インクを吐出することで、該基板を塗布する。ここで画像データとは例えば、ビットマップデータであり、以下の説明では、画像データをビットマップデータとして説明する。図6にビットマップデータの一例を示す。図6では、黒丸を吐出位置ピクセルとする。また、図6の例では、1列のノズル列のビットマップデータを示す。図6の例では、一列のノズル列は、9つのノズルであるノズル311〜319により構成される。
【0032】
図7に、図6に示したビットマップデータに基づいて、インクを空吐出した場合の着弾位置を示す。図7の例では、ノズル315が、インクを吐出していない。つまり、ノズル315が吐出不能ノズルであり、ノズル315以外のノズル311〜314、316〜319が吐出可能ノズルとなる。また、撮像手段122は図7に示すインクの着弾位置を撮像することで撮像情報を生成し、修正手段124に送信する。
【0033】
代替手段1242は、吐出不能ノズルを検出する(ステップS10)。この検出手法を2つ説明する。
[第1の検出手法]
第1の検出手法では、インクが吐出されていない状態のダミー基板203の色が一色である場合に、該色の輝度値(以下、「基板輝度値」という。)および、インクの理想着弾位置の座標を主記憶部1312(図1参照)に予め記憶させておく。以下では、理想着弾位置の座標を理想座標という。そして、確認手段122から送信された撮像情報を解析して、該撮像情報の、理想座標ごとの輝度値を求める。輝度値の算出手法は公知の技術を用いればよい。そして、理想座標それぞれについて、求められた輝度値と、基板輝度値との差を算出する。該算出された値が予め定められた第1閾値以上であれば、その座標の輝度値は、ダミー基板の輝度値と大きく異なるということなので、インクが吐出されたと判断される。また、該算出された値が第1閾値未満であれば、その座標の輝度値は、ダミー基板の輝度値と略同一ということなので、インクが吐出されていないと判断される。
[第2の検出手法]
第2の検出手法では、ダミー基板203に着弾されたインクの輝度値が全て同一である場合に、該輝度値、および、理想座標を主記憶部1312に記憶させておく。そして、確認手段122から送信された撮像情報を解析して、該撮像情報の、理想座標ごとの輝度値を求める。そして、理想座標それぞれについて、求められた輝度値と主記憶312に記憶されているインクの輝度値との差を算出する。該算出された値が予め定められた第2閾値未満であれば、その座標の輝度値は、インクの輝度値と略同一であるということなので、インクが吐出されたと判断される。また、該算出された値が第2閾値以上であれば、その座標の輝度値は、インクの輝度値と大きく異なるということなので、インクが吐出されていないと判断される。
【0034】
吐出不能ノズルの検出の手法については、これらに限られない。代替手段1242は、これらの手法により、吐出不能ノズルが、ノズル315であることを検出する。
【0035】
修正手段124中の代替手段1242は、吐出不能ノズル315をインクを吐出できる吐出可能ノズル311〜314、316〜319のうちいずれか1つと代替させる。この代替について詳細に説明すると、吐出不能ノズル315にインクを吐出させずに、吐出可能ノズル311〜314、316〜319のうちいずれか1つにインクを吐出させるということである。代替手段1242は、該代替が行われるように、画像データ(ビットマップデータ)を修正する。代替手段1242は、プログラムを利用してビットマップデータの修正を行う。ここで、プログラムとは、例えば、C言語プログラムであり、主記憶部1312に予め記憶されており、修正手段124が該C言語プログラムを読み込んで、ビットマップデータの修正を行う。
【0036】
図8に、修正後のビットマップデータを示す。図8の例では、吐出不能ノズル315が吐出可能ノズル313に代替されたことを示す。代替される吐出可能ノズルは他のノズルでもよい。この修正後のビットマップデータは、一旦、主記憶部1312に記憶される(ステップS12)。そして、修正手段124(制御部1311)が、記録ヘッド210に対して、本吐出指示を行う(ステップS14)。ここで、本吐出とは、本基板204に対して、インクを吐出するものである。
【0037】
また、図8に示す修正後のビットマップデータの例では、ノズル313が2回吐出することを示している。従って、記録ヘッド210が、1ライン分、インクを吐出する際には該記録ヘッド210は、2回走査させる。まず、1回目の走査で、ノズル315以外の全てのノズルがインクを吐出し、2回目の走査でノズル315の代わりに、ノズル313のみがインクを吐出する。このように、1ライン分、インクを吐出する際には、吐出可能ノズルが吐出不能ノズルと代替して、全ての着弾されるべき位置にインクを吐出できるように、記録ヘッドを複数回(この場合では2回)走査させる。
【0038】
また、本吐出指示による動作の詳細を説明すると、制御部1311は、エンジン部1319を駆動することで、X軸駆動手段208を駆動させる。そして、このX軸駆動手段208の駆動により、第1ステージ205上にあるヘッドベース209を第2ステージ上に移動させる。そして、制御部1311は、エンジン部1319を駆動させることで、記録ヘッド319に、本基板204に対して本吐出させる(ステップS16)。
【0039】
そして、ユーザは、本吐出の結果を確認する(ステップS18)。ステップS11でビットマップデータを修正し、該修正されたビットマップデータに基づいて、画像形成(本吐出)したことから、ユーザは適切な画像を本基板204に形成することができる。
【0040】
本実施例の液滴吐出装置によれば、仮吐出させて、該仮吐出の着弾位置から、吐出不能ノズルを検出できる。そして吐出不能ノズルを吐出可能ノズルに代替させるように、画像データを修正する。従って、複数のノズルのうち、吐出不能ノズルがあったとしても、適切に画像を形成することができる。
<実施形態2>
次に、実施形態2として、不具合を有するノズルが吐出不良ノズルである場合を説明する。ここで、吐出不良ノズルとは、吐出不良状態であるノズルをいう。吐出不良状態とは、例えば、インクの吐出軌跡が直線ではない状態、または/および、インクの吐出速度が変化する(一定でない)状態をいう。
【0041】
ここで、「インクの吐出軌跡が直線ではない」、ということは、インクが直線方向に吐出されずに、曲がって吐出されるということである。このように曲がって吐出される原因とは、上述のように、記録ヘッド210内のインクの高粘度化が進んだこと等である。また、「インクの吐出速度が変化する」とは、通常はインクの吐出速度は一定であるが、インクの高粘度化などにより、時折、インクの吐出速度が変化するということである。
【0042】
以下の説明では、吐出不良状態が、「インクの吐出軌跡が直線ではない状態」、および、「インクの吐出速度が変化する状態」の両方である場合を説明する。また、実施形態2の液滴吐出装置の処理フローは、図5と同様であり、ステップS2〜ステップS9までの処理、ステップS14〜ステップS18までの処理については実施形態1と同様なので、説明を省略し、ステップS10〜ステップS12までの処理を説明する。
【0043】
以下では、吐出不良状態であるノズルを含む複数のノズルがインクを吐出した着弾位置を「現実着弾位置」という。図9は、図6で示したビットマップデータに基づいて仮吐出した場合の、インクの現実着弾位置を示した図である。また、吐出不良状態でない複数のノズルがインクを吐出した着弾位置を「理想着弾位置」という。全てのノズルの理想着弾位置の一例を図10に示す。図9では、ノズル313、ノズル315の理想着弾位置を破線で示す。
【0044】
図9の例では、ノズル311、312、314、316、317、318、319からのインクの着弾位置は理想着弾位置であるが、ノズル313、ノズル315からのインクの着弾位置は、理想着弾位置ではない。ノズル313の着弾位置は、矢印αで示すように、X軸方向にずれている(誤差が生じている)。これは、「インクの吐出軌跡が直線ではないこと」が原因となっている。また、ノズル313の着弾位置は、矢印βで示すように、Y軸方向にずれている(誤差が生じている)。これは、「インクの吐出軌跡が直線ではないこと」や「インクの吐出速度が変化すること」が原因となっている。本実施例2の液滴吐出装置中の補正手段1244(図4参照)は、X軸方向の誤差またはY軸方向の誤差を補正するように、画像データを修正するものである。
【0045】
まず、補正手段1244は、吐出不良状態であるノズルを検出する(図5のステップS10)。該検出手法の一例を説明する。予め、図10に示す全てのノズルの理想着弾位置の座標(理想座標)を主記憶部1312に記憶させておく。また、座標の単位はピクセルであるとする。補正手段1244が、ステップS9(図5参照)で出力された撮像情報を受信すると、該撮像情報内の現実着弾位置(図9参照)から全てのノズルの現実着弾位置の座標(以下、「現実座標」という。)を取得する。
【0046】
そして、補正手段1244は、現実座標と理想座標に基づいて、X軸方向、Y軸方向の誤差を算出する。具体的には、各ノズルごとに、理想座標と現実座標との差(理想座標−現実座標)を算出することで、X軸方向、Y軸方向の誤差を算出する。
【0047】
図9の例では、ノズル313については、X軸方向に−4ピクセル分、誤差が生じており、ノズル315については、Y軸方向に−3ピクセル分、誤差が生じている。そして、補正手段1244は、X軸方向、Y軸方向に生じた誤差を補正するように、画像データを修正する(図5に示すテップS11)。図11を用いて、具体的な補正の手法を説明する。図11に示すように、ノズル313のX軸方向の−4ピクセル分の誤差を補正すべく、ノズル313の吐出位置ピクセルを+4ピクセル分、矢印aで示すように移動させる。また、ノズル315のY軸方向の−3ピクセル分の誤差を補正すべく、ノズル315の吐出位置ピクセルを+3ピクセル分、矢印bで示すように移動させる。このように、補正手段1244は、生じた誤差を補正するように、ビットマップデータ(画像データ)を修正する。
【0048】
実施形態2の液体吐出装置によれば、理想着弾位置と現実着弾位置との誤差を検出する。そして、この誤差を補正するように、画像データを修正する。従って、吐出不良状態であるノズルがあったとしても、全てのノズルからのインクを理想着弾位置に着弾させることができる。
【0049】
実施形態1、実施形態2の液滴吐出装置によれば、不具合を有するノズルがあった場合でも、不具合を有するノズルを検出する。そして、インクの着弾位置がノズルの不具合がない状態での着弾位置になるように、ビットマップデータを修正する。従って、記録ヘッドをクリーニングする必要はなく、不具合を有するノズルの回復コストを削減できる。
<その他の実施形態>
(1)実施形態1で説明した代替手段1242と、実施形態2で説明した補正手段1244と、を統合して用いることもできる。この場合には、インクを吐出できない吐出不能ノズルと、吐出不良状態であるノズルとが混合して存在したとしても、全てのノズルに対して、理想着弾位置にインクを着弾させることができる。
(2)実施形態1または実施形態2で説明した液滴吐出装置により、電気・機械変換素子を形成できる。電気・機械変換素子とは、例えば、圧力センサなどのような、機械信号を電気信号に変換する素子である。本実施例の液滴吐出装置により、電気・機械変換素子を形成する場合には、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を溶質とした液体を基板に塗布することで、電気・機械変換素子を形成できる。上述のように、理想着弾位置にインク(液体)を吐出することができるので、適切に電気・機械変換素子を形成できる。
(3)上記では、工業用液滴吐出装置を説明した。しかし、本実施例の液滴吐出装置の概念は、家庭用のインクジェットプリンタなどにも適用できる。上述した基板を用紙とし、各色(シアン、イエロー、マゼンダ、ブラック)毎の記録ヘッド210(図2参照)を備えれば、実施できる。また、各色ごとの記録ヘッド210を備える場合には、各色ごとの確認手段213を備えてもよい。また、1つの確認手段213を備えて、該1つの確認手段213が、各色の記録ヘッドごとの撮像情報を出力するようにすれば良い。
【符号の説明】
【0050】
200・・・架台
201・・・第1Y軸駆動手段
202・・・第2Y軸駆動手段
203・・・ダミー基板
204・・・本基板
205・・・第1ステージ
206・・・第2ステージ
207・・・X軸支持部材
208・・・X軸駆動手段
209・・・ヘッドベース
210・・・記録ヘッド
211・・・インク供給パイプ
212・・・Z軸駆動手段
213・・・確認手段
300・・・液滴吐出装置
311・・・制御部
312・・・主記憶部
313・・・補助記憶部
314・・・外部記憶装置I/F部
315・・・記憶媒体
316・・・ネットワークI/F部
317・・・操作部
318・・・表示部
319・・・エンジン部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2009−061688号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて、記録媒体に対して液滴を吐出する複数のノズルを含む記録ヘッドと、
不具合を有するノズルを検出するための仮吐出を前記記録ヘッドに行わせる仮吐出手段と、
前記仮吐出による前記液滴の着弾位置を確認する確認手段と、
前記確認手段の確認結果に基づいて前記不具合を有するノズルを検出し、前記液滴の着弾位置が前記不具合がない状態での着弾位置になるように、前記画像データを修正する修正手段と、を有する液滴吐出装置。
【請求項2】
前記不具合を有するノズルとは、前記液滴を吐出できない吐出不能ノズルを含み、
前記修正手段は、該吐出不能ノズルを、前記液滴を吐出できる吐出可能ノズルに代替する代替手段を含むことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記不具合を有するノズルとは、吐出不良状態である吐出不良ノズルを含み、
前記修正手段は、前記仮吐出された前記液滴の着弾位置と、吐出不良状態でない状態での着弾位置との誤差をなくす補正手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記吐出不良状態は、前記液滴の吐出軌跡が直線ではない状態、または/および、前記液滴の吐出速度が変化する状態、であることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記画像データはビットマップデータであることを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1〜5何れか1項に記載の液滴吐出装置により、前記記録媒体に対して前記液滴が塗布されることで形成された電気・機械変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−45503(P2012−45503A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191226(P2010−191226)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】