説明

液状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置

【課題】 流動性に優れ、硬化後の反りの低減化ができて且つ耐熱衝撃性に優れた液状エポキシ樹脂組成物、およびそれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】 常温で液状であるエポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)及びポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記ポリエーテル系化合物(C)が末端基に少なくとも1個以上のビニルエーテル基を有するものである液状エポキシ樹脂組成物。前記液状エポキシ樹脂組成物は、フェノール系化合物(D)、充填剤(E)などを含むものである。また、前記液状エポキシ樹脂組成物は、アンダーフィル材用樹脂組成物として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報技術化の進展に伴って、電気・電子機器、通信機器及びコンピューターなどの機器における小型化および情報伝達の高速化が急速に進み、これらに用いる集積回路(IC)パッケージも、小型化や高集積化が進展していて、近年はバンプ接合によるフリップチップ実装技術が著しい成長を見せている。その応用分野はモバイル関連に用いられるチップスケールパッケージ(CSP)やCPUのような大型パッケージなどの種々なアプリケーションに応用されている。しかしながら、これらのパッケージは、一般に、ICチップと基板(インターポーザー)を半田バンプで電気的に接合した接続方式のため外的強度に弱く、アンダーフィル材と呼ばれる液状樹脂組成物によって、ICチップと基板の隙間に充填接着することにより保護とパッケージの強化をしている。
その中で、特に大型パッケージ用途に関しては、アンダーフィル材用液状樹脂組成物(以下、U/F材と称する)の硬化収縮による影響でICチップの反りが起こり、その為に半田バンプへのストレスが掛かり、バンプクラック等の不良が起こる可能性があった。これを解決する為には、U/F材に低応力化が求められることになった。
【0003】
一般に反りは、U/F材自身の弾性率と実装用基板との線膨張係数の違いから発生する内部応力に由来する。従って、反りの改善には、弾性率を下げることや線膨張係数を整合することなどが有効である。この中で、線膨張係数の整合手法として、樹脂組成物中に無機フィラーの高充填がある。しかし、液状樹脂組成物の場合は、作業性の観点から無機フィラーの充填率には限界がある。そこで、樹脂組成物の弾性率を下げて、靭性を付与する低応力化が重要になる。従来のエポキシ樹脂組成物の低応力化の要求においては、エポキシ樹脂硬化物の強靭化として可撓性を有する組成物でエポキシ樹脂を変性する方法や添加する方法などが数多く報告されている。例えば、エポキシ樹脂硬化物を強靭化する目的で、横浜国大の垣内らは反応基を有するゴム系エラストマーでエポキシ樹脂を変性する手法を報告している(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、ゴム系エラストマー変性エポキシ樹脂は靭性向上には効果が有るものの樹脂粘度が高くなり過ぎて、半田バンプ接続の隙間に注入できない欠点を起こし、注型用には不適となる。また、低粘度化と柔軟強靭性を具備したエポキシ樹脂としては、ジビニルエーテル系化合物から誘導された手法が報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。該手法では、樹脂による粘度低減化と柔軟靭性付与では効果が認められるものの、ジビニルエーテル系化合物の骨格が耐熱性に劣る構造のため、硬化物のガラス転移温度(Tg)の低下が著しくなり、U/F材用には不適となる。
【0004】
一方、特許文献1においては、分子末端に水酸基を有するポリエーテルポリオールを添加することにより低応力化が図れることが示されている。しかしながら、分子末端に水酸基を有するポリウレタンポリオールでは、分子量が小さく、エポキシ樹脂と相溶する場合には、硬化物のガラス転移温度(Tg)の低下を招き、所望のTgを得る為にポリエーテル骨格の分子量を大きくするとエポキシ樹脂との相溶性が低下して、硬化した樹脂表面からポリウレタンポリオールが滲み出す、所謂ブリードの発生が顕著になって信頼性を損なうために制約があり、更なる低応力化改善には問題があった。このため、半田バンプ接続の隙間に注入可能な流動性に優れ、硬化物のTg低下がなく低弾性率化が図れ、更にブリードの発生がなく、その結果、半田接続の信頼性の要求を満足する液状エポキシ樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】垣内等、熱硬化性樹脂 1987年.Vol.8.No.3P26〜44
【非特許文献2】中村、プラスチックエージ 2004年.Vol.50.No.5P218〜228
【特許文献1】特開昭63−33416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な事情に鑑み、流動性に優れ、硬化後の反りの低減化とブリードの発生が抑制できる液状エポキシ樹脂組成物、および半田接続信頼性に優れる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、常温で液状であるエポキシ樹脂とポリエーテル系化合物を含むエポキシ樹脂組成物において、前記ポリエーテル系化合物に、末端基に少なくとも1個以上のビニルエーテル基を有するものを用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(1)項から(6)項の液状エポキシ樹脂組成物および(7)項の半導体装置により達成される。
(1) 常温で液状であるエポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)及びポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記ポリエーテル系化合物(C)が末端基に少なくとも1個以上のビニルエーテル基を有するものである液状エポキシ樹脂組成物。
(2) 前記ポリエーテル系化合物(C)は、数平均分子量が700以上10,000以下のポリエーテル構造を有するものである、(1)項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
(3) 前記硬化剤(B)が、一分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物である、(1)項または(2)項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
(4) 前記液状エポキシ樹脂組成物は、フェノール系化合物(D)を含むものである(1)項乃至(3)のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
(5) 前記液状エポキシ樹脂組成物は、充填剤(E)を含むものである(1)項乃至(4)項のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
(6) 前記液状エポキシ樹脂組成物は、アンダーフィル材用樹脂組成物である(1)項乃至(5)項のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
(7) 電子部品と電子部品搭載用基板とを含んで構成され、前記電子部品と前記電子部品搭載用基板との間に間隙を有する半導体装置であって、前記電子部品と前記電子部品搭載用基板との隙間が、(6)項に記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物によって、充填接着してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性に優れ、硬化物として反りの低減化とブリードの発生が抑制できる液状エポキシ樹脂組成物が得られる。流動性に優れることにより、特に流動性が要求される用途、例えば、前記液状エポキシ樹脂組成物を、電子部品と電子部品搭載用基板との隙間の充填接着剤として用いる場合、充填接着作業が容易になる。また、硬化物とした場合、反りが少なく、ブリードの発生も抑制できるものとなる。
本発明の半導体装置は、前記液状エポキシ樹脂組成物の硬化物を用いることにより、半田接続信頼性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いる常温で液状のエポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びそれらの水添物、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びそれらの水添物、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、アミノフェノール類のトリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、1,6−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素系フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールAジグリシジル型エポキシ樹脂などが挙げられ、こららの1種又は2種以上を用いても良い。
【0010】
本発明に用いる硬化剤(B)としては、前記常温で液状のエポキシ樹脂(A)の硬化剤として用いられるものであれば制限はない。その中でも、特にアンダーフィル材用樹脂組成物に用いる場合、電子部品と電子部品搭載用基板との隙間の充填接着と接続信頼性の観点から、液状であることが好ましく、更に好ましくは、ポリアミン系化合物や酸無水物系化合物である。
【0011】
前記ポリアミン系化合物としては、一分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物であれば用いることができるが、これらにおいて液状のポリアミン系化合物としては、具体的にはイソフォロンジアミン、ノルボルネンジアミンおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、m−キシリレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン化合物などが例示される。一分子内にアミノ基が一個の場合は、加熱硬化時の三次元架橋が進まず、結果として所望の耐熱性が得られない。
また、常温で固体のポリアミン化合物としては、芳香族ポリアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよびメタフェニレンジアミンなどが挙げられる。本発明においては、常温で固体のポリアミン化合物を用いることができるが、液状エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなることがあり、注型作業などにおいて、より低粘度であることが要求される場合、このような固体のポリアミン化合物の使用は制限されることがある。
【0012】
また、前記酸無水物系化合物としては、液状の酸無水物化合物として、メチルテトラヒドロ無水フタル酸およびメチルヘキサヒドロ無水フタル酸などの無水フタル酸化合物、メチルナジック酸無水物およびドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。また常温で固体の酸無水物として、テトラヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタルなどが挙げられる。
本発明においては、常温で固体の酸無水物化合物を用いることができるが、前述と同様に、より低粘度が要求される場合、このような固体の酸無水物化合物の使用は制限されることがある。前記硬化剤は、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0013】
前記硬化剤(B)の含有量としては、ポリアミン系化合物の場合は、前記液状エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量1.0に対してポリアミン系化合物の活性水素当量の比が0.8〜1.2になるのが好ましく、同様にして酸無水物系化合物の場合は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量1.0に対して酸無水物当量の比が0.5〜1.0になるのが好適である。
【0014】
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)としては、ポリエーテル構造と、その末端基として少なくとも1個以上のビニルエーテル基とを有するものであり、一般式(1)で表される構造を有するものである。
X−(−Y)n (1)
(式(1)中、Xはポリエーテルユニットを示す。Yは末端基を示し、複数有する場合には互いに同一であっても、異なってもよい。nは1以上の整数である。)
【0015】
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)としては、構造中に複数のエーテル結合を有するものであれば特に限定されないが、液状エポキシ樹脂組成物の硬化物として、ガラス転移温度(Tg)を低下させることなく、低弾性率化が図れることにより、反りの低減が可能になり、半導体装置としての半田接続信頼性に優れたものを得る上で、前記液状エポキシ樹脂(A)と適度な非相溶性を示すことが好ましい。
ここで、前記ポリエーテルユニット(X)が、前記液状エポキシ樹脂(A)と非相溶性を示すとは、液状エポキシ樹脂組成物を硬化物とした場合に、前記ポリエーテルユニット(X)が相分離し、硬化物の外観が不透明になり、この硬化物の断面を電子顕微鏡等で観察すると、非相溶性部分が球状でマトリックス中に点在して所謂海島構造が確認できる。また、ポリエーテルユニット(X)の非相溶性が過度になり過ぎると、硬化した時にブリードの発生現象が観察されることがある。
【0016】
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)の数平均分子量は、700以上が好ましく、更には1,000以上がより好ましい。また、ポリエーテルユニット(X)の数平均分子量は、10,000以下が好ましく、より好ましくは5,000以下である。ポリエーテルユニットの数平均分子量が前記範囲外でも使用できるが、前記下限値を下回る場合には、ポリエーテルユニット(X)がエポキシ樹脂組成物に相溶して硬化物のガラス転移温度を低下させる場合がある。一方ポリエーテルユニットの数平均分子量が、前記上限値を上回る場合には、エポキシ樹脂組成物との非相溶性が著しくなってブリードが発生することにより、硬化した時に接続信頼性を損ねる場合がある。
上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算により得ることができる。
【0017】
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)の構造としては、構造中にエーテル結合を複数有する種々のものが適用でき、具体的にはエチレングリコールを繰り返し単位として有するもの、プロピレングリコールを繰り返し単位として有するもの、テトラメチレングリコールを繰り返し単位として有するものなどが挙げられる。中でも、液状エポキシ樹脂組成物における、他の成分との相溶性や硬化物の低弾性率化の効果からプロピレングリコールを繰り返し単位として有するものが好ましい。これらポリエーテルユニット(X)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールなどのアルコール類に、アルカリ触媒のもとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどを開環重合させることによって合成できる。
【0018】
本発明に用いるビニルエーテル基末端型ポリエーテル系化合物(C)は、例えば、前記ポリエーテルユニット(X)の末端基が水酸基であるポリエーテル系化合物と反応触媒としてアルカリ金属類またはアルカリ土類金属類とを耐圧反応容器に入れて、100℃から150℃に加温し、窒素雰囲気中の加圧下でアセチレン圧入しながら逐次反応させて得られる。具体的には、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ジオール型ポリプロピレングリコールルモノビニルエーテル、ジオール型ポリプロピレングリコールジビニルエーテルおよびグリセリン型ポリプロピレングリコールトリビニルエーテルなどが例示される。
【0019】
本発明に用いるビニルエーテル基末端型ポリエーテル系化合物(C)の添加量は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との合計100重量部に対して、5重量%〜40重量%が好ましく、前記範囲外でも用いることができるが、5重量%未満の場合では、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物における低弾性率化が不充分となり、熱衝撃試験で所望の結果が得られない場合がある。また40重量%を超える場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物の流動性の低下を生じる場合があり、この場合、任意に用いる充填剤(E)等の添加量も制約を受けて材料設計的に好ましくないことがある。
【0020】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じてフェノール系化合物(D)を添加することができる。フェノール系化合物(D)は、ビニルエーテル基とエポキシ基との何れかにまたは双方ともに反応することから、エポキシ樹脂(A)とビニルエーテル基末端型ポリエーテル系化合物(C)との結合剤として作用し、ブリードの発生を制御することができる。前記フェノール系化合物(D)の中で、反応基が水酸基の場合には、フェノール、クレゾール類、キシレノール類、t−ブチルフェノール、カテコール、ハイドノキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフトール類やビフェノール類などが例示される。異種の反応基を有する場合として、アミノフェノール、サリチル酸、チオヒドロキノンなどが例示される。
【0021】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物においてフェノール系化合物(D)の添加量は、前記ポリエーテル系化合物(C)におけるビニルエーテル基との当量を損なわない程度である。具体的には、例えば、数平均分子量が2,200のポリエーテル系ジビニルエーテルと数平均分子量が110のカテコールである場合には、当量を添加すると、前者の100重量部に対して後者は5重量部となるが、前記ポリエーテル系ジビニルエーテルとしての好ましい添加量は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との合計100重量部に対して、5重量%〜40重量%であるので、この場合、フェノール系化合物(D)の添加量は0.3重量%〜2重量%となる。
【0022】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、更に、充填剤(E)を含むことができ、その具体例としては、シリカ粉末、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、クレーおよびマイカなどが挙げられ、特にシリカ粉末は、溶融シリカが好ましい。これらの充填剤(E)は、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、前記充填剤(E)の含有量としては、液状エポキシ樹脂組成物としての特性(耐湿性、作業性等)を保持する範囲であれば、特に制限はないが、アンダーフィル材用樹脂組成物として用いる場合、液状エポキシ樹脂組成物に対し50重量%〜80重量%が好ましい。充填剤の含有量が前記範囲外でも用いることができるが、50重量%未満の場合は、所望の特性が得られなくなることがあり、また80重量%を超える場合は、樹脂粘度が高くなり過ぎて、電子部品と電子部品搭載用基板との隙間に注入が困難になることがあり、この場合、注型用には不適となることがある。
【0023】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じて、硬化促進剤、低応力化剤、反応性希釈剤、顔料、カップリング剤、難燃剤、レベリング剤、消泡剤など、当業者において液状エポキシ樹脂組成物としてもちいることができる公知の添加剤を配合できる。
【0024】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、前記液状エポキシ樹脂(A)、前記硬化剤(B)前記ポリエーテル系化合物(C)、及び任意に前記充填剤(E)と、更に必要に応じてフェノール系化合物(D)や他の添加剤成分とを、所定の組成比にて混合し、これを三本ロールにより均一に混練を行い、脱泡後液状エポキシ樹脂組成物を得る方法などが例示される。このようにして得られた液状エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材として用いる為の粘度は、25℃で30Pa・S以下で、更に好ましくは20Pa・S以下が充填用には好適である。
【0025】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材として用いた半導体装置の製造方法は、最初に、表面実装用ICチップなどの半導体部品と半導体部品搭載用基板との半田バンプ接合を遠赤外線を使用したリフロー装置で行こなう。但し、ICチップと基板との半田バンプ接合方式は、ICチップと基板とに出来た間隙のために外的強度に弱いのが欠点である。その間隙を充填接合して接続信頼性を向上させるものがアンダーフィル材で、本発明の液状エポキシ樹脂組成物の場合は、予め、シリンジ容器詰をしたもので、前記間隙に押し出ししながら充填する。充填終了後は、熱風循環乾燥機またはトンネル炉などにより加熱硬化させて接着して、半田接続信頼性を向上させた半導体装置の製造方法を提供するものである。
【実施例】
【0026】
以下、本発明実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制約されるものではない。
特性評価のため、実施例で得られた液状エポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージの反り量と熱衝撃試験等を測定したが、パッケージ評価として、BT(ベンゾトリアジン樹脂)基板に接続されたフリップチップを用いた。フリップチップの仕様と測定方法はそれぞれ下記の通りとし、測定結果は、まとめて表1(ブリード、反り量、熱衝撃試験)に示した。
【0027】
[ビニルエーテル基末端型ポリエチレングリコールの合成例]
ステンレス鋼(SUS)製の耐圧反応容器中に、数平均分子量が1,000のポリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を入れて加熱溶融後、反応触媒として、水酸化カリ
ウムを前記ポリエチレングリコール1モルに対して100ミリモル添加し、反応容器を密封して、窒素ガスにより該反応容器内を置換した。続いて温度を140℃にして、5kg/cm2の圧力条件下でアセチレンを圧入しながら逐次反応させて、数平均分子量が1,050のポリエチレングリコールジビニルエーテルを得た。
【0028】
[ビニルエーテル基末端トリオール型ポリプロピレングリコールの合成例]
数平均分子量が1,000のポリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)に代えて、
数平均分子量が4,000のトリオール型ポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製
)にした以外は上記合成例と同様の条件で反応させて、数平均分子量が4,100のトリオール型ポリプロピレングリコールジビニルエーテルを得た。
【0029】
(1)フリップチップの仕様
チップサイズ:20mm角。
パッシベーション膜:ポリイミド樹脂。
バンプ高さ:80μm。
バンプピッチ:250μm。
バンプ配置:フルアレイ
バンプ:共晶半田。
ディジーチェーンによる接続試験可能。
(2)ブリード試験
40mmΦのアルミ皿に、液状エポキシ樹脂組成物を約6g注入後、熱風循環乾燥機で、硬化温度150℃、硬化時間90分の条件で硬化する。次に得られた硬化物の外観を目視で樹脂の滲み出しの有無を判定した。
(3)反り量
封止は、パッケージを100℃の熱盤に載置し、液状エポキシ樹脂をチップの一辺に塗布し封止を行った後に、熱風循環乾燥機で、硬化温度150℃、硬化時間90分の条件で硬化した。次に、パッケージの接触式表面粗さ計を用いて対角線方向に変位を調べ、その最大変位を反り量とした。
(4)熱衝撃試験
熱衝撃試験は、前記で得られたパッケージを熱衝撃試験(温度条件;−55℃/30分〜125℃/30分、500、1000、1500サイクル)に曝した後、ディジーチェーンによる接続性を調べた(試験片数:10個)。
判定基準は、チップクラックの数、1パッケージにおいて一箇所でも接続不良がでたものをカウントした。
【0030】
(実施例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂とビスフェノールFジグリシジル型エポキシ樹脂との混合エポキシ樹脂(エポキシ当量=160、大日本インキ工業社製、商品名EXA−830LVP)50.0重量部とアミノフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量=83、住友化学工業社製、商品名ELM−100)50.0重量部と、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(活性水素当量=63.5、日本化薬社製、商品名カヤハードA−A)48.0重量部と、数平均分子量が1,100のジオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−1,000)13.0重量部と、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3.0重量部、無機充填剤として最大粒径10μm、平均粒径2μmの球状シリカを154重量部とを混合し、これを三本ロールにて混練後、脱泡して液状エポキシ樹脂組成物を得た。得られた液状エポキシ樹脂組成物を上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
実施例1において、数平均分子量が1,100のジオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−1,000)に代えて、上記合成例で得た数平均分子量が1,050のポリエチレングリコール系ジビニルエーテル13.0重量部に代えた以外はすべて実施例1と同様にして液状エポキシ樹脂組成物を得た。得られた液状エポキシ樹脂組成物を上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1において、数平均分子量が1,100のジオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−1,000)に代えて、分子量が3,000のジオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−3,000)13.0重量部とm−アミノフェノール(和光純薬工業社製)1.0重量部に代えた以外はすべて実施例1と同様にして液状エポキシ樹脂組成物を得た。得られた液状エポキシ樹脂組成物を上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1において、数平均分子量が1,100のジオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−1,000)に代えて、上記合成例で得た数平均分子量が4,100のトリオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル13.0重量部とビスフェノールA(和光純薬工業社製)0.8重量部に代えた以外はすべて実施例1と同様にして液状エポキシ樹脂組成物を得た。得られた液状エポキシ樹脂組成物を上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)
実施例1において、硬化剤を3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬社製、商品名カヤハードA−A)に代えて、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製、MH−700)100.0重量部と、球状シリカを214.0重量部に変えた以外はすべて実施例1と同様にして、液状エポキシ樹脂組成物を作成し、特性評価に供した。
【0035】
(比較例1)
実施例1において、数平均分子量が1,100のジオール型ポリプロピレングリコール系ジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−1,000)13.0重量部を除き、球状シリカを144.0重量部に変えた以外は、すべて実施例1と同様にして、液状エポキシ樹脂組成物を作成し、特性評価に供した。
【0036】
(比較例2)
実施例1において、数平均分子量が1,100のジオール型ポリプロピレングリコール系ビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、PPGVE−1,000)13.0重量部を、末端基が水酸基の数平均分子量3,000のジオール型ポリプロピレングリコール(PPG−3,000)13.0重量部に変えた以外は、すべて実施例1と同様にして、液状エポキシ樹脂組成物を作成し、特性評価に供した。
【0037】
【表1】

*1:樹脂の滲み出しがない場合 ○
少しでも滲み出しが有った場合 ×
*2:良品数/試験実施個数
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、流動性に優れ、その硬化物はブリードの発生がなく反りの低減化に伴う熱衝撃性が良好であることから、これを用いた半導体装置を搭載する、電気・電子機器分野、通信機器分野、コンピューター分野等の多くの産業分野での利用の可能性が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液状であるエポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)及びポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記ポリエーテル系化合物(C)が末端基に少なくとも1個以上のビニルエーテル基を有するものである液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル系化合物(C)は、数平均分子量が700以上10,000以下のポリエーテル構造を有するものである、請求項1に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(B)が、一分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物である、請求項1または2に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記液状エポキシ樹脂組成物は、フェノール系化合物(D)を含むものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記液状エポキシ樹脂組成物は、充填剤(E)を含むものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記液状エポキシ樹脂組成物は、アンダーフィル材用樹脂組成物である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
電子部品と電子部品搭載用基板とを含んで構成され、前記電子部品と前記電子部品搭載用基板との間に間隙を有する半導体装置であって、前記電子部品と前記電子部品搭載用基板との隙間が、請求項6に記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物によって、充填接着してなることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2008−214548(P2008−214548A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56064(P2007−56064)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】